説明

シュレッダーダストの処理方法

【課題】 水分(3〜15%)を含むシュレッダーダストを効率的に処理することができ、シュレッダーダスト中の銅分などの有価金属を同時に回収することが出来る、シュレッダーダストの処理方法を提供する。
【解決手段】 シュレッダーダストの処理方法は、シュレッダーダストと廃プラスチック基板とを混合して燃焼させる燃焼工程と、前記燃焼工程で得られる貴金属含有屑を回収する回収工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュレッダーダストの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
破砕業者が廃棄する廃自動車シュレッダーダスト(破砕屑)は、車重量の約20%の割合で発生し、年間120万トンにのぼる。上記シュレッダーダストは軽くてかさ張るため、埋立地延命の点から、固化減容を含む発生削減および有効利用手法の技術的確立が急務となっている。
【0003】
特許文献1では、「鉄鋼におけるシュレッダーダストの処理方法が開示されている。特許文献1では、シュレッダーダストを団鉱処理し、昇温のための熱源として精製炉(転炉)に挿入する」方法が開示されている。特許文献1の技術では、予め団鉱処理が行われているため、シュレッダーダスト中の水分量がかなり少なくなっている。このため、シュレッダーダストが熱源として炉に投入されている。
【0004】
しかしながら、シュレッダーダストは、鉄分を多く含むため、自然発火する可能性がある。そこで、通常は、発火防止のためシュレッダーダストは水冷されている。したがって、シュレッダーダストは水分を多く含む場合が多い。このため、効率的にシュレッダーダストを大量に処理しようとする場合は、多くの加熱源が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−189818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、熱源としてシュレッダーダストを投入する技術である。したがって、特許文献1では、シュレッダーダスト中の水分についての対策は全く開示されていない。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑み、水分を含むシュレッダーダストを効率的にかつ大量に処理することができ、シュレッダーダスト中の有価金属を同時に回収することができる、シュレッダーダストの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシュレッダーダストの処理方法は、シュレッダーダストと廃プラスチック基板とを混合して燃焼させる燃焼工程と、前記燃焼工程で得られる貴金属含有屑を回収する回収工程と、を含むことを特徴とするものである。本発明に係るシュレッダーダストの処理方法においては、水分を含むシュレッダーダストを効率的にかつ大量に処理することができ、シュレッダーダスト中の有価金属を同時に回収することができる。
【0009】
前記シュレッダーダストと前記廃プラスチック基板とを混合する際に、前記シュレッダーダストと前記廃プラスチック基板との混合比率を、重量比で7:3〜5:5としてもよい。前記シュレッダーダストの粒度を20mmφ〜50mmφとし、前記廃プラスチック基板の粒度を10mmφ以下としてもよい。
【0010】
前記燃焼工程において、キルン炉を用いてもよい。前記燃焼工程において、前記キルン炉における処理温度を800℃〜1100℃としてもよい。前記燃焼工程において、前記キルン炉に150リットル/h〜350リットル/hの重油を燃料として供給してもよい。前記燃焼工程において、前記シュレッダーダストおよび前記廃プラスチック基板の1トンあたりに対して、3,250Nm/h〜3,750Nm/hの空気を供給してもよい。前記燃焼工程において、前記キルン炉からの排ガス温度を900℃〜1000℃に調整してもよい。
【0011】
前記廃プラスチック基板は、60mass%〜90mass%のプラスチックを含有していてもよい。前記シュレッダーダストの水分含有量は、5mass%〜10mass%としてもよい。前記回収工程で回収された前記貴金属含有屑を溶融炉で溶融する溶融工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水分を含むシュレッダーダストを効率的にかつ大量に処理することができ、シュレッダーダスト中の有価金属を同時に回収することができる、シュレッダーダストの処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シュレッダーダストの処理方法を示すフローである。
【図2】シュレッダーダストおよび廃プラスチック基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
(実施形態)
図1を参照しつつ、実施形態に係るシュレッダーダストの処理方法の内容を説明する。なお、本実施形態において対象とするシュレッダーダストは、自動車シュレッダーダスト(ASR:Automobile Shredder Residue)である。上記のシュレッダーダストは、一例として、水分を10mass%から20mass%、銅を5mass%から10mass%含み、さらにプラスチック、スポンジ、SUS、シート等を含む。シートとは、座席等のクッション材である。図2(a)に示すように、シュレッダーダストは、粒状に粉砕されている。シュレッダーダストの粒度は、20mmφから50mmφである。
【0015】
シュレッダーダストを処理するためには、燃焼によってシュレッダーダストを焼却する必要がある(燃焼工程)。しかしながら、シュレッダーダストは鉄を含むため発火しやすいことから、水をかけられた状態で保管されている。このような理由から、シュレッダーダストは、上記のように水分を多く含む。このため、シュレッダーダストを焼却するためには、加熱燃料が大量に必要となる。
【0016】
そこで、本実施形態においては、加熱燃料として廃プラスチック基板を用いる。具体的には、シュレッダーダストと廃プラスチック基板とを混合し、廃プラスチック基板のプラスチックの燃焼熱を利用する。ここでの混合方法については、特に限定されるものではない。例えば、両者を単純に機械的に混合してもよく、投入装置などを用いて両者が均一に分散するように混合してもよい。図2(b)に示すように両者をできるだけ分散させることによって、効率的な燃焼を実現することができる。それにより、大量処理を可能とする。効率的な燃焼のため、廃プラスチック基板の粒度は、10mmφ以下であることが好ましい。
【0017】
廃プラスチック基板は、60mass%から90mass%のプラスチックを含有している。この場合、廃プラスチック基板を加熱燃料として効率的に利用するためには、シュレッダーダストと廃プラスチック基板とを、重量比で7:3から5:5で混合することが好ましい。この場合、高効率の燃焼工程が実現され、シュレッダーダストの大量処理が可能となる。また、廃プラスチック基板は、銅を10mass%から17mass%、金を30g/tから60g/t、銀を250g/tから300g/t含有している。したがって、廃プラスチック基板は、好ましい燃料となると同時に、貴金属含有原料となる。
【0018】
シュレッダーダストおよび廃プラスチック基板を燃焼させる燃焼工程は、処理炉で行われる。処理炉は、特に限定されるものではないが、例えば、キルン炉である。キルン炉は、装入物であるシュレッダーダストと廃プラスチック基板とを回転させつつ効率的に混合させる。それにより、効率よく燃焼工程を実施することができる。なお、燃焼工程においては、再生重油等の安価な燃料を補助燃料として用いてもよい。例えば、シュレッダーダストおよび廃プラスチック基板混合物1tに対して、150L/h〜350L/hの補助燃料をキルン炉に供給してもよい。例えば、キルン炉内温度が800℃〜1100℃程度になるように、補助燃料を用いてもよい。
【0019】
なお、シュレッダーダストおよび廃プラスチック基板の燃焼工程において、シュレッダーダストおよび廃プラスチック基板の混合物1トンあたりに対して、3,250Nm/hから3,750Nm/hの空気をキルン炉に吹き込むことが好ましい。なお、燃焼効率を上げるために、酸素富化空気を用いてもよい。
【0020】
なお、キルン炉からの排ガスの温度は、900℃〜1000℃であることが好ましい。排ガスの温度を上記範囲に調整することによって、キルン形状の炉における燃焼を完全燃焼とすることができ、排ガス中のCO濃度を安定させることがきる。また、炉内の耐火物の保護が可能である。
【0021】
シュレッダーダストおよび廃プラスチック基板の燃焼工程後には、貴金属含有屑が得られる。貴金属含有屑には、銅、金、銀などが含まれる。一例として、貴金属含有屑には、12mass%から15mass%の銅が含まれ、25g/tから40g/tの金が含まれ、200g/tから300g/tの銀が含まれる。この貴金属含有屑を回収することによって、貴金属の有効利用が可能となる。例えば、貴金属含有屑を、金銀屑および銅屑と共に溶融炉(反射炉)に投入することによって、マット中に金、銀、および銅を回収することができる。このマットを銅製錬炉のPS転炉等に装入することによって、粗銅を経て99.99mass%の電気銅を得ることができる。また、金および銀については、銅電解スライムを経て99.99mass%まで高純度化することができる。
【0022】
あるいは、貴金属含有屑を銅屑などと共に、キューポラ炉に投入してもよい。この場合、ブラックカッパーおよびスラグを経て、金、銀、および銅を92mass%から98mass%のブラックカッパー中に回収することができる。ブラックカッパーは、精製炉において錫および鉄が除去され、粗銅を経て99.99mass%の電気銅として回収される。
【0023】
本実施形態によれば、廃プラスチック基板を燃焼熱源として用いることによって、水分を多く含むシュレッダーダストを効率よく焼却することができる。また、廃プラスチック基板を用いることによって、燃料コストを低減可能であるとともに、廃プラスチック基板に必要であった処理コストを削減することができる。また、燃焼工程で得られた貴金属含有屑を回収することによって、貴金属を有効利用することができる。
【実施例】
【0024】
以下、上記実施形態にしたがって、シュレッダーダストに対して燃焼工程を実施した。
【0025】
(実施例)
ASRシュレッダーダスト(1.8t/hから2.5t/h)を廃プラスチック基板(1.6t/hから2.0t/h)と混合し、キルン炉に装入した。ASRシュレッダーダストは、水分を10mass%から17mass%含み、銅を6mass%から7mass%含み、その他にプラスチック、スポンジ、SUS、シートなどを含有するものであった。ASRシュレッダーダストの粒度は、20mmφから50mmφであった。
【0026】
廃プラスチック基板として、粒度が50mmφ以下のものを使用した。廃プラスチック基板は、80mass%から90mass%のプラスチックを含有しており、さらに、13mass%から17mass%の銅を含有し、30g/tから50g/tの金を含有し、250g/tから300g/tの銀を含有していた。
【0027】
ASRシュレッダーダストと廃プラスチック基板とをキルン炉へ装入した。この際に、両者が均一に分散するように機械的に混合した。キルン炉では、回転しながら、装入物であるASRシュレッダーダストと廃プラスチック基板とを効率よく混合させ、加熱燃焼させた。キルン炉での処理のスタート時には、再生重油などの安価な燃料を用い、キルン炉内温度を800℃から1100℃とした。再生重油は、ASRシュレッダーダストおよび廃プラスチック基板の1トンあたりに対して150L/h〜350L/h供給した。空気は、ASRシュレッダーダストおよび廃プラスチック基板の1トンあたりに対して、3,250Nm/hから3,750Nm/h吹き込んだ。
【0028】
キルン炉での処理後に回収された貴金属含有犀は、金銀犀および銅犀と共に、溶融炉(反射炉)において処理し、マットに金、銀、および銅を回収し、銅製錬炉のPS転炉に装入して粗銅を得て、電解により99.99mass%の電気銅を得た。金および銀については、銅電解スライムから99.99mass%のものを得た。
【0029】
実施例では、廃プラスチック基板を用いることによって、効率的な燃焼が実現され、大量処理が可能となった。具体的には、ASRシュレッダーダストおよび廃プラスチック基板の合計で、2700t/月〜3000t/月の処理(例えば、ASR:1500t/月、廃プラスチック基板:1500t/月)が可能であった。また、廃プラスチック基板が好ましい燃料となるとともに、ASRシュレッダーダスト中の銅分等も貴金属含有犀中に効率的に回収できた。
【0030】
(比較例)
比較例においては、廃プラスチック基板を用いなかった。その他の条件は、実施例と同様とした。比較例では、最大2.1t/h(1500t/月)と少量しか処理できなかった。また、キルン炉での処理後に回収された屑の銅品位が低かったため、廃棄せざるを得なかった。したがって、貴金属などは回収できなかった。また、再生重油の使用量も実施例と比較して3倍必要であり、燃料効率も好ましくなかった。なお、廃プラスチック基板単独で燃焼処理した場合には、激しい燃焼が起きるため、500〜600t/月の処理が限度であった。本シュレッダーダストの処理方法により、補助燃料の処理量t当りの燃料使用量が、600L/h〜750L/hであったものが、150L/h〜350L/hに低減できた。
【0031】
以上の結果から、シュレッダーダストに廃プラスチック基板を混合して燃焼工程を実施することによって、水分を含むシュレッダーダストを効率的にかつ大量に処理することができ、さらに、シュレッダーダスト中の有価金属を回収することができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュレッダーダストと廃プラスチック基板とを混合して燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼工程で得られる貴金属含有屑を回収する回収工程と、を含むことを特徴とするシュレッダーダストの処理方法。
【請求項2】
前記シュレッダーダストと前記廃プラスチック基板とを混合する際に、前記シュレッダーダストと前記廃プラスチック基板との混合比率を、重量比で6:4〜3:7とすることを特徴とする請求項1記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項3】
前記シュレッダーダストの粒度は20mmφ〜50mmφであり、前記廃プラスチック基板の粒度は50mmφ以下であることを特徴とする請求項1または2記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項4】
前記燃焼工程において、キルン炉を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項5】
前記燃焼工程において、前記キルン炉における処理温度を800℃〜1100℃とすることを特徴とする請求項4記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項6】
前記燃焼工程において、前記シュレッダーダストおよび前記廃プラスチック基板の混合物1トンあたりに対して150L/h〜350L/hの重油を燃料として供給することを特徴とする請求項4または5記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項7】
前記燃焼工程において、前記シュレッダーダストおよび前記廃プラスチック基板の混合物1トンあたりに対して、3,250Nm/h〜3,750Nm/hの空気を供給することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項8】
前記燃焼工程において、前記キルン炉からの排ガス温度を900℃〜1000℃に調整することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項9】
前記廃プラスチック基板は、60mass%〜90mass%のプラスチックを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項10】
前記シュレッダーダストの水分含有量は、10mass%〜20mass%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のシュレッダーダストの処理方法。
【請求項11】
前記回収工程で回収された前記貴金属含有屑を溶融炉で溶融する溶融工程を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のシュレッダーダストの処理方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−32562(P2013−32562A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168583(P2011−168583)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】