説明

シラミ駆除用シャンプー

【課題】施用時におけるスミスリンシャンプーの液性を改良し、シラミ駆除効果を増強し得るとともに、使用性に優れたシラミ駆除用シャンプーの提供。
【解決手段】(a)シラミ駆除成分として3−フェノキシベンジル−d−シス・トランス−クリサンテマート、(b)発泡剤として一般式RN(R)(R)→O(R1は炭素数8〜16のアルキル基、R2、R3は炭素数1〜2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を表し、R2、R3は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアミンオキサイド、(c)可溶化剤、及び(d)精製水を含有し、粘度が100cps以下(25℃)であるシャンプー組成物を、泡吐出容器に収容してなり、吐出された泡を毛髪の根元に処理することによって、シラミ駆除効果を増強させたシラミ駆除用シャンプー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラミ駆除成分として3−フェノキシベンジル−d−シス・トランス−クリサンテマート(以降、スミスリンと称する)を含有するシラミ駆除用シャンプーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人に寄生するシラミには、アタマジラミ、コロモジラミ及びケジラミの3種があり、このうちアタマジラミは頭部に寄生し毛髪に産卵する。卵は0.5mm前後で1週間ほどでかえり、幼虫期は1〜2週間ほどである。成虫の寿命は約1ケ月でこの間に卵を200個ほど産むことが知られている。第二次世界大戦後、日本ではほぼ絶滅したとされていたが、海外との交流が盛んになるにつれて国内に持ち込まれ、再び広がりつつある。人体用シラミ駆除剤として薬事登録を受けている薬効成分は、現在のところスミスリンのみで、駆除剤にはシャンプータイプとパウダータイプがある。薬では卵を完全に駆除できないため、いずれのタイプも2日おきに何度か分けて施用し、順次孵化した幼虫を退治する。
【0003】
近年、シャンプータイプの方が好まれる傾向があり、その組成物に関していくつかの特許が出願されている。例えば、特許文献1(特公平2−29043号公報)には、スミスリンを界面活性剤に溶解した後、マクロゴール類と水に混合せしめ、緩衝剤でpHを3.5〜8に調整することを特徴とするスミスリンの安定な液剤の製造法が開示されている。また、特許文献2(特許第3274223号)は低刺激性スミスリンシャンプーに関し、アミンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びスミスリンを含有するシャンプー組成物を開示している。これらの特許は有用な組成物を開示するものであるが、施用時の液性に着目した製剤改良について格別の検討がなされているわけではなかった。
【特許文献1】特公平2−29043号公報
【特許文献2】特許第3274223号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、施用時におけるスミスリンシャンプーの液性を改良し、シラミ駆除効果を増強し得るとともに、使用性に優れたシラミ駆除用シャンプーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような構成を採用する。
(1)(a)シラミ駆除成分として3−フェノキシベンジル−d−シス・トランス−クリサンテマート、(b)発泡剤として一般式
【化1】


(R1は炭素数8〜16のアルキル基、R2、R3は炭素数1〜2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を表し、R2、R3は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアミンオキサイド、(c)可溶化剤、及び(d)精製水を含有し、粘度が100cps以下(25℃)であるシャンプー組成物を、泡吐出容器に収容してなり、吐出された泡を毛髪の根元に処理することによって、シラミ駆除効果を増強させたシラミ駆除用シャンプー。
(2)(b)発泡剤が、アルキルジメチルアミンオキサイドである(1)記載のシラミ駆除用シャンプー。
(3)(c)可溶化剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである(1)又は(2)記載のシラミ駆除用シャンプー。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシラミ駆除用シャンプーは、優れたシラミ駆除効果を有し人体に対する安全性の高いスミスリンシャンプーの吐出時における液性を改良したものであり、シラミ駆除効果が増強されるとともに使用性にも優れるので、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いる(a)シラミ駆除成分は、スミスリン(3−フェノキシベンジル−d−シス・トランス−クリサンテマート)であり、シャンプー全量に対する濃度は、治療効果を考慮し、通常、0.05〜5.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%である。
【0008】
また、(b)発泡剤としては、一般式
【化2】


(R1は炭素数8〜16のアルキル基、R2、R3は炭素数1〜2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を表し、R2、R3は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアミンオキサイドが用いられる。例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド等のアルキルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジエチルアミンオキサイド等のアルキルジエチルアミンオキサイド、ラウリルメチルエチルアミンオキサイド、ラウリルジヒドロキシエチルアミンオキサイド等があげられ、好ましくは、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルジメチルアミンオキサイドがあげられる。
該アミンオキサイドの配合量は、通常、シャンプー全量の1.0〜10重量%の範囲内であるが、刺激性、物理的安定性等の点から、1.5〜4.0重量%が好ましい。
【0009】
(c)可溶化剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどがあげられるがこれらに限定されない。なかんずく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLBが9以上のものが好ましく、例えば、ポリオキシエチレン(以降、POEと略する)(20)ソルビタンモノラウレート、POE(20)ソルビタンモノパルミテート、POE(20)ソルビタンモノステアレート、POE(20)ソルビタンモノオレエート、POE(22)ソルビタンモノイソステアレート等があげられる。
また、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、POE(15)グリセリンモノステアレート、POE(18)グリセリンモノオレエート、POE(20)グリセリントリステアレート等があげられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとしては、POE(7.5)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ノニルフェニルエーテル、POE(30)オクチルフェニルエーテル等があげられる。
これらの可溶化剤の配合量は、通常シャンプー全量の1.0〜15重量%、好ましくは2.0〜10重量%の範囲内である。
【0010】
本発明では、組成物の粘度を調整するために粘稠剤を配合するのがよい。このような粘稠剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが使いやすく、4〜200単位の酸化エチレン及び5〜100単位の酸化プロピレンを含んでいるものが特に有効である。例えば、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)ブロックポリマー、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)ブロックポリマー、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)ブロックポリマー等があげられる。
該ブロックポリマーの配合量は、通常シャンプー全量の1.0〜40重量%の範囲内であり、シャンプー組成物の粘度を考慮して適宜調整すればよい。
【0011】
本発明のシャンプー組成物は、泡吐出容器に収容し吐出時に好適な泡状態を保つために、組成物の粘度を100cps以下(25℃)に規定する。粘度が100cpsを超えると、均一な泡が得られず、また手の平にとって処理しにくい泡状になるので好ましくない。なお、ここでいう「粘度」はB型粘度計(東京計器(株)製)を用い25℃にて測定した値である。
【0012】
本発明のシャンプー組成物には、前記成分以外に、(d)精製水をはじめ、本発明の目的に支障を来たさない限りにおいて、種々の添加剤、例えば、防腐剤、殺菌剤、緩衝剤、pH調整剤、酸化防止剤、香料、色素、起泡安定剤、キレート剤、コンディショニング剤等を配合することができる。
酸化防止剤としては、特にエデト酸ナトリウム及び/又はジブチルヒドロキシトルエン等が有効であり、シャンプー組成物のpHはpH調整剤を用いて中性付近、例えば4〜8に調整するのが好ましい。
【0013】
本発明において、上記シャンプー組成物は、泡吐出容器に収容されるが、かかる泡吐出容器は、一定量のシャンプー組成物を一定量の空気と混合し、泡状態として使用時に容器から吐出させるものであればいずれのタイプのものでもよい。具体的には、例えば、軟質容器の胴部を手指で押圧することにより使用するスクイズフォーマー、ポンプ機構を備えたキャップの頭を指で押圧することにより使用するポンプフォーマー等があげられるが、ポンプフォーマーが使いやすい。
容器内のシャンプー組成物を空気と混合した混合物は、通常多孔質膜を通すことによって、容器吐出口から泡状に吐出するようになっており、多孔質膜としては、例えばネット、スポンジ、焼結体等があげられる。使用性の点から薄肉のネットが好ましく、その網目は30〜300メッシュ程度が好適である。30メッシュ未満では孔が大きすぎて泡立ちが悪くなり、一方、300メッシュを超えるとシャンプー組成物が目詰まりを生じやすくなるので好ましくない。このようなネットの材料としては、ナイロン、ポリエステル等があげられ、1枚あるいは複数枚備えられる。
【0014】
代表的なポンプフォーマーは、図1に示されるような構成の泡吐出容器である。すなわち、当該ポンプフォーマー(1)では、ノズル部2を押し下げることにより、内部の2つのピストン3がビストンロッド4で一体となって動き、シリンダ5内の空気槽6と液槽7を同時に加圧して、空気槽6内の空気と液槽7内の内容液を泡形成部8で混合する。混合された空気と内容液は、泡を形成し、ネット9を通過する際に均一化されて、ノズル部2の先端から吐出される。
【0015】
こうして得られた本発明のシラミ駆除用シャンプーを用い、吐出された泡を、例えば頭部の毛髪に処理するとシャンプー組成物は毛髪の根元まで到達し、しかもシラミの体表に十分に付着するので、アタマジラミに対するシラミ駆除効果を増強しえる。しかも、吐出された泡は、手の平にとって頭部を処理しやすい泡状態に調整されているので、極めて実用性の高いものである。なお、本発明のシラミ駆除用シャンプーは、コロモジラミ及びケジラミに対しても同様に有効であることはもちろんである。
【0016】
次に具体的な実施例ならびに試験例に基づき、本発明のシラミ駆除用シャンプーについて更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
ラウリルジメチルアミンオキサイド2.4g、POE(20)ソルビタンモノオレエート5.0g、及びPOE(160)POP(30)ブロックポリマー20.0gと精製水を適量混合攪拌した後、塩酸によりpH6に調整した。次いで、スミスリン0.4g、エデト酸ナトリウム0.001g、及び微量の香料を添加攪拌し、残量の精製水を加え、シャンプー組成物100gを得た。これの粘度は、60cps(25℃)であった。
このシャンプー組成物50gを、図1に示す泡吐出容器1に収容して本発明のシラミ駆除用シャンプーを得た。
【0018】
当該泡吐出容器1のノズル部2を押し下げ、吐出された泡状物の約10gを手の平に取り、アタマジラミの寄生が認められた頭部毛髪に処理し、約5分間放置した。本剤は使いやすく、泡状物は毛髪の根元まで十分に到達した。2日おきに3回この処理を繰り返したところ、アタマジラミを完全に駆除することができた。
【実施例2】
【0019】
実施例1に準じて表1に示す各種シラミ駆除用シャンプーを調製し、下記に示す試験を行った。なお、シャンプー組成物におけるスミスリン含量は0.4重量%、粘稠剤としてはPOE(160)POP(30)ブロックポリマーを用い、その含量は20.0重量%とした。
(1) シラミ駆除効果
100mLポリエチレンカップ内に2×2cmの起毛ウール布小片を置き、コロモジラミ羽化後約8令成虫10頭を放飼した。供試シャンプーから吐出させた泡状物又は液状物の50mLをウール布小片上に施用し、2分間放置した。その後ウール布小片をポリエチレンカップ内の水道水で1分間十分に洗浄した。次いで、供試虫をウール布小片から外し、底面に濾紙を敷いた100mLポリエチレンカップに移した。その後、30℃の恒温室内に置き1日後に生死を観察し、死虫率を求めた。なお、無処理区として供試シャンプーの替わりに水道水を用いた。
(2)使用感
供試シャンプーから手の平に約10gを吐出させ、頭部の毛髪を処理するにあたり、吐出物を展げて洗髪し易いかどうかなどの使用感を評価した。結果を、〇(使いやすく、毛髪の根元まで吐出物が到達したことを実感できる)、△、×(手の平にとって洗髪する方法では処理しにくい)で示した。
【0020】
【表1】


【0021】
試験の結果、本発明のシラミ駆除用シャンプーは、シラミ駆除効果、使用感のいずれにおいても優れ、実用性の高いものであった。なお、実施例1〜4の評価からみて、発泡剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイドが好ましいことが確認された。
これに対し、泡吐出容器ではなく通常容器を用いた比較例1では、シラミ駆除効果、使用感が劣り、シャンプー組成物を泡状態で吐出させることによって、シラミ駆除効果が増強することが明らかである。また、比較例2のように、発泡剤としてアニオン系界面活性剤を用いた場合や、シャンプー組成物の粘度が100cpsを超えた場合(比較例3)も、シラミ駆除効果及び使用感は満足のいくものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のシラミ駆除用シャンプーは、人体用のシラミ駆除用途だけでなく、ペット用や他の殺虫・殺ダニ用途等にも利用できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明で使用されるポンプフォーマーを示す概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ポンプフォーマー、
2 ノズル部、
3 ピストン、
4 ピストンロッド、
5 シリンダ、
6 空気槽、
7 液槽、
8 泡形成部、
9 ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シラミ駆除成分として3−フェノキシベンジル−d−シス・トランス−クリサンテマート、(b)発泡剤として一般式
【化1】


(R1は炭素数8〜16のアルキル基、R2、R3は炭素数1〜2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を表し、R2、R3は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアミンオキサイド、(c)可溶化剤、及び(d)精製水を含有し、粘度が100cps以下(25℃)であるシャンプー組成物を、泡吐出容器に収容してなり、吐出された泡を毛髪の根元に処理することによって、シラミ駆除効果を増強させたことを特徴とするシラミ駆除用シャンプー。
【請求項2】
(b)発泡剤が、アルキルジメチルアミンオキサイドであることを特徴とする請求項1記載のシラミ駆除用シャンプー。
【請求項3】
(c)可溶化剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2記載のシラミ駆除用シャンプー。

【図1】
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【公開番号】特開2009−7291(P2009−7291A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169796(P2007−169796)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】