説明

シートロール

【課題】シートロールを巻き取る際に巻き取られたシートの厚みが増加しても、シートロールに帯電する静電気を除電可能なシートロールを提供する。
【解決手段】連続するシート4を円筒状の巻き芯3に巻き付けたシートロール1であって、巻き芯2の内周面2aを滑動可能に、巻き芯2の内周面2aの内側に位置する内周部3aと、シートロール4の外周面4aの外側を通ってシートロール1の一方の側端から他方の側端まで延びる外周部3bと、外周部3bの両端からシートロール1の両側面の外側を延びて内周部3aにそれぞれ連結する側方連結部3cとからなる、導電性の除電部3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気により帯電しやすい材料からなる長尺シートが円筒状の巻き芯にロール状に巻かれてなる、シートロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム、紗、紙、およびこれらの貼り合わせなどの絶縁体シートの製造において、長尺シートを円筒状の巻き芯に巻き取ってシートロールに形成し、このシートロールを印刷装置等の様々な使用装置に供給する。しかし、これらのシートを巻き芯に巻き取る工程やシートロールから巻き出す工程において静電気が発生し、埃などの付着物によるシート汚れや、シートの各層が静電気によりその内層または外層と密着することによる、シートのしわや破れを引き起こす原因となっていた。
【0003】
この問題を避けるために、シートを巻き芯に巻き取る行程の前に、作業者が除電グローブを装着して、シートや巻き芯に除電グローブで触れることにより、シートや巻き芯を手動で除電する方法が行われている。
【0004】
また、導電性の材料で製造された巻き芯や導電性の緩衝材を巻き付けた巻き芯が提案されている。これらの導電性の巻き芯または導電性の緩衝材を接地し、その巻き芯の上にシートを巻き取ることにより、導電性の巻き芯または導電性の緩衝材を介して除電する方法も考えられる。例えば、特許文献1には、導電性の材料で製造された巻き芯を接地し、その巻き芯の上にシートを巻き取ることにより、導電性の巻き芯を介してロールシートの除電を行う巻き取り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、手動で除電を行う方法には、除電グローブの装着や、シートや巻き芯に個々に除電グローブで触れて除電する除電作業が、作業者の手間になり、また巻き芯にシートを巻き取る工程や巻き出す工程の途中では、発生した静電気の除去ができず、十分な除電効果が得られなかった。
【0007】
また、導電性の巻き芯または導電性の緩衝材を接地し、その巻き芯の上にシートを巻き取る方法では、巻き芯とシートの接触部分近傍は除電できるものの、巻き芯にシートを巻き取る過程で、巻き取られたシートが重なってシートロールの半径方向の厚みが増加し、新たに巻き取られたシートが巻き芯から半径方向に遠ざかるにつれて、巻き芯から半径方向に離れた位置のシートには十分な除電効果が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シートロールを巻き出す際に巻き取られたシートの厚みが減少しても、シートロールに帯電する静電気を除電可能なシートロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるシートロールは、長尺シートを円筒状の巻き芯に巻き付けたシートロールであって、前記巻き芯の内周面を滑動可能に、前記巻き芯の内周面の内側に位置する内周部と、前記シートロールの外周面の外側を通って前記シートロールの一方の側端から他方の側端まで延びる外周部と、前記外周部の両端から前記シートロールの両側面の外側を延びて前記内周部にそれぞれ連結する側方連結部とからなる、導電性の除電部を備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、内周部が、「巻き芯の内周面の内側に位置する」とは、内周部が内周面の内側に位置するものであれば、内周部が巻き芯の内周面の内側を貫通していてもよく、内周部が巻き芯の両側端の内側にのみ位置するなど、内周部が巻き芯の内周面の内側の一部にのみ位置していてもよい。
【0011】
内周部が「内周面を滑動」とは、内周面に沿って内周部が相対的に動くものであればよく、内周部が内周面を滑って動くことだけでなく、内周部が内周面に沿って転がって動くことも含む。
【0012】
また、本発明によるシートロールにおいて、前記除電部が、可撓性の紐体であってもよい。
【0013】
また、本発明によるシートロールにおいて、前記除電部は、前記内周部と前記側方連結部と前記外周部を環状に連結したものであり、前記内周部と前記側方連結部と前記外周部の少なくとも1つが前記環状の連結を解除可能な接続部を備えたものであってもよい。
【0014】
「環状に連結」とは、除電部が全体として環状になるように、前記内周部と前記側方連結部と前記外周部とが連結されていればよい。また、接続部は、例えば一対の接続端から構成され、一方の接続端をオス形状、他方の接続端をメス形状とする一対のコネクタであってもよく、一方の接続端をバックルなどの留め金形状、他方の接続端を可撓性のベルト形状とするものであってもよく、両方の接続端に互いに掛合可能な金具を設け、両接続端の金具を互いに掛合させるものでもよく、2つの紐状の接続端を蝶結びなどで結んでもよく、2つの接続端を脱着可能に連結する周知の様々な手段を含む。
【0015】
また、本発明によるシートロールにおいて、前記外周部が、前記シートロール外部に前記外周部を係止させるための係止部を備えてもよい。
【0016】
また、本発明によるシートロールにおいて、前記外周部が、前記シートロールから前記シートを巻き出す際に、巻き出されたシートの表面が、前記外周部上を滑動可能な位置に設けられていてもよい。
【0017】
また、本発明によるシートロールにおいて、前記除電部のうち、2つの前記側方連結部または前記外周部と前記内周部が長さ調節可能なものであることが好ましい。
【0018】
ここで、「長さ調節可能」とは、例えば、2つの側方連結部と外周部と内周部に個々に長さを調整する長さ調節機構をそれぞれ備えることにより長さを調節可能にしてもよく、除電部全体を環状に連結した可撓性の除電材料で構成し、側方連結部、外周部、内周部のいずれか1箇所以上を伸縮可能にする長さ調節機構を設けることで、除電部の環周の長さを調整可能にしてもよい。
【0019】
また、本発明によるシートロールにおいて、内周部が軸部を備え、前記側方連結部が該軸部を回動可能に支持する軸受けを備え、該軸受けにより前記内周部の軸部を支持していてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるシートロールによれば、巻き芯の内周面を滑動可能に、巻き芯の内周面の内側に位置する内周部と、シートロールの外周面の外側を通ってシートロールの一方の側端から他方の側端まで延びる外周部と、外周部の両端からシートロールの両側面の外側を延びて内周部にそれぞれ連結する側方連結部とからなる、導電性の除電部を備えたため、シートロールにシートを巻きつける工程または巻き出す工程で、巻き芯に巻かれたシートの厚みが増減しても、シートロールの両側面および外周面から除電でき、シートロールを良好に除電できる。
【0021】
また、本発明によるシートロールにおいて、除電部が、内周部と側方連結部と外周部を環状に連結したものであり、内周部と側方連結部と外周部の少なくとも1つが環状の連結を解除可能な接続部を備えたものである場合には、除電部の環状の連結を解除した状態で、シートロールから除電部を取り外し、取り外した除電部を新たなシートロールに取り付けて、除電部を連結することにより、除電部を繰り返し使用することができ、省エネルギー性および省コスト性に優れる。
【0022】
また、本発明によるシートロールにおいて、外周部が、シートロール外部に外周部を係止させるための係止部を備えた場合には、例えば、係止部によってシートロールを使用する装置に外周部を係止させることにより、巻き芯及びシートが回転しても、外周部が回転することなく所定の位置に位置できるため、安定してシートロールを除電できる。
【0023】
また、本発明によるシートロールにおいて、外周部が、シートロールからシートを巻き出す際に、巻き出されたシートの表面が、外周部上を滑動可能な位置に設けられている場合には、巻き出されたシート表面から直接除電できるため、巻き出されたシートを良好に除電できる。
【0024】
また、本発明によるシートロールにおいて、除電部が、可撓性の紐体である場合には、除電部を巻き芯の形状に合わせて変形させることにより、1つのサイズの除電部を、複数のサイズのシートロールに適用でき、複数のサイズのシートロールに対し除電部を共通化できるため、省エネルギー性および省コスト性に優れる。
【0025】
また、本発明によるシートロールにおいて、除電部のうち、2つの側方連結部または外周部と内周部が長さ調節可能なものである場合には、除電部の長さを巻き芯の形状に合わせて増減させることにより、1つのサイズの除電部を、複数のサイズの巻き芯に適用でき、複数のサイズのシートロールに対し除電部を共通化できるため、省エネルギー性および省コスト性に優れる。
【0026】
また、本発明によるシートロールにおいて、内周部が軸部を備え、側方連結部が軸部を回動可能に支持する軸受けを備え、軸受けにより内周部の軸部を支持している場合には、巻き芯の回転に応じて内周部が回転容易であるため、巻き芯に対して内周部をよりなめらかに滑動させることができ、安定してシートロール1を除電できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態によるシートロールを使用するための孔版印刷装置の概略構成を示す図
【図2】第1の実施形態に使用されるシートロールの正面図とA−A断面図
【図3】第1の実施形態におけるシートロールの接続部の側面図と平面図
【図4A】第1の実施形態におけるシートロールの使用例の図
【図4B】第1の実施形態におけるシートロールの別の使用例の図
【図5】第2の実施形態におけるシートロールの側面図
【図6】第3の実施形態における除電部の一部を拡大した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、孔版印刷装置に使用される本発明の第1の実施形態のシートロールについて説明する。
【0029】
ここで、本第1の実施形態のシートロールは、装置、例えば、孔版印刷装置などにセットして使用するものであって、シートを満巻きにしたときの未使用のシートロールを意味する。
【0030】
図1は本明細書に記載された各実施形態のシートロール1が使用される孔版印刷装置の概略構成図であり、図2は第1の実施形態のシートロール1の正面図とA−A断面図であり、図3は第1の実施形態におけるシートロール1の接続部の側面図と平面図であり、図4Aおよび図4Bは第1の実施形態におけるシートロール1の使用例の図である。
【0031】
孔版印刷装置は、図1に示すように、原稿の画像を読み取る読取部10、読取部10で読み取られた画像情報に基づいて孔版原紙であるシート4に製版処理を施す製版部20、製版部20において製版されたシート4を用いて印刷用紙に印刷を施す印刷部30、印刷部30に印刷用紙を給紙する給紙部40、印刷済みの印刷用紙を排出する排紙部50、および使用済みのシート4を廃棄する排版部60を備えている。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0032】
読取部10は、イメージスキャナであり、副走査方向に搬送される原稿の画像の読み取りを行うラインイメージセンサ12と原稿送りローラ14とを有している。
【0033】
製版部20は、原紙ロール部21と、複数個の発熱体が一列配列されてなるサーマルヘッドを有する製版ユニット22と、原紙送りローラ23、24と、原紙案内ローラ25,26,27と、原紙カッタ28とを有している。
【0034】
そして、原紙ロール部21には、製版前の長尺の孔版原紙シート4が巻き芯2に券回されたシートロール1がマスターホルダーである支持部21aに交換可能な状態で装着されている。また、支持部21aは、シートロール1の巻き芯2の内周面2a内を貫通し、巻き芯2を回転自在に軸支する回転軸である。
【0035】
印刷部30は、多孔金属板、メッシュ構造体などのインク通過性の円筒状の印刷ドラム31、印刷ドラム31の内部に配置されたスキージローラ32とドクターローラ33とインク供給ポンプ(図示省略)を有するインク供給装置34、およびプレスローラ35を有している。ドラムの外周面には製版済シート4が巻き付けられて装着されるようになっている。
【0036】
給紙部40は、印刷用紙Pが載置される給紙台41と、給紙台41より印刷用紙Pを一枚ずつ取り出すピックアップローラー42と、印刷用紙Pを印刷ドラム31とプレスローラ35との間に送り出すタイミングローラ43とを有している。
【0037】
排紙部50は、印刷用紙Pを印刷ドラム31より剥ぎ取る剥取爪51と、排紙送りベルト部52と、印刷済みの印刷用紙Pが積載される排紙台53とを有している。
【0038】
排版部60は、印刷部30の一方の側に設けられ、印刷ドラム31から引き剥がされた製版済シート4が送り込まれる排版ボックス61と、印刷ドラム31から使用済み製版済みシート4を引き剥がして排版ボックス61内へ送り込む排版ローラ62とを有している。
【0039】
本実施形態のロールシート1が使用される孔版印刷装置の作用について説明する。
【0040】
まず、インク供給装置34により印刷ドラム31の内側に所定の色の印刷インクが供給され、印刷ドラム31が図示省略した回転駆動手段により自身の中心軸線の周りに図にて反時計廻り方向へ回転駆動され、印刷ドラム31の回転に同期して所定のタイミングにて印刷用紙Pがタイミングローラ43により図にて左方より右方へ移動する状態にて印刷ドラム31とプレスローラ35との間に供給され、印刷用紙Pがプレスローラ35より印刷ドラム31の外周面の巻き付け装着されている製版済シート4に対し圧接されることにより、印刷用紙Pに対して所定の色の印刷インクによる孔版印刷が行われる。印刷済みの印刷用紙Pは、剥取爪51によって印刷ドラム31から剥ぎ取られ、排紙送りベルト部52によって排紙台53まで搬送される。
【0041】
そして、以上の給紙部40、印刷部30、排紙部50の構成要素による印刷用紙Pへの印刷動作がユーザによって指定された枚数分繰り返された後、使用済みの製版済シート4は、印刷ドラム31から引き剥がされ、排版ローラ62によって排版ボックス61内に送り込まれる。上記の印刷動作ごとに、製版部20は、シートロール1から、原紙送りローラ23、24と、原紙案内ローラ25,26,27によりシート4を搬送することにより、シート4を所定量巻きだして、製版ユニット22で製版し、原紙カッタ28で切断する製版動作を行う。
【0042】
図2を用いて、上記孔版印刷装置にセットされている本実施形態のシートロール1について説明する。
【0043】
シートロール1のシート4は、プラスチックフィルム、紗、紙、およびこれらの貼り合わせなどのシートであるものとする。なお、本実施形態に限られず、シートロール1のシートは、帯電するあらゆる材料で構成されてよい。また、シートは、巻き芯上にシートロール状に巻き付けることができるものであれば、どのような幅及び厚みであってもよい。
【0044】
本実施形態では、シート4は、熱可塑性フィルムと多孔性支持体とが重ね合わされてなるものであり、厚みは10〜300μmである。シート4の多孔性支持体としては、たとえば、和紙、不織布、人工繊維または合成膜などが用いられる。多孔性支持体の厚さとしては、20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μm、特の好ましくは30〜60μmである。また、熱可塑性フィルムとしては、たとえば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、それぞれの共重合体、およびそれらのブレンド物等からなる従来公知のフィルムが挙げられるが、穿孔感度の点からはポリエステルおよびその共重合体またはブレンド物が好ましい。ポリエステルとしては、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートとエチレンテレフタレートとの共重合体、ブチレンテレフタレートとヘキサメチレンテレフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体、エチレンテレフタレートとエチレン−2,6−ナフタレートとの共重合体およびこれらのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性フィルムは、少なくとも1軸方向に延伸されているものが好ましい。より好ましくは2軸延伸フィルムである。また、厚さは0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μm、特に好ましくは0.5〜2μmである。シート4の熱可塑性フィルムと多孔性支持体とは、通常の状態で剥がれることなく、また穿孔やインク通過を阻害しないものであれば如何なる接着方法を用いてもよい。接着剤としては、酢酸ビニル系、アクリル系、塩化ビニル酢酸ビニル共重合系、ポリエステル系、ウレタン系のものが用いられる。あるいは紫外線硬化型接着剤として、ポリエステル系アクリレート、ウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、ポリオール系アクリレートと光重合開始剤の配合物であるものが好ましく、特にウレタンアクリレートを主成分とするものが好ましい。また、これらに必要に応じて、他の添加剤、たとえば帯電防止剤、滑剤等が添加されてもよい。
【0045】
シートロール1の巻き芯2は、素材が紙であり、幅27cm、内径4.5cm、外径5.0cm程度の大きさに構成される。なお、巻き芯は、紙、プラスチック、金属、ゴム等、円筒状に成型できるあらゆる材料で構成されて良い。プラスチック製の巻き芯の素材として、一例として、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PS(ポリスチレン)、FRP(繊維強化プラスチック)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)などの樹脂を用いることができる。
【0046】
巻き芯2は、シート4を巻き付けてシートロール状に構成できる大きさであれば、いかなるサイズであってもよく、種々の半径、厚みに構成することができる。
【0047】
次に、除電部3の構成について説明する。本第1の実施形態の除電部3は、巻き芯2の内周面2aを滑動可能に、巻き芯2の内周面2aの内側に位置する内周部3aと、シートロール1の外周面4aの外側を通ってシートロール1の一方の側端から他方の側端まで延びる外周部3bと、外周部3bの両端からシートロール1の両側面の外側を延びて内周部3aにそれぞれ連結する側方連結部3cとからなる。
【0048】
本実施形態においては、除電部3の内周部3a、外周部3bおよび側方連結部3cは、抵抗率100〜200Ω/m程度の導電性紐(日工テクノ)製、商品名「ベキスタット」)を接続部で環状に連結した1.6mmの厚さの可撓性の紐体である。
【0049】
なお、除電部3を構成する導電性材料は、導電性であればあらゆる材料を用いることができる。一例として、紐状に成形可能な導電性素材として、例えば、ステンレス、硫酸銅、タングステン、鉄などの導電性金属から選ばれる少なくとも1以上の金属とアクリル繊維を練り込みまたは混紡した材料を用いることができる。また、薄片上に成形可能な導電性材料として、ステンレス、銅、タングステン、鉄などの導電性金属から選ばれる少なくとも1以上の金属があげられる。また、内周部3a、側方連結部3c、外周部3bごとに、それぞれ異なる材料から構成されてもよく、内周部3a、側方連結部3c、外周部3bのいずれか1つ以上が複数の材料から構成されていてもよい。また、アキレス株式会社製「STポリ」などの導電性紐や日本バイリーン株式会社製「電気とーる」等の導電性不織布を帯状に加工したものも適用可能である。
【0050】
また、除電部3は、シートロール1の回転を妨げないものであり、装置内部に挿入可能な形状であれば様々な形状であってよい。
【0051】
内周部3aは、シートロール1の安定した回転を妨げないために、シートロール1の回転を支持する支持部21aと巻き芯2の間の間隙に収まる厚さであれば、いかなる厚さでもよいが、安定した回転を得るためには、支持部21aと巻き芯2の間に挟まれる部分は薄ければ薄い程よく、例えば、5mm以下の厚さであることが好ましく、さらに好ましくは2mm以下の厚さであることが好ましく、最も好ましくは0.5mmの厚さであることが好ましい。
【0052】
側方連結部3cや外周部3bは装置の遊び空間に収納可能な大きさであれば、いかなる形状でもよい。
【0053】
例えば、除電部3を構成する内周部3a、側方連結部3c、外周部3bは、それぞれ紐体、棒体、薄板状、もしくはこれらの組み合わせであってよい。また、除電部3を構成する内周部3a、側方連結部3c、外周部3bのうちの一部または全部が可撓性であってもよい。
【0054】
図2に示すように、本実施形態の除電部3は、除電部3が、内周部3aと側方連結部3cと外周部3bを環状に連結したものであり、内周部3aと側方連結部3cと外周部3bの少なくとも1つが環状の連結を解除可能な接続部3dを備えている。
【0055】
図3は第1の実施形態におけるシートロール1の接続部の側面図と平面図である。図3に示すように、接続部3dは、導電性の紐の一方の端3d3により保持された留め輪3d1からなる一方の接続端と、導電性の紐の他方の端3d2からなる他方の接続端から構成される。導電性の紐の一方の端3d3は、留め輪3d1の中央棒3d1aの周りを一周するように折り返した輪構造に構成されることにより、留め輪3d1を保持している。そして、導電性の紐の他方の端3d2を留め輪のフレーム3d1bに掛け渡すことにより、接続部3dにおいて留め輪3d1と導電性の紐の他方の端3d2が脱着可能に連結される。また、図3に示すように、導電性の紐の他方の端3d2を留め輪3d1のフレーム3d1bに掛け渡す長さを変えることにより、除電部3の環周が調整可能である。
【0056】
また、接続部3dは、一方の接続端をオス形状、他方の接続端をメス形状とする一対のコネクタにより構成されてもよく、互いに掛合可能なe字型金具をそれぞれ備えた2つの接続端により構成されてもよく、蝶結びなどで結ぶことができる導電性の紐の端3d2、3d3により構成されてもよく、接続部3dを構成する2つの接続端を脱着可能に連結する周知の様々な手段で接続するものであってよい。また、接続部3dとは別に、長さ調節機構を設ける構成としてもよい。
【0057】
本実施形態では、除電部3が可撓性であるため、除電部3の自重によりシートロール1の側面の形状に合わせて変形し、シートロール1の側面と側方連結部3cが接触している。外周部3bは、図2のように外周部3bをシートロール1の真下に位置させた場合には、シートロール1の外周と外周部3bとの間に間隙が存在する。本実施形態では、この間隙が1〜30mmになるように、除電部3の環周が調整されている。なお、外周部3bは、シートロール1の外周面4aに対して除電効果を奏する範囲であれば、シートロール1の外周面4aから任意の距離に配置されてよく、例えば、50mm以下の距離に配置されることが好ましい。
【0058】
次に、シートロール1の作用について説明する。まず、除電部3のないシートロールを用意し、除電部3の接続部3dを外した状態で、除電部をシートロール1に取付け、接続部3dを接続させて本実施形態のシートロール1とする。
【0059】
次いで、シートロール1を先述の孔版印刷装置の支持部21aに回転可能にセットし、孔版印刷装置の所定の位置にシートの始端を掛け渡すと、装置の駆動に応じてシート4が巻き出される。
【0060】
本実施形態によれば、図4Aに示すように、外周部3bが、シートロール1からシートを巻き出す際に、巻き出されたシートの表面4bが、外周部3b上を滑動可能な位置に配置される。図4Aに示すように、外周部3bは、巻き出されたシート表面4bとの摩擦力により図4Aの右側に向かって引っ張られる張力を受ける。内周部3aと外周部3bと側方連結部3cによって構成される環の内周部3aが巻き芯2の内周面2aの内側に位置しているため、外周部3bは張力で引っ張られて除電部3の環周の範囲で図4Aの右側に移動し、巻き出されたシートの表面4b上に位置し、シートの表面4bを滑動する。また、内周部3aと外周部3bと側方連結部3cによって構成される環のうち外周部3bが張力を受けるため、内周部3aと側方連結部3cも連動して張力を受けてロールシート1の巻き芯2の内周面2aと側壁にそれぞれ沿った形状に変形し、側方連結部3cがシートロール1の側面と接触する。
【0061】
なお、シート4の除電により、除電部3が収集した電荷は、アースされた支持部21aを介して、除電部3から排出される。
【0062】
本実施形態によるシートロール1は、巻き芯2に巻き付けられたシートの厚みが増減しても、シートロール1の両端および外周面4aから除電でき、シートロール1を良好に除電できる。また、外周部3bおよび側方連結部3cがシート表面4bまたはシートロール1の側面とそれぞれ直接接触するため、外周部3bは直接シート外周面4bを良好に除電できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、除電部3が、内周部3aと側方連結部3cと外周部3bを環状に連結したものであり、内周部3aに環状の連結を解除可能な接続部3dを備えたため、除電部3の環状の連結を解除した状態で、シートロール1から除電部3を取り外し、取り外した除電部3を新たなシートロール1に取り付けて、除電部3を環状に連結することにより、除電部3を繰り返し使用することができ、省エネルギー性および省コスト性に優れる。また、様々な巻き取り装置や印刷装置等の装置に応用可能であり、新たな設備を設営することなく除電することができる。
【0064】
また、除電部3において、内周部3a、外周部3bおよび側方連結部3cが、可撓性であるため、除電部3を巻き芯の形状に合わせて変形させることにより、1つのサイズの除電部3を、複数のサイズのシートロール1に除電部3を適用でき、複数のサイズのシートロール1に対し除電部3を共通化できるため、省エネルギー性および省コスト性に優れる。
【0065】
また、本実施形態のように、除電部3における内周部3a、外周部3bおよび側方連結部3cが細い紐体であるため、軽量で薄く、取り付けた際に装置への負担が小さい。除電部3が、帯体、針金状、薄板状であっても同様の効果が得られる。さらに、本実施形態では、除電部3が1.6mmの厚みの紐であるため、また、内周部3aの中心軸と巻き芯の間に挟まれる部分が間隙に対して十分薄く、シートロール1の回転を支持する中心軸などの支持部と巻き芯の間の間隙に収まりやすく、安定した回転を得ることができる。
【0066】
また、除電部3のうち、内周部3aと外周部3bと側方連結部3cの全てを1種類の導電性の紐で構成したため、単純な構成で、複数の素材を用意する必要がないため、製造が簡易であり、省コスト性に優れる。
【0067】
また、除電部3が、接続部3dで長さ調節可能なものであるため、除電部3の環周を巻き芯2のサイズに合わせて増減させることにより、1つのサイズの除電部3を、複数のサイズの巻き芯2に適用でき、複数のサイズのシートロール1に対し除電部3を共通化できるため、省エネルギー性および省コスト性に優れる。
【0068】
本第1の実施形態の別の使用例として、外周部3bは、シート4の表面4a、4bに除電部3の外周部3bが触れない位置に外周部3bを位置させてもよい。例えば、外周部3bを図4Bに示すように自重によりシートロール1の下方に位置させてもよい。この場合、外周部3bとシート4の表面4a、4bとは非接触であるが、側方連結部3cとシートロール1側面の接触による除電効果が得られる。また外周部3bがシート4に接触していなくても、外周部3bとシート表面4a、4bが除電効果の得られる距離に近接するよう除電部3の長さを調節することにより、シートロール1の外周部3bからも除電効果が得られる。
【0069】
また、上記の場合、除電部3から電荷を排出するために、孔版印刷装置側において、除電部3の外周部3bまたは側方連結部3cに接触可能な位置に、接地された金属材料からなるアース部を配置する。そして、断続的または連続的にアース部と除電部3の外周部3bまたは側方連結部3cを接触させることで、除電部3から電荷を排出する。
【0070】
なお、除電部3から電荷を排出するための方法として、除電部3を除電可能であればいかなる方法も用いることができる。例えば、シートロール1を支持する支持部21aが接地されている場合、巻き芯2を導電性ゴムや金属等の導電素材で構成することにより、シート4の除電により除電部3が収集した電荷を、巻き芯2を介して接地された支持部21aに排出してもよい。また、特許文献1に記載されたような除電装置を孔版印刷装置などの装置内にさらに設け、除電装置により、外周部3bや側方支持部3cから電荷を排出してもよい。
【0071】
以下、本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、本明細書の各実施形態および変形例は、本発明の本質を逸脱しない範囲において任意の組合せおよび各種の変形を包含する。図5は第2の実施形態におけるシートロール1の側面図であり、図6は、第3の実施形態における除電部3の内周部3aと側方連結部3cの断面図である。
【0072】
第2の実施形態として、シートロール1の回転時に除電部3を所定の位置に保持できるよう、除電部3の外周部3bを装置に係止するなどして配置してもよい。例えば、図5のように、外周部3bが、シートロール1外部に外周部3bを係止させるためのフック形状や輪形状などの係止部3eをさらに備えてもよい。
【0073】
上記の場合には、シートロール1を使用する装置に係止部3eを係止させることにより、巻き芯2及びシート4が回転している間も、外周部3bを係止した位置に保持させることができ、より安定してシートロール1を除電できる。また、係止部3eは、外周部3bを装置に係止するものであれば、周知の種々の種類の係止部を適用可能である。また、装置側にフック形状等の係止部3eを設けて、外周部3bに直接係止しても同様の効果が得られる。
【0074】
また、第3の実施形態として、除電部3の内周部3aが巻き芯2の内周面2aを滑動容易にするための機構を備えてもよい。例えば、図6に示すように、内周部3aが軸部を設け、側方連結部3cが軸部を回動可能に支持する軸受け3c1を備え、軸受け3c1により内周部3aの軸部を支持してもよい。
【0075】
かかる場合には、巻き芯2の回転に応じて内周部3aが回転容易であるため、巻き芯2の回転に対して内周部3aをよりなめらかに滑動させることができるため、巻き芯2が回転しても、内周部3aが安定して所定の位置に位置することができ、安定してシートロール1を除電できる。また、内周部3aに、軸部と軸部を回動可能に支持する軸受けを備え、軸受けを介して巻き芯2の内表面2aと内周部3aが内接するものであっても同様の効果が得られる。
【0076】
また、シートロール1は、巻き芯2、シート4、除電部3以外にも、適宜別の要素を含んでもよい。例えば、巻き芯2およびシート4の間に適宜クッション材を備えてもよい。クッション材は、シートロール1を構成することができるものであれば、どのような厚みでもよく、いかなる素材で構成されてもよい。例えば、クッション材の素材としては、発砲ポリウレタン、発泡ポリエチレンなどのスポンジ状の素材、NBRゴム(ニトリルゴム)、シリコンゴム、フッ素ゴム、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)などのゴム状の素材、段ボール等のようなハニカム構造の素材などを用いてもよい。クッション材の厚みは、30mm以下であれば、クッション材を巻き芯に巻き付ける際に搬送しやすいため好ましく、さらに2−20mmが好ましい。また、厚みが2−10mmであれば、巻き芯に対する巻き付けが容易であるためさらに好ましい。
【0077】
なお、本発明のシートロールは、各実施形態に限定されず、内周部をシートロールの回転を支持する中心軸などの支持部とシートロールの巻き芯の内周面の間に、除電部の内周部を滑動可能に位置させることが可能な装置であれば、種々の周知の装置に使用可能なものである。例えば、一軸式巻き取り装置、二軸式ターレット巻き取り装置など一般的な巻き取り装置に、本発明のシートロールの巻き芯に除電部をとりつけたものをセットし、巻き芯に長尺シートを巻き取って本発明のシートロールを得ることができる。すなわち、本発明のシートロールは、シートを巻き取る巻き取り装置にも適用可能であり、シートの巻き出し際に本発明の除電効果を奏するような装置に使用してもよく、シートの巻き取りの際に本発明の除電効果を奏するような装置に使用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 シートロール
2 巻き芯
2a 内表面
3 除電部
3a 内周部
3b 外周部
3c 側方連結部
3d 接続部
3e 係止部
4 シート
4a 外周面
21a 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シートを円筒状の巻き芯に巻き付けたシートロールであって、
前記巻き芯の内周面を滑動可能に、前記巻き芯の内周面の内側に位置する内周部と、前記シートロールの外周面の外側を通って前記シートロールの一方の側端から他方の側端まで延びる外周部と、前記外周部の両端から前記シートロールの両側面の外側を延びて前記内周部にそれぞれ連結する側方連結部とからなる、導電性の除電部を備えたことを特徴とするシートロール。
【請求項2】
前記除電部が、前記内周部と前記側方連結部と前記外周部を環状に連結したものであり、前記内周部と前記側方連結部と前記外周部の少なくとも1つが前記環状の連結を解除可能な接続部を備えたことを特徴とする請求項1記載のシートロール。
【請求項3】
前記外周部が、前記シートロール外部に前記外周部を係止させるための係止部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のシートロール。
【請求項4】
前記外周部が、前記シートロールから前記シートを巻き出す際に、巻き出されたシートの表面が、前記外周部上を滑動可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のシートロール。
【請求項5】
前記除電部が、可撓性の紐体であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のシートロール。
【請求項6】
前記除電部のうち、2つの前記側方連結部または前記外周部と前記内周部が長さ調節可能なものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のシートロール。
【請求項7】
前記内周部が軸部を備え、前記側方連結部が該軸部を回動可能に支持する軸受けを備え、該軸受けにより前記内周部の軸部を支持しているものであることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のシートロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−148887(P2012−148887A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11000(P2011−11000)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】