説明

サーマルヘッドおよびサーマルプリンタ

【課題】基板に生じたクラックを精度よく、簡単に検知できることで、製造効率の向上したサーマルヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルヘッドX1は、基板7と、基板7上に設けられた複数の発熱部9と、基板7上に設けられており、電子部品を搭載するための端子電極8を含む配線電極10とを備え、基板7が、平面視して矩形状をなしており、配線電極10は、基板7の長辺に沿って設けられているため、配線電極10の断線を電気的に検知することにより、基板7に生じたクラックの有無を検知することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリ、ビデオプリンタあるいはカードプリンタ等の印画デバイスとして、種々のサーマルヘッドが提案されている。これらのサーマルヘッドは、基板と、基板上に設けられた複数の発熱部と、基板上に配線電極と、を備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。なお、この配線電極は、電子部品と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−024232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなサーマルヘッドにおいては、基板にクラックが生じた場合に、目視によりクラックの有無を検知するため、検知精度が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のサーマルヘッドにおける一態様は、基板と、基板上に設けられた複数の発熱部と、基板上に設けられており、電子部品を搭載するための端子電極を含む配線電極とを備え、基板が、平面視して矩形状をなしており、配線電極は、基板の長辺に沿って設けられている。
【0006】
また、本発明のサーマルプリンタにおける一態様は、上記のサーマルヘッドと、発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、発熱部上に記録媒体を押圧するプラテンローラとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板に生じたクラックの有無を、配線電極により検知することができ、検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のサーマルヘッドの一態様を示す平面図である。
【図2】図1に示すI−I線断面図である。
【図3】図1に示すII−II線断面図である。
【図4】本発明のサーマルプリンタの一態様示す概略構成図である。
【図5】本発明のサーマルヘッドの他の一態様を示す平面図である。
【図6】本発明のサーマルヘッドのさらに他の一態様を示す平面図である。
【図7】本発明のサーマルヘッドのさらに他の一態様を示す平面図である。
【図8】本発明のサーマルヘッドのさらに他の一態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、本発明のサーマルヘッドの一態様について、図面を参照しつつ説明する。図1〜3に示すように、本実施形態のサーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、
FPC5という)とを備えている。なお、図1では、FPC5の図示を省略し、FPC5が配置される領域を一点鎖線で示す。
【0010】
放熱体1は、板状に形成されており、平面視して長方形状をなしている。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。また、放熱体1の上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。
【0011】
ヘッド基体3は、平面視で長方形状の基板7と、基板7上に設けられ、基板7の長手方向に沿って配列された複数の発熱部9と、発熱部9の配列方向に沿って基板7上に並べて配置された複数の駆動IC11とを備えている。
【0012】
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
【0013】
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。蓄熱層13は、基板7の上面全体に形成された下地部13aと、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状の隆起部13bとを有している。隆起部13bは、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された後述する保護層25に良好に押し当てるように機能する。
【0014】
また、蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することで形成される。
【0015】
図2,3に示すように、蓄熱層13の上面には、電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、蓄熱層13と、後述する共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21、グランド電極20および配線電極10との間に介在し、図1に示すように、平面視において、これらの共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21、グランド電極20および配線電極10と同形状の領域(以下、介在領域という)と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の領域(以下、露出領域という)とを有している。なお、図1では、電気抵抗層15の介在領域は、共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21、グランド電極20および配線電極10で隠れている。
【0016】
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図1に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されて発熱部9を構成している。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1で簡略化して記載しているが、例えば、600dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。
【0017】
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
【0018】
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、共通電極17、複数の個別電極19、複数のIC−FPC接続電極21、グランド電極20および複数の配線電極10が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21、グランド電極20および配線電極10は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、ア
ルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
【0019】
共通電極17は、複数の発熱部9とFPC5とを接続するためのものである。図1に示すように、共通電極17は、基板7の一方の長辺に沿って延びる主配線部17aと、基板7の一方および他方の短辺のそれぞれに沿って延び、一端部が主配線部17aに接続された2つの副配線部17bと、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延び、先端部が各発熱部9に接続された複数のリード部17cとを有している。そして、共通電極17は、副配線部17bの他端部がFPC5に接続されることにより、FPC5と各発熱部9との間を電気的に接続している。
【0020】
複数の個別電極19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1〜3に示すように、各個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、他端部が駆動IC11の配置領域に配置されるように、各発熱部9から駆動IC11の配置領域に向かって個別に帯状に延びている。そして、各個別電極19の他端部が駆動IC11に接続されることにより、各発熱部9と駆動IC11との間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
【0021】
複数のIC−FPC接続電極21は、駆動IC11とFPC5とを接続するためのものである。図1〜3に示すように、各IC−FPC接続電極21は、一端部が駆動IC11の配置領域に配置され、他端部が基板7の長手方向における端部に位置する長辺の近傍に配置されるように、帯状に延びている。そして、複数のIC−FPC接続電極21は、一端部が駆動IC11に接続されるとともに、他端部がFPC5に接続されることにより、駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。また、IC−FPC接続電極21は駆動IC11間を電気的接続している。
【0022】
より詳細には、各駆動IC11に接続された複数のIC−FPC接続電極21は、異なる機能を有する複数の電極で構成されている。具体的には、複数のIC−FPC接続電極21は、例えば、駆動IC11を動作させるための電圧を印加するIC電源電極と、駆動IC11および駆動IC11に接続された個別電極19を0〜1Vのグランド電位に設定するグランド電極配線20と、後述する駆動IC11内のスイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11を動作させるための電気信号を供給するためのIC制御電極等で構成されている。
【0023】
駆動IC11は、図1〜3に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部とIC−FPC接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に複数のスイッチング素子を有しており、各スイッチング素子がオン状態のときに通電状態となり、各スイッチング素子がオフ状態のときに不通電状態となる公知のものを用いることができる。
【0024】
各駆動IC11は、各駆動IC11に接続された各個別電極19に対応するように、内部に複数のスイッチング素子(不図示)が設けられている。そして、図3に示すように、各駆動IC11は、各スイッチング素子に接続された一方の接続端子11a(以下、第1接続端子11aという)が個別電極19に接続されており、各スイッチング素子に接続されている他方の接続端子11b(以下、第2接続端子11b)がIC−FPC接続電極21の上記のグランド電極20に接続されている。これにより、駆動IC11の各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極19とIC−FPC接続電極21のグランド電極20とが電気的に接続される。
【0025】
配線電極10は、基板7上に設けられており、電子部品を搭載するための端子電極8を含む電極である。電子部品としては、例えば、抵抗、測温部材等が挙げられるが、本実施形態においては、電子部品が測温部材12である例について説明する。なお、測温部材12については後述する。
【0026】
配線電極10は、測温部材12とFPC5とを電気的に接続する機能を有している。具体的には、図1〜3に示すように、配線電極10は、一端部である端子電極8が基板7の長手方向における中央部に位置する測温部材12の配置領域に配置され、他端部が基板7の長手方向における端部に位置する長辺の近傍に配置されるように、帯状に延びている。そして、配線電極10は、一端部である端子電極8が測温部材12に接続されるとともに、他端部がFPC5に接続されることにより、測温部材12とFPC5とを電気的に接続している。なお、基板7の長辺とは、FPC5と接続される側の長辺を示し、配線電極10は、基板7のFPC5と接続される側の長辺に沿って設けられている。
【0027】
配線電極10は、後述するFPC5のプリント配線と接続される正電極10aと、0〜1Vのグランド電位に接続される負電極10bとを備えている。そして、正電極10aは、基板7の長手方向において、中央部から一方の端部に向けて、基板7の長辺に沿って延びるように設けられている。また、負電極10bは、基板7の長手方向において、中央部から他方の端部に向けて、基板7の長辺に沿うように延びるように設けられている。そのため、図1に示すように、配線電極10は、基板7の長辺とグランド電極20との間に位置し、基板7の長辺に沿って設けられることになる。
【0028】
ここで、基板7を大きな母基板から分割した際あるいは運搬等のハンドリングの際に、基板7にクラックあるいは欠け(以下、「クラック等」と言う)が生じる場合がある。そして、基板7にクラック等が生じると、基板7の耐久性および効率性が低下するため、基板7にクラック等が生じた製品は検査により不良として選別される。このような検査として、従来のサーマルヘッドでは、目視による外観検査を行っており、不良の検知精度が低いという問題があった。
【0029】
これに対して、サーマルヘッドX1においては、基板7の長辺に沿って配線電極10が設けられているため、基板7の長辺近傍にクラック等が生じると、基板7の長辺近傍に形成された配線電極10に欠損が生じて、配線電極10が断線することになる。そのため、配線電極10の通電検査を行うことで、配線電極10の断線を確認することができ、基板7にクラック等の有無を正確に検知することができる。これにより、クラック等の有無の検知精度を向上させることができる。
【0030】
次に、テスターを用いた通電検査方法について例示する。配線電極10の正電極10aにおける端子電極8にテスターの一方の端子を接続し、配線電極10の正電極10aにおけるFPC5と接続される位置にテスターの他方の端子を接続する。これにより、配線電極10の正電極10aの断線を検知することができる。なお、負電極10bについても同様の方法により、断線を検知することができる。
【0031】
ここで、配線電極10の幅は、30〜200μmであることが好ましい。配線電極10の幅が30〜200μmであることから、基板7にクラック等が生じた場合に断線することとなり、基板7のクラック等を正確に検知することができる。
【0032】
また、図1に示すように、配線電極10は、グランド電極20が間に介在した状態でIC−FPC接続電極21と隣り合うように配置されている。そのため、IC−FPC接続電極21にクロック信号あるいはデータ信号等の周波数が高い信号が送られた場合におい
ても、配線電極10とIC−FPC接続電極21との間にグランド電位に設定されたグランド電極20が配置されていることから、配線電極10に高周波が作用することを低減することができる。そのため、配線電極10を流れる信号にノイズが生じることを低減することができる。
【0033】
測温部材12は、チップ型の電子部品を用いることができ、チップ型サーミスタ等を例示することができる。測温部材12の正端子は、配線電極10の正電極10aにおける端子電極8に接続され、測温部材12の負端子は、配線電極10の負電極10bにおける端子電極8に接続されている。
【0034】
測温部材12は、サーマルヘッドX1の温度を測温し、測温した温度情報を、配線電極10を介して外部に設けられた制御部(不図示)に伝達する。制御部は、温度情報に基づいた制御信号をIC−FPC接続電極21を介して駆動IC11に送り、駆動IC11が制御信号に基づいた制御を行っている。
【0035】
なお、図1においては、駆動IC11が2つ搭載された例を示したが、駆動IC11を3つ以上搭載してもよく、駆動IC11を1つのみ搭載してもよい。特に、駆動IC11を3つ以上搭載する長手方向に長い基板7を用いるサーマルヘッドにおいては、基板7の長辺に沿った配線電極10を設けることで、容易に基板7の長辺のクラック等を検出することができる。
【0036】
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21および配線電極10は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、この積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21および配線電極10は、同じ工程によって同時に形成することができる。
【0037】
図1〜3に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。なお、図1では、説明の便宜上、保護層25の形成領域を一点鎖線で示し、これらの図示を省略している。図示例では、この保護層25は、蓄熱層13の上面の左側の領域を覆うように設けられている。これにより、発熱部9、共通電極17の主配線部17a、副配線部17bの一部、リード部17cおよび個別電極19上に、保護層25が形成されている。
【0038】
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食や、印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。
【0039】
保護層25の形成材料としては、SiN、SiO、SiON、Ta、SiCまたはサイアロン等を例示することができる。なお、保護層25は、単層であってもよく、これらの複数の層を重畳させた構成としてもよい。
【0040】
また、図1〜3に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21および配線電極10を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。なお、図1では、説明の便宜上、被覆層27の形成領域を一点鎖線で示し、これらの図示を省略している。被覆層27は、共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21および配線電極10の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。被覆層27は、駆動IC11および測温部材12が搭載される位置には設けら
れておらず開口(不図示)を有している。
【0041】
被覆層27は、共通電極17および個別電極19の保護をより確実にするため、図2,3に示すように保護層25の端部に重なるようにして形成されている。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、この被覆層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
【0042】
なお、図1〜3に示すように、後述するFPC5と接続する共通電極17の副配線部17b、IC−FPC接続電極21および配線電極10の端部は、被覆層27から露出しており、FPC5が接続されるようになっている。
【0043】
また、被覆層27は、図3に示すように、駆動IC11を接続する個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、この開口部を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続された状態で、駆動IC11自体の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続部の保護のため、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることで封止されている。
【0044】
さらにまた、被覆層27は、測温部材12が搭載される位置にも開口部を有しており、測温部材12と接続する配線電極12の端子電極8は露出している。そしてこの露出した端子電極8に測温部材12が搭載されており電気的に接続されている。測温部材12においても、被覆部材29により被覆してもよい。
【0045】
FPC5は、図1〜3に示すように、ヘッド基体3の長手方向における両端部に接続されており、上記のように共通電極17の副配線部17b、各IC−FPC接続電極21および配線電極10に接続されている。このFPC5は、絶縁性の樹脂層の内部に複数のプリント配線が配線された周知のものであり、各プリント配線がコネクタ31を介して外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。このようなプリント配線は、一般に、例えば、銅箔等の金属箔、薄膜成形技術によって形成された導電性薄膜、または厚膜印刷技術によって形成された導電性厚膜によって形成されている。また、金属箔、あるいは導電性薄膜等によって形成されたプリント配線は、例えば、これらをフォトエッチング等により部分的にエッチングすることによってパターニングされている。
【0046】
より詳細には、図3に示すように、FPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に形成された各プリント配線5bがヘッド基体3側の端部で露出し、導電性接合材料である半田材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電材料(ACF)等からなる接合材32(図3参照)によって、共通電極17の副配線部17bの端部、各IC−FPC接続電極21および配線電極10の端部に接続されている。
【0047】
そして、FPC5の各プリント配線5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、共通電極17は、20〜24Vの正電位に設定された電源装置の正極側端子に電気的に接続され、個別電極19は、駆動IC11およびIC−FPC接続電極21のグランド電極20を介して、0〜1Vのグランド電位に設定された電源装置の負極側端子に電気的に接続されるようになっている。そのため、駆動IC11のスイッチング素子がオン状態のとき、発熱部9に電流が供給され、発熱部9が発熱するようになっている。
【0048】
また、同様に、FPC5の各プリント配線5bがコネクタ31を介して外部の電源装置
および制御装置等に電気的に接続されると、IC−FPC接続電極21の上記のIC電源配線は、共通電極17と同様に、正電位に設定された電源装置の正極側端子に電気的に接続されるようになっている。これにより、駆動IC11が接続されたIC−FPC接続電極21のIC電源配線とグランド電極20との電位差によって、駆動IC11に駆動IC11を動作させるための電圧が印加される。
【0049】
同様に、FPC5の各プリント配線5bがコネクタ31を介して外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、配線電極10の正電極10aは、共通電極17と同様に、正電位に設定された電源装置の正極側端子に電気的に接続される。また、配線電極10の負電極10bは、FPC5のプリント配線5bによりグランド電極20に接続され、グランド電位に設定されている。これにより、測温素子12に測温素子12を動作させるための電圧が印加される。
【0050】
また、IC−FPC接続電極21のIC電源電極あるいはIC制御電極等は、駆動IC11の制御を行う外部の制御装置に電気的に接続される。これにより、制御装置から送信された電気信号が駆動IC11に供給されるようになっている。この電気信号によって、駆動IC11内の各スイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11を動作させることで、各発熱部9を選択的に発熱させることができる。
【0051】
FPC5と放熱体1との間には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板33が設けられている。この補強板33は、FPC5の下面に両面テープや接着剤等(不図示)によって接着されることにより、FPC5を補強するように機能している。また、この補強板33が放熱体1の上面に両面テープあるいは接着剤等(不図示)によって接着されることにより、FPC5が放熱体1上に固定されている。
【0052】
サーマルヘッドX1において、配線電極10が、基板7の長辺に沿って設けられていることから、基板7にクラック等が生じた場合に、通電検査により配線電極10の導通を検査することにより、クラック等の有無を容易に検知することができる。また、測温部材12を搭載した後に行っている測温部材12の導通検査と同時に行うことができるため、検知工程を削減することができる。この場合は、配線電極10の正電極10aのFPC5と接続される位置と、配線電極10の負電極10bのFPC5と接続される位置とで導通を検査することにより、通電検査を行うことができる。この通電検査方法としては、例えば、ヘッド基体3とFPC5とを電気的に接続して、FPC5のコネクタ31に通電検査用の冶具を電気的に接続する通電検査方法を例示することができる。この場合、サーマルヘッドX1が後述するサーマルプリンタZに搭載された後、プリンタを作動させることにより生じたクラック等が生じた場合においても、クラック等を検知することができる。
【0053】
また、サーマルヘッドX1は、測温部材12が基板7の長手方向における中央部に配置されており、基板7の長手方向における両端部において配線電極10とFPC5とが電気的に接続されているとともに、配線電極10が基板7の中央部から両端部にわたって設けられている。そのため、測温部材12によりサーマルヘッドX1の温度を正確に検知することができるとともに、クラック等の有無を容易に検知することができる。さらに、ヘッド基体3とFPC5との接続箇所の電極構造を線対称とすることができ、サーマルヘッドX1の構造を簡略化することができる。
【0054】
さらに、配線電極10の正電極10aが、基板7の長手方向における一方の端部に延びて配置されており、配線電極10の負電極10bが、基板7の長手方向における他方の端部に延びて配置されていることから、配線電極10に断線が生じた場合に、正電極10a側で断線が生じたのか、負電極10b側で断線が生じたのか検知することができる。それ
により、断線が生じた原因である、基板7の長辺に生じたクラック等がどこに発生したかを容易に検知することができる。そのため、基板7の長辺に生じたクラック等の原因の究明を早期に行うことが可能となる。
【0055】
サーマルヘッドX1において、配線電極10とIC−FPC接続電極21との間にグランド電極20が設けられていることから、IC−FPC接続電極21に高い周波数の信号が流れた場合においても、配線電極10に高周波が作用することを低減することができる。特に、IC−FPC接続電極21と配線電極10との距離が近いFPC5との接続領域において、間にグランド電極20が設けられていることから、配線電極10を流れる信号に高周波が影響を与えることを有効に抑えることができる。
【0056】
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図4を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
【0057】
図4に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX1、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、このサーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
【0058】
搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図4の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが、インクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
【0059】
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧するためのものであり、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
【0060】
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給するためのものである。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給するためのものである。
【0061】
本実施形態のサーマルプリンタZは、図4に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体をサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることで、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
【0062】
<第2の実施形態>
図5を用いて、本発明の第2の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。
サーマルヘッドX2は、配線電極10の負電極10bが、ヘッド基体3上でグランド電極20と接続されている点で、サーマルヘッドX1と構成が異なり、その他の点は同様であるため、説明を省略する。なお、同一の部材については、同一の符号を付するものとして、以下同様とする。
【0063】
サーマルヘッドX2において、配線電極10の負電極10bは、基板7の中央部から、基板7の端部にわたって、基板の長辺に沿った状態で設けられている。配線電極10の負電極10bの一端である端子電極8は、基板7の長手方向における中央部に配置されており、測温部材12が搭載される。配線電極10の負電極10bの他端は、基板7の長手方向における端部に配置されており、グランド電極20と電気的に接続されている。そのため、負電極10bは、グランド電位に設定されることとなる。
【0064】
このような構成とすることにより、配線電極10の負電極10bと、FPC5のプリント配線(不図示)とをFPC5の内部で接続する必要がなくなり、FPC5の配線パターンを簡略化することができる。
【0065】
また、負電極10bが、基板7の長手方向において、基板7の長辺に沿って中央部から端部へ延在された後、グランド電極20と接続されていることから、負電極10の長辺に沿って延在した部位を用いて、基板7のクラック等を検出することができる。なお、負電極10の通電検査としては、配線電極10の負電極10bにおける端子電極8にテスターの一方の端子を接続し、配線電極10の負電極10bにおけるFPC5と接続される位置にテスターの他方の端子を接続することにより断線を検知することができる。
【0066】
さらに、配線電極10の負電極10bをFPC5により外部に引き出す必要がなく、ヘッド基体3とFPC5との接続領域の電極構造を簡略化することができる。なお、サーマルヘッドX2においては、ヘッド基体3とFPC5との接続領域におけるグランド電極20の面積を大きくする例を示したが、ヘッド基体3とFPC5との接続領域事態を小さくしてもよい。
【0067】
<第3の実施形態>
図6を用いて、本発明の第3の実施形態に係るサーマルヘッドX3について説明する。サーマルヘッドX3は、配線電極10の負電極10bが、グランド電極20と基板7の中央部にて接続されている点で、サーマルヘッドX1と構成が異なり、その他の点は同様であるため、説明を省略する。
【0068】
サーマルヘッドX3において、配線電極10の正電極10aは、基板7の長手方向における一端から他端にわたり、基板7の長辺に沿って設けられている。そして、基板7の中央部にて、基板7の長辺に沿って設けられた部位と端子電極8とが電気的に接続されている。配線電極10の負電極10bは、グランド電極20と端子電極8とが、基板7の中央部にて接続されている。そのため、配線電極10の正電極10aのみを用いて、基板7のクラック等の検出を行うことができる。
【0069】
つまり、基板7の長辺に沿って設けられた正電極10aを用いることにより、基板7の長辺のクラック等の有無を検知することができる。具体的には、配線電極10の正電極10aにおいて、基板7の長手方向における一方側の端部に配置されたFPC5と接続される位置にテスターの一方の端子を接続し、基板7の長手方向における他方側の端部に配置された正電極10aの端部にテスターの他方の端子を接続することにより、配線電極10の正電極10aの断線を検知することができる。
【0070】
このような構成とすることで、基板7の長辺のクラック等の有無の検知を正電極10a
を用いて、一度で基板7の長辺全域にわたって検知することができる。そのため、クラック等の検知精度を向上させることができる。
【0071】
<第4の実施形態>
図7を用いて、本発明の第4の実施形態に係るサーマルヘッドX4について説明する。サーマルヘッドX4は、配線電極10と基板7の長辺との間に、基板7上に形成された共通電極17、個別電極19、IC−FPC接続電極21および配線電極10と電気的に接続されていないダミー電極14が設けられている。ダミー電極14は、配線電極10に沿った状態で設けられており、基板7の長辺のFPC5と接続される領域同士の間に設けられている。その他の点は、サーマルヘッドX3と同様であり説明を省略する。
【0072】
サーマルヘッドX4において、配線電極10と基板7の長辺との間にダミー電極14が設けられていることから、基板7の長辺にクラック等が生じた場合においても、ダミー電極14により配線電極10が断線することを抑えることができる。
【0073】
さらに、ダミー電極14を用いて、基板7の長辺のクラック等の有無を検出することができる。具体的には、ダミー電極14において、基板7の長手方向における一方側の端部に配置されたダミー電極14の一端部にテスターの一方の端子を接続し、基板7の長手方向における他方側の端部に配置されたダミー電極14の他端部にテスターの他方の端子を接続することにより、ダミー電極14の断線を検知することができる。それにより、基板7のクラック等の有無を検出することができる。
【0074】
なお、サーマルヘッドX4においては、ダミー電極14と配線電極10とが電気的に接続されていない例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、ダミー電極14と配線電極10とを電気的に接続してもよい。その場合においては、測温部材12とFPC5とを接続する配線電極10の接続信頼性を向上させることができる。
【0075】
なお、ダミー電極14を基板7の長手方向における一端から他端にわたって設けてもよい。つまり、FPC5とヘッド基体3とが接続される領域にまでダミー電極14を設けることにより、FPC5と接続される共通電極17の端部、IC−FPC接続電極21の端部、および配線電極10の端部に欠損が生じることを抑えることができる。
【0076】
<第5の実施形態>
図8を用いて、本発明の第5の実施形態に係るサーマルヘッドX5について説明する。サーマルヘッドX5は、配線電極10の負電極10bが、グランド電極20と基板7の中央部にて接続されており、配線電極10の正電極10aが、共通電極17およびIC−FPC接続電極21と、FPC5とが接続される領域まで設けられている点で、サーマルヘッドX3と構成が異なり、その他の点は同様であるため、説明を省略する。
【0077】
サーマルヘッドX5において、配線電極10の正電極10aは、一方のヘッド基体3とFPC5とが接続される領域から、他方のヘッド基体3とFPC5とが接続される領域にわたって、基板7の長辺に沿った状態で設けられている。そして、基板7の長手方向における中央部にて測温部材12と接続されている。
【0078】
このように、配線電極10の正電極10aが、基板7の長辺の一端から他端にかけて設けられていることから、基板7の長辺の全域にわたってクラック等の有無を検知することができる。さらに、FPC5と配線電極10との接続面積を増加させることができ、接続信頼性を向上させることができる。
【0079】
なお、配線電極10の正電極10aを囲むように、グランド電極20を設けてもよい。
具体的には、FPC5との接続領域において、グランド電極20が、IC−FPC接続電極21と配線電極10との間に配置され、配線電極10とグランド電極とが沿うように配置することで、配線電極10にIC−FPC接続電極21からの高周波が影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZを示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X5をサーマルプリンタに用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X5を組み合わせてもよい。
【0081】
例えば、本実施形態では、基板7の上面に発熱部9が設けられた平面ヘッドの例を例示して説明したが、発熱部9が端面に設けられた端面ヘッドについて、本発明を適用してもよい。
【0082】
また、基板7の一方の長辺に沿った配線電極10を例示したが、一方の長辺だけではなく他方の長辺に沿った配線電極を設けてもよい。加えて、短辺に沿った配線電極10を設けてもよく、平面視して、四辺のすべてに沿った配線電極10を設けてもよい。それにより、基板7のクラック等の有無を容易に検知することができる。
【符号の説明】
【0083】
X1〜X5 サーマルヘッド
Z サーマルプリンタ
1 放熱体
3 ヘッド基体
5 フレキシブルプリント配線基板
7 基板
9 発熱部
10 配線電極
11 駆動IC
12 測温部材
14 ダミー電極
17 共通電極
19 個別電極
20 グランド電極
21 IC−FPC接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられた複数の発熱部と、
前記基板上に設けられており、電子部品を搭載するための端子電極を含む配線電極と、を備え、
前記基板が、平面視して矩形状をなしており、
前記配線電極は、前記基板の長辺に沿って設けられていることを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項2】
前記端子電極が、前記基板の長手方向における中央部に配置されており、
前記基板の長手方向における端部において、前記配線電極と外部基板とが電気的に接続され、
前記配線電極が、前記基板の長手方向における中央部から端部にわたって設けられている、請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
前記配線電極の正電極が、前記基板の長手方向における一方の端部に延びて配置されており、
前記配線電極の負電極が、前記基板の長手方向における他方の端部に延びて配置されている、請求項2に記載のサーマルヘッド。
【請求項4】
前記配線電極が、前記基板の長辺に沿って複数設けられており、
前記基板の縁と前記配線電極との間に、ダミー電極が設けられている、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
【請求項5】
前記発熱部を発熱駆動させる駆動ICと、
該駆動ICを駆動させるための信号電極と、
グランド電位に設定されたグランド電極と、をさらに備え、
前記信号電極と前記配線電極との間に、前記グランド電極が設けられている、請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
【請求項6】
前記信号電極および前記グランド電極と、前記外部基板とが電気的に接続される領域に、前記配線電極が設けられている、請求項5に記載のサーマルヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサーマルヘッドと、前記発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、前記発熱部上に記録媒体を押圧するプラテンローラとを備えることを特徴とするサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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