説明

サービス提供システム

【課題】複数の座席が設置された環境下において、電波や大量のケーブルを用いることなく、音声サービスを提供でき得るサービス提供システムを提供する。
【解決手段】複数の座席20が設置された環境下において、各座席20に着座したユーザに音声サービスを提供するサービス提供システム10は、入力された再生信号に応じた音声を出力するヘッドフォン22と、床面11に敷設された導電マット16と、ユーザに提供される音楽に応じた電界を入力電界として導電マット16に発生させるサーバ側電界発信器14と、導電マット16およびユーザの体表を介して伝達された入力電界を受信して電気信号に変換するとともに当該電気信号に応じた再生信号を生成してヘッドフォン22に出力する受信ユニット18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の座席が設置された環境下において、各座席に着座したユーザに少なくとも音声からなるサービスを提供するサービス提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の座席が設置された環境、例えば、飛行機の機内や列車の客車、病院などにおいて、座席に座るユーザに、音楽などのサービスを提供するシステムが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−282733号公報
【特許文献2】特開2006−173913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたサービス提供システムでは、配信サーバから出力される信号を、ハブやケーブルを介して、各座席に設けられた出力装置(ヘッドフォンやディスプレイなど)に送信していた。換言すれば、従来のサービス提供システムでは、配信サーバと、各座席の出力装置と、を接続する大量のケーブルが必要であった。かかる大量のケーブルは、その配線作業が手間であった。また、このサービス提供システムが、飛行機や列車など輸送機器に設置された場合には、ケーブルの重量により、当該輸送機器の総重量増加を招き、ひいては、燃費の悪化を招く問題があった。
【0005】
こうした問題を避けるために、音声信号等を、電波を用いて無線で送信することも考えられる。しかし、飛行機や病院などでは、通常、電波の使用は禁止されており、電波を用いてサービス提供することはできなかった。なお、特許文献1,2には、電波ではなく、電界を用いて音声信号等を伝達する技術が開示されているが、飛行機や列車などに適したサービス提供システムは開示されていない。
【0006】
そこで、本発明では、複数の座席が設置された環境下において、電波や大量のケーブルを用いることなく、音声サービスを提供でき得るサービス提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサービス提供システムは、複数の座席が設置された環境下において、各座席に着座したユーザに少なくとも音声からなるサービスを提供するサービス提供システムであって、入力された再生信号に応じて少なくとも音声を出力する出力手段と、前記座席の周辺に敷設され、導電性を備えた導電マットと、前記ユーザに提供されるサービスに応じた電界を、入力電界として前記導電マットに発生させる入力電界発信手段と、ユーザに保持される可搬型のユニットであって、前記導電マットおよび前記ユーザの体表を介して伝達された前記入力電界を受信して電気信号に変換するとともに、当該電気信号に応じた再生信号を生成して前記出力手段に出力する受信ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記受信ユニットは、さらに、ユーザに事前配布されたチケットに記録されたユーザ情報を取得し、当該ユーザ情報に基づいて、ユーザに提供するサービス内容を決定する。
【0009】
この場合において、さらに、前記座席ごとに設けられ、少なくとも当該座席の座席番号を含む座席情報に応じた電界である座席側電界を座席の少なくとも一部に発生させる座席側電界発信手段を備え、前記ユーザ情報は、対応するユーザに割り当てられた座席番号を含んでおり、前記受信ユニットは、前記座席の少なくとも一部および前記座席に着座しているユーザの体表を介して伝達される前記座席側電界を受信して前記座席情報を取得するとともに、当該座席情報に含まれる座席番号およびユーザ情報に含まれる座席番号との照合結果に基づいて座席間違いの有無を判断し、当該判断結果に基づいてユーザに提供するサービス内容を決定することが望ましい。
【0010】
また、前記ユーザ情報は、ユーザの年齢情報、性別情報、サービス購入情報の少なくとも一つからなるユーザ属性情報を含み、前記受信ユニットは、前記ユーザ属性情報に基づいて、ユーザに提供するサービス内容を決定する、ことも望ましい。
【0011】
また、前記チケットが、ユーザ情報に対応した電界であるユーザ側電界をユーザの体表に発生させるチケット側電界発信手段を有しており、前記受信ユニットは、ユーザの体表を介して伝達された前記ユーザ側電界を検知して電気信号に変換することで、前記ユーザ情報を取得することも望ましい。一方、前記チケットが、前記ユーザ情報を記録したICカードまたは磁気カードである場合には、前記受信ユニットは、ICカードまたは磁気カードに記録された情報を読み取るリーダ装置を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、音声信号は、座席の周辺に敷設された導電マットおよびユーザの体表を介して電界信号として伝達される。そのため、大量のケーブルや電波を用いることなく音声サービスを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態であるサービス提供システムについて図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるサービス提供システム10のイメージ図である。また、図2は、サービス提供システム10の概略ブロック図である。
【0014】
このサービス提供システム10は、複数の座席20が設けられた環境下において、当該座席20に座っているユーザに、音楽や映像などからなる情報サービスを提供するシステム10である。提供されるべき情報は、配信サーバ12から供給される。配信サーバ12から供給された情報の信号は、サーバ側電界発信器14により電界信号に変換され、導電マット16および生体の表面を介して、ユーザが保持する受信ユニット18に伝達される。受信ユニット18は、伝達された電界信号を電気信号に変換したうえで、ヘッドフォン22等の出力装置に出力する。
【0015】
以下、このサービス提供システム10について詳説する。なお、以下では、説明を簡単にするために、提供されるサービスは音楽であり、出力装置は、当該音楽の音声を再生するヘッドフォン22であるとする。また、このサービス提供システム10は、ユーザが着座するための座席20が複数用意された環境であれば、如何なる環境下に設けられてもよいが、以下の説明では、各ユーザごとに一つの座席20が割り当てられた指定席制度の環境下を例に挙げて説明する。
【0016】
配信サーバ12は、ユーザに提供すべき音楽データを配信するサーバである。この配信サーバ12には、多数の音楽データが記憶されており、予め規定されたプログラムに従って、順次音楽データがサーバ側電界発信器14に配信される。この配信サーバ12は、複数種類の音楽データを複数のチャンネルに分けて配信することが可能となっており、音楽データはパケット化された上で多重化されて配信される。
【0017】
サーバ側電界発信器14は、配信サーバ12から供給された音楽データの電気信号(音声信号)を、電界信号に変換し、導電マット16に供給する。すなわち、サーバ側電界発信器14は、配信サーバ12から供給された音声信号に応じて強度変動する電界(以下「入力電界」と呼ぶ)を導電マット16に発生させる。なお、導電マット16に誘起される入力電界の強度変動の周波数は、配信サーバ12から供給される音声信号の周波数と同様に、数メガHzとなる。
【0018】
導電マット16は、座席20の周辺および通路に敷設される敷物で、音声信号(入力電界)を伝達する伝送線路の一部として機能する。この導電マット16は、導電ゴムなどの導電性材料からなる導電層と、ウレタン等の絶縁性材料からなる絶縁層と、が積層された多層構造となっており、敷設する際には導電層が上側となる。上側の導電層は、入力電界を伝達する電極として機能する。
【0019】
ユーザがこの導電マット16に接触すると、当該導電マット16に誘起された入力電界がユーザの体表にも伝達される。そして、このユーザの体表に誘起された入力電界は、当該ユーザが保持する受信ユニット18により検知される。
【0020】
受信ユニット18は、可搬型のユニットで、ユーザ一人につき一つずつ配布される。この受信ユニット18は、図2に図示するとおり、電界センサ24、信号処理回路26などを備えている。電界センサ24は、ユーザの体表に誘起された入力電界を検出し、電気信号に変換する部位である。電界センサ24としては、例えば、フォトセンサを利用した電界センサが知られている。この電界センサは、電界の変化により光のレーザ光の反射波の偏光角が変化する性質を利用したセンサで、電界の生じている面に直接レーザ光を照射して得られる反射波を偏光フィルターに通過させることで、電界の変化を光の強弱に変換し、この光の強弱をフォトセンサで電気信号に変換し、電界の強度変化に応じた電気信号を得る。なお、ここで説明した電界センサは、一例であり、他の電界センサ、例えば、磁気センサを利用した電界センサなどを用いてもよい。
【0021】
信号処理回路26は、各種信号処理を実行する部位である。具体的には、信号処理回路26は、電界センサ24で得られた電気信号に基づいて音楽の再生信号を生成し、ヘッドフォン22に出力する。また、この再生信号の生成にあたって、ノイズ除去のための周波数解析処理なども行う。
【0022】
すなわち、既述した通り、音楽信号は、電界信号(入力電界)に変換され、導電マット16や生体表面を介して受信ユニット18に伝達される。したがって、導電マット16に誘起される電界の強度は、本来、伝達すべき音楽信号に応じて変化するべきであるが、導電マット16の静電容量の変化や静電気の発生などによっても変化する。すなわち、導電マット16は、導電層と床面11との間の間隙量(間隙体積)に比例した静電容量を有するコンデンサとして機能するものであり、この静電容量が変化すれば導電マット16に誘起される電界強度も変化する。ここで、導電層と床面11との間の間隙量は、当該導電マット16に付加される荷重(ユーザの体重)などによって容易に変化する。そのため、導電マット16上でユーザが歩行したり、導電マット16から乗り降りしたりすることで、導電マット16に誘起される電界強度も容易に変化することになる。また、突発的に生じる静電気によっても、電界強度は大きく変化する。こうした導電マット16の静電容量の変化や静電気の発生に起因する電界の強度の変化は、いわゆるノイズとして機能することになり、音声信号(入力電界)検知の妨げになる。
【0023】
信号処理回路26は、こうした意図しない電界強度変動に起因するノイズを除去する。具体的には、音声信号の強度変化の周波数(数メガHz)に比して、静電容量の変化や静電気の発生に起因する電界の強度の変化の周波数(数Hz)は、非常に小さい。このことを利用して、信号処理回路26は、検知信号に対して、公知の周波数解析処理、例えば、ハイパスフィルタ処理などを施すことにより、意図しない電界強度の変化に起因する悪影響を排除している。なお、通路に敷設される導電マット16は、静電容量の変化や静電気の発生に起因する電界強度の変化を小さくするために、人の往来の激しい部分、例えば、通路の中央部分などは非導電性とし、座席に隣接する通路の両側部分を導電性としてもよい。もちろん、非導電マットと導電マットとを別個に用意し、通路中央部分には非導電マットを敷設し、通路両端部分に導電マットを敷設してもよいことはいうまでもない。
【0024】
ヘッドフォン22は、受信ユニット18に有線接続されており、ユーザに提供すべき情報サービス(音声)を出力する出力手段として機能する。このヘッドフォン22が、信号処理回路26から入力された再生信号に応じた音声を出力することで、ユーザへの情報サービスの提供が図られる。
【0025】
以上の説明で明らかなとおり、本実施形態では、床面11に敷設された導電マット16を介して信号が伝達される。導電マット16という平面的な部材を伝送線路の一部として用いることにより、配信サーバ12と各座席20とをケーブルで接続する必要がなくなり、ケーブル設置に伴う様々な問題を低減できる。すなわち、従来、各座席20に着座するユーザに音楽等の情報サービスを提供するためには、配信サーバ12と各座席を接続するケーブルを敷設する必要があった。しかし、かかるケーブルの敷設は、手間であるばかりでなく、コストの増加やメンテナンスの手間などの問題も招いていた。また、飛行機や列車などの輸送機器において、かかるケーブルを敷設した場合、当該ケーブルの重量分だけ機器重量の増加を招き、ひいては、燃費の悪化を招いていた。かかる問題を避けるために、電波を用いた無線通信技術も提案されているが、通常、飛行機の機内や列車、病院などでは電波の使用が制限されている。そのため、これらの環境下では、電波を用いた無線通信を行うことはできなかった。
【0026】
一方、本実施形態のように、床面11に敷設される導電マット16を利用して電界通信により音楽信号を送信することにより、ケーブルを省略でき、コストや手間の増加、燃費の悪化という問題を防止できる。
【0027】
ところで、こうした導電マット16は、広い範囲に信号を送信できる利点がある一方で、当該導電マット16の上におり、かつ、受信ユニット18を有している人物であれば、如何なる人物にでも信号が送信されることになる。しかし、こうした情報サービスは、本来、予め割り当てられた座席20に座っている人物のみに提供されることが望ましい。また、提供される情報サービスの内容は、年齢や性別などに応じて切り替えられることも望ましい。そこで、本実施形態では、上述した構成に加えて、さらに、ユーザの識別機能も設け、識別されたユーザの属性に応じて提供する情報サービスの内容を切り替えている。以下、これについて具体的に説明する。
【0028】
既述したとおり、受信ユニット18には、電界センサ24と信号処理回路26が設けられている。この電界センサ24は、サーバ側電界発信器14から供給された音楽信号に応じた入力電界を検知するだけでなく、座席側電界発信器32から供給された電界(以下「座席側電界」という)も検知する。座席側電界発信器32は、各座席20に固定設置された機器である。この座席側電界発信器32は、対応する座席20の識別情報(座席番号など)に応じた電界である座席側電界を、座席20の導電部分(例えば手摺部分など)に生じさせる。この導電部分に誘起された座席側電界は、当該導電部分に載置されたユーザの腕などを介して受信ユニット18に伝達される。電界センサ24は、当該座席側電界を電気信号に変換した上で、信号処理回路26に出力する。信号処理回路26は、この電気信号にノイズ除去処理などを施して得られた情報を座席情報として制御部28に出力する。
【0029】
また、受信ユニット18には、チケットリーダ30も設けられている。チケットリーダ30は、予めユーザに配布されたチケットに記録されたユーザ情報を読み取る。ここでチケットとは、例えば、飛行機の搭乗券の半券や、新幹線の指定席券、病院の診察件などが該当する。また、ユーザ情報としては、当該ユーザに割り当てられた座席の座席番号や、当該ユーザの属性情報が含まれる。ユーザの属性情報としては、当該ユーザの年齢情報(具体的な数値でなく「大人」「小人」の区別のみでもよい)、性別情報のほか、サービス購入情報などが含まれる。こうしたユーザ情報は、磁気カードやICタグなどの技術によりチケットに記録されている。いうなれば、チケットは、ユーザ情報を記録した磁気カードまたはICカードとして機能する。チケットリーダ30は、かかるチケットに記録されたユーザ情報を読み取り、制御部28に出力する。なお、当該チケットリーダ30でチケットを読取可能とするために、受信ユニット18には、当該チケットを保持する保持機構(例えばソケット等)を設けておくことが望ましい。
【0030】
制御部28は、座席情報とユーザ情報とを比較照合し、その照合結果に応じて、ヘッドフォン22への信号出力を制御する。より具体的には、制御部28は、座席情報に含まれる座席番号と、ユーザ情報に含まれる座席番号と、が一致するか否かを判断する。判断の結果、一致する場合には、ユーザは適切な座席20に着座しているとして、音楽サービスの提供(再生信号のヘッドフォン22への出力)を許可する。一方、二種類の座席番号が一致しない場合、ユーザは、間違った座席20に着座している可能性が高い。この場合、制御部28は、音楽サービスの提供を禁止するとともに、座席間違いを意味する音声の出力を、信号処理回路26を介してヘッドフォン22に指示する。なお、このとき、同時に、正しい座席番号の案内音性も出力するようにしてもよい。そして、かかる構成とすることで、ユーザに、座席間違いを容易に認識させることができ、座席間違いに起因する各種トラブルを防止できる。
【0031】
また、上述の説明で明らかなとおり、座席側電界(ひいては座席情報)は、ユーザが座席20の導電部分に接触している状態でなければ、受信ユニット18に伝達されない。換言すれば、ユーザが座席20から立ち上がった場合、受信ユニット18には、座席情報は伝達されないことになる。この場合、制御部28は、座席番号の照合処理を行うことができないため、番号不一致の場合と同様に、サービス提供、すなわち、音楽の再生を禁止する。ただし、この場合、座席20を間違っているわけではないため、座席間違いを意味する音声は出力しない。
【0032】
さらに、制御部28は、ユーザ情報に含まれる属性情報に基づいて、提供すべきサービス内容を決定し、ユーザ毎にサービス内容を最適化したり、サービス内容を選択できるようにしてもよい。例えば、予め、提供する音楽プログラムを大人用と子供用とに分けておき、ユーザ情報に基づいて当該ユーザが小人であると判断された場合には、大人用プログラムの提供を禁止するようにしてもよい。同様に、音楽プログラムを性別によって分けておき、識別されたユーザの性別に応じて提供する音楽プログラムの内容を決定してもよい。さらに、提供されるサービスが有料である場合には、サービス購入情報に基づいて、如何なるサービスを購入したかを判断し、当該購入したサービスおよび無料サービスのみを提供する、あるいは選択できるようにしてもよい。いずれにしても、チケットに記録されたユーザの属性情報に基づいて提供するサービス内容を決定し、当該決定に応じたサービスを提供するように制御することで、提供すべきサービス内容がユーザの属性情報に基づいて好適化や最適化され、より便利なサービス提供が可能となる。
【0033】
なお、上述の説明では、情報サービスとして音声を提供する場合を例に挙げて説明したが、音声とともに映像も提供するシステム10に応用してもよい。映像は、例えば、前の座席20の背面に設けられた液晶モニタなどを用いて出力するようにすればよい。この場合、当該座席20の背面の生地を導電性の生地とし、また、座席20の脚部を導電マット16と同等の部材で被覆したうえで、当該座席20の背面にも受信ユニットを設けておく。そして、配信サーバ12から供給された映像信号は、電界信号に変換したうえで、導電マット16、座席20の脚部、座席20の背面などを介して受信ユニットに伝達されるようにすればよい。なお、座席20の脚部または、その近傍(電界信号を受信できる範囲)に受信ユニットを設け、有線で映像信号をモニタに供給するようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、ユーザが保持する受信ユニット18にチケットリーダ30を設けているが、図3に図示するように、チケット側に電界発信器を設けておくことで、チケットリーダ30を省略することもできる。すなわち、ユーザ情報に応じて強度変化する電界を発生させるチケット側電界発信器40をチケットに予め設けておく。このチケット側電界発信器40により誘起された電界(以下「チケット側電界」)は、当該チケットを衣服のポケット等に保持するユーザの体表を通じて受信ユニット18に伝達される。受信ユニット18の電界センサ24は、当該チケット側電界を電気信号に変換するとともに、信号処理回路26に出力する。信号処理回路26は、得られた電気信号に対してノイズ除去等の信号処理を施した上で、ユーザ情報として制御部28に出力する。そして、上述した実施形態と同様に、制御部28は、当該ユーザ情報に応じて、提供するサービス内容を制御すればよい。
【0035】
また、本実施形態では、受信ユニット18とヘッドフォン22とを別体として構成したが、受信ユニット18をヘッドフォン22に内蔵させてもよい。また、上述の実施形態では、配信サーバ12から受信アダプタ18に信号を送信する一方向通信を例に挙げて説明しているが、ビデオ・オンデマンド・システムなどのようにユーザからサーバへのリクエストを受け付ける双方向通信構成としてもよい。この場合には、配信サーバ12にも電界センサや信号処理回路などからなる受信ユニットを設ければよい。また、その場合の通信方式としては、例えば、通常のEthernet(登録商標)方式などが採用でき、プロトコルも例えばTCP/IPなどの汎用的なプロトコルを用いることができる。
【0036】
いずれにしても、導電マット16を介して電界通信でサービスに必要な信号を送信するようにすることで、ケーブルを省略することができ、手間やコストの低減や燃費の向上などが図れる。また、チケットに記録された情報に基づいて、サービスの提供状況を制御することにより、サービス提供の利便性をより向上できる。特に、座席番号の照合を行うことで、座席間違いを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態であるサービス提供システムのイメージ図である。
【図2】サービス提供システムの概略ブロック図である。
【図3】他のサービス提供システムの概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
10 サービス提供システム、11 床面、12 配信サーバ、14 サーバ側電界発信器、16 導電マット、18 受信ユニット、20 座席、22 ヘッドフォン、24 電界センサ、26 信号処理回路、28 制御部、30 チケットリーダ、32 座席側電界発信器、40 チケット側電界発信器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席が設置された環境下において、各座席に着座したユーザに少なくとも音声からなるサービスを提供するサービス提供システムであって、
入力された再生信号に応じて少なくとも音声を出力する出力手段と、
前記座席の周辺に敷設され、導電性を備えた導電マットと、
前記ユーザに提供されるサービスに応じた電界を、入力電界として前記導電マットに発生させる入力電界発信手段と、
ユーザに保持される可搬型のユニットであって、前記導電マットおよび前記ユーザの体表を介して伝達された前記入力電界を受信して電気信号に変換するとともに、当該電気信号に応じた再生信号を生成して前記出力手段に出力する受信ユニットと、
を備えることを特徴とするサービス提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載のサービス提供システムであって、
前記受信ユニットは、さらに、ユーザに事前配布されたチケットに記録されたユーザ情報を取得し、当該ユーザ情報に基づいて、ユーザに提供するサービス内容を決定することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項3】
請求項2に記載のサービス提供システムであって、さらに、
前記座席ごとに設けられ、少なくとも当該座席の座席番号を含む座席情報に応じた電界である座席側電界を座席の少なくとも一部に発生させる座席側電界発信手段を備え、
前記ユーザ情報は、対応するユーザに割り当てられた座席番号を含んでおり、
前記受信ユニットは、前記座席の少なくとも一部および前記座席に着座しているユーザの体表を介して伝達される前記座席側電界を受信して前記座席情報を取得するとともに、当該座席情報に含まれる座席番号およびユーザ情報に含まれる座席番号との照合結果に基づいて座席間違いの有無を判断し、当該判断結果に基づいてユーザに提供するサービス内容を決定する、
ことを特徴とするサービス提供システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載のサービス提供システムであって、
前記ユーザ情報は、ユーザの年齢情報、性別情報、サービス購入情報の少なくとも一つからなるユーザ属性情報を含み、
前記受信ユニットは、前記ユーザ属性情報に基づいて、ユーザに提供するサービス内容を決定する、
ことを特徴とするサービス提供システム。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載のサービス提供システムであって、
前記チケットが、ユーザ情報に対応した電界であるユーザ側電界をユーザの体表に発生させるチケット側電界発信手段を有しおり、
前記受信ユニットは、ユーザの体表を介して伝達された前記ユーザ側電界を検知して電気信号に変換することで、前記ユーザ情報を取得する、
ことを特徴とするサービス提供システム。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載のサービス提供システムであって、
前記チケットが、前記ユーザ情報を記録したICカードまたは磁気カードである場合に、
前記受信ユニットは、ICカードまたは磁気カードに記録された情報を読み取るリーダ装置を有する、
ことを特徴とするサービス提供システム。


【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−41422(P2010−41422A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202228(P2008−202228)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】