説明

シートの展張装置

【課題】展張装置によってシートを確実に緊張させることができるようにする。
【解決手段】枠体1に取り付けられる支持部材14と、シート2の端部5を収容するための溝22を備えた収容部材21と、溝22にシート2の端部5とともにはまり込んで、この端部5を溝22に固定させるはめ込み部材26と、支持部材14に対する収容部材21の位置を調整することでシート2に所定の張力を付与可能な張力付与手段18とを備える。はめ込み部材26に突起44が設けられ、収容部材21に弾性舌片41が設けられる。弾性舌片41は、溝22にシート2の端部5とともにはめ込み部材26をはめ込むときに、このはめ込み部材26の突起44によって押しのけられるとともに、はめ込み部材26が溝22にはめ込まれたときに、押しのけ状態から元の状態に復帰して、シート2と突起44とを溝22の開口側に向けて動かないように位置規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートの展張装置に関し、特に内照明看板やオーニングやその他のシートを枠体に緊張状態で固定するためのシートの展張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
看板や装飾テント等に使用される軟質シートを枠に緊張状態で展張するための構成として、従来一般的に実施されてきたものは、シートの縁部を折り返し縫製し、折り返し部に鳩目を設け、これにロープを通して枠に固定するものである。また、シートの縁部を多数の掴み具により把持し、これをねじ機構により枠に取り付け締め上げて緊張状態を得る方法も採用されつつある。しかし、これらの方法は予めシートの縁部に縫製等の加工を必要するか、シ−トと掴み具の結合に煩雑な作業を必要とする。これらの問題点を解決する試みとして、種々の展張金具が提案されており、その一例として特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
図6は、枠体1に軟質樹脂製の半透明のシート2が緊張状態で展張されることで、内照明看板を構成した例を示す。3は、長方形状の枠体1の四辺を構成する額縁部である。図7に示すように、シート2は、その端部が展張装置4によって枠体1に取り付けられている。図示のように、長方形状の枠体1の四辺を構成する額縁部3の裏側の部分に、枠体1の四辺に沿って複数の展張装置4が設けられている。
【0004】
図8は、各展張装置4の詳細な構造であって特許文献1に記載されたものを示す。枠体1はアングル材にて構成されており、大アングル材11によって枠体1の本体が構成され、小アングル材12によって展張装置4のための取付辺13が構成されている。
【0005】
展張装置4において、14は支持部材であり、アルミニウム押出し成形品によって構成されている。この支持部材14は、枠体1の小アングル材12の取付辺13に被さることができるフック形状の被さり部15と、枠体1よりも前方へ突出するボルト支持部16と、ガイド部17とが、一体に形成された構成である。ガイド部17は、小アングル材12の取付辺13に沿って配置されるように構成されている。ボルト支持部16には、ボルト18を通すための孔部19が形成されている。
【0006】
展張装置4において、21は収容部材で、アルミニウム押出し成形品によって構成されている。この収容部材21は、矩形断面の溝22と、ボルト18がねじ合わされるボルトねじ合わせ部23と、支持部材14のガイド部17に沿うように配置された被ガイド部24とが、一体に形成された構成である。
【0007】
展張装置4において、26は、はめ込み部材で、同様にアルミニウム押出し成形品によって構成されている。図8の紙面と垂直な方向に沿った、支持部材14と収容部材21とはめ込み部材26との寸法について説明する。図7に簡単に示すように、支持部材14と収容部材21とは、例えば同方向の寸法が数センチメートル程度の大きさとなるように構成されている。これに対しはめ込み部材26は、同方向の寸法が、支持部材14や収容部材21の寸法よりも大きくなるように、たとえば10センチメートル以上の大きさとなるように構成されている。
【0008】
はめ込み部材26は、横断面L字形に形成され。図示のようにシート2の端部5を巻き付けた状態で、このシート2の端部5とともに溝22に固くはめ込まれることで、このシート2の端部5を収容部材21に固定可能である。27はL字形のはめ込み部材26の一辺で、この一辺27が溝22にはめ込まれる。28はL字形のはめ込み部材26の他辺で、一辺27が溝22にはめ込まれたときに、収容部材21における溝22を形成した部分の縁部29に重なるように構成されている。
【0009】
一辺27は、断面V字形に形成されて、厚肉の本体部31と、本体部31よりも薄肉の弾性体部32とが一体に形成された構成である。そして、一辺27が溝22にはめ込まれたときに、本体部31と弾性体部32とを接続した部分が溝22の底部側に位置するとともに、本体部31と弾性体部32とが離れて開いた部分が溝22の浅い部分に位置するように構成されている。
【0010】
このような構成において、シート2の端部5を巻き付けた状態ではめ込み部材26の一辺27が収容部材21の溝22にはめ込まれると、それによってV字が閉じる方向に弾性体部32が変形されることにより、この弾性体部32によってシート2の端部5が溝22の内面に強く押し付けられて、確実に固定される。またこのような固定状態においては、はめ込み部材26の一辺27が断面V字形に形成されていることで、その弾性体部32が、一辺27が溝22から抜け出すのを阻止する方向に溝22の内面を押すことになり、これによっても確実な固定状態を保つことができる。また、はめ込み部材26の他辺28が収容部材21の縁部29との間にシート2の端部5を挟み込むことになり、これによって、一層確実な固定状態が保たれる。
【0011】
ボルト18はシート2の面の方向に設けられている。このため、ボルト18を操作して、収容部材21を、枠体1の小アングル材12の取付辺13に引っ掛かるように被さった支持部材14のボルト支持部16に近づける方向に移動させることで、シート2に張力を付与してこのシート2を緊張させることができる。このとき、シート2の張力にもとづき、はめ込み部材26がシート2の端部5とともに溝22の中に押し込まれるとともに、はめ込み部材26の他辺28と収容部材21の縁部29との間にシート2の端部5が挟み込まれることになり、これによってシート2が緊張状態で確実に展張装置4に保持され、その結果、シート2における緩みの発生が効果的に防止される。
【0012】
反対に、ボルト18を操作して収容部材21をボルト支持部16から遠ざける方向に移動させることで、シート2の張力を弛緩させることができる。
【0013】
このとき、収容部材21の被ガイド部24が支持部材14のガイド部17に沿って、たとえば摺動することで、収容部材21の移動を円滑に行わせることが可能である。
【0014】
図8に示すように展張装置4は板材にて形成された額縁部3によって覆われており、よって図6に示すように展張装置4は看板の外観には現れない。
【特許文献1】特開平6−51704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、図8に示した構成では、次のような課題がある。すなわち、はめ込み部材の一辺27の弾性体部32は、いくら弾性を有するものであっても、溝22に押し込まれることによって若干の塑性変形が生じる。そうすると、溝22の内面への押し付け力が低下しやすくなる。
【0016】
また、シート2を展張するときには、複数の展張装置4を操作しなければならないが、いくつかの展張装置4においては、ボルト18の操作だけではシート2をうまく展張させることができない場合がある。そのときには、はめ込み部材26をシート2の端部5とともに溝22から取り出して、シート2におけるはめ込み部材26への巻き付け位置を変更したうえで、再度のはめ込みを行うことが必要になる。このような再度のはめ込みは、調整が完了するまでの間に何回も行われることが多い。すると、弾性体部32に繰り返し変形力が作用することになり、それによっても塑性変形が生じやすい。
【0017】
さらに、シート2の端部5がはめ込み部材26に巻き付けられているため、シート2が展張されると、その展張力によって、シート2がはめ込み部材26を締め付けるように作用する。すると、それによっても弾性体部32に変形が生じやすい。
【0018】
このように弾性体部32に変形が生じると、シート2の端部5を保持する力が低下して、シート2に緩みが生じる原因となりやすく、その場合は、はめ込み部材26の交換が必要になるという課題がある。
【0019】
また、はめ込み部材26の一辺27は断面V字形に形成されているため、このV字の頂点の部分が溝22の底部において横方向に移動しやすい。そして、このような移動が起こると、シート2に展張力が作用しているために、はめ込み部材26の他辺28が収容部材21の縁部29から浮き上がりやすく、この浮き上がりによって、他辺28と縁部29とによるシート2の端部5の挟み込み力が低下して、シート2に緩みが生じるおそれがある。
【0020】
そこで本発明は、このような課題を解決して、展張装置によってシートを確実に緊張させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的を達成するために、本発明の、シートを枠体に緊張状態に展張するための装置は、枠体に取り付けられる支持部材と、シートの端部を収容するための溝を備えた収容部材と、前記溝にシートの端部とともにはまり込んで、この端部を溝に固定させるはめ込み部材と、前記支持部材に対する収容部材の位置を調整することでシートに所定の張力を付与可能な張力付与手段とを備え、前記はめ込み部材に突起が設けられ、前記収容部材に弾性舌片が設けられ、この弾性舌片は、前記溝にシートの端部とともにはめ込み部材をはめ込むときに、このはめ込み部材の突起によって押しのけられるものであるとともに、はめ込み部材が溝にはめ込まれたときに、前記押しのけ状態から元の状態に復帰して、前記シートと突起とを溝の開口側に向けて動かないように位置規制するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
このような構成であると、弾性舌片は、はめ込み部材を溝の内面に押し付けるものではなく、はめ込み部材が溝にはめ込まれた後は元の状態に復帰して変形していない状態になるため、展張装置の使用時に常に変形が生じていることがなく、したがって押し付け力の低下に基づいてシートに緩みが発生することがないという利点がある。
【0023】
シートの展張状態を調整するためにはめ込み部材を繰り返し溝に出し入れすることが必要な場合でも、弾性舌片は突起の通過時に弾性変形するだけであるため、塑性変形が生じるようなことがなく、したがって繰り返し使用に耐えることができる。
【0024】
シートの端部をはめ込み部材に巻き付けた状態で溝にはめ込んでも、弾性舌片がはめ込み部材に形成されていないため、この弾性舌片にはシートの巻き付け力が作用しない。このため、シートにより弾性舌片に変形が生じることがないという利点がある。
【0025】
はめ込み部材には弾性体部が設けられておらず、したがってはめ込み部材をV字形に形成する必要が無いため、V字の頂部が溝内で横方向に移動することによるシートの緩みの発生を防止することができる。
【0026】
よつて、弾性舌片に弾性力の低下が生じることがなく、それに基づく部材の交換の必要がないという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態の展張装置を、図1〜図5にもとづき、図6〜図8に示したものと同一の部材には同一の参照番号を付して、詳細に説明する。
図1〜図5において、収容部材21の溝22におけるシート2の展張面から遠い方の内面に対応した位置には、弾性舌片41が一体に形成されている。この弾性舌片41は、溝22よりも外方の位置から溝底の方に向かうように形成された本体部42と、この本体部42の先端から、溝22におけるシート2の展張面に近い方の内面に向かう方向に形成された先端引掛り部43とを一体に有した構成である。
【0028】
はめ込み部材26の一辺27は、溝22の断面形状に合わせて断面矩形状に形成されている。そしてはめ込み部材26の一辺27には、このはめ込み部材26が溝22にはめ込まれたときに弾性舌片41に対応することになる位置に、突起44が形成されている。突起44における溝底側の面は、溝底側に向かうにつれて徐々に高さが低くなる傾斜面45として形成されている。これに対し、突起44における溝開口側の面は、溝22の開口側を向いた端面46として形成されている。
【0029】
図2に詳細に示すように、はめ込み部材26において、シート2の展張面に近い方の溝内面に向かい合う面と、収容部材21の縁部29に向かい合う面とには、このはめ込み部材26と収容部材21との間にシート2を挟み込んだときのシート2のずれを防止するための微小な凹凸47が形成されている。
【0030】
このような構成において、シート2を展張するときには、図3(a)に示すように、シート2の端部5をはめ込み部材26に沿わせ、図3(b)に示すようにシート2をはめ込み部材に巻き付けた状態で、このはめ込み部材26を収容部材21の溝22にはめ込む。はめ込み部材26が溝22の内部にある程度の深さまではまり込むと、突起44と、シート2における突起44に被さった部分とが、弾性舌片41の先端引掛り部43に接近する。
【0031】
そこで、図3(c)に示すように、プライヤーなどの適当な工具48を用い、収容部材21とはめ込み部材26とを挟み込んで、はめ込み部材26が溝22に入り込む方向に力を作用させる。すると、はめ込み部材26の突起44の傾斜面45とその部分のシート2とが、弾性舌片41の先端引掛り部43を介してこの弾性舌片41を押しのけるように作用する。すなわち、弾性舌片41は、弾性的に変形することで、突起44を備えたはめ込み部材26が溝22の奥側に向けて移動し溝22に押し込み状態ではまり込むことを許容する。その後は、弾性舌片41は、元の変形していない状態に復帰する。
【0032】
このとき、突起44が先端引掛り部43の位置を通過すると、そのときの音や手応えなどによって、溝22へのはめ込み部材26のはめ込み作業が完了したことを、作業者が感覚的に知ることができる。
【0033】
図1および図2は、このようにしてはめ込み部材26がシート2の端部5とともに溝22に押し込まれて保持された状態を示す。この状態で、弾性舌片41は、シート2と突起44すなわちはめ込み部材26とが溝22の開口側に向けて動かないように位置規制する。つまり、はめ込み部材26に溝22からの抜け出し力が作用すると、突起44の端面46がシート2を介して弾性舌片41の先端掛り部43を押圧することになるため、その抜け出しが防止される。
【0034】
図1に示す張力付与手段としてのボルト18を操作してシート2を展張させるときには、はめ込み部材26はシート2の張力によって溝22の奥側へ押し込まれ、これによって、シート2が確実に保持される。このとき、弾性舌片41には、はめ込み部材26から大きな力が作用することがない。
【0035】
図4は、図1および図2に示す展張装置4の使用例を示すものである。
【0036】
図5に示すように、シート2が薄肉である場合は、その先端部5の必要箇所を二重やそれ以上の多重に折り畳んだ状態で、はめ込み部材26の一辺27とともに溝22にはめ込むことができる。このようにすると、シート2が薄肉の場合であっても、溝22と、はめ込み部材26およびシート2との間に隙間が生じて、はめ込み部材26に傾きが生じ、それによりはめ込み部材26の他辺28が収容部材21の縁部29から浮き上がってシート2の端部5を挟み付ける力が低下するような事態の発生を、確実に防止することができる。
【0037】
以上のように、弾性舌片41は、展張装置4の使用時に常に変形が生じていることがなく、したがって、その機能低下に基づいてシート2に緩みが発生することがないという利点がある。
【0038】
シート2の展張状態を調整するために、はめ込み部材26を繰り返し溝22に出し入れすることが必要な場合でも、弾性舌片41は突起44の通過時に弾性変形するだけであるため、塑性変形が生じるようなことがなく、したがって繰り返し使用に耐えることができる。なお、図1および図2に示す状態からはめ込み部材26およびシート2を溝22から取り出すときには、はめ込み部材26と収容部材21とを図1および図2の紙面に垂直な方向に相対的に変位させればよい。すなわち、はめ込み部材26と収容部材21とを互いに横方向にスライドさせて、溝22からの取り出しを行えばよい。
【0039】
また弾性舌片41にはシート2の巻き付け力が作用しないため、その巻き付け力によって弾性舌片41に変形が生じることがないという利点もある。
【0040】
よって、弾性舌片41に弾性力の低下が生じることがなく、それに基づく部材の交換を不要にすることもできる。
【0041】
また、はめ込み部材26の一辺27は断面矩形状に形成されており、したがって溝22にきっちりとはまり込むことが可能で、溝22の内部で横方向に移動して傾くようなことがない。このため、はめ込み部材26の他辺28が収容部材21の縁部29から浮き上がることがなく、このような浮き上がりの発生にもとづくシート2の緩みの発生を防止することができる。
【0042】
なお、枠体1や、支持部材14や、収容部材21や、はめ込み部材26の材質は、適宜に選定することができる。たとえば、上述したアルミニウムに代えて、硬質の樹脂などを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態のシートの展張装置の断面図である。
【図2】図1のシートの展張装置の要部の拡大図である。
【図3】図1の展張装置にシートを固定する方法を示す図である。
【図4】図1のシートの展張装置の使用例を示す図である。
【図5】図1のシートの展張装置の変形例を示す図である。
【図6】本発明のシートの展張装置を用いることが可能な内照明看板の外観図である。
【図7】同看板の内部構造を示す図である。
【図8】従来のシートの展張装置の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 枠体
2 シート
5 端部
14 支持部材
18 ボルト
21 収容部材
22 溝
26 はめ込み部材
41 弾性舌片
44 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを枠体に緊張状態で展張するための装置であって、枠体に取り付けられる支持部材と、シートの端部を収容するための溝を備えた収容部材と、前記溝にシートの端部とともにはまり込んで、この端部を溝に固定させるはめ込み部材と、前記支持部材に対する収容部材の位置を調整することでシートに所定の張力を付与可能な張力付与手段とを備え、前記はめ込み部材に突起が設けられ、前記収容部材に弾性舌片が設けられ、この弾性舌片は、前記溝にシートの端部とともにはめ込み部材をはめ込むときに、このはめ込み部材の突起によって押しのけられるものであるとともに、はめ込み部材が溝にはめ込まれたときに、前記押しのけ状態から元の状態に復帰して、前記シートと突起とを溝の開口側に向けて動かないように位置規制するものであることを特徴とするシートの展張装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−63853(P2009−63853A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232193(P2007−232193)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000104412)カンボウプラス株式会社 (15)