説明

シングルレバー水栓

【課題】レバーハンドルの操作に対する駆動レバーの強度を高強度となし得、駆動レバーの破断を有効に防止することのできるシングルレバー水栓を提供する。
【解決手段】シングルレバー水栓において、レバーハンドルの全開及び全閉操作時の駆動レバー84の位置を規定する開側及び閉側のストッパ部92K,92Hを、支持ピン86に対してレバーハンドルとは反対側に設けるとともに、回転体72のレバーハンドル側の端部且つレバーハンドルの全開及び全閉時に駆動レバー84に対向する部分を、駆動レバー84を内部に挿入可能な大きさのU字状の切欠部98K,98Hとなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシングルレバー水栓に関し、詳しくはレバーハンドルの操作を可動弁体に伝えて駆動する駆動レバーのストッパ機構に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一のレバーハンドルの操作によって吐止水と吐水量調節及び吐水の温度調節を行うシングルレバー水栓が広く使用されている。
このシングルレバー水栓は、(イ)固定弁体と、(ロ)固定弁体上を摺動する可動弁体と、(ハ)操作部としてのレバーハンドルと、(ニ)軸方向の両端間の中間部で支持ピンを介して支持体に対し支持ピンの軸線周りに回転可能に且つその軸線と直交方向の支持体の軸線周りに回転可能に連結され、軸方向の一端側がレバーハンドルに、他端側が可動弁体の側にそれぞれ結合され、レバーハンドルの操作により可動弁体を駆動する駆動レバーと、を含んで構成される。
【0003】
図6は、従来のシングルレバー水栓の一例の要部(駆動レバーとその周辺部)を示している。
図において200は駆動レバーで、軸方向の両端間の中間部で図中紙面と直角方向に配向された支持ピン202を介して円筒状をなす回転体(支持体)204に連結されている。
【0004】
この駆動レバー200は、図中下端部が図示を省略する固定弁体上を摺動する可動弁体206の側に一体移動状態に結合されるとともに、図中上端部が図示を省略するレバーハンドルに一体移動状態に結合され、レバーハンドルの操作を可動弁体206に伝えてこれを駆動する。
【0005】
詳しくは、レバーハンドルが図中上下方向に回動操作されると、駆動レバー200が支持ピン202の軸線周りに回転運動して、可動弁体206を図中左右方向に移動させ、可動弁体206を吐止水及び吐水量調節動作させる。
【0006】
一方レバーハンドルが紙面と直交方向に回動操作されると、駆動レバー200が回転体204の図中上下方向の軸線周りに回転体204とともに回転運動し、可動弁体206を対応する方向に移動させる。即ち可動弁体206に吐水の温度調節動作を行わせる。
【0007】
尚、208は可動弁体206及び固定弁体を内部に収容する弁ケースで、210は弁ケース208に一体に備えられ、回転体204の外周面に外嵌状態に相対回転可能に嵌合する円筒状の立上り壁である。
この立上り壁210は、駆動レバー200からの支持ピン202の抜けを防止する働きをなしている。
尚、駆動レバー200はポリアミド等の樹脂にて構成されている。また回転体204,弁ケース208等も樹脂にて構成されている。
【0008】
この例では、駆動レバー200が支持ピン202の軸線周りに(A)中P方向に回転することで弁開度が小さくなり、吐水流量が減少せしめられる。
そして駆動レバー200がその支持体としての働きを有する回転体204の図中上端部に当接することによって、レバーハンドルの全閉操作位置及び駆動レバー200の全閉操作時の位置が規定される。
【0009】
詳しくは、回転体204の上端部の当接部212Hと、駆動レバー200側の被当接部214Hとから成るストッパ部216Hのストッパ作用によって、駆動レバー200の全閉操作時の位置が規定される。
一方駆動レバー200が図6(B)中P方向に回転すると、弁部の弁開度が大となり、吐水流量が増大せしめられる。
【0010】
駆動レバー200は、最終的に回転体204の上端部に当ることによって、そこで回転停止せしめられ、ここにおいて弁部が全開状態となる。
このとき、回転体204の上端部の当接部212Kと、駆動レバー200の被当接部214Kとが当接した状態となり、それら当接部212K及び被当接部214Kから成るストッパ部216Kのストッパ作用により、駆動レバー200の全開操作時の位置が規定される。
【0011】
ところで、シングルレバー水栓においてレバーハンドルを急激に全開又は全閉操作したとき、駆動レバー200に対して大きな操作荷重がかかり、これによって樹脂製の駆動レバー200が破断してしまうことがある。
【0012】
例えばレバーハンドルが急激に全閉操作されたとき、レバーハンドルから駆動レバー200に加わる力によって、駆動レバー200が図6(A)中破線で示す個所で破断を生じてしまうことがある。図中Xはその破断個所を表している。
【0013】
同様にレバーハンドルを急激に全開操作したとき、レバーハンドルから駆動レバー200に加わる力によって、駆動レバー200が図6(B)中破線で示す個所で破断を生じてしまうことがある。図中Xはその破断個所を表している。
【0014】
このような破断が生じるのは次のような理由によるものと考えられる。
レバーハンドルを強く閉操作したとき、駆動レバー200はストッパ部216Hの位置から図中上端までの長さ(自由長)Lに亘って撓みながら操作荷重を吸収する。
このとき、駆動レバー200の強度的な弱点部位Qに大きな集中歪,集中応力が発生し、それにより駆動レバー200の弱点部位Qに先ず亀裂が発生し、更にその亀裂が図中破線に沿って進行し、最終的に駆動レバー200が破断に到るものと考えられる。
【0015】
また同様にレバーハンドルを強く開操作したとき、駆動レバー200はストッパ部216Kから上端までの長さ(自由長)Lに亘って撓みながら操作荷重を吸収するが、このとき強度的な弱点部位Qに大きな集中歪,集中応力が発生して、そこから亀裂発生し、更にその亀裂が進行して最終的に破線に沿って破断するものと考えられる。
【0016】
尚、本発明に対する先行技術として下記特許文献1,特許文献2に開示されたものがある。
これら特許文献には、駆動レバー及びその周辺部の構造が開示されているが、これら特許文献1,特許文献2には何れも本発明の解決課題は示されておらず、また課題解決のための本発明の解決手段も開示されておらず、本発明とは別異のものである。
【0017】
【特許文献1】特開平9−264437号公報
【特許文献2】実開平2−71177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は以上のような事情を背景とし、レバーハンドルの操作に対する駆動レバーの強度を高強度となし得、駆動レバーの破断を有効に防止することのできるシングルレバー水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
而して請求項1のものは、(イ)固定弁体と、(ロ)該固定弁体上を摺動する可動弁体と、(ハ)操作部としてのレバーハンドルと、(ニ)軸方向の両端間の中間部で支持ピンを介して支持体に対し該支持ピンの軸線周りに回転可能に且つ該軸線と直交方向の該支持体の軸線周りに回転可能に連結され、軸方向の一端側が前記レバーハンドルに、他端側が前記可動弁体の側にそれぞれ結合され、該レバーハンドルの操作により該可動弁体を駆動する駆動レバーと、を有し、該レバーハンドルの操作で吐止水と吐水量調節及び吐水の温度調節を行うシングルレバー水栓において、前記レバーハンドルの全開又は/及び全閉操作時の位置を規定する、前記支持体側の当接部及び前記駆動レバー側の被当接部からなる開側又は/及び閉側のストッパ部を、前記支持ピンに対して前記レバーハンドルとは反対側に設けるとともに、前記支持体の前記レバーハンドル側の端部且つ該レバーハンドルの全開又は/及び全閉操作時に該駆動レバーに対して対向する部分を、該駆動レバーを内部に挿入可能な大きさに切り欠いた形状となしたことを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0020】
以上のように本発明は、レバーハンドルの全開又は/及び全閉操作時の位置を規定する開側又は/及び閉側のストッパ部を、支持ピンに対しレバーハンドルとは反対側に設けるとともに、支持体のレバーハンドル側の端部且つレバーハンドルの全開又は/及び全閉操作時に駆動レバーに対向する部分を、駆動レバーを内部に挿入可能な大きさに切り欠いた形状となしたものである。
【0021】
かかる本発明によれば、駆動レバーの回転規制をなすストッパ部が支持ピンに対しレバーハンドルとは反対側に設けてあるために、レバーハンドルから駆動レバーに加わる荷重によって駆動レバーが撓むとき、駆動レバーの撓み長(可撓長、自由長)が従来よりも長くなり、レバーハンドルから駆動レバーに加わる操作荷重をより広い長さ範囲に亘って分散させることができる。
その結果として、特定個所に発生する歪や応力を効果的に低減でき、駆動レバーの破断荷重を増大させることができる。
即ちレバーハンドルからの通常の操作荷重によって駆動レバーが破断しないようにすることができる。
【0022】
これに加えて、本発明ではレバーハンドルの全開又は/及び全閉操作時に支持体の駆動レバーに対向する部分を切り欠いた形状となし、その切欠部に駆動レバーを挿入可能となしているため、駆動レバーを、長い撓み長を維持しながらその一部を切欠部に挿入させることで、特定部位に特に大きな集中歪,集中応力を発生させることなくより広い角度範囲に亘って撓み変形させることが可能となり、このことにより駆動レバーの破断をより一層効果的に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はシングルレバー水栓で、12は水栓本体である。
水栓本体12は、取付穴14においてカウンタ16に取り付けられている。
水栓本体12は、その内部に後述の弁ユニット(弁カートリッジ)30を収容しており、また上部にはレバーハンドル18が設けられていて、そのレバーハンドル18が弁ユニット30に作動的に連結されている。
【0024】
20は、水栓本体12に水,湯を流入させるための流入管で、ここではその流入管20が可撓管にて構成されている。
22は、水栓本体12から水,湯若しくは混合水(以下単に混合水とする)を流出させる流出管で、ここではこの流出管22が銅管から成っている。
この流出管22の下端部には可撓性のホースを介して図示を省略する吐水部が接続されている。
【0025】
図1において、24は水栓本体12の本体ボデーをなすハウジングで、円筒状をなす樹脂製の周壁26と、これとは別体をなす金属製の底部28とを有しており、その内部に弁ユニット30を収容状態で保持している。
樹脂製の周壁26からは、同じく樹脂製の挿通部32が一体に図中下向きに延び出している。
【0026】
挿通部32は、取付穴14を下向きに挿通し、そしてその外周面に形成された雄ねじに、カウンタ16の裏側で締結ナット34がねじ込まれ、上記周壁26の下面をカウンタ16に着座させる状態に、ハウジング24を三角パッキン36を介してカウンタ16に締結固定している。
【0027】
上記底部28には水,湯の流入通路38及び混合水の流出通路40が形成されており、そしてその流入通路38に内部を連通させる状態で上記の流入管20が底部28に対してねじ結合され、また流出通路40に内部を連通させる状態で上記の流出管22が溶接にて接合されている。
42は円筒状をなす化粧カバーで、この化粧カバー42によってハウジング24が後述の固定ナット44とともに外側から覆われている。
【0028】
図3に、弁ユニット30の構成が組付状態で周辺部とともに示してある。
同図に示しているように弁ユニット30は、セラミックディスクから成る固定弁体46と、固定弁体46上を摺動する、セラミックディスクから成る摺動体48を備えた可動弁体50とを有しており、それらが弁ケース52内に収容されている。
【0029】
弁ケース52は、図中上側のケース本体54と、下側の底蓋56との2分割構造とされており、それらが上下に組み合され弁ケース52を構成している。
詳しくは、ケース本体54には係止孔58が設けられ、また一方底蓋56には対応する位置に係止爪60が設けられ、それら係止孔58と係止爪60との係合作用によって、ケース本体54と底蓋56とが互いに組み付けられている。
【0030】
固定弁体46には水,湯の流入口62が設けられており、また底蓋56には、これら流入口62及び上記の底部28の流入通路38に連通する状態で水,湯の流入通路63が設けられている。
固定弁体46にはまた、別の位置に混合水の流出口64が設けられ、更に底蓋56には、この流出口64及び底部28の流出通路40にそれぞれ連通する状態で混合水の流出通路65が設けられている。
【0031】
一方可動弁体50には、固定弁体46の流入口62から流入した水と湯とを混合する混合室66が形成されている。
混合室66内の混合水は、固定弁体46の流出口64及び底蓋56の流出通路65を通じて、底部28の流出通路40へと流出し、流出管22を通じて吐水部へと送られる。
尚、固定弁体46と底蓋56との間はシール部材68にて水密にシールされ、また底蓋56と底部28との間はシール部材70にて水密にシールされている。
【0032】
図3は、弁ユニット30を上記の固定ナット44のねじ込み前の状態で表している。この状態で弁ユニット30が図1のハウジング24内に挿入された上で固定ナット44がねじ込まれ、ケース本体54に対して図中下向きの押込力が加えられる。このときケース本体54が底蓋56に対し相対的に下向きに移動し、そして図1に示す最終の組付状態で係止爪60が係止孔58の上下の中間位置に位置した状態となる。
【0033】
即ちこの実施形態では、底蓋56に対して上側のケース本体54が相対的に図中下向きに移動可能とされている。
而して固定ナット44にてケース本体54が下向きに押し付けられた状態の下でシール部材70が弾性圧縮し、底蓋56と底部28との間を水密にシールする。
【0034】
更に固定弁体46が底蓋56に対して図中下向きに相対移動し、シール部材68を弾性圧縮させる。シール部材68はその弾性圧縮力に基づいて底蓋56と固定弁体46との間を水密にシールする。
またシール部材70,68は弾性圧縮による反発力を図中上向きに作用させ、固定弁体46を可動弁体50に押圧して、その押圧作用により固定弁体46と可動弁体50における摺動体48との接触面を密着状態として、その密着面を水密シールする。
【0035】
図3において、72は後述する駆動レバーの支持体としての働きを有する回転体で弁ケース52内部に回転可能に組み込まれている。
回転体72は円筒状をなしており、その下端に径方向外方に環状に張り出したフランジ部74を有している。
一方弁ケース52、詳しくはケース本体54は、回転体72の外周面に相対回転可能に外嵌状態に嵌合する円筒状の立上り壁76を上部に有しており、またこの立上り壁76に続く下側部分が径方向外方に環状に張り出した肩部78とされている。
【0036】
ここで立上り壁76は、後述の支持ピン86が回転体72から抜けるのを防止する抜け防止壁としての働きをなしている。
また肩部78は、その下面が回転体72におけるフランジ部74の上面に回転可能に接触せしめられている。
【0037】
このケース本体54を下向きに押圧する上記の固定ナット44は、図1に示しているようにハウジング24における周壁26に嵌合する部分の内周面に雌ねじを有し、その雌ねじにおいて周壁26の上端部外周面の雄ねじにねじ込まれ、そのねじ込みによる押込力をケース本体54に対して、即ち弁ユニット52に対して下向きに及ぼしている。
【0038】
この固定ナット44には、ケース本体54における上記の肩部78を下向きに押圧する押圧部80が周方向に円環状に設けられている。更にこの押圧部80に続いて、固定ナット44における上記の雌ねじ部よりも小径に形成された工具係合部82を有している。ここで工具係合部82は平面形状が6角形状をなしている。
【0039】
図3において、84は駆動レバーで上下中間部が、即ち軸方向の両端間の中間部が、紙面と直交方向に配向された金属製の支持ピン86を介して回転体72に連結されている。
駆動レバー84は、支持ピン86の軸線周りに回転可能であり、またその軸線と直交方向である上下方向の、回転体72の軸線周りに回転体72とともに回転可能である。
【0040】
駆動レバー84は、その下端部が可動弁体50の側に一体移動状態に結合されている。
詳しくは、駆動レバー84の下端部には係合凸部88が設けられ、この係合凸部88が、可動弁体50の側の係合凹部90に係合せしめられ、それらの係合作用にて可動弁体50と駆動レバー84の下端部とが一体移動するようになっている。
【0041】
駆動レバー84はまた、その上端部が雌ねじ孔91への固定ビス89(図1参照)のねじ込みにより、レバーハンドル18に固定され、上端部がレバーハンドル18と一体移動するようになっている。
この実施形態では、レバーハンドル18を図中上下方向に回動操作すると、駆動レバー84が支持ピン86の軸線周りに回転運動して可動弁体50を図3中左右方向に駆動し、吐止水及び水量調節動作を行わせる。
【0042】
一方レバーハンドル18を図1中紙面と直角方向に回動操作すると、駆動レバー84が回転体72とともに、回転体72の軸線周りに回転体72とともに回転運動し、これにより可動弁体50を対応する方向に移動させて吐水の温度調節動作を行わせる。
【0043】
本実施形態では、弁部の全開位置即ち最大流量時に、駆動レバー84つまりレバーハンドル18をストッパ作用により位置規制する開側のストッパ部92Kと、弁部の閉弁時即ち止水時に、駆動レバー84つまりレバーハンドル18をストッパ作用により位置規制する閉側のストッパ部92Hが支持ピン86よりも下側に、即ち支持ピン86に対してレバーハンドル18と反対側に設けられている。
【0044】
詳しくは、開側のストッパ部92Kを構成する回転体72側の当接部94K及び駆動レバー84側の被当接部96Kが、支持ピン86よりも図中下側に設けられ、また閉側のストッパ部92Hを構成する回転体72側の当接部94H及び駆動レバー84側の被当接部96Hが、支持ピン86よりも図中下側に設けられている。
【0045】
尚、この実施形態では駆動レバー84としてPA6(ポリアミド6)樹脂が用いられ、また回転体72としてPPO(ポリフェニレンオキシド)樹脂が用いられている。
またケース52としてPOM(ポリオキシメチレン)樹脂が用いられている。
【0046】
この実施形態ではまた、回転体72の図中上端部且つレバーハンドル18の全開及び全閉操作時に駆動レバー84に対向する部分を、図2に示しているように切り欠いた形状となしてある。
図3及び図2中、98Kは開側の切欠部を、98Hは閉側の切欠部をそれぞれ表している。
図2に示しているように、ここでは切欠部98K,98HをU字状の切欠部となしてある。
これら切欠部98K,98Hはまた、それぞれレバーハンドル18の全開操作,全閉操作時に、詳しくはストッパ部92K,92Hによるストッパ作用の後に、引き続くレバーハンドル18から加わる荷重によって駆動レバー84が更に撓んだときに、駆動レバー84の一部を内部に挿入可能な大きさの形状となしてある。
【0047】
図4は、本実施形態のシングルレバー水栓の作用を、また図5はその比較例の作用をそれぞれ表している。
図5の比較例は、単に開側のストッパ部92K-A及び閉側のストッパ部92H-Aを、それぞれ支持ピン86Aよりも図中下側に設けた例である。
図5に示しているように、この場合駆動レバー84Aの撓み長(ストッパ部92K-A,92H-Aがそれぞれストッパ作用してからの駆動レバー84の撓み長)L-A,L-Aが支持ピン86Aから駆動レバー84Aの図中上端までの長さとなって、図6に示す撓み長(可撓長)L,Lよりも長くなる。
従ってレバーハンドル18からの操作荷重を、より長い範囲に亘って吸収でき、駆動レバー84Aに生ずる各部の歪,応力を小さくすることができる。
その分、レバーハンドル18の操作による駆動レバー84の破断荷重を大きくすることができる。
【0048】
但し図5(A)(II),(B)(II)に示しているように、ストッパ部92H-A,92K-Aによるストッパ作用の後において、引き続きレバーハンドル18から駆動レバー84Aに操作荷重が加わることによって、駆動レバー84Aが図中P方向及びP方向にそれぞれ一定量撓むと、そこで駆動レバー84Aがその支持体としての回転体72Aの図中上端部に当接するに到り、その段階で図5(II)に示しているように、駆動レバー84Aの撓み長がL-B,L-Bにそれぞれ短くなる。
【0049】
従ってこの状態で更にレバーハンドル18からの操作荷重が駆動レバー84に加わると、その際の力が強ければ駆動レバー84Aは、図6に示すのと同じような破断個所X,Xで破断を生じてしまう。
但しこの比較例の場合、駆動レバー84の撓み長が途中から短くなるものであることから、全体としての耐荷重強度は図6に示すものに比べて大きくなる。
【0050】
これに対して本実施形態のものは、図4に示しているように切欠部98K,98Hの存在によって、駆動レバー84が回転体72に対して当ることはなく、レバーハンドル18の全閉操作時においては駆動レバー84が撓み長Lを最後まで維持することができ、また全開操作時においては駆動レバー84が撓み長Lを最後まで維持することができる。
【0051】
この結果、駆動レバー84の特定部位に発生する歪,応力を可及的に小さくすることができ、駆動レバー84の耐荷重強度を有効に高強度化することができる。
また本実施形態に従って切欠部98K,98Hを設けることによって、駆動レバー84の図4中左右方向の太さを太くすることができ、強度をより一層増大させることができる。
【0052】
尚、場合によって駆動レバー84の太さを太くすることによって、駆動レバー84が撓み変形の最終位置で切欠部98K,98Hに接触することも有り得るが、そうした場合においても、駆動レバー84の太さが太くしてあることによって駆動レバー84の破断を有効に防止することができる。
因みに、図6に示す従来のものにおいては駆動レバー200の破断強度が19.2N・mであったのが、本実施形態によりその破断強度を32.1N・mまで高めることができた。
【0053】
以上のような本実施形態では、駆動レバー84の回転規制をなすストッパ部92K,92Hが、支持ピン86に対しレバーハンドル18とは反対側に設けてあるために、レバーハンドル18から駆動レバー84に加わる荷重によって駆動レバー84が撓むとき、駆動レバー84の撓み長(可撓長、自由長)が従来よりも長くなり、レバーハンドル18から駆動レバー84に加わる操作荷重をより広い長さ範囲に亘って分散させることができる。
その結果として、特定個所に発生する歪や応力を効果的に低減でき、駆動レバー84の破断荷重を増大させることができる。
即ちレバーハンドル18からの通常の操作荷重によって駆動レバー84が破断しないようにすることができる。
【0054】
これに加えて本実施形態では、レバーハンドル18の全開及び全閉操作時に、支持体としての回転体72の駆動レバー84に対向する部分を切り欠いた形状となし、その切欠部98K,98Hに駆動レバー84を挿入可能となしているため、駆動レバー84を、長い撓み長を維持しながら、その一部を切欠部に挿入させることで特定部位に特に大きな集中歪,集中応力を発生させることなくより広い角度範囲に亘って撓み変形させることが可能となり、このことにより駆動レバー84の破断をより一層効果的に防止することが可能となる。
【0055】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態におけるケース本体54もまた、回転体72を介して駆動レバー84を支持する支持体としての働きをなしており、この場合において立上り壁76が回転体72よりも上方に突き出している場合において、その立上り壁76に上記のような切欠部98K,98Hを設けるといったことも可能であるし、また本発明は上記形態以外の他の様々なシングルレバー水栓に適用することが可能である。
また本発明では、レバーハンドルを全開操作したとき又は全閉操作したときにだけストッパ作用をなすストッパ部を設けたり、また開側又は閉側の切欠部だけを設けておくといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態であるシングルレバー水栓を示した図である。
【図2】同実施形態における弁ユニットを分解して駆動レバーとともに示した図である。
【図3】同実施形態における弁ユニットを組付状態で駆動レバーとともに示した断面図である。
【図4】同実施形態の作用説明図である。
【図5】比較例の作用説明図である。
【図6】従来のシングルレバー水栓の要部を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
10 シングルレバー水栓
18 レバーハンドル
46 固定弁体
50 可動弁体
72 回転体(支持体)
84 駆動レバー
86 支持ピン
92H,92H ストッパ部
94H,94K 当接部
96H,96K 被当接部
98H,98K 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)固定弁体と、(ロ)該固定弁体上を摺動する可動弁体と、(ハ)操作部としてのレバーハンドルと、(ニ)軸方向の両端間の中間部で支持ピンを介して支持体に対し該支持ピンの軸線周りに回転可能に且つ該軸線と直交方向の該支持体の軸線周りに回転可能に連結され、軸方向の一端側が前記レバーハンドルに、他端側が前記可動弁体の側にそれぞれ結合され、該レバーハンドルの操作により該可動弁体を駆動する駆動レバーと、を有し、該レバーハンドルの操作で吐止水と吐水量調節及び吐水の温度調節を行うシングルレバー水栓において、
前記レバーハンドルの全開又は/及び全閉操作時の位置を規定する、前記支持体側の当接部及び前記駆動レバー側の被当接部からなる開側又は/及び閉側のストッパ部を、前記支持ピンに対して前記レバーハンドルとは反対側に設けるとともに、前記支持体の前記レバーハンドル側の端部且つ該レバーハンドルの全開又は/及び全閉操作時に該駆動レバーに対して対向する部分を、該駆動レバーを内部に挿入可能な大きさに切り欠いた形状となしたことを特徴とするシングルレバー水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−84796(P2010−84796A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251644(P2008−251644)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】