説明

シートベルト装置

【課題】妊婦の不快感を低減する。
【解決手段】リトラクタ1から繰り出されるウェビング2の先端をスリップガイド3に挿通して車体フロア4に固定する。この固定箇所とスリップガイド3との間のウェビング2にタングスルー5を挿通する。タングスルー5をウェビング2に対して位置調節自在に固定する。両端にバックル部9,タング部10をそれぞれ備えた帯状パッド8を設け、そのバックル部9にタングスルー5を装着し、タング部10をバックル7に装着する。帯状パッド8がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妊婦の使用に好適なシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には衝突事故の際の衝撃から乗員を保護するシートベルト装置が設けられている。この種の装置としては、リトラクタから繰り出されるウェビングの先端をスリップガイドに挿通して車体フロアに固定するとともに、該固定箇所と上記スリップガイドとの間のウェビングにタングスルーを挿通し、該タングスルーをシートを挟んで上記スリップガイドと反対側のバックルに装着する所謂3点式のシートベルト装置が広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−344866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この種のシートベルト装置では、ウェビングがシート着座状態の乗員の腹部を締め付けるため、妊婦が着用すると、不快感が生じる。
【0005】
本発明の目的は、妊婦の不快感を低減することができるシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、リトラクタから繰り出されるウェビングの先端をスリップガイドに挿通して車体フロアに固定するとともに、該固定箇所と上記スリップガイドとの間のウェビングにタングスルーを挿通し、該タングスルーをシートを挟んで上記スリップガイドと反対側のバックルに装着するシートベルト装置において、上記タングスルーをウェビングに対して位置調節自在に固定し、両端にバックル部,タング部をそれぞれ備えた拘束部材を設け、該拘束部材のバックル部に上記タングスルーを装着し、上記拘束部材のタング部を上記バックルに装着することで、上記拘束部材がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束するようにしたことを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、タングスルーのウェビングに対する取付位置を調節して、タングスルーを拘束部材のバックル部に装着する一方、拘束部材のタング部をシート側のバックルに装着すると、拘束部材がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束するように配置される。
【0008】
上記課題を解決するための第2の発明は、リトラクタから繰り出されるウェビングの先端をスリップガイドに挿通して車体フロアに固定するとともに、該固定箇所と上記スリップガイドとの間のウェビングにタングスルーを挿通し、該タングスルーをシートを挟んで上記スリップガイドと反対側のバックルに装着するシートベルト装置において、両端に固定部,タング部をそれぞれ備えた拘束部材を設け、上記ウェビングのタングスルー挿通箇所に拘束部材の固定部を着脱自在に固定し、上記拘束部材のタング部を上記バックルに装着することで、上記拘束部材がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束するようにしたことを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、ウェビングのタングスルー通過箇所に拘束部材の固定部を位置調節して固定する一方、拘束部材のタング部をバックルに装着すると、拘束部材がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束するように配置される。
【0010】
上記拘束部材は、シート着座状態の乗員の胸部を横切るように配置されるのが好ましい。
【0011】
上記拘束部材は、シート着座状態の乗員の太腿部を横切るように配置されるのが好ましい。
【0012】
上記シートのシートクッションには、シート着座状態の乗員の膝部を拘束する他の拘束部材を着脱自在に取り付けるのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、他の拘束部材がシート着座状態の乗員の膝部も拘束するので、乗員の拘束力がより高まる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、拘束部材がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束するので、妊婦の不快感を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明のシートベルト装置を示している。
【0017】
同図において、1はリトラクタで、このリトラクタ1から繰り出されるウェビング2の先端をスリップガイド3に挿通して車体フロア4に固定してある。この固定箇所とスリップガイド3との間のウェビング2にタングスルー5を挿通し、タングスルー5をシート6を挟んでスリップガイド3と反対側のバックル7に装着してある。つまり、このシートベルト装置は3点式と呼ばれるものである。なお、リトラクタ1は図1以外の図面では図示を省略してある。
【0018】
なお、スリップガイド3はウェビング2に挿通してあるが、妊婦が着用する場合には、スリップガイド3のウェビング2に対する取付位置を調節して固定することが好ましい。また、スリップガイド3近傍の両側のウェビング2をクリップ等の適宜の固定手段で互いに固定すれば、乗員である妊婦の拘束はさらに確実なものとすることができる。
【0019】
8は例えば発泡樹脂を含む帯状パッド(拘束部材)で、その両端にはバックル部9,タング部10をそれぞれ備えている。なお、ウェビング2と同様の通常のベルトにこれと別体の帯状パッドを挿通し、これら2つを合わせて拘束部材を構成するようにしてもよい(後述の帯状パッドもすべて同様)。
【0020】
そして、ウェビング2側のタングスルー5を図示しない固定具でウェビング2に固定してからバックル部9に装着し、タング部10をシート6側のバックル7に装着することで、帯状パッド8がシート着座状態の乗員(図示せず)の胸部を斜めに横切るように配置される。なお、帯状パッド8が乗員の腹部にかからないようにするため、バックル7を起立させてあるが、妊婦以外の人が着用する場合には、バックル7を前方へ倒して乗員の腰部の側方に配置すればよい。
【0021】
つまり、帯状パッド8が乗員の腹部を避けて配置されるので、帯状パッド8を用いた拘束時にあっても妊婦の不快感を低減することができる。さらに、リトラクタ1やウェビング2、スリップガイド3などは既存のものを利用できるので、製作コストの上昇が少なくて済む。
【0022】
図2は帯状パッドの他の態様を示している。
【0023】
この場合、タングスルー5を図1の位置よりも下方に固定し帯状パッド8を図1の位置よりも下方に位置させる。一方、バックル15が図1の位置よりも前方に設置してある。上記同様、帯状パッド(拘束部材)20は発泡樹脂を含み、その両端にはバックル部11,タング部12をそれぞれ備えている。そして、ウェビング2側のタングスルー5をバックル部11に装着し、タング部12をシート6側のバックル15に装着することで、帯状パッド20がシート着座状態の乗員(図示せず)の太腿部を斜めに横切るように配置される。
【0024】
なお、この例では、バックル15はシートクッション6aの側面で、図示の例では前後中間位置よりもやや前方側に設置され、帯状パッド20の装着専用のものをタングスルー5の装着用のバックル7とは別に設けている。またこのバックル15は例えば回動可能に構成され、使用しないときはシート6の上部(座面より上方)側に突出しないように収納できるようになっており、これによって、乗員着座時の邪魔にならないようにすることができる。
【0025】
ところで、図3に示すように、発泡樹脂を含む帯状パッド(他の拘束部材)120を、シートクッション6aの前面を覆うようにシートクッション6aに取り付けてもよい。帯状パッド120の一端はシートクッション6aの側面に固定される一方、その他端のタング部120aはシートクッション6aの側面のバックル21に装着される。つまり、シート着座状態の乗員(図示せず)の膝が帯状パッド120で拘束されることになるので、図1または図2の帯状パッド8,20による乗員拘束力をさらに強化することができる。
【0026】
図4は図1の変形例を示す図で、タングスルー5とは別の固定手段を用いるものを示している。
【0027】
発泡樹脂を含む帯状パッド(拘束部材)30の両端には、固定部31,タング部32がそれぞれ設けてある。そして、ウェビング2のタングスルー5通過箇所に帯状パッド30の固定部31を位置調節して固定する一方、帯状パッド30のタング部32をバックル7に装着すると、帯状パッド30がシート着座状態の乗員(図示せず)の胸部を拘束するように配置される。
【0028】
図5は固定部31の構造を示している。
【0029】
帯状パッド30の一端は、ベースプレート32のピン33に巻き付け、縫着部34によって係止してある。ベースプレート32には挟着部材35をピン36で枢支結合してあり、この挟着部材35とベースプレート32でウェビング2を挟持し、係止部材36のフック部36aを挟着部材35の表面に係合させてロックしている。なお、係止部材36の一端はピン37でベースプレート32に枢支結合してある。
【0030】
図6は図2の変形例を示している。
【0031】
発泡樹脂を含む帯状パッド(拘束部材)40の両端には、固定部41,タング部42がそれぞれ設けてある。そして、ウェビング2のタングスルー5通過箇所に帯状パッド40の固定部41を位置調節して固定する一方、帯状パッド40のタング部42をバックル15に装着すると、帯状パッド40がシート着座状態の乗員(図示せず)の太腿部を拘束するように配置される。なお、帯状パッド40の固定部41は図6と同じ構造になっている。なおバックル15は図2と同様に例えば回動可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のシートベルト装置を示す斜視図である。
【図2】図1の他の使用態様を示す図である。
【図3】膝拘束手段を備えたシートベルト装置を示す斜視図である。
【図4】図1の変形例を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】図2の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 リトラクタ
2 ウェビング
3 スリップガイド
4 車体フロア
5 タングスルー
6 シート
7 バックル
8 帯状パッド(拘束部材)
9 バックル部
10 タング部
20 帯状パッド(拘束部材)
30 帯状パッド(拘束部材)
31 固定部
32 タング部
40 帯状パッド(拘束部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リトラクタから繰り出されるウェビングの先端をスリップガイドに挿通して車体フロアに固定するとともに、その固定箇所と前記スリップガイドとの間のウェビングにタングスルーを挿通し、該タングスルーをシートを挟んで上記スリップガイドと反対側のバックルに装着するシートベルト装置において、
上記タングスルーを前記ウェビングに対して位置調節自在に固定し、
両側にバックル部、タング部をそれぞれ備えた拘束部材を設け、
該拘束部材のバックル部に上記タングスルーを装着し、
上記拘束部材のタング部を上記バックルに装着することで、
上記拘束部材がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束するようにしたことを特徴とするシートベルト装置。
【請求項2】
リトラクタから繰り出されるウェビングの先端をスリップガイドに挿通して車体フロアに固定するとともに、該固定箇所と上記スリップガイドとの間のウェビングにタングスルーを挿通し、該タングスルーをシートを挟んで上記スリップガイドと反対側のバックルに装着するシートベルト装置において、
両側に固定部,タング部をそれぞれ備えた拘束部材を設け、
上記ウェビングのタングスルー挿通箇所に拘束部材の固定部を着脱自在に固定し、
上記拘束部材のタング部を上記バックルに装着することで、
上記拘束部材がシート着座状態の乗員の腹部以外の部分を拘束するようにしたことを特徴とするシートベルト装置。
【請求項3】
上記拘束部材は、シート着座状態の乗員の胸部を横切るように配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートベルト装置。
【請求項4】
上記拘束部材は、シート着座状態の乗員の太腿部を横切るように配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートベルト装置。
【請求項5】
上記シートのシートクッションに、シート着座状態の乗員の膝部を拘束する他の拘束部材を着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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