シャッター装置
【課題】
電気的制御を行わずに機械的にブレーキを復帰させ、かつ、復帰ワイヤに傷が付くようなことを可及的に防止する。
【解決手段】
ブレーキの解放・復帰を行う作動手段と、作動手段にブレーキ解放させるべく当該作動手段に連結された復帰ワイヤW2、W3と、シャッターカーテン下端の座板4に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転ドラム10と、座板4に設けられ、回転ドラム10に係止して回転を規制する回動ロック部材11と、を備え、座板4は、上面と、対向状の側面と、を備えた上座板4aと、上座板4aに対して相対的に上動可能な下座板4bとからなり、回転ドラム10は、上座板4aの端部以外の開口部の露出する部位に位置して、上側が上座板の前記上面の上方に位置し、下側が上座板4aに形成された開口を介して前記上面と前記対向状の側面とで囲まれた上座板4a内の空間に突出するように設けてある。
電気的制御を行わずに機械的にブレーキを復帰させ、かつ、復帰ワイヤに傷が付くようなことを可及的に防止する。
【解決手段】
ブレーキの解放・復帰を行う作動手段と、作動手段にブレーキ解放させるべく当該作動手段に連結された復帰ワイヤW2、W3と、シャッターカーテン下端の座板4に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転ドラム10と、座板4に設けられ、回転ドラム10に係止して回転を規制する回動ロック部材11と、を備え、座板4は、上面と、対向状の側面と、を備えた上座板4aと、上座板4aに対して相対的に上動可能な下座板4bとからなり、回転ドラム10は、上座板4aの端部以外の開口部の露出する部位に位置して、上側が上座板の前記上面の上方に位置し、下側が上座板4aに形成された開口を介して前記上面と前記対向状の側面とで囲まれた上座板4a内の空間に突出するように設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させるシャッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防火シャッタ−は、防災盤からの信号で自動閉鎖装置が作動してブレ−キを解放し、シャッターカーテンが自重降下して建物開口部を閉鎖するようになっている。また、自重降下式シャッターには、手動でシャッターカーテンを自重降下させる手動式シャッターもある。このような自重降下式シャッターには、自重降下するシャッターカーテンに避難者が挟まれるのを防止するために、いわゆる避難時停止装置が設けられる。
【0003】
自動閉鎖装置は非常電源からの通電(DC24V)によって作動して電気的にブレーキを解放するものであり、避難時停止装置は、シャッターカーテン下端に設けた座板スイッチを備え、降下するシャッターカーテンの下端の座板に障害物が当たったことを座板スイッチが検知し、自動閉鎖装置がブレーキを解放状態に維持するための通電を電気的に遮断することで、ブレーキを復帰させて巻取シャフトの回転を停止してシャッターカーテンの降下を停止させる。電気制御方式の停止装置は、例えば特許文献1に記載されている。しかしながら、電気制御方式では、シャッター工事に加えて電気工事が必要となり、工事が大掛かりになると共に、既設の手動式シャッターに避難時停止装置を後付けすることも困難である。
【0004】
また、自重降下するシャッターカーテンを機械的に停止させる装置も提案されている。特許文献2には、シャッターカーテンを自重降下させる防火シャッターにおいて、該自動閉鎖装置は防災盤からの信号によって待機位置から作動位置に移動して該ブレーキを解放させる作動部を有し、一方のガイドレール内には上下方向に延出すると共に、下端側が該ガイドレール下方部位に固定され、上端側が該作動部に連結されているワイヤを配設し、該シャッターカーテンの下端には障害物検知部材を上下動自在に吊持させ、該障害物検知部材が障害物に当接して上動することに連繋して該ワイヤを引く手段を備えてなり、該障害物検知部材が障害物に当接した際には、該ワイヤが引かれて該作動部を待機位置側に移動させて該ブレーキを復帰させ、該障害物が取り除かれた後は該障害物検知部材が下動して該ワイヤの引きが解除され、該作動部が作動位置に移動して該ブレーキを解放することを特徴とする防火シャッターにおける安全装置、が開示されている。しかしながら、このものは、安全装置の必須構成要素であるワイヤがガイドレール内に延出しており、ワイヤの取り付け作業が煩雑である上、シャッターカーテンの昇降時に、シャッターカーテン端部がワイヤに接触し、ワイヤに傷を付けてしまうおそれもある。ブレーキ復帰時には、復帰ワイヤには所定の張力が作用するので、ワイヤが劣化して強度が落ちることは避けなければならない。
【特許文献1】特開2001−254580
【特許文献2】特開2000−96961
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気的制御を行わずに機械的にブレーキを復帰させ、かつ、復帰ワイヤに傷が付くようなことを可及的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させるシャッターにおいて、
第1の方向に移動してブレーキを解放し、第2の方向に移動してブレーキを復帰させる作動手段と、
前記作動手段を第2の方向に移動するように当該作動手段に連結された復帰ワイヤと、
シャッターカーテン下端の座板の端部以外の開口部に露出する部分に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転体と、
前記座板に設けられ、前記回転体に係止して当該回転体の回転を規制するロック部材と、
を備え、
前記座板は、上面と、対向状の側面と、を備えた上座板と、上座板に対して相対的に上動可能な下座板とからなり、
前記回転体は、上座板の端部以外の開口部の露出する部位に位置して、上側が上座板の前記上面の上方に位置し、下側が当該上座板に形成された開口を介して前記上面と前記対向状の側面とで囲まれた上座板内の空間に突出するように設けてあり、
前記復帰ワイヤの他端側は、シャッターカーテンの自重降下に伴って前記回転体が回転することでシャッターカーテン面部に沿って引き出し可能に収納されており、
前記ロック部材は、下座板の上動に連動して、当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動するように構成されており、
自重降下するシャッターカーテン下端の下座板が障害物に当たると、前記ロック部材が移動して回転体の回転を規制して収納されている復帰ワイヤの引き出しを規制し、引き出しが規制された復帰ワイヤが前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる、
シャッター装置、である。
【0007】
一つの態様では、前記回転体は、当該回転体の回転中心が前記上座板の上面の上方に位置するように、前記上座板に設けてある。
【0008】
一つの態様では、前記引き出しが規制されたワイヤは、シャッターカーテンの降下に伴い上座板が下座板に対して相対的に下動することで前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる。
【0009】
一つの態様では、前記復帰ワイヤは、
一端が前記作動手段に連結され、他端がワイヤ中継器に接続された第1ワイヤと、
一端が前記ワイヤ中継器に接続され、他端側が前記回転体に巻回される第2ワイヤと、
からなり、
前記ワイヤ中継器は開口部上方に設けられ、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは開口部上方で接続されている。
【0010】
一つの態様では、前記ロック部材は、下座板の上動に連動して変位する検知レバーを介して当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動する。
【0011】
一つの態様では、前記回転体は、周縁に連続状に形成された多数の歯状の被係止部を備えており、前記ロック部材は、下座板が上座板に対して相対的に上動することに連動して前記被係止部に係止する係止爪を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、機械式で避難時停止を行うので、電気が不要であり、既設の手動シャッターに後付けが容易であり、また、電気代もかからない。さらには、電気部品を使用しないので、発火性の高いものを扱う倉庫や工場に設置されたシャッターについても本発明の避難時停止装置を採用することができる。復帰ワイヤはシャッターカーテンの自重降下に伴ってシャッターカーテン面部に沿って延出するので、復帰ワイヤに傷が付くことを可及的に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。シャッター装置は、開口部を閉鎖するシャッターカーテン1と、開口部上方に位置してシャッターカーテン1を巻装する巻取シャフト2と、開口部左右両端に立設されたガイドレ−ル3と、を備えている。シャッターカーテン1は、複数のスラット1aを上下に連結して構成されており、下端には座板4が設けてある。座板4は開口部幅方向に延出する長尺状の上座板4aと、上座板4aの下方側に上座板4aに対して相対的に上下動自在に吊持された長尺状の下座板4bとからなり、座板4が障害物検知手段を構成している。通常時には、シャッターカーテン1は開閉機5によって開閉される。
【0014】
シャッターカーテン1は、収納時において、開閉機5を構成するブレーキによって下降が規制された状態で巻取シャフト2に巻装されており、防災盤からの火災検知信号によって自動閉鎖装置6が作動して、ブレーキ解放装置7を介してブレーキを解除する。ブレーキが解除されると、シャッターカーテン1自体及びシャッターカーテン1の下端部に設けた座板4の重さによって、幅方向両端部がガイドレール3の溝部に案内されながら自重で下降して開口部を全閉する。
【0015】
ブレーキ解放レバー8が開閉機5のブレーキケースから突出しており、ブレーキ解放レバー8を移動させることで、巻取シャフト2の回転を規制しているブレーキが解放される。ブレーキを含む開閉機および当該ブレーキを解放するブレーキ解放レバーは公知であり、例えば、特許文献1の図2に記載されている。具体的には、ブレーキ手段は接離自在に対向する二枚のブレーキ板を有しており、シャッターカーテン収納時にはスプリング等の付勢手段によってブレーキ板同士が圧接されており、ブレーキが働いて巻取シャフトの回転が規制されている。ブレーキ解放レバーをスプリングに抗して揺動させることでブレーキ板同士が離隔してブレーキが解放され、巻取シャフトの回転が可能となって、シャッターカーテンが自重降下するようになっている。また、ブレーキ解放レバーをフリーにすれば、前記付勢手段であるスプリングによってブレーキ板同士が圧接されて自動的にブレーキ及びブレーキ解放レバーが復帰するようになっている。
【0016】
ブレーキ解放装置7は、ブレーキ解放レバー8をブレーキ解放方向に移動させる作動手段を備えており、火災検知信号が自動閉鎖装置6に入力されることで、自動閉鎖装置6によってブレーキ解放装置7の作動手段が移動してブレーキ解放レバー8を移動させる。具体的な態様例では、作動手段は自動閉鎖装置6の可動部とブレーキ解放ワイヤW1で連結されており、火災検知信号が自動閉鎖装置6に入力されると、自動閉鎖装置6の可動部が移動してブレーキ解放ワイヤW1が引かれて、ブレーキ解放装置7の作動手段が自動閉鎖装置6側へ移動する。そして、自動閉鎖装置6側へ移動した作動手段が、ブレーキ解放レバー8を移動させてブレーキを解放させる。ブレーキ解放ワイヤW1はアウターケーブル内を延出している。
【0017】
自動閉鎖装置6は、防災盤からの火災検知信号の入力によって可動部が作動して、ブレーキ解放ワイヤW1を引くことで、作動手段を介してブレーキ解放レバー8を移動させてブレーキを解放させる。自動閉鎖装置6がブレーキ解放ワイヤW1を引く態様としては幾つかの手法が知られており、自動閉鎖装置6に内蔵されたバネのバネ力でブレーキ解放ワイヤW1を引くもの、自動閉鎖装置6に内蔵されたモータの駆動力でブレーキ解放ワイヤW1を引くもの等が挙げられる。自動閉鎖装置6は、ブレーキ解放装置7の作動手段を移動させてブレーキ解放レバー8を移動させるものであれば、自動閉鎖装置6の具体的な構成は限定されない。図示の例では、自動閉鎖装置とブレーキ解放装置は別体で構成されているが、自動閉鎖装置一体型のブレーキ解放装置であってもよい。自動閉鎖装置は特許文献1に記載されたようなものでもよい。
【0018】
図4乃至図6に基づいてブレーキ解放装置7の具体的な構成について説明する。図4は、シャッター開放状態、すなわち、ブレーキ復帰状態を示しており、矢印方向はブレーキ解放方向である。図5は、シャッターカーテンの自重降下中、すなわち、ブレーキ解放状態を示しており、図中、矢印方向はブレーキ復帰方向である。図6は、自重降下中に下座板が障害物に当たってロック機構が作動してブレーキ復帰ワイヤを引いた状態、すなわち、ブレーキ復帰状態を示している。図中、「左側」が「自動閉鎖装置側」となっており、左側へ向かう方向が「ブレーキ解放方向」、右側へ向かう方向が「ブレーキ復帰方向」である。
【0019】
ブレーキ解放装置7は、開閉機5のブレーキケースに対応して開閉機5の外側に取り付けられるフレーム70を備えている。フレーム70は、上壁700と、上壁700の左右端部より垂直に延出する側壁701,702を備えており、対向状の側壁701,702間には水平状に延出するガイド軸71が設けてある。また、上壁700にはブレーキ解放レバー8の先端部位を左右方向に移動可能に受け入れる開口が形成されており、ブレーキ解放レバー8の先端部位は上壁700の開口を挿通してフレーム70内に延出している。フレーム70には下面カバー703、側面カバー704,705が設けてあり、全体として箱状に形成されている。
【0020】
ガイド軸71には、作動手段としての第1作動体72、第2作動体73が左右方向にスライド自在に設けてある。第1作動体72は、水平状に延出する底辺720と、底辺の左右端部から対向状に垂直に立ち上がる側辺721,722とから側面視コ字形状を備えており、左右の側辺721,722にはガイド軸71を挿通させる挿通孔が形成されている。第2作動体73は、水平状に延出する底辺730と、底辺730の左右端部から対向状に垂直に立ち上がる側辺731,732とから側面視コ字形状を備えており、左右の側辺731,732にはガイド軸71を挿通させる挿通孔が形成されている。第1作動体72、第2作動体73は、第2作動体73の底辺730を第1作動体72の底辺720に重ねるようにしてガイド軸71に取り付けられる。図示の例では、第1作動体72の底辺720と第2作動体73の底辺730との左右方向の寸法は略同じである。
【0021】
図4乃至図6の下図から明らかなように、第1作動体72の左側の側辺721の幅に対して、右側の側辺722は細幅となっている。より具体的には、右側の側辺722は、第1作動体72の幅方向両端部を切り欠いて中央部のみ残して細幅に形成されている。第1作動体72の左側の側辺721は、第2作動体73の左側の側辺731の幅よりも大きい寸法となっており、第1作動体72の左側の側辺721において、第2作動体73の左側の側辺731から突出した部分にはブレーキ解放ワイヤW1の端部が固定されている。第2作動体73の左側の側辺731は他の側辺よりも大きい立ち上がり寸法(高さ)を備えており、フレーム70内に突出したブレーキ解放レバー8の右側に位置して対向するようになっている。すなわち、ブレーキ解放レバー8を挟んで側辺731と自動閉鎖装置6とが反対側に位置しており、ブレーキ解放レバー8の右側に位置する側辺731が左側に向かって移動することでブレーキ解放レバー8を左側(自動閉鎖装置側)に移動させる。
【0022】
第2作動体73の底辺730の右側部位は、幅方向の両端部位を残すように方形状に切り欠かれている。第2作動体73の右側側辺732にはブレーキ復帰用の復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)の端部が固定されている。第2作動体73の幅寸法は第1作動体72の幅寸法と略同じであり、第2作動体73の底辺730の右側部位に形成された前記切り欠きから第1作動体72の右側の細幅の側辺722が第2作動体73の右側側辺732の内側に位置して突出している。第2作動体73の切り欠き部位の端縁733と第1作動体72の右側側辺722との間の距離D1は第1作動体72に対する第2作動体73の移動ストロークを決定している。
【0023】
ガイド軸71にはコイルスプリング74が巻装されており、コイルスプリング74の左側端部は第2作動体73の左側側辺731に当接しており、コイルスプリング74の右側端部は第1作動体72の右側側辺722に当接している。コイルスプリング74は、第2作動体73の底辺730を第1作動体72の底辺720に重ねるようにしてガイド軸71に取り付けた状態において、コイルスプリング74の右側端部が第1作動体72の右側側辺722に当接しており、コイルスプリング74の左側端部が、第2作動体73の左側側辺731を第1作動体72の左側側辺721に押圧するように作用する。
【0024】
図4はブレーキ解放レバー8がフリーな状態を示し、ブレーキが有効である。図4の状態から、自動閉鎖装置6によってブレーキ解放ワイヤW1が矢印方向に引かれると、第1作動体72の左側側辺721が自動閉鎖装置側に引かれて移動し、同時に第1作動体72の右側側辺722が自動閉鎖装置側に移動することで、コイルスプリング74を介して第2作動体73が自動閉鎖装置側に移動して、第2作動体73の左側側辺731の上端部がブレーキ解放レバー8に当接してこれを移動させることでブレーキを解放する。図5はブレーキが解放された状態を示している。
【0025】
図5の状態から、復帰ワイヤが矢印方向に引かれると、第2作動体73の右側側辺732が引かれて移動し、同時に第2作動体73の右側側辺731がコイルスプリング74を圧縮しながらブレーキ解放レバー8から離間する方向に移動して、ブレーキ解放レバー8をフリーにして、ブレーキに内蔵された復帰手段によってブレーキ及びブレーキ解放レバー8が復帰する。ブレーキを復帰させるために必要な力はコイルスプリング74によって決定されるので、一定の力で復帰ワイヤを引けばよく、ブレーキを安定して復帰させることができる。
【0026】
このように、復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)を引いてブレーキを復帰させる際には、第1作動体72を移動させる必要がない。したがって、第1作動体72に連結されたブレーキ解放ワイヤW1が自動閉鎖装置6の強いバネで引かれている場合(図示の例では、ブレーキ解放ワイヤW1を引く力は、コイルスプリング74の力よりも大きい)、あるいは、ブレーキ解放後には、ブレーキ解放ワイヤW1が自動閉鎖装置6に内蔵したラチェット機構や固定状態にあるモータ軸などに連結されていて不動の場合であっても、復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)を引っ張ってブレーキを復帰させるにあたって、自動閉鎖装置6の構成要素の影響を一切受けることがない。
【0027】
復帰ワイヤは、第1ワイヤW2と第2ワイヤW3とから構成されている。第1ワイヤW2と第2ワイヤW3はワイヤ中継器9を介して接続されている。第1ワイヤW2の一端はブレーキ解放装置7の作動手段に連結され、他端はワイヤ中継器9に連結されている。第1ワイヤW2はアウターケーブル内を延出している。第2ワイヤW3の一端はワイヤ中継器9に連結されており、他端は座板4に設けた回転ドラム10に巻回可能に連結されている。回転ドラム10はゼンマイバネが組み込まれており、第2ワイヤW3の他端を回転ドラム10に巻き取る方向に付勢している。尚、図中14は、ワイヤ過巻込防止ストッパである。
【0028】
ワイヤ中継器9は、回転ドラム10の直上で、開口部上方に位置して設けてある。図9に示すように、ワイヤ中継器9は開口部上方に位置して前後方向(シャッタ収納部15の奥行き方向)に延出しており、前方側(開口部上方のまぐさ部側)には、シャッターカーテン1に沿って上下に導かれる第2ワイヤW3を水平状に後方に向かって案内するガイドローラ90が設けてあり、第2ワイヤW3の一端側と第1ワイヤW2の他端側とは、ワイヤ中継器9のスライダ91(前後方向にスライド自在)を介して接続されている。ガイドローラ90が設けられたローラ支持部材92は、前後方向に延出する長尺部材であり、ブラケット93に対して前後方向に位置調整自在に固定される。図9では4つの異なるガイドローラ90の位置が示してある。ローラ支持部材92を位置調整自在に固定することで、ローラ90に案内されて垂下する第2ワイヤW3とシャッターカーテン1の面部との距離を調整することができる。
【0029】
図10に示すように、回転ドラム10は下半部が上座板4a内に位置しており、上半部が上座板4aから上方に突出しており、全体として傾斜状に設けてある。上座板4aには、回転ドラム10を挿通させるように開口が形成されており、上座板4aから突出した回転ドラム10の上半部を被覆するようにカバー体100が設けてある。カバー体100の上壁は、第2ワイヤW3を挿通させる樹脂ガイド100aを備えている。図11乃至図13では、カバー体100は、上壁を除いて、省略されている。
【0030】
ブレーキが解放されてシャッターカーテン1が自重降下を開始すると、座板4の降下に伴って座板4に設けられた回転ドラム10も降下し、回転ドラム10の降下に伴って、第2ワイヤW3は回転ドラム10が回転することでシャッターカーテン1の降下距離分だけ引き出されていく。シャッターカーテン1の自重降下が第2ワイヤW3を引き出す力は、第2ワイヤW3を巻き取る方向に付勢するゼンマイバネの力よりも大きく、このとき第1ワイヤW2が引っ張られることはない。作動手段のコイルスプリング74の力は、ゼンマイバネの力よりも大きいので、この時に第2作動体73が復帰方向に引っ張られることはない。また、自動閉鎖装置6がブレーキ解放ワイヤW1を引く力は、ゼンマイバネの力よりも大きい。
【0031】
座板4には、回転ドラム10の回転を規制するロック機構が設けてある。ロック機構は、降下中のシャッターカーテン1の下端の座板4が障害物に当接した時に、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動することに連動して作動するように構成されている。回転ドラム10の回転が停止すると、第2ワイヤW3の引き出しが規制され第2ワイヤW3の長さが一定となり、この状態で座板4(すなわち回転ドラム10)が降下すると、第2ワイヤW3、ワイヤ中継器9のスライダ91を介して第1ワイヤW2が引かれて、作動手段がブレーキ復帰方向に移動し、ブレーキ解放レバー8が復帰してブレーキが復帰し、巻取シャフト2の回転を規制してシャッターカーテン1の降下が停止する。ここで、ブレーキ復帰のためには復帰ワイヤ(第1ワイヤW2、第2ワイヤW3)を所定量引っ張る必要があり(すなわち、シャッターカーテン1が所定量降下する必要がある)、障害物に当たった下座板4bは、ブレーキ復帰をさせるだけのシャッターカーテン1の降下量に対応する上動ストロークを備えていることが望ましい。あるいは、下座板4bの上動ストロークが小さい場合であっても、復帰ワイヤの途中(例えば、ワイヤ中継器9)や復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)と作動手段との連結部位に位置させて、第2ワイヤW3の上動ストロークに対して大きい作動手段の牽引量を取り出す機構(例えば、リンク機構)を設けることでブレーキを復帰させることができる。
【0032】
ロック機構について説明する。ロック機構は、回転ドラム10の周縁に連続状に形成された多数の歯状の被係止部10aと、被係止部10aに係止可能な係止爪11aを備えた回動ロック部材11と、を備えている。回動ロック部材11は、自重降下中のシャッターカーテン1の下端が障害物に当接して、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動することに連動して回動し、回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の被係止部10aに噛んで係止してロック状態となって、回転ドラム10の回転を停止させる。
【0033】
図11に示すように、上座板4aと下座板4bとの間には、複数の回動検知レバー4cが設けてあり、自重降下中のシャッターカーテン1の下端が障害物に当接して、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動すると、下座板4bの上動に連動して検知レバー4cが回動するようになっている。複数の回動検知レバー4cの下端部位はワイヤ4dによって互いに連結されており、ワイヤ4dの一端は回動ロック部材11に連結されている。回動検知レバー4cは下端が回転ドラム10から離隔する方向に傾斜しており、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動すると、回動検知レバー4cは、回動検知レバー4c下端がさらに回転ドラム10から離隔する方向に回動し、ワイヤ4dは回転ドラム10から離隔する方向に引っ張られる。座板4の長さ方向に間隔を存して配置した複数の回動検知レバー4cを一つのワイヤ4dで連結することで、自重降下するシャッターカーテン下端の座板4の長さ方向のどの部位に障害物が当たっても、一つの回動ロック部材11を良好に回動させることができる。図示の例では、回転ドラム10の両側に回動検知レバー4cを配置すると共に、それぞれの回動検知レバー4cに連結されるワイヤ4dに連結される左右一対の回動ロック部材11が設けてあるが、回動ロック部材11を座板端部寄りに配置することで、一つの回動ロック部材11を設けるものでもよい。
【0034】
回動ロック部材11は上下方向に延出する「へ字状」の回動レバーであり、中間部に形成された回動支点110を中心として回動可能にカバー体100に設けてある。回動ロック部材11の係止爪11aは、回動支点110よりも上側に形成されている。回動ロック部材11の上端、下端はそれぞれコイルスプリング12、13に連結されている。コイルスプリング13の力はコイルスプリング12の力よりも大きく設定されている。回動ロック部材11の上端に連結された上側コイルスプリング12の他端はカバー体100に連結されており、上側コイルスプリング12は、回動ロック部材11をロック解除方向(回動ロック部材11の上半部が回転ドラム10から離隔する方向)に付勢している。回動ロック部材11や上側コイルスプリング12が装着される部位は、座板4に対する回転ドラム10の装着や納まりによっては他の部位や部材であってもよい。
【0035】
回動ロック部材11の下端に連結された下側コイルスプリング13の他端はワイヤ4dに連結されており、下側コイルスプリング13は、回動ロック部材11が回動して回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラムの歯状の被係止部10aに当たった時の衝撃を緩和する緩衝用バネを構成している。障害物検知を速やかに行うためには、下座板4bの上動の初期で回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の歯状の被係止部10aに係止させることが望ましい。ブレーキ復帰のためには復帰ワイヤを所定量引っ張る必要があり(すなわち、シャッターカーテン1が所定量降下する必要がある)、障害物に当たった下座板4bは、回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の歯状の被係止部10aに係止した後も相対的に上動する必要がある。この時、下側コイルスプリング13が伸びることで、回転ドラム10がロックされた後の下座板4bの上動に伴う係止部分(係止爪11a、被係止部10a)への負荷を緩和している。
【0036】
このように構成された避難時停止装置の作用を説明する。火災感知器によって火災が感知されると、防災盤より信号(DC24V)が出力され、自動閉鎖装置6が作動して、ブレーキ解放ワイヤW1が引かれ、第1作動体72の左側側辺721が自動閉鎖装置側に引かれて移動し、同時に第1作動体72の右側側辺722が自動閉鎖装置側に移動することで、コイルスプリング74を介して第2作動体73が自動閉鎖装置側に移動して、第2作動体73の左側側辺731の上端部がブレーキ解放レバー8に当接してこれを強制的に移動させることで開閉機5のブレ−キが解放される。
【0037】
開閉機5のブレ−キが解放されることによって、開口部上方に巻回収納されているシャッターカーテン1が自重降下し、シャッターカーテン1の自重降下に伴って第2ワイヤW3が回転ドラム10から引き出されながらシャッターカーテン1の面部に沿って延出する。シャッターカーテン1の降下経路に障害物がない場合には、シャッターカーテン1はそのまま降下して開口部を閉鎖する。自重降下するシャッターカーテン1の下方に障害物(人を含む)がある場合には、下座板4bが障害物に当接して、上座板4aに対して相対的に上動することになる。
【0038】
下座板4bが上動すると、回動検知レバー4cが回動して、ワイヤ4dを引っ張り、ワイヤ4dが引かれることで、回動ロック部材11の下端側が回転ドラム10から離隔する方向に引かれ、回動ロック部材11は回動支点110を中心に、上端がコイルスプリング12に抗して回転ドラム10側に回動して、回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の歯10aに噛んで回転ドラム10の回転を停止させる。回転ドラム10の回転が停止すると、第2ワイヤW3の引き出しも停止し、シャッターカーテン1の降下に伴って、第2ワイヤ、ワイヤ中継器9のスライド91を介して第1ワイヤW2が引かれ、第1ワイヤの端部が固定された第2作動体73を引っ張る。第2作動体73が右側に移動することで、ブレーキ解放レバー8はフリーとなって、開閉機5のブレーキが復帰してシャッターカーテン1の降下が停止する。
【0039】
障害物が取り除かれると、下座板4bが下方に下動し、ワイヤ4dによる引っ張りが無くなって、回動ロック部材11はコイルスプリング12の力で元の位置に回動復帰して回転ドラム10のロック状態が解除される。ロック状態が解除されると、回転ドラム10の回転規制が解除され、第2ワイヤW2の引き出しが可能となり、第1ワイヤW1を引っ張る力が無くなり、第2作動体73は圧縮されたコイルスプリング74が伸長する力によって、自動閉鎖装置側に移動し、第2作動体73の左側側辺731がブレーキ解放レバー8を移動させてブレーキを解放し、シャッターカーテン1は自重で再降下する。また、障害物が取り除かれた後に避難者が円滑に避難できるように、障害物を検知して復帰したブレーキを解放させるまでの時間を所定時間遅延する遅延機構(粘性ダンパが例示される)を設けてもよい。
【0040】
図1Aに本発明に係るシャッター装置の他の実施形態の概略正面図を示す。上述の実施形態との比較において、同一の部材については同一の番号が付してあり、同一の番号が付された部材については既述の説明を援用することができる。図1Aでは、復帰ワイヤを構成する第2ワイヤW3は、座板4に設けた回転プーリ10´に巻回されて(第2ワイヤW3が滑らないように回転プーリ10´に1周以上巻き付ける)折り返され、端部が開口部上方の巻取装置10´´(例えば、第2ワイヤW3を巻き取り収納する方向に付勢するゼンマイバネを内蔵した巻取装置)に連結されている。巻取シャフト2の回転を規制するブレーキが解放されると、シャッターカーテン1が自重降下するが、その時、シャッターカーテン1下端の座板4に設けた回転プーリ10´が回転しながら降下することで、巻取装置10´´から引き出された第2ワイヤW3の部分W30が回転プーリ10´によって折り返し案内され、シャッターカーテン1の自重降下に伴って折り返された部分W31(第2ワイヤW3のワイヤ中継器9と回転プーリ10´間の部分)の寸法が延びる。座板4およびロック機構の構成は記述の通りであり、自重降下するシャッターカーテン1の下端の座板4が障害物に当たると、ロック機構が作動して回転プーリ10´の回転が停止する。回転プーリ10´の回転が停止すると、部分W31の寸法が一定となり、さらにシャッターカーテン1が自重降下することで第1ワイヤW2が引かれてブレーキが復帰する。
【0041】
2つの作動体72,73からなる作動手段について説明したが、作動手段はこのものに限定されない。作動手段の他の態様を図7、図8に示す。図4乃至図6に示す態様と同一の部材については共通の番号を付してある。図7、図8に示す例では、ガイド軸71に対して、一つの作動体75がガイド軸71の長さ方向に移動可能に設けてある。作動体75は筒状部750と筒状部750に対して間隔を存して対向状に設けた左右の側壁751,752とを備えており、作動体75の左側側壁751とフレーム70の左側側壁701との間には第1スプリング76が設けてある。一方、作動体75の右側側壁752とフレーム70の右側側壁702との間には第2スプリング77が設けてある。
【0042】
作動体75の左側側壁751にはブレーキ解放ワイヤW1の端部が連結されており、作動体75の右側側壁752には復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)の端部が連結されている。図7は、シャッター開放状態(ブレーキ復帰状態)であり、自動閉鎖装置によってブレーキ解放ワイヤW1が引かれることで、作動体75が第1スプリング76を圧縮させ、第2スプリング77を伸長させながら自動閉鎖装置側に移動し、作動体75の左側側壁751がブレーキ解放レバー8に当接してこれを移動させ、ブレーキを解放する。図8は、シャッター自重降下中(ブレーキ解放状態)を示す。ブレーキ復帰時には、復帰ワイヤW2が作動体75をブレーキ解放レバー8から離間する方向に移動させてブレーキを復帰させる。この時、第1スプリング76の伸長力及び第2スプリング77の圧縮力がブレーキ復帰方向に作用する。また、解放レバー復帰用の補助スプリングは、第1スプリング76、第2スプリング77のいずれか一方でもよい。
【0043】
[付記]
本発明に係る自重降下式シャッターにおける機械式避難時停止装置は、ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させる自重降下式シャッターにおいて、第1の方向に移動してブレーキを解放し、第1の方向と反対の第2の方向に移動してブレーキを復帰させる作動手段と、前記作動手段を第2の方向に移動するように当該作動手段に連結された復帰ワイヤと、シャッターカーテン下端の座板の端部以外の開口部に露出する部分に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転体と、前記座板に設けられ、前記回転体に係止して前記回転体の回転を規制するロック部材と、を備え、前記復帰ワイヤの他端側は、シャッターカーテンの自重降下に伴って前記回転体が回転することでシャッターカーテン面部に沿って引き出し可能に収納されており、前記座板は、上座板と、上座板に対して相対的に上動可能な下座板とからなり、上座板と下座板との間には、下座板の上動に連動して変位する検知レバーが設けてあり、前記検知レバーの変位に連動して当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動するように、前記検知レバーと前記ロック部材とを連結し、自重降下するシャッターカーテン下端の下座板が障害物に当たると、ロック部材が移動して回転体の回転を規制して収納されている復帰ワイヤの引き出しを規制し、引き出しが規制された復帰ワイヤが前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させるものである。
一つの態様では、前記回転体は、前記復帰ワイヤの他端側を巻き取る方向に付勢する手段を備えた回転ドラムであり、復帰ワイヤの他端は当該回転ドラムに連結されており、回転ドラムは復帰ワイヤの巻取体を構成する。他の態様では、前記回転体は、回転プーリであり、回転プーリに巻回された復帰ワイヤの端部は開口部上方に設けた巻取装置に巻き取られる。
前記ロック部材は、検知レバーの変位に連動して移動して前記回転体に係止する可動部材であれば、移動の態様(回動、スライド等)は限定されないが、一つの好ましい態様では、前記ロック部材は、検知レバーの変位に連動して回動する回動ロック部材である。前記検知レバーは、下座板の上動に連動して変位する可動部材であれば、変位の態様(回動、スライド等)は限定されないが、一つの好ましい態様では、前記検知レバーは、下座板の上動に連動して回動する回動検知レバーである。一つの態様では、回転体の周縁には連続状に歯状の被係止部が形成され、ロック部材には、前記被係止部に係止する係止爪が形成されている。一つの態様では、前記回転体の左右にはそれぞれロック部材が設けてあり、前記座板には、前記回転体の左右両側に位置してそれぞれ一つ以上の検知レバーが配置されており、回転体の左側に位置する一つ以上の検知レバーが回転体の左側のロック部材に連結され、回転体の右側に位置する一つ以上の検知レバーが回転体の右側のロック部材に連結されている。さらに好ましい態様では、回転体(回転ドラム)の少なくとも一側には、座板の長さ方向に間隔を存して複数の検知レバーが設けてあり、かつ、複数の検知レバーを連結部材(一つの態様ではワイヤ)で互いに連結することで、互いに連結された検知レバーが同時に変位(好ましい態様では回動)するようになっており、当該連結部材はロック部材(好ましい態様では回動ロック部材)に連結されている。前記連結部材と回動ロック部材とを緩衝スプリングを介して連結することで、回動ロック部材の係止爪が被係止部に当接して係止する時の衝撃を緩和することができ、部品の劣化を防止し、安定して回転体の回転規制をしてブレーキを復帰することができる。
一つの態様では、前記復帰ワイヤは、一端が前記作動手段に連結され、他端がワイヤ中継器に接続された第1ワイヤと、一端が前記ワイヤ中継器に接続され、他端側が前記回転体に巻回される第2ワイヤと、からなり、前記ワイヤ中継器は前記回転体を通る鉛直線上に位置して開口部上方に設けられ、前記第2ワイヤはシャッターカーテンの自重降下時にはシャッターカーテンの面部に沿って垂下するように延出する。
一つの態様では、前記ブレーキは、ブレーキ解放レバーの移動によって強制的に解放されると共に、ブレーキ解放レバーによる強制力が解除されると付勢手段により復帰し、前記作動手段は、第1方向及び第2方向に移動可能な第1作動体及び第2作動体と、前記第1作動体と前記第2作動体との間に介装されたバネ部材と、からなり、前記第2作動体は前記第1作動体に対して第2方向へ移動可能であり、前記バネ部材の第1方向側端部は前記第2作動体に当接し、前記バネ部材の第2方向側端部は前記第1作動体に当接しており、前記第1作動体には第1方向牽引部材(一つの態様では、ブレーキ解放ワイヤ)が連結され、前記第1方向牽引部材による第1方向への牽引時には、前記第1作動体及び前記第2作動体、前記バネ部材が一体で第1方向に移動し、前記第2作動体がブレーキ解放レバーを強制的に移動させてブレーキを解放し、前記第2作動体には前記復帰ワイヤが連結され、ブレーキ解放状態からの前記復帰ワイヤによる第2方向への牽引時には、前記第2作動体のみが前記バネ部材に抗して第2方向に移動し、前記ブレーキ解放レバーによる強制力が解除され、前記付勢手段によりブレーキが復帰する。
本発明では、機械式で避難時停止を行うので、電気が不要であり、既設の手動シャッターに後付けが容易であり、また、電気代もかからない。さらには、電気部品を使用しないので、発火性の高いものを扱う倉庫や工場に設置されたシャッターについても本発明の避難時停止装置を採用することができる。復帰ワイヤはシャッターカーテンの自重降下に伴ってシャッターカーテン面部に沿って延出するので、復帰ワイヤに傷が付くことを可及的に防止できる。一つの態様では、一つの回転体を用いるものでありながら、安定して障害物を検知することができる。。一つの態様では、回動ロック部材が回動して回転体に係止する時の衝撃および係止後に係止部位にかかる負荷を緩和することができる。一つの態様では、復帰ワイヤを2つのワイヤから構成し、2つのワイヤを中継器で接続することで、復帰ワイヤを良好に引き回すことができる。
一つの態様では、復帰ワイヤによりブレーキを復帰させる際には、第1作動体を移動させる必要がない。したがって、第1作動体に連結された第1方向牽引部材の影響を受けずに、ブレーキを復帰させることができる。具体的な例では、第1方向牽引部材が自動閉鎖装置の強いバネで引かれている場合、あるいは、ブレーキ解放後には、第1方向牽引部材が自動閉鎖装置に内蔵したラチェット機構や固定状態にあるモータ軸などに連結されていて不動の場合であっても、第2方向牽引部材により良好にブレーキを復帰させることができる。復帰ワイヤによる牽引力は、バネ部材によって決定されるので、一定の力で復帰ワイヤを牽引すればよく、避難時停止装置を構成する復帰ワイヤの張力を一定にして、安定した作動を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、自重降下式シャッターに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るシャッター装置の概略正面図である。
【図1A】他の実施形態に係るシャッター装置の概略省面図である。
【図2】本発明に係るシャッター装置の概略正面図であり、図1と類似の図であるが、シャッターカーテンは座板を除いて省略されている。
【図3】本発明に係るシャッター装置の収納時の概略側面図である。
【図4】シャッター開放状態(ブレーキ復帰状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図5】シャッター自重降下中(ブレーキ解放状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図6】自重降下中に座板スイッチが作動し、シャッターが停止した状態(ブレーキ復帰状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図7】他の実施形態に係る、シャッター開放状態(ブレーキ復帰状態)のブレーキ解放
【図8】他の実施形態に係る、シャッター自重降下中(ブレーキ解放状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図9】ワイヤ中継器を示す図である。
【図10】座板を側方から見た断面図である。
【図11】座板の概略正面図および矢印に沿った断面図である。
【図12】図11における回転ドラム近傍部位を示す部分拡大図であり、回転ドラムが非ロック状態にある。
【図13】図12において回転ドラムがロック状態にある図である。
【符号の説明】
【0046】
1 シャッターカーテン
2 巻取シャフト
3 ガイドレール
4 座板
4a 上座板
4b 下座板
4c 検知レバー
4d ワイヤ
5 開閉機
6 自動閉鎖装置
7 ブレーキ解放装置
72 第1作動体
73 第2作動体
8 ブレーキ解放レバー
9 ワイヤ中継器
10 回転ドラム
10a 非係止部
11 回動ロック部材
11a 係止爪
W1 ブレーキ解放ワイヤ
W2 ブレーキ復帰ワイヤ(第1ワイヤ)
W3 ブレーキ復帰ワイヤ(第2ワイヤ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させるシャッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防火シャッタ−は、防災盤からの信号で自動閉鎖装置が作動してブレ−キを解放し、シャッターカーテンが自重降下して建物開口部を閉鎖するようになっている。また、自重降下式シャッターには、手動でシャッターカーテンを自重降下させる手動式シャッターもある。このような自重降下式シャッターには、自重降下するシャッターカーテンに避難者が挟まれるのを防止するために、いわゆる避難時停止装置が設けられる。
【0003】
自動閉鎖装置は非常電源からの通電(DC24V)によって作動して電気的にブレーキを解放するものであり、避難時停止装置は、シャッターカーテン下端に設けた座板スイッチを備え、降下するシャッターカーテンの下端の座板に障害物が当たったことを座板スイッチが検知し、自動閉鎖装置がブレーキを解放状態に維持するための通電を電気的に遮断することで、ブレーキを復帰させて巻取シャフトの回転を停止してシャッターカーテンの降下を停止させる。電気制御方式の停止装置は、例えば特許文献1に記載されている。しかしながら、電気制御方式では、シャッター工事に加えて電気工事が必要となり、工事が大掛かりになると共に、既設の手動式シャッターに避難時停止装置を後付けすることも困難である。
【0004】
また、自重降下するシャッターカーテンを機械的に停止させる装置も提案されている。特許文献2には、シャッターカーテンを自重降下させる防火シャッターにおいて、該自動閉鎖装置は防災盤からの信号によって待機位置から作動位置に移動して該ブレーキを解放させる作動部を有し、一方のガイドレール内には上下方向に延出すると共に、下端側が該ガイドレール下方部位に固定され、上端側が該作動部に連結されているワイヤを配設し、該シャッターカーテンの下端には障害物検知部材を上下動自在に吊持させ、該障害物検知部材が障害物に当接して上動することに連繋して該ワイヤを引く手段を備えてなり、該障害物検知部材が障害物に当接した際には、該ワイヤが引かれて該作動部を待機位置側に移動させて該ブレーキを復帰させ、該障害物が取り除かれた後は該障害物検知部材が下動して該ワイヤの引きが解除され、該作動部が作動位置に移動して該ブレーキを解放することを特徴とする防火シャッターにおける安全装置、が開示されている。しかしながら、このものは、安全装置の必須構成要素であるワイヤがガイドレール内に延出しており、ワイヤの取り付け作業が煩雑である上、シャッターカーテンの昇降時に、シャッターカーテン端部がワイヤに接触し、ワイヤに傷を付けてしまうおそれもある。ブレーキ復帰時には、復帰ワイヤには所定の張力が作用するので、ワイヤが劣化して強度が落ちることは避けなければならない。
【特許文献1】特開2001−254580
【特許文献2】特開2000−96961
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気的制御を行わずに機械的にブレーキを復帰させ、かつ、復帰ワイヤに傷が付くようなことを可及的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させるシャッターにおいて、
第1の方向に移動してブレーキを解放し、第2の方向に移動してブレーキを復帰させる作動手段と、
前記作動手段を第2の方向に移動するように当該作動手段に連結された復帰ワイヤと、
シャッターカーテン下端の座板の端部以外の開口部に露出する部分に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転体と、
前記座板に設けられ、前記回転体に係止して当該回転体の回転を規制するロック部材と、
を備え、
前記座板は、上面と、対向状の側面と、を備えた上座板と、上座板に対して相対的に上動可能な下座板とからなり、
前記回転体は、上座板の端部以外の開口部の露出する部位に位置して、上側が上座板の前記上面の上方に位置し、下側が当該上座板に形成された開口を介して前記上面と前記対向状の側面とで囲まれた上座板内の空間に突出するように設けてあり、
前記復帰ワイヤの他端側は、シャッターカーテンの自重降下に伴って前記回転体が回転することでシャッターカーテン面部に沿って引き出し可能に収納されており、
前記ロック部材は、下座板の上動に連動して、当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動するように構成されており、
自重降下するシャッターカーテン下端の下座板が障害物に当たると、前記ロック部材が移動して回転体の回転を規制して収納されている復帰ワイヤの引き出しを規制し、引き出しが規制された復帰ワイヤが前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる、
シャッター装置、である。
【0007】
一つの態様では、前記回転体は、当該回転体の回転中心が前記上座板の上面の上方に位置するように、前記上座板に設けてある。
【0008】
一つの態様では、前記引き出しが規制されたワイヤは、シャッターカーテンの降下に伴い上座板が下座板に対して相対的に下動することで前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる。
【0009】
一つの態様では、前記復帰ワイヤは、
一端が前記作動手段に連結され、他端がワイヤ中継器に接続された第1ワイヤと、
一端が前記ワイヤ中継器に接続され、他端側が前記回転体に巻回される第2ワイヤと、
からなり、
前記ワイヤ中継器は開口部上方に設けられ、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは開口部上方で接続されている。
【0010】
一つの態様では、前記ロック部材は、下座板の上動に連動して変位する検知レバーを介して当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動する。
【0011】
一つの態様では、前記回転体は、周縁に連続状に形成された多数の歯状の被係止部を備えており、前記ロック部材は、下座板が上座板に対して相対的に上動することに連動して前記被係止部に係止する係止爪を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、機械式で避難時停止を行うので、電気が不要であり、既設の手動シャッターに後付けが容易であり、また、電気代もかからない。さらには、電気部品を使用しないので、発火性の高いものを扱う倉庫や工場に設置されたシャッターについても本発明の避難時停止装置を採用することができる。復帰ワイヤはシャッターカーテンの自重降下に伴ってシャッターカーテン面部に沿って延出するので、復帰ワイヤに傷が付くことを可及的に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。シャッター装置は、開口部を閉鎖するシャッターカーテン1と、開口部上方に位置してシャッターカーテン1を巻装する巻取シャフト2と、開口部左右両端に立設されたガイドレ−ル3と、を備えている。シャッターカーテン1は、複数のスラット1aを上下に連結して構成されており、下端には座板4が設けてある。座板4は開口部幅方向に延出する長尺状の上座板4aと、上座板4aの下方側に上座板4aに対して相対的に上下動自在に吊持された長尺状の下座板4bとからなり、座板4が障害物検知手段を構成している。通常時には、シャッターカーテン1は開閉機5によって開閉される。
【0014】
シャッターカーテン1は、収納時において、開閉機5を構成するブレーキによって下降が規制された状態で巻取シャフト2に巻装されており、防災盤からの火災検知信号によって自動閉鎖装置6が作動して、ブレーキ解放装置7を介してブレーキを解除する。ブレーキが解除されると、シャッターカーテン1自体及びシャッターカーテン1の下端部に設けた座板4の重さによって、幅方向両端部がガイドレール3の溝部に案内されながら自重で下降して開口部を全閉する。
【0015】
ブレーキ解放レバー8が開閉機5のブレーキケースから突出しており、ブレーキ解放レバー8を移動させることで、巻取シャフト2の回転を規制しているブレーキが解放される。ブレーキを含む開閉機および当該ブレーキを解放するブレーキ解放レバーは公知であり、例えば、特許文献1の図2に記載されている。具体的には、ブレーキ手段は接離自在に対向する二枚のブレーキ板を有しており、シャッターカーテン収納時にはスプリング等の付勢手段によってブレーキ板同士が圧接されており、ブレーキが働いて巻取シャフトの回転が規制されている。ブレーキ解放レバーをスプリングに抗して揺動させることでブレーキ板同士が離隔してブレーキが解放され、巻取シャフトの回転が可能となって、シャッターカーテンが自重降下するようになっている。また、ブレーキ解放レバーをフリーにすれば、前記付勢手段であるスプリングによってブレーキ板同士が圧接されて自動的にブレーキ及びブレーキ解放レバーが復帰するようになっている。
【0016】
ブレーキ解放装置7は、ブレーキ解放レバー8をブレーキ解放方向に移動させる作動手段を備えており、火災検知信号が自動閉鎖装置6に入力されることで、自動閉鎖装置6によってブレーキ解放装置7の作動手段が移動してブレーキ解放レバー8を移動させる。具体的な態様例では、作動手段は自動閉鎖装置6の可動部とブレーキ解放ワイヤW1で連結されており、火災検知信号が自動閉鎖装置6に入力されると、自動閉鎖装置6の可動部が移動してブレーキ解放ワイヤW1が引かれて、ブレーキ解放装置7の作動手段が自動閉鎖装置6側へ移動する。そして、自動閉鎖装置6側へ移動した作動手段が、ブレーキ解放レバー8を移動させてブレーキを解放させる。ブレーキ解放ワイヤW1はアウターケーブル内を延出している。
【0017】
自動閉鎖装置6は、防災盤からの火災検知信号の入力によって可動部が作動して、ブレーキ解放ワイヤW1を引くことで、作動手段を介してブレーキ解放レバー8を移動させてブレーキを解放させる。自動閉鎖装置6がブレーキ解放ワイヤW1を引く態様としては幾つかの手法が知られており、自動閉鎖装置6に内蔵されたバネのバネ力でブレーキ解放ワイヤW1を引くもの、自動閉鎖装置6に内蔵されたモータの駆動力でブレーキ解放ワイヤW1を引くもの等が挙げられる。自動閉鎖装置6は、ブレーキ解放装置7の作動手段を移動させてブレーキ解放レバー8を移動させるものであれば、自動閉鎖装置6の具体的な構成は限定されない。図示の例では、自動閉鎖装置とブレーキ解放装置は別体で構成されているが、自動閉鎖装置一体型のブレーキ解放装置であってもよい。自動閉鎖装置は特許文献1に記載されたようなものでもよい。
【0018】
図4乃至図6に基づいてブレーキ解放装置7の具体的な構成について説明する。図4は、シャッター開放状態、すなわち、ブレーキ復帰状態を示しており、矢印方向はブレーキ解放方向である。図5は、シャッターカーテンの自重降下中、すなわち、ブレーキ解放状態を示しており、図中、矢印方向はブレーキ復帰方向である。図6は、自重降下中に下座板が障害物に当たってロック機構が作動してブレーキ復帰ワイヤを引いた状態、すなわち、ブレーキ復帰状態を示している。図中、「左側」が「自動閉鎖装置側」となっており、左側へ向かう方向が「ブレーキ解放方向」、右側へ向かう方向が「ブレーキ復帰方向」である。
【0019】
ブレーキ解放装置7は、開閉機5のブレーキケースに対応して開閉機5の外側に取り付けられるフレーム70を備えている。フレーム70は、上壁700と、上壁700の左右端部より垂直に延出する側壁701,702を備えており、対向状の側壁701,702間には水平状に延出するガイド軸71が設けてある。また、上壁700にはブレーキ解放レバー8の先端部位を左右方向に移動可能に受け入れる開口が形成されており、ブレーキ解放レバー8の先端部位は上壁700の開口を挿通してフレーム70内に延出している。フレーム70には下面カバー703、側面カバー704,705が設けてあり、全体として箱状に形成されている。
【0020】
ガイド軸71には、作動手段としての第1作動体72、第2作動体73が左右方向にスライド自在に設けてある。第1作動体72は、水平状に延出する底辺720と、底辺の左右端部から対向状に垂直に立ち上がる側辺721,722とから側面視コ字形状を備えており、左右の側辺721,722にはガイド軸71を挿通させる挿通孔が形成されている。第2作動体73は、水平状に延出する底辺730と、底辺730の左右端部から対向状に垂直に立ち上がる側辺731,732とから側面視コ字形状を備えており、左右の側辺731,732にはガイド軸71を挿通させる挿通孔が形成されている。第1作動体72、第2作動体73は、第2作動体73の底辺730を第1作動体72の底辺720に重ねるようにしてガイド軸71に取り付けられる。図示の例では、第1作動体72の底辺720と第2作動体73の底辺730との左右方向の寸法は略同じである。
【0021】
図4乃至図6の下図から明らかなように、第1作動体72の左側の側辺721の幅に対して、右側の側辺722は細幅となっている。より具体的には、右側の側辺722は、第1作動体72の幅方向両端部を切り欠いて中央部のみ残して細幅に形成されている。第1作動体72の左側の側辺721は、第2作動体73の左側の側辺731の幅よりも大きい寸法となっており、第1作動体72の左側の側辺721において、第2作動体73の左側の側辺731から突出した部分にはブレーキ解放ワイヤW1の端部が固定されている。第2作動体73の左側の側辺731は他の側辺よりも大きい立ち上がり寸法(高さ)を備えており、フレーム70内に突出したブレーキ解放レバー8の右側に位置して対向するようになっている。すなわち、ブレーキ解放レバー8を挟んで側辺731と自動閉鎖装置6とが反対側に位置しており、ブレーキ解放レバー8の右側に位置する側辺731が左側に向かって移動することでブレーキ解放レバー8を左側(自動閉鎖装置側)に移動させる。
【0022】
第2作動体73の底辺730の右側部位は、幅方向の両端部位を残すように方形状に切り欠かれている。第2作動体73の右側側辺732にはブレーキ復帰用の復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)の端部が固定されている。第2作動体73の幅寸法は第1作動体72の幅寸法と略同じであり、第2作動体73の底辺730の右側部位に形成された前記切り欠きから第1作動体72の右側の細幅の側辺722が第2作動体73の右側側辺732の内側に位置して突出している。第2作動体73の切り欠き部位の端縁733と第1作動体72の右側側辺722との間の距離D1は第1作動体72に対する第2作動体73の移動ストロークを決定している。
【0023】
ガイド軸71にはコイルスプリング74が巻装されており、コイルスプリング74の左側端部は第2作動体73の左側側辺731に当接しており、コイルスプリング74の右側端部は第1作動体72の右側側辺722に当接している。コイルスプリング74は、第2作動体73の底辺730を第1作動体72の底辺720に重ねるようにしてガイド軸71に取り付けた状態において、コイルスプリング74の右側端部が第1作動体72の右側側辺722に当接しており、コイルスプリング74の左側端部が、第2作動体73の左側側辺731を第1作動体72の左側側辺721に押圧するように作用する。
【0024】
図4はブレーキ解放レバー8がフリーな状態を示し、ブレーキが有効である。図4の状態から、自動閉鎖装置6によってブレーキ解放ワイヤW1が矢印方向に引かれると、第1作動体72の左側側辺721が自動閉鎖装置側に引かれて移動し、同時に第1作動体72の右側側辺722が自動閉鎖装置側に移動することで、コイルスプリング74を介して第2作動体73が自動閉鎖装置側に移動して、第2作動体73の左側側辺731の上端部がブレーキ解放レバー8に当接してこれを移動させることでブレーキを解放する。図5はブレーキが解放された状態を示している。
【0025】
図5の状態から、復帰ワイヤが矢印方向に引かれると、第2作動体73の右側側辺732が引かれて移動し、同時に第2作動体73の右側側辺731がコイルスプリング74を圧縮しながらブレーキ解放レバー8から離間する方向に移動して、ブレーキ解放レバー8をフリーにして、ブレーキに内蔵された復帰手段によってブレーキ及びブレーキ解放レバー8が復帰する。ブレーキを復帰させるために必要な力はコイルスプリング74によって決定されるので、一定の力で復帰ワイヤを引けばよく、ブレーキを安定して復帰させることができる。
【0026】
このように、復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)を引いてブレーキを復帰させる際には、第1作動体72を移動させる必要がない。したがって、第1作動体72に連結されたブレーキ解放ワイヤW1が自動閉鎖装置6の強いバネで引かれている場合(図示の例では、ブレーキ解放ワイヤW1を引く力は、コイルスプリング74の力よりも大きい)、あるいは、ブレーキ解放後には、ブレーキ解放ワイヤW1が自動閉鎖装置6に内蔵したラチェット機構や固定状態にあるモータ軸などに連結されていて不動の場合であっても、復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)を引っ張ってブレーキを復帰させるにあたって、自動閉鎖装置6の構成要素の影響を一切受けることがない。
【0027】
復帰ワイヤは、第1ワイヤW2と第2ワイヤW3とから構成されている。第1ワイヤW2と第2ワイヤW3はワイヤ中継器9を介して接続されている。第1ワイヤW2の一端はブレーキ解放装置7の作動手段に連結され、他端はワイヤ中継器9に連結されている。第1ワイヤW2はアウターケーブル内を延出している。第2ワイヤW3の一端はワイヤ中継器9に連結されており、他端は座板4に設けた回転ドラム10に巻回可能に連結されている。回転ドラム10はゼンマイバネが組み込まれており、第2ワイヤW3の他端を回転ドラム10に巻き取る方向に付勢している。尚、図中14は、ワイヤ過巻込防止ストッパである。
【0028】
ワイヤ中継器9は、回転ドラム10の直上で、開口部上方に位置して設けてある。図9に示すように、ワイヤ中継器9は開口部上方に位置して前後方向(シャッタ収納部15の奥行き方向)に延出しており、前方側(開口部上方のまぐさ部側)には、シャッターカーテン1に沿って上下に導かれる第2ワイヤW3を水平状に後方に向かって案内するガイドローラ90が設けてあり、第2ワイヤW3の一端側と第1ワイヤW2の他端側とは、ワイヤ中継器9のスライダ91(前後方向にスライド自在)を介して接続されている。ガイドローラ90が設けられたローラ支持部材92は、前後方向に延出する長尺部材であり、ブラケット93に対して前後方向に位置調整自在に固定される。図9では4つの異なるガイドローラ90の位置が示してある。ローラ支持部材92を位置調整自在に固定することで、ローラ90に案内されて垂下する第2ワイヤW3とシャッターカーテン1の面部との距離を調整することができる。
【0029】
図10に示すように、回転ドラム10は下半部が上座板4a内に位置しており、上半部が上座板4aから上方に突出しており、全体として傾斜状に設けてある。上座板4aには、回転ドラム10を挿通させるように開口が形成されており、上座板4aから突出した回転ドラム10の上半部を被覆するようにカバー体100が設けてある。カバー体100の上壁は、第2ワイヤW3を挿通させる樹脂ガイド100aを備えている。図11乃至図13では、カバー体100は、上壁を除いて、省略されている。
【0030】
ブレーキが解放されてシャッターカーテン1が自重降下を開始すると、座板4の降下に伴って座板4に設けられた回転ドラム10も降下し、回転ドラム10の降下に伴って、第2ワイヤW3は回転ドラム10が回転することでシャッターカーテン1の降下距離分だけ引き出されていく。シャッターカーテン1の自重降下が第2ワイヤW3を引き出す力は、第2ワイヤW3を巻き取る方向に付勢するゼンマイバネの力よりも大きく、このとき第1ワイヤW2が引っ張られることはない。作動手段のコイルスプリング74の力は、ゼンマイバネの力よりも大きいので、この時に第2作動体73が復帰方向に引っ張られることはない。また、自動閉鎖装置6がブレーキ解放ワイヤW1を引く力は、ゼンマイバネの力よりも大きい。
【0031】
座板4には、回転ドラム10の回転を規制するロック機構が設けてある。ロック機構は、降下中のシャッターカーテン1の下端の座板4が障害物に当接した時に、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動することに連動して作動するように構成されている。回転ドラム10の回転が停止すると、第2ワイヤW3の引き出しが規制され第2ワイヤW3の長さが一定となり、この状態で座板4(すなわち回転ドラム10)が降下すると、第2ワイヤW3、ワイヤ中継器9のスライダ91を介して第1ワイヤW2が引かれて、作動手段がブレーキ復帰方向に移動し、ブレーキ解放レバー8が復帰してブレーキが復帰し、巻取シャフト2の回転を規制してシャッターカーテン1の降下が停止する。ここで、ブレーキ復帰のためには復帰ワイヤ(第1ワイヤW2、第2ワイヤW3)を所定量引っ張る必要があり(すなわち、シャッターカーテン1が所定量降下する必要がある)、障害物に当たった下座板4bは、ブレーキ復帰をさせるだけのシャッターカーテン1の降下量に対応する上動ストロークを備えていることが望ましい。あるいは、下座板4bの上動ストロークが小さい場合であっても、復帰ワイヤの途中(例えば、ワイヤ中継器9)や復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)と作動手段との連結部位に位置させて、第2ワイヤW3の上動ストロークに対して大きい作動手段の牽引量を取り出す機構(例えば、リンク機構)を設けることでブレーキを復帰させることができる。
【0032】
ロック機構について説明する。ロック機構は、回転ドラム10の周縁に連続状に形成された多数の歯状の被係止部10aと、被係止部10aに係止可能な係止爪11aを備えた回動ロック部材11と、を備えている。回動ロック部材11は、自重降下中のシャッターカーテン1の下端が障害物に当接して、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動することに連動して回動し、回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の被係止部10aに噛んで係止してロック状態となって、回転ドラム10の回転を停止させる。
【0033】
図11に示すように、上座板4aと下座板4bとの間には、複数の回動検知レバー4cが設けてあり、自重降下中のシャッターカーテン1の下端が障害物に当接して、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動すると、下座板4bの上動に連動して検知レバー4cが回動するようになっている。複数の回動検知レバー4cの下端部位はワイヤ4dによって互いに連結されており、ワイヤ4dの一端は回動ロック部材11に連結されている。回動検知レバー4cは下端が回転ドラム10から離隔する方向に傾斜しており、下座板4bが上座板4aに対して相対的に上動すると、回動検知レバー4cは、回動検知レバー4c下端がさらに回転ドラム10から離隔する方向に回動し、ワイヤ4dは回転ドラム10から離隔する方向に引っ張られる。座板4の長さ方向に間隔を存して配置した複数の回動検知レバー4cを一つのワイヤ4dで連結することで、自重降下するシャッターカーテン下端の座板4の長さ方向のどの部位に障害物が当たっても、一つの回動ロック部材11を良好に回動させることができる。図示の例では、回転ドラム10の両側に回動検知レバー4cを配置すると共に、それぞれの回動検知レバー4cに連結されるワイヤ4dに連結される左右一対の回動ロック部材11が設けてあるが、回動ロック部材11を座板端部寄りに配置することで、一つの回動ロック部材11を設けるものでもよい。
【0034】
回動ロック部材11は上下方向に延出する「へ字状」の回動レバーであり、中間部に形成された回動支点110を中心として回動可能にカバー体100に設けてある。回動ロック部材11の係止爪11aは、回動支点110よりも上側に形成されている。回動ロック部材11の上端、下端はそれぞれコイルスプリング12、13に連結されている。コイルスプリング13の力はコイルスプリング12の力よりも大きく設定されている。回動ロック部材11の上端に連結された上側コイルスプリング12の他端はカバー体100に連結されており、上側コイルスプリング12は、回動ロック部材11をロック解除方向(回動ロック部材11の上半部が回転ドラム10から離隔する方向)に付勢している。回動ロック部材11や上側コイルスプリング12が装着される部位は、座板4に対する回転ドラム10の装着や納まりによっては他の部位や部材であってもよい。
【0035】
回動ロック部材11の下端に連結された下側コイルスプリング13の他端はワイヤ4dに連結されており、下側コイルスプリング13は、回動ロック部材11が回動して回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラムの歯状の被係止部10aに当たった時の衝撃を緩和する緩衝用バネを構成している。障害物検知を速やかに行うためには、下座板4bの上動の初期で回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の歯状の被係止部10aに係止させることが望ましい。ブレーキ復帰のためには復帰ワイヤを所定量引っ張る必要があり(すなわち、シャッターカーテン1が所定量降下する必要がある)、障害物に当たった下座板4bは、回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の歯状の被係止部10aに係止した後も相対的に上動する必要がある。この時、下側コイルスプリング13が伸びることで、回転ドラム10がロックされた後の下座板4bの上動に伴う係止部分(係止爪11a、被係止部10a)への負荷を緩和している。
【0036】
このように構成された避難時停止装置の作用を説明する。火災感知器によって火災が感知されると、防災盤より信号(DC24V)が出力され、自動閉鎖装置6が作動して、ブレーキ解放ワイヤW1が引かれ、第1作動体72の左側側辺721が自動閉鎖装置側に引かれて移動し、同時に第1作動体72の右側側辺722が自動閉鎖装置側に移動することで、コイルスプリング74を介して第2作動体73が自動閉鎖装置側に移動して、第2作動体73の左側側辺731の上端部がブレーキ解放レバー8に当接してこれを強制的に移動させることで開閉機5のブレ−キが解放される。
【0037】
開閉機5のブレ−キが解放されることによって、開口部上方に巻回収納されているシャッターカーテン1が自重降下し、シャッターカーテン1の自重降下に伴って第2ワイヤW3が回転ドラム10から引き出されながらシャッターカーテン1の面部に沿って延出する。シャッターカーテン1の降下経路に障害物がない場合には、シャッターカーテン1はそのまま降下して開口部を閉鎖する。自重降下するシャッターカーテン1の下方に障害物(人を含む)がある場合には、下座板4bが障害物に当接して、上座板4aに対して相対的に上動することになる。
【0038】
下座板4bが上動すると、回動検知レバー4cが回動して、ワイヤ4dを引っ張り、ワイヤ4dが引かれることで、回動ロック部材11の下端側が回転ドラム10から離隔する方向に引かれ、回動ロック部材11は回動支点110を中心に、上端がコイルスプリング12に抗して回転ドラム10側に回動して、回動ロック部材11の係止爪11aが回転ドラム10の歯10aに噛んで回転ドラム10の回転を停止させる。回転ドラム10の回転が停止すると、第2ワイヤW3の引き出しも停止し、シャッターカーテン1の降下に伴って、第2ワイヤ、ワイヤ中継器9のスライド91を介して第1ワイヤW2が引かれ、第1ワイヤの端部が固定された第2作動体73を引っ張る。第2作動体73が右側に移動することで、ブレーキ解放レバー8はフリーとなって、開閉機5のブレーキが復帰してシャッターカーテン1の降下が停止する。
【0039】
障害物が取り除かれると、下座板4bが下方に下動し、ワイヤ4dによる引っ張りが無くなって、回動ロック部材11はコイルスプリング12の力で元の位置に回動復帰して回転ドラム10のロック状態が解除される。ロック状態が解除されると、回転ドラム10の回転規制が解除され、第2ワイヤW2の引き出しが可能となり、第1ワイヤW1を引っ張る力が無くなり、第2作動体73は圧縮されたコイルスプリング74が伸長する力によって、自動閉鎖装置側に移動し、第2作動体73の左側側辺731がブレーキ解放レバー8を移動させてブレーキを解放し、シャッターカーテン1は自重で再降下する。また、障害物が取り除かれた後に避難者が円滑に避難できるように、障害物を検知して復帰したブレーキを解放させるまでの時間を所定時間遅延する遅延機構(粘性ダンパが例示される)を設けてもよい。
【0040】
図1Aに本発明に係るシャッター装置の他の実施形態の概略正面図を示す。上述の実施形態との比較において、同一の部材については同一の番号が付してあり、同一の番号が付された部材については既述の説明を援用することができる。図1Aでは、復帰ワイヤを構成する第2ワイヤW3は、座板4に設けた回転プーリ10´に巻回されて(第2ワイヤW3が滑らないように回転プーリ10´に1周以上巻き付ける)折り返され、端部が開口部上方の巻取装置10´´(例えば、第2ワイヤW3を巻き取り収納する方向に付勢するゼンマイバネを内蔵した巻取装置)に連結されている。巻取シャフト2の回転を規制するブレーキが解放されると、シャッターカーテン1が自重降下するが、その時、シャッターカーテン1下端の座板4に設けた回転プーリ10´が回転しながら降下することで、巻取装置10´´から引き出された第2ワイヤW3の部分W30が回転プーリ10´によって折り返し案内され、シャッターカーテン1の自重降下に伴って折り返された部分W31(第2ワイヤW3のワイヤ中継器9と回転プーリ10´間の部分)の寸法が延びる。座板4およびロック機構の構成は記述の通りであり、自重降下するシャッターカーテン1の下端の座板4が障害物に当たると、ロック機構が作動して回転プーリ10´の回転が停止する。回転プーリ10´の回転が停止すると、部分W31の寸法が一定となり、さらにシャッターカーテン1が自重降下することで第1ワイヤW2が引かれてブレーキが復帰する。
【0041】
2つの作動体72,73からなる作動手段について説明したが、作動手段はこのものに限定されない。作動手段の他の態様を図7、図8に示す。図4乃至図6に示す態様と同一の部材については共通の番号を付してある。図7、図8に示す例では、ガイド軸71に対して、一つの作動体75がガイド軸71の長さ方向に移動可能に設けてある。作動体75は筒状部750と筒状部750に対して間隔を存して対向状に設けた左右の側壁751,752とを備えており、作動体75の左側側壁751とフレーム70の左側側壁701との間には第1スプリング76が設けてある。一方、作動体75の右側側壁752とフレーム70の右側側壁702との間には第2スプリング77が設けてある。
【0042】
作動体75の左側側壁751にはブレーキ解放ワイヤW1の端部が連結されており、作動体75の右側側壁752には復帰ワイヤ(第1ワイヤW2)の端部が連結されている。図7は、シャッター開放状態(ブレーキ復帰状態)であり、自動閉鎖装置によってブレーキ解放ワイヤW1が引かれることで、作動体75が第1スプリング76を圧縮させ、第2スプリング77を伸長させながら自動閉鎖装置側に移動し、作動体75の左側側壁751がブレーキ解放レバー8に当接してこれを移動させ、ブレーキを解放する。図8は、シャッター自重降下中(ブレーキ解放状態)を示す。ブレーキ復帰時には、復帰ワイヤW2が作動体75をブレーキ解放レバー8から離間する方向に移動させてブレーキを復帰させる。この時、第1スプリング76の伸長力及び第2スプリング77の圧縮力がブレーキ復帰方向に作用する。また、解放レバー復帰用の補助スプリングは、第1スプリング76、第2スプリング77のいずれか一方でもよい。
【0043】
[付記]
本発明に係る自重降下式シャッターにおける機械式避難時停止装置は、ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させる自重降下式シャッターにおいて、第1の方向に移動してブレーキを解放し、第1の方向と反対の第2の方向に移動してブレーキを復帰させる作動手段と、前記作動手段を第2の方向に移動するように当該作動手段に連結された復帰ワイヤと、シャッターカーテン下端の座板の端部以外の開口部に露出する部分に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転体と、前記座板に設けられ、前記回転体に係止して前記回転体の回転を規制するロック部材と、を備え、前記復帰ワイヤの他端側は、シャッターカーテンの自重降下に伴って前記回転体が回転することでシャッターカーテン面部に沿って引き出し可能に収納されており、前記座板は、上座板と、上座板に対して相対的に上動可能な下座板とからなり、上座板と下座板との間には、下座板の上動に連動して変位する検知レバーが設けてあり、前記検知レバーの変位に連動して当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動するように、前記検知レバーと前記ロック部材とを連結し、自重降下するシャッターカーテン下端の下座板が障害物に当たると、ロック部材が移動して回転体の回転を規制して収納されている復帰ワイヤの引き出しを規制し、引き出しが規制された復帰ワイヤが前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させるものである。
一つの態様では、前記回転体は、前記復帰ワイヤの他端側を巻き取る方向に付勢する手段を備えた回転ドラムであり、復帰ワイヤの他端は当該回転ドラムに連結されており、回転ドラムは復帰ワイヤの巻取体を構成する。他の態様では、前記回転体は、回転プーリであり、回転プーリに巻回された復帰ワイヤの端部は開口部上方に設けた巻取装置に巻き取られる。
前記ロック部材は、検知レバーの変位に連動して移動して前記回転体に係止する可動部材であれば、移動の態様(回動、スライド等)は限定されないが、一つの好ましい態様では、前記ロック部材は、検知レバーの変位に連動して回動する回動ロック部材である。前記検知レバーは、下座板の上動に連動して変位する可動部材であれば、変位の態様(回動、スライド等)は限定されないが、一つの好ましい態様では、前記検知レバーは、下座板の上動に連動して回動する回動検知レバーである。一つの態様では、回転体の周縁には連続状に歯状の被係止部が形成され、ロック部材には、前記被係止部に係止する係止爪が形成されている。一つの態様では、前記回転体の左右にはそれぞれロック部材が設けてあり、前記座板には、前記回転体の左右両側に位置してそれぞれ一つ以上の検知レバーが配置されており、回転体の左側に位置する一つ以上の検知レバーが回転体の左側のロック部材に連結され、回転体の右側に位置する一つ以上の検知レバーが回転体の右側のロック部材に連結されている。さらに好ましい態様では、回転体(回転ドラム)の少なくとも一側には、座板の長さ方向に間隔を存して複数の検知レバーが設けてあり、かつ、複数の検知レバーを連結部材(一つの態様ではワイヤ)で互いに連結することで、互いに連結された検知レバーが同時に変位(好ましい態様では回動)するようになっており、当該連結部材はロック部材(好ましい態様では回動ロック部材)に連結されている。前記連結部材と回動ロック部材とを緩衝スプリングを介して連結することで、回動ロック部材の係止爪が被係止部に当接して係止する時の衝撃を緩和することができ、部品の劣化を防止し、安定して回転体の回転規制をしてブレーキを復帰することができる。
一つの態様では、前記復帰ワイヤは、一端が前記作動手段に連結され、他端がワイヤ中継器に接続された第1ワイヤと、一端が前記ワイヤ中継器に接続され、他端側が前記回転体に巻回される第2ワイヤと、からなり、前記ワイヤ中継器は前記回転体を通る鉛直線上に位置して開口部上方に設けられ、前記第2ワイヤはシャッターカーテンの自重降下時にはシャッターカーテンの面部に沿って垂下するように延出する。
一つの態様では、前記ブレーキは、ブレーキ解放レバーの移動によって強制的に解放されると共に、ブレーキ解放レバーによる強制力が解除されると付勢手段により復帰し、前記作動手段は、第1方向及び第2方向に移動可能な第1作動体及び第2作動体と、前記第1作動体と前記第2作動体との間に介装されたバネ部材と、からなり、前記第2作動体は前記第1作動体に対して第2方向へ移動可能であり、前記バネ部材の第1方向側端部は前記第2作動体に当接し、前記バネ部材の第2方向側端部は前記第1作動体に当接しており、前記第1作動体には第1方向牽引部材(一つの態様では、ブレーキ解放ワイヤ)が連結され、前記第1方向牽引部材による第1方向への牽引時には、前記第1作動体及び前記第2作動体、前記バネ部材が一体で第1方向に移動し、前記第2作動体がブレーキ解放レバーを強制的に移動させてブレーキを解放し、前記第2作動体には前記復帰ワイヤが連結され、ブレーキ解放状態からの前記復帰ワイヤによる第2方向への牽引時には、前記第2作動体のみが前記バネ部材に抗して第2方向に移動し、前記ブレーキ解放レバーによる強制力が解除され、前記付勢手段によりブレーキが復帰する。
本発明では、機械式で避難時停止を行うので、電気が不要であり、既設の手動シャッターに後付けが容易であり、また、電気代もかからない。さらには、電気部品を使用しないので、発火性の高いものを扱う倉庫や工場に設置されたシャッターについても本発明の避難時停止装置を採用することができる。復帰ワイヤはシャッターカーテンの自重降下に伴ってシャッターカーテン面部に沿って延出するので、復帰ワイヤに傷が付くことを可及的に防止できる。一つの態様では、一つの回転体を用いるものでありながら、安定して障害物を検知することができる。。一つの態様では、回動ロック部材が回動して回転体に係止する時の衝撃および係止後に係止部位にかかる負荷を緩和することができる。一つの態様では、復帰ワイヤを2つのワイヤから構成し、2つのワイヤを中継器で接続することで、復帰ワイヤを良好に引き回すことができる。
一つの態様では、復帰ワイヤによりブレーキを復帰させる際には、第1作動体を移動させる必要がない。したがって、第1作動体に連結された第1方向牽引部材の影響を受けずに、ブレーキを復帰させることができる。具体的な例では、第1方向牽引部材が自動閉鎖装置の強いバネで引かれている場合、あるいは、ブレーキ解放後には、第1方向牽引部材が自動閉鎖装置に内蔵したラチェット機構や固定状態にあるモータ軸などに連結されていて不動の場合であっても、第2方向牽引部材により良好にブレーキを復帰させることができる。復帰ワイヤによる牽引力は、バネ部材によって決定されるので、一定の力で復帰ワイヤを牽引すればよく、避難時停止装置を構成する復帰ワイヤの張力を一定にして、安定した作動を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、自重降下式シャッターに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るシャッター装置の概略正面図である。
【図1A】他の実施形態に係るシャッター装置の概略省面図である。
【図2】本発明に係るシャッター装置の概略正面図であり、図1と類似の図であるが、シャッターカーテンは座板を除いて省略されている。
【図3】本発明に係るシャッター装置の収納時の概略側面図である。
【図4】シャッター開放状態(ブレーキ復帰状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図5】シャッター自重降下中(ブレーキ解放状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図6】自重降下中に座板スイッチが作動し、シャッターが停止した状態(ブレーキ復帰状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図7】他の実施形態に係る、シャッター開放状態(ブレーキ復帰状態)のブレーキ解放
【図8】他の実施形態に係る、シャッター自重降下中(ブレーキ解放状態)のブレーキ解放装置を示す図である。
【図9】ワイヤ中継器を示す図である。
【図10】座板を側方から見た断面図である。
【図11】座板の概略正面図および矢印に沿った断面図である。
【図12】図11における回転ドラム近傍部位を示す部分拡大図であり、回転ドラムが非ロック状態にある。
【図13】図12において回転ドラムがロック状態にある図である。
【符号の説明】
【0046】
1 シャッターカーテン
2 巻取シャフト
3 ガイドレール
4 座板
4a 上座板
4b 下座板
4c 検知レバー
4d ワイヤ
5 開閉機
6 自動閉鎖装置
7 ブレーキ解放装置
72 第1作動体
73 第2作動体
8 ブレーキ解放レバー
9 ワイヤ中継器
10 回転ドラム
10a 非係止部
11 回動ロック部材
11a 係止爪
W1 ブレーキ解放ワイヤ
W2 ブレーキ復帰ワイヤ(第1ワイヤ)
W3 ブレーキ復帰ワイヤ(第2ワイヤ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させるシャッターにおいて、
第1の方向に移動してブレーキを解放し、第2の方向に移動してブレーキを復帰させる作動手段と、
前記作動手段を第2の方向に移動するように当該作動手段に連結された復帰ワイヤと、
シャッターカーテン下端の座板の端部以外の開口部に露出する部分に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転体と、
前記座板に設けられ、前記回転体に係止して当該回転体の回転を規制するロック部材と、
を備え、
前記座板は、上面と、対向状の側面と、を備えた上座板と、上座板に対して相対的に上動可能な下座板とからなり、
前記回転体は、上座板の端部以外の開口部の露出する部位に位置して、上側が上座板の前記上面の上方に位置し、下側が当該上座板に形成された開口を介して前記上面と前記対向状の側面とで囲まれた上座板内の空間に突出するように設けてあり、
前記復帰ワイヤの他端側は、シャッターカーテンの自重降下に伴って前記回転体が回転することでシャッターカーテン面部に沿って引き出し可能に収納されており、
前記ロック部材は、下座板の上動に連動して、当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動するように構成されており、
自重降下するシャッターカーテン下端の下座板が障害物に当たると、前記ロック部材が移動して回転体の回転を規制して収納されている復帰ワイヤの引き出しを規制し、引き出しが規制された復帰ワイヤが前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる、
シャッター装置。
【請求項2】
前記回転体は、当該回転体の回転中心が前記上座板の上面の上方に位置するように、前記上座板に設けてある、請求項2に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記引き出しが規制されたワイヤは、シャッターカーテンの降下に伴い上座板が下座板に対して相対的に下動することで前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる、請求項1、2いずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記復帰ワイヤは、
一端が前記作動手段に連結され、他端がワイヤ中継器に接続された第1ワイヤと、
一端が前記ワイヤ中継器に接続され、他端側が前記回転体に巻回される第2ワイヤと、
からなり、
前記ワイヤ中継器は開口部上方に設けられ、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは開口部上方で接続されている、
請求項1〜3いずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記ロック部材は、下座板の上動に連動して変位する検知レバーを介して当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動する、
請求項1〜4いずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項6】
前記回転体は、周縁に連続状に形成された多数の歯状の被係止部を備えており、
前記ロック部材は、下座板が上座板に対して相対的に上動することに連動して前記被係止部に係止する係止爪を備えている、
請求項1〜5いずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項1】
ブレーキを解放してシャッターカーテンを自重降下させるシャッターにおいて、
第1の方向に移動してブレーキを解放し、第2の方向に移動してブレーキを復帰させる作動手段と、
前記作動手段を第2の方向に移動するように当該作動手段に連結された復帰ワイヤと、
シャッターカーテン下端の座板の端部以外の開口部に露出する部分に設けられ、前記復帰ワイヤが巻回される回転体と、
前記座板に設けられ、前記回転体に係止して当該回転体の回転を規制するロック部材と、
を備え、
前記座板は、上面と、対向状の側面と、を備えた上座板と、上座板に対して相対的に上動可能な下座板とからなり、
前記回転体は、上座板の端部以外の開口部の露出する部位に位置して、上側が上座板の前記上面の上方に位置し、下側が当該上座板に形成された開口を介して前記上面と前記対向状の側面とで囲まれた上座板内の空間に突出するように設けてあり、
前記復帰ワイヤの他端側は、シャッターカーテンの自重降下に伴って前記回転体が回転することでシャッターカーテン面部に沿って引き出し可能に収納されており、
前記ロック部材は、下座板の上動に連動して、当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動するように構成されており、
自重降下するシャッターカーテン下端の下座板が障害物に当たると、前記ロック部材が移動して回転体の回転を規制して収納されている復帰ワイヤの引き出しを規制し、引き出しが規制された復帰ワイヤが前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる、
シャッター装置。
【請求項2】
前記回転体は、当該回転体の回転中心が前記上座板の上面の上方に位置するように、前記上座板に設けてある、請求項2に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記引き出しが規制されたワイヤは、シャッターカーテンの降下に伴い上座板が下座板に対して相対的に下動することで前記作動手段を第2の方向に移動させてブレーキを復帰させる、請求項1、2いずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記復帰ワイヤは、
一端が前記作動手段に連結され、他端がワイヤ中継器に接続された第1ワイヤと、
一端が前記ワイヤ中継器に接続され、他端側が前記回転体に巻回される第2ワイヤと、
からなり、
前記ワイヤ中継器は開口部上方に設けられ、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは開口部上方で接続されている、
請求項1〜3いずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記ロック部材は、下座板の上動に連動して変位する検知レバーを介して当該ロック部材が前記回転体に係止する方向に移動する、
請求項1〜4いずれか1項に記載のシャッター装置。
【請求項6】
前記回転体は、周縁に連続状に形成された多数の歯状の被係止部を備えており、
前記ロック部材は、下座板が上座板に対して相対的に上動することに連動して前記被係止部に係止する係止爪を備えている、
請求項1〜5いずれか1項に記載のシャッター装置。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−76320(P2013−76320A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−13762(P2013−13762)
【出願日】平成25年1月28日(2013.1.28)
【分割の表示】特願2012−2713(P2012−2713)の分割
【原出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月28日(2013.1.28)
【分割の表示】特願2012−2713(P2012−2713)の分割
【原出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
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