説明

シートベルト用リトラクタ

【課題】緊急時に巻取ドラムをロックするウエビングの引出加速度のバラツキの発生を防止することが可能となるシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】クラッチ部材は、慣性体がセンサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動することにより係合するクラッチギヤを有し、前記慣性体は、前記センサスプリングによってウエビング引出方向へ回動されてストッパに当接されている場合には、重心位置がロッキングギヤの回転軸と該慣性体の回転軸を結ぶ基準直線から該基準直線を該慣性体の回転軸を中心にウエビング引出方向側へ第1角度回転させた位置までの該慣性体側の第1範囲内において、該第1角度を略2等分する2等分線上に最大幅を有するように設定された第1領域内に位置するように設定され、該慣性体は、前記クラッチギヤに係合する前記ウエビングの引出加速度のバラツキが、略0.2G以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時にウエビングの引き出しを防止するシートベルト用リトラクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、緊急時にウエビングの引き出しを防止するシートベルト用リトラクタに関して種々提案されている。
例えば、ウエビングの急激な引き出しを検出するウエビングセンサは、略C形状に形成された平板状の慣性体が、ロックギヤの平板部に立設された軸に回動自在に支持されている。また、慣性体の重心は、ロックギヤの回転軸と慣性体の回転軸とを結ぶ直線の慣性体の回転軸側の延長線上で、慣性体の回転軸からわずか離れた位置に設定されている。
【0003】
また、この慣性体をロックギヤに対してウエビング引出方向へ常時付勢するコントロールばねは、慣性体の係止爪に対して反対側の端部に立設されて先端が半球状で円柱形状のばねガイド部に一端が支持されている。また、コントロールばねの他端は、ロックギヤの平板部に平行に立設されて先端が半球状で円柱形状のばねガイド部に支持されている。そして、コントロールばねは、慣性体が揺動自在に支持された状態で、両ばねガイド部間に縮設されるように構成されたシートベルトリトラクタがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−208657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した特許文献1に記載されたシートベルトリトラクタのウエビングセンサでは、ロックギヤが回転したとき、慣性体の重心に遠心力が作用するが、その作用線がロックギヤの回転軸と慣性体の回転軸とを結ぶ直線の延長線上に位置するため、この遠心力により慣性体の回転軸回りのモーメントが作用することがない。従って、リールシャフトの通常の回転時に慣性体が、慣性体の回転軸回りに回動することを防止できる。
【0006】
しかしながら、ロックギヤは、リールシャフトの一端側に一体的に取り付けられているため、ユーザの体型や着座姿勢によって、慣性体はロックギヤの回転軸及びリールシャフトの回転軸の軸回りに公転する。このため、リールシャフトの回転軸に対する慣性体の公転位置によって、慣性体の係止爪をロックギヤ第1カバーの歯に係合させるウエビングの引出加速度(センサ感度)にバラツキが生じる虞があるという問題がある。
【0007】
また、コントロールばねの両端は、先端が半球状で円柱形状の各ばねガイド部で支持されているため、ウエビングの急激な引き出しによって慣性体が回動した場合には、コントロールばねは略S字状に撓みながら縮められる。このため、コントロールばねは、内側が各ばねガイド部に擦れながら急激に圧縮されるため、スムーズに縮むことができず、ウエビングの引出加速度(センサ感度)にバラツキが生じる虞があるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、巻取ドラムの回転軸に対する慣性体の公転位置によって、緊急時に巻取ドラムをロックするウエビングの引出加速度のバラツキの発生を防止することが可能となるシートベルト用リトラクタを提供することを目的とする。また、慣性体をウエビング引出方向へ回動するように付勢するセンサスプリングがスムーズに縮むことができ、ウエビングの引出加速度のバラツキを防止することができるシートベルト用リトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため請求項1に係るシートベルト用リトラクタは、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に収納されてウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、前記ハウジングの一方の側壁部の外側に取り付けられて、通常時前記巻取ドラムの一端側を回転自在に支持し、前記ウエビングが所定以上の引出加速度で引き出されたときに該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するロック手段と、を備え、前記ロック手段は、通常時前記巻取ドラムと共に回転し、前記ウエビングが所定以上の引出加速度で引き出されたときに作動する引出加速度感知部材と、前記引出加速度感知部材の作動によって前記巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するパウルを作動させるクラッチ部材と、を有し、前記引出加速度感知部材は、前記巻取ドラムと一体的に回転するロッキングギヤと、前記ロッキングギヤの回転軸から半径方向外側へ所定距離離れた位置に回動可能に軸支されて該ロッキングギヤの回転軸を囲むように配置された略弓形の慣性体と、前記慣性体を前記ロッキングギヤに対してウエビング引出方向へ回動するように付勢するセンサスプリングと、を有し、前記クラッチ部材は、前記巻取ドラムの回転軸と同軸に設けられて、前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動することにより係合するクラッチギヤが内周面に設けられた円環状のリブ部を有し、前記慣性体は、前記センサスプリングによってウエビング引出方向へ回動されてストッパに当接されている場合には、重心位置が前記ロッキングギヤの回転軸と該慣性体の回転軸を結ぶ基準直線から該基準直線を該慣性体の回転軸を中心にウエビング引出方向側へ第1角度回転させた位置までの該慣性体側の第1範囲内において、該第1角度を略2等分する2等分線上に最大幅を有し、該2等分線から両円周方向に離れるに従って狭くなって円周方向両端縁部で境界部にほぼ接するように設定された第1領域内に位置するように設定され、該慣性体は、前記クラッチギヤに係合する前記ウエビングの引出加速度のバラツキが、略0.2G以下になるように設定されていることを特徴とする。尚、1G≒9.8m/sとする。
【0010】
また、請求項2に係るシートベルト用リトラクタは、請求項1に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記慣性体は、前記重心位置が前記2等分線によって略2等分される前記第1角度よりも小さい第2角度の該慣性体側の第2範囲内において、前記第1領域に対して相似となるように縮小された第2領域内に位置するように設定され、該慣性体は、前記クラッチギヤに係合するウエビングの引出加速度のバラツキが略0.1G以下になるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係るシートベルト用リトラクタは、請求項1又は請求項2に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記慣性体は、略弓形に形成された金属製の平板と、前記平板が内側に装着されて前記ロッキングギヤに回動可能に軸支され、一端部に形成された係合爪が前記クラッチギヤに係合するように略弓形に形成された合成樹脂製の回動体と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係るシートベルト用リトラクタは、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に収納されてウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、前記ハウジングの一方の側壁部の外側に取り付けられて、通常時前記巻取ドラムの一端側を回転自在に支持し、前記ウエビングが所定以上の引出加速度で引き出されたときに該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するロック手段と、を備え、前記ロック手段は、前記巻取ドラムと一体的に回転するロッキングギヤと、前記ロッキングギヤの回転軸から半径方向外側へ所定距離離れた位置に回動可能に軸支されて該ロッキングギヤの回転軸を囲むように配置された略弓形の慣性体と、前記慣性体を前記ロッキングギヤに対してウエビング引出方向へ回動するように付勢するセンサスプリングと、前記巻取ドラムの回転軸と同軸に設けられて、前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動することにより係合するクラッチギヤが内周面に設けられた円環状のリブ部と、を有し、前記ロッキングギヤは、該ロッキングギヤの回転軸の周縁近傍位置から前記慣性体側方向で、且つ、該回転軸に対して直交するウエビング引出方向へ立設されて、センサスプリングの一端側が嵌め込まれたギヤ側バネ支持ピンを有し、前記慣性体は、前記ギヤ側バネ支持ピンに対向する側壁に立設されて、前記センサスプリングの他端側が嵌め込まれる慣性体側バネ支持ピンを有し、前記慣性体側バネ支持ピンは、前記慣性体が前記センサスプリングによってウエビング引出方向へ回動された場合には、前記ギヤ側支持ピンとほぼ同一直線上に位置するように立設され、前記ギヤ側バネ支持ピンと前記慣性体側バネ支持ピンのうちの少なくとも一方は、前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて前記クラッチギヤに係合した場合に、先端側の外周面が前記センサスプリングの撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリングの撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
更に、請求項5に係るシートベルト用リトラクタは、請求項4に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて前記クラッチギヤに係合した場合には、該慣性体側バネ支持ピンの先端部が前記ギヤ側支持ピンの先端部の近傍に位置する高さに立設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るシートベルト用リトラクタでは、慣性体の重心位置を第1領域内に位置させることによって、慣性体がクラッチギヤに係合するウエビングの引出加速度のバラツキを略0.2G以下に設定することができる。これにより、ユーザの体型や着座姿勢によって、巻取ドラムの回転軸に対する慣性体の公転位置が変化しても、緊急時に巻取ドラムをロックするウエビングの引出加速度のバラツキを略0.2G以下にしてロック手段の作動感度を安定化させることが可能となる。
【0015】
また、請求項2に係るシートベルト用リトラクタでは、慣性体の重心位置を第2領域内に位置させることによって、慣性体がクラッチギヤに係合するウエビングの引出加速度のバラツキを略0.1G以下に設定することができる。これにより、ユーザの体型や着座姿勢によって、巻取ドラムの回転軸に対する慣性体の公転位置が変化しても、緊急時に巻取ドラムをロックするウエビングの引出加速度のバラツキを略0.1G以下にしてロック手段の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【0016】
また、請求項3に係るシートベルト用リトラクタでは、略弓形に形成された金属製の平板を略弓形に形成された合成樹脂製の回動体の内側に装着することによって、該慣性体を合成樹脂だけで作製する場合よりも小型化することができる。また、金属製の平板の形状を変更することによって、慣性体の重心位置を容易に設定することができる。更に、合成樹脂製の回動体の一端部にクラッチギヤに係合する係合爪が形成されているため、慣性体の構造の簡素化を図ることができる。
【0017】
また、請求項4に係るシートベルト用リトラクタでは、ギヤ側バネ支持ピンと慣性体側バネ支持ピンのうちの少なくとも一方は、先端側の外周面がセンサスプリングの撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリングの撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されている。
【0018】
これにより、ウエビングの急激な引き出しによって慣性体が回動してセンサスプリングが撓みながら縮んでも、ギヤ側バネ支持ピンと慣性体側バネ支持ピンのうちの少なくとも一方は、センサスプリングの内側と擦れないため、当該センサスプリングはスムーズに縮むことができ、ロック手段の作動感度を安定化させることが可能となる。
【0019】
更に、請求項5に係るシートベルト用リトラクタでは、慣性体がセンサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤに係合した場合には、慣性体側バネ支持ピンの先端部が、ギヤ側支持ピンの先端部の近傍に位置する高さに立設されている。これにより、慣性体側バネ支持ピンの先端部と、ギヤ側バネ支持ピンの先端部とが近接するため、センサスプリングの縮んだ状態を一定にすることができ、ロック手段の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るシートベルト用リトラクタの外観斜視図である。
【図2】シートベルト用リトラクタをユニット別に分解した斜視図である。
【図3】プリテンショナユニットの斜視図である。
【図4】プリテンショナユニットの分解斜視図である。
【図5】プリテンショナユニットの分解斜視図である。
【図6】プリテンショナユニットの一部切り欠き側面図である。
【図7】ハウジングユニットの分解斜視図である。
【図8】シートベルト用リトラクタのロックユニットを取り除いた状態の側面図である。
【図9】プリテンショナ機構のガス発生部材の作動によってピストンが移動して回転レバーの下端部がギヤ側アームの先端部から外れた状態を示す説明図である。
【図10】図9に対応するパウルの動作を示す説明図である。
【図11】ロックユニットをメカニズムカバー側から見た分解斜視図である。
【図12】ロックユニットをメカニズムブロック側から見た分解斜視図である。
【図13】ロックユニットのロックアームを含む組立断面図である。
【図14】ロックユニットの通常時の状態を示す一部切り欠き断面図。
【図15】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(作動前)である。
【図16】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(作動開始時)である。
【図17】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(ロック状態への移行時)である。
【図18】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(ロック状態)である。
【図19】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(作動前)である。
【図20】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(作動開始時)である。
【図21】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(ロック状態への移行時)である。
【図22】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(ロック状態)である。
【図23】ロックアームの重心位置を示す座標系の説明図である。
【図24】ロックアームの重心の各座標位置を示す図である。
【図25】ロックアームの重心を座標位置Aに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図26】ロックアームの重心を座標位置Bに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図27】ロックアームの重心を座標位置Cに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図28】ロックアームの重心を座標位置Dに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図29】ロックアームの重心を座標位置Eに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図30】ロックアームの重心を座標位置Fに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図31】ロックアームの重心を座標位置Gに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図32】ロックアームの重心を座標位置Hに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図33】ロックアームの重心を座標位置Iに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図34】ロックアームの重心を座標位置Jに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図35】ロックアームの重心を座標位置Kに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図36】ロックアームの重心を座標位置Lに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図37】ロックアームの重心を座標位置Mに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図38】ロックアームの重心を座標位置Nに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図39】ロックアームの重心を座標位置Oに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図40】ロックアームの重心を座標位置Pに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図41】ロックアームの重心を座標位置Qに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図42】ロックアームの重心を座標位置Rに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図43】ロックアームの重心を座標位置Sに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図44】ロックアームの重心を座標位置Tに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図45】ロックアームの重心を座標位置Uに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図46】ロックアームの重心を座標位置Vに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図47】ロックアームの重心を座標位置Wに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図48】ロックアームの重心を座標位置Xに位置させたときの、各公転角度に対するウエビングの引出加速度に対する作動結果の一例を示す作動結果テーブルである。
【図49】基準軸からロックアームの重心が位置するピボット軸の半径までのウエビング引出方向の角度と、ピボット軸の回転中心からの距離との関係に対する感度誤差の分布の一例を示す感度誤差分布図である。
【図50】図49の感度誤差が0.1G以下と0.2G以下の場合の、ロックアームの重心位置の分布領域を示す図である。
【図51】他の実施形態に係るセンサスプリングを取り付ける支持ピンの一例を示す図である。
【図52】他の実施形態に係るセンサスプリングを取り付ける支持ピンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
[概略構成]
先ず、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1及び図2に基づき説明する。
図1は本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
また、ロックユニット9は、ハウジングユニット5を構成するハウジング11の側壁部12に固設され、後述のようにウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止する起動動作を行う。
【0024】
また、後述のプリテンショナ機構17(図3参照)を備えたプリテンショナユニット7は、平面視略コの字状のハウジングユニット5の相対向する各側板部13、14の上下端縁部から略直角内側方向に延出されてネジ孔が形成された各ネジ止め部13A、13B、14Aと貫通孔が形成されたピン止め部14Bに、プリテンショナユニット7の外側から挿通される各ネジ15によってネジ止めされ、また、ハウジング11の内側から挿通されるストッパーピン16と該ストッパーピン16に挿入されるプッシュナット18によって固定される。これにより、プリテンショナユニット7は、ハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部を構成する。
【0025】
また、巻取バネユニット8は、プリテンショナユニット7の外側にバネケース19に一体形成された各ナイラッチ8Aによって固設される。
そして、ウエビング3が巻装されて巻取ドラムとして機能する巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9とプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。また、巻取ドラムユニット6は、ガイドドラム21と、ドラムシャフト22と、ワイヤプレート25と、ラチェットギヤ26等とから構成されている。
【0026】
ガイドドラム21は、アルミ材等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、ガイドドラム21の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向に延出されたフランジ部27が形成されている。また、このフランジ部27の内周面には、車両衝突時に各クラッチパウル29(図4参照)が係合してピニオンギヤ体33(図4参照)の回転が伝達されるクラッチギヤ30が形成されている。
【0027】
また、ガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状の取付ボス31が立設され、スチール材等により形成されるドラムシャフト22が圧入等によって固着されている。また、この取付ボス31は、後述のクラッチ機構48(図4参照)を構成するポリアセタール等の合成樹脂材により形成された軸受部材32の筒状部32A(図4参照)に嵌入される。
【0028】
これにより、巻取ドラムユニット6の一端側は、軸受部材32を介してプリテンショナユニット7を構成するピニオンギヤ体33の軸受け部33A(図5参照)に回転可能に支持される。また、巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22の先端部が、巻取バネユニット8内の渦巻バネに結合され、渦巻バネの付勢力によって巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻取方向に常時付勢する構造とされる。
【0029】
また、ガイドドラム21の軸心方向のロックユニット9側には、端縁部から少し内側の外周面から径方向に延出されたフランジ部35が形成されている。また、フランジ部35の外周部は、アルミ材等により形成された側面視略卵形のワイヤプレート25で覆われている。また、ワイヤプレート25の外側中央部には、ラチェットギヤ26が、カシメ等によって固着されている。
【0030】
このラチェットギヤ26は、スチール材等により形成された円板状で、外周面に、後述のように車両衝突時や車両緊急時にパウル37(図7参照)が係合するラチェットギヤ部26Aが形成されている。また、ラチェットギヤ26の外側中心位置には、軸部28が立設されている。この軸部28の外周面には、スプラインが形成され、巻取ドラムユニット6は、この軸部28を介してロックユニット9に回転可能に支持される。
【0031】
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図2乃至図6に基づいて説明する。
図3はプリテンショナユニット7の巻取バネユニット8の取り付け面側から見た斜視図である。図4及び図5はプリテンショナユニット7を分解した分解斜視図である。図6はプリテンショナユニット7の一部切り欠き側面図である。
【0032】
図2乃至図6に示すように、プリテンショナユニット7は、プリテンショナ機構17と、ハウジングユニット5の側壁部12に軸支されたパウル37(図8参照)を回動させる強制ロック機構51と、カバープレート53とから構成されている。
【0033】
[プリテンショナ機構]
図3乃至図6に示すように、プリテンショナ機構17は、車両衝突時等にガス発生部材41を作動させ、このガスの圧力を利用して巻取ドラムユニット6のフランジ部27を介して該巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻取方向に回転させる機構である。
【0034】
ここで、プリテンショナ機構17は、ガス発生部材41と、パイプシリンダ42と、ガス発生部材41のガス圧を受けてパイプシリンダ42内を移動するシールプレート43及びピストン44と、このピストン44に形成されたラック44Aに噛合して回転するピニオンギヤ体33と、このパイプシリンダ42が取り付けられるベースプレート45と、このベースプレート45にパイプシリンダ42のピニオンギヤ体33側の側面に当接して配設される略直方体状のベースブロック体46と、ベースプレート45の外側面に配設されるクラッチ機構48とから構成されている。
【0035】
また、ピニオンギヤ体33は、スチール材等で形成された略円筒状で、その外周部にピストン44に形成されたラック44Aに噛合するピニオンギヤ部55が形成されている。また、このピニオンギヤ部55の軸心方向カバープレート53側の端部から外側方向に延出される円筒状の支持部56が形成されている。また、この支持部56は、ピニオンギヤ部55の谷径を外径として、このカバープレート53の厚さ寸法にほぼ等しい長さに形成されている。
【0036】
また、このピニオンギヤ部55の軸心方向ベースプレート45側の端部には径方向に張り出すフランジ部57が形成されている。さらに、このフランジ部57から外側方向に略円筒状で巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22が挿通されると共に、軸受部材32の筒状部32Aが嵌入される軸受け部33Aが形成されたボス部58が形成されている。また、このボス部58の外周面には、基端部の外径を有する3個ずつのスプラインが中心角約120度間隔で形成されている。
【0037】
また、クラッチ機構48は、ポリアセタール等の合成樹脂材により形成された軸受部材32と、スチール材等で形成された略円環状のパウルベース61と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル29と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース61と共に各クラッチパウル29を挟持する略円環状のパウルガイド62とから構成されている。
【0038】
この軸受部材32は、図4及び図5に示すように、ガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置に立設された円筒状の取付ボス31が回転可能に嵌入される略円筒状の筒状部32Aと、その筒状部32Aのガイドドラム21側の端縁部の外周から径方向外側に延出された円環状のフランジ部32Bとから形成されている。
【0039】
また、このフランジ部32Bの周縁部には、中心角約120度間隔で径方向外側に正面視略三角形の先細りの平板状に延出された3個の突出部32Cが形成されている。また、各突出部32Cの径方向外側先端部には、それぞれ係止片32Dが、筒状部32Aの外周面に対して軸方向平行に対向するように、クラッチ機構48の厚さ寸法よりも少し低い高さ寸法で立設されている。更に、各係止片32Dの先端部には、略直角外側方向に側断面略直角三角形状に突出した係合突起が形成されている。
【0040】
また、図4及び図5に示すように、パウルベース61の内周面には、ピニオンギヤ体33のボス部58に形成されたスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成されている。また、パウルベース61には、各クラッチパウル29の回転支軸29Aが回転可能に嵌入される3個の挿通孔65と、各挿通孔65をパウルベース61の外径側で囲むように肉厚の各パウル支持ブロック66が設けられている。また、各パウル支持ブロック66の外径端には、それぞれ係止ブロック67が形成されている。
【0041】
また、パウルベース61のガイドドラム21側の面には、軸受部材32の筒状部32Aをパウルベース61に挿入した場合に、フランジ部32B及び各突出部32Cのほぼ全体が入り込むように嵌入される正面視略三角形状の窪み部68が形成されている。この窪み部68の深さは、平板状の各突出部32Cの厚さにほぼ等しい深さ寸法に形成されている。また、窪み部68の底面の各頂点部分には、軸受部材32の各係止片32Dが挿通される各貫通孔69が形成されている。
【0042】
また、図4及び図5に示すように、パウルガイド62の内周径は、パウルベース61のスプライン溝よりも大きく形成されると共に、このパウルガイド62の軸方向外側の側面部には、3個の細長い各位置決突起71が、中心角120度間隔で半径方向に沿って突設されている。また、パウルガイド62の外周部には、パウルベース62の各係止ブロック67と係合する3個の各係止フック72が形成されている。
【0043】
そして、パウルベース61の各貫通孔69に各クラッチパウル29の回転支軸29Aを嵌入して載置し、その上側からパウルガイド62の各係止フック72をパウルベース61の各係止ブロック67に係合させることによって、各クラッチパウル29が回転支軸29を中心に回転可能に収納された状態で保持される。続いて、クラッチ機構48のパウルガイド62の軸方向外側の側面部に突設される各位置決突起71を、ベースプレート45の各位置決孔75に嵌入して、該クラッチ機構48をベースプレート45の外側面に配置する。
【0044】
その後、ピニオンギヤ体33のボス部58を、ベースプレート45の略中央部に形成された貫通孔76に嵌入後、該ボス部58に形成される各スプラインをクラッチ機構48を構成するパウルベース61の各スプライン溝に圧入固定する。これにより、クラッチ機構48とピニオンギヤ体33とが、ベースプレート45に配設固定されるとともに、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55が、図6に示す位置に常に位置決め固定される。
【0045】
これにより、後述のように、車両衝突時等にピニオンギヤ体33が回転した場合には、パウルベース61が回転して各クラッチパウル29が半径方向外側へ回動されて該パウルベース61から半径方向外側へ突出後、ガイドドラム21のクラッチギヤ30に噛合する。更に、ピニオンギヤ体33が回転することによって、パウルガイド62の各位置決突起71が剪断されて、クラッチ機構48及びガイドドラム21がウエビング3の巻取方向へ回転する。
【0046】
続いて、図4及び図5に示すように、軸受部材32の各係止片32Dをパウルベース61の各貫通孔69に挿入しつつ、筒状部32Aをピニオンギヤ体33の軸受け部33Aに嵌入する。そして、軸受部材32のフランジ部32B及び各突出部32Cを窪み部68に嵌入させる。これにより、軸受部材32の各突出部32Cの両側面部は、窪み部68の各頂点部分の内側面に対向するように配置されるため、当該軸受部材32はパウルベース61に対して相対回転不能に取り付けられる。
【0047】
また、ベースブロック体46は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。そして、このベースブロック体46の内側の側端縁部から内側方向に平面視略半円状に窪むように形成されると共に底面部が外側方向に突出する略リング状に形成されたギヤ収納部81の該底面部の貫通孔82内にピニオンギヤ体33のフランジ部57を挿通させる。また、このベースブロック体46のベースプレート45側の側面部に突出する各位置決めボス83を、ベースプレート45の各位置決孔85に嵌入して、該ベースブロック体46をベースプレート45の内側面に配置する。
【0048】
また、ベースブロック体46は、パイプシリンダ42のガス発生部材41が収納される収納部42Aに対向する下端部から該収納部42A近傍位置まで、ピストン44が収納されるピストン収納部42Bに対向するように同じ厚さで所定幅(例えば、約10mm幅である。)だけ延出されたブロック延出部87が形成されている。また、このブロック延出部87の下端部には、ネジ88(図2参照)が挿通される貫通孔89が形成されている。
【0049】
また、ベースブロック体46の外側側面部からベースプレート45側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片46Aと、このベースブロック体46の上側側面部及び下側側面部からベースプレート45側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された各弾性係止片46Bとをそれぞれベースプレート45の側端部に係止する。これにより、ベースブロック体46がベースプレート45に配設される。
【0050】
尚、ギヤ収納部81の高さは、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55とフランジ部57の高さの和にほぼ等しくなるように形成されている。
【0051】
[強制ロック機構]
ここで、ベースブロック体46内に配設される強制ロック機構51について図3乃至図6に基づいて説明する。
図3乃至図6に示すように、ベースブロック体46には、強制ロック機構51を配設する凹部91が形成されて、該強制ロック機構51を構成するプッシュブロック92と、回転レバー93と、プッシュブロック92を回転レバー93側方向へ付勢するブロック付勢バネ92Aと、ギヤ側アーム94と、このギヤ側アーム94を回転レバー93側方向へ付勢する付勢バネ95とが配設されている。また、このギヤ側アーム94には、ベースプレート45の外側から該強制ロック機構51を構成する連結シャフト96と、メカ側アーム97が接続されている。
【0052】
この回転レバー93は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略くの字状に形成されると共に、曲がり部に貫通孔が形成されている。そして、図6に示すように、回転レバー93は、一端側がピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55に対向するように、ベースブロック体46の凹部91の底面部に立設されるボス98に回転可能に支持されている。
【0053】
また、プッシュブロック92は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。そして、図6に示すように、プッシュブロック92は、凹部91の底面部に立設される位置決突起101によって、一端がピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55の歯の近傍に位置し、他端が回転レバー93の近傍に位置するように位置決めされている。また、このプッシュブロック92は、ブロック付勢バネ92Aによって回転レバー93側に付勢され、ガタツキが防止されている。
【0054】
従って、後述のようにピニオンギヤ体33が回転した場合には、回転レバー93は、ピニオンギヤ部55の歯に押されたプッシュブロック92によって外側方向(図6中、反時計方向)に回動可能に構成されている(図9参照)。また、プッシュブロック92は、ブロック付勢バネ92Aによってピニオンギヤ体33側に戻るのを防止される。
【0055】
また、ギヤ側アーム94は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略平板状に形成されると共に、ベースブロック体46側の側面部の回転レバー93から遠い一端側には、ベースブロック体46の凹部91の底面部に形成された貫通孔102に挿通されるボス103が立設されている。また、ギヤ側アーム94のボス103が立設される側面部には、連結シャフト96の一端側折曲部が挿通される所定深さの溝部105が形成されている。
【0056】
また、ギヤ側アーム94は、回転レバー93側の先端部上面に、該回転レバー93の他端側が当接される段差部106が形成されている。そして、このギヤ側アーム94は、ボス103が凹部91の底面部に形成される貫通孔102に挿入されて、回転レバー93側に回動可能に支持される。更に、ギヤ側アーム94は、段差部106に対向する他方の先端部下面を付勢バネ95によって回転レバー93側へ(図6中、上側方向である。)付勢されて、該段差部106が回転レバー93の他端側に当接されている。
【0057】
従って、回転レバー93が図6中、反時計方向に回動した場合には、この回転レバー93の他端側がギヤ側アーム94の先端部から離れ、ギヤ側アーム94が付勢バネ95の付勢力によって、外側方向(図6中、反時計方向である。)へ回動可能に構成されている。
【0058】
また、連結シャフト96は、スチール材等の線材で形成されて、両端が相互に約90度ずれて対向するように略直角に折り曲げられている。また。この連結シャフト96の直線部の長さは、ハウジングユニット5の各側板部13、14(図7参照)の幅より若干長く形成されている。
【0059】
また、図5に示すように、ベースブロック体46の凹部91の底面部に形成される貫通孔102には、連結シャフト96の一端側折曲部が挿通される溝107が外周部から延び出ている。また、ベースプレート45のギヤ側アーム94に対向する部分には、連結シャフト96の一端側折曲部が挿通される貫通孔108が形成されている。
【0060】
従って、連結シャフト96の一端側折曲部は、ベースプレート45の貫通孔108と、ベースブロック体46の貫通孔102及び溝107を通って、ベースブロック体46の凹部91に配設されたギヤ側アーム94の溝部105内に嵌入される。
【0061】
また、メカ側アーム97は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略平板状の幅の狭い略扇形に形成されると共に、その中心角側の端縁部の外側面には、ハウジングユニット5の側壁部12(図7参照)に形成される貫通孔111(図7参照)に回転可能に嵌入されるボス112が立設されている。また、メカ側アーム97の外周側端縁部の側壁部12側の外側面には、切欠部113(図7、図8参照)内に挿通されるボス97Aが立設されている。また、メカ側アーム97の内側面には、中心線に沿って所定深さの溝部115が形成されている。
【0062】
従って、連結シャフト96の他端側折曲部をメカ側アーム97の溝部115内に嵌入することによって、メカ側アーム97は、このメカ側アーム97の中心角側の端縁部の外側面に立設されるボス112の軸心と連結シャフト96の軸心とがほぼ一直線状になるように、連結シャフト96の他端側に取り付けられる。
【0063】
そして、後述のようにプリテンショナユニット7がハウジングユニット5に取り付けられた場合には、メカ側アーム97のボス112は、側壁部12に形成される貫通孔105に回転可能に嵌入される(図8参照)。また、メカ側アーム97のボス97Aは、側壁部12に形成された切欠部138に挿入されて、側壁部12の内側に回動可能に取り付けられる。
【0064】
[プリテンショナ機構]
続いて、プリテンショナ機構17を構成するパイプシリンダ42の構成及び取り付けについて図3乃至図6に基づいて説明する。
図3乃至図6に示すように、パイプシリンダ42は、スチールパイプ材等で略L字状に形成されている。そして、その一端側(図4中、下側折曲部分)は、略円筒状の収納部42Aが形成されて、ガス発生部材41を収納するように構成されている。このガス発生部材41は、火薬を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号により該火薬を着火させてガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
【0065】
また、パイプシリンダ42の他端側(図4中、上側折曲部分)は、断面略長方形のピストン収納部42Bが形成されて、ピニオンギヤ体33に対向する部分に切欠部117が形成され、ベースプレート45上に配設した場合に、該切欠部117内にピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55が填り込むように構成されている。また、ピストン収納部42Bの上端部は、ベースプレート45とカバープレート53に当接される両側面部の幅方向略中央部から斜め外側方向へ傾斜するように切り欠かれた開口部118が設けられている。
【0066】
また、ピストン収納部42Bの両側面部には、上端部に形成された開口部118の外側方向へ傾斜する傾斜部118Aの下側に、プリテンショナユニット7をハウジングユニット5に取り付けると共に、ピストン44の抜け止めとして機能するストッパーピン16を挿通可能な相対向する一対の貫通孔121が形成されている。
【0067】
また、シールプレート43は、ゴム材等でピストン収納部42Bの上端側から挿入可能な略長方形の平板状に形成され、ピストン44のガスを受圧するガス受圧側面と略同一形状である。また、シールプレート43は、ピストン44のガス受圧側面に形成された所定深さ(例えば、約4mmの深さである。)の断面円形の取付凹部122に嵌入される略円柱状の取付凸部123が立設されている。この取付凸部123の中央部には、軸心に沿ってシールプレート43のガスを受圧する受圧側面から連通するガス抜き孔124が形成されている。
【0068】
また、ピストン44は、スチール材等で形成されて、ピストン収納部42Bの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン44のピニオンギヤ体33側の側面には、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55に噛合するラック44Aが形成されている。また、ラック44Aの先端部(図6中、上端部)の背面は、ストッパーピン16に当接可能な段差部126が形成されている。
【0069】
また、ピストン44のラック44Aに対して両側面部には、所定深さ(例えば、深さ約2mmである。)の一対の溝部127が、段差部126の上端縁からラック44Aの下端の刃先に対向する位置まで、ピストン44の長手方向に沿って互いに対向するように形成されている。また、一対の溝部127の下端部には、ピストン44の長手方向に沿って長い断面矩形状の貫通孔128が形成され、両側面部が連通されている。また、ピストン44の受圧側面に形成された取付凹部122と貫通孔128とは、ピストン44の長手方向に沿って形成された細径の連通孔131によって連通されている。
【0070】
そして、シールプレート43の取付凸部123をピストン44の受圧側面に形成された取付凹部122に嵌入後、シールプレート43を奥側にして、ピストン収納部42Bの上端側から奥に圧入する。また、シールプレート43のガス抜き孔124は、ピストン44の連通孔131を介して貫通孔128に連通している。
【0071】
従って、この状態で、ガス発生部材41で発生したガスの圧力によって、シールプレート43が押圧されて、ピストン44がピストン収納部42Bの上端側開口部118へ移動する。また、その後、ウエビング3が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ体33の逆回転によってピストン44が下方に下がる際に、シールプレート43のガス抜き孔124、ピストン44の連通孔131及び貫通孔128を介してパイプシリンダ42内のガスが抜け、スムーズにピストン44が下がる。
【0072】
また、図6に示すように、ガス発生部材41が作動するまでの通常状態では、ピストン44はピストン収納部42Bの奥側に退避して、ラック44Aの先端がピニオンギヤ部55に非噛合状態となるように位置している。そして、このように構成されたピストン収納部42Bの切欠部117の内側に、ベースブロック体46のギヤ収納部81の両側端縁部から外側方向に突出する各突出部109を嵌入させつつ、ベースプレート45上にパイプシリンダ42を配置する。
【0073】
またこの時、ベースブロック体46のギヤ収納部81に立設された断面略U字状のラック止めピン133が、ラック44Aの上端のギヤ溝に挿入され、ピストン44の上下方向の移動が規制される。また、ピストン44の先端部は、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55の近傍に位置して、非噛合状態になっている。
【0074】
これにより、パイプシリンダ42のピストン収納部42Bは、ベースブロック体46の側面部に立設される断面略三角形の各リブ134と、ベースプレート45の側端縁部のピニオンギヤ体33に対向する部分から略直角に延出された背当て部135によって、その両側面部が支持される。
【0075】
この背当て部135は、図4及び図6に示すように、ピストン収納部42Bとほぼ同じ高さになるように延出されており、延出方向端縁部の略中央部より上端側には、所定幅(例えば、幅約8mmである。)の切欠部136が所定深さ(例えば、約4mmである。)形成されている。また、背当て部135の下端縁部は、略直角外側方向に所定長さ(例えば、約4mmである。)延出され、この背当て部135の下側角部には、カバープレート53の厚さにほぼ高さの段差部137が形成されている。
【0076】
また、カバープレート53のベースプレート45の背当て部135に対向する側端部には、該背当て部135の先端部が挿通可能な各貫通孔141、142が形成されている。また、各貫通孔141、142の背当て部135の外側面に対向する側縁部は、内側方向(図4中、左側方向)へ所定高さ(例えば、約3mmの高さである。)窪んでいる。これにより、背当て部135の延出方向の各端縁部が各貫通孔141、142に挿入された場合には、各貫通孔141、142の内側面が、背当て部135の外側面に確実に当接するように構成されている。
【0077】
そして、ベースプレート45上にベースブロック体46、強制ロック機構51やパイプシリンダ42等が配置された状態で、このベースブロック体46のカバープレート53側の側面部に突出する各位置決めボス143を、カバープレート53の各位置決孔144に嵌入して、ベースブロック体46、強制ロック機構51やパイプシリンダ42等の上側にカバープレート53を配置する。また同時に、ピニオンギヤ体33の円筒状の支持部56を、カバープレート53の略中央部に形成された支持孔145に嵌入する。
【0078】
また、ベースプレート45の側端縁部から略直角に延出された背当て部135を、カバープレート53の背当て部135に対向する側端縁部に形成された各貫通孔141、142に挿通する。そして、このベースブロック体46の外側側面部からカバープレート53側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片46Cと、このベースブロック体46の上側側面部からカバープレート53側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片46Dとをそれぞれカバープレート53の側端部に係止する。
【0079】
そして、カバープレート53のベースブロック体46の貫通孔89に対向する位置に形成された貫通孔157にネジ88を挿通して、ベースプレート45のバーリング加工によって形成されたネジ孔158に締結する。
【0080】
これにより、カバープレート53がベースブロック体46に配設固定され、パイプシリンダ42がカバープレート53とベースプレート45との間に取り付けられる。また、ピニオンギヤ体33の端部に形成された支持部56が、カバープレート53の支持孔145によって回転可能に支持される。従って、ピニオンギヤ体33の両端部に形成されたボス部58の基端部と支持部56とが、それぞれベースプレート45の貫通孔76とカバープレート53の支持孔145とによって回転可能に支持される。
【0081】
また、パイプシリンダ42の各貫通孔121と、カバープレート53の各貫通孔121に対向する位置に形成された貫通孔147と、ベースプレート45の各貫通孔121に対向する位置に形成された貫通孔148とが同軸上に配置される。これにより、図2に示すように、スチール材等で形成されたストッパーピン16をハウジング11のピン止め部14B側からベースプレート45の貫通孔148、パイプシリンダ42の各貫通孔121及びカバープレート53の貫通孔147へ挿通して、プッシュナット18によって固定することができる。
【0082】
従って、パイプシリンダ42は、カバープレート53とベースプレート45とによって挟持されると共に、ベースブロック体46と背当て部135とによって両側面部が挟持される。また、ガス発生部材41で発生したガスの圧力によって、シールプレート43が押圧されて、ピストン44がピストン収納部42Bの上端側開口部(図6中、上端部)へ移動した場合には、ピストン44の段差部126が、各貫通孔121に挿通されたストッパーピン16に当接して、停止させることができる。
【0083】
また、ピストン収納部42Bの上端側の開口部118は、カバープレート53の上端縁部から該ピストン収納部42Bの約半分の幅で略直角にベースプレート45側へ延出された第1延出部151によって、該開口部118のピストン収納部42Bの軸方向に対して垂直な平面部118Bが覆われる。また、この第1延出部151の開口部118の傾斜部118A側の側端縁部から斜め外側方向へ傾斜するように延出された第2延出部152によって、該傾斜部118Aが覆われる。また、第1延出部151のベースブロック体46側の端縁部は、直角下側方向へ所定長さ(例えば、長さ約4mmである。)延出されている。
【0084】
また、ベースプレート45の上端縁部から、カバープレート53の第2延出部152の延出方向外側端縁部に対向するように、所定幅(例えば、幅約3mmである。)で折り曲げ延出された押さえ部155が設けられている。この押さえ部155は、ベースプレート45の上端縁部の貫通孔148に対向する位置から、第2延出部152に対して平行になるように所定幅(例えば、幅約3mmである。)で、所定長さ(例えば、約8mmである。)延出されると共に、略中央部から該第2延出部152の延出方向外側端縁部に対向するように直角に折り曲げられている。
【0085】
これにより、ピストン収納部42Bの上端側の開口部118は、第1延出部151及び第2延出部152によって覆われる。また、カバープレート53の第2延出部152の延出方向外側端縁部は、ベースプレート45の押さえ部155の側面部に対向する。
【0086】
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図7及び図8に基づいて説明する。
図7はハウジングユニット5の分解斜視図である。図8はシートベルト用リトラクタ1のロックユニット9を取り除いた状態の側面図である。
図7に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット161と、プロテクタ163と、パウル37と、パウルリベット165とから構成されている。
【0087】
また、ハウジング11は、スチール材等で平面視略コの字状に形成されて、奥側の側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26の先端部が挿入される貫通孔166が形成されている。また、この貫通孔166の斜め下側のパウル37に対向する部分には、切欠部113が形成され、パウル37がスムーズに回動するようになっている。また、この切欠部113の横側にパウル37を回転可能に取り付けるための貫通孔168が形成されている。
【0088】
また、切欠部113のパウル37が当接する部分には、貫通孔168の同心円上に半円形状の案内部169が形成されている。一方、パウル37の案内部169に当接して摺動する部分は、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部169の側縁と同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部37Bが側壁部12の厚さ寸法より若干高く形成されている。また、図8に示すように、パウル37の外側の側面の先端部には、ロックユニット9を構成するクラッチ(不図示)のガイド溝(不図示)に挿入される案内ピン37Aが立設されている。
【0089】
また、図7に示すように、側壁部12の両側端縁部から相対向する各側板部13、14が延出されている。また、各側板部13、14の中央部には、それぞれ開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の取り付け作業の効率化等が図られている。また、各側板部13、14の上下端縁部には、所定幅で略直角内側方向に延出された各ネジ止め部13A、13B、14Aとピン止め部14Bが形成されている。
【0090】
また、各ネジ止め部13A、13B、14Aには、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔171がバーリングによって形成され、ネジ止め部14Bには、ストッパーピン16が挿通される貫通孔172が形成されている。従って、図2及び図4、図5に示すように、各ネジ15は、カバープレート53の各貫通孔185からベースプレート45の各貫通孔186に挿通されて、各ネジ孔171にネジ止めされる。
【0091】
また、側板部13の上端縁部に各リベット162によって取り付けられるブラケット161は、スチール材等で形成されて、側板部13の上端縁部から略直角内側方向に延出された延出部にウエビング3が引き出される横長の貫通孔173が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ163が嵌め込まれている。また、側板部13の下端部には、車両の締結片175(図8参照)に取り付ける際に、ボルト176(図8参照)が挿通されるボルト挿通孔178が形成されている。
【0092】
また、図7及び図8に示すように、スチール材等で形成されたパウル37は、段差部37Bが案内部169に当接されて、側壁部12の外側から貫通孔168に回転可能に挿通されるパウルリベット165によって、回動可能に固定されている。これにより、パウル37の側面とラチェットギヤ26の側面とが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように位置される。
【0093】
また、図8に示すように、プリテンショナユニット7を各ネジ15とストッパーピン16及びプッシュナット18によってハウジングユニット5に取り付けた場合には、連結シャフト96の他端側折曲部に取り付けられたメカ側アーム97のボス112が、側壁部12に形成された貫通孔111に回動可能に嵌入されて、切欠部113内に位置するパウル37の下側の側面部の近傍に位置している。また、メカ側アーム97の外側の側面に立設されたボス97Aが切欠部113に挿入されている。また、パウル37は、通常時には、メカ側アーム97に近接した状態で、且つ、ラチェットギヤ26に係合しないようになっている。
【0094】
また、側壁部12に取り付けられたパウル37及びメカ側アーム97の下方には、該側壁部12の下端面から所定高さ上側の位置(例えば、約10mm上側の位置である。)から所定幅(例えば、幅約10mmである。)で、このパウル37及びメカ側アーム97に対向するように内側方向(図7中、手前側方向である。)へ略直角に折り曲げられたアーム保護用折曲部180が設けられている。つまり、側壁部12に取り付けられたパウル37及びメカ側アーム97の下方には、所定幅でメカ側アーム97に対向するように略直角に所定長さ(例えば、長さ約10mmである。)内側方向へ延出されたアーム保護用折曲部180が設けられている。
【0095】
また、側壁部13の連結シャフト96に対向する部分には、該連結シャフト96のほぼ全長に渡って対向する横長の開口部181が形成され、この開口部181の下端縁部から内側方向へ略直角に折り曲げられたシャフト保護用折曲部182が設けられている。また、シャフト保護用折曲部182のガイドドラム21側の端縁部は、側壁部13に対向する連結シャフト96よりも内側になるように延出されている。また、このシャフト保護用折曲部182の下方には、ボルト挿通孔178が形成され、このボルト挿通孔178にボルト176が挿通されてナット177によって車両の締結片175に固着される。
【0096】
[強制ロック機構及びパウルの動作説明]
次に、車両衝突時等において、プリテンショナ機構17のガス発生部材41の作動によって起動する強制ロック機構51及びパウル37の動作について図9及び図10に基づいて説明する。図9はプリテンショナ機構17のガス発生部材41の作動によってピストン44が移動して、回転レバー93の下端部がギヤ側アーム94の先端部から外れた状態を示す説明図である。図10は図9に対応するパウル37の動作を示す説明図である。
【0097】
図9に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナ機構17のガス発生部材41が作動した場合には、パイプシリンダ42のピストン収納部42B内のピストン44が図6に示す通常状態から、ラック止めピン133を剪断して上方に(矢印X1方向である。)に移動し、ピニオンギヤ体33を正面視反時計方向(矢印X2方向である。)へ回転させる。また、回転レバー93の上端部は、ブロック付勢バネ92Aによって押されたプッシュブロック92によって更に押されるため、この回転レバー93の下端部が、ギヤ側アーム94の先端部から外れる。
【0098】
そのため、ギヤ側アーム94は、付勢バネ95によって外側方向に押圧されて、正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転する。尚、プッシュブロック92は、ブロック付勢バネ92Aによって外側方向へ押圧され、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55と離間した状態で維持されると共に、回転レバー93の上端部を凹部91の内壁面に当接させた状態に維持する。
【0099】
また、図10に示すように、回転レバー93の下端部が、ギヤ側アーム94の先端部から外れた場合には、このギヤ側アーム94が、正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転するため、該ギヤ側アーム94の溝部105内に一端側折曲部が挿入されている連結シャフト96も、軸心回りに正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転する。
【0100】
このため、メカ側アーム97は、連結シャフト96の他端側折曲部が溝部115に挿入されているため、ギヤ側アーム94の回動に伴って正面視反時計方向(矢印X8方向である。)に回動して、パウル37をラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合させる。尚、パウル37とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aとは、巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止し、ウエビング3巻き取り方向への回転を許容するように、噛み合う形状とされている。
【0101】
従って、パウル37とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aとが係合した場合には、巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止するロック動作が行われると共に、ウエビング3巻き取り方向への回転が許容される。尚、クラッチ機構48とピニオンギヤ体33が一体となって回転を開始する以前に、パウル37は巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止しうる状態になる。
【0102】
また、ガス発生部材41から発生したガスは、シールプレート43の受圧側面を押圧すると共に、シールプレート43のガス抜き孔124からピストン44の受圧側面に形成された取付凹部122と貫通孔128とを連通する連通孔131を介して各矢印X4〜X7の方向へ流出する。
【0103】
そして、ピストン収納部42Bの開口部118を覆うカバープレート53の第1延出部151及び第2延出部152は、ガスの圧力によって外側方向へ押圧されるが、該第2延出部152の延出方向外側端縁部は、ベースプレート45の押さえ部155に当接して押さえられるため、ガスは開口部118と該第1延出部151及び第2延出部152との隙間から排出される。
【0104】
また、プリテンショナ機構17の動作後、ピニオンギヤ体33の回転が停止した後は、図9に示すように、回転レバー93の下端部が、ギヤ側アーム94の先端部から外れた状態が維持される。即ち、プリテンショナ機構17の動作後においては、パウル37とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aとの係合が維持される。このため、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、ウエビング3引き出し方向へ回転するのが抑止される。
【0105】
[緊急ロック機構]
本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、車両衝突時等にプリテンショナ機構17が作動して巻取ドラムユニット6がウエビング3の引き出し方向へ回転しないようにロックする強制ロック機構51のほかに、ロックユニット9が作動して巻取ドラムユニット6の回転をロックする2種類のロック機構を備えている。つまり、ウエビングの急な引き出しに対して作動する「ウエビング感応式ロック機構」と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する「車体感応式ロック機構」である。
【0106】
以下の説明では、プリテンショナ機構17が作動してロックする強制ロック機構51と明確に区別するために、ロックユニット9が作動して巻取ドラムユニット6の回転をロックする2種類のロック機構を「緊急ロック機構」と称して、以下に説明を行う。
【0107】
[緊急ロック機構の概略構成]
緊急ロック機構を構成するロックユニット9の概略構成について図11乃至図14に基づいて説明する。図11はロックユニット9をメカニズムカバー側から見た分解斜視図である。図12はロックユニットをメカニズムブロック側から見た分解斜視図である。図13はロックユニットのロックアームを含む組立断面図である。図14はロックユニットの通常時の状態を示す一部切り欠き断面図。
【0108】
図11乃至図14に示すように、ロックユニット9は、ウエビング感応式ロック機構と車体感応式ロック機構との動作を行うユニットである。ロックユニット9は、メカニズムブロック201、クラッチ202、パイロットアーム203、リターンスプリング204、ビークルセンサ205、ロッキングギヤ206、センサスプリング207、ロックアーム208、イナーシャマス209、およびメカニズムカバー210で構成されている。
【0109】
メカニズムブロック201は、中央部に倒立した略瓢箪形状の開口部212が開設されている。この開口部212の大径部は、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aの外径よりも大きく、且つ、クラッチ202の外径よりも小さくなるように形成されている。これにより、開口部212の大径部において、ラチェットギヤ26がクラッチ202の背面部に近接して対向配置され、ラチェットギヤ26の軸部28(図8参照)が、クラッチ202の中央部に形成された貫通孔213に挿通される。
【0110】
また、この開口部212の小径部には、ハウジング11にパウルリベット165により回動可能に軸支されたパウル37が配置され、開口部212の大径部と小径部との接続部分はパウル37の回動可能領域を提供する。また、この開口部212の大径部と小径部との接続部分の横側には、ロックユニット9をハウジング11に取り付けた際に、パウルリベット165の頭部が遊嵌される貫通孔214が形成されている。そして、後述のように、パウル37がクラッチ202によって大径部側へ回動されることにより、該パウル37はラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する(図18、図22参照)。
【0111】
また、メカニズムブロック201において、開口部212の小径部が位置する下端側角部に対向する他方の下端側角部(図11中、左下角部である。)には、断面略四角形の凹形状に形成されたセンサ載置部215が設けられ、ビークルセンサ205が配設されている。このビークルセンサ205は、断面矩形状の容器形状に形成されたケース216と、ケース216の底面部に形成された略皿状の載置部に転動可能に配置された金属製の球体217と、球体217の上側に載置されてパウル37に対して反対側の端縁部(図14中、左端縁部である。)を上下方向に揺動可能に支持されたビークルセンサレバー218とから構成されている。
【0112】
そして、ビークルセンサ205は、ケース216の奥側両端縁部に突設された各係合爪219が、センサ載置部215の奥側両端縁部に形成された一対の係止孔220(図12中には、一方の係止孔220が示されている。)に嵌入されて係止され、当該センサ載置部215に取り付けられる。
【0113】
また、略円板状のクラッチ202の外周縁には4箇所に各リブ222が半径方向外側へ突出するように同心円上に形成されている。また、メカニズムブロック201の側壁部には、各リブ222に対向する上端部から略直角内側方向へ所定幅で延出された4個の当接片223が設けられている。そして、クラッチ202の各リブ222を、メカニズムブロック201の各当接片223の下側へ嵌め込むことにより、当該クラッチ202は、回動可能にメカニズムブロック201に取り付けられる。
【0114】
また、メカニズムブロック201の側壁部は、メカニズムブロック201の上端部において、所定幅で切り欠かれて、この切欠部の両端部から略直角上側方向へ延出されている。そして、メカニズムブロック201の当該切欠部のウエビング巻取方向側(図11、図13、図14中、左側である。)の側壁には、リターンスプリング204の一端側が嵌め込まれる突状保持部225が内側方向へ突設されている。
【0115】
また、クラッチ202の上端部には、メカニズムブロック201の当該切欠部のウエビング引出方向側(図11、図13、図14中、右側である。)の側壁に対向するように、断面コの字形のバネ受け用リブ226が外側方向へ突設されている。また、このバネ受け用リブ226には、リターンスプリング204の他端側が嵌め込まれる突状保持部227が内側方向へ突設されている。従って、図13及び図14に示すように、各突状保持部225、227にリターンスプリング204の両端を嵌め込むことによって、クラッチ202はメカニズムブロック201に対してウエビング巻取方向側へ回動するように所定荷重で付勢される。
【0116】
また、クラッチ202のメカニズムカバー210側には、貫通孔213に対して同軸に円環状のリブ部228が立設され、このリブ部228の内周面には、後述のようにロックアーム208の係合爪231が係合するクラッチギヤ229が形成されている(図16参照)。このクラッチギヤ229は、後述のようにロッキングギヤ206が、貫通孔231の軸心に対してウエビング引出方向への回転した時のみ、ロックアーム208の係合爪231と係合するように形成されている(図16参照)。
【0117】
また、クラッチ202の円環状のリブ部228の下方には、左右方向略中央部に、パイロットアーム203の中央部に形成された貫通孔232に嵌挿される取付ボス233が立設され、当該パイロットアーム203が回動可能に軸支される。このパイロットアーム203は、図14に示すように、ビークルセンサレバー218に通常時は当接しており、球体217の移動によってビークルセンサレバー218によりロッキングギヤ206側へ押し上げられ、ロッキングギヤ歯206Aに係合可能に構成されている。
【0118】
また、クラッチ202の取付ボス233に対して反対側のメカニズムブロック201側の面には、パウル37の案内ピン37Aが遊嵌されるガイド溝235が形成されている。このガイド溝235は、ウエビング巻取方向斜め上側(図14中、左斜め上方向である。)へ貫通孔213の軸心に近づくように形成されている。これにより、後述のようにクラッチ202がウエビング引出方向へ回動された場合には、案内ピン37Aがガイド溝235に沿って移動され、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aへ近づくように回動される(図17参照)。
【0119】
また、ロッキングギヤ206は、クラッチ202の円環状のリブ部228の外径よりも大きい直径の円板状の底面部236の全周からクラッチ202側へ円環状に立設されて、外周部にパイロットアーム203に係合するロッキングギヤ歯206Aが形成されている。このロッキングギヤ歯206Aは、ロッキングギヤ206がウエビング引出方向へ回転した時のみ、パイロットアーム203と係合するように形成されている(図20参照)。
【0120】
また、ロッキングギヤ206の底面部236の中央部には、円筒状の固定ボス237が前面側から背面側に貫通するように立設されており、この固定ボス237の内周面には、ラチェットギヤ26の軸部28の外周面に形成されたスプライン28A(図8参照)が嵌入されるスプライン溝が形成されている。そして、クラッチ202の貫通孔231に遊嵌された軸部28が、ロッキングギヤ206の固定ボス237に嵌入されて、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26とロッキングギヤ206とが同軸に相対回転不能に圧入固定される。
【0121】
また、ロッキングギヤ206の底面部236のクラッチ202側の面には、固定ボス237に隣接して円筒状の支持ボス238が、ロッキングギヤ歯206Aよりも低い高さで立設されている。そして、固定ボス237を囲むように略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム208は、長手方向略中央部の固定ボス237側の端縁部に立設されたピボット軸239が、この支持ボス238に回転可能に嵌挿され、回動可能に軸支される。
【0122】
また、ロックアーム208は、外形にほぼ相似形でロッキングギヤ206の底面部236側に開口する溝部240が、長手方向に沿って形成されている。そして、この溝部240内には、略弓形に形成された鉄やステンレス等の金属製で略平板状のイナーシャマス209が嵌め込まれて取り付けられる。これにより、イナーシャマス209が装着されたロックアーム208は、ウエビング3の急激な引き出しに対して慣性遅れを発生させる慣性体として機能する。
【0123】
また、ロックアーム208は、ピボット軸239の横側に断面逆L字形の弾性係止片241が、ロッキングギヤ206の底面部236側へ立設されている。この弾性係止片241は、ロッキングギヤ206の支持ボス238の基端部に形成された略扇形で段差部を有する窓部242(図11、図19参照)に挿入され、支持ボス238の軸心回りに回動可能に弾性的に係止される。
【0124】
また、図13及び図14に示すように、ロッキングギヤ206は、固定ボス237の外周面から半径方向外側へ延出されたリブ部に、センサスプリング207の一端側が嵌め込まれるバネ支持ピン243が、該固定ボス237の軸心に対して直交するウエビング引出方向へ立設されている。また、ロックアーム208のバネ支持ピン243に対向する側壁には、センサスプリング207の他端側が嵌め込まれるバネ支持ピン244が立設されている。バネ支持ピン243は、ギヤ側バネ支持ピンの一例として機能する。バネ支持ピン244は、慣性体側バネ支持ピンの一例として機能する。
【0125】
ロッキングギヤ206の底面部236に平行に立設されたバネ支持ピン243は、細長の略円錐台状に形成されている。また、ロックアーム208のバネ支持ピン243に対向する側壁に立設されたバネ支持ピン244は、平面視コの字形に所定深さ(例えば、深さ約2mm〜3mmである。)窪んだ凹部の底面部に立設され、ロックアーム208の長手方向両側にセンサスプリング207を遊挿するための隙間が形成されている。また、ロックアーム208のバネ支持ピン244は、先端部の外周面が、ピボット軸239側から、このピボット軸239に対して反対側へ先端部に向かって斜めに削られた先細り形状に形成されている。
【0126】
つまり、ロックアーム208のバネ支持ピン244は、後述のように、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて、クラッチギヤ229に係合した場合に、先端側の外周面がセンサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリング207の撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されている(図16参照)。
【0127】
また、ロックアーム208のバネ支持ピン244は、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて、クラッチギヤ229に係合した場合に、先端部がロッキングギヤ206のバネ支持ピン243の先端部近傍位置に位置する高さに立設されている(図16参照)。
【0128】
従って、図13及び図14に示すように、各バネ支持ピン243、244にセンサースプリング207の両端を嵌め込むことによって、ロックアーム208は固定ボス237の軸心に対してウエビング引出方向側へ(図13中、矢印246方向である)回動するように所定荷重で付勢され、係合爪231側の端縁部が、固定ボス237の外周部に突設されたストッパ245に当接されている。
【0129】
一方、後述のようにロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合には、係合爪231の外側端縁部が、ロッキングギヤ206の底面部236に立設された断面紡錘形の回り止め247に当接可能に構成されている(図16参照)。また、ロックアーム208のバネ支持ピン244の先端は、センサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側のほぼ中央に位置すると共に、先端部のピボット軸239側の外周面が、略細長S字状に撓み変形したセンサスプリング207の内側にほぼ沿っている。
【0130】
また、ロックユニット9は、合成樹脂により形成されたメカニズムカバー210でカバーされる。このメカニズムカバー210は、ハウジング11側が開口される略箱体状のカバーケースであり、上側両角部と下端縁部中央位置の3箇所に、ナイラッチ8Aと同様な構成を有するナイラッチ249が設けられている。また、メカニズムカバー210のハウジング11側の中央部には、ロッキングギヤ206の底面部236から突出する固定ボス237が摺動回転可能に嵌入される円筒状の支持ボス251が立設されている。
【0131】
ロックユニット9は、先ず、ロッキングギヤ206に、イナーシャマス209が装着されたロックアーム208とセンサスプリング207を取り付ける。そして、メカニズムブロック201に、リターンスプリング204、クラッチ202、パイロットアーム203、ビークルセンサ205、ロッキングギヤ206を配設する。その後、メカニズムカバー210の支持ボス251に、ロッキングギヤ206の固定ボス237を嵌入すると共に、各ナイラッチ249をメカニズムブロック201の各貫通孔252に挿入することによって組み立てられる。
【0132】
そして、ロックユニット9は、メカニズムブロック201の開口部212に遊嵌した軸部28を、クラッチ202の貫通孔231を介してロッキングギヤ206の固定ボス237に嵌入した後、メカニズムカバー210の各ナイラッチ249をハウジング11の側壁部12の3箇所に設けられた各貫通孔253(図8参照)に押し込むことによって、当該側壁部12の外側に固定される。これにより、巻取ドラムユニット6の軸部28が、ロックユニット9のロックギヤの固定ボス237を介して、ハウジング11の側壁部12の外側に取り付けられたメカニズムカバー210の支持ボス251によって回転可能に支持される。
【0133】
尚、ロックユニット9は、イナーシャマス209、リターンスプリング204、センサスプリング207、およびビークルセンサ205の球体217を除いた部材は樹脂部材で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
【0134】
次に、「緊急ロック機構」の動作について図15乃至図22に基づいて説明する。各図においてウエビング3の引き出し方向は矢印255方向である。また、各図において、反時計方向の回転方向がウエビング3が引き出される時の巻取ドラムユニット6の回転方向(ウエビング引出方向)である。以下の説明では、ロック動作に係る動作を中心に説明し、その他の部分については適宜、記載を省略する。
【0135】
また、動作の説明上、必要に応じて図面の一部を切り欠いて表示している。「ウエビング感応式ロック機構」および「車体感応式ロック機構」では、共にパウル37の動作は共通である。このため、図15乃至図22において、パウル37とラチェットギヤ26との関係を示す部分については、その一部を切り欠いた状態として表示している。
【0136】
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
先ず、「ウエビング感応式ロック機構」の動作について図15乃至図18に基づいて説明する。図15乃至図18は、「ウエビング感応式ロック機構」の動作を説明する説明図である。「ウエビング感応式ロック機構」では、パウル37とラチェットギヤ26との関係を示す部分に加えて、ロックアーム208とクラッチギヤ229との関係を示す部分、及びセンサスプリング207の動きを示す部分を切り欠いて示している。
【0137】
図15及び図16に示すように、イナーシャマス209が装着されたロックアーム208は、ロッキングギヤ206の支持ボス238によってピボット軸239が回動自在に支持されているため、ウエビング3の引出加速度が所定加速度(例えば、約1.5Gである。尚、1G≒9.8m/sとする。)を超えた場合には、ロッキングギヤ206のウエビング引出方向(矢印256方向である。)への回転に対してロックアーム208に慣性遅れが生じる。
【0138】
このため、ストッパ245に当接していたロックアーム208は、センサスプリング207の付勢力に抗して初期位置を維持するため、当該ロッキングギヤ206に対してピボット軸239を中心に時計方向に回動され、回り止め247に当接するまで回動される。そのため、ロックアーム208の係合爪231は、ロッキングギヤ206の回転軸に対して半径方向外側へ回動されて、クラッチ202のクラッチギヤ229に係合する。
【0139】
そして、図16及び図17に示すように、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて継続された場合には、ロッキングギヤ206が更にウエビング引出方向へ回転されるため、ロックアーム208の係合爪231は、クラッチギヤ229に係合した状態で、回り止め247によってウエビング引出方向(矢印256方向である。)へ回動される。従って、クラッチ202は、ロックアーム208によってクラッチギヤ229が回動されるため、リターンスプリング204の付勢力に抗して、ロッキングギヤ206の固定ボス237の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
【0140】
これにより、クラッチ202のウエビング引出方向への回動に伴って、パウル37の案内ピン37Aは、当該クラッチ202のガイド溝235によって案内されるため、当該パウル37はラチェットギヤ26側へ回動される(矢印257方向である。)。
【0141】
そして、図18に示すように、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて更に継続された場合には、クラッチ202はリターンスプリング204の付勢力に抗して、ウエビング引出方向へ更に回動される。このため、パウル37の案内ピン37Aは、当該クラッチ202のガイド溝235に案内されて、当該パウル37はラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合される。これにより、ガイドドラム21、つまり、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
【0142】
その後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向(矢印256に対して反対方向である。)に回転される。これにより、圧縮されたリターンスプリング204の付勢力により、クラッチ202はウエビング巻取方向(図18中、時計方向である。)へ回動される。
【0143】
従って、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて通常時に戻った場合には、クラッチ202のウエビング巻取方向への回動に伴って、パウル37の案内ピン37Aは、当該クラッチ202のガイド溝235を逆方向に案内されて、ラチェットギヤ26から離間し、パウル37による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除される(図15参照)。
【0144】
また、ロックアーム208は、センサスプリング207の付勢力によってウエビング引出方向(図18中、反時計方向である。)へ回動されて、ストッパ245に当接され、当該ロックアーム208の係合爪231とクラッチギヤ229との係合が解除される(図15参照)。
【0145】
[車体感応式ロック機構の動作説明]
次に、「車体感応式ロック機構」の動作について図19乃至図22に基づいて説明する。図19乃至図22は、「車体感応式ロック機構」の動作を説明する説明図である。「車体感応式ロック機構」では、パウル37とラチェットギヤ26との関係を示す部分に加えて、ビークルセンサ205のケース216の部分を切り欠いて示している。
【0146】
図19及び図20に示すように、ビークルセンサ205の球体217は、ケース216の皿状の底面部に載置されているため、車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定加速度(例えば、約1.5Gである。)を超えた場合には、ケース216の底面部を転動してビークルセンサレバー218を押し上げる。
【0147】
このため、ビークルセンサレバー218上に一端部が当接されているパイロットアーム203は、クラッチ202の取付ボス233に回動自在に取り付けられているため、当該ビークルセンサレバー218によって押し上げられて、取付ボス233の軸心回りに時計方向(矢印258方向である。)に回動される。そして、当該パイロットアーム203のビークルセンサ205側の先端部は、ロッキングギヤ206の外周部に形成されたロッキングギヤ歯206Aに係合する。
【0148】
そして、図20及び図21に示すように、パイロットアーム203がロッキングギヤ206のロッキングギヤ歯206Aに係合した状態で、ウエビング3が引き出された場合には、当該ロッキングギヤ206がウエビング引出方向(矢印260方向である。)へ回動される。また、ロッキングギヤ206のウエビング引出方向への回転は、パイロットアーム203及び取付ボス233を介してクラッチ202へ伝達される。
【0149】
このため、ロッキングギヤ206のウエビング引出方向への回転に伴って、当該クラッチ202は、リターンスプリング204の付勢力に抗して、ロッキングギヤ206の固定ボス237の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。これにより、クラッチ202のウエビング引出方向への回動に伴って、パウル37の案内ピン37Aは、当該クラッチ202のガイド溝235に案内されるため、当該パウル37はラチェットギヤ26側へ回動される(矢印261方向である。)。
【0150】
そして、図22に示すように、ウエビング3の引き出しが更に継続された場合には、クラッチ202はリターンスプリング204の付勢力に抗して、ウエビング引出方向へ更に回動される。このため、パウル37の案内ピン37Aは、当該クラッチ202のガイド溝235に案内されて、当該パウル37はラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合される。これにより、ガイドドラム21、つまり、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
【0151】
その後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向(矢印256に対して反対方向である。)に回転される。これにより、パイロットアーム203とロッキングギヤ歯206Aとの係合が解除されて、圧縮されたリターンスプリング204の付勢力により、クラッチ202はウエビング巻取方向(図22中、時計方向である。)へ回動される。
【0152】
従って、ビークルセンサ205の球体217が、ケース216の皿状の底面中央部に位置する通常時に戻った場合には、クラッチ202のウエビング巻取方向への回動に伴って、パウル37の案内ピン37Aは、当該クラッチ202のガイド溝235を逆方向に案内されて、ラチェットギヤ26から離間し、パウル37による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除される(図19参照)。また、パイロットアーム203は、自重によりビークルセンサ205側へ回動され、ビークルセンサレバー218に当接される。
【0153】
[ロックアームの感度誤差特性]
次に、上記のように構成されたロックユニット9において、ロッキングギヤ206をウエビング引出方向(図23中、矢印262方向である。つまり、図23中、反時計方向である。)へ所定角度ずつ(例えば、中心角度5度ずつである。)回転させて、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度誤差特性)を検討した一例について図23乃至図50に基づいて説明する。
【0154】
つまり、当該ロックアーム208をロッキングギヤ206の回転軸回りに所定角度ずつ公転させて、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度誤差特性)を検討した。尚、後述のようにイナーシャマス209が装着されたロックアーム208の重心位置を変更して、各重心位置において、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度誤差特性)を検討した。
【0155】
先ず、ロッキングギヤ206をウエビング引出方向へ所定角度ずつ回転させて、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度を測定する測定方法について図23に基づいて説明する。
図23に示すように、ロックアーム208は、センサスプリング207の付勢力によってウエビング引出方向(矢印262方向である。)へ回動されて、通常時は、係合爪231側端縁部がストッパ245に当接されている。また、ロッキングギヤ206の回転軸271とピボット軸239の回転軸272とを結んだ直線を基準直線273とする。
【0156】
そして、この基準直線273をピボット軸239の回転軸272回りにウエビング引出方向へ角度θだけ回転させた直線275を設定する。続いて、ロックアーム208の係合爪231側端縁部が、ストッパ245に当接されている状態において、当該ロックアーム208の重心位置GPを、この直線275上に、回転軸272からの半径RD(例えば、半径RDは0.0mm〜2.0mmである。)の位置に設定する。
【0157】
そして、ロッキングギヤ206をウエビング引出方向へ所定角度ずつ(例えば、中心角度5度ずつである。)回転させて、つまり、図23に示す状態を基準状態として、基準直線273を回転軸271回りにウエビング引出方向へ所定角度ずつ回転させて、各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合したウエビング3の引出加速度を測定する。
【0158】
[角度θ=55°の測定例]
次に、基準直線273をピボット軸239の回転軸272回りにウエビング引出方向(図24中、矢印263方向である。)へ角度θ=55°だけ回転させた直線276上にロックアーム208の重心位置GPを設定した場合の、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果の一例について図24乃至図44に基づいて説明する。
【0159】
尚、図23に示す状態を基準状態として、ロッキングギヤ206をウエビング引出方向(図23中、矢印262方向である。)へ中心角度60度ずつ回転させ、各回転位置において、ウエビング3の引出加速度を0.8Gから2.0Gまで0.1Gずつ変化させて、各引出加速度においてロックアーム208がクラッチギヤ229に係合したか否かを測定した。また、図25〜図44において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した場合を「○」で示し、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった場合を「×」で示している。
【0160】
先ず、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径1.2mmの座標位置Aに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図25に基づいて説明する。
【0161】
図25に示すように、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル281では、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」の場合には、基準状態のときに、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0162】
また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」の場合には、ロッキングギヤ206が基準状態と、ウエビング引出方向へ60°回転した状態とのときに、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。また、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206が基準状態と、ウエビング引出方向へ60°回転した状態、300°回転した状態のときに、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0163】
また、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」の場合には、ロッキングギヤ206が基準状態と、ウエビング引出方向へ60°回転した状態、120°回転した状態、及び、300°回転した状態のときに、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.1G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0164】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径1.2mmの座標位置Aに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.2G」〜「1.5G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.4G」である。
【0165】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径1.1mmの座標位置Bに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図26に基づいて説明する。
【0166】
図26に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル282では、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」〜「1.2G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.1G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0167】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径1.1mmの座標位置Bに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.2G」〜「1.5G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.4G」である。
【0168】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径1.0mmの座標位置Cに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図27に基づいて説明する。
【0169】
図27に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル283では、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」〜「1.2G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.1G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0170】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径1.0mmの座標位置Cに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.2G」〜「1.4G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.3G」である。
【0171】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.9mmの座標位置Dに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図28に基づいて説明する。
【0172】
図28に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル284では、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」〜「1.2G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.1G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0173】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.9mmの座標位置Dに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.2G」〜「1.4G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.3G」である。
【0174】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.8mmの座標位置Eに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図29に基づいて説明する。
【0175】
図29に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル285では、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0176】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.8mmの座標位置Eに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.4G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.2G」である。
【0177】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.7mmの座標位置Fに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図30に基づいて説明する。
【0178】
図30に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル286では、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0179】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.7mmの座標位置Fに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.4G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.2G」である。
【0180】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.6mmの座標位置Gに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図31に基づいて説明する。
【0181】
図31に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル287では、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0182】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.6mmの座標位置Gに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」のときにばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.1G」である。
【0183】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.55mmの座標位置Hに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図32に基づいて説明する。
【0184】
図32に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル288では、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0185】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.55mmの座標位置Hに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.4G」以上であればよい。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0G」である。
【0186】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.5mmの座標位置Iに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図33に基づいて説明する。
【0187】
図33に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル288では、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0188】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.5mmの座標位置Iに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.4G」以上であればよい。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0G」である。
【0189】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.4mmの座標位置Jに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図34に基づいて説明する。
【0190】
図34に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル290では、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0191】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.4mmの座標位置Jに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.4G」のときにばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.1G」である。
【0192】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.3mmの座標位置Kに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図35に基づいて説明する。
【0193】
図35に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル291では、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0194】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.3mmの座標位置Kに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.4G」のときにばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.1G」である。
【0195】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.2mmの座標位置Lに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図36に基づいて説明する。
【0196】
図36に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル292では、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」〜「1.4G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0197】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.2mmの座標位置Lに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.4G」〜「1.5G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.2G」である。
【0198】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.1mmの座標位置Mに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図37に基づいて説明する。
【0199】
図37に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル293では、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0200】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.2mmの座標位置Mに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.5G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.3G」である。
【0201】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272上の座標位置Nに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図38に基づいて説明する。
【0202】
図38に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル294では、ウエビング3の引出加速度が「1.7G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0203】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272上の座標位置Nに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.6G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.4G」である。
【0204】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.2mmの座標位置Oに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図39に基づいて説明する。
【0205】
図39に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル295では、ウエビング3の引出加速度が「1.7G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0206】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.2mmの座標位置Oに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.6G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.4G」である。
【0207】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.4mmの座標位置Pに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図40に基づいて説明する。
【0208】
図40に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル296では、ウエビング3の引出加速度が「1.8G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.7G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0209】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.4mmの座標位置Pに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.7G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.5G」である。
【0210】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.6mmの座標位置Qに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図41に基づいて説明する。
【0211】
図41に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル297では、ウエビング3の引出加速度が「1.8G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.7G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0212】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.6mmの座標位置Qに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.7G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.5G」である。
【0213】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.8mmの座標位置Rに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図42に基づいて説明する。
【0214】
図42に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル298では、ウエビング3の引出加速度が「1.9G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.8G」〜「1.2G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.1G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0215】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径0.8mmの座標位置Rに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.2G」〜「1.8G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.7G」である。
【0216】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径1.0mmの座標位置Sに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図43に基づいて説明する。
【0217】
図43に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル299では、ウエビング3の引出加速度が「2.0G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.9G」〜「1.2G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.1G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0218】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径1.0mmの座標位置Sに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.2G」〜「1.9G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.8G」である。
【0219】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径1.2mmの座標位置Tに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図44に基づいて説明する。
【0220】
図44に示すように、ロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル300では、ウエビング3の引出加速度が「2.0G」〜「1.1G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.0G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0221】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線276上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208に対して反対側の半径1.2mmの座標位置Tに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.1G」〜「2.0G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「1.0G」である。
【0222】
[角度θ=105°の測定例]
次に、基準直線273をピボット軸239の回転軸272回りにウエビング引出方向(図24中、矢印263方向である。)へ角度θ=105°だけ回転させた直線277上にロックアーム208の重心位置GPを設定した場合の、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果の一例について図24及び図45に基づいて説明する。尚、図45は、上記図25〜図44と同様に測定したロッキングギヤ206の作動結果を示している。
【0223】
図24に示すように、重心位置GPは、直線277上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.7mmの座標位置Uに設定した。そして、図23に示す状態を基準状態として、ロッキングギヤ206をウエビング引出方向(図23中、矢印262方向である。)へ中心角度60度ずつ回転させ、各回転位置において、ウエビング3の引出加速度を0.8Gから2.0Gまで0.1Gずつ変化させて、各引出加速度時にロックアーム208がクラッチギヤ229に係合したか否かを測定した。
【0224】
図45に示すように、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル301では、ウエビング3の引出加速度が「1.7G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」〜「1.4G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.3G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0225】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線277上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.7mmの座標位置Uに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.4G」〜「1.6G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.3G」である。
【0226】
[角度θ=120°の測定例]
次に、基準直線273をピボット軸239の回転軸272回りにウエビング引出方向(図24中、矢印263方向である。)へ角度θ=120°だけ回転させた直線278上にロックアーム208の重心位置GPを設定した場合の、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果の一例について図24及び図46に基づいて説明する。尚、図46は、上記図25〜図44と同様に測定したロッキングギヤ206の作動結果を示している。
【0227】
図24に示すように、重心位置GPは、直線278上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.1mmの座標位置Vに設定した。そして、図23に示す状態を基準状態として、ロッキングギヤ206をウエビング引出方向(図23中、矢印262方向である。)へ中心角度60度ずつ回転させ、各回転位置において、ウエビング3の引出加速度を0.8Gから2.0Gまで0.1Gずつ変化させて、各引出加速度時にロックアーム208がクラッチギヤ229に係合したか否かを測定した。
【0228】
図46に示すように、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル302では、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0229】
従って、図24に示すように、重心位置GPを直線278上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.1mmの座標位置Vに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.5G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.3G」である。
【0230】
[角度θ=5°の測定例]
次に、基準直線273をピボット軸239の回転軸272回りにウエビング引出方向(図24中、矢印263方向である。)へ角度θ=5°だけ回転させた直線279上にロックアーム208の重心位置GPを設定した場合の、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果の一例について図24、図47及び図48に基づいて説明する。
【0231】
尚、図47及び図48は、上記図25〜図44と同様に測定したロッキングギヤ206の作動結果を示している。また、図23に示す状態を基準状態として、ロッキングギヤ206をウエビング引出方向(図23中、矢印262方向である。)へ中心角度60度ずつ回転させ、各回転位置において、ウエビング3の引出加速度を0.8Gから2.0Gまで0.1Gずつ変化させて、各引出加速度時にロックアーム208がクラッチギヤ229に係合したか否かを測定した。
【0232】
先ず、図24に示すように、重心位置GPを直線279上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.7mmの座標位置Wに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図47に基づいて説明する。
【0233】
図47に示すように、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル303では、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.4G」〜「1.2G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.1G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0234】
従って、図47に示すように、重心位置GPを直線279上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.7mmの座標位置Wに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.2G」〜「1.4G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.3G」である。
【0235】
また、図24に示すように、重心位置GPを直線279上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.1mmの座標位置Xに設定した場合について、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を図48に基づいて説明する。
【0236】
図48に示すように、ウエビング3の引出加速度に対するロッキングギヤ206の作動結果を示す作動結果テーブル304では、ウエビング3の引出加速度が「1.6G」以上の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合した。また、ウエビング3の引出加速度が「1.5G」〜「1.3G」の場合には、ロッキングギヤ206の各回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合する状態と、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しない状態とが発生した。更に、ウエビング3の引出加速度が「1.2G」以下の場合には、ロッキングギヤ206の全ての回転位置において、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合しなかった。
【0237】
従って、図48に示すように、重心位置GPを直線279上のピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径0.1mmの座標位置Xに設定した場合には、ロッキングギヤ206の回転軸271、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置によって、ロックアーム208をクラッチギヤ229に係合させるために必要なウエビング3の引出加速度は、「1.3G」〜「1.5G」でばらついている。即ち、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.3G」である。
【0238】
[感度誤差の分布]
次に、上記のように基準直線273をピボット軸239の回転軸272回りにウエビング引出方向(図24中、矢印263方向である。)へ角度θ=0°から角度θ=360°まで5°ずつ回転させた各直線上において、ロックアーム208の重心位置GPをピボット軸239の回転軸272からロックアーム208側の半径RD=0.0mmから半径RD=2.0mmまで0.1mm間隔で設定した場合の、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)について図49に基づいて説明する。
【0239】
図49に示すように、感度誤差分布図311は、横軸に、基準直線273からロックアーム208の重心位置GPを設定した各直線までのウエビング引出方向への角度θを0°から360°まで設定している。また、感度誤差分布図311は、縦軸に、ピボット軸239の回転軸272、つまり、ロックアーム208の回転中心からロックアーム208の重心位置GPまでの半径RDを0.0mmから2.0mmまで設定している。
【0240】
そして、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)を0Gから1.5Gまで0.1G間隔で区分けして示している。従って、感度誤差分布図311の図49中、左下側の略菱形の区画312内では、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.1G以下」である。
【0241】
つまり、ウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)が、「0.1G以下」となる区画312は、角度θ=55°のときに、ロックアーム208の回転中心からの距離が「0.32mm」から「0.67mm」までのほぼ最大幅となり、角度θ=55°から左右方向へ離れるに従って徐々に狭くなり、各角度θ=35°、75°のときにロックアーム208の回転中心からの距離が「0.5mm」となる略菱形の区画である。
【0242】
また、感度誤差分布図311の図49中、左下側の上方に凸の略おむすび型の区画313内では、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)は、「0.2G以下」である。
【0243】
つまり、ウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)が、「0.2G以下」となる区画313は、角度θ=55°のときに、ロックアーム208の回転中心からの距離が「0.12mm」から「0.90mm」までのほぼ最大幅となり、角度θ=55°から左右方向へ離れるに従って徐々に狭くなり、各角度θ=0°、108°のときにロックアーム208の回転中心からの距離が「0.4mm〜0.5mm」となる略おむすび形の区画である。
【0244】
また、感度誤差分布図311の区画313の外側の区画314は、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)が、「0.3G以下」となる区画である。
【0245】
[重心位置の分布領域]
次に、上記感度誤差分布図311の各区画312、313に対応するロックアーム208の重心位置GPの分布領域について図50に基づいて説明する。尚、図50は、図23に示す状態を基準状態として、図24の構成と同じであり、各座標位置A〜Xは、ロックアーム208上の同一座標位置を示している。つまり、図23に示すように、ロックアーム208は、センサスプリング207の付勢力によってウエビング引出方向(矢印262方向である。)へ回動されて、係合爪231側端縁部がストッパ245に当接された状態である。
【0246】
図50に示すように、感度誤差分布図311の区画312に対応するロックアーム208の重心位置GPの分布領域316は、基準直線273をピボット軸239の回転軸272回りにウエビング引出方向(図50中、矢印263方向である。)へ角度θ=35°だけ回転させた直線321から、該基準直線273から角度θ=75°だけ回転させた直線322まで回転させたロックアーム208側の範囲内において、この角度θ=35°〜75°を2等分する角度θ=55°における2等分線276(図24中の直線276である。)上に、ロックアーム208側の半径0.32mmから半径0.67mmまでの最大幅を有している。
【0247】
また、ロックアーム208の重心位置GPの分布領域316は、該2等分線276から両円周方向に離れるに従って徐々に狭くなり、両端部が各直線321、322によって形成される境界部にほぼ接する略菱形領域である。従って、ロックアーム208の重心位置GPを当該分布領域316内に位置するように設定することによって、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)を「0.1G以下」に設定することができる。
【0248】
また、感度誤差分布図311の区画313に対応するロックアーム208の重心位置GPの分布領域317は、基準直線273と、該基準直線273から角度θ=108°だけ回転させた直線323まで回転させたロックアーム208側の範囲内において、この角度θ=0°〜108°をほぼ2等分する角度θ=55°における2等分線276(図24中の直線276である。)上に、ロックアーム208側の半径0.12mmから半径0.9mmまでの最大幅を有している。
【0249】
また、ロックアーム208の重心位置GPの分布領域317は、該2等分線276から両円周方向に離れるに従って徐々に狭くなり、両端部が基準直線273と直線323によって形成される境界部にほぼ接する略菱形領域である。従って、ロックアーム208の重心位置GPを当該分布領域317内に位置するように設定することによって、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)を「0.2G以下」に設定することができる。尚、各分布領域316、317は、ほぼ相似である。
【0250】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、ロックアーム208の重心位置GPを分布領域317(図50参照)内に位置するように設定することによって、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)を「0.2G以下」に設定することができる。
【0251】
これにより、ユーザの体型や着座姿勢によって、巻取ドラムユニット6の回転軸、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置が変化しても、緊急時に巻取ドラムユニット6をロックするウエビング3の引出加速度のバラツキを0.2G以下にして、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を安定化させることが可能となる。
【0252】
また、ロックアーム208の重心位置GPを分布領域316(図50参照)内に位置するように設定することによって、ロックアーム208がクラッチギヤ229に係合するウエビング3の引出加速度のバラツキ(感度の誤差)を「0.1G以下」に設定することができる。
【0253】
これにより、ユーザの体型や着座姿勢によって、巻取ドラムユニット6の回転軸、つまり、ラチェットギヤ26の回転軸271に対するロックアーム208の公転位置が変化しても、緊急時に巻取ドラムユニット6をロックするウエビング3の引出加速度のバラツキを0.1G以下にして、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【0254】
また、略弓形に形成された金属製のイナーシャマス209を略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム208の溝部240内に装着することによって、該ロックアーム208を合成樹脂だけで作製する場合よりも小型化することができる。また、金属製のイナーシャマス209の形状を変更することによって、クラッチギヤ229に係合するロックアーム208の重心位置GPを容易に設定することができる。更に、合成樹脂製のロックアーム208の一端部にクラッチギヤ229に係合する係合爪231が形成されているため、ロックアーム208の構造の簡素化を図ることができる。
【0255】
また、ロックアーム208のバネ支持ピン244は、先端部の外周面が、ピボット軸239側から、このピボット軸239に対して反対側へ先端部に向かって斜めに削られた先細り形状に形成されている。つまり、ロックアーム208のバネ支持ピン244は、先端側の外周面がセンサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリング207の撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されている。
【0256】
これにより、ウエビング3の急激な引き出しによって、ロックアーム208がウエビング巻取方向へ回動して、センサスプリング207が略細長S字状に撓みながら縮んでも、バネ支持ピン244はセンサスプリング207の内側と擦れないため、当該センサスプリング207はスムーズに縮むことができる。従って、センサスプリング207がスムーズに抵抗なく縮むため、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【0257】
更に、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合には、ロックアーム208のバネ支持ピン244の先端部が、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン243の先端部の近傍に位置する高さに立設されている。これにより、バネ支持ピン244の先端部と、バネ支持ピン243の先端部とが近接するため、センサスプリング207の縮んだ状態を一定にすることができ、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【0258】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
尚、以下の説明において上記図1乃至図24の前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一符号は、該前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0259】
(A)例えば、上記ロッキングギヤ206のバネ支持ピン243に替えて、図51に示すロッキングギヤ206のバネ支持ピン331を設け、且つ、上記ロックアーム208のバネ支持ピン244に替えて、図51に示すロックアーム208のバネ支持ピン332を設けるようにしてもよい。図51は他の実施形態に係るロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合における、センサスプリング207の撓み状態を示す要部拡大図である。
【0260】
図51に示すように、ロックアーム208の平面視コの字形に所定深さ(例えば、深さ約2mm〜3mmである。)窪んだ凹部の底面部に立設されたバネ支持ピン332は、細長の略円錐台状に形成されている。また、ロッキングギヤ206の底面部236に平行に立設されたバネ支持ピン331は、先端部の外周面が、固定ボス237に対して反対側から、この固定ボス237側へ先端部に向かって斜めに削られた先細り形状に形成されている。
【0261】
つまり、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン331は、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて、クラッチギヤ229に係合した場合に、先端側の外周面がセンサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリング207の撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されている。
【0262】
また、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン331は、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて、クラッチギヤ229に係合した場合に、先端部がロックアーム208のバネ支持ピン332の先端部近傍位置に位置する高さに立設されている。
【0263】
従って、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合には、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン331の先端は、センサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側のほぼ中央に位置すると共に、先端部のロックアーム208側の外周面が、略細長S字状に撓み変形したセンサスプリング207の内側にほぼ沿っている。
【0264】
これにより、ウエビング3の急激な引き出しによって、ロックアーム208がウエビング巻取方向へ回動して、センサスプリング207が略細長S字状に撓みながら縮んでも、バネ支持ピン331はセンサスプリング207の内側と擦れないため、当該センサスプリング207はスムーズに縮むことができる。従って、センサスプリング207がスムーズに抵抗なく縮むため、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【0265】
更に、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合には、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン331の先端部が、ロックアーム208のバネ支持ピン332の先端部の近傍に位置する高さに立設されている。これにより、バネ支持ピン331の先端部と、バネ支持ピン332の先端部とが近接するため、センサスプリング207が縮んだ状態を一定にすることができ、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【0266】
(B)また、例えば、上記ロッキングギヤ206のバネ支持ピン243に替えて、図52に示すロッキングギヤ206のバネ支持ピン335を設け、且つ、上記ロックアーム208のバネ支持ピン244に替えて、図52に示すロックアーム208のバネ支持ピン336を設けるようにしてもよい。図52は他の実施形態に係るロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合における、センサスプリング207の撓み状態を示す要部拡大図である。
【0267】
図52に示すように、ロッキングギヤ206の底面部236に平行に立設されたバネ支持ピン335と、ロックアーム208の平面視コの字形に所定深さ(例えば、深さ約2mm〜3mmである。)窪んだ凹部の底面部に立設されたバネ支持ピン336とは、ほぼ同じ高さに立設されている。また、各バネ支持ピン335、336は、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて、クラッチギヤ229に係合した場合に、先端部が互いに近接するようにほぼ同じ高さで立設されている。
【0268】
また、ロッキングギヤ206の底面部236に平行に立設されたバネ支持ピン335は、先端部の外周面が、固定ボス237に対して反対側から、この固定ボス237側へ先端部に向かって斜めに削られた先細り形状に形成されている。また、ロックアーム208のバネ支持ピン336は、先端部の外周面が、ピボット軸239側から、このピボット軸239に対して反対側へ先端部に向かって斜めに削られた先細り形状に形成されている。
【0269】
つまり、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン335は、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて、クラッチギヤ229に係合した場合に、先端側の外周面がセンサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリング207の撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されている。
【0270】
また、ロックアーム208のバネ支持ピン336は、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて、クラッチギヤ229に係合した場合に、先端側の外周面がセンサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリング207の撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されている。
【0271】
従って、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合には、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン335の先端は、センサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側のほぼ中央に位置すると共に、先端部のロックアーム208側の外周面が、略細長S字状に撓み変形したセンサスプリング207の内側にほぼ沿っている。また、ロックアーム208のバネ支持ピン336の先端は、センサスプリング207の略細長S字状に撓み変形した内側のほぼ中央に位置すると共に、先端部のピボット軸239側の外周面が、略細長S字状に撓み変形したセンサスプリング207の内側にほぼ沿っている。
【0272】
これにより、ウエビング3の急激な引き出しによって、ロックアーム208がウエビング巻取方向へ回動して、センサスプリング207が略細長S字状に撓みながら縮んでも、各バネ支持ピン335、336はセンサスプリング207の内側と擦れないため、当該センサスプリング207はスムーズに縮むことができる。従って、センサスプリング207がスムーズに抵抗なく縮むため、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【0273】
更に、ロックアーム208がセンサスプリング207の付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されてクラッチギヤ229に係合した場合には、ロッキングギヤ206のバネ支持ピン335の先端部が、ロックアーム208のバネ支持ピン336の先端部の近傍に位置する高さに立設されている。これにより、バネ支持ピン335の先端部と、バネ支持ピン336の先端部とが近接するため、センサスプリング207の縮んだ状態を一定にすることができ、パウル37がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合する緊急ロック機構の作動感度を更に安定化させることが可能となる。
【符号の説明】
【0274】
1 シートベルト用リトラクタ
3 ウエビング
5 ハウジングユニット
6 巻取ドラムユニット
9 ロックユニット
11 ハウジング
26 ラチェットギヤ
37 パウル
201 メカニズムブロック
202 クラッチ
204 リターンスプリング
206 ロッキングギヤ
207 センサスプリング
208 ロックアーム
209 イナーシャマス
210 メカニズムカバー
228 リブ部
229 クラッチギヤ
231 係合爪
243、244、331、332、335、336 バネ支持ピン
245 ストッパ
273 基準直線
312、313、314 区画
316、317 分布領域
GP 重心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に収納されてウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、
前記ハウジングの一方の側壁部の外側に取り付けられて、通常時前記巻取ドラムの一端側を回転自在に支持し、前記ウエビングが所定以上の引出加速度で引き出されたときに該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するロック手段と、
を備え、
前記ロック手段は、
通常時前記巻取ドラムと共に回転し、前記ウエビングが所定以上の引出加速度で引き出されたときに作動する引出加速度感知部材と、
前記引出加速度感知部材の作動によって前記巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するパウルを作動させるクラッチ部材と、
を有し、
前記引出加速度感知部材は、
前記巻取ドラムと一体的に回転するロッキングギヤと、
前記ロッキングギヤの回転軸から半径方向外側へ所定距離離れた位置に回動可能に軸支されて該ロッキングギヤの回転軸を囲むように配置された略弓形の慣性体と、
前記慣性体を前記ロッキングギヤに対してウエビング引出方向へ回動するように付勢するセンサスプリングと、
を有し、
前記クラッチ部材は、前記巻取ドラムの回転軸と同軸に設けられて、前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動することにより係合するクラッチギヤが内周面に設けられた円環状のリブ部を有し、
前記慣性体は、前記センサスプリングによってウエビング引出方向へ回動されてストッパに当接されている場合には、重心位置が前記ロッキングギヤの回転軸と該慣性体の回転軸を結ぶ基準直線から該基準直線を該慣性体の回転軸を中心にウエビング引出方向側へ第1角度回転させた位置までの該慣性体側の第1範囲内において、該第1角度を略2等分する2等分線上に最大幅を有し、該2等分線から両円周方向に離れるに従って狭くなって円周方向両端縁部で境界部にほぼ接するように設定された第1領域内に位置するように設定され、
該慣性体は、前記クラッチギヤに係合する前記ウエビングの引出加速度のバラツキが、略0.2G以下になるように設定されていることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記慣性体は、前記重心位置が前記2等分線によって略2等分される前記第1角度よりも小さい第2角度の該慣性体側の第2範囲内において、前記第1領域に対して相似となるように縮小された第2領域内に位置するように設定され、
該慣性体は、前記クラッチギヤに係合するウエビングの引出加速度のバラツキが略0.1G以下になるように設定されていることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記慣性体は、
略弓形に形成された金属製の平板と、
前記平板が内側に装着されて前記ロッキングギヤに回動可能に軸支され、一端部に形成された係合爪が前記クラッチギヤに係合するように略弓形に形成された合成樹脂製の回動体と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に収納されてウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、
前記ハウジングの一方の側壁部の外側に取り付けられて、通常時前記巻取ドラムの一端側を回転自在に支持し、前記ウエビングが所定以上の引出加速度で引き出されたときに該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するロック手段と、
を備え、
前記ロック手段は、
前記巻取ドラムと一体的に回転するロッキングギヤと、
前記ロッキングギヤの回転軸から半径方向外側へ所定距離離れた位置に回動可能に軸支されて該ロッキングギヤの回転軸を囲むように配置された略弓形の慣性体と、
前記慣性体を前記ロッキングギヤに対してウエビング引出方向へ回動するように付勢するセンサスプリングと、
前記巻取ドラムの回転軸と同軸に設けられて、前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動することにより係合するクラッチギヤが内周面に設けられた円環状のリブ部と、
を有し、
前記ロッキングギヤは、該ロッキングギヤの回転軸の周縁近傍位置から前記慣性体側方向で、且つ、該回転軸に対して直交するウエビング引出方向へ立設されて、センサスプリングの一端側が嵌め込まれたギヤ側バネ支持ピンを有し、
前記慣性体は、前記ギヤ側バネ支持ピンに対向する側壁に立設されて、前記センサスプリングの他端側が嵌め込まれる慣性体側バネ支持ピンを有し、
前記慣性体側バネ支持ピンは、前記慣性体が前記センサスプリングによってウエビング引出方向へ回動された場合には、前記ギヤ側支持ピンとほぼ同一直線上に位置するように立設され、
前記ギヤ側バネ支持ピンと前記慣性体側バネ支持ピンのうちの少なくとも一方は、前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて前記クラッチギヤに係合した場合に、先端側の外周面が前記センサスプリングの撓み変形した内側にほぼ沿うように、該センサスプリングの撓んだ内側へ接近する外周面が削られた先細り形状に形成されていることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項5】
前記慣性体が前記センサスプリングの付勢力に抗してウエビング巻取方向へ回動されて前記クラッチギヤに係合した場合には、該慣性体側バネ支持ピンの先端部が前記ギヤ側支持ピンの先端部の近傍に位置する高さに立設されていることを特徴とする請求項4に記載のシートベルト用リトラクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【公開番号】特開2012−232727(P2012−232727A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134161(P2011−134161)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】