説明

シートベルト用リトラクタ

【課題】ガス発生部材の出力をピストンの駆動に有効に利用することが可能なシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】リトラクタは、プリテンショナユニット16を備え、プリテンショナユニット16は、巻取ドラムと連動回転可能なピニオンギヤ165と、ピニオンギヤ165を介して巻取ドラムをウエビングの巻き取り方向に回転させるピストン164と、ピストン164を収容するシリンダ162と、シリンダ内の内部空間NSにガスを満たしてピストン164を駆動するガス発生部材とを有している。シリンダ162は、側面においてガス抜き孔625を有し、ガス抜き孔625は、ガス発生前のピストン164の初期位置では、内部空間NSと外部とがガス抜き孔625を介して導通しない位置であって、ガス発生後、ピストン164の移動に応じて変化した内部空間NSと外部とがガス抜き孔625を介して導通した状態となる位置に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時にウエビングの弛みを除去するための機構を備えたシートベルト用リトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両衝突時等の車両緊急時に、ウエビングの弛みを除去するためのプリテンショナ機構を備えたシートベルト用リトラクタに関する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ウエビングを巻き取る巻取ドラムと、ガス発生部材と、断面矩形で筒状のシリンダと、ガス発生部材によって発生したガス圧を受けてシリンダ内を移動するピストンと、当該ピストンに形成されたラックラックと噛合して回転するとともに、巻取ドラムに連動回転可能なピニオンギヤ体とを有するプリテンショナ機構を備えたシートベルト用リトラクタが提案されている。
【0004】
当該特許文献1のシートベルト用リトラクタでは、プリテンショナ機構の動作によってウエビングを巻き取った後のウエビングの引き出しを考慮して、シリンダ内のガス圧を下げるために、シリンダ内部と外部とをつなぐガス抜き穴がピストンに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−241867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1のシートベルト用リトラクタのように、ガス抜き穴をピストンに設けると、プリテンショナ機構が動作する際の初期状態からガスが抜けてしまう構造であるため、ピストンの駆動に必要な圧力を得るために、ガス抜けによる圧力ロス分を考慮してガス発生部材の出力を設定する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、ガスの圧力ロスを低減し、ガス発生部材の出力をピストンの駆動に有効に利用することが可能なシートベルト用リトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第1の態様は、ウエビングを巻き取る巻取ドラムと、前記ウエビングの巻き取り方向に、前記巻取ドラムを回転させるプリテンショナユニットとを備え、前記プリテンショナユニットは、前記巻取ドラムと連動回転可能なピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに噛合するラックを有し、前記ピニオンギヤを介して前記巻取ドラムを前記巻き取り方向に回転させるピストンと、前記ピストンを移動可能に収容する筒状のシリンダと、発生させたガスを前記シリンダ内の内部空間に満たして、当該ガスの圧力で前記ピストンを駆動するガス発生部材とを有し、前記筒状のシリンダは、側面において、前記ガスを前記シリンダの外部に放出するための貫通孔を有し、前記貫通孔は、ガス発生前の前記ピストンの初期位置では、前記シリンダ内の内部空間と前記外部とが前記貫通孔を介して導通しない位置であって、ガス発生後、前記ピストンの移動に応じて変化した前記シリンダ内の内部空間と前記外部とが前記貫通孔を介して導通した導通状態となる位置に設けられる。
【0009】
また、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第2の態様は、上記第1の態様において、前記貫通孔は、前記プリテンショナユニットの動作によって、前記巻取ドラムに前記巻き取り方向への力が最初に加わったときに、前記導通状態となる位置に設けられる。
【0010】
また、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様において、前記プリテンショナユニットは、前記ピニオンギヤの回転によりパウルを突出して、当該パウルを前記巻取ドラムのギヤに係合させることによって、前記巻取ドラムと前記ピニオンギヤとの連動回転を実現するクラッチ機構をさらに有し、前記貫通孔は、前記パウルが前記巻取ドラムのギヤに係合したときに、前記導通状態となる位置に設けられる。
【0011】
また、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかにおいて、前記ピストンの前記内部空間側の面には、シール部材が設けられる。
【0012】
また、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第5の態様は、上記第1の態様から上記第4の態様のいずれかにおいて、前記プリテンショナユニットは、前記シリンダの側面の一部に隣接して配置されるブロック部材、をさらに有し、前記貫通孔は、前記シリンダの側面の周方向において、前記ブロック部材の内壁と前記シリンダの側面の前記一部とによって形成される特定空間に前記ガスを排出ガスとして放出することが可能な位置に設けられる。
【0013】
また、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第6の態様は、上記第5の態様において、前記特定空間は、前記ブロック部材の内壁と前記シリンダの側面の前記一部とによって囲まれない開放部を有し、前記シートベルト用リトラクタは、組み上げた状態では、耐熱性の部材が前記開放部に位置するように構成され、前記貫通孔は、前記特定空間において、前記開放部に位置する前記耐熱性の部材に、当該貫通孔から放出される前記排出ガスを最初に当てることが可能に設けられる。
【0014】
また、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第7の態様は、上記第5の態様または上記第6の態様において、前記ブロック部材は、前記排出ガスを前記特定空間から導く通路を有し、前記通路は、前記ブロック部材内において、複雑に入り組んで構成されている。
【0015】
また、本発明に係るシートベルト用リトラクタの第8の態様は、上記第7の態様において、前記プリテンショナユニットは、前記シリンダおよび前記ブロック部材を覆うカバープレート、をさらに有し、前記カバープレートには、前記ブロック部材における前記特定空間および前記通路の少なくとも1つを覆う位置にビードが設けられる。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の態様によれば、ガスが最初に発生するときは、パイプシリンダ内の内部空間が密閉状態に保たれるので、発生ガスの圧力をピストンの進行力に有効に利用することが可能になる。
【0017】
また、上記第2の態様および上記第3の態様によれば、ウエビングに弛みがなく巻取ドラムが巻き取り方向に回転しない状況においても、プリテンショナユニットにガス圧による過度な負荷をかけることなく、プリテンショナユニットを安全に動作させることが可能になる。
【0018】
また、上記第4の態様によれば、パイプシリンダ内の内部空間の密閉性をさらに高めることが可能になる。
【0019】
また、上記第5の態様によれば、排出ガスが囲いのある特定空間に放出されるので、高温の排出ガスがプリテンショナユニットの外部に漏れる危険性を低減することができる。
【0020】
また、上記第6の態様によれば、貫通孔から放出される排出ガスは最初に耐熱性の部材に当たるので、排出ガスの温度を下げることができる。
【0021】
また、上記第7の態様によれば、排出ガスは複雑に入り組んだ通路に導かれるので、プリテンショナユニット外部への火の粉の流出を抑えることができる。
【0022】
また、上記第8の態様によれば、排出ガスによるカバープレートの変形を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るシートベルト用リトラクタを示す斜視図である。
【図2】シートベルト用リトラクタを、所定の機能を実現する構成要素単位で分解した分解斜視図である。
【図3】巻取ドラムとプリテンショナユニットとをさらに細かく分解した分解斜視図である。
【図4】待機状態におけるプリテンショナユニットの縦断面図である。
【図5】プリテンショナユニットを構成するパイプシリンダの斜視図である。
【図6】カバープレートの斜視図である。
【図7】プリテンショナユニットの動作を説明するための図である。
【図8】プリテンショナユニットの縦断面図である。
【図9】プリテンショナユニットの動作を説明するための図である。
【図10】プリテンショナユニットの動作を説明するための図である。
【図11】プリテンショナユニットの動作を説明するための図である。
【図12】プリテンショナユニットの縦断面図である。
【図13】プリテンショナユニットをハウジングユニットへの取り付け面側から見た斜視図である。
【図14】ベースブロック内を通る排出ガスの流れを示す図である。
【図15】プリテンショナユニットをカバープレート側から見た外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一または相応する要素を示すものとする。
【0025】
<実施形態>
[1.全体構成]
図1は、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1を示す斜視図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ(単に「リトラクタ」とも称する)1は、車両等の座席に備えられるシートベルト装置に適用されるものである。当該リトラクタ1は、通常状態では、シートベルトとしてのウエビング11を引出および巻取自在に収容している。そして、リトラクタ1は、車両の衝突時や急減速時等の緊急時(車両緊急時)には、乗員を効果的に拘束するため、弛みを除去するようにウエビング11を巻取り、その後、乗員に加わる衝撃を緩和するようにウエビング11を徐々に繰り出すように構成されている。
【0027】
リトラクタ1は、ハウジングユニット(ハウジング)12と、巻取ドラム13と、緊急ロックユニット14と、巻取バネユニット15と、プリテンショナユニット16とを備えている。ここでは、巻取ドラム13は、ハウジング12内に収容され、ハウジング12の外側には、緊急ロックユニット14および巻取バネユニット15と、プリテンショナユニット16とが設けられている。ここで、巻取ドラム13を中心にしてリトラクタ1における各構成要素の位置関係を見ると、巻取ドラム13の一端側(図1では左端側)に緊急ロックユニット14および巻取バネユニット15が設けられ、巻取ドラム13の他端側(図1では右端側)にプリテンショナユニット16が設けられた構成となっている。
【0028】
[2.各構成要素の機能および各構成要素の概略構成]
次に、リトラクタ1各構成要素について説明する。図2は、シートベルト用リトラクタ1を、所定の機能を実現する構成要素単位で分解した分解斜視図であり、図3は、巻取ドラム13と、プリテンショナユニット16とをさらに細かく分解した分解斜視図である。
【0029】
図2に示されるように、ハウジング12は、相対向して設けられた一対の側板部121,122と、当該側板部121,122の縁部を連結する連結板部123,124とを備えている。また、連結板部123の上部には、ウエビング11を外部に引き出すための開口125を有した部材126が設けられている。
【0030】
ハウジング12は、一対の側板部121,122間に巻取ドラム13を配置させた状態で、一方側の側板部122の外面に緊急ロックユニット14を、他方側の側板部121の外面にプリテンショナユニット16を取付可能に構成されている。
【0031】
巻取ドラム13は、ウエビング11が巻装された状態でハウジング12内に回転自在に配置される部材である。具体的には、巻取ドラム13は、アルミ材等により形成され、略円柱状のドラム本体部131と、そのドラム本体部131の軸心方向両端部に径方向に張出形成されたフランジ部132,133とを有している。そして、ウエビング11は、両フランジ部132,133間のドラム本体部131に巻装される。
【0032】
また、図3に示されるように、巻取ドラム13には、中心軸に沿って不貫通の軸孔部134が形成されており、この軸孔部134には、トーションバー135が挿入されている。トーションバー135の一端部135Aは、軸孔部134内部において、巻取ドラム13と相対回転不能に結合される。また、トーションバー135の他端部135Bは、緊急ロックユニット14に接続されるラチェットギア136と相対回転不能に結合される。
【0033】
緊急ロックユニット14(図1,2参照)は、ハウジング12の側板部122に固設され、ラチェットギア136を介してウエビング11の急激な引き出しおよび車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング11の引き出しを停止する動作を行う。
【0034】
巻取バネユニット15は、緊急ロックユニット14の外側に設けられ、巻取バネユニット15の内部に設けられた渦巻バネの付勢力により、巻取ドラム13をウエビング11の巻取方向に常時回転付勢する機能を有している。
【0035】
プリテンショナユニット16は、ハウジング12の側板部121にタッピングネジPN1を用いて、カバープレート168(図3)とベースプレート166(図3)とを直接共締め、若しくはカバープレート168とベースプレート166との間にベースブロック167(図3)を介して共締めして固設される。プリテンショナユニット16は、車両の衝突時等の緊急時に所定のセンサ出力に応じてガス発生部材(ガス発生器)161を作動させ、このガス(流体)の圧力を利用して巻取ドラム13のフランジ部133を介して、巻取ドラム13をウエビング巻取方向に回転させる機構である。
【0036】
車両の衝突時等の緊急時に当該プリテンショナユニット16を動作させてウエビング11を巻き取ることによれば、ウエビング11の弛みを除去して乗員を効果的にシート側に拘束できる。
【0037】
なお、本プリテンショナユニット16は、車両が実際に衝突した場合のような緊急時において不可逆的に、つまり、一度だけ動作し、ウエビング11を巻き取る。すなわち、実際に車両が衝突してしまった後には、ウエビング11を再度引締める機構は不要となるので、不可逆的なプリテンショナユニット16によりウエビング11を比較的強固に引締めるのである。
【0038】
[3.プリテンショナユニット16の詳細構成]
次に、プリテンショナユニット16の構成について詳述する。図4は、待機状態におけるプリテンショナユニット16の縦断面図である。図5は、プリテンショナユニット16を構成するパイプシリンダ162の斜視図である。図6は、カバープレート168の斜視図である。
【0039】
図3に示されるように、プリテンショナユニット16は、ガス発生部材161と、パイプシリンダ162と、ガス発生部材161のガス圧を受けてパイプシリンダ162内を移動するシールプレート163およびピストン164と、当該ピストン164に形成されたラック642に噛合(係合)して回転するピニオンギヤ165と、パイプシリンダ162が取り付けられるベースプレート166と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成され、ピニオンギヤ165の側面を覆うようにベースプレート166に配設されるベースブロック(ブロック部材)167と、ベースプレート166に配置されたパイプシリンダ162、ベースブロック167等を覆うカバープレート168と、ベースプレート166の外側面に配設されるクラッチ機構169とから構成されている。
【0040】
ピニオンギヤ165は、スチール材等で形成された略円筒状で、その外周部にはピストン164に形成されたラック642に噛合するピニオンギヤ部650が形成されている。また、当該ピニオンギヤ部650の軸心方向のカバープレート168側には、外側方向に延出された円筒状の支持部651が形成されている。当該支持部651は、後述のようにカバープレート168の支持孔(開口部)683に嵌め込まれる。
【0041】
一方、ピニオンギヤ部650の軸心方向のベースプレート166側の端部には径方向に張り出すフランジ部652が形成されている。さらに、このフランジ部652から外側方向には、ベアリング170を嵌入させる軸受け部653を有するボス部654が形成されている。また、このボス部654の先端部の外周面には、3個ずつのスプラインが中心角約120度間隔で形成されている。
【0042】
クラッチ機構169は、スチール材等で形成されたパウルベース691と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル692と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース691とともに各クラッチパウル692を挟持する略円環状のパウルガイド693とから構成されている。
【0043】
また、パウルベース691の内周面には、ピニオンギヤ165のボス部654に形成されたスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成されている。また、パウルガイド693の内周径は、パウルベース691のスプライン溝よりも大きく形成されるとともに、このパウルガイド693のベースプレート166側の側面部には、等角度で位置決突起(不図示)が3つ突設されている。
【0044】
リトラクタ1を構成する際には、クラッチ機構169のパウルガイド693のベースプレート166側の側面部に突設される各位置決突起を、ベースプレート166の各位置決孔661に嵌入して、該クラッチ機構169をベースプレート166におけるハウジング12の側板部121側の面に配置する。続いて、ピニオンギヤ165のボス部654を、ベースプレート166の略中央部に形成された貫通孔(開口部)662に嵌入後、当該ボス部654に形成される各スプラインをクラッチ機構169を構成するパウルベース691の各スプライン溝に圧入固定する。これにより、クラッチ機構169とピニオンギヤ165とが、ベースプレート166に配設固定されるとともに、ピニオンギヤ165のピニオンギヤ部650が、図4に示す位置に常に位置決め固定される。
【0045】
なお、ベースプレート166の略中央部に形成される貫通孔662の内径は、ピニオンギヤ165のボス部654の基端部655の外径を支持できる径に形成されて、ピニオンギヤ165の一端側を回転可能に支持することが可能に構成されている。
【0046】
パイプシリンダ(シリンダ)162(図3,5参照)は、筒状のスチールパイプ材等を略L字状に屈曲させて形成されている。
【0047】
具体的には、パイプシリンダ162の一端側(図5中、下側折曲部分)には、略円筒状の収納部621が形成されて、ガス発生部材161を収納するように構成されている。ガス発生部材161は、火薬を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号により当該火薬を着火させてガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。当該ガス発生部材161は、パイプシリンダ162の内壁と当該パイプシリンダ162内に配置されるピストン164の底部との間に形成される空間(内部空間)NS(図4参照)にガスを満たして、当該ガスの圧力でピストン164を駆動する駆動機構として機能する。
【0048】
一方、パイプシリンダ162の他端側(図5中、上側折曲部分)には、ピストン収納部622が形成されている。ピストン収納部622は、断面略円形の筒形状を有し、筒の中段から上端にかけて一部、切欠部623が形成されている。ピストン164が移動すると、当該切欠部623からは、ピストン164のラック642が出現することになる。パイプシリンダ162をベースプレート166上に配設した場合、当該切欠部623には、ピニオンギヤ165のピニオンギヤ部650がラック642と噛合可能なように位置することになる。
【0049】
このように、パイプシリンダ162のピストン収納部622を断面略円形に形成することによれば、ピストン収納部622の断面を矩形に形成する場合に比べて、パイプシリンダ162の製造コストを大幅に低減することができる。
【0050】
また、ピストン収納部622の上端部には、プリテンショナユニット16をハウジング12に取り付けるとともに、ピストン164の抜け止め、並びにパイプシリンダ162の抜け止めおよび回転止めとして機能するストッパーピンPN2を挿通可能な相対向する一対の貫通孔624が形成されている。ストッパーピンPN2は、カバープレート168の貫通孔HL1、ベースプレート166の貫通孔HL2およびパイプシリンダ162の一対の貫通孔624に挿入され、カバープレート168、パイプシリンダ162、およびベースプレート166をハウジング12にプッシュナットNA1を用いて共締め固定する。
【0051】
シールプレート(「シール部材」とも称する)163は、ゴム材等でピストン収納部622の上端側から挿入可能な略円形の板状に形成されている。当該シールプレート163は、ピストン164とパイプシリンダ162の内壁との間をシールする機能を有している。また、シールプレート163の中央部には、突起部631が設けられている。
【0052】
ピストン164は、スチール材等で形成され、全体として長尺状の形状を有している。そして、ピストン164の側面には、ピニオンギヤ165のピニオンギヤ部650に噛合するラック642が形成されている。また、ラック642の先端部の背面には、ストッパーネジPN2に当接可能な段差部643が形成されている。また、ピストン164の下端部には、シールプレート163の突起部631を嵌め込み可能な嵌入溝641(図4参照)が形成されている。
【0053】
また、ラック642が形成された側面と反対側の面は、パイプシリンダ162の内壁と接触可能な接触面644として構成されている。当該接触面644は、パイプシリンダ162に対してピストン164がスムーズに摺動可能なように、パイプシリンダ162の内壁面に合わせた形状となっている。すなわち、ピストン164において接触面側の断面は、円弧状に形成されている。
【0054】
なお、ラック642の背面側において、パイプシリンダ162の内壁と接触可能な部分は、「接触部」とも称される。本実施形態では、接触部として、接触面644を例示したが、当該接触部は、ピストン164のスムーズな移動を妨げない形状であれば、他の形状であってもよい。例えば、半球状の突部をラック642の背面側に設けて、接触部として構成してもよい。
【0055】
このような形状を有するピストン164は、シールプレート163の突起部631をピストン164の嵌入溝641に嵌入した状態で、シールプレート163を奥側にして、ピストン収納部622の上端から奥に圧入される。
【0056】
圧入されたピストン164は、図4に示されるように、ピストン収納部622の奥側において、ラック642の先端がピニオンギヤ部650に非噛合状態となるように配置される。また当該非噛合状態では、ピストン164は、ベースブロック167に設けられ、プリテンショナユニット16の動作時にはピストン164によってせん断される位置決めリブ671によって、位置決めおよび回転規制される(図4参照)。
【0057】
カバープレート168は、図6に示されるように、パイプシリンダ162の側面を当該側面の形状に沿って覆うシリンダ被覆部681と、ピニオンギヤ165およびベースブロック167を覆う平面形状の平板被覆部682とを有している。
【0058】
シリンダ被覆部681は、筒状のパイプシリンダ162の側面を当接して被覆可能なように、当該側面に沿うことが可能な丸みを帯びた形状となっている。また、シリンダ被覆部681には、当該シリンダ被覆部681の一部を窪ませた絞り部684が形成されている。
【0059】
平板被覆部682は、シリンダ被覆部681と連接して形成され、ピニオンギヤ165の支持部651を嵌入させる支持孔683を有している。また、当該支持孔683からシリンダ被覆部681の絞り部684にかけては、平板被覆部682と同一平面の平板によって構成されている。
【0060】
このような構造を有するカバープレート168は、ピニオンギヤ165の支持部651を支持孔683に嵌入させつつ、パイプシリンダ162をシリンダ被覆部681で覆うように配置され、ピンPN1によってベースプレート166と一緒にハウジング12に固設される。
【0061】
カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、ピニオンギヤ165の両端部に形成されたボス部654の基端部655と、支持部651とが、それぞれベースプレート166の貫通孔662とカバープレート168の支持孔683とに嵌入される。これにより、ピニオンギヤ165は、ベースプレート166とカバープレート168とによって、回転可能に支持されることになる。
【0062】
また、カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、パイプシリンダ162は、ベースプレート166とカバープレート168とによって挟持されるとともに、ベースブロック167とカバープレート168とによって挟持される。
【0063】
また、カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、シリンダ被覆部681の絞り部684が、パイプシリンダ162の切欠部623に嵌入されることになる。
【0064】
なお、プリテンショナユニット16では、カバープレート168をベースプレート166に合わせた状態で、ベースプレート166の端部663をかしめることによって、カバープレート168のベースプレート166への固設力を強化させている。これによれば、固設に用いるネジ・ピン等の部品点数を削減することが可能になる。
【0065】
また、カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、パイプシリンダ162のピストン収納部622の上端側開口が、ベースプレート166の上端部から略直角に延出されたカバー部664によって覆われる。
【0066】
[4.プリテンショナユニット16の動作]
次に、車両衝突時のプリテンショナユニット16によるウエビング11の巻き取り動作、すなわち、プリテンショナユニット16の動作を説明する。図7,図9〜図11は、プリテンショナユニット16の動作を説明するための図である。なお、図7,図9〜図11では、ピストン164に設けられたラック642とピニオンギヤ165との噛合状態が示されるとともに、クラッチ機構169のクラッチパウル692と、巻取ドラム13に設けられたクラッチギヤ137との係合状態が示されている。図8および図12は、プリテンショナユニット16の縦断面図である。図13は、プリテンショナユニット16をハウジングユニット12への取り付け面側から見た斜視図である。図14は、ベースブロック167内を通る排出ガスの流れを示す図である。図15は、プリテンショナユニット16をカバープレート168側から見た外観図である。
【0067】
図4に示されるように、プリテンショナユニット16が動作する前の待機状態(初期状態)では、ピストン164のラック642とピニオンギヤ165とが非噛合状態となるように、ピストン164が一定位置で固定されている。この待機状態では、図7に示されるように、クラッチパウル692は、クラッチ機構169に収納された状態となっている。
【0068】
待機状態において、ガス発生部材161からガスが発生すると、発生したガスの圧力によって、シールプレート163が押圧される。シールプレート163が押圧されると、図8に示されるように、ピストン164がピストン収納部622の上端側(図8の矢印YA1の方向)へ移動するとともに、ラック642と噛合したピニオンギヤ165が矢印YA2の方向に回転する。
【0069】
ピニオンギヤ165が矢印YA2の方向に回転すると、当該ピニオンギヤ165によって圧入固定されたパウルベース691も連動して回転する。
【0070】
ここで、クラッチ機構169においては、パウルベース691は回転可能な状態である一方、パウルガイド693に設けられた位置決突起がベースプレート166に係合しているため、パウルガイド693は回転不能の状態にある。このため、プリテンショナユニット16の動作初期段階においては、不回転のパウルガイド693に対してパウルベース691が相対回転する。
【0071】
パウルベース691のこの回転運動に伴い、パウルベース691に押圧されるクラッチパウル692も同方向に回転し、当該回転によって移動したクラッチパウル692は、図9に示されるように、パウルガイド693のガイド部931に当たって、外径方向への突出を開始する。
【0072】
パウルベース691がさらに回転すると、パウルベース691によってさらに押圧されたクラッチパウル692は、図10に示されるように、ガイド部931により外径方向に摺動案内されて外径方向に完全に突出することになる。そして、突出したクラッチパウル692は、巻取ドラム13のフランジ部133において、軸心に向かって刻設されたクラッチギヤ137に接触する(図10参照)。
【0073】
クラッチパウル692がクラッチギヤ137に接触した後も、引き続きパウルガイド693に駆動力が加えられると、クラッチパウル692がクラッチギヤ137に噛み込み、クラッチパウル692とクラッチギヤ137とが係合する(図11参照)。クラッチパウル692とクラッチギヤ137との係合後、パウルガイド693に駆動力がさらに加えられ、当該駆動力に抗しきれなくなると、ベースプレート166の位置決孔661に嵌入されたパウルガイド693の位置決突起が破断する。以後、クラッチ機構169は一体となって、クラッチギヤ137に係合したクラッチパウル692を介して巻取ドラム13をウエビング11の巻き取り方向(図11の矢印YA4の方向)に回転させることになり、ウエビング11の巻き取りが行われる。このようにクラッチ機構169は、プリテンショナユニット16動作時に、巻取ドラム13とピニオンギヤ165との連動回転を実現する。
【0074】
そして、ガス発生部材161で発生したガスの圧力によって、ピストン164がピストン収納部622の最上端へ移動した場合には、ピストン164の段差部643が、各貫通孔624に挿通されたストッパーネジPN2に当接して、ピストン164が停止する(図12参照)。
【0075】
また、プリテンショナユニット16の動作後、ウエビング11が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ165が逆回転し、そしてピストン164が下方(図12の矢印YA3の方向)に下がることになる。この際、パイプシリンダ162の側面に設けられた貫通孔(「ガス抜き孔」とも称する)625からパイプシリンダ162内のガスが抜け、スムーズにピストン164が下がる。
【0076】
このような動作を行うプリテンショナユニット16では、パイプシリンダ162内のガスを外部(外部空間)に放出するためのガス抜き孔625は、ガス発生部材161の出力を、ピストン164の駆動に有効に利用することが可能な位置に設けられる。
【0077】
具体的には、図7に示されるように、ガス抜き孔625は、プリテンショナユニット16動作前の待機状態において、シールプレート163における、パイプシリンダ162の内壁(内周面)と接触する部分(「シール接触部」とも称する)639の上方に設けられる。このように、パイプシリンダ162の軸心方向におけるガス抜き孔625の位置を、待機状態のシールプレート163におけるシール接触部639の位置よりも上方に設ければ、ガス発生前のピストン164の初期位置では、パイプシリンダ162内の内部空間NSと外部空間とがガス抜き孔625を介して導通しない非導通の状態(非導通状態)となる。
【0078】
したがって、本実施形態のプリテンショナユニット16では、プリテンショナユニット16の動作開始時点において、パイプシリンダ162内の内部空間NSを密閉状態に保つことができるので、ガスの圧力をピストン164の進行力に有効に利用することが可能になる。
【0079】
また、待機状態では、パイプシリンダ162内の内部空間NSを密閉状態に保つことができるので、外部から内部空間NS内への埃、塵等の異物の混入を防ぐことができ、異物の混入を防ぐための部材を設けなくてよい。さらに、待機状態において、図4に示すようにピストン164により、ガス抜き孔625をパイプシリンダ内から塞ぐようにすることで、ガス抜き孔625を通じて、外部からパイプシリンダ162内全体へ埃、塵等が混入することを防ぐことができ、異物の混入を防ぐ効果を高めることができる。
【0080】
またさらに、ガス抜き孔625は、パイプシリンダ162の軸心方向において、プリテンショナユニット16の動作開始後、一定期間が経過した後に発生ガスを排出可能な位置に設けられる。
【0081】
具体的には、プリテンショナユニット16では、プリテンショナユニット16の動作開始後、クラッチパウル692が巻取ドラム13のクラッチギヤ137に係合する。そして、プリテンショナユニット16の動作によって発生した動力が巻取ドラム13に伝達され、図11に示されるように、巻取ドラム13が矢印YA4の方向に回転を開始する。
【0082】
このような各動作段階を経るプリテンショナユニット16において、ガス抜き孔625は、プリテンショナユニット16で発生した動力の巻取ドラム13への伝達が開始された時点における、シールプレート163のシール接触部639の位置よりもパイプシリンダ162の軸心方向において下方に設けられる。
【0083】
ガス抜き孔625をこのような位置に設けることにより、プリテンショナユニット16では、動作開始後、クラッチパウル692が巻取ドラム13のクラッチギヤ137に係合され、プリテンショナユニット16の動力が巻取ドラム13に加わるまでは、パイプシリンダ162内は、密閉状態に保たれる。すなわち、プリテンショナユニット16では、待機状態(図7)、ガスの圧力によって押し上げられたラック642がピニオンギヤ165に最初に噛合するときの動作状態(図9)、およびクラッチパウル692がクラッチギヤ137に接触したときの動作状態(図10)ではいずれも、パイプシリンダ162内の内部空間NSは、密閉状態に保たれることになる。
【0084】
一方、クラッチパウル692が巻取ドラム13のクラッチギヤ137に係合し、巻取ドラム13にプリテンショナユニット16による動力の伝達が開始された後は、図11に示されるように、パイプシリンダ162内の内部空間NSは、ガス抜き孔625を介して外部と導通した状態(導通状態)になる。このため、巻取ドラム13の回転が開始される際には、発生ガスをガス抜き孔625からパイプシリンダ162の外部に排出することが可能になる。
【0085】
このように、プリテンショナユニット16では、ガス抜き孔625は、ガス発生後、ピストン164の移動に応じて変化したパイプシリンダ162内の内部空間NSと外部とが当該ガス抜き孔625を介して導通した導通状態となる位置に設けられる。これによれば、プリテンショナユニット16の動作後、パイプシリンダ162内のガスを外部に排出可能な状態となるので、パイプシリンダ162内のガス圧が高まり過ぎることを避けることができ、プリテンショナユニット16を安全に動作させることが可能になる。また、プリテンショナユニット16の動作後、ウエビング11が再度引き出されるときのピストン164の移動を円滑に行うことも可能になる。
【0086】
またさらに、プリテンショナユニット16の動作によって発生した動力が巻取ドラム13に最初に加わるときに、ガス抜き孔625を介してパイプシリンダ162内のガスを外部に排出可能な状態とすることによれば、プリテンショナユニット16をさらに安全に動作させることが可能になる。具体的には、プリテンショナユニット16動作時にウエビング11に弛みがなく巻取ドラム13が巻き取り方向に回転しない状況では、ピストン164が移動できないため、パイプシリンダ162内のガス圧が高まることになる。したがって、プリテンショナユニット16の動作によって発生する巻き取り方向への力が巻取ドラム13に最初に加わるときに、ガス抜き孔625を介してパイプシリンダ162内のガスを外部に排出可能な構成とすることによれば、ウエビング11に弛みがなく巻取ドラム13が巻き取り方向に回転しない状況においても、プリテンショナユニット16にガス圧による過度な負荷をかけることなく、プリテンショナユニット16を安全に動作させることが可能になる。
【0087】
また、本実施形態のシールプレート163のような板状のシール部材をピストン164の下端部における内部空間側の面に配置することで、プリテンショナユニット16の動作時にガス発生部材161で発生したガス圧による、シール部材の変形を必要最小限に抑え、シール接触部639のピストン164に対する位置ずれを抑制することができる。これによりガス抜き孔625を介してパイプシリンダ162内のガスを外部に排出可能とする状態における、ピストン164のパイプシリンダ162に対するパイプシリンダ162の軸心方向における位置ずれを抑えることができるので、上記のようにガス発生部材161の出力を有効に利用すること、およびプリテンショナユニット16を安全に動作させることが安定して実現可能となる。
【0088】
なお、本実施形態のような、クラッチ機構169を有するプリテンショナユニット16では、プリテンショナユニット16の動力が巻取ドラム13に最初に加わる時点を、クラッチパウル692が巻取ドラム13のクラッチギヤ137に係合した時点と言い換えることができるが、クラッチ機構を有さないプリテンショナユニットでは、後者の時点は存在しない。このため、クラッチ機構を有さないプリテンショナユニットでは、パイプシリンダ162内のガスを外部に排出可能な導通状態となるのは、プリテンショナユニットの動力が巻取ドラムに最初に加わる時点と表現される。
【0089】
また、パイプシリンダ162側面の周方向におけるガス抜き孔625の位置は、ガス抜き孔625からの排出ガスを、パイプシリンダ162の側面の一部に隣接して配置されるベースブロック167の内壁と、パイプシリンダ162の側面とによって形成される空間(特定空間)に放出することが可能な位置とされる。このように、排出ガスを囲いのある特定空間に放出可能な構成とすることによれば、高温の排出ガスがプリテンショナユニット16の外部に漏れる危険性を低減することができる。
【0090】
さらに、ガス抜き孔625から排出される排出ガスは、火炎を伴う高温のガスであるため、プリテンショナユニット16では、ガス抜き孔625から出た排出ガスを、最初に金属製等の耐熱性のある部材に当てるように構成されている。
【0091】
具体的には、図13に示されるように、上記特定空間は、ベースブロック167の内壁と、パイプシリンダ162の側面とによっては囲まれない開放部KSを有している。リトラクタ1の組み上げ状態では、当該開放部KSには、金属製のハウジング12の側板部121が配置されるように構成されている。そして、ガス抜き孔625は、開放部KSに配置される側板部121に排出ガスを最初に当てることが可能なように設けられる。より詳細には、ガス抜き孔625から出た排出ガスが側板部121のガス受け部RGに直接当たるように、パイプシリンダ162側面の周方向における、ガス抜き孔625の位置が調整される。そしてさらに、ガス抜き孔625の周方向の位置調整に加えて、ガス抜き孔625から出た排出ガスが側板部121のガス受け部RGに直接当たるように、ガス抜き孔625の形状も調整される。
【0092】
このように、ガス抜き孔625から排出される排出ガスを、金属製の側板部121に最初に当てる構成とすることによれば、排出ガスの温度を下げることができるので、合成樹脂製のベースブロック167の変形を防ぐことができる。なお、ここでは、金属製等の耐熱性のある部材として、ハウジング12の側板部121の一部を用いていたが、例えば、ベースプレート166を変形して、ベースプレート166の一部を耐熱性ある部材として上記側板部121の替わりに用いてもよい。また、耐熱性のある部材として、金属、セラミック等の部材を別途用意して、別途に用意した当該部材をベースブロック167に取り付けてもよい。
【0093】
また、図14に示されるように、ベースブロック167には、排出ガスを上記特定空間から導く通路(「ガス通路」とも称する)が設けられている。当該ガス通路は、複雑に入り組んで構成されているため、ガス抜き孔625から出た排出ガスは、ベースブロック167内のガス通路を複雑に移動することになる(図14中の矢印参照)。このように、排出ガスの移動通路を複雑に構成し、排出ガスを障害物に当てることによれば、ベースブロック167内で火炎を伴う排出ガスから火を消失させることが可能になり、プリテンショナユニット16外部への火の粉の流出を抑えることができる。
【0094】
また、図15に示されるように、本実施形態のカバープレート168には、カバープレート168の支持孔683の周囲から、ベースブロック167におけるパイプシリンダ162からの排出ガスの流入部方向にかけて、線状突部であるビード(補強ビード)BDが形成されている。
【0095】
このように、カバープレート168において、ベースブロック167のガスの排出付近、詳細には、特定空間およびガス通路の少なくとも1つを覆う位置にビードBDを設けることによれば、カバープレート168の強度を高め、排出ガスによるカバープレート168の変形を抑制することが可能になる。
【0096】
以上のように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1は、ウエビング11を巻き取る巻取ドラム13と、ウエビング11の巻き取り方向に、巻取ドラム13を回転させるプリテンショナユニット16とを備えている。そして、プリテンショナユニット16は、巻取ドラム13と連動回転可能なピニオンギヤ165と、ピニオンギヤ165に噛合するラック642を有し、ピニオンギヤ165を介して巻取ドラム13を巻き取り方向に回転させるピストン164と、ピストン164を移動可能に収容する筒状のパイプシリンダ162と、発生させたガスをシリンダ内の内部空間NSに満たして、当該ガスの圧力でピストン164を駆動するガス発生部材161とを有している。パイプシリンダ162は、筒状の側面において、ガスをパイプシリンダ162の外部に放出するためのガス抜き孔625を有し、ガス抜き孔625は、ガス発生前のピストン164の初期位置では、パイプシリンダ162内の内部空間NSと外部とがガス抜き孔625を介して導通しない位置であって、ガス発生後、ピストン164の移動に応じて変化したパイプシリンダ162内の内部空間NSと外部とがガス抜き孔625を介して導通した導通状態となる位置に設けられる。
【0097】
このようなシートベルト用リトラクタ1によれば、プリテンショナユニット16の動作開始時点において、パイプシリンダ162内の内部空間NSが密閉状態に保たれるので、発生ガスの圧力をピストン164の進行力に有効に利用することが可能になる。また、プリテンショナユニット16の動作後、パイプシリンダ162内のガスを外部に排出可能な状態となるので、パイプシリンダ162内のガス圧が高まり過ぎることを避けることができ、プリテンショナユニット16を安全に動作させることが可能になる。
【0098】
<変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0099】
例えば、上記実施形態では、断面略円形のパイプシリンダ162を用いていたが、これに限定されず、例えば、断面略矩形のパイプシリンダを用いてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 シートベルト用リトラクタ(リトラクタ)
11 ウエビング
12 ハウジングユニット(ハウジング)
13 巻取ドラム
16 プリテンショナユニット
161 ガス発生部材
162 パイプシリンダ
164 ピストン
165 ピニオンギヤ
166 ベースプレート
168 カバープレート
625 ガス抜き孔(貫通孔)
642 ラック
NS 内部空間
BD ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエビングを巻き取る巻取ドラムと、
前記ウエビングの巻き取り方向に、前記巻取ドラムを回転させるプリテンショナユニットと、
を備え、
前記プリテンショナユニットは、
前記巻取ドラムと連動回転可能なピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤに噛合するラックを有し、前記ピニオンギヤを介して前記巻取ドラムを前記巻き取り方向に回転させるピストンと、
前記ピストンを移動可能に収容する筒状のシリンダと、
発生させたガスを前記シリンダ内の内部空間に満たして、当該ガスの圧力で前記ピストンを駆動するガス発生部材と、
を有し、
前記筒状のシリンダは、側面において、前記ガスを前記シリンダの外部に放出するための貫通孔を有し、
前記貫通孔は、
ガス発生前の前記ピストンの初期位置では、前記シリンダ内の内部空間と前記外部とが前記貫通孔を介して導通しない位置であって、
ガス発生後、前記ピストンの移動に応じて変化した前記シリンダ内の内部空間と前記外部とが前記貫通孔を介して導通した導通状態となる位置に設けられるシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記貫通孔は、
前記プリテンショナユニットの動作によって、前記巻取ドラムに前記巻き取り方向への力が最初に加わったときに、前記導通状態となる位置に設けられる請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記プリテンショナユニットは、
前記ピニオンギヤの回転によりパウルを突出して、当該パウルを前記巻取ドラムのギヤに係合させることによって、前記巻取ドラムと前記ピニオンギヤとの連動回転を実現するクラッチ機構をさらに有し、
前記貫通孔は、
前記パウルが前記巻取ドラムのギヤに係合したときに、前記導通状態となる位置に設けられる請求項1または請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記ピストンの前記内部空間側の面には、シール部材が設けられる請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項5】
前記プリテンショナユニットは、
前記シリンダの側面の一部に隣接して配置されるブロック部材、
をさらに有し、
前記貫通孔は、
前記シリンダの側面の周方向において、前記ブロック部材の内壁と前記シリンダの側面の前記一部とによって形成される特定空間に前記ガスを排出ガスとして放出することが可能な位置に設けられる請求項1から請求項4のいずれかに記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項6】
前記特定空間は、前記ブロック部材の内壁と前記シリンダの側面の前記一部とによって囲まれない開放部を有し、
前記シートベルト用リトラクタは、組み上げた状態では、耐熱性の部材が前記開放部に位置するように構成され、
前記貫通孔は、
前記特定空間において、前記開放部に位置する前記耐熱性の部材に、当該貫通孔から放出される前記排出ガスを最初に当てることが可能に設けられる請求項5に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項7】
前記ブロック部材は、前記排出ガスを前記特定空間から導く通路を有し、
前記通路は、前記ブロック部材内において、複雑に入り組んで構成されている請求項5または請求項6に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項8】
前記プリテンショナユニットは、
前記シリンダおよび前記ブロック部材を覆うカバープレート、
をさらに有し、
前記カバープレートには、前記ブロック部材における前記特定空間および前記通路の少なくとも1つを覆う位置にビードが設けられる請求項7に記載のシートベルト用リトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−245947(P2012−245947A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121463(P2011−121463)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】