説明

シャープペンシル

【課題】 容易に筆記芯を回転させることができる上、筆記芯を回転させる際の操作感を良好にする。
【解決手段】 遠心方向からの押圧力により求心方向へ移動するように軸筒10の周壁に設けられた押圧部10a1と、軸筒内に回転可能且つ前後移動可能に設けられた回転子20であって、内部に該回転子20の回転に連動して回転するように筆記芯繰出し機構40を有する回転子20とを備え、把持した筆記芯xが前方から押されることで筆記芯繰出し機構40が後退した際に、その後退する筆記芯繰出し機構40を回転子20に係合させて回転子20を後方へ移動するとともにその回転子20を軸筒10と一体的な固定カム部に係合して回転し、押圧部10a1が前記求心方向へ移動した際にも、その移動する押圧部10a1を回転子20に係合させて回転子20を後方へ移動するとともにその回転子20を軸筒10と一体的な固定カム部に係合して回転するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記芯を回転させるようにしたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルで筆記を行う場合、書き進むにしたがって筆記芯の前端部が偏減りし、描線の太さや濃さが一定しないという不具合があった。そのため、筆記者が軸筒をときどき持ち直して回転させるという操作を行うが、その操作が煩わしく、筆記能率を低下させていた。そこで、例えば、特許文献1に記載されたシャープペンシルでは、筆記時に筆記芯に加わる筆圧の軸方向成分によって軸筒内の回転子を回転させ、該回転子内のチャックユニットに把持されている筆記芯を回転させるようにしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に示す従来技術によれば、筆圧が比較的強い場合には、ある程度無意識に筆記芯を回転させることができるが、長時間の筆記で手が疲れていたり手の筋力が元々弱かったり等に起因して、筆圧が比較的弱い場合には、筆記芯及び回転子等が後退せず、これにより筆記芯が回転せず、偏減りによって描線が太くなってしまうおそれがある。
そこで、軸筒内部のバネの弾発力の設定等により、ある程度弱い筆圧であっても、筆記芯及び回転子等を後退し回転させるようにすることが可能であるが、前記弾発力が弱すぎると、後退した回転子等が摩擦等に起因して元の位置に復帰し難くなるという問題を生じるので、このようなバネの設定にも限界がある。
また、前記のように筆圧が弱い場合、筆記芯を回転させるために意識して積極的に軸筒を前方へ押さなければならないが、その操作には違和感がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/142135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、筆記芯を回転させて筆記芯の偏減りを防ぐようにしたシャープペンシルにおいて、容易に筆記芯を回転させることができること、筆記芯を回転させる際の操作感を良好にすること等、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための技術的手段は、筆記芯を把持して軸筒前方へ繰出す筆記芯繰出し機構と、遠心方向からの押圧力により求心方向へ移動するように軸筒の周壁に設けられた押圧部と、軸筒内に回転可能且つ前後移動可能に設けられた回転子とを備え、前記筆記芯繰出し機構を前記回転子と連動して回転するように前記回転子の内部に設け、把持した筆記芯が前方から押されることで前記筆記芯繰出し機構が後退した際に、その後退する筆記芯繰出し機構を前記回転子に係合させて前記回転子を後方へ移動するとともにその回転子を軸筒と一体的な固定カム部に係合して回転し、前記押圧部が前記求心方向へ移動した際にも、その移動する押圧部を前記回転子に係合させて前記回転子を後方へ移動するとともにその回転子を軸筒と一体的な固定カム部に係合して回転するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
筆記芯の前端を被筆記面に押し付ける際の力と、軸筒周壁の押圧部を握る際の力との二種類の力を有効に利用して、筆記芯を回転させることができる。
したがって、長時間の筆記で手が疲れていたり手の筋力が元々弱かったり等に起因して、筆圧が比較的弱い場合でも、筆記芯を回転させ易い。
しかも、筆圧を加えたり軸筒を握ったり等、筆記時の自然な動作によって筆記芯を回転させることができる。
よって、筆記芯の前端を被筆記面に押し付ける操作のみによって筆記芯を回転させる従来技術と比較し、容易に筆記芯を回転させることができる上、筆記芯を回転させる際の操作感も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るシャープペンシルの一例について、要部を切欠して示す構造図である。
【図2】図1における(II)-(II)線切断端面図であり、内部構造を省略して示している。
【図3】回転子の一例を示す半断面図である。
【図4】同シャープペンシルにおける要部断面図であり、(a)は押圧部に押圧力が加わっていない状態を示し、(b)は押圧部に押圧力が加わった状態を示す。なお、本図においては、軸方向へ一体的に移動可能な複数の部品を同一傾斜方向のハッチングで示している。
【図5】同シャープペンシルにおける要部断面図であり、(a)は押圧力が加わっていない状態を示し、(b)は筆記芯に後方への押圧力が加わった状態を示す。なお、本図においては、軸方向へ一体的に移動可能な複数の部品を同一傾斜方向のハッチングで示している。
【図6】第1の固定カム部、第1の回転カム部、第2の固定カム部及び第2の回転カム部の関係を示す展開図であり、(a)は第2の回転カム部が第2の固定カム部に完全に噛み合った状態、(b)は第1の回転カム部が第1の固定カム部に摺接した状態、(c)は第1の回転カム部と第1の固定カム部とが完全に噛み合った状態、(d)は第2の回転カム部が第2の固定カム部に摺接した状態を示す。
【図7】弾性被覆部の他例を示す横断面図であり、軸筒内の構造を省略して示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための一形態では、筆記芯を把持して軸筒前方へ繰出す筆記芯繰出し機構と、遠心方向からの押圧力により求心方向へ移動するように軸筒の周壁に設けられた押圧部と、軸筒内に回転可能且つ前後移動可能に設けられた回転子とを備え、前記筆記芯繰出し機構を前記回転子と連動して回転するように前記回転子の内部に設け、把持した筆記芯が前方から押されることで前記筆記芯繰出し機構が後退した際に、その後退する筆記芯繰出し機構を前記回転子に係合させて前記回転子を後方へ移動するとともにその回転子を軸筒と一体的な固定カム部に係合して回転し、前記押圧部が前記求心方向へ移動した際にも、その移動する押圧部を前記回転子に係合させて前記回転子を後方へ移動するとともにその回転子を軸筒と一体的な固定カム部に係合して回転するようにした。
【0010】
この構成によれば、押圧部に指を当てて軸筒を握り筆記芯を被筆記面に押し付ければ、筆記芯を把持する筆記芯繰出し機構の後退、及び/又は、押圧部の軸筒求心方向への移動によって、回転子が後方へ移動する。そして、後方へ移動した回転子は、軸筒と一体的な固定カム部に係合することで回転する。よって、回転子の回転に連動して筆記芯繰出し機構が回転するとともに、該筆記芯繰出し機構に把持された筆記芯も回転する。
【0011】
また、より具体的な好ましい一形態としては、筆記芯を把持して軸筒前方へ繰出す筆記芯繰出し機構と、遠心方向からの押圧力により求心方向へ移動するように軸筒の周壁に設けられた押圧部と、軸筒内に回転可能且つ前後移動可能に設けられた回転子であって、内部に該回転子の回転に連動して回転するように前記筆記芯繰出し機構を有するとともに、外部に回転カム部を有し、付勢部材によって前方へ付勢された回転子と、前方又は後方へ移動した際の前記回転子における前記回転カム部に係合して前記回転子を回転させるように軸筒内に固定された固定カム部とを備え、前記回転子は、前記求心方向へ移動した際の前記押圧部に係合されて後方へ移動するように設けられ、且つ、把持した筆記芯が前方から押されることで後退した際の筆記芯繰出し機構に係合されて後方へ移動するように設けられる。
【0012】
また、前記回転カム部及び前記固定カム部の好ましい形態としては、前記回転子に、前記回転カム部として、第1の回転カム部と、第2の回転カム部を設け、
前記軸筒内には、前記固定カム部として、後方へ移動した際の前記回転子における第1の回転カム部に係合して前記回転子を一方向へ回転させる第1の固定カム部と、前方へ移動した際の前記回転子の第2の回転カム部に係合して前記回転子を前記一方向へ回転させる第2の固定カム部とを備える。
【0013】
さらに具体的な好ましい形態としては、前記筆記芯繰出し機構は、前記回転子の内部で進退するように設けられた芯タンクと、該芯タンクを前記回転子に対し後方へ付勢する付勢部材と、該芯タンクの前端側に接続されるとともに筆記芯を把持可能なチャックと、該芯タンクの後端側に設けられたノック部とを備え、前記ノック部に対するノック操作により前記芯タンク及び前記チャックを前記回転子に対し進退させて筆記芯を繰出す機構である。
【0014】
さらに、より操作感を向上するとともに当該シャープペンシルに対する把持感触を向上するためには、前記押圧部を外側から覆うようにして弾性被覆部を設ける。
【実施例】
【0015】
以下、上記形態をより具体化した実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「前」とは、軸筒10の先端方向(図1によれば左方向)を意味し、「後」とは前記「前」に対する逆方向を意味する。また、「求心方向」とは、軸筒10の径方向に沿う方向であって、かつ軸筒10の軸心(中心)へ向かう方向を意味する。また、「遠心方向」とは、前記求心方向に対する逆方向を意味する。また、「軸筒軸方向」とは、軸筒10の軸心(中心)に沿う方向を意味する。
【0016】
図1は、本発明に係るシャープペンシルの一例を示す構造図である。
このシャープペンシル1は、軸筒10と、軸筒10内に該軸筒10と一体的に設けられた前側固定カム部材11及び後側固定カム部材12と、同軸筒10内に回転可能かつ進退可能に設けられた回転子20と、該回転子20に接続されたスライダー21、芯挿通管22及び受け部材24等と、受け部材24を前方へ付勢する第1の付勢部材30と、回転子20と一体的に回転するように設けられた筆記芯繰出し機構40とを備える。
そして、このシャープペンシル1は、筆記芯繰出し機構40に把持した筆記芯xが前方から押された場合と、軸筒10の周壁に部分的に設けられた押圧部10a1が押圧された場合とのうち、何れか一方又は双方の場合に、前記筆記芯xを、繰出すことなく回転させる。
【0017】
軸筒10は、長尺筒状の本体部10aと、該本体部10aの先端側に、ねじ止めや嵌合等の接続手段によって固定された先口部10bとを具備する。
本体部10aは、その周壁の前端側に、周方向に所定間隔を置いて複数(図示例によれば三つ)の押圧部10a1を有する。また、本体部10aの後端側の外周面には、クリップ10cが設けられ、同本体部10aの最後端部には、環状の尾栓10dが接続される。
なお、軸筒10の他例としては、単一の筒状部材からなる態様や、図示例以外の複数の筒状部材を接続してなる態様とすることが可能である。
【0018】
押圧部10a1は、軸筒10の周壁を平面視凹状(もしくはU字状)に切欠することで、その凹状部分の内側に形成される片持ち梁状の部分であり、その自由端側の部分を前方へ向けている。この押圧部10a1は、図示例によれば、軸筒10の周方向に等間隔を置いて三つ設けられる(図2参照)。この配置によれば、三つの押圧部10a1が、それぞれ、筆記姿勢にある人差し指、中指、親指に接触するため、押圧部10a1に対する押圧操作を、比較的軽い把持力でもって良好に行うことができる。
【0019】
この押圧部10a1の前端側の表面には、把持する指が滑らないように、凹凸状の滑り止め部10a11が設けられる。この滑り止め部10a11は、図示例によれば、軸筒10に直交する方向の凸条と凹溝とを、軸筒軸方向にわたって交互に配置することで構成される。
【0020】
また、押圧部10a1の内側(軸筒内側)には、軸筒10の本体部10a内周面から軸筒求心方向へ向かって突出するように、突部10a12が設けられる。この突部10a12の後端側(図1によれば右端側)には、回転子20に摺接させるための傾斜面が形成される。
【0021】
また、先口部10bは、先細筒状に形成される。
【0022】
また、前側固定カム部材11は、軸筒10内の前端寄りに、進退不能かつ回転不能に固定された略筒状の部材である。
この前側固定カム部材11の周壁には、複数の押圧部10a1をそれぞれ挿通させる複数(図示例によれば三つ)の挿通孔11a(図4参照)が設けられる。また、前側固定カム部材11内周面における挿通孔11aよりも前側には、前方へ移動した際の回転子20の第2の回転カム部20a1に係合して回転子20を回転させる第2の固定カム部11bが形成される。
【0023】
第2の固定カム部11bは、前側固定カム部材11の内周面の一部を後方へ拡径することで形成された段部に配置され、軸筒周方向の全周にわたって等間隔に配設された後方向きの凹凸部であり、図6の展開図に例示するように、断面鋸刃状に形成される。
【0024】
また、後側固定カム部材12は、前側固定カム部材11の内周面の後端側に挿入されて重ね合わせられるとともに、進退不能かつ回転不能に固定された略筒状の部材である。
この後側固定カム部材12の前端面には、後方へ移動した際の回転子20の第1の回転カム部20b1(図3及び図4参照)に係合して回転子20を回転させる第1の固定カム部12a(図4参照)が形成される。
【0025】
第1の固定カム部12aは、軸筒周方向の全周にわたって等間隔に設けられた前方向きの凹凸部であり、この各凹凸部は、図6の展開図に例示するように、第2の固定カム部11bを構成する各凹凸部と線対称となる断面鋸刃状に形成される。
この第1の固定カム部12aは、図6(a)に示すように、第2の固定カム部11bに対し、周方向に所定のピッチpずらすようにして設けられる。
【0026】
また、後側固定カム部材12の前端側の内周面には、回転子20の外周面に摺接又は近接するように、環状突部12b(図4及び図5参照)が形成される。
この環状突部12bは、回転子20外周面との接触面積を局部的に狭くすることで、後側固定カム部材12内周面と回転子20外周面とを安定的に接触させ、回転子20の回転運動及び進退運動をスムーズにする。
【0027】
また、回転子20は、軸筒10内に回転可能且つ前後移動可能に設けられ、内部に該回転子20と連動して回転するように筆記芯繰出し機構40を支持するとともに、後退した際の筆記芯繰出し機構40に押されて後方移動するように設けられている。
この回転子20は、外部に第2の回転カム部20a1を形成した前側環状突起20a、及び第1の回転カム部20b1を形成した後側環状突起20bを有する。
そして、この回転子20は、軸筒求心方向へ撓んだ押圧部10a1に摺接された場合、又は軸筒後方へ移動した筆記芯繰出し機構40に押された場合に、後方へ移動し、第1の付勢部材30の付勢力によって前方へ移動する。
【0028】
より詳細に説明すれば、この回転子20は、図3に示すように、筒状の部材であり、その外周面における前後方向の中央寄りに、前側環状突起20aと後側環状突起20bを有する。
【0029】
前側環状突起20aは、その前端部に第2の回転カム部20a1を有する。
この第2の回転カム部20a1は、軸筒周方向の全周にわたって等間隔に設けられた前方向きの凹凸部であり、図6の展開図に例示するように、第2の固定カム部11bに対し嵌り合う、断面鋸刃状に形成される。
【0030】
また、後側環状突起20bは、その後端面に、第1の回転カム部20b1を有するとともに、その前端側の角部分に傾斜面20b2を有する(図3参照)。
第1の回転カム部20b1は、軸筒周方向の全周にわたって等間隔に設けられた後方向きの凹凸部であり、図6の展開図に例示するように、第1の固定カム部12aに対し嵌り合う断面鋸刃状に形成される。この第1の回転カム部20b1は、図示例によれば、第2の回転カム部20a1と線対称に形成される。
【0031】
また、傾斜面20b2は、複数の押圧部10a1における各突部10a12に摺接するように設けられたC面取り状の傾斜面である。
なお、図示例によれば、押圧部10a1の突部10a12と、回転子20における後側環状突起20bとの双方に傾斜面を設け、これら傾斜面を摺接させるようにしているが、他例としては、何れか一方の傾斜面を角部に置換し、該角部を他方の傾斜面に摺接させる構成とすることも可能である。
【0032】
また、回転子20内周面の前端側には、前方へ向かって階段状に拡径されたチャックリング装着部20c(図3参照)が設けられる。このチャックリング装着部20cは、段付環状のチャックリング44(図4及び図5参照)に遊嵌して、該チャックリング44の前後方向へのスライドを可能にするとともに、後方へスライドした際のチャックリング44に当接して、該チャックリング44の後方へのスライドを規制する。
【0033】
また、回転子20内周面には、チャックリング装着部20cの後側に間隔を置いて、後方へ向かって階段状に拡径されたスプリング装着部20d(図3参照)が設けられる。このスプリング装着部20dは、筆記芯繰出し機構40を構成する第2の付勢部材42を挿入するとともに、該第2の付勢部材の前端を受ける。
【0034】
そして、上記構成の回転子20の前端側には、スライダー21が接続される。
スライダー21は、前方へ向かって階段状に縮径された段付円筒状の部材であり、その外周面の角部分21a1を、先口部10b内面(傾斜面)に対し、後方へ離間している。
また、スライダー21の内周面には、後方へ向かって階段状に拡径することで形成された段部21bが設けられる。この段部21bは、前方へスライドした際のチャックリング44を受けて、該チャックリング44の前方へのスライドを規制する。
【0035】
そして、前記スライダー21の前端側には、芯挿通管22が接続され、該芯挿通管22よりも後側の内部には、後述するブレーカ45が嵌合される。
芯挿通管22は、スライダー21から前方へ突出して、筆記芯xを繰出し可能に挿通する管体であり、スライダー21に対し進退不能かつ回転不能に固定される。
【0036】
また、上記構成の回転子20の後端側には、受け部材24が接続される。
この受け部材24は、筆記芯繰出し機構40を構成する芯タンクを遊挿する略円筒状の部材であり、第1の付勢部材30の前端部を受けている。なお、他例としては、受け部材24を省いて、回転子20の後端部により直接的に第1の付勢部材30前端部を受けるようにしてもよい。
【0037】
第1の付勢部材30は、圧縮コイルスプリングであり、その後端部が軸筒10内の図示しない不動部位(例えば、軸筒10内面に形成された段部や、軸筒10内に固定された筒状部材の前端部等)によって受けられている。そして、この第1の付勢部材30は、受け部材24、及び該受け部材24と一体的な回転子20、スライダー21、芯挿通管22等を前方へ付勢している。
【0038】
また、筆記芯繰出し機構40は、回転子20及び受け部材24の内部で進退するように設けられた芯タンク41と、芯タンク41を回転子20に対し後方へ付勢する第2の付勢部材42と、該芯タンク41の前端側に接続されるとともに筆記芯xを把持可能なチャック43と、該チャック43の前端側に環状に装着されるチャックリング44と、チャック43の前方側に間隔を置いて固定されたブレーカ45と、芯タンク41の後端側に接続されたスペーサ46、栓部材47、消しゴム48及びノック体49とを備え、ノック体49に対するノック操作により芯タンク41及びチャック43を回転子20に対し進退させて筆記芯xを繰出す機構である(図1及び図5参照)。
【0039】
芯タンク41は、長尺筒状の部材であり、回転子20及び受け部材24内に進退可能に挿通され、第2の付勢部材42によって、回転子20に対し後方へ付勢されている。この芯タンク41の後端部は、円筒状のスペーサ46及び栓部材47を介して、消しゴム48が着脱可能に接続される。さらに、栓部材47の後端側には、消しゴム48を覆って軸筒10方向へ突出するように、ノック体49が着脱可能に接続されている。
【0040】
また、チャック43は、弾性的に撓むことが可能な合成樹脂材料又は金属材料から形成され、筆記芯xの周囲に位置するように同芯状に配置された複数(例えば2〜4程度)の爪部を備え、これら爪部を軸筒求心方向へ撓ませることで筆記芯xを回転不能且つ後退不能に把持し、これら爪部を弾性的に復元することで筆記芯xを解放する。
このチャック43は、その基端側部分(図示の右端部分)が、芯タンク41の前端側内周面に固定されている。
【0041】
また、チャックリング44は、段付筒状の部材であり、回転子20の先端側に所定量進退するように設けられる。
このチャックリング44は、チャック43の外周に嵌り合って、チャック43が筆記芯xを回転不能且つ後退不能に把持した状態を維持し(図4及び図5参照)、チャック43と共に前進した際には、スライダー21内面(段部21b)に当接して、チャック43から後方へ外される(図示せず)。
【0042】
ブレーカ45は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性体からなる円筒状部材であり、スライダー21内に進退不能に嵌合される。そして、このブレーカ45は、挿通される筆記芯xを弾性的に把持する。
【0043】
また、第2の付勢部材42は、図示例によれば圧縮コイルスプリングであり、回転子20に対し、芯タンク41及びチャック43等を後方へ付勢している。
【0044】
また、図1及び図2中の符号50は、軸筒10周壁の押圧部10a1を外側から覆う弾性被覆部であり、必要に応じて設けられる。
この弾性被覆部50は、エラストマー樹脂等の弾性を有する合成樹脂材料の被膜であり、軸筒10の本体部10aを成形する際に同時成形(二色成形)される。
図示例の弾性被覆部50は、押圧部10a1を含む軸筒10前側の把持部位を、全周にわたって略筒状に覆うように設けられる。
この構成によれば、押圧部10a1を押圧する際の把持感触及び操作感を向上することができるのは勿論のこと、押圧部10a1の隙間から軸筒10内部へ異物等が侵入するのを防ぐこともできる。
【0045】
次に、上記構成のシャープペンシル1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。図4及び図5は、弾性被覆部50を省略した状態のシャープペンシル1の要部を示す。
【0046】
先ず、図4(a)に示すように、シャープペンシル1に対し外力が加えられていない状態では、回転子20は、第1の付勢部材30の弾発力により前方へ付勢されるとともに、後側環状突起20bを、押圧部10a1の突部10a12に当接又は近接させて静止している。また、回転子20内の筆記芯繰出し機構40は、チャック43によって筆記芯xを回転不能且つ後退不能に把持した状態で静止している。
この静止状態では、図6(a)に示すように、第2の回転カム部20a1と第2の固定カム部11bとが噛み合った状態であるため、回転子20の及び筆記芯xが回転することはない。
【0047】
また、押圧部10a1に対し軸筒求心方向への外力が加えられた場合、及び/又は、筆記芯xの前端に対し後方への外力が加えられた場合には、回転子20が後方へ移動する。以下、このときの動作を、前記二つの場合に分けて詳細に説明する。
【0048】
先ず、押圧部10a1に対し軸筒求心方向への外力が加えられた場合には、図4(b)に示すように、押圧部10a1が軸筒求心方向側へ撓み、該押圧部10a1内側の突部10a12が、回転子20における後側環状突起20bの傾斜面20b2(図3参照)に摺接し、回転子20を後方へ移動させる。
【0049】
また、筆記芯xの前端に対し後方への外力が加えられた場合には、図5(b)に示すように、筆記芯x、及び該筆記芯xを把持している筆記芯繰出し機構40が後退し、この後退する筆記芯繰出し機構40に係合されて、回転子20も後方へ移動する。より詳細には、筆記芯xに加わる後方への力が、筆記芯xを後退不能に把持しているチャック43に伝達され、さらに、チャック43の基端側から芯タンク41へ、チャック43に嵌り合うチャックリング44から回転子20へ伝達されて、回転子20が後方へ押し動かされる。
【0050】
そして、前記のようにして後方へ移動した回転子20は、第1の回転カム部20b1を第1の固定カム部12aに噛み合わせることで、軸筒10周方向の一方へ所定量だけ回転する(図6(b)(c)参照)。
【0051】
また、押圧部10a1に対する押圧力が解除され、且つ、筆記芯x前端に対する押圧力も解除されると、回転子20が第1の付勢部材30の付勢力によって前方へ移動する。
すると、回転子20は、図6(d)に示すように、第1の回転カム部20b1を第1の固定カム部12aから離間し、第2の回転カム部20a1を第2の固定カム部11bに噛み合わせることで、さらに前記一方へ所定量だけ回転する。
【0052】
したがって、前述した回転子20の回転に伴い、回転子20内の筆記芯繰出し機構40、及び該筆記芯繰出し機構40に把持された筆記芯xも所定量だけ回転する。より詳細に説明すれば、回転子20が回転すると、その回転力がチャックリング44及びチャック43を介して筆記芯xに伝達され、筆記芯xが軸筒中心部を軸心にして回転する。
よって、筆記芯x先端の偏減りを防止することができる。
【0053】
上記のようにして、筆記芯xを回転させる操作は、手の3本の指でシャープペンシル1を把持した通常の筆記姿勢において、軸筒10を握る指に力をいれた際や、軸筒10を握り筆圧をかけた際等に自然に行われるため、筆記者が意識して操作を行わなくても筆記芯xを容易に回転させることができ、その操作感が良好である。
しかも、前記回転動作のために、押圧部10a1に加わる押圧力と、筆記芯x前端に加わる押圧力との二種類の力を有効に用いているため、筆記芯x前端に加わる押圧力のみを用いる従来技術等と比較し、より確実な動作が期待できる。
したがって、例えば、長時間の筆記で手が疲れていたり手の筋力が元々弱かったり等に起因して、筆圧が比較的弱い場合等でも、筆記芯を回転させ易い。
【0054】
また、詳細な説明は省略するが、筆記芯xを繰出す場合には、周知のシャープペンシルと同様に、軸筒10後端のノック体49に対するノック操作により芯タンク41を進退させれば、芯タンク41前端のチャック43の進退動作により筆記芯xが繰り出される。
【0055】
なお、上記シャープペンシル1によれば、特に好ましい態様として弾性被覆部50を軸筒10の全周に設けるようにしたが(図2参照)、他例としては、前記弾性被覆部50を、図7に示す複数の弾性被覆部50’に置換してもよい。この弾性被覆部50’は、各押圧部10a1を覆うようにして、軸筒10の外周面に部分的に設けられる。
また、さらに他例としては、押圧部10a1を含むようにして、軸筒10の略全長にわたる筒状の弾性被覆部を設けた態様や、軸筒10とは別体に製造された弾性被覆部を後工程で軸筒10に装着した態様、弾性被覆部を省いた態様等とすることも可能である。
【0056】
また、上記シャープペンシル1によれば、押圧部10a1を軸筒10の周壁に片持ち梁状に構成したが、他例としては、軸筒の周壁の一部を弾性材料(例えば、エラストマー樹脂や、ゴム材料等)からなる押圧部とし、この押圧部が軸筒10内へ変形して回転子20に摺接し該回転子20を前進させる構造とすることも可能である。
【0057】
また、上記シャープペンシル1によれば、軸筒10とは別体の前側固定カム部材11及び後側固定カム部材12を設け、これら前側固定カム部材11及び後側固定カム部材12に、それぞれ第2の固定カム部11b及び第1の固定カム部12aを設けるようにしたが、他例としては、軸筒10に対し、直接的に第1の固定カム部及び第2の固定カム部の一方又は双方を加工した構造とすることも可能である。
【0058】
また、上記シャープペンシル1によれば、回転子20が前進した時に回転し、さらに後退した時にも回転するようにしたが、他例としては、回転子20が前進した時のみ回転する態様や、回転子20が後退した時のみ回転する態様等とすることも可能である。すなわち、この場合には、第1の回転カム部20b1及び第1の固定カム部12aと、第2の回転カム部20a1及び第2の固定カム部11bとのうち、その一方を省いた構成とすればよい。
【0059】
また、上記シャープペンシル1では、軸筒後端部に対するノック操作により筆記芯xを繰出す筆記芯繰出し機構40を具備したが、他例としては、前記筆記芯繰出し機構40に置換して、軸筒後端部に対する回転操作により筆記芯xを繰出す筆記芯繰出し機構(図示せず)、軸筒を軸方向へ振る操作により筆記芯xを繰出す筆記芯繰出し機構(図示せず)、又は軸筒を径方向へ振る操作により筆記芯xを繰出す筆記芯繰出し機構(図示せず)を具備した構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:シャープペンシル 10:軸筒
10a1:押圧部 10a12:突部
11:前側固定カム部材 11b:第2の固定カム部
12:後側固定カム部材 12a:第1の固定カム部
20:回転子 20a1:第2の回転カム部
20b1:第1の回転カム部 30:第1の付勢部材
40:筆記芯繰出し機構 43:チャック
50,50’:弾性被覆部 x:筆記芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記芯を把持して軸筒前方へ繰出す筆記芯繰出し機構と、遠心方向からの押圧力により求心方向へ移動するように軸筒の周壁に設けられた押圧部と、軸筒内に回転可能且つ前後移動可能に設けられた回転子とを備え、
前記筆記芯繰出し機構を前記回転子と連動して回転するように前記回転子の内部に設け、
把持した筆記芯が前方から押されることで前記筆記芯繰出し機構が後退した際に、その後退する筆記芯繰出し機構を前記回転子に係合させて前記回転子を後方へ移動するとともにその回転子を軸筒と一体的な固定カム部に係合して回転し、
前記押圧部が前記求心方向へ移動した際にも、その移動する押圧部を前記回転子に係合させて前記回転子を後方へ移動するとともにその回転子を軸筒と一体的な固定カム部に係合して回転するようにしたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
筆記芯を把持して軸筒前方へ繰出す筆記芯繰出し機構と、
遠心方向からの押圧力により求心方向へ移動するように軸筒の周壁に設けられた押圧部と、
軸筒内に回転可能且つ前後移動可能に設けられた回転子であって、内部に該回転子の回転に連動して回転するように前記筆記芯繰出し機構を有するとともに、外部に回転カム部を有し、付勢部材によって前方へ付勢された回転子と、
前方又は後方へ移動した際の前記回転子における前記回転カム部に係合して前記回転子を回転させるように軸筒内に固定された固定カム部とを備え、
前記回転子は、前記求心方向へ移動した際の前記押圧部に係合されて後方へ移動するように設けられ、且つ、把持した筆記芯が前方から押されることで後退した際の筆記芯繰出し機構に係合されて後方へ移動するように設けられることを特徴とするシャープペンシル。
【請求項3】
前記回転子に、前記回転カム部として、第1の回転カム部と、第2の回転カム部を設け、
前記軸筒内には、前記固定カム部として、後方へ移動した際の前記回転子における第1の回転カム部に係合して前記回転子を一方向へ回転させる第1の固定カム部と、前方へ移動した際の前記回転子の第2の回転カム部に係合して前記回転子を前記一方向へ回転させる第2の固定カム部とを備えたことを特徴とする請求項2記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記筆記芯繰出し機構は、前記回転子の内部で進退するように設けられた芯タンクと、該芯タンクを前記回転子に対し後方へ付勢する付勢部材と、該芯タンクの前端側に接続されるとともに筆記芯を把持可能なチャックと、該芯タンクの後端側に設けられたノック部とを備え、前記ノック部に対するノック操作により前記芯タンク及び前記チャックを前記回転子に対し進退させて筆記芯を繰出す機構であることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記押圧部を外側から覆うようにして弾性被覆部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載のシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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