説明

サーボプレスラインの運転方法および運転制御装置

【課題】干渉発生を確実に防止できかつ生産性を最大限としてプレス運転できるようにする。
【解決手段】通常プレス運転制御手段と通常搬送運転制御手段と上昇工程遅れ判別手段と下流側搬送工程遅延化補正制御手段と上流側搬送工程遅れ判別手段とスライド下降工程遅延化補正制御手段となどを具備し、スライドモーション情報に基づきスライド位置θaを目標スライド位置θsに合致させる通常プレス運転を実行可能かつ搬送モーション情報に基づき搬送位置Xaを目標搬送位置Xsに合致させる通常搬送運転を実行可能で、スライド上昇工程が遅れ方向状態にある場合に下流側サーボ搬送装置30Dの搬送工程を通常搬送運転の場合よりも遅延化する補正を実行しかつ上流側搬送工程が遅れ方向状態にある場合にサーボプレス30のスライド下降工程を通常プレス運転の場合よりも遅延化する補正を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボプレスとサーボ搬送装置とをワークの搬送方向に交互に配設したサーボプレスラインの運転方法および運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボプレスとサーボ搬送装置とをワークの搬送方向に交互に配設したサーボプレスラインが知られている。例えば、図12に示すサーボプレスラインは、各サーボプレス10、10間にサーボ搬送装置30を配設した構成である。なお、図12では、左側(第1番目)のサーボプレス10の上流側(左側)に配設された第1番目のサーボ搬送装置は図示省略してある。
【0003】
サーボプレス10は、スライド12、上型13、下型17、ボルスタ18などを含み、プレス運転可能に形成されている。また、サーボ搬送装置30は、本体31、搬送体32、吸着手段33を含み、搬送運転可能に形成されている。なお、図13はサーボプレス間に配設されたサーボ搬送装置30を中心に図示してある。
【0004】
図12、図13において、第1番目のサーボ搬送装置から第1番目(左側)のサーボプレス10(10U)に搬入[図13の搬送工程Tr3(=Tr31+Tr32)を参照]されたワーク35は、当該サーボプレス10(10U)内の下型17にセットされかつその後に第1のプレス加工が施される。第1のプレス加工済みワーク35は、搬送方向の下流側に配設された第2番目のサーボ搬送装置30(図12で、プレス10U,10Dの間に配設されている。)によって中間位置Zまでワーク搬出[搬送工程Tr2(=Tr21+Tr22)]され、さらに第2番目のサーボプレス10(10D)に向かって搬入[搬送工程Tr3(=Tr31+Tr32)]されて下流側のサーボプレス10D内の下型17にセットされる。
【0005】
また、第2番目のサーボ搬送装置30は、第2番目のサーボプレス10Dから中立位置Zに向けて空搬出[搬送工程Tr4(=Tr41+Tr42)]され、その後に次の搬送サイクルに備えるために上流側のサーボプレス10Uへ向かって空搬入[搬送工程Tr1=(Tr11+Tr12)]される。以上がサーボ搬送装置30の通常搬送運転である。以下、同様にして、ワーク35は各サーボ搬送装置30で下流側に順番に搬送されつつ各サーボプレス10で所定のプレス加工がなされ、製品となる。
【0006】
かかるサーボプレスラインの運転制御方式には、他の産業機械の場合と同様に、マスタースレーブ方式と統括(一括)管理方式とがある。
【0007】
マスタースレーブ方式は、各プレス速度間の遅速差を解消するために代表プレス(マスター)の運転に他のプレス(スレーブ)を追従運転させる方式である。従来例(例えば、特許文献1を参照)の場合は、各プレスのプレス速度を第1プレスのプレス速度に追従(同期運転)させる。このマスタースレーブ方式でも、例えばクラッチ・ブレーキを有するプレスを配設した従前のプレスラインの場合(クランク軸の1回転ごとにスライドを上死点位置に一旦停止させる。)と比較すれば、生産性は比較的に改善できると言える。しかし、マスタープレスが何らかの問題(例えば、低速化)が発生した場合には、各スレーブが全てその問題(低速化)を引き継ぐことになる。
【0008】
統括(一括)管理方式のサーボプレスラインでは、各サーボプレスを統括管理運転する。例えば、図12に示すように、各サーボプレス10の当該各プレスコントローラ25Pに上位コントローラ60Pから統括プレス運転指令する。同様に、各サーボ搬送装置30の場合も、当該各プレスコントローラ55Pに上位コントローラ60Pから統括搬送運転指令する。なお、70Pは、表示部71および操作部71を含む表示操作部である。
【0009】
ところで、上記した上死点一旦停止型の従前プレスラインの場合は、高価な金型の破損防止を第1義とするためにマスターのプレス速度を大幅に低速化している。しかし、このプレス速度低速化は、生産性低下に直結するので、統括(一括)管理方式のサーボプレスラインにそのまま採用できない。つまり、マスタースレーブ方式では、サーボプレスの優位性(自由なスライドモーション)を担保できない。
【0010】
ここに、各サーボプレスの全工程に渡る低速化を脱することのできるサーボプレスラインが開示されている(例えば、特許文献2を参照)。この提案プレスラインは、各プレス機を同格として取扱いかつスライド位置がワーク搬送許容位置に至るまでは各サーボプレスのスライド速度をいずれかのサーボプレス(最低速)のスライド速度に合わせつつ、各スライド位置が同時にワーク搬送許容位置に到達可能に形成されている。したがって、干渉防止を担保しつつ生産性を向上できる。
【0011】
さらなる生産性向上を企図するものとして、開示(例えば、特許文献3を参照)されたサーボプレスラインは、任意のサーボプレスのスライド進捗(プレス工程)が基準よりも遅れている(進んでいる)と判断された場合に、当該サーボプレスに対してスライドの動きを速める(遅らせる)指令値を出力し、全てのサーボプレスのスライド進捗(プレス工程)を基準のスライド進捗(プレス工程)に収束させるようにして同期させる。
【0012】
しかし、この開示ライン(特許文献3)は、先の開示ライン(特許文献2)の場合と同様に相対的高速側のサーボプレス間の同期制御であり、相対的低速側のサーボ搬送装置との同期制御は行なわれていない。すなわち、いずれの場合も干渉問題は解消できない。
【特許文献1】特開2000−343294号公報
【特許文献2】特開昭2003−191096号公報
【特許文献3】特開平2006−130560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここに、干渉発生を確実に防止しかつプレス生産性を最大限に上げるためには、相対的低速側のサーボ搬送装置を許容最高搬送速度に設定して通常搬送運転させるのが望ましい。そして、相対的高速側のサーボプレスのプレス速度は、許容最高搬送速度に対応可能な範囲内において許容最高プレス速度よりも低速に抑えた値に設定して通常プレス運転させる考え方が現実的である。ハードウエアおよびソフトウエアの開発に伴い、この通常プレス運転方法が普及拡大しつつある。
【0014】
しかるに、サーボ特性が時に微妙に変化(変動)することがある。毎サイクルではなく偶然が重なったようなレアケースに発生する。サーボプレスでは負荷(プレス荷重)の変化や故障などで発生し、サーボ搬送装置ではワーク重量、機械的摩擦のバラツキや故障などの場合に発生する。いずれの場合も、設定運転速度に比較して低速側に変化する。なお、これら事由では高速側に変化することはない。
【0015】
かかる運転速度変化を生産性上の影響が軽微であることや、短期間経過により(例えば、次サイクルまでに)解消される場合が多いことを事由に放置することはできない。干渉の発生有無は、時間的長短関係事象でなく、相対的位置関係事象だからである。
【0016】
本発明の目的は、干渉発生を確実に防止できかつプレス生産性を最大限に向上できるサーボプレスラインの運転方法および運転制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明は、サーボプレスライン全体は生産性向上の観点から統括管理方式で運転させるが、プレス速度および搬送速度の変化に対しては任意のサーボプレスとその両側に配設されたサーボ搬送装置との相互間を個別管理方式により補正制御する。これにより干渉防止を具体的に解消するものである。
【0018】
すなわち、請求項1の発明に係るサーボプレスラインの運転方法は、サーボプレスとサーボ搬送装置とをワークの搬送方向に交互に配設したサーボプレスラインの運転方法であって、スライドモーション情報に基づく工程位相を進行させつつ前記サーボプレスのスライド位置を工程位相に対応する目標スライド位置に合致させる通常プレス運転を行ないかつ搬送モーション情報に基づく該工程位相と共通の工程位相を進行させつつ前記サーボ搬送装置の搬送位置を工程位相に対応する目標搬送位置に合致させる通常搬送運転を行ない、スライド上昇時の現在工程位相とスライドモーション情報を参照して求めた当該時の実際スライド位置に対応する見掛工程位相とを用いてスライド上昇工程が遅れ方向状態にあると判別できた場合に当該サーボプレスの下流側サーボ搬送装置の搬送工程を通常搬送運転の場合よりも遅延化する補正を行ない、スライド下降時の現在工程位相と当該サーボプレスの上流側サーボ搬送装置に係る搬送モーション情報を参照して求めた当該時の実際搬送位置に対応する見掛工程位相とを用いて上流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別できた場合に当該サーボプレスのスライド下降工程を通常プレス運転の場合よりも遅延化する補正を行なう、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項2の発明に係るサーボプレスラインの運転制御装置は、サーボプレスとサーボ搬送装置とをワークの搬送方向に交互に配設したサーボプレスラインの運転制御装置であって、工程位相と目標スライド位置とを対応させたスライドモーション情報を記憶する第1の情報記憶手段と、この第1の情報記憶手段に記憶されたスライドモーション情報に基づき工程位相を進行させつつ前記サーボプレスのスライド位置を現在工程位相に対応する目標スライド位置に合致させるように通常プレス運転制御する通常プレス運転制御手段と、スライドモーション情報に係る工程位相と共通の工程位相と目標搬送位置とを対応させた搬送モーション情報を記憶する第2の情報記憶手段と、この第2の情報記憶手段に記憶された搬送モーション情報に基づく工程位相を進行させつつ前記サーボ搬送装置の搬送位置を現在工程位相に対応する目標搬送位置に合致させるように通常搬送運転制御する通常搬送運転制御手段と、前記サーボプレスの実際のスライド位置を直接または間接的に検出するスライド位置検出手段と、通常プレス運転制御中のスライド上昇時における現在工程位相とスライドモーション情報を参照して求めた当該時に検出された実際のスライド位置に対応する見掛工程位相とを用いてスライド上昇工程が遅れ方向状態にあるか否かを判別する上昇工程遅れ判別手段と、スライド上昇工程が遅れ方向状態にあると判別された場合に当該サーボプレスの下流側に配設されたサーボ搬送装置の搬送工程を通常搬送運転制御の場合よりも遅延化させるための補正制御を実行する下流側搬送工程遅延化補正制御手段と、前記サーボ搬送装置の前記搬送方向の実際の搬送位置を直接または間接的に検出する搬送位置検出手段と、通常プレス運転制御中のスライド下降時における現在工程位相と当該サーボプレスの上流側に配設されたサーボ搬送装置に係る搬送モーション情報を参照して求めた当該時に検出された実際の搬送位置に対応する見掛工程位相とを用いて上流側の搬送工程が遅れ方向状態にあるか否かを判別する上流側搬送工程遅れ判別手段と、上流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別された場合に当該サーボプレスのスライド下降工程を通常プレス運転制御の場合よりも遅延化させるための補正制御を実行するスライド下降工程遅延化補正制御手段と、を設けたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項3の発明は、上昇工程遅れ判別手段は現在工程位相と見掛工程位相との差が第1の設定位相範囲を逸脱した場合に上昇工程が遅れ方向状態と判別し、上流側搬送工程遅れ判別手段は現在工程位相と見掛工程位相との差が第2の設定位相範囲を逸脱した場合に上流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別するものとされている。
【0021】
さらに、請求項4の発明は、下流側搬送工程遅れ判別手段により下流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別された場合に、上流側搬送工程遅延化補正制御手段が上流側搬送工程を通常の搬送運転制御の場合よりも遅延化する補正制御を行なうように形成されている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、干渉発生を確実に防止できかつプレス生産性を最大限に向上できるサーボプレスラインの運転ができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明を確実かつ円滑に実施することができることに加え、さらに具現化が容易でかつ取扱いが簡単である。また、請求項3の発明によれば、請求項2の発明の場合と同様な効果を奏することができることに加え、さらに一段と安定した遅延化制御を行なえる。
【0024】
請求項4の発明によれば、請求項2および3の各発明の場合と同様な効果を奏することができることに加え、さらにサーボプレスを中心として両側に配設されたサーボ搬送装置間の干渉を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
本サーボプレスラインの運転制御装置は、第1の情報記憶手段64Aと通常プレス運転制御手段(61,63)と第2の情報記憶手段64Bと通常搬送運転制御手段(61,63)とスライド位置検出手段(23、61、63)と上昇工程遅れ判別手段(61,63)と下流側搬送工程遅延化補正制御手段(61,63)と搬送位置検出手段(52、61、63)と上流側搬送工程遅れ判別手段(61,63)とスライド下降工程遅延化補正制御手段(61,63)とを具備し、スライドモーション情報に基づく工程位相(ti)を進行させつつサーボプレス10のスライド位置(θai)を目標スライド位置(θsi)に合致させる通常プレス運転を実行可能かつ搬送モーション情報に基づく工程位相(ti)を進行させつつサーボ搬送装置30の搬送位置Xaiを目標搬送位置Xsiに合致させる通常搬送運転を実行可能で、スライド上昇工程が遅れ方向状態にある場合に下流側サーボ搬送装置30Dの搬送工程(Tr11)を通常搬送運転の場合よりも遅延化する補正を実行可能かつ上流側搬送工程(Tr41)が遅れ方向状態にある場合にサーボプレス30のスライド下降工程を通常プレス運転の場合よりも遅延化する補正を実行可能に形成されている。
【0027】
本サーボプレスラインは、基本的な構成が図12の場合と同様で、サーボプレス10とサーボ搬送装置30とがワーク35の搬送方向(X方向)に交互に配設されている。また、X方向の上流側に配設されたサーボプレス(上流側サーボプレスと言う場合もある。)10Uおよび下流側に配設されたサーボプレス(下流側サーボプレスと言う場合もある。)10Dの昇降工程と、これら間に配設されたサーボ搬送装置30の搬送工程との関係は図3に示す如く通りであり、基本的な搬送工程は図13の場合と同様である。
【0028】
図1は、X方向の上流側に配設されたサーボ搬送装置(上流側サーボ搬送装置と言う場合もある。)30Uと、下流側に配設されたサーボ搬送装置(下流側サーボ搬送装置と言う場合もある。)30Dと、これら間に配設されたサーボプレス10との構成および制御関係を説明するためのブロック図である。
【0029】
サーボプレス10は、プレスコントローラ25(制御部26、メモリ部27)によってプレスモータ21を回転制御してクランク軸を回転駆動することにより、スライド12を昇降駆動(プレス運転)される。プレスコントローラ25は、入力された統括制御信号Scの一部であるプレス制御信号Scpに基づきサーボモータ21を回転制御する。なお、プレスモータ21はACサーボモータであるが、モータの種類はこれに限定されない。搬送モータ51の場合も同様に限定されない。
【0030】
プレスモータ21に連結されたエンコーダ22は、プレスモータ21の回転角度量を検出するとともにスライド12の位置フィードバック信号Spおよび速度フィードバック信号Svを生成しつつプレスコントローラ25に帰還入力する。クランク機構(図示省略)のクランク軸に直接または間接的に連結されたエンコーダ23は、検出したクランク角度θに相当する信号Sθを上位コントローラ60に入力する。上位コントローラ60は、検出入力されたクランク角度θをスライド位置Pとして取り扱う。
【0031】
各サーボ搬送装置30(30U、30D)は、図12に示した構造(構成)と同じ構造とされ、中立位置Zに固定された本体31にX方向に往復移動可能な搬送体32が装着されかつ左右の吸着手段33を往復移動させることでワーク35を搬送することができる。なお、サーボ搬送装置30の種類・構造はこれに限定されない。
【0032】
搬送コントローラ55(制御部56、メモリ部57)は、入力された統括制御信号Scの一部である搬送制御信号Sct(Sctu、Sctd)に基づき搬送モータ51を回転制御することにより、搬送体32を左右移動駆動(搬送運転)する。この搬送モータ51に連結されたエンコーダ52は、搬送モータ51の回転角度量を検出するとともに位置フィードバック信号Spおよび速度フィードバック信号Svを変換生成しつつ搬送コントローラ55に帰還入力する。
【0033】
表示操作部70は、従来例(70P)の場合と同様な表示部71と操作部72とからなる。タッチパネルとして両者(72、73)を一体的に形成することができる。
【0034】
上位コントローラ60は、統括制御部61、制御部(制御メモリ63、情報メモリ64、その他のメモリ)62およびインターフェイス部65を含み、全サーボプレス10およびサーボ搬送装置30を統括管理する。なお、最上位機器(PC)については、図示省略した。
【0035】
ここに、統括制御部61は、CPU、クロック回路等を含みプレスライン全体の統括制御を司る。制御メモリ63は主に不揮発性メモリから形成され、統括管理制御プログラムをはじめ詳細後記の各種手段(検出手段、判別手段、補正手段および処理手段など)に関する当該各制御プログラム(例えば、判別制御プログラム)を格納している。つまり、制御プログラムを記憶保持する制御メモリ63と当該制御プログラムを実行する統括制御部61とから、上記の各手段(例えば、通常プレス運転制御手段)は形成されている。もっとも、上位コントローラ60で統括管理されることを条件に、各コントローラ25、55にその一部を分担させ、あるいは一部の手段に関してはコントローラ25、55から形成してもよい。
【0036】
情報メモリ64は、工程位相と目標スライド位置とを対応させたスライドモーション情報を記憶する第1の情報記憶手段64Aと、工程位相(スライドモーション情報に係る工程位相と共通)と目標搬送位置とを対応させた搬送モーション情報を記憶する第2の情報記憶手段64Bとを形成する。
【0037】
スライドモーション情報は、図2(A)に示す横軸が工程位相(プレスの位相)でかつ縦軸が目標スライド位置のグラフ状情報である。各サーボプレス10のスライドモーション情報は、第1の情報記憶手段64Aにそれぞれに記憶されており、操作部72の選択操作により選択可能である。選択された各スライドモーション情報は、ワークメモリ(他のメモリ)に展開される。
【0038】
工程位相は、この実施の形態では、プレス1サイクルを0.1ごとに歩進される指標0〜359.9(具体的には時刻ti)である。スライド位置(Psi)は、スライド12の実際の上下方向位置としてもよいが、この実施の形態ではサーボプレス10のスライド駆動機構(クランク機構)との関係からクランク角度θsi(0.1度間隔の0〜359.9度)とされている。これに関連し、サーボプレス10の実際のスライド位置Piを直接または間接的に検出する手段であるスライド位置検出手段は、この実施の形態では、エンコーダ23、統括制御部61および制御メモリ63から形成され、クランク角度θiとして間接的に検出する。もとより直接検出方式として実施することができる。
【0039】
なお、図2(B)に示すグラフ状情報との関係および説明便宜のために、図2(A)に示すスライド12の位置(θ0=0)は、図3に示す下死点(位置)と等しいものとされている。また、そのときの工程位相tiを零(t0=0)として表現してある。
【0040】
各サーボ搬送装置30の搬送モーション情報は、図2(B)に示す横軸が図2(A)に示す工程位相(プレスの位相)tiと共通の工程位相(搬送装置の位相)tiでかつ縦軸が目標搬送位置Xsiのグラフ状情報である。そして、搬送モーション情報は、操作部72の選択操作により複数の中から選択可能として第2の情報記憶手段64Aに記憶されており、選択された各搬送モーション情報は当該各スライドモーション情報に対応させてワークメモリ(他のメモリ)に展開される。
【0041】
なお、各サーボ搬送装置30の搬送モーション情報は選択するだけでなく、表示部71を参照しつつ操作部72の入力操作により作成することもできる。上記のスライドモーション情報に関しても同様である。
【0042】
この搬送モーション情報に係る工程位相は、プレス1サイクルを0.1ごとに歩進される指標0〜359.9と同じ指標0〜359.9である。詳しくは、時刻tiとされている。また、目標搬送位置Xsiは、サーボ搬送装置30のX方向の位置を直接検出した値としてもよいが、この実施の形態では検出範囲が広範囲であること等から図1に示すエンコーダ52の出力(Sxu、Sxd)を所定処理した値とされている。すなわち、サーボ搬送装置30のX方向の実際の搬送位置を直接または間接的に検出する手段である搬送位置検出手段は、エンコーダ52、統括制御部61および制御メモリ63から形成され、間接的に搬送位置(Xai)を検出する。但し、直接検出方式としてもよい。
【0043】
なお、図2(A)に示すグラフ状情報との関係および説明便宜のために、図12、図13に示す中立位置Zと等しい搬送位置(Xi)を零位置(0)としてある。つまり、スタンバイ位置(基準)とする。
【0044】
ここに、搬送位置Xiとは、ワーク35を吸着していない空状態での搬入(図3に示すTr1)の場合はX方向下流側から上下方向の金型(13、17)間内に一番早く突入される下流側サーボ搬送装置30の構成部分(後端部…左側部)の位置である。空状態での搬出(Tr4)の場合は金型(13、17)間からX方向上流側に一番遅く脱出される上流側サーボ搬送装置30の構成部分(先端部…右側部)の位置である。
【0045】
また、ワーク35を吸着した状態での搬出(Tr2)時の搬送位置Xiは、金型(13、17)間からX方向下流側に一番遅く脱出されるワーク35の後端部分(左側部分)の位置であり、搬入(Tr3)の場合は金型(13、17)間に1番早く突入されるワーク35の先端部分(右側部分)の位置である。以上は、干渉防止の点から定義されている。
【0046】
図2(B)、図3(A)、図13を参照し、下流側サーボ搬送装置30Dは、図13に示す中立位置Zからその上流側に配設されたサーボプレス10Uに向かって搬送[空搬入工程Tr1(=Tr11+Tr12)]される。X方向で上流側に向かう方向である。この際、少なくとも図13に示す上・下型(13・17)間内での空搬入工程(Tr12)が開始されるまでにはスライド12の位置が当該搬入経路(高さ)を越える上方位置になければならない。つまり、スライド12の上昇工程がプレス故障等に起因して遅れている場合には、空搬入工程(Tr12)開始後にスライド12がやっと当該搬入経路(高さ)に上昇してくる事態が考えられる。かかる事態が発生すると、干渉を防止することができない。
【0047】
次いで、下流側サーボ搬送装置30Dは、プレス加工済みのワーク35を吸着した状態で中立位置Zに向かってX方向に搬送[ワーク搬出工程Tr2(=Tr21+Tr22)]される。ワーク搬出工程(Tr21)の場合、空搬入工程(Tr12)が終了した後に実行されるので、スライド12の位置が当該搬出経路(高さ)を越える上方位置(上昇時干渉領域脱出位置以上)になっている。つまり、干渉が生じる心配はない。
【0048】
その後に、これまで下流側サーボ搬送装置30Dとして機能していたサーボ搬送装置は、上流側サーボ搬送装置30Uとして機能する。すなわち、中立位置Zからスタートして下流側サーボプレス10D(図13を参照)にプレス加工済みのワーク35を運ぶためにX方向に搬送[ワーク搬入工程Tr3(=Tr31+Tr32)]される。このワーク搬入工程(Tr32)は空搬入工程(Tr12)が終了した後に実行されるので、スライド12の位置が当該搬出経路(高さ)を越える上方位置(上昇時干渉領域脱出位置以上)になっている。したがって、この場合も干渉が生じる心配はない。
【0049】
上流側サーボ搬送装置30Uは、当該ワーク35を下流側サーボプレス10Dの下型17に引き渡した後に、図3(B)、図13に示すように搬送[空搬出工程Tr4(=Tr41+Tr42)]され、中立位置Zに戻される。この際、故障等により空搬出工程(Tr41)が遅速化している場合[搬送位置が未だ上・下型(13・17)間内に存在している。]において、スライド下降工程(上死点から下死点に向かう。)が通常進行しつつスライド位置が下降時干渉領域突入位置よりも低い位置になったときには、干渉が生じ回避できない。
【0050】
以下に、サーボプレスラインの運転方法を説明する。
【0051】
通常プレス運転制御手段(61、63)は、図1の第1の情報記憶手段64Aから選択されたサーボプレス10ごとの図2(A)のスライドモーション情報を読み込んでワークエリア(62)に展開し、当該スライドモーション情報に基づく工程位相tiを進行させつつプレス運転制御信号(プレス指令値)Scpを出力(図6のST30〜32)する。そして、サーボプレス10の実際のスライド位置[θai(Pai)]を、図2(A)に示す現在工程位相(当該時工程位相ti)に対応する目標スライド位置θsiに合致させる通常プレス運転制御を行なう。
【0052】
すなわち、このプレス運転制御信号(プレス指令値)Scpを受信したサーボプレス10では、そのプレスコントローラ25がプレス指令値(Scp)を目標値としかつエンコーダ22からの信号Sp,Svをフィードバック信号として、プレスモータ21を回転制御する。スライド12の昇降運動が開始され、通常のプレス運転制御が実行される(ST32)。
【0053】
他方、通常搬送運転制御手段(61、63)は、図13に示す上流側サーボ搬送装置30Uに対しては、第2の情報記憶手段64Bに記憶された当該搬送モーション情報を読み込んでワークエリア(62)に展開し、この搬送モーション情報に基づく工程位相ti(スライドモーション情報の工程位相tiと共通)を進行させつつ搬送運転制御信号(搬送指令値)Sctuを出力(図4のST10〜12)する。つまり、実際の搬送位置(Xai)を、図2(B)に示す現在工程位相(当該時工程位相ti)に対応する目標搬送位置Xsiに合致させる通常搬送運転制御を行なう。
【0054】
この搬送運転制御信号(搬送指令値)Sctuを受信した上流側サーボ搬送装置30Uでは、その搬送コントローラ55が搬送指令値(Sctu)を目標値としかつエンコーダ52からの信号Sp,Svをフィードバック信号として、搬送モータ51を回転制御する。搬送体32の左右移動運動が開始され、通常の上流側搬送運転制御が実行される(ST12)。
【0055】
同様に、下流側サーボ搬送装置30Dに関しては、通常搬送運転制御手段(61,63)が通常の下流側搬送運転制御を実行する(図8のST50〜52)。
【0056】
次に、上流側搬送工程遅れ判別手段が働く。この上流側搬送工程遅れ判別手段(61,63)は、プレス運転制御中のスライド下降時における現在工程位相(ts)と当該サーボプレス10の上流側サーボ搬送装置30Uに係る搬送モーション情報を参照して求めた見掛工程位相(ta)とを用いて上流側の搬送工程が遅れ方向状態にあるか否かを判別する手段である。この見掛工程位相taは、当該時において検出された実際の搬送位置Xaに対応するものとして求められる。この実施の形態では、上流側サーボ搬送装置30Uの搬送位置がサーボプレス10の上・下金型(13、17)間内における搬送工程(Tr41)について遅れ判別する。上・下金型(13、17)間外における搬送工程(Tr42)では間に合わない。なお、搬送工程(Tr42)に先行する上・下金型(13、17)間内における搬送工程(Tr32)について遅れ判別するようにしても、実施することができる。
【0057】
具体的には、上流側搬送工程遅れ判別手段(61,63)は、まず、図5(B)を参照して通常搬送(Tr3,Tr4)運転制御中の時刻(例えば、t4)における工程位相(例えば、ts4)を読込んで記憶部62のワークエリアに記憶する(図4のST13)。また、搬送位置検出手段(52、61、63)に実際の搬送位置Xa4を検出させる(ST14)。その後、当該搬送モーション情報を利用しかつ図5(B)に点線で示したように実際の搬送位置Xa4に対応する上流側搬送工程の工程位相(つまり、見掛工程位相)ta4を求める(ST15)。引き続き、上流側搬送工程遅れ判別手段(61,63)は、制御実行上の現在工程位相ts4と見掛工程位相ta4とを用いて上流側搬送工程(Tr41)が遅れ方向状態にあるか否かを判別する。
【0058】
ここに、工程位相関係が(ta4<ts4)である場合に遅れ方向状態にあると直接的に判別するように形成してもよいが、この実施の形態では、当該時工程位相ts4と見掛工程位相ta4との差分△tsa4(=ts4−ta4)を求め(ST16)、算出された差分△tsa4が予め設定された第2の許容位相範囲(△t4)を逸脱した場合(△tsa4>△t4)に遅れ方向状態にあると判別する(ST17)。許容位相範囲△t4は、通常搬送運転時に許される値を基に選択設定記憶されかつST13でワークメモリに一時記憶されている。
【0059】
ところで、スライド12の現在位置(θi=Pi)は、図5(A)に示す当該時工程位相ti(=ts4)に対応する目標位置θs4と等しい。この目標位置θs4は、見掛工程位相ta4に対応する実際の位置θa4よりも下方(下死点)側に進んでいる。したがって、図3(B)に示すように、空搬出工程Tr4(Tr41)中でかつ上流側サーボ搬送装置30Uの後端部が上・下型(13、17)間内に所在している期間中に、スライド12が下降時干渉領域内に突入(下降)する事態(干渉)が生じ得る。
【0060】
この事態を未然防止するために、スライド下降工程遅延化補正指令手段およびスライド下降工程遅延化補正制御手段が働く。
【0061】
すなわち、スライド下降工程遅延化補正指令手段(61,63)は、当該上流側サーボ搬送装置30UのX方向下流側に配設されたサーボプレス10に上死点から下死点に向かうスライド下降工程を遅延化させる補正指令を出力する(図4のST18)。つまり、図3(B)に示す下降時干渉領域突入位置内(以下)に突入するまでに必要とする時間の遅延化(延長化)を指令する。この指令を受けたサーボプレス10では、スライド下降工程遅延化補正制御手段(61,63)が、スライド下降中(図6のST33でNO)にその指令有を確認(ST41でYES)すると、遅延化補正を実行させる(ST42)。
【0062】
ここに、スライド下降工程遅延化補正は、一つの考え方としては、図5に示す現在工程位相ts4を見掛工程位相ta4に戻してかつスライド位置を上流側サーボ搬送装置30Uの実際搬送位置Xa4に対応するスライド位置(クランク角度θa4)に戻せばよいと言える。
【0063】
しかしながら、プレスモータ21を逆回転させてスライド12を一時的に上昇させる(戻す)ことは技術的には可能である。しかし、この間にも搬送工程(Tr41)は続行(進行)しているので、スライド12を実際に逆走(上昇)させる意味合いは薄い。特に、一旦逆走(上昇)させてしまった場合は、その逆走(上昇)後に更なる逆走(下降)が必要となるので、生産性が大幅に低下してしまう。つまり、実行は許され難い。
【0064】
そこで、この実施の形態では、工程位相tiに従い遅れながらも搬出工程(Tr41)が続行されていることから、サーボプレス10側では制御上は工程位相tiに従いつつも一時的に減速(遅速化)運転できるように形成してある。つまり、搬出工程(Tr41)が追いついて来るのを待つ。この減速率や減速時間は、差分△tsa4の大きさに比例的な値に設定可能である。なお、スライド下降工程遅延化補正は、この減速方法に限定されない。例えば、一時的に1回乃至数回だけスライド途中停止させる方法である。
【0065】
サーボ特性は、負荷(例えば、プレス成形荷重、ワーク重量等のバラツキ)やプレスおよび搬送装置に係る機械的・電気的故障によって変化・変動する。しかし、サーボプレス10およびサーボ搬送装置30のサーボ特性変化は、常時的かつサイクル毎に繰返し発生することは少ない。因みに、サイクル毎に繰返し発生するのであるなら、はじめから統括管理制御しておく策を施せるわけである。
【0066】
本発明では、スライド下降工程遅延化補正によりサーボプレス10のスライド下降工程を減速運転している間に、スライド位置θiおよび搬送位置Xiがともに当該工程位相tsiに対応する状態(θsi、Xsi)に戻る方向に移行する事象を巧みに利用する。つまり、遅れ状態が自動的に解消される(図4のST17でNO)ことを利用する。
【0067】
すなわち、スライド下降工程遅延化補正解除指令手段(61,63)は、搬出工程(Tr41)の遅れが解消(△tsa4≦△t4)されたことを確認した場合(ST17でNO)に解除指令する(ST19)。この解除指令を受けた場合(図6のST41でNO)は、当該サーボプレス10の復帰処理制御手段(61、63)が働き減速運転を解除(ST43)し、通常プレス運転制御手段(61,63)による通常プレス運転(ST32)に戻す。
【0068】
なお、スライド下降工程遅延化補正解除指令手段(61,63)は、上流側サーボ搬送装置30Uのエンコーダ52の出力信号Sxuを監視して、実際の搬送位置(Xa4)がX方向の干渉領域(上・下型間)内から外部に脱出したことを確認できた場合にスライド下降工程遅延化補正の解除指令を出力させることでも実施することができる。つまり、スライド下降工程遅延化補正解除指令手段を、干渉領域脱出確認手段(61、63)から形成してもよい。
【0069】
図4の上流側サーボ搬送装置30Uおよび図6のサーボプレス10に関して、工程位相tiがtn(=359.9)に至ると当該1サイクルは終了する(図4のST20でYES、図6のST44でYES)。なお、図8の場合(ST56でYES)も同様である。
【0070】
サーボプレス10側に戻り、プレス工程遅れ判別手段(61,63)は、まず、図7を参照して通常搬送(Tr1,Tr2)運転制御中でかつスライド上昇工程中(図6のST33でYES)の時刻(例えば、t1)すなわち現在工程位相(例えば、ts1)を読込んで記憶部62のワークエリアに記憶する(ST34)。また、スライド位置検出手段(23、61、63)に、当該時における実際のスライド位置θa1を検出させる(ST35)。
【0071】
その後、検出された実際のスライド位置θa1に対応する工程位相(つまり、見掛工程位相)ta1を求める(ST36)。引き続き、スライド上昇工程遅れ判別手段(61,63)は、プレス運転制御中のスライド上昇時における制御実行上の現在工程位相ts1と見掛工程位相ta1とを用いてスライド上昇工程が遅れ方向状態にあるか否かを判別する。なお、見掛工程位相ta1は、スライドモーション情報を参照しかつ図7(A)に点線で示したように求められる。
【0072】
工程位相関係が(ta1<ts1)である場合に遅れ方向状態にあると直接的に判別するように形成してもよいが、この実施の形態では、当該時工程位相ts1と見掛工程位相ta1との差分△tsa1(=ts1−ta1)を求め(ST37)、算出された差分△tsa1が予め設定された第1の許容位相範囲(差分△t1)を逸脱した場合(△tsa1>△t1)に、遅れ方向状態にあると判別する(ST38でYES)。許容位相範囲△t1は、通常プレス運転時に許される値を基に選択設定記憶され、ST34でワークメモリに一時記憶される。
【0073】
ところで、スライド12の現在位置(θi=Pi)は、図7(A)に示す当該時工程位相ti(=ts1)に対応する目標位置θs1に等しい。この目標位置θs1は、見掛工程位相ta1に対応する実際の位置θa1よりも上方(上死点)側に進んでいる。したがって、図3(A)に示すように、スライド12が未だ空搬入経路高さ(または、上昇時干渉領域脱出位置以上に)まで上昇していないのに、空搬入工程Tr1(Tr11)中の下流側サーボ搬送装置30Dの後端部分が上・下型(13、17)間内に侵入する事態(干渉)が生じる。
【0074】
この事態を未然防止するために、下流側搬送工程遅延化補正指令手段および下流側搬送工程遅延化補正制御手段が働く。
【0075】
すなわち、下流側搬送工程遅延化補正指令手段(61,63)は、下死点から上死点に向かうスライド上昇工程が遅れ方向状態にあると判別された場合(図6のST38でYES)に、当該サーボプレス10の下流側に配設されたサーボ搬送装置30Dの搬送工程(Tr11)を通常の搬送運転制御の場合よりも遅延化させるための補正指令を出力する(ST39)。図3(A)に示すスライド13が十分な高さまで上昇するまでに必要とする時間の遅延化(延長化)を指令する。つまり、図3(A)に示す上・下型間内に侵入するまでの時間延長化を指令する。この指令を受けた下流側サーボ搬送装置30Dでは、下流側搬送程遅延化補正制御手段(61,63)が、指令有を確認する(図8のST53でYES)すると、遅延化補正を実行させる(ST54)。
【0076】
ここに、下流側搬送工程遅延化補正は、一つの考え方としては、図7に示す現在工程位相ts1を見掛工程位相ta1に戻してかつ搬送位置をサーボプレス10の実際スライド位置(クランク角度θa1)に対応する搬送位置Xa1に戻せばよいと言える。
【0077】
しかしながら、搬送モータ51を逆回転させて移動体32を一時的にX方向に移動(戻す)ことは論理的には可能であるが、実際上はイナーシャの大きさとモータ容量との関係から至難である。現実的には不可能である。しかし、この間にもスライド上昇工程は続行(進行)しているので、移動体32を逆走(戻す)させる意味合いは薄い。特に、一旦逆走(X方向で右方向)させてしまった場合は、その逆走(X方向で右方向)後に更なる逆走(X方向で左方向)させる必要があるので、生産性が低下してしまうばかりか、振動発生や機器変形などの不利も招来する虞がある。つまり、この実行は許され難い。
【0078】
そこで、この実施の形態では、工程位相tiに従い遅れながらもスライド上昇工程が続行されていることから、下流側サーボ搬送装置30D側では制御上は工程位相tiに従いつつも一時的に減速(遅速化)運転できるように形成してある。つまり、スライド12が搬送[Tr1(Tr11)]経路高さ以上になるのを待つ。この減速率や減速時間は、差分△tsa1の大きさに比例的な値に設定可能である。なお、下流側搬送工程遅延化補正は、この減速方法に限定されない。例えば、一時的に1回乃至数回だけ搬送装置を途中停止させる方法である。
【0079】
本発明では、下流側搬送工程遅延化補正により空搬入工程(Tr11)を減速運転している間に、スライド位置θiおよび搬送位置Xiがともに当該工程位相tsiに対応する状態(θsi、Xsi)に戻る方向に移行する。つまり、スライド上昇工程の遅れ状態が自動的に解消されることを利用する。すなわち、下流側搬送工程遅延化補正解除指令手段(61,63)は、スライド上昇の遅れが解消(△tsa1≦△t1)されたことを確認した場合(図6のST38でNO)に解除指令する(ST40)。この解除指令を受けた場合(図8のST53でNO)は、当該サーボ搬送装置30D側の復帰処理制御手段(61、63)が減速運転を解除(ST55)し、通常搬送運転制御手段(61、63)による通常搬送運転(ST52)に戻す。
【0080】
なお、下流側搬送工程遅延化補正解除指令手段(61,63)は、サーボプレス10のエンコーダ23の出力信号Sθを監視して、実際のスライド位置(θa1)が例えば上昇時干渉領域脱出位置以上に上昇したことを確認できた場合に下流側搬送工程(Tr11)の遅延化補正解除指令を出力させることでも実施することができる。つまり、下流側搬送工程遅延化補正解除指令手段を干渉領域脱出位置確認手段(61、63)から形成してもよい。
【0081】
以上から明らかのように、通常プレス運転制御中のスライド上昇時における現在工程位相ts1と当該時における実際のスライド位置θa1に対応する見掛工程位相ta1とを用いてスライド上昇工程が遅れ方向状態にあると判別された場合(図6のST38でYES)に当該サーボプレス10の下流側サーボ搬送装置30Dの搬送工程(Tr11)を通常搬送運転の場合よりも遅延化する補正を行なえ、スライド下降時の現在工程位相ts4と上流側サーボ搬送装置30Uの当該時における実際の搬送位置Xa4に対応する見掛工程位相ta4とを用いて上流側搬送工程(Tr41)が遅れ方向状態にあると判別された場合(図4のST17でYES)にスライド下降工程を通常プレス運転の場合よりも遅延化する補正を行なうことを特徴とするサーボプレスラインの運転制御方法を確実かつ円滑に実施することができる。
【0082】
ここに、サーボプレスライン全体については生産性向上の観点から上位コントローラ60が、各サーボプレス10および各サーボ搬送装置30を統括管理方式で運転管理する。したがって、あるプレスサイクルあるいは搬送サイクルにおいて、一部のサーボプレス10のスライド上昇工程に遅れが生じても、あるいは一部(上流側として機能する。)のサーボ搬送装置30Uの搬送工程(Tr41)に遅れが生じても、それらの変化に引きずられて統括管理姿勢を崩すことがない。よって、プレスライン全体としての運転制御の安定性を担保することができる。
【0083】
スライド上昇工程の遅れに対しては、下流側搬送工程(Tr11)を遅延化させる。すなわち、搬送工程側を減速しつつスライド12が一定高さ以上に上昇するのを待ちかつその後に下流側搬送工程(Tr11)を通常搬送工程に戻す。つまり、任意のサーボプレス10とその下流側に配設されたサーボ搬送装置30Dとを局部的な監視を伴う個別管理方式によって相互間の速度ミスマッチを自動的に補正する。これにより、干渉を確実に防止することができる。かかるスライド上昇工程の遅れは、サイクル毎に生じるわけではないので、生産性に及ぼす影響は極めて軽微である。
【0084】
また、上流側搬送工程(Tr41)の遅れに対しては、スライド下降工程を遅延化させる。すなわち、サーボプレス10を減速しつつ上流側サーボ搬送装置30Uの空搬出工程(Tr41)が追いついたら(あるいは、上流側サーボ搬送装置30Uの後端部が上・下型間から外に脱出するまで待ってから)、スライド下降工程を通常下降運転に戻す。つまり、任意の上流側サーボ搬送装置30Uとその下流側に配設されたサーボプレス10Dとを個別管理方式により相互間の速度ミスマッチを自動的に補正することで、干渉を確実に防止する。
【0085】
なお、最大限の生産性向上を企図して、比較的低速側のサーボ搬送装置30を最高速モードで搬送運転できるように設定しかつ比較的高速側のサーボプレス10はこのサーボ搬送装置30の最高速モードでの搬送運転に対応するスライド速度(サイクル)でプレス運転可能に設定することができるので、搬送速度およびスライド速度が通常運転の場合よりも高くなること(高速変化)はない。つまり、上記2種類(下流側搬送工程およびスライド下降工程)の個別管理方式(遅延化補正)で干渉を防止でき、統括管理に大きな影響をあたえない。
【0086】
因みに、サーボ搬送装置30の図3(B)に示す空搬送工程Tr1(Tr11)、ワーク搬出工程Tr2およびワーク搬入工程Tr3が遅れた場合、スライド12の位置は予定時刻までに上昇時干渉領域脱出位置以上に進行しているので、干渉の心配はない。また、サーボプレス10の図3(B)に示す下降時干渉領域突入位置に向かう下降工程が遅れた場合には、空搬送工程Tr4(tr41)に速度的余裕が生じるが、干渉の心配は一切ない。
【0087】
しかして、この実施の形態によれば、上記の通り請求項1に係るサーボプレスラインの運転方法を確実かつ円滑に実施することがでるので、機器干渉の発生を確実に防止できかつプレス生産性を最大限に向上できる。
【0088】
また、通常プレス運転制御手段が実際のスライド位置θaを現在工程位相に対応する目標スライド位置θsに合致させるように通常プレス運転制御可能かつ通常搬送運転制御手段が実際の搬送位置Xaを現在工程位相に対応する目標搬送位置Xsに合致させるように通常搬送運転制御可能であり、下流側搬送工程遅延化補正制御手段が上昇工程遅れ判別手段によりスライド上昇工程が遅れ方向状態にあると判別された場合に下流側搬送工程を遅延化補正制御可能かつスライド下降工程遅延化補正制御手段が上流側搬送工程遅れ判別手段により上流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別された場合にスライド下降工程を遅延化補正制御を実行可能に形成されたサーボプレスラインの運転制御装置であるから、具現化が容易でかつ取扱いが簡単である。
【0089】
また、現在工程位相と見掛工程位相との差が第1の設定位相範囲△t1を逸脱した場合に上昇工程が遅れ方向状態にあると判別可能かつ現在工程位相と見掛工程位相との差が第2の設定位相範囲△t4を逸脱した場合に上流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別可能に形成されているので、さらに一段と安定したスライド昇降制御および搬送制御を行なえる。
【0090】
さらに、個別管理方式により干渉発生を未然に防止できる構成であるから、サーボプレス10およびサーボ搬送装置30の種類や構造等のいかんに拘わらずあらゆるサーボプレスラインに採用することができる適応性が広く産業上の利用性が高い。
【0091】
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、基本的な構成・機能が第1の実施形態の場合(図1〜図8)と同様であるが、さらに図3(A)に示す下流側サーボ搬送装置30Dによる下型17からのワーク搬出工程Tr2(特に、Tr21)の開始直後(極短時間経過後)に上流側サーボ搬送装置30Uによる当該下型17へのワーク搬入工程Tr3(特に、Tr32)が終了するようにプログラムされている場合でも、上・下流側サーボ搬送装置(30U,30D)同士間の干渉を確実に防止できるように形成されている。
【0092】
下流側サーボ搬送装置30D用の通常搬送運転制御手段(61,63)は、図10に示す搬送モーション情報を読み込んでワークエリア(62)に展開し、工程位相tiを進行させつつ図1の搬送運転制御信号(搬送指令値)Sctdを出力する(図9のST60〜62)。つまり、実際の搬送位置(Xa1)を、図10に示す現在工程位相(当該時工程位相t1)に対応する目標搬送位置Xsiに合致させる通常搬送運転制御を行なう。
【0093】
この搬送運転制御信号(搬送指令値)Sctdを受信した下流側サーボ搬送装置30Dでは、その搬送コントローラ55が搬送指令値(Sctd)を目標値としかつエンコーダ52からの信号Sp,Svをフィードバック信号として、搬送モータ51を回転制御する。搬送体32の左右移動運動が開始され、通常の下流側搬送運転制御が実行される(ST62)。
【0094】
同様に、上流側サーボ搬送装置30U用の通常搬送運転制御手段(61、63)は、通常の上流側搬送運転制御を実行する(図11のST80〜82)。
【0095】
ここに、下流側搬送工程遅れ判別手段(61,63)は、図10を参照して通常のワーク搬出工程Tr2(Tr21)に先立つ空搬入搬送工程(Tr12または/およびTr11)運転制御中の時刻(t1)における工程位相(ts1)を読込んでワークエリア(記憶部62)に記憶する(図9のST63)。また、搬送位置検出手段(52、61、63)に実際の搬送位置Xa1を検出させる(ST64)。
【0096】
その後、当該搬送モーション情報を利用しかつ図10に点線で示したように検出実際搬送位置Xa1に対応する下流側搬送工程Tr1の見掛工程位相ta1を求める(ST65)。引き続き、下流側搬送工程遅れ判別手段(61,63)は、制御実行上の工程位相ts1と該見掛工程位相ta1とを用いて下流側搬送工程(Tr12)が遅れ方向状態にあるか否かを判別する。
【0097】
この実施の形態では、ST66で算出した当該時工程位相ts1と見掛工程位相ta1との差分△tsa1(=ts1−ta1)が、予め設定された第3の許容位相範囲(△t1)を逸脱した場合に、遅れ方向状態にあると判別する(ST67でYES)。許容位相範囲(△t1)は、通常搬送運転時に許される値を基に選択設定記憶されかつST63でワークメモリに一時記憶されている。なお、位相関係が(ta1<ts1)である場合に、遅れ方向状態にあると判別するように形成してもよい。
【0098】
下流側サーボ搬送装置30Dの現在工程位相は図10に示す制御上の工程位相ts1でありかつ搬送位置は目標位置Xs1と等しくなるべきところ実際の搬送位置は検出された搬送位置Xa1である。また、実際搬送位置Xa1に対応する工程位相は見掛工程位相ta1であり、この見掛工程位相ta1は制御上の工程位相ts1よりも遅れている。
【0099】
したがって、図3(A)に示す空搬入工程Tr1(Tr11)中の下流側サーボ搬送装置30Dの後端部分が下型17に到達する以前[あるいは、ワーク搬出工程Tr2(Tr21)が運転開始される以前]に、上流側サーボ搬送装置30Uのワーク搬入工程Tr3(Tr32)が進行してワーク35の先端部が上・下型間内に侵入してくる事態が起こり得る。これでは搬送装置(または、ワーク)同士が衝突(干渉発生)することになる。
【0100】
かかる事態を未然防止するために、上流側搬送工程遅延化補正指令手段(61,63)は、上流側サーボ搬送装置30Uの搬送工程Tr3(Tr31および/またはTr32)を遅延化させる補正指令を出力する(ST68)。つまり、ワーク35の先端部が下型17に到達するまでに必要とする時間の遅延化(延長化)を指令する。この指令を受けた上流側サーボ搬送装置30Uに係る上流側搬送工程遅延化補正制御手段(61,63)は、その旨を確認する(図11のST83でYES)と、遅延化補正を実行させる(ST84)。
【0101】
ここに、第1の実施形態の場合と同じ理由で、搬送モータ51を逆回転させて移動体32を一時的にX方向の上流側方向に移動(戻す)ことは至難である。戻すことは、生産性が低下しかつ振動発生などの虞がある。そこで、下流側搬送工程Tr2(Tr21)は遅れながらも続行されていることから、上流側サーボ搬送装置30U側では制御上は工程位相tiに従いつつも上流側搬送工程Tr3(Tr31、Tr32)を一時的に減速(低速化)運転できるように形成してある。
【0102】
つまり、下流側搬送工程Tr2(Tr21)の進行によりワーク35が下型17から離れるのを待つ。この減速率や減速時間も、差分△tsa1(=ts1−ta1)の大きさに比例的な値に設定可能である。なお、上流側搬送工程遅延化補正は、この減速方法に限定されない。例えば、一時的に1回乃至数回だけ搬送装置を途中停止させる方法である。
【0103】
この上流側搬送工程遅延化補正によりワーク搬入工程Tr3を減速運転している間に、下流側の搬送位置Xiが当該工程位相tsiに対応する状態(Xsi)に戻る方向に移行する事象を巧みに利用する。つまり、下流側搬送工程Tr2(Tr21)の遅れ状態が自動的に解消される。すなわち、上流側搬送工程遅延化補正解除指令手段(61,63)は、ワーク搬出工程(Tr21)の遅れが解消(△tsa1≦△t1)されたことを確認した場合(ST67でNO)に解除指令する(ST69)。なお、この上流側搬送工程遅延化補正解除指令手段は、第1の実施形態の場合と同様に干渉領域脱出確認手段(61、63)から形成してもよい。
【0104】
この解除指令を受けた場合(図11のST83でNO)は、上流側サーボ搬送装置30U側の復帰処理制御手段(61、63)が減速運転を解除(ST85)し、通常搬送運転制御手段(61、63)による通常搬送運転(ST82)に戻す。
【0105】
図9の下流側サーボ搬送装置30Dおよび図11の上流側サーボ搬送装置30Uに関して、工程位相tiがtn(=359.9)に至と当該1サイクルは終了する(図9のST70でYES、図11のST86でYES)。
【0106】
かかる実施の形態では、サーボプレス10(スライド12)の昇降工程および下降工程が順調でも、図3(A)に示す下流側の空搬入工程Tr1(Tr11または/およびTr12)が遅れた結果として間接的にあるいは空搬出工程Tr2自体の遅れにより直接にワーク搬出工程Tr2(Tr21)が遅れる事態が発生すると、上流側のワーク搬入工程(Tr3)が順調であれば下型17上で上流側サーボ搬送装置30Uの先端部と下流側サーボ搬送装置30Dの最後部とが干渉してしまう。かかる場合に、ワーク搬入工程(Tr3)を減速(遅速化)しつつ下流側サーボ搬送装置30Dのワーク搬出工程(Tr2)が進みかつその後端部が下型17からX方向に脱出するのを待ち、その後にワーク搬入工程(Tr3)を通常の下降工程に戻す。
【0107】
つまり、任意のサーボプレス10を挟み配設された上流側サーボ搬送装置30Uとその下流側サーボ搬送装置30Dとを局部的な個別管理方式により下流側サーボ搬送装置30Dに起因する上流側サーボ搬送装置30Uとの速度ミスマッチを自動的に補正することで、搬送工程間の干渉を確実に防止することができる。
【0108】
しかして、この実施の形態によれば、第1の実施形態の場合と同様な効果を奏することができることに加え、さらに一段と両側サーボ搬送装置30U,30D間の干渉を確実に防止できる。
【0109】
なお、サーボプレス10のスライド上昇工程の遅速化および下降工程の遅速化が起こり難い条件下(例えば、サーボプレス10の容量の大きさに対して負荷が非常に小さい場合)では、サーボプレス10側との相互間補正を行なわず上・下流側サーボ搬送装置30U,30D間の補正のみでサーボプレスラインを運転をすることもできる。したがって、適応範囲を一段と拡大できる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、サーボプレスとサーボ搬送装置(乃至ワーク)との干渉を確実に防止できかつ生産性を最大限としてプレス運転することができるサーボプレスラインの提供に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するためのブロック図である。
【図2】同じく、スライドモーション情報に基づく通常プレス運転制御および搬送モーション情報に基づく通常搬送制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】同じく、サーボプレスのスライドモーションとサーボ搬送装置の搬送モーションとのタイミング関係を説明するための図である。
【図4】同じく、上流側サーボ搬送装置に関する通常搬送運転制御およびスライド下降工程に対する遅速化補正指令を説明するためのフローチャートである。
【図5】同じく、上流側サーボ搬送装置の搬送工程の遅れ判別方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】同じく、サーボプレスの通常プレス運転制御、スライド下降工程の遅延化補正制御および下流側サーボ搬送装置への搬送工程の遅延化補正指令を説明するためのフローチャートである。
【図7】同じく、上流側サーボプレスのスライド上昇工程の遅れ判別方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】同じく、下流側サーボ搬送装置の通常搬送運転制御および搬送工程の遅延化補正制御を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る下流側サーボ搬送装置の通常搬送運転制御および上流側サーボ搬送装置への搬送工程遅速化補正指令を説明するためのフローチャートである。
【図10】同じく、下流側サーボ搬送装置の搬送工程の遅れ判別方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】同じく、下流側サーボ搬送装置の通常搬送運転制御および搬送工程の遅延化補正制御を説明するためのフローチャートである。
【図12】本願発明および従来例に係るサーボプレスラインの基本的な構成を説明するための図である。
【図13】同じく、サーボ搬送装置の基本的な搬送工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0112】
10 サーボプレス
12 スライド
21 プレスモータ
22 エンコーダ
23 エンコーダ(クランク角度検出手段…スライド位置検出手段)
25 プレスコントローラ
30 サーボ搬送装置
35 ワーク
51 搬送モータ
52 エンコーダ(搬送位置検出手段)
55 搬送コントローラ
60 上位コントローラ
61 統括制御部(通常プレス運転制御手段、通常搬送運転制御手段、スライド位置検出手段、上昇工程遅れ判別手段、下流側搬送工程遅延化補正制御手段、搬送位置検出手段、上流側搬送工程遅れ判別手段、スライド下降工程遅延化補正制御手段)
62 記憶部
63 制御メモリ(通常プレス運転制御手段、通常搬送運転制御手段、スライド位置検出手段、上昇工程遅れ判別手段、下流側搬送工程遅延化補正制御手段、搬送位置検出手段、上流側搬送工程遅れ判別手段、スライド下降工程遅延化補正制御手段)
64 情報メモリ
64A 第1の情報記憶手段
64B 第2の情報記憶手段
70 表示操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボプレスとサーボ搬送装置とをワークの搬送方向に交互に配設したサーボプレスラインの運転方法であって、
スライドモーション情報に基づく工程位相を進行させつつ前記サーボプレスのスライド位置を工程位相に対応する目標スライド位置に合致させる通常プレス運転を行ないかつ搬送モーション情報に基づく該工程位相と共通の工程位相を進行させつつ前記サーボ搬送装置の搬送位置を工程位相に対応する目標搬送位置に合致させる通常搬送運転を行ない、
スライド上昇時の現在工程位相とスライドモーション情報を参照して求めた当該時の実際スライド位置に対応する見掛工程位相とを用いてスライド上昇工程が遅れ方向状態にあると判別できた場合に当該サーボプレスの下流側サーボ搬送装置の搬送工程を通常搬送運転の場合よりも遅延化する補正を行ない、
スライド下降時の現在工程位相と当該サーボプレスの上流側サーボ搬送装置に係る搬送モーション情報を参照して求めた当該時の実際搬送位置に対応する見掛工程位相とを用いて上流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別できた場合に当該サーボプレスのスライド下降工程を通常プレス運転の場合よりも遅延化する補正を行なう、
サーボプレスラインの運転方法。
【請求項2】
サーボプレスとサーボ搬送装置とをワークの搬送方向に交互に配設したサーボプレスラインの運転制御装置であって、
工程位相と目標スライド位置とを対応させたスライドモーション情報を記憶する第1の情報記憶手段と、
この第1の情報記憶手段に記憶されたスライドモーション情報に基づき工程位相を進行させつつ前記サーボプレスのスライド位置を現在工程位相に対応する目標スライド位置に合致させるように通常プレス運転制御する通常プレス運転制御手段と、
スライドモーション情報に係る工程位相と共通の工程位相と目標搬送位置とを対応させた搬送モーション情報を記憶する第2の情報記憶手段と、
この第2の情報記憶手段に記憶された搬送モーション情報に基づく工程位相を進行させつつ前記サーボ搬送装置の搬送位置を現在工程位相に対応する目標搬送位置に合致させるように通常搬送運転制御する通常搬送運転制御手段と、
前記サーボプレスの実際のスライド位置を直接または間接的に検出するスライド位置検出手段と、
通常プレス運転制御中のスライド上昇時における現在工程位相とスライドモーション情報を参照して求めた当該時に検出された実際のスライド位置に対応する見掛工程位相とを用いてスライド上昇工程が遅れ方向状態にあるか否かを判別する上昇工程遅れ判別手段と、
スライド上昇工程が遅れ方向状態にあると判別された場合に当該サーボプレスの下流側に配設されたサーボ搬送装置の搬送工程を通常搬送運転制御の場合よりも遅延化させるための補正制御を実行する下流側搬送工程遅延化補正制御手段と、
前記サーボ搬送装置の前記搬送方向の実際の搬送位置を直接または間接的に検出する搬送位置検出手段と、
通常プレス運転制御中のスライド下降時における現在工程位相と当該サーボプレスの上流側に配設されたサーボ搬送装置に係る搬送モーション情報を参照して求めた当該時に検出された実際の搬送位置に対応する見掛工程位相とを用いて上流側の搬送工程が遅れ方向状態にあるか否かを判別する上流側搬送工程遅れ判別手段と、
上流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別された場合に当該サーボプレスのスライド下降工程を通常プレス運転制御の場合よりも遅延化させるための補正制御を実行するスライド下降工程遅延化補正制御手段と、
を設けた、サーボプレスラインの運転制御装置。
【請求項3】
前記上昇工程遅れ判別手段が前記現在工程位相と当該時に検出された実際のスライド位置に対応する前記見掛工程位相との差が第1の設定位相範囲を逸脱した場合に上昇工程が遅れ方向状態にあると判別し、かつ上流側搬送工程遅れ判別手段が前記現在工程位相と当該時に検出された実際の搬送位置に対応する前記見掛工程位相との差が第2の設定位相範囲を逸脱した場合に上流側の搬送工程が遅れ方向状態にあると判別するものとされている、請求項2記載のサーボプレスラインの運転制御装置。
【請求項4】
前記サーボプレスの下流側に配設されたサーボ搬送装置に関して検出された実際の搬送位置と前記第2の情報記憶手段に記憶された搬送モーション情報中の当該時工程位相に対応する目標搬送位置とを用いて下流側搬送工程が遅れ方向状態にあるか否かを判別する下流側搬送工程遅れ判別手段と、
下流側搬送工程が遅れ方向状態にあると判別された場合に当該サーボプレスの上流側に配設されたサーボ搬送装置の上流側搬送工程を通常搬送運転制御の場合よりも遅延化する補正制御を行なう上流側搬送工程遅延化補正制御手段と、
を設けた、請求項2または3記載のサーボプレスラインの運転制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−12511(P2010−12511A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176972(P2008−176972)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】