説明

シリンダ型アクチュエータ

【課題】 シリンダケースの内部両側面に、可動体の両側面をガイドするガイド部材を設けて直動方向以外の許容外力を大きくすることができ、かつ可動部分を小さくして小型、軽量化を図ることができるシリンダ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】 シリンダケース内4に、駆動機構によって一定の作動領域内で往復動操作される可動体2を備えたシリンダ型アクチュエータにおいて、
前記シリンダケース4の互いに対向する内壁面に、前記可動体2の両側面をガイドするガイド部材19を備えた構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダケース内に、駆動機構によって一定の作動領域内で往復動操作される可動体を備えたシリンダ型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業用ロボットとして利用されるシリンダ型アクチュエータは、駆動源にサーボモータ等を用いるとともに、この駆動源に連結されたボールネジが作動領域に設けられている。このボールネジにはボールナットが回転を規制された状態で、螺合しており、このボールナットに、スライダが取付けられている。スライダには、作動領域内で作動させる各種の機器が搭載される。
【0003】
この種のシリンダ型アクチュエータでは、サーボモータを適宜の方向に回転させることによって、カップリングを介して連結されたボールネジ軸を同方向に回転させ、ボールネジ軸の回転に伴って移動するボールネジナットを介して可動ロッドを直線動作させ、可動ロッドに連結されたスライダを適宜の方向に移動させることができる(特許文献1参照)。
スライダが往復動のストローク端の位置まで移動した後には逆方向のストローク端の位置に向けてスライダを駆動する。
【0004】
一方、スライダの移動をこのように制御する場合は、エンコーダなどによってモータの回転数を検出して、回転数からスライダの位置を検出するか、ストローク端にセンサを設けて往復動ストローク位置を検出する必要がある。
このようなストローク端の位置を検出してこの位置を動作基準点とし、スライダを制御するもので、この動作基準点を決定することを原点出しという。この原点出しには、通常位置検出センサを用いて制御部に原点位置を認識させている。
しかしながら、位置検出センサを用いた場合、配線、設置スペースおよび制御対象が増えるという問題がある。
そこで、位置検出センサを用いない方法として、モータのフィードバック制御を用いた原点出し方法がある。この種のアクチュエータにおける原点出し方法としては、モータのフィードバック制御を用いて、作動領域端のストッパにスライダを押し付けて原点を認識させる方法が考えられる(特許文献2参照)。
そして、このようなストッパとして可動部と可動端の間に緩衝用としてゴム材等の弾性体を用いている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−280154号公報
【特許文献2】特開2003−309990号公報
【特許文献3】特開平7−151205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたこのような従来のアクチュエータの構造では、一般に、支持体を支持するための送りねじが配設されるシリンダケースとなる孔部とは別にガイド部材となる2本のロッドを配設する孔部が設けられている。このため、アクチュエータが大きくなり、取付面積も大きくなる。また、支持体と共に2本のロッドも動くため、可動部分が大型化し、それだけ駆動力を必要とする。さらに、送りねじの一端が自由端になるため、可動時に共振する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、シリンダケースの内部両側面に、可動体の両側面をガイドするガイド部材を設けて直動方向以外の許容外力を大きくすることができ、かつ可動部分を小さくして小型、軽量化を図ることができるシリンダ型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、シリンダケース内に、駆動機構によって一定の作動領域内で往復動操作される可動体を備えたシリンダ型アクチュエータにおいて、前記シリンダケースの互いに対向する内壁面に、前記可動体の両側面をガイドするガイド部材を備えたことにある。
また、本発明は、前記可動体の両側面に、前記ガイド部材に係合する係合部を前記可動体の移動方向に沿って形成したことにある。
さらに、本発明は、前記シリンダケース内に配設されたリニアガイドレールに沿ってリニアガイドブロックが摺動することによって前記可動体が往復動操作されることにある。
さらに、本発明は、前記シリンダケース内壁面に、前記ガイド部材として、前記可動体の係合部をガイドするガイドローラを設けたことにある。
またさらに、本発明は、前記シリンダケース内壁面に、前記ガイドローラと共に、前記可動体の少なくとも両側面を摺動可能に保持する摺動部材を設けたことにある。
また、本発明は、前記可動体を構成する可動ロッドに中空部を設け、該中空部の内壁面をガイドする軸受けを、前記可動体を往復動操作する可動軸に装着したことにある。
さらに、本発明は、前記可動体を、前記駆動機構によって回転駆動されるボールネジ軸に螺合したボールネジナットと、該ボールネジナットを保持する角筒状の可動ロッドで構成し、該可動ロッドの先端部を前記シリンダケースの先端開口部から伸縮可能に保持する前記ガイド部材をシリンダケース開口端部内壁面に設けたことにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1によれば、シリンダケース内に可動体の両側面をガイドするガイド部材を設けたので、直動方向以外の許容外力を大きくして、振動を防ぎ、かつ可動部分を小さくして小型、軽量化を図ることができる。
請求項2によれば、可動体の両側面が係合部を介してガイド部材に支持されるので、シリンダケースの内壁面によって可動体の荷重を負担することができる。
請求項3によれば、リニアガイドレールおよびリニアガイドブロックがシリンダケース内に収まるため、アクチュエータを小型化できる。
請求項4によれば、可動体の両側面が係合部を介してガイドローラに保持されるので、可動体の可動がスムーズである。
請求項5によれば、可動体がガイドローラと共に、摺動部材によって摺動可能に保持されるので、可動体の移動をスムーズに行なうことができ、かつガイドローラの負担を軽減することができる。
請求項6によれば、可動ロッドの振動を防ぎ、高速での可動ロッドの駆動を行なうことができる。
請求項7によれば、可動ロッドの伸縮動作をスムーズに行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図示の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1ないし図5は単軸ロボットアクチュエータを示し、図6ないし図8はフランジ部分を外して示す図である。
【0010】
図1ないし図5は、単軸ロボットアクチュエータを示したもので、このアクチュエータ1は往復動する可動体2を内蔵した機構部1Aと、サーボモータあるいはステッピングモータ等の駆動用モータ3を内蔵した駆動部1Bとで構成されている。
【0011】
上記機構部1Aは、横断面角筒状に形成された長尺のシリンダケース4の中空部4aに、長手方向に沿って配設されたボールネジ軸5と、このボールネジ軸5の回転に伴って往復動操作される前記可動体2が収納されている。
可動体2は、中空部6aを有する横断面角型の可動ロッド6の端面に四角形のプレート7を図示しないねじ等によって装着したもので、内周面に上記ボールネジ軸5の先端部を支持する軸受け8が内蔵されている。
ボールネジ軸5は、基端5aを、カップリング9を介して前記駆動用モータ3の出力軸3aに連結されており、モータハウジング10とシリンダケース4を連結したブラケット11の内面ボス部に装着された軸受け12を介して基端基部5bが支持されている。ボールネジ軸5の先端5cには、前記軸受け8が装着され、かつ止め輪13を介して抜け止めが図られている。
【0012】
前記可動体2は、可動ロッド6の中空部6aに、前記ボールネジ軸5に螺合するボールネジナット14を挿入したもので、このボールネジナット14は、プレート7を可動ロッド6の後端面に締結することで、可動ロッド6の中空部6a内に保持されている。
前記可動ロッド6の下面中央部には、長手方向に沿って凹溝6bが形成されており、この凹溝6b内にリニアガイドブロック15が装着されている。このリニアガイドブロック15は、前記シリンダケース4の内部底面に、シリンダケース4の長手方向に沿って配設されたリニアガイドレール16に組みつけられている。このリニアガイドブロック15は、リニアガイドレール16の長手方向に沿って摺動自在に組み付けられ、ボールネジナット14の往復動操作に伴って前記可動ロッド6と共に摺動操作されるものである。
【0013】
前記可動ロッド6の先端部6cは、前記シリンダケース4のケース本体4bの先端に装着されたフランジ17を貫通してシリンダケース4の外部に伸縮可能に設けられており、可動ロッド6の先端に装着されたプレート18を介してロボットとしての作業を行なうものである。
【0014】
前記フランジ17の構造を図6ないし図8により説明すると、フランジ17の中央部には、前記可動体2の可動ロッド6が挿通する開口部17aが形成され、かつ開口部17aの両側内壁面17bには、前記可動ロッド6の両側面を保持する回転型軸受けとなる一対のガイドローラ19が設けられている。このガイドローラ19は、ローラ20を固定用ボルト21で軸支したもので、前記可動ロッド6の両側側面に、長手方向に沿って形成された係合部としてのガイド溝22に係合するものである。このフランジ17の内壁面17bには、摺動部材23が設けられており、この摺動部材23は、両側から天井面にかけて上部側摺動部材23Aが、両側から下面側にかけて下部側摺動部材23Bが設けられている。前記上部側摺動部材23Aおよび下部側摺動部材23Bは、樹脂系材料等の軽量で、かつ滑らかな素材を用いて一体成形されており、シリンダケース4の幅方向あるいは上下方向の動きを阻止している。前記摺動部材23は、上部側摺動部材23Aおよび下部側摺動部材23Bを一体物として成形しても良く、あるいは別体物として成形しても良い。
このフランジ17の下部側内壁面には、前記シリンダケース4の内部側に向けて弾性体を用いたストッパ24が設けられている。このストッパ24は、前記可動ロッド6の下面に設けられた前記リニアガイドブロック15に対向して配置されており、前記リニアガイドブロック15の前面に配置された係合部材25に係合してリニアガイドブロック15の動きを止め、前記可動体2を停止させるものである。この係合部材25にはアルミ等の滑らかな素材を用いてストッパ24の耐久性を向上している。
【0015】
前記プレート7の素材にはアルミ素材を用いており、このプレート7に対向してゴム等の弾性体を用いたストッパ26がブラケット11の前面に装着されている。
前記ストッパ24,26はそれぞれ、係合部材25、プレート7に当接して可動体2の動きを停止させるもので、可動体2の往復動操作を一定の作動領域内に規制するものである。
前記駆動部1Bを構成するモータハウジング10の後端には、モータ3に電力および駆動信号を送るケーブルコネクタ(図示せず)を収納する端末カバー27が、着脱可能に装着されている。
【0016】
次に、単軸ロボットアクチュエータの作動に先立ってアクチュエータの原点出し方法の一例を説明する。
原点出しは、可動体2を通常速度で駆動し、可動体2をブラケット11に向けて移動し、可動体2のプレート7をストッパ26に当接させてストッパ26を変形させる。ストッパ26は座繰り穴(図示せず)内に収納され、プレート7は剛体部であるブラケット11に当接して可動体2を停止させる。こうして、原点出しが行なわれると、この位置を基準にして制御部では、可動体2の制御を開始する。
【0017】
そして、原点出しされたデータをもとに制御部では、可動体2の往復動制御を開始する。通常の走行に際しては、駆動コントローラからケーブルを介して駆動信号が送られると、ケーブルコネクタを通してモータ3に駆動信号が送られ、モータ3を回転駆動する。モータ3の回転は、カップリング9を介してボールネジ軸5に伝達され、ボールネジ軸5の回転にともなって、ボールネジナット14がボールネジ軸5に沿って移動する。そして、ボールネジナット14と一体に移動する可動ロッド6が、上記リニアガイドレール16に沿って摺動可能に配設されたリニアガイドブロック15とともに移動を開始する。こうして、可動体2とともに可動ロッド6が移動し、可動ロッド6に装着されたプレート18をシリンダケース4の先端から伸縮動作させる。
こうして、可動体2はボールネジ軸5によって、往復動され、プレート18に取付けられた被操作体を往復制御する。
原点出しが行なわれると、この位置を基準にして制御部では、可動体2の制御を開始するので、原点位置の基準の再現性が確保され、安定した位置決め基準が保たれることから、確実な往復動制御を行なうことができる。
【0018】
そして、アクチュエータ1の駆動用モータ3を駆動して、可動体2を往復動作させると、可動体2は、リニアガイドブロック15が、リニアガイドレール16に沿って移動し、かつ可動ロッド6のガイド溝22がガイドローラ19にガイドされながら移動する。可動ロッド6は周囲を摺動部材23によって上下方向および幅方向がガイドされているので、可動ロッド6の上下方向および幅方向に対する振動が抑制される。シリンダケース4は、フランジ17によって、シリンダケース4開口部が塞がれているので、シリンダケース4開口部から塵埃等が侵入する虞がない。
【0019】
このように、上記実施の形態によれば、可動体2は、リニアガイドブロック15が、リニアガイドレール16に沿って移動し、かつ可動ロッド6のガイド溝22がガイドローラ19にガイドされながら移動するので、直動方向以外の外力に対して、充分な保持力を得ることができるとともに、従来のガイド用ロッドなどを省略できるので、可動部分を小さくして小型、軽量化を図ることができる。また、可動ロッド6は周囲を摺動部材23によって上下方向および幅方向がガイドされているので、可動ロッド6の上下方向および幅方向に対する振動が抑制され、高速での運転が可能となる。ボールネジ軸5は軸受け8によって可動ロッド6に支持されているので、ボールネジ軸5の振動を抑制して高速での可動ロッド6の運転が可能となる。
【0020】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、本実施の形態では、可動体2はボールネジ軸5によって、作動したが、すべりねじ駆動でもよく、また、タイミングベルトおよびプーリを使用したものでも可能である(特開2001−198874)など、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のシリンダ型アクチュエータの実施の形態によるロボットアクチュエータを示し、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図2】本発明の実施の形態によるロボットアクチュエータを示す左側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】図1のC−C線断面図である。
【図6】図2のフランジ部分をアクチュエータから外してシリンダケース内部側から示す図である。
【図7】図6のフランジ部分を示す斜視図である。
【図8】図2のフランジ部分をアクチュエータから外して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 アクチュエータ
1A 機構部
1B 駆動部
2 可動体
3 駆動用モータ
4 シリンダケース
5 ボールネジ軸
6 可動ロッド
6a 中空部
7 プレート
8、12 軸受け
9 カップリング
10 モータハウジング
11 ブラケット
13 止め輪
14 ボールネジナット
15 リニアガイドブロック
16 リニアガイドレール
17 フランジ
18 プレート
19 ガイドローラ
20 ローラ
21 固定用ボルト
22 ガイド溝
23 摺動部材
24、26 ストッパ
25 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダケース内に、駆動機構によって一定の作動領域内で往復動操作される可動体を備えたシリンダ型アクチュエータにおいて、
前記シリンダケースの互いに対向する内壁面に、前記可動体の両側面をガイドするガイド部材を備えたことを特徴とするシリンダ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動体の両側面に、前記ガイド部材に係合する係合部を前記可動体の移動方向に沿って形成したことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記シリンダケース内に配設されたリニアガイドレールに沿ってリニアガイドブロックが摺動することによって前記可動体が往復動操作されることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記シリンダケース内壁面に、前記ガイド部材として、前記可動体の係合部をガイドするガイドローラを設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシリンダ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記シリンダケース内壁面に、前記ガイドローラと共に、前記可動体の少なくとも両側面を摺動可能に保持する摺動部材を設けたことを特徴とする請求項4に記載のシリンダ型アクチュエータ。
【請求項6】
前記可動体を構成する可動ロッドに中空部を設け、該中空部の内壁面をガイドする軸受けを、前記可動体を往復動操作する可動軸に装着したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシリンダ型アクチュエータ。
【請求項7】
前記可動体を、前記駆動機構によって回転駆動されるボールネジ軸に螺合したボールネジナットと、該ボールネジナットを保持する角筒状の可動ロッドで構成し、該可動ロッドの先端部を前記シリンダケースの先端開口部から伸縮可能に保持する前記ガイド部材をシリンダケース開口端部内壁面に設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシリンダ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−171758(P2009−171758A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7830(P2008−7830)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】