説明

シリコン製造装置

【課題】装置構成の複雑化を排しながら、シリコンの収率を向上させるための還元反応の効率を向上し、同時に生成シリコンと生成ガスとの分離回収効率をも向上することのできるシリコン製造装置を提供する。
【解決手段】珪素化合物ガスを反応容器10に連絡し、亜鉛ガスを、第1の亜鉛供給口40aから反応容器内に第2の吐出方向に吐出しながら供給する亜鉛供給管と、反応容器内に設けられ、第1の亜鉛供給口から第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、珪素化合物供給口から第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容する整流部材20と、反応容器において整流部材の下流側に設けられ、シリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出する排出管10bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン製造装置に関し、特に、反応容器内で原料ガスの流れを制御する整流部材を備えたシリコン製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆる亜鉛還元法により四塩化珪素を亜鉛で還元して高純度のシリコンを得る製法は、その設備がコンパクトで消費エネルギーが小さく、かつ6−ナイン以上の高純度のシリコンが得られるものであるため、今後急速に需要が拡大するとされる太陽電池用シリコン等の製法として注目されてきている。
【0003】
かかる亜鉛還元法を用いたシリコン製造技術においては、所定の温度に保持された反応容器と蒸発槽とを設け、蒸発槽でガス化した亜鉛ガスを、温度制御しつつ、ガス供給管を介して反応炉に供給する構成のものが提案されている(特許文献1から3参照)。
【0004】
更に、亜鉛還元法を用いたシリコン製造技術においては、反応生成ガスとの分離効率を改善し、収率を向上させるために、反応炉に別途種結晶を供給して生成シリコンを大きく成長させる構成のものが提案されている(特許文献4及び5参照)。
【特許文献1】特開2002−234719号公報
【特許文献2】特開2004−210594号公報
【特許文献3】特開2004−284935号公報
【特許文献4】特開2003−95633号公報
【特許文献5】特開2003−342016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、そもそも亜鉛還元法においては、シリコンの原子量28.1に対して、塩化亜鉛の分子量は136.4であり、かつシリコン1原子に対して2分子の塩化亜鉛が生成されるため、つまり、シリコンの収量に対して約10倍の収量の塩化亜鉛が生成されるものであるため、還元反応によるシリコンと生成ガスとの分離回収効率を向上させながら、シリコンの収率をも向上させるという製造技術の確立が重要な課題として挙げられるものであるが、特許文献1から5における亜鉛還元法を用いたシリコン製造技術では、装置構成の複雑化を排しながら、シリコンの収率を向上させるための還元反応の効率を向上し、同時に生成シリコンと生成ガスとの分離回収効率をも向上するという観点において、更なる改善の余地があるものと考えられる。
【0006】
具体的には、本発明者の更なる検討によれば、特許文献1から3の構成では、より還元反応効率を向上させるには、例えば、ガス化した亜鉛を凝縮することなく蒸発槽から反応炉に供給する構成を採用することが必要になるが、このためには、蒸発槽から反応炉に至る亜鉛ガスの供給係を加熱する加熱ヒータを別途付加することが必要となり、装置構成が複雑化してしまう。
【0007】
また、特許文献4及び5の構成では、シリコンと生成ガスとの分離効率を向上させながら、シリコンの収率をも向上させることを企図したものではあるが、反応炉に別途種結晶を供給して生成シリコンを成長させる構成のものであるため、装置構成が複雑であるし、自立的に核形成して反応容器の内表面に付着し析出したシリコンを回収することは困難であり、シリコンの回収率の向上にも限界が見られる。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、装置構成の複雑化を排しながら、シリコンの収率を向上させるための還元反応の効率を向上し、同時に生成シリコンと生成ガスとの分離回収効率をも向上することのできるシリコン製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成すべく、本発明は、第1の局面において、反応容器と、前記反応容器に連絡し、珪素化合物ガスを、珪素化合物供給口から前記反応容器内に第1の吐出方向に吐出しながら供給する珪素化合物供給管と、前記反応容器に連絡し、亜鉛ガスを、第1の亜鉛供給口から前記反応容器内に第2の吐出方向に吐出しながら供給する亜鉛供給管と、前記反応容器内に設けられ、前記第1の亜鉛供給口から前記第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、前記珪素化合物供給口から前記第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが前記反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容する整流部材と、前記反応容器において前記整流部材の下流側に設けられ、シリコンを含む反応生成ガスを前記反応容器外に排出する排出管と、を備えるシリコン製造装置である。
【0010】
また本発明は、かかる第1の局面に加えて、前記反応容器は、筒状部材であり、前記整流部材は、前記反応容器の前記筒状部材内に収容されて周壁を有する筒状部材であることを第2の局面とする。
【0011】
また本発明は、かかる第2の局面に加えて、前記整流部材を構成する前記筒状部材は、円筒部材であることを第3の局面とする。
【0012】
また本発明は、かかる第2の局面に加えて、前記整流部材を構成する前記筒状部材は、前記反応容器における上流側から下流側に向かって径が減少する中空円錐台部材であることを第4の局面とする。
【0013】
また本発明は、かかる第2から4のいずれかの局面に加えて、前記珪素化合物供給口は、前記整流部材の前記周壁で囲われた前記領域を臨んで配置されることを第5の局面とする。
【0014】
また本発明は、かかる第2から4のいずれかの局面に加えて、前記珪素化合物供給口は、前記整流部材の前記周壁で囲われた前記領域内に配置されることを第6の局面とする。
【0015】
また本発明は、かかる第2から6のいずれかの局面に加えて、前記第1の亜鉛供給口は、前記整流部材の前記周壁に対応して配置されることを第7の局面とする。
【0016】
また本発明は、かかる第7の局面に加えて、前記第1の亜鉛供給口は、前記整流部材の前記周壁における上流側部分に対向して配置されることを第8の局面とする。
【0017】
また本発明は、かかる第2から6のいずれかの局面に加えて、前記亜鉛供給管は、更に、前記第1の亜鉛供給口に対して、前記反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、前記第2の亜鉛供給口は、前記珪素化合物供給口よりも上流側に配置されることを第9の局面とする。
【0018】
また本発明は、かかる第2から6のいずれかの局面に加えて、前記整流部材は、前記反応容器における下流側に配置される第1の整流部材と、前記反応容器における上流側に配置される第2の整流部材と、を含み、前記亜鉛供給管は、更に、前記第1の亜鉛供給口に対して、前記反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、前記第1の亜鉛供給口は、前記第1の整流部材の周壁に対応して配置され、前記第2の亜鉛供給口は、前記第2の整流部材の周壁に対応して配置されることを第10の局面とする。
【0019】
また本発明は、かかる第10の局面に加えて、前記珪素化合物供給口は、前記反応容器における下流側に配置される第1の珪素化合物供給口と、前記反応容器における上流側に配置される第2の珪素化合物口と、を含み、前記第1の珪素化合物供給口は、前記第1の整流部材の前記周壁で囲われた前記領域内に配置され、前記第2の珪素化合物供給口は、前記第2の整流部材の前記周壁で囲われた前記領域内に配置されることを第11の局面とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の局面によれば、反応容器内に設けられ、第1の亜鉛供給口から第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、珪素化合物供給口から第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容するような整流部材を設けるという簡便な構成により、珪素化合物ガスの流れに不要な乱れを与えることなく、亜鉛ガスを反応容器内に流すことができ、装置構成の複雑化を排しながら、シリコンの収率を向上させるための還元反応の効率を向上し、同時に生成シリコンと生成ガスとの分離回収効率をも向上することができる。
【0021】
本発明の第2の局面によれば、整流部材を、反応容器の筒状部材内に収容されて周壁を有する筒状部材とすることにより、より確実に、第1の亜鉛供給口から第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、珪素化合物供給口から第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容することができる。
【0022】
本発明の第3の局面によれば、整流部材を、円筒部材とすることにより、簡便な構成でより確実に第1の亜鉛供給口から第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、珪素化合物供給口から第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容することができる。
【0023】
本発明の第4の局面によれば、整流部材を、反応容器における上流側から下流側に向かって径が減少する中空円錐台部材とすることにより、整流部材内を通過する珪素化合物ガスの流れを絞って流速を増大しつつ、それに起因して、偏向される亜鉛ガスの流れを上流から下流に向かわせるようなより大きな圧力勾配を生じさせて、よりスムースかつ確実に珪素化合物ガス及び亜鉛ガスを下流側に流して合流させ、珪素化合物ガスと亜鉛ガスとの還元反応をより効率的に生じさせることができる。
【0024】
本発明の第5の局面によれば、珪素化合物供給口が、整流部材の周壁で囲われた領域を臨んで配置されることにより、珪素化合物ガスを、確実に整流部材の周壁で囲われた領域を主として通過させることができる。
【0025】
本発明の第6の局面によれば、珪素化合物供給口が、整流部材の周壁で囲われた領域内に配置されることにより、亜鉛ガスの流れからの不要な影響を受けることなく、珪素化合物ガスを、より確実に整流部材の周壁で囲われた領域内を主として通過させることができる。
【0026】
本発明の第7の局面によれば、第1の亜鉛供給口が、整流部材の周壁に対応して配置されることにより、珪素化合物ガスの流れに不要な影響を与えることなく、確実に亜鉛ガスの流れを偏向することができる。
【0027】
本発明の第8の局面によれば、第1の亜鉛供給口が、整流部材の周壁における上流側部分に対向して配置されることにより、珪素化合物ガスの流れに不要な影響を与えることなく、偏向される亜鉛ガスの流れに周壁の周囲で生じる圧力勾配による圧力を作用させて、より確実に亜鉛ガスを上流側から下流側に流して、珪素化合物ガスの流れと合流させることができる。
【0028】
本発明の第9の局面によれば、亜鉛供給管が、更に、第1の亜鉛供給口に対して、反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、かかる第2の亜鉛供給口は、珪素化合物供給口よりも上流側に配置されることにより、第2の亜鉛供給口から吐出される亜鉛ガスの流れによって、珪素化合物ガスの流れに不要な影響を与えることなく、反応容器内に上流から下流にわたる充分な量の亜鉛ガスを迅速に供給することができる。
【0029】
本発明の第10の局面によれば、整流部材が、反応容器における下流側に配置される第1の整流部材と、反応容器における上流側に配置される第2の整流部材と、を含み、亜鉛供給管は、更に、第1の亜鉛供給口に対して、反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、第1の亜鉛供給口は、第1の整流部材の周壁に対応して配置され、第2の亜鉛供給口は、第2の整流部材の周壁に対応して配置されることにより、亜鉛供給口を複数設けて充分な量の亜鉛ガスを供給した場合であっても、確実に亜鉛ガスの流れを偏向することができる。
【0030】
本発明の第11の局面によれば、珪素化合物供給口が、反応容器における下流側に配置される第1の珪素化合物供給口と、反応容器における上流側に配置される第2の珪素化合物口と、を含み、第1の珪素化合物供給口は、第1の整流部材の周壁で囲われた領域内に配置され、第2の珪素化合物供給口は、第2の整流部材の前記周壁で囲われた領域内に配置されることにより、珪素化合物供給口を複数設けて反応容器内に上流から下流にわたる充分な量の珪素化合物ガスを迅速にできると共に、珪素化合物ガスを、確実に整流部材の周壁で囲われた領域を主として通過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態におけるシリコン製造装置につき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系をなし、z軸が、その負方向に向いて重力が働く鉛直方向である。また、適宜、z軸の正方向側を下流側と呼び、z軸の負方向側を上流側と呼ぶことがある。
【0032】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態におけるシリコン製造装置につき、図1から3を参照して、詳細に説明する。
【0033】
図1は、本実施形態におけるシリコン製造装置の概略一部断面図である。図2は、図1のA−A線による拡大断面図であり、図3は、図1のB−B線による拡大断面図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態におけるシリコン製造装置1は、その内部で珪素化合物ガスに含有される珪素化合物と亜鉛ガスに含有される亜鉛とが還元反応を生じる反応容器10を備える。反応容器10は、石英ガラス製であり、その内部に整流部材20を収容し、z軸に平行な中心軸Cの回りで周壁をなす本体部10aを有する円筒状の部材である。本体部10aの上流側の端部には、その内部に珪素化合物ガスを供給する珪素化合物供給管30が連絡され、反応容器10の本体部10aの下流側の端部には、還元反応で生成されたシリコン等の生成物を外部に排出する排出管10bが連絡される。また、本体部10aには、その内部に共に亜鉛ガスを供給する第1の亜鉛供給管40及び第2の亜鉛供給管50が、各々連絡されて、反応容器10内に充分な量の亜鉛ガスが迅速に供給される。
【0035】
整流部材20は、セラミック製であり、反応容器10の中心軸Cと同軸に配置され、その軸を囲む周壁20aを有する円筒部材である。かかる整流部材20は、支持部材Mにより反応容器10の本体部10aに支持されている。なお、整流部材20の中心軸と反応容器10の中心軸Cとの同軸性は厳密なものではない。つまり、珪素化合物ガスを、周壁20aで囲われた内部領域を経由させて、本体部10aの上流側から下流側に向けて所定の流速で流すことができ、かつ、亜鉛ガスを、周壁20aで偏向させることができる配置であれば、整流部材20の中心軸は、必ずしも反応容器10の中心軸Cと同軸に配置されていなくともよく、例えば、かかる中心軸Cと平行に偏位させて配置してもかまわない。
【0036】
珪素化合物供給管30は、石英ガラス製であり、反応容器10の本体部10a内で反応容器10の中心軸Cと同軸に延在して、本体部10a内で珪素化合物供給口30aを有する。珪素化合物供給口30aからは、珪素化合物ガスが、中心軸Cの方向である珪素化合物吐出方向S1に沿って本体部10a内に吐出される。また、珪素化合物供給管30は、反応容器10の本体部10aの外部で、連結部材32を介して、珪素化合物導入管34に連絡される。珪素化合物導入管34は、図示を省略する珪素化合物ガス源に連絡される。かかる珪素化合物ガス源には、珪素化合物ガスのみならず、珪素化合物供給口30aから吐出される珪素化合物ガスの吐出圧力を高めるため、キャリアガスを供給自在に貯蔵してもよいし、かかるキャリアガスは、別途キャリアガス源を設けて、珪素化合物供給管30内又は珪素化合物導入管34内に導入してもよい。また、珪素化合物は、典型的には、四塩化珪素である。なお、珪素化合物ガスに関する珪素化合物吐出方向S1は、典型的には、中心軸Cに平行な方向であるが、限定的なものではなく、珪素化合物ガスを上流側から下流側に流せるものであれば、中心軸Cに対して交差するような方向であってもよい。
【0037】
第1の亜鉛供給管40及び第2の亜鉛供給管50は、共に石英ガラス製であり、反応容器10の中心軸Cについて軸対称に配置されて、反応容器10の本体部10aにおける周壁に対して、第1の亜鉛供給口40a及び第2の亜鉛供給口50aにおいて、中心軸Cについて軸対称に各々連絡している。第1の亜鉛供給口40aは、珪素化合物供給口30aよりも上流側において、本体部10aにおける周壁に対して配置され、第2の亜鉛供給口50aは、珪素化合物供給口30aよりも下流側において、本体部10aにおける周壁に対して配置される。また、第1の亜鉛供給口40aからは、亜鉛ガスが、中心軸Cに直交する方向である第1の亜鉛供給方向S2に沿って吐出され、第2の亜鉛供給口50aからは、亜鉛ガスが、中心軸Cに直交し、かつ第1の亜鉛吐出方向S2とは反対方向である第2の亜鉛吐出方向S3に沿って吐出される。なお、ここでは、各々1つの亜鉛供給口を有する2つの亜鉛供給管を軸方向位置を異ならせて軸対象に設けているが、充分に亜鉛ガス量が確保できるのもであれば配置や個数は限定的なものではなく、例えば、1つの亜鉛供給管が複数の亜鉛供給口を有していてもよいし、同一の 軸方向位置に適宜の間隔を開けて複数個の亜鉛供給口を配置してもかまわない。また、亜鉛ガスに関する第1の亜鉛供給方向S2及び第2の亜鉛吐出方向S3は、典型的には、珪素化合物ガスに関する珪素化合物吐出方向S1に対して直交する関係にあるが、限定的なものではなく、珪素化合物吐出方向S1に向きながら上流側から下流側に向くような方向であってもよい。
【0038】
第1の亜鉛供給管40は、第1の亜鉛供給口40aから反応容器10の中心軸Cに平行に延在する延在部40bを有し、延在部40bは、連結部材42を介して、第1の亜鉛導入管44に連絡される。第2の亜鉛供給管50は、第2の亜鉛供給口50aから反応容器10の中心軸Cに平行に延在する延在部50bを有し、延在部50bは、連結部材52を介して、第2の亜鉛導入管54に連絡される。第1の亜鉛導入管44及び第2の亜鉛導入管54は、各々図示を省略する溶融亜鉛源に連絡される。また、第1の亜鉛供給口40a及び第2の亜鉛供給口50aから吐出される亜鉛ガスの吐出圧力を高めるため、別途キャリアガス源を設けて、第1の亜鉛供給管40内及び第2の亜鉛供給管50内に、キャリアガスを各々導入してもよい。
【0039】
更に、反応容器10の周壁をなす本体部10a、第1の亜鉛供給管40の延在部40b及び第2の亜鉛供給管50の延在部50bの周囲には、それらを取り囲むように、円筒状の加熱装置60が設けられている。加熱装置60は、第1の亜鉛供給管40の延在部40b及び第2の亜鉛供給管50の延在部50bに各々供給されてくる溶融亜鉛又は固体亜鉛を、その沸点(930℃)以上に加熱して亜鉛ガスを生成すると共に、本体部10a内に供給されてくる珪素化合物ガス及び亜鉛ガスを加熱してそれらの間の還元反応を促進する。
【0040】
ここで、整流部材20と、珪素化合物供給管30、第1の亜鉛供給管40及び第2の亜鉛供給管50との配置関係につき、並びに吐出された珪素化合物ガス及び亜鉛ガスの流れにつき、詳細に説明する。
【0041】
整流部材20と珪素化合物供給管30との配置関係においては、図2及び3に詳細に示すように、珪素化合物供給管30の珪素化合物供給口30aが、整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を臨むように、整流部材20の上流側に位置されている。ここにおいて、整流部材20及び珪素化合物供給管30は、反応容器10の中心軸Cと同軸に配置されており、珪素化合物ガスが、珪素化合物供給口30aから中心軸Cの方向である珪素化合物吐出方向S1に沿って、反応容器10の本体部10a内に上流側から下流側に向かって所定の吐出圧力で吐出され、本体部10aを流れて排出管10bから排出されるように流れるため、吐出された珪素化合物ガスは、主として整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を経由して、本体部10aの上流側から下流側に向けて所定の流速分布で流れる。更に、このように吐出されて上流側から下流側に流れる珪素化合物ガスの流れに起因して、本体部10a内においては、上流側から下流側に向けて圧力が低下する圧力勾配が生じ、例えば、周壁20aとそれに対向する本体部10aとの間の領域やその下流域でも、上流側から下流側に向かって圧力が低下する圧力勾配が生じる。
【0042】
整流部材20と第1の亜鉛供給管40との配置関係においては、図2及び3に詳細に示すように、第1の亜鉛供給管40の第1の亜鉛供給口40aが、整流部材20の周壁20aに対向して位置され、更に周壁20aとそれに対向する反応容器10の本体部10aとの間の領域やその下流域における上流側から下流側に向かう圧力勾配をも考慮して、第1の亜鉛供給口40aが、周壁20aに対しては、周壁20aの下流端20bよりも上流端20cに近い位置に配置されている。かかる構成により、亜鉛ガスが、第1の亜鉛供給口40aから反応容器10の中心軸Cに直交する方向である第1の亜鉛吐出方向S2に沿って、反応容器10の本体部10a内に所定の吐出圧力で吐出されるため、吐出された亜鉛ガスは、整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を上流側から下流側に向けて所定の流速で流れる珪素化合物ガスの流速分布に実質的に影響を与えることなく、周壁20aで偏向される。具体的には、吐出された亜鉛ガスは、図1に示す断面においては、周壁20aで上流及び下流側に偏向され、図3に示す断面においては、周壁20aを囲うように中心軸Cの回りで右回り及び左回りに偏向される。ここにおいて、亜鉛供給口40aが、周壁20aに対して上流端20cに近い位置に配置されているため、吐出された亜鉛ガスにおいては、周壁20aとそれに対向する本体部10aとの間の領域やその下流域における上流側から下流側に向かう圧力勾配による圧力を受けて、上流側から下流側に向かう流れが主体となる。そして、このように上流側から下流側に向かう亜鉛ガスは、整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を経由して、上流側から下流側に向けて所定の流速で流れる珪素化合物ガスと、主として整流部材20の下流側で合流する。
【0043】
整流部材20と第2の亜鉛供給管50との配置関係においては、図2及び3に詳細に示すように、第2の亜鉛供給管50の第2の亜鉛供給口50aが、珪素化合物供給管30に対向して位置されている。ここにおいて、亜鉛ガスが、第2の亜鉛供給口50aから反応容器10の中心軸Cに直交する方向である第2の亜鉛吐出方向S3に沿って、反応容器10の本体部10a内に所定の吐出圧力で吐出される。吐出された亜鉛ガスは、珪素化合物供給口30aから吐出された珪素化合物ガスの上流側から下流側に向かう流れに起因して生じた上流側から下流側に向かって圧力が減少する圧力勾配による圧力を受けて、上流側から下流側に向かう流れとなる。そして、このように上流側から下流側に向かう亜鉛ガスは、珪素化合物供給口30aから吐出される珪素化合物ガスと合流して、主として整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を経由して下流側に流れ、第1の亜鉛供給口40aから吐出されて主として周壁20aとそれに対向する本体部10aとの間を流れてきた亜鉛ガスとも合流する。
【0044】
よって、このように順次合流した珪素化合物ガス及び亜鉛ガスは、整流部材20の下流側で拡散的に混合し、還元反応を起こしてシリコン粒子の集合体であるシリコン粉及び塩化亜鉛を生成しながら、更に下流側の反応容器10の排出管10bに向かって流れていき、生成されたシリコン粉及び塩化亜鉛は、反応容器10の本体部10a内の圧力による排出圧力を受けて、排出管10bから本体部10a外に排出される。なお、排出管10bから排出されたシリコン粉及び塩化亜鉛は、図示を省略する分離回収装置により、各々分離され、シリコンが選択的に回収されることになる。
【0045】
次に、以上の構成の本実施形態におけるシリコン製造装置を用いたシリコン製造方法につき、詳細に説明する。なお、かかる製造方法における一連の工程は、いずれも図示は省略するが、コントローラが必要な検出器から得られる検出値やデータベース等を参照しながら、所定のプログラムに沿って制御するものである。もちろん、必要に応じて、手動の工程が混在してもかまわない。
【0046】
まず、加熱装置60により、反応容器10、第1の亜鉛供給管40の延在部40b及び第2の亜鉛供給管50の延在部50bを加熱しながら、第1の亜鉛供給管40及び第2の亜鉛供給管50に溶融亜鉛又は固体亜鉛を供給し、延在部40b及び延在部50bにおいて溶融亜鉛を沸点以上に加熱してガス化して、亜鉛ガスを生成する。生成された亜鉛ガスは、第1の亜鉛供給口40aから反応容器10の中心軸Cに直交する方向である第1の亜鉛吐出方向S2に沿って、及び第2の亜鉛供給口50aから反応容器10の中心軸Cに直交する方向である第2の亜鉛吐出方向S3に沿って、反応容器10の本体部10a内に所定の吐出圧力で吐出される。
【0047】
同時に、珪素化合物ガスは、珪素化合物供給口30aから中心軸Cの方向である珪素化合物吐出方向S1に沿って、反応容器10の本体部10a内に上流側から下流側に向かって所定の吐出圧力で吐出される。このように吐出された珪素化合物ガスは、主として整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を経由して、本体部10aの上流側から下流側に向けて所定の流速分布で流れ、本体部10a内においては、上流側から下流側に向けて圧力が低下する圧力勾配を生じさせると共に、周壁20aとそれに対向する本体部10aとの間の領域やその下流域にも、上流側から下流側に向かって圧力が低下する圧力勾配を生じさせる。
【0048】
ここで、上流側の第2の亜鉛供給口50aから反応容器10の本体部10a内に吐出された亜鉛ガスは、本体部10aの上流側から下流側に向けて生じた圧力勾配によって、上流側から下流側に向かう流れとなる。そして、このように上流側から下流側に向かう亜鉛ガスは、珪素化合物供給口30aから吐出される珪素化合物ガスと合流して、主として整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を経由して下流側に流れる。
【0049】
更に、下流側の第1の亜鉛供給口40aから反応容器10の本体部10a内に吐出された亜鉛ガスは、整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を上流側から下流側に向けて所定の流速で流れる珪素化合物ガスの流速分布に実質的に影響を与えることなく、周壁20aをz軸回りに回り込みながら、周壁20aとそれに対向する本体部10aとの間等における上流側から下流側に向かう圧力勾配による圧力を受けて、上流側から下流側に向かう流れを主体として、周壁20aで偏向される。
【0050】
このように主として整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を経由して上流側から下流側に向けて所定の流速で流れる珪素化合物ガス、主として周壁20aとそれに対向する本体部10aとの間を経由して上流側から下流側に向けて流れる亜鉛ガス、及び主として整流部材20の周壁20aで囲われた内部領域を経由して上流側から下流側に向けて流れる亜鉛ガスは、主として整流部材20の下流側で合流し、拡散的に混合しながら、還元反応を起こしてシリコン粒子の集合体であるシリコン粉及び塩化亜鉛を生成しながら、更に下流側の反応容器10の排出管10bに向かって流れていく。
【0051】
そして、このように生成されたシリコン粉及び塩化亜鉛は、反応容器10の本体部10a内の圧力による排出圧力を受けて、排出管10bから本体部10a外に排出され、適当な分離回収装置により、シリコンが選択的に回収されてシリコンを得ることができ、塩化亜鉛は、更に図示を省略する再処理装置等に送られる。
【0052】
従って、以上の構成によれば、反応容器内に設けられ、第1の亜鉛供給口から第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、珪素化合物供給口から第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容するような整流部材を設けるという簡便な構成により、反応容器内のガス流の流速を実質規定する珪素化合物ガスの流れに不要な影響を与えることなく、亜鉛ガスを反応容器内に流すことができ、装置構成の複雑化を排しながら、シリコンの収率を向上させるための還元反応の効率を向上し、同時に生成シリコンと生成ガスとの分離回収効率をも向上することができる。
【0053】
また、整流部材を、反応容器の筒状部材内に収容されて周壁を有する筒状部材とすることにより、より確実に、第1の亜鉛供給口から第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、珪素化合物供給口から第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容することができる。より具体的には、整流部材を、円筒部材とすることにより、簡便な構成でより確実に第1の亜鉛供給口から第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、珪素化合物供給口から第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが、不要な影響を受けることなく反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容することができる。
【0054】
また、珪素化合物供給口が、整流部材の周壁で囲われた領域を臨んで配置されることにより、珪素化合物ガスを、確実に整流部材の周壁で囲われた領域を主として通過させることができる。
【0055】
また、第1の亜鉛供給口が、整流部材の周壁に対応して配置されることにより、確実に亜鉛ガスの流れを偏向することができる。より具体的には、第1の亜鉛供給口が、整流部材の周壁における上流側部分に対向して配置されることにより、偏向される亜鉛ガスの流れに周壁の周囲で生じる圧力勾配による圧力を作用させて、より確実に亜鉛ガスを上流側から下流側に流して、珪素化合物ガスの流れと合流させることができる。
【0056】
また、亜鉛供給管が、更に、第1の亜鉛供給口に対して、反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、かかる第2の亜鉛供給口は、珪素化合物供給口よりも上流側に配置されることにより、第2の亜鉛供給口から吐出される亜鉛ガスの流れによって、珪素化合物ガスの流れに不要な影響を与えることなく、反応容器内に上流から下流にわたる充分な量の亜鉛ガスを迅速に供給することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態におけるシリコン製造装置につき、図4から6を参照して、詳細に説明する。
【0058】
図4は、本実施形態におけるシリコン製造装置の概略一部断面図である。図5は、図4のC−C線による拡大断面図であり、図6は、図4のD−D線による拡大断面図である。
【0059】
図4から6に示されるように、本実施形態のシリコン製造装置2では、第1の実施形態のシリコン製造装置1に対して、整流部材20が整流部材70に変更されていることが相違点であり、残余の構成は同一である。よって、本実施形態においては、かかる相違点に着目して説明することとし、同一な構成については同一の符号を付して適宜説明を簡略化又は省略する。
【0060】
本実施形態の整流部材70は、石英製又はセラミック製であり、反応容器10の中心軸Cと同軸に配置され、支持部材Mにより反応容器10の本体部10aに支持されていることは、第1の実施形態におけるものと同様であるが、その軸を囲む周壁70aが、反応容器10における上流側から下流側に向かって径が減少する切頭円錐状である中空円錐台部材であることが相違する。なお、第1の亜鉛供給口40aが、周壁70aに対しては、周壁70aの下流端70bよりも上流端70cに近い位置に配置されていることは、第1の実施形態におけるものと同様である。
【0061】
このように整流部材70として中空円錐台部材を採用することにより、珪素化合物供給口30aから中心軸Cの方向である珪素化合物吐出方向S1に沿って、反応容器10の本体部10a内に上流側から下流側に向かって所定の吐出圧力で吐出された珪素化合物ガスが、主として周壁70aで囲われた内部領域を経由して、本体部10aの上流側から下流側に向けて流れる際に、上流側から下流側に向かって径が減少する切頭円錐状である周壁70aによってその流れが絞られて、整流部材70の下流側において、珪素化合物ガスの流速が増大する。
【0062】
更に、このように吐出される珪素化合物ガスの流れに起因して、周壁70aとそれに対向する本体部10aとの間の領域やその下流域に生じる上流側から下流側に向かって圧力が低下する圧力勾配も大きくなる。ここで、第1の亜鉛供給口40aから反応容器10の中心軸Cに直交する方向である第1の亜鉛吐出方向S4に沿って、反応容器10の本体部10a内に所定の吐出圧力で吐出される亜鉛ガスは、図4に示す断面においては、周壁70aで上流及び下流側に偏向され、図6に示す断面においては、周壁70aを囲うように中心軸Cの回りで右回り及び左回りに偏向されるものであるが、吐出された亜鉛ガスにおいては、周壁70aとそれに対向する本体部10aとの間やその下流域における上流側から下流側に向かう圧力勾配が大きくなるために、より大きな圧力を受けて、より速い流速でもって下流側から上流側に向かう流れが主体となる。更に、このように下流側から上流側に向かう亜鉛ガスは、上流側から下流側に向かって径が減少する切頭円錐状である周壁70aに沿うように流れるため、周壁70aで囲われた内部領域を経由して、上流側から下流側に向けて所定の流速で流れる珪素化合物ガスと、よりスムースに整流部材70の下流側で合流する。
【0063】
よって、本実施形態においても、主として整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域を経由して上流側から下流側に向けて所定の流速で流れる珪素化合物ガス、主として周壁70aとそれに対向する本体部10aとの間を経由して上流側から下流側に向けて流れる亜鉛ガス、及び主として整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域を経由して上流側から下流側に向けて流れる亜鉛ガスは、主として整流部材70の下流側で合流し、還元反応を起こしてシリコン粒子の集合体であるシリコン粉及び塩化亜鉛を生成しながら、更に下流側の反応容器10の排出管10bから排出され、シリコンが選択的に回収されてシリコンを得ることができる。
【0064】
従って、以上の構成によれば、整流部材を、反応容器における上流側から下流側に向かって径が減少する中空円錐台部材とすることにより、整流部材内を通過する珪素化合物ガスの流れを絞って流速を増大しつつ、それに起因して、偏向される亜鉛ガスの流れに上流から下流に向かわせる圧力勾配を与えて、よりスムースかつ確実に珪素化合物ガス及び亜鉛ガスを下流側に流して合流させ、珪素化合物ガスと亜鉛ガスとの還元反応をより効率的に生じさせることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態におけるシリコン製造装置につき、図7から10を参照して、詳細に説明する。
【0065】
図7は、本実施形態におけるシリコン製造装置の概略一部断面図である。図8は、図7のE−E線による拡大断面図であり、便宜上符号等に括弧を付して、図7のF−F線による拡大断面図も示す。図9は、図7のG−G線による拡大断面図であり、図10は、図7のH−H線による拡大断面図である。
【0066】
図7から10に示されるように、本実施形態のシリコン製造装置3では、第2の実施形態のシリコン製造装置2に対して、単一の珪素化合物供給管30の代わりに、下流側の第1の珪素化合物供給管80及び上流側の第2の珪素化合物供給管90という複数の珪素化合物供給管が、反応容器10の本体部10aの上流側の端部に連絡する構成に変更され、更に、下流側の整流部材(第1の整流部材)70に加えて、上流側の整流部材(第2の整流部材)100が付加されていることが相違点であり、残余の構成は同一である。よって、本実施形態においては、かかる相違点に着目して説明することとし、同一な構成については同一の符号を付して適宜説明を簡略化又は省略する。
【0067】
上流側の整流部材100は、上流側に配置されていることを除き、下流側の整流部材70と同様な構成及び配置であり、石英製又はセラミック製であり、反応容器10の中心軸Cと同軸に配置され、その軸を囲む周壁100aが、反応容器10における上流側から下流側に向かって径が減少する切頭円錐状である中空円錐台部材であり、支持部材Mにより反応容器10の本体部10aに支持されている。
【0068】
下流側の第1の珪素化合物供給管80及び上流側の第2の珪素化合物供給管90は、共に石英ガラス製であり、反応容器10の本体部10a内では、反応容器10の中心軸Cを挟むように互いに接触しながら延在して、本体部10a内で下流側珪素化合物供給口(第1の珪素化合物供給口)80a及び上流側珪素化合物供給口(第2の珪素化合物供給口)90aを各々有する。下流側珪素化合物供給口80aからは、珪素化合物ガスが、中心軸Cの方向である珪素化合物吐出方向S5に沿って本体部10a内に吐出され、上流側珪素化合物供給口90aからは、珪素化合物ガスが、中心軸Cの方向である珪素化合物吐出方向S6に沿って本体部10a内に吐出されて、反応容器10内に充分な量の珪素化合物ガスが迅速に供給される。また、かかる珪素化合物供給管80及び90は、反応容器10の本体部10aの外部で、各々、連結部材82及び92を介して、図示を省略する珪素化合物ガス源に連絡された珪素化合物導入管84及び94に連絡される。珪素化合物導入管34は、図示を省略する珪素化合物ガス源に連絡される。かかる珪素化合物ガス源には、キャリアガスを供給自在に貯蔵してもよいし、かかるキャリアガスは、別途キャリアガス源を設けていてもよい。
【0069】
ここで、整流部材70及び80と、珪素化合物供給管80及び90、第1の亜鉛供給管40及び第2の亜鉛供給管50との配置関係につき、並びに吐出された珪素化合物ガス及び亜鉛ガスの流れにつき、詳細に説明する。
【0070】
整流部材70と第1の珪素化合物供給管80との配置関係においては、図8及び9に詳細に示すように、第1の珪素化合物供給管80の第1の珪素化合物供給口80aが、整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域内に位置されていることが、第2の実施形態の構成と実質的に異なる点である。本実施形態では、整流部材70に対してその配管の半径に相当する距離だけx軸の正方向に偏位しているが、かかる偏位量は、整流部材70に対しては微小量であり、ここでは実質考慮する必要はない。ここに、珪素化合物ガスが、周壁70aで囲われた内部領域内の珪素化合物供給80aから中心軸Cの方向である珪素化合物吐出方向S5に沿って、反応容器10の本体部10a内に上流側から下流側に向かって所定の吐出圧力で吐出されるため、吐出された珪素化合物ガスは、より確実に整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域を経由して、本体部10aの上流側から下流側に向けて所定の流速分布で流れる。もちろん、このように吐出される珪素化合物ガスの流れに起因して、本体部10a内においては、上流側から下流側に向けて圧力が低下する圧力勾配が生じると共に、周壁80aとそれに対向する本体部10aとの間にも、上流側から下流側に向かって圧力が低下する圧力勾配が生じる。また、かかる配置関係は、図8及び10に詳細に示すように、整流部材80と第2の珪素化合物供給管90との配置関係においても同様である。
【0071】
整流部材70と第1の亜鉛供給管40との配置関係においては、第2の実施形態のおけるものと変わりはないが、第1の珪素化合物供給管80の第1の珪素化合物供給口80aが、整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域内に位置されているため、第1の亜鉛供給口40aからの亜鉛ガスの吐出が、第1の珪素化合物供給口80aからの珪素化合物ガスの吐出に不要に干渉することは実質なくなり、第1の亜鉛供給口40aが、整流部材70の周壁70aに対向して位置され、かつ第1の珪素化合物供給口80aが、整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域内に位置されるという条件内で、相対位置関係を自由に設定可能である。また、かかる配置関係は、図8及び10に詳細に示すように、整流部材80と第2の亜鉛供給管50との配置関係、あるいは第2の亜鉛供給口50aと珪素化合物供給口90aとの配置関係においても同様である。
【0072】
よって、本実施形態においては、主として整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域のみを経由して上流側から下流側に向けて流れる珪素化合物ガス、整流部材100の周壁100aで囲われた内部領域及び整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域を順次経由して上流側から下流側に向けて流れる珪素化合物ガス、主として周壁70aとそれに対向する本体部10aとの間を経由して上流側から下流側に向けて流れる亜鉛ガス、及び主として周壁100aとそれに対向する本体部10aとの間を経由して整流部材70の周壁70aで囲われた内部領域を経由して上流側から下流側に向けて流れる亜鉛ガスは、主として整流部材70の下流側で合流し、還元反応を起こしてシリコン粒子の集合体であるシリコン粉及び塩化亜鉛を生成しながら、更に下流側の反応容器10の排出管10bから排出され、シリコンが選択的に回収されてシリコンを得ることができる。
【0073】
従って、以上の構成によれば、整流部材が、反応容器における下流側に配置される第1の整流部材と、反応容器における上流側に配置される第2の整流部材と、を含み、亜鉛供給管は、更に、第1の亜鉛供給口に対して、反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、第1の亜鉛供給口は、第1の整流部材の周壁に対応して配置され、第2の亜鉛供給口は、第2の整流部材の周壁に対応して配置されることにより、亜鉛供給口を複数設けて充分な量の亜鉛ガスを供給した場合であっても、確実に亜鉛ガスの流れを偏向することができる。
【0074】
また、珪素化合物供給口が、反応容器における下流側に配置される第1の珪素化合物供給口と、反応容器における上流側に配置される第2の珪素化合物口と、を含み、第1の珪素化合物供給口は、第1の整流部材の周壁で囲われた領域内に配置され、第2の珪素化合物供給口は、第2の整流部材の前記周壁で囲われた領域内に配置されることにより、珪素化合物供給口を複数設けて反応容器内に上流から下流にわたる充分な量の珪素化合物ガスを迅速にできると共に、珪素化合物ガスを、確実に整流部材の周壁で囲われた領域を主として通過させることができる。
【0075】
なお、本発明においては、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明においては、装置構成の複雑化を排しながら、シリコンの収率を向上させるための還元反応の効率を向上し、同時に生成シリコンと生成ガスとの分離回収効率をも向上することのできるシリコン製造装置を提供するものであり、その汎用普遍的な性格から種々の電子デバイス用のシリコン材料を製造できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるシリコン製造装置の概略一部断面図である。
【図2】図1のA−A線による拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線による拡大断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるシリコン製造装置の概略一部断面図である。
【図5】図4のC−C線による拡大断面図である。
【図6】図4のD−D線による拡大断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態におけるシリコン製造装置の概略一部断面図である。
【図8】図7のE−E線による拡大断面図であり、便宜上符号等に括弧を付して、図7のF−F線による拡大断面図も示す。
【図9】図7のG−G線による拡大断面図である。
【図10】図7のH−H線による拡大断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1…………シリコン製造装置
10………反応容器
10a……本体部
10b……排出管
20………整流部材
20a……周壁
20b……下流端
20c……上流端
30………珪素化合物供給管
30a……珪素化合物供給口
32………連結部材
34………珪素化合物導入管
40………第1の亜鉛供給管
40a……第1の亜鉛供給口
40b……延在部
44………第1の亜鉛導入管
50………第2の亜鉛供給管
50a……第2の亜鉛供給口
50b……延在部
54………第2の亜鉛導入管
60………加熱装置
2…………シリコン製造装置
70………整流部材
70a……周壁
70b……下流端
70c……上流端
3…………シリコン製造装置
80………第1の珪素化合物供給管
80a……第1の珪素化合物供給口
82………連結部材
84………珪素化合物導入管
90………第2の珪素化合物供給管
90a……第2の珪素化合物供給口
92………連結部材
94………珪素化合物導入管
100……整流部材
100a…周壁
100b…下流端
100c…上流端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と、
前記反応容器に連絡し、珪素化合物ガスを、珪素化合物供給口から前記反応容器内に第1の吐出方向に吐出しながら供給する珪素化合物供給管と、
前記反応容器に連絡し、亜鉛ガスを、第1の亜鉛供給口から前記反応容器内に第2の吐出方向に吐出しながら供給する亜鉛供給管と、
前記反応容器内に設けられ、前記第1の亜鉛供給口から前記第2の吐出方向に吐出される亜鉛ガスを偏向しながら、前記珪素化合物供給口から前記第1の吐出方向に吐出される珪素化合物ガスが前記反応容器における上流側から下流側に向かって流れることを許容する整流部材と、
前記反応容器において前記整流部材の下流側に設けられ、シリコンを含む反応生成ガスを前記反応容器外に排出する排出管と、
を備えるシリコン製造装置。
【請求項2】
前記反応容器は、筒状部材であり、前記整流部材は、前記反応容器の前記筒状部材内に収容されて周壁を有する筒状部材である請求項1に記載のシリコン製造装置。
【請求項3】
前記整流部材を構成する前記筒状部材は、円筒部材である請求項2に記載のシリコン製造装置。
【請求項4】
前記整流部材を構成する前記筒状部材は、前記反応容器における上流側から下流側に向かって径が減少する中空円錐台部材である請求項2に記載のシリコン製造装置。
【請求項5】
前記珪素化合物供給口は、前記整流部材の前記周壁で囲われた前記領域を臨んで配置される請求項2から4のいずれかに記載のシリコン製造装置。
【請求項6】
前記珪素化合物供給口は、前記整流部材の前記周壁で囲われた前記領域内に配置される請求項2から4のいずれかに記載のシリコン製造装置。
【請求項7】
前記第1の亜鉛供給口は、前記整流部材の前記周壁に対応して配置される請求項2から6のいずれかに記載のシリコン製造装置。
【請求項8】
前記第1の亜鉛供給口は、前記整流部材の前記周壁における上流側部分に対向して配置される請求項7に記載のシリコン製造装置。
【請求項9】
前記亜鉛供給管は、更に、前記第1の亜鉛供給口に対して、前記反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、前記第2の亜鉛供給口は、前記珪素化合物供給口よりも上流側に配置される請求項2から6のいずれかに記載のシリコン製造装置。
【請求項10】
前記整流部材は、前記反応容器における下流側に配置される第1の整流部材と、前記反応容器における上流側に配置される第2の整流部材と、を含み、前記亜鉛供給管は、更に、前記第1の亜鉛供給口に対して、前記反応容器における上流側に配置される第2の亜鉛供給口を有し、前記第1の亜鉛供給口は、前記第1の整流部材の周壁に対応して配置され、前記第2の亜鉛供給口は、前記第2の整流部材の周壁に対応して配置される請求項2から6のいずれかに記載のシリコン製造装置。
【請求項11】
前記珪素化合物供給口は、前記反応容器における下流側に配置される第1の珪素化合物供給口と、前記反応容器における上流側に配置される第2の珪素化合物口と、を含み、前記第1の珪素化合物供給口は、前記第1の整流部材の前記周壁で囲われた前記領域内に配置され、前記第2の珪素化合物供給口は、前記第2の整流部材の前記周壁で囲われた前記領域内に配置される請求項10に記載のシリコン製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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