説明

シリンジポンプ

【課題】 微量の液体を高精度でかつ高速に吐出できるシリンジポンプを提供すること。
【解決手段】 シリンジポンプ1は、シリンジ2およびピストン3と、ピストン3の移動装置とを備える。移動装置は、圧電素子72の伸縮により進退される駆動ロッド70と、駆動ロッド70に平行なガイドロッドと、一方向クラッチ部材8と、クラッチ解除手段10とを備える。駆動ロッド70が第1方向に移動すると、一方向クラッチ部材8のボール86が駆動ロッド70およびリング部材82に圧接してロックし、一方向クラッチ部材8、パイプ9、ピストン3も移動して液体が吐出する。駆動ロッド70が第2方向に移動すると、一方向クラッチ部材8のボール86がガイドロッドに対してロックし、一方向クラッチ部材8の移動を禁止する。圧電素子72の伸縮でピストン3を精度良くかつ微少な量だけ吐出方向に移動でき、微量の液体を高精度でかつ高速に吐出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ(注射筒)およびピストン(押し子)を備えるシリンジポンプに係り、特に、微量の液体を高精度でかつ高速に吐出可能なシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプは、シリンジを交換可能に保持し、予め液が充填されたシリンジをポンプにセットして液を押し出して吐出するように用いられていた。このシリンジポンプは、シリンジをポンプにセットするまで、シリンジ内の液を密封することもできるため、衛生面を向上でき、かつ有害物質の液や、粘性の高い液、脱泡済みの液などの取扱いも容易になるなどのメリットがある。
このため、シリンジポンプは、従来から、医療用で多く使われているほか、各種接着剤、銀ペースト、はんだペースト、グリス、薬液、液晶などの各種の液体を吐出する用途に利用でき、工場における部品製造・組立ラインでも広く利用されている。
【0003】
以上のような用途で用いられるシリンジポンプとしては、シリンジ内部に加圧空気を供給してシリンジ内部の液体を押し出す空気式のものが一般的である(特許文献1参照)。
空気式のシリンジポンプは、シリンジ内にチューブを介して供給する加圧空気の圧力と加圧時間を制御して液を押し出すので、シリンジ部分を軽量にできる。このため、製造・組立ライン等において、ロボットのアームにシリンジポンプを取り付けてワークに対してポンプを移動しながら液を吐出する用途などに用いられていた。
【0004】
【特許文献1】特開2002−361144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、空気式のシリンジポンプの場合、次のような問題があった。
すなわち、吐出量の設定や精度に関しては、空気圧力、空間の大きさ、時間、針(ノズル)の条件と液体の粘度など、吐出量を左右する要素が多いため、吐出量を予め設定することが難しかった。このため、吐出量の精度を向上させるためには、吐出した液部分を撮影して画像処理を行うなど、実際に吐出した液量を測定してフィードバック制御を繰り返す必要があり、制御が煩雑であった。
また、動作速度に関しては、吐出を指示する信号が入力されてから、実際に液が吐出し始めるまでの立ち上がり時間が必要なため、常時加圧やバルブ開閉などで改善しても、応答時間を10msec程度以下に短縮することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、微量の液体を高精度でかつ高速に吐出できるシリンジポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリンジポンプは、液が充填されるシリンジと、このシリンジ内に進退可能に配置されてシリンジ内に充填される液を押し出して吐出可能なピストンと、前記ピストンを移動させる移動装置とを備え、前記移動装置は、圧電素子と、この圧電素子の伸縮駆動に伴い前記ピストンの移動軸方向に進退される駆動ロッドと、この駆動ロッドに平行に配置されたガイドロッドと、前記駆動ロッドおよびガイドロッドに跨って配置されて前記駆動ロッドが第1方向に移動した際には駆動ロッドに対してロックされて駆動ロッドと共に移動して前記ピストンを押して液を吐出させるとともに、駆動ロッドが第1方向と逆の第2方向に移動した際にはガイドロッドに対してロックされて駆動ロッドと共に移動せずに停止する一方向クラッチ部材と、前記一方向クラッチ部材の駆動ロッドおよびガイドロッドに対するロック状態を解除して各ロッドに対して自由に移動可能とするクラッチ解除手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような本発明においては、圧電素子を利用して駆動ロッド、一方向クラッチ部材を介してピストンを移動することでシリンジ内の液体を吐出しているので、微量の液体を高精度にかつ高速に吐出することができる。
すなわち、圧電素子の伸縮によって駆動ロッドを進退させ、駆動ロッドがピストン側に移動した時のみ駆動ロッドとともに移動する一方向クラッチ部材を用いたので、圧電素子の変位量だけピストンを移動することができる。そして、圧電素子の変位によるピストンの位置決め精度は、空気圧を用いた場合に比べて高精度にできるため、本発明によれば微量の液体を高精度に吐出できる。
また、圧電素子は、空気圧式に比べて応答速度が1/1000程度と非常に速いので、液体を高速に吐出できる。さらに、圧電素子の1回の伸縮によるピストンの移動量が小さいため、微量の液体の吐出が可能であり、かつ、圧電素子を高速に駆動できるため、単位時間当たり、例えば1秒間に吐出する液体量は空気圧式と同程度にすることもでき、様々な吐出条件にも対応できる。
そして、本発明のシリンジポンプは、駆動ロッドに沿って直線的に移動する一方向クラッチ部材と圧電素子とを利用してピストンを駆動しているので、空気式のシリンジポンプと同等程度に小型、軽量化することができ、サーボモータおよびボールネジの駆動機構を採用した場合に比べて、シリンジポンプを容易に小型化できる。従って、各種製品の生産ラインにおいて、接着剤や各種ペースト等の吐出に本発明のシリンジポンプを利用する際にも、ロボットのアームに取り付けて、高速、高加速度で移動させることができ、生産ラインのタクトタイムの短縮を実現でき、生産性向上に寄与することができる。
【0009】
また、圧電素子は、空気式で駆動する場合に比べて発生力が大きいため、ノズルを細くして抵抗が増えても液体を飛ばして吐出することができる。このため、例えば、0.1マイクロリットルの水でもきれいに飛ばすことができ、安定した動作を実現できる。
その上、圧電素子の変位量は、圧電素子に加える電圧値で容易に調整できるため、ピストンのストローク量を電圧値で調整することで、駆動動作中であっても1回毎の吐出量を自動的に調整することができる。このため、基板上に複数の電子部品を取り付ける工程において、各電子部品の取付場所毎に異なる液量の接着剤を塗布するために、基板上に吐出する液体の量を変更する場合や、複数の製品が混在して送られる生産ラインにおいて、製品毎に液体の吐出量を変更する場合でも、容易に対応でき、使い勝手のよいシリンジポンプを提供できる。
【0010】
本発明において、前記一方向クラッチ部材は、前記駆動ロッドに対してロック状態およびロック解除状態に切り替えられる第1クラッチ手段と、前記ガイドロッドに対してロック状態およびロック解除状態に切り替えられる第2クラッチ手段とを備え、前記第1クラッチ手段は、駆動ロッドが第1方向に移動する場合には駆動ロッドに対してロック状態となって駆動ロッドとともに移動され、かつ、駆動ロッドが第2方向に移動する場合には駆動ロッドに対してロック解除状態となり、前記第2クラッチ手段は、一方向クラッチ部材が駆動ロッドとともに第1方向に移動する場合にはガイドロッドに対してロック解除状態となり、かつ、駆動ロッドが第2方向に移動する場合にはガイドロッドに対してロック状態となってガイドロッドに対する一方向クラッチ部材の移動を禁止することが好ましい。
【0011】
このような本発明によれば、第1クラッチ手段により駆動ロッドが第1方向に移動する際に一方向クラッチ部材を同方向に移動でき、第2クラッチ手段により駆動ロッドが第2方向に移動する際に一方向クラッチ部材が同方向に移動することを禁止できる。従って、一方向クラッチ部材を第1方向のみに移動でき、つまりピストンを液体吐出方向のみに移動することができ、ピストンが戻ってシリンジ内に液体が逆流することを確実に防止できる。
【0012】
ここで、前記駆動ロッドおよびガイドロッドは断面円形の丸棒からなり、前記第1クラッチ手段および第2クラッチ手段は、それぞれ、駆動ロッドおよびガイドロッドに比べて直径が大きくされ、かつ駆動ロッドおよびガイドロッドが挿通される貫通孔を有するガイドリングと、前記ガイドリングの貫通孔の内周面と駆動ロッドおよびガイドロッドの外周面との間に配置され、かつ、駆動ロッドおよびガイドロッドの外周面の周方向に沿って間隔をあけて複数配置されたボールと、前記ボールを前記第1方向側に向かって付勢する付勢手段と、を備えて構成され、前記ガイドリングの貫通孔の内周面は、前記第1方向に向かうにしたがって直径が小さくなるテーパ面を備え、前記ボールの直径は、駆動ロッドおよびガイドロッドとテーパ面との間の寸法のうち、最小寸法よりも大きく、最大寸法よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、圧電素子により駆動ロッドが第1方向に移動すると、駆動ロッドに当接しているボールが駆動ロッドによってテーパ面および駆動ロッド間の間隔が狭い方に移動され、テーパ面および駆動ロッド間に圧接固定される。従って、駆動ロッドと共に一方向クラッチ部材が第1方向に移動し、前記ピストンによる液体吐出が行われる。この際、ガイドロッドに対しても一方向クラッチ部材が第1方向に移動することになるが、ガイドロッドに当接するボールに対してガイドロッドは相対的に第2方向に移動し、ボールはテーパ面およびガイドロッドの間隔が広い方に移動されるので、一方向クラッチ部材はガイドロッドに対してはロック解除状態となり、一方向クラッチ部材の移動が阻害されることはない。
【0014】
一方、圧電素子により駆動ロッドが第2方向に移動すると、駆動ロッドに当接しているボールが駆動ロッドによってテーパ面および駆動ロッド間の間隔が広い方に移動され、ロックが解除される。この際、ガイドロッドに対して一方向クラッチ部材が第2方向に移動しようとしても、ガイドロッドに当接するボールに対してガイドロッドは相対的に第1方向に移動し、ボールはテーパ面およびガイドロッドの間隔が狭い方に移動されるので、一方向クラッチ部材はガイドロッドに対してはロック状態となり、一方向クラッチ部材が第2方向に移動することはなく、液体の逆流は確実に防止される。
【0015】
以上のように、駆動ロッドが圧電素子によって進退すると、一方向クラッチ部材は自動的にロック状態やロック解除状態に切り替わるため、クラッチのオンオフを制御するための特別な制御機構を設ける必要が無く、構成を簡易にできてコストも低減できる。また、駆動ロッドに対するロックされる第1クラッチ手段と、ガイドロッドに対してロックされる第2クラッチ手段とは同一構成であるため、部品を兼用でき、コストを低減できる。
【0016】
また、本発明では、前記駆動ロッドおよびガイドロッドは断面円形の丸棒からなり、前記第1クラッチ手段および第2クラッチ手段は、それぞれ、駆動ロッドおよびガイドロッドに比べて直径が大きくされ、かつ貫通孔を有するガイドリングと、前記ガイドリングの貫通孔内に配置され、かつ中心軸部分に前記駆動ロッドおよびガイドロッドが挿通されたボール保持器と、このボール保持器にその周方向に沿って間隔をあけて複数形成された貫通孔内にそれぞれ1つずつ配置された複数のボールと、を備えて構成され、前記ガイドリングの貫通孔の内周面は、前記第1方向に向かうにしたがって直径が小さくなるテーパ面を備え、前記ボールの直径は、駆動ロッドおよびガイドロッドとテーパ面との間の寸法のうち、最小寸法よりも大きく、最大寸法よりも小さく設定され、前記ボール保持器の各貫通孔は、ボール保持器の半径方向に貫通され、貫通孔内に配置されたボールが前記各ロッドおよびガイドリングの内周面に当接可能とされ、かつ、貫通孔の直径は前記ボールに比べて大きく形成され、各貫通孔の中心点に対して前記第1方向側でかつ貫通孔の中心点を通るボール保持器の軸方向に対して円周方向にオフセットされた斜め位置には前記ボールを引き寄せ可能な磁石が貫通孔毎に設けられ、前記ボール保持器は各ロッドを回転中心として回動可能に設けられているものでもよい。
【0017】
このような構成においても、圧電素子により駆動ロッドが第1方向に移動すると、駆動ロッドに当接しているボールが駆動ロッドによってテーパ面および駆動ロッド間の間隔が狭い方に移動され、テーパ面および駆動ロッド間に圧接固定される。従って、駆動ロッドと共に一方向クラッチ部材が第1方向に移動し、前記ピストンによる液体吐出が行われる。この際、ガイドロッドに対しても一方向クラッチ部材が第1方向に移動することになるが、ガイドロッドに当接するボールに対してガイドロッドは相対的に第2方向に移動し、ボールはテーパ面およびガイドロッドの間隔が広い方に移動されるので、一方向クラッチ部材はガイドロッドに対してはロック解除状態となり、一方向クラッチ部材の移動が阻害されることはない。また、前記ボールは、磁石によって引き寄せられているので、駆動ロッドが第1方向に移動した際には、貫通孔の中心位置から円周方向にオフセットされた位置でテーパ面および駆動ロッド間に圧接固定される。
【0018】
一方、圧電素子により駆動ロッドが第2方向に移動すると、駆動ロッドに当接しているボールが駆動ロッドによってテーパ面および駆動ロッド間の間隔が広い方に移動され、ロックが解除される。この際、ガイドロッドに対して一方向クラッチ部材が第2方向に移動しようとしても、ガイドロッドに当接するボールに対してガイドロッドは相対的に第1方向に移動し、ボールはテーパ面およびガイドロッドの間隔が狭い方に移動されるので、一方向クラッチ部材はガイドロッドに対してはロック状態となり、一方向クラッチ部材が第2方向に移動することはなく、液体の逆流は確実に防止される。
【0019】
以上のように、本発明においても、駆動ロッドが圧電素子により進退すると、一方向クラッチ部材は自動的にロック状態やロック解除状態に切り替わるため、クラッチのオンオフを制御するための特別な制御機構を設ける必要が無く、構成を簡易にできてコストも低減できる。また、駆動ロッドに対してロックされる第1クラッチ手段と、ガイドロッドに対してロックされる第2クラッチ手段とは同一構成であるため、部品を兼用でき、コストを低減できる。
【0020】
ここで、前記クラッチ解除手段は、外部操作により前記ボールを第2方向に移動可能なボール移動部材を備えて構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、前記ボールを第2方向に移動すれば、ボールをテーパ面および各ロッド間の間隔が広い方に移動でき、容易にロック状態を解除できる。
また、磁石が内蔵されたボール保持器を用いることで、前記ボールを、貫通孔の中心位置から円周方向にオフセットされた位置でテーパ面および駆動ロッド間に圧接固定させている場合には、ボール保持器を第2方向に移動すれば、ボール保持器の貫通孔の内周面がボールに当接し、その内周面に沿ってボールを回転させながら第2方向に移動できるので、ボールをテーパ面および各ロッド間の間隔が広い方に容易に移動でき、かつ、ボールとテーパ面や各ロッドとの摩擦を静摩擦から動摩擦にできるため、ロック解除に必要な力を小さくでき、解除操作性を向上できる。
【0021】
また、前記一方向クラッチ部材は、内部に駆動ロッドが挿通され、かつ、一端が前記ピストンに固定された駆動パイプを有し、前記ピストンおよびシリンジは、駆動ロッドおよび駆動パイプの軸線上に設けられているものでもよい。
生産ラインで利用される銀ペーストや液晶などの液体が収納されたシリンジは、液体が充填されたシリンジ内にピストンカップが配置され、シリンジの吐出口およびこの吐出口の反対側に形成されて前記ピストンカップが挿入されるシリンジの開口をそれぞれキャップで塞いだ状態で用意されることが多い。本発明の構成によれば、駆動パイプで移動されるピストンを例えばシリンジ内のピストンカップに挿入し、ピストンに固定された駆動パイプをシリンジ内部まで移動することで、シリンジ内の液体の吐出が完了するまでピストンを確実に移動できる。
【0022】
さらに、前記ピストンおよびシリンジは、駆動ロッドと平行に設けられ、前記一方向クラッチ部材は、前記ピストンの端部に当接可能な当接部を有するものでもよい。
医療現場で用いられる薬液が収納されたシリンジは、軸方向が長くされたプランジャタイプのピストンが用いられることが多い。このような場合、駆動ロッドの軸線上にシリンジおよびピストンを配置すると、シリンジポンプの全長が長くなってしまい、取扱いが困難になる。これに対し、本発明では、駆動ロッドとピストンおよびシリンジとを平行に配置しているので、シリンジポンプの全長を短くでき、取扱い性を向上できる。
【0023】
また、前記圧電素子は、その伸縮方向の一端面側は球面部材を介して素子ケースに当接され、他端面側は球面部材を介して駆動ロッドの端部に取り付けられた素子受け部材に当接され、前記各球面部材は圧電素子との接触面は圧電素子の端面が密着可能とされ、素子ケースおよび素子受け部材との接触面は球面とされ、前記素子受け部材は、付勢手段によって前記第2方向側に付勢されて前記圧電素子の球面部材に密着され、前記圧電素子が伸びると前記付勢手段の付勢力に抗して素子受け部材および駆動ロッドが第1方向に移動し、圧電素子が縮むと前記付勢手段の付勢力によって素子受け部材および駆動ロッドが第2方向に移動することが好ましい。
【0024】
圧電素子の両端に球面部材を設け、この球面部材の球面を各素子ケース、素子受け部材に当接させているので、圧電素子に偏加重が加わることを防止でき、偏加重による圧電素子の破損を防止できる。
【0025】
ここで、本発明のシリンジポンプは、前記圧電素子の変位量または駆動ロッドの変位量を検出するセンサと、このセンサの出力に応じて前記圧電素子に加える電圧値を制御する制御手段とを備えることが好ましい。
圧電素子は、印加電圧と変位量との間にヒステリシスが存在するため、フィードフォワード制御では変位量の調整が難しい面もあるが、本発明のように、圧電素子等の変位量を検出し、その変位量に基づくフィードバック制御を行えば、変位量を高精度に制御できる。
なお、変位量の測定には、例えば、歪みゲージを用いたり、静電容量型等の位置センサを用いたりすればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態のシリンジポンプ1が示され、図2には図1のA−A線に沿った断面図が示され、図3には図1のB−B線に沿った断面図が示されている。
シリンジポンプ1は、シリンジ2と、ピストン3と、シリンジ台4と、ガイドロッド5と、シリンジ蓋材6と、駆動部7と、一方向クラッチ部材8とを備えている。
【0027】
シリンジ2は、図2にも示すように、下端側にノズルなどが装着される吐出口21を有し、上端側には前記ピストン3が嵌挿されている。そして、前記吐出口21にはキャップが取り付けられて、ピストン3とともにシリンジ2内の液体を密封できるように構成されている。
【0028】
ピストン3は、ピストン本体31と、ピストンカップ32とを備えて構成されている。ピストン本体31は、例えば、プラスチック製とされ、外周にはシリンジ2内周面との隙間をシールするOリング等のシール材33が装着されている。また、ピストン本体31の上端面には凹部34が形成され、この凹部34の内周面にもシール材35が装着されている。さらに、ピストン本体31の中心軸部分には貫通孔が形成され、ピストンカップ32内にピストン本体31を挿入した際に、ピストンカップ32内の空気を排出してピストン本体31をピストンカップ32内にスムーズに挿入できるように構成されている。
【0029】
ピストンカップ32は、充填された液体が直接ピストン本体31に接触して影響を及ぼすことを防止するカバー材であり、耐液性・耐薬品性に優れたフッ素樹脂などで構成されている。
なお、ピストン3としては、ピストン本体31およびピストンカップ32で構成されるものに限らず、例えば、ゴム製の一体物でもよい。ゴム製のピストン3であれば、別途シール材33を設けなくても液漏れを防止できる。このように、ピストン3の構成や材質は、吐出する液の種類に応じて設定すればよい。
【0030】
このようなシリンジ2は、通常、予め内部に液体が充填され、かつ、ピストンカップ32が挿入され、吐出口21および吐出口21の反対側の開口をそれぞれキャップで密封した状態で提供される。従って、利用者は、液が充填されたシリンジ2を前記シリンジ台4に装着し、液体の吐出後は、シリンジ2をシリンジ台4から取り外して新しいシリンジ2に交換する。
【0031】
シリンジ台4は、ロボットのアーム等に取り付けるためのネジ穴41を有する。また、シリンジ2の吐出口21および吐出口21に連続するテーパ部分を保持する凹部42が形成されている。
このシリンジ台4には、前記2本のガイドロッド5がねじ止めされている。また、前記シリンジ蓋材6は、2本のガイドロッド5に跨って配置され、ガイドロッド5に沿って移動可能に設けられている。なお、ガイドロッド5には、シリンジ蓋材6のシリンジ台4側への移動を規制するための所定長さ寸法のパイプ51がそれぞれ設けられている。
【0032】
従って、シリンジ2をシリンジ台4に装着する際には、シリンジ蓋材6をシリンジ台4から離しておき、シリンジ台4の凹部42にシリンジ2を挿入した後、シリンジ蓋材6をシリンジ台4側に移動し、シリンジ台4およびシリンジ蓋材6でシリンジ2を挟持して装着される。
なお、本実施形態では、シリンジ蓋材6には円筒状の挿入部61が形成されており、この挿入部61をシリンジ2に嵌合させている。
【0033】
駆動部7は、駆動ロッド70と、駆動ロッド70を進退させるロッド進退機構71とを備える。
ロッド進退機構71は、図4にも示すように、主に、圧電素子72と、前記駆動ロッド70を圧電素子72側(第2方向側)に付勢する付勢手段としての皿バネ73と、圧電素子72が収納される素子ケース74とを備えて構成されている。
【0034】
素子ケース74は、略ボックス状に形成されており、その両端部には前記ガイドロッド5がそれぞれ取り付けられている。すなわち、ガイドロッド5の一端はシリンジ台4に固定され、他端は素子ケース74に固定され、各ガイドロッド5は互いに平行に配置されている。
また、素子ケース74には、前記圧電素子72の駆動を制御する図示しないコントローラ(制御手段)からの配線が接続されるコネクタ75が取り付けられている。コネクタ75からは図示しない配線を介して圧電素子72に駆動信号(電圧)が印加されるように構成されている。
【0035】
ここで、圧電素子72は、直方体状に形成されたセラミック製の積層型圧電素子であり、その長手方向の寸法(図2における上下方向の寸法)が20mm程度であれば、所定の駆動電圧(例えば100V)を加えた際に、前記長手方向寸法が11μm程度変位するものなどが利用できる。この変位量は主に圧電素子72の長手方向寸法にほぼ比例し、長手方向寸法が40mm程度であれば変位量は28μm程度となる。
【0036】
素子ケース74のシリンジ台4側の端面には開口が形成され、キャップ741が取り付けられている。キャップ741には貫通孔が形成され、前記駆動ロッド70およびこの駆動ロッド70の端部に固定された素子受け部材76が挿通されている。
素子受け部材76は略円筒状に形成され、その外周面には段部が設けられている。そして、前記皿バネ73は、素子受け部材76の段部およびキャップ741間に介在され、素子受け部材76および駆動ロッド70を圧電素子72側に付勢している。
【0037】
圧電素子72は素子ケース74および素子受け部材76間に配置されている。すなわち、素子ケース74および素子受け部材76の対向する面にはそれぞれ凹部が形成され、各凹部の底面には樹脂シート77を介して圧電素子72の長手方向側の両端面がそれぞれ当接されている。なお、樹脂シート77を介在させているのは、セラミック製の圧電素子72がアルミなどの金属製の素子ケース74や素子受け部材76に直接当接することを防止し、圧電素子72等が破損し難いようにするためである。
【0038】
従って、圧電素子72に駆動信号が入力されて圧電素子72が長手方向に伸びると、素子ケース74側は移動しないので、皿バネ73の付勢力に抗して変位分だけ素子受け部材76および駆動ロッド70をシリンジ台4に向かう方向(図2では下方)に移動する。一方、圧電素子72が元の長さに戻ると、皿バネ73の付勢力で素子受け部材76および駆動ロッド70もシリンジ台4から離れる方向(図2では上方)に移動する。
【0039】
次に、一方向クラッチ部材8の構成について説明する。
一方向クラッチ部材8は、クラッチ台80を備えている。クラッチ台80は、図1に示すように、略ボックス状に形成されて2本のガイドロッド5間に架け渡されている。また、その正面には操作用の突起部80Aが突設されている。
クラッチ台80の図1における左右方向の中心部分には貫通孔が形成され、この貫通孔に前記駆動ロッド70が挿通されている。なお、貫通孔のシリンジ台4側は大径の空間とされ、その内部には略円筒状のピンガイド部材81と、ガイドリングであるリング部材82とが挿入されている。
【0040】
ピンガイド部材81は、中心軸部分に前記駆動ロッド70が挿通される貫通孔811が形成され、その貫通孔811の周囲には、貫通孔811に平行に形成されてピンガイド部材81を軸方向に貫通する複数のガイド孔812が、円周方向に沿ってかつ等間隔で形成されている。
【0041】
リング部材82は、超硬合金で形成され、その内部の貫通孔部分は駆動ロッド70に比べて大きな直径とされている。そして、この貫通孔の内周面には、シリンジ台4側つまり図4において下方(第1方向)に向かうにしたがって直径が小さくなるように形成されたテーパ面821と、このテーパ面821のシリンジ台4側に連続して形成されて前記駆動ロッド70の外周面と同心円状とされた円周面822とが形成されている。
そして、ピンガイド部材81およびリング部材82は、クラッチ台80にねじ止めされた押さえ部材83と、前記クラッチ台80とで挟持されて固定されている。
【0042】
ピンガイド部材81のガイド孔812は、例えば6個程度形成され、それぞれに押しピン84が挿入されている。この押しピン84は、クラッチ台80と押しピン84間に設けられたバネ85でシリンジ台4側に付勢されている。従って、押しピン84およびバネ85により、ボール86を第1方向に付勢する付勢手段が構成されている。
【0043】
また、リング部材82のテーパ面821および駆動ロッド70間にはボール86が配置されている。ボール86は、超硬合金製の精密ボールであり、前記各押しピン84に対応する位置にそれぞれ設けられている。すなわち、6本の押しピン84が設けられている場合には、6個のボール86が設けられる。また、ピン84の端面には球面状のボール保持凹部841が形成されており、ボール86が円周方向に移動して各ボール86間の間隔がずれないように構成されている。
【0044】
リング部材82の円周面822および駆動ロッド70間には戻しリング87が配置されている。戻しリング87は、駆動ロッド70に沿ってスライド移動可能とされ、後述するクラッチ解除手段によって圧電素子72側に移動されると、バネ85の付勢力に抗してボール86および押しピン84を圧電素子72側に移動するものである。
【0045】
なお、前記ボール86の直径と、前記テーパ面821および駆動ロッド70の直径との関係は次のように設定されている。すなわち、ボール86の直径は、テーパ面821の円周面822側の端縁部分と駆動ロッド70間の隙間寸法よりも大きく、かつ、テーパ面821の圧電素子72側の端縁部分と駆動ロッド70間の隙間寸法よりも小さく設定されている。
【0046】
また、クラッチ台80の左右方向両端部分にも貫通孔が形成され、図5に示すように、この貫通孔に前記ガイドロッド5が挿通されている。この貫通孔には、前述のピンガイド部材81、リング部材82、押さえ部材83、押しピン84、バネ85、ボール86、戻しリング87が配置されている。すなわち、ガイドロッド5が挿通された貫通孔内の構成は、前記駆動ロッド70が挿通された貫通孔と同一であるため、同一構成には同一符号を付し、説明を省略する。
なお、ボール86が当接するガイドロッド5や駆動ロッド70は、ボール86やリング部材82と同様に超硬合金で構成されている。
【0047】
一方向クラッチ部材8において、駆動ロッド70が挿通された押さえ部材83には、図2,4に示すように、駆動パイプとしての押しパイプ9の端部が固定されている。この押しパイプ9内には駆動ロッド70が挿通されている。また、押しパイプ9の端部はピストン3の凹部34に挿入されている。なお、押しパイプ9の端部には蓋91が挿入され、パイプ9内への液の浸入を防止している。
【0048】
一方向クラッチ部材8のシリンジ台4側には、クラッチ解除手段10が設けられている。クラッチ解除手段10は、クラッチ台80と同様に、2本のガイドロッド5間に架け渡された板状部材で構成されたクラッチ押し部材100を備えている。このクラッチ押し部材100にも、前記突起部80Aに対向して設けられた操作用の突起部100Aが突設されている。
【0049】
クラッチ押し部材100の左右方向中心部分および左右両端部分には、それぞれ駆動ロッド70およびガイドロッド5が挿通される貫通孔が形成されている。また、各貫通孔部分には、各押さえ部材83が配置可能な凹部101がそれぞれ形成されている。
各凹部101には、ピン102の一端が固定されている。各ピン102は、駆動ロッド70およびガイドロッド5の周囲に複数本ずつ配置されている。例えば、各ロッド5,70の周囲に、その周方向に90度間隔で4本ずつ配置されている。ピン102の他端は、押さえ部材83を貫通して戻しリング87に当接されている。
【0050】
このため、図6に示すように、突起部80Aおよび突起部100Aを握ってクラッチ台80に対してクラッチ押し部材100を近付けると、ピン102は戻しリング87を圧電素子72側に押す。すると、ボール86および押しピン84がバネ85の付勢力に抗して圧電素子72側に移動する。ボール86は、リング部材82のテーパ面821および駆動ロッド70やガイドロッド5に圧接していたロック状態から、テーパ面821および駆動ロッド70やガイドロッド5間の間隔が広い方に移動するため、ロック状態が解除される。すなわち、利用者は、各突起部80A,100Aを近付けることで一方向クラッチ部材8のロック状態を解除でき、一方向クラッチ部材8およびクラッチ解除手段10をガイドロッド5、駆動ロッド70に沿って自由に移動できる。従って、ボール86を第2方向に移動可能なボール移動部材は、戻しリング87、ピン102およびクラッチ押し部材100を備えて構成されている。
【0051】
クラッチ押し部材100の各側面には、図1に示すように、L字状に折曲されて突起部80Aおよび突起部100Aを握った際に加わるモーメントを受けることができる移動規制板103がそれぞれ取り付けられている。すなわち、移動規制板103は、クラッチ押し部材100の側面からクラッチ台80の側面側に延長され、かつクラッチ台80の素子ケース74に対向する面側に折曲され、この折曲された面にはフランジブッシュ104が取り付けられている。
フランジブッシュ104は、各ガイドロッド5に嵌挿されている。従って、クラッチ押し部材100のシリンジ台4側への移動つまりクラッチ台80から離れる方向への移動は、フランジブッシュ104がクラッチ台80の素子ケース74側の面に当接する位置に規制されている。
【0052】
次に、本実施形態のシリンジポンプ1における液体の吐出動作について説明する。
[シリンジセット]
まず、事前の準備として、吐出液が充填されたシリンジ2のキャップを外してピストンカップ32にピストン本体31を取り付け、このシリンジ2をシリンジ台4およびシリンジ蓋材6間に配置する。そして、一方向クラッチ部材8のクラッチ状態を解除してパイプ9をピストン3側に移動し、ピストン3の凹部34内に挿入する。
【0053】
[吐出動作]
図示しないコントローラにより圧電素子72に駆動信号を入力すると、圧電素子72は長手方向つまり駆動ロッド70の軸方向に伸縮駆動され、この駆動に伴い駆動ロッド70はシリンジ2に向かって進退駆動を繰り返す。
ここで、ボール86は、バネ85でシリンジ2側に付勢されており、テーパ面821および駆動ロッド70の外周面に当接している。この状態で、駆動ロッド70がシリンジ2側に移動すると、駆動ロッド70に当接する前記ボール86も同じ方向に移動しようとし、ボール86がテーパ面821に食い込むように圧接する。このため、一方向クラッチ部材8およびパイプ9は、駆動ロッド70と一体となってシリンジ2側に移動し、この移動に伴いピストン3も吐出口21側に移動する。このため、ピストン3の移動量に応じて、シリンジ2内の液体が吐出口21から吐出される。
【0054】
なお、一方向クラッチ部材8はガイドロッド5に対してもシリンジ2側に移動しようとする。この際、ガイドロッド5は固定されていて移動しないので、ガイドロッド5は相対的には一方向クラッチ部材8に対して素子ケース74側に移動することになり、ガイドロッド5に当接するボール86もバネ85の付勢力に抗して素子ケース74側つまりテーパ面821とガイドロッド5の外周面間の寸法が大きくなる方向に移動する。従って、一方向クラッチ部材8は、ガイドロッド5に対してはロック解除状態となって自由に移動できる。
【0055】
一方、圧電素子72が元の長さに戻り、駆動ロッド70も元の位置に戻る際には、一方向クラッチ部材8は駆動ロッド70に対しては、ボール86が素子ケース74側つまりテーパ面821と駆動ロッド70の外周面間の寸法が大きくなる方向に移動するため、ロック解除状態となる。
この際、前記一方向クラッチ部材8がガイドロッド5に対して素子ケース74側に移動しようとすると、ガイドロッド5は相対的には一方向クラッチ部材8に対してシリンジ2側に移動しようとすることになる。このため、前記駆動ロッド70がシリンジ2側に移動した場合と同様に、ボール86がテーパ面821およびガイドロッド5の外周面の狭い方向に移動しようとしてテーパ面821に強固に圧接する。
従って、一方向クラッチ部材8はガイドロッド5に対して移動不能にロックされるため、駆動ロッド70のみが圧電素子72側に移動する。
【0056】
以上のように動作するため、圧電素子72が伸長して駆動ロッド70がシリンジ2側に移動すると、その移動量分だけ一方向クラッチ部材8、パイプ9およびピストン3が移動して液が吐出される。
一方、圧電素子72が縮小して駆動ロッド70が圧電素子72側に移動しても、一方向クラッチ部材8はガイドロッド5に対して移動不能にロックされるため、一方向クラッチ部材8、パイプ9およびピストン3は停止状態とされ、液も吐出されない。
このため、圧電素子72が伸縮を繰り返すと、一方向クラッチ部材8、パイプ9、ピストン3は逆方向に戻ることなく、間欠的にシリンジ2の吐出口21側のみに移動し、液が吐出される。
【0057】
図7に示すように、ピストン3がシリンジ2の吐出口21側の端面まで移動して、シリンジ2内部の液体を吐出し終わった場合には、前述の通り、突起部80Aおよび突起部100Aを操作して一方向クラッチ部材8を解除状態にし、一方向クラッチ部材8、パイプ9、ピストン3を圧電素子72側に移動すればよい。そして、パイプ9をピストン3から取り外し、シリンジ2をシリンジ台4、シリンジ蓋材6間から取り外し、液が充填されたシリンジ2に交換して液の吐出を継続すればよい。なお、ピストン本体31は、例えば、貫通孔部分に雌ねじを形成しておき、取付治具をねじ込んでシリンジ2から引き出すことで取り外し、適宜、洗浄して再利用すればよい。
従って、本実施形態においては、ガイドロッド5、駆動部7、一方向クラッチ部材8、パイプ9、クラッチ解除手段10によって、ピストン3を移動する移動装置が構成されている。また、駆動ロッド70に当接するボール86、および、このボール86が当接されるリング部材82を備えて第1クラッチ手段が構成され、ガイドロッド5に当接するボール86、および、このボール86が当接されるリング部材82を備えて第2クラッチ手段が構成される。
【0058】
なお、コントローラは、圧電素子72に流す電流を制御することで吐出スピードを調整し、圧電素子72にかける電圧値を制御することで圧電素子72の変位量つまり吐出量を調整している。
この際、圧電素子72や駆動ロッド70、一方向クラッチ部材8、パイプ9等のピストン3に連動して変位する部材の変位量を検出するセンサ、例えば静電容量型のセンサや、歪みゲージなどを設け、これらのセンサの検出データをフィードバックさせることで、コントローラで設定された吐出量を精度良く制御することができる。
【0059】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)圧電素子72を利用してピストン3を移動しているので、微量であっても精度良く液体を吐出できる。すなわち、例えば、直径16mmのシリンジ2(断面積は約200mm2 )で1マイクロリットルの液体を吐出する場合、ピストン3の移動量は5μmとなる。従来の空気圧を利用した場合や、ボールネジ等を用いた場合には、位置決め精度を約1μm以下にすることは困難であるから、最も精度のよい約1μmの精度で位置決め可能であったとしても、吐出量の誤差は0.2マイクロリットル(20%)程度になってしまう。
これに対して、本実施形態では、位置決め精度が0.1μm程度にできる圧電素子72を用いているので、吐出量の誤差は0.002マイクロリットルとなり、誤差も0.2%と非常に小さくできる。従って、微量の液体であっても高精度に吐出することができる。
【0060】
(2)圧電素子72は、応答速度が0.01msec程度と非常に速いので、10msec程度の応答速度である空気圧式やボールネジ式の駆動に比べて高速な液体吐出動作を実現できる。さらに、圧電素子72は、エアシリンダ駆動に比べて発生力が大きいため、吐出口21に取り付けるノズルを細くして抵抗が増えても液体を飛ばして吐出することができる。このため、例えば、0.1マイクロリットルの水でもきれいに飛ばすことができ、安定した動作を実現できる。
【0061】
(3)一方向クラッチ部材8は、圧電素子72や駆動ロッド70の進退移動を、一方向の直線運動にできるため、コンパクトな構成にすることができる。また、圧電素子72も1つだけ設ければよい。従って、駆動源として1つの圧電素子72を用い、かつ、一方向クラッチ部材8もコンパクトに構成できるので、サーボモータおよびボールネジなどの駆動機構を採用した場合に比べて、シリンジポンプ1を容易に小型化できる。
従って、各種製品の生産ラインにおいて、接着剤や各種ペースト等の吐出に本実施形態のシリンジポンプ1を利用する際にも、ロボットのアームに取り付けて、高速、高加速度で移動させることができ、生産ラインのタクトタイムの短縮を実現でき、生産性向上に寄与することができる。
【0062】
(4)単位時間当たりの吐出液の液量は、圧電素子72に加える電圧値を変更したり、圧電素子72に加える電流値を変更することで、吐出動作中であっても容易に設定変更できる。このため、例えば、基板上に複数の電子部品を取り付ける工程において、各電子部品の取付場所毎に異なる液量の接着剤を塗布するために、基板上に吐出する液体の量を変更する場合や、複数の製品が混在して送られる生産ラインにおいて、製品毎に液体の吐出量を変更しなければならない場合でも、容易に対応でき、使い勝手のよいシリンジポンプ1を提供できる。
【0063】
(5)一方向クラッチ部材8を用いているので、圧電素子72の駆動時にピストン3が吐出口21から離れる方向に移動してしまうことを確実に防止できる。このため、ピストン3が逆方向に移動してしまい吐出口21から空気が吸い込まれ、その次に吐出動作を行った際には空気が含まれて吐出液の量がばらつくという問題を確実に防止できる。さらに、シリンジポンプ1は、逆流が禁止される薬液の注入にも利用できる。
一方向クラッチ部材8は、駆動ロッド70部分に配置される部分の構成と、ガイドロッド5部分に配置される部分の構成とが同一であるため、その分、製造コストを低減できる。
【0064】
(6)一方向クラッチ部材8は、リング部材82のテーパ面821と各ロッド5,70の外周面との間にボール86を配置するという簡易な構成で実現できるので、この点でも製造コストを低減できる。
また、駆動ロッド70が圧電素子72によって進退すると、一方向クラッチ部材8は自動的にロック状態やロック解除状態に切り替わるため、クラッチのオンオフを制御するための特別な制御機構を設ける必要が無く、構成を簡易にできてコストも低減できる。
さらに、クラッチ解除手段10は、ピン102等を用いて前記ボール86をテーパ面821および各ロッド5,70の外周面間の寸法が広い部分に移動すればよく、非常に簡単な構成で実現できる。
【0065】
(7)本実施形態では、シリンジ2を容易に交換できるので、各種の薬剤や液晶等の取扱いが難しい液体であっても、その液体を密封したシリンジ2をシリンジ台4部分に装着するだけで吐出できるので、液体の劣化などを確実に防止できる。
【0066】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態のシリンジポンプ1Aについて、図8〜12を参照して説明する。
本実施形態は、図8に示すように、圧電素子72の長手方向(伸縮方向)の両端面に、樹脂シート77の代わりに球面部材78を設けた点と、一方向クラッチ部材8においてボール86を保持する構造を変更した点が、前記第1実施形態と相違する。従って、前記第1実施形態と同一または同様の構成に関しては、同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
【0067】
圧電素子72の両端に取り付けられた球面部材78は、半球体状に形成され、その外周面781は球面とされている。また、球面部材78には凹部782が形成され、この凹部782内に圧電素子72の端部が配置されている。ここで、凹部782の底面は平面状に形成され、この底面に前記圧電素子72の端面がエポキシ樹脂などの接着剤で接着されている。
【0068】
各球面部材78の外周面781は、素子ケース74および素子受け部材76に当接されている。素子ケース74および素子受け部材76にはそれぞれ凹部742,762が形成され、この凹部742,762に前記球面部材78の外周面781が当接されている。これにより素子ケース74に偏加重が加わることを防止できるように構成されている。
【0069】
一方向クラッチ部材8は、前記第1実施形態と同様に、クラッチ台80に形成された貫通孔内にはリング部材82が配置されている。このリング部材82は、クラッチ台80およびクラッチ台80にビス止めされた押さえ部材83で挟持固定されている。
但し、前記実施形態では、ボール86を直接付勢する押しピン84およびこの押しピン84を案内するピンガイド部材81が設けられていたが、本実施形態では、各ボール86の移動をある程度の範囲で規制するボール保持器88が設けられている点が大きく相違する。
【0070】
ボール保持器88は、図10に示すように、略円筒状に形成され、中心軸部分には各ロッド5,70が挿通されている。ボール保持器88の円周面881には、半径方向に貫通する貫通孔882が形成されている。この貫通孔882は、円周方向に沿って等間隔で複数設けられている。本実施形態では、90度間隔で4個の貫通孔882が形成されている。
貫通孔882の直径は、ボール86の直径よりも大きくされており、貫通孔882内でボール86が移動可能に構成されている。
【0071】
ボール保持器88には、各貫通孔882に対応してボール86を引き寄せ可能な磁石883が内蔵されている。この磁石883は、図11,12に示すボール保持器88の外周面の展開図に示すように、貫通孔882の中心点を通るボール保持器88の軸方向882Aと、この軸方向882Aに直交する円周方向882Bとに対してそれぞれオフセットされた斜め位置に設けられている。具体的には、磁石883は、各貫通孔882の中心点に対して前記第1方向側(シリンジ台4側)でかつ円周方向882B側にオフセットされた斜め位置に設けられている。
【0072】
ボール保持器88のクラッチ押し部材100側(第1方向側)には円盤状のスペーサ89が配置され、このスペーサ89にはピン102が当接されている。
ここで、スペーサ89はステンレスなどの金属製とされ、ボール保持器88は含油樹脂製とされ、ボール保持器88はロッド5,70を回転中心としてスペーサ89に対してスムーズに回動できるように構成されている。
【0073】
また、ボール保持器88は、バネ85によってシリンジ2側に付勢されている。なお、バネ85の付勢力は、ボール保持器88、スペーサ89、ピン102を介してクラッチ押し部材100に伝わり、クラッチ押し部材100はシリンジ2側への移動規制位置、つまり移動規制板103のフランジブッシュ104がクラッチ台80に当接する位置まで移動可能とされている。
この際、ボール保持器88の貫通孔882は、図8,9に示すように、リング部材82のテーパ面821のほとんどの範囲を含むように形成され、圧電素子72が駆動されていない状態ではボール86は貫通孔882内で自由に回転できるように設定されている。
【0074】
このような第2実施形態のシリンジポンプ1Aにおける液体吐出動作に関し説明する。
シリンジ2の装着は前記第1実施形態と同様に行えばよい。シリンジ2の装着後、圧電素子72を駆動していない状態では、図9に示すように、貫通孔882の範囲内でボール86も自由に移動可能となる。このため、ボール86は磁石883によって引き寄せられて、貫通孔882の中心点に対して磁石883が設けられた方向つまり斜め下方の位置で、かつ、テーパ面821と各ロッド外周面とに当接した位置に安定して位置される。
【0075】
次に、コントローラで圧電素子72を駆動し、駆動ロッド70がシリンジ台4側つまり第1方向に移動すると、図11に示すように、駆動ロッド70に当接するボール86は貫通孔882の中心点に対して円周方向882B側にずれた位置でテーパ面821およびロッド外周面に圧接し、ロック状態となる。従って、前記第1実施形態と同様に、一方向クラッチ部材8は、駆動ロッド70と共に第1方向に移動し、パイプ9を介してピストン3が第1方向に移動して液体が吐出される。
また、駆動ロッドが圧電素子72側つまり第2方向に移動すると、前記第1実施形態と同様に、ガイドロッド5に当接するボール86がロック状態となるため、一方向クラッチ部材8は移動せず、停止される。
従って、圧電素子72の伸縮動作に伴い、一方向クラッチ部材8は間欠的にシリンジ2側に移動し、ピストン3も同期して移動するため、シリンジ2内の液体が順次吐出される。
【0076】
液体吐出が完了し、シリンジ2を交換するために、突起部80A,100Aを操作してクラッチを解除すると、ボール86は、貫通孔882のセンター位置から偏心した位置にあるため、図12に示すように、ボール86が貫通孔882の斜め下方の内周面に当接する。このボール86とスペーサ89とで挟まれたボール保持器88は、ロッド5,70を中心に円周方向に回され、これに伴い貫通孔882に接触していたボール86も図12の矢印に示すように回転する。
このようにボール86が回転すると、ボール86はより上方つまりテーパ面821とロッド外周面との間隔が広い方向に移動し、一方向クラッチ部材8のロックが解除される。
【0077】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、以下の効果も奏することができる。
(8)ボール86に比べて直径の大きな貫通孔882を有するボール保持器88を用い、かつ、ボール保持器88に磁石883を設けて、クラッチが解除されている際のボール86を貫通孔882の中心からずれた位置に保持するようにしたので、クラッチをロックする際に、ボール86を貫通孔882の中心からずらして配置できる。このため、クラッチ押し部材100を操作してクラッチを解除した際に、ボール86を貫通孔882に当接させることで、ボール保持器88を円周方向に回転させることができ、これに伴いボール86も回転させることができる。従って、ボール86はより上方つまりテーパ面821とロッド外周面との間隔が広い方向に移動しやすくなり、かつ、テーパ面821やロッド外周面との接触部分の摩擦が静摩擦から動摩擦になるため、ボール86を移動してロックを解除するために必要な力を軽減できる。
【0078】
(9)圧電素子72の両端に球面部材78を設け、この球面部材78の球面状の外周面781を各素子ケース74、素子受け部材76に当接させているので、圧電素子72に偏加重が加わることを防止できる。従って、圧電素子72が偏加重によって破損することも防止できる。
【0079】
〔第3実施形態〕
次に本発明の第3実施形態について、図13〜16を参照して説明する。
本実施形態のシリンジポンプ1Bは、前記実施形態では、シリンジ2内にピストン3が収納されているのに対し、シリンジである外筒2Aの外部まで延長されたプランジャ3Aをピストンとして用いている点と、このプランジャ3Aを駆動ロッド70の軸線上ではなく、駆動ロッド70に平行に配置している点が相違するが、プランジャ3Aを移動させる基本的な構造は前記各実施形態と同様のものである。
【0080】
すなわち、外筒(シリンジ)2Aはシリンジ台4Aに着脱可能に取り付けられている。すなわち、シリンジ台4Aには略U字状の溝44が形成されている。また、シリンジ台4Aに2本の平行な軸46を介してスライド移動可能に設けられた保持板45にも同様の略U字状の溝48が形成されている。前記各軸46の端部間には操作レバー47が連結されている。
保持板45、軸46、操作レバー47は、図示しないバネにより、図14における下側(吐出口21側)に向かって付勢されており、この付勢力で外筒2Aのフランジ25を保持板45およびシリンジ台4Aで挟持するように構成されている。従って、バネの付勢力に抗して、操作レバー47を上方(圧電素子72側)に押し込み、シリンジ台4Aおよび保持板45の各溝44,48部分に外筒2Aを配置した状態で操作レバー47を元の位置に戻すと、外筒2Aのフランジ25が保持板45およびシリンジ台4Aで挟持される。すなわち、シリンジ台4Aは操作レバー47を操作することで、シリンジ台4Aに対して着脱可能に取り付けられている。
【0081】
シリンジ台4Aには、図15に示すように、2本のガイドロッド5の一端がそれぞれ固定されている。また、シリンジ台4Aには、駆動ロッド70の端部が挿入されている。
すなわち、シリンジ台4Aには段付きの凹部401が形成され、駆動ロッド70の端部に取り付けられたロッド受け材701が前記凹部401に挿入されている。凹部401の段部およびロッド受け材701間には、駆動ロッド70を圧電素子72側に付勢する付勢手段としての皿バネ73が介在されている。
【0082】
ガイドロッド5の他端は、ベース部材79に取り付けられている。また、ベース部材79には、ガイドロッド5間に平行に配置された駆動ロッド70が挿通され、かつ、素子ケース74が取り付けられている。
素子ケース74内には、前記実施形態と同様に圧電素子72が配置されている。圧電素子72は、樹脂シート77を介して素子ケース74および駆動ロッド70間に配置されている。駆動ロッド70の端部には前記圧電素子72の脱落を防止するリング状の素子受け部材76が取り付けられている。
【0083】
一方向クラッチ部材8Aは、図16に示すように、第1クラッチ台181と、第2クラッチ台182と、押さえ部材183とを備えている。第1クラッチ台181は、前記実施形態のクラッチ台80と同様に駆動ロッド70が挿通される貫通孔185が形成されている。この貫通孔185のシリンジ台4A側は大径の空間とされ、その内部には略円筒状のボールガイド部材186と、このボールガイド部材186をシリンジ台4A側に付勢するコイルバネ187とが挿入されている。
【0084】
また、第1クラッチ台181には、図14に示すように突起部181Aが形成されている。突起部181Aには、プランジャ3Aに当接される当接部としての当接ロッド189が固定されている。さらに、突起部181Aには、センサーロッド190が固定され、素子ケース74に固定されたポテンショメータ74Aに挿入されている。従って、駆動ロッド70に対する一方向クラッチ部材8Aの位置をポテンショメータ74Aで検出し、その位置に応じて圧電素子72の制御を行えるように構成されている。
【0085】
第2クラッチ台182には、前記駆動ロッド70が挿通される貫通孔191と、各ガイドロッド5が挿通される貫通孔192とがそれぞれ形成されている。
貫通孔191は、圧電素子72側が大径とされ、この大径部分には、前記第1実施形態と同じリング部材82と、前記第1クラッチ台181とが挿入されている。この第1クラッチ台181は、図示しないネジ等で、第2クラッチ台182に固定されている。
また、小径部分には、戻しリング87が軸方向に移動可能に挿入されている。そして、リング部材82のテーパ面821および駆動ロッド70間にはボール86が配置されている。また、前記ボールガイド部材186には、ボール86を駆動ロッド70の外周面に沿った円周方向に移動不能に保持する凹部が形成され、各ボール86は円周方向に所定間隔で配置されている。
【0086】
各貫通孔192には、第1クラッチ台181と同様に、ボールガイド部材186、コイルバネ187がそれぞれ挿入されている。
また、第2クラッチ台182の貫通孔192部分には押さえ部材183がそれぞれビス止めされている。この押さえ部材183においてガイドロッド5が挿通される貫通孔部分には、前記実施形態と同様に、リング部材82、ボール86、戻しリング87が配置されている。
【0087】
第2クラッチ台182のシリンジ台4A側には、クラッチ解除手段10Aを構成するクラッチ押し部材200が配置されている。クラッチ押し部材200には、凹部201が形成され、押さえ部材183が配置されている。また、クラッチ押し部材200には、各戻しリング87に当接可能なピン202が取り付けられている。
クラッチ押し部材200には、連結板210を介して移動規制板211が連結されている。移動規制板211は、第2クラッチ台182のベース部材79側に配置されている。このため、各コイルバネ187で付勢されるクラッチ押し部材200は、シリンジ台4A方向へは、移動規制板211が第2クラッチ台182に当接する位置まで移動可能とされている。
【0088】
移動規制板211は、突起部181Aと同様の位置まで延長されて、第2クラッチ台182やクラッチ押し部材200よりも突出されており、その部分には図13においてコ字状に形成された操作レバー212が設けられている。この操作レバー212を突起部181A側に近づけると、前記ピン202および戻しリング87を介してボール86が押され、前記実施形態と同様にクラッチが解除されるように構成されている。従って、本実施形態では、クラッチ押し部材200、ピン202、連結板210、移動規制板211、操作レバー212によってクラッチ解除手段10Aが構成されている。
【0089】
このような本実施形態においても、前記各実施形態と同様の動作で液体吐出が行われる。
まず、液体が充填された外筒2Aおよびプランジャ3Aを、操作レバー47を操作してシリンジ台4Aに取り付ける。次に、操作レバー212を操作してクラッチを解除し、一方向クラッチ部材8を移動して当接ロッド189をプランジャ3Aに当接させる。
以上により、吐出準備が完了したら、圧電素子72を駆動する。圧電素子72が伸長して駆動ロッド70がシリンジ台4A側に移動すると、第1クラッチ台181はボール86がリング部材82に圧接してロックすることで、駆動ロッド70とともにシリンジ台4A側に移動する。従って、第1クラッチ台181に連結された第2クラッチ台182もシリンジ台4A側に移動する。この際、ガイドロッド5に当接するボール86は、ボール86に対してガイドロッド5が相対的にベース部材79側に移動することになるため、テーパ面821とガイドロッド5との間隔が広い方に移動し、前記実施形態と同様に、ガイドロッド5に対するクラッチは解除された状態となる。
この第1クラッチ台181の移動に伴い、当接ロッド189を介してプランジャ3Aが押され、外筒2Aの吐出口21から液体が吐出される。
【0090】
一方、圧電素子72が縮小すると、駆動ロッド70は皿バネ73により圧電素子72側に移動する。このため、前記実施形態と同様に、駆動ロッド70に当接するボール86は、テーパ面821と駆動ロッド70との間隔が広い方に移動し、駆動ロッド70に対するクラッチは解除された状態となる。
また、ガイドロッド5に対して第2クラッチ台182がベース部材79側に移動しようとしても、ボール86に対してガイドロッド5が相対的にシリンジ台4A側に移動することになるため、ボール86はテーパ面821に圧接し、ガイドロッド5に対するクラッチがロックされた状態となるため、第1クラッチ台181および第2クラッチ台182は移動せず、プランジャ3Aの移動も停止される。
従って、圧電素子72の伸縮を繰り返すことで、第1クラッチ台181およびプランジャ3Aが間欠的にシリンジ台4A側に移動し、液体が吐出される。
【0091】
外筒2A内の液体吐出が完了したら、操作レバー212を操作してクラッチを解除し、第1クラッチ台181、第2クラッチ台182をベース部材79側に移動し、外筒2Aを交換すればよい。
【0092】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、以下の効果も奏することができる。
(10)ピストン3に比べて長さ寸法が長いプランジャ3Aを用いていても、外筒2Aやプランジャ3Aを駆動ロッド70に並列に配置したので、シリンジポンプ1B全体の長さ寸法を抑えることができる。
【0093】
なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲の変形は本発明に含まれるものである。
コントローラは、圧電素子72等の変位量を検出してフィードバック制御を行うものが好ましいが、例えば実験的に求めた数式モデルを利用して制御を行うなど、フィードバック制御を用いずに制御してもよい。
【0094】
第2実施形態の球面部材78を第1,3実施形態のシリンジポンプ1,1Bに用いてもよい。また、第2実施形態において、球面部材78の代わりに樹脂シート77を用いてもよい。但し、球面部材78を用いた方が、圧電素子72の破損を防止できる点で好ましい。
また、第3実施形態のシリンジポンプ1Bにおいて、第2実施形態のような、ボール保持器88を用いてもよい。このボール保持器88を利用すれば、ロック解除操作性を向上できる利点がある。
【0095】
前記第1実施形態では、ピストン本体31を押しパイプ9と別体に構成していたが、一体に構成してもよい。但し、前記第1実施形態のように、ピストン本体31と押しパイプ9とを分離可能に構成すれば、シリンジ2内にピストン本体31を挿入した後に、押しパイプ9を取り付ければよく、押しパイプ9の移動量を小さくできるので、シリンジポンプ1をコンパクトに構成できる。
また、前記各実施形態においては、ガイドロッド5に対して一方向クラッチ部材8,8Aの移動を規制するクラッチ機構(第2クラッチ手段)を、ボール86およびリング部材82を用いて構成していたが、例えば、摩擦板を用いて構成してもよい。すなわち、摩擦板による摩擦力を、前記圧電素子72の駆動力よりも小さく設定し、かつ、摩擦状態を解除してガイドロッド5に対するロック状態を解除する解除手段を設ければよい。このような構成においても、圧電素子72を駆動して駆動ロッド70を液体吐出方向に移動すれば、その駆動力が前記摩擦板の摩擦力よりも大きいため、クラッチ台80はガイドロッド5に対して移動する。一方、駆動ロッド70が戻るときには、前記摩擦力によりクラッチ台80がガイドロッド5にロックされ、クラッチ台80は移動しない。さらに、解除手段を作動させれば、クラッチ台80を手動操作で圧電素子72側に戻すことができる。従って、前記各実施形態と同様の動作を実現できる。
【0096】
また、本発明のシリンジポンプ1,1A,1Bは、電子部品の製造装置に組み込んで利用してもよい。すなわち、電子部品の製造装置は、前述のシリンジポンプ1,1A,1Bと、シリンジポンプ1,1A,1Bの駆動を制御するコントローラ(制御装置)とを備えて構成され、製造に必要な液体を前記シリンジポンプ1から吐出して電子部品を製造するものとすればよい。
このような電子部品の製造装置では、極微量の液体を精度良く移送できる前述のシリンジポンプ1,1A,1Bを用いているので、極微量の液体を高精度に吐出できる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、微量の液体を高精度でかつ高速に吐出でき、半導体製造や薬液分注などの分野で用いられるシリンジポンプに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1実施形態のシリンジポンプを示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図4】前記実施形態の駆動部および一方向クラッチ部材の構成を示す断面図である。
【図5】前記実施形態の一方向クラッチ部材の構成を示す断面図である。
【図6】前記実施形態のクラッチ解除手段を操作した状態を示す断面図である。
【図7】前記実施形態の液体吐出完了状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態のシリンジポンプの要部を示す断面図である。
【図9】第2実施形態の要部を示す断面図である。
【図10】第2実施形態のボール保持器を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態のボール保持器の外周面を展開した展開図である。
【図12】第2実施形態のボール保持器の外周面を展開した展開図である。
【図13】本発明の第3実施形態のシリンジポンプを示す正面図である。
【図14】第3実施形態の要部を示す断面図である。
【図15】第3実施形態の要部を示す断面図である。
【図16】第3実施形態の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B…シリンジポンプ、2…シリンジ、2A…外筒、3…ピストン、3A…プランジャ、4,4A…シリンジ台、5…ガイドロッド、7…駆動部、8,8A…一方向クラッチ部材、9…押しパイプ、10,10A…クラッチ解除手段、70…駆動ロッド、71…ロッド進退機構、72…圧電素子、73…皿バネ、74…素子ケース、76…素子受け部材、78…球面部材、80…クラッチ台、81…ピンガイド部材、82…リング部材、84…押しピン、85…バネ、86…ボール、87…戻しリング、88…ボール保持器、100,200…クラッチ押し部材、102…ピン、181…第1クラッチ台、182…第2クラッチ台、186…ボールガイド部材、189…当接ロッド、821…テーパ面、882…貫通孔、883…磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液が充填されるシリンジと、
このシリンジ内に進退可能に配置されてシリンジ内に充填される液を押し出して吐出可能なピストンと、
前記ピストンを移動させる移動装置とを備え、
前記移動装置は、
圧電素子と、
この圧電素子の伸縮駆動に伴い前記ピストンの移動軸方向に進退される駆動ロッドと、
この駆動ロッドに平行に配置されたガイドロッドと、
前記駆動ロッドおよびガイドロッドに跨って配置されて前記駆動ロッドが第1方向に移動した際には駆動ロッドに対してロックされて駆動ロッドと共に移動して前記ピストンを押して液を吐出させるとともに、駆動ロッドが第1方向と逆の第2方向に移動した際にはガイドロッドに対してロックされて駆動ロッドと共に移動せずに停止する一方向クラッチ部材と、
前記一方向クラッチ部材の駆動ロッドおよびガイドロッドに対するロック状態を解除して各ロッドに対して自由に移動可能とするクラッチ解除手段と、
を備えることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンジポンプにおいて、
前記一方向クラッチ部材は、前記駆動ロッドに対してロック状態およびロック解除状態に切り替えられる第1クラッチ手段と、前記ガイドロッドに対してロック状態およびロック解除状態に切り替えられる第2クラッチ手段とを備え、
前記第1クラッチ手段は、駆動ロッドが第1方向に移動する場合には駆動ロッドに対してロック状態となって駆動ロッドとともに移動され、かつ、駆動ロッドが第2方向に移動する場合には駆動ロッドに対してロック解除状態となり、
前記第2クラッチ手段は、一方向クラッチ部材が駆動ロッドとともに第1方向に移動する場合にはガイドロッドに対してロック解除状態となり、かつ、駆動ロッドが第2方向に移動する場合にはガイドロッドに対してロック状態となってガイドロッドに対する一方向クラッチ部材の移動を禁止することを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のシリンジポンプにおいて、
前記駆動ロッドおよびガイドロッドは断面円形の丸棒からなり、
前記第1クラッチ手段および第2クラッチ手段は、それぞれ、
駆動ロッドおよびガイドロッドに比べて直径が大きくされ、かつ駆動ロッドおよびガイドロッドが挿通される貫通孔を有するガイドリングと、
前記ガイドリングの貫通孔の内周面と駆動ロッドおよびガイドロッドの外周面との間に配置され、かつ、駆動ロッドおよびガイドロッドの外周面の周方向に沿って間隔をあけて複数配置されたボールと、
前記ボールを前記第1方向側に向かって付勢する付勢手段と、を備えて構成され、
前記ガイドリングの貫通孔の内周面は、前記第1方向に向かうにしたがって直径が小さくなるテーパ面を備え、
前記ボールの直径は、駆動ロッドおよびガイドロッドとテーパ面との間の寸法のうち、最小寸法よりも大きく、最大寸法よりも小さく設定されていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項4】
請求項2に記載のシリンジポンプにおいて、
前記駆動ロッドおよびガイドロッドは断面円形の丸棒からなり、
前記第1クラッチ手段および第2クラッチ手段は、それぞれ、
駆動ロッドおよびガイドロッドに比べて直径が大きくされ、かつ貫通孔を有するガイドリングと、
前記ガイドリングの貫通孔内に配置され、かつ中心軸部分に前記駆動ロッドおよびガイドロッドが挿通されたボール保持器と、
このボール保持器にその周方向に沿って間隔をあけて複数形成された貫通孔内にそれぞれ1つずつ配置された複数のボールと、を備えて構成され、
前記ガイドリングの貫通孔の内周面は、前記第1方向に向かうにしたがって直径が小さくなるテーパ面を備え、
前記ボールの直径は、駆動ロッドおよびガイドロッドとテーパ面との間の寸法のうち、最小寸法よりも大きく、最大寸法よりも小さく設定され、
前記ボール保持器の各貫通孔は、ボール保持器の半径方向に貫通され、貫通孔内に配置されたボールが前記各ロッドおよびガイドリングの内周面に当接可能とされ、かつ、貫通孔の直径は前記ボールに比べて大きく形成され、各貫通孔の中心点に対して前記第1方向側でかつ貫通孔の中心点を通るボール保持器の軸方向に対して円周方向にオフセットされた斜め位置には前記ボールを引き寄せ可能な磁石が貫通孔毎に設けられ、
前記ボール保持器は各ロッドを回転中心として回動可能に設けられていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のシリンジポンプにおいて、
前記クラッチ解除手段は、外部操作により前記ボールを第2方向に移動可能なボール移動部材を備えて構成されていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシリンジポンプにおいて、
前記一方向クラッチ部材は、内部に駆動ロッドが挿通され、かつ、一端が前記ピストンに固定された駆動パイプを有し、
前記ピストンおよびシリンジは、駆動ロッドおよび駆動パイプの軸線上に設けられていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシリンジポンプにおいて、
前記ピストンおよびシリンジは、駆動ロッドと平行に設けられ、
前記一方向クラッチ部材は、前記ピストンの端部に当接可能な当接部を有することを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のシリンジポンプにおいて、
前記圧電素子は、その伸縮方向の一端面側は球面部材を介して素子ケースに当接され、他端面側は球面部材を介して駆動ロッドの端部に取り付けられた素子受け部材に当接され、
前記各球面部材は圧電素子との接触面は圧電素子の端面が密着可能とされ、素子ケースおよび素子受け部材との接触面は球面とされ、
前記素子受け部材は、付勢手段によって前記第2方向側に付勢されて前記圧電素子の球面部材に密着され、
前記圧電素子が伸びると前記付勢手段の付勢力に抗して素子受け部材および駆動ロッドが第1方向に移動し、圧電素子が縮むと前記付勢手段の付勢力によって素子受け部材および駆動ロッドが第2方向に移動することを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のシリンジポンプにおいて、
前記圧電素子の変位量または駆動ロッドの変位量を検出するセンサと、このセンサの出力に応じて前記圧電素子に加える電圧値を制御する制御手段とを備えることを特徴とするシリンジポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2006−281178(P2006−281178A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108550(P2005−108550)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000111373)ノイベルク有限会社 (10)
【Fターム(参考)】