説明

シート巻出し装置及びシート巻出し方法

【課題】 巻取られた織布、編地、合成樹脂等の原反ロール4からシートを巻出す際に、原反ロール4のシート先端部S0を、人手を掛けないで自動的に原反ロール4から巻出して、シートSに皺やねじれ等を発生させることなく、下流にシートSを供給することのできるシート巻出し装置及び巻出し方法を提供する。
【解決手段】 原反ロール4の外周面に平行して移動可能なビーク14を配設し、シートSの素材等に適合した押圧力で押付けて、原反ロールを回転させてビーク先端部14Aを原反ロール4のシート先端部S0部分に挿入して、シート先端部S0を原反ロール4の外周から開放して下流側に供給しする。また、シート搬送手段2のシート搬送速度を原反ロールのシート巻出し速度より高速に設定して、シートSに引張り勝手の力を付与しながら搬送することにより、シートに存在する可能性のある少量の皺やねじれ等を解消して、シートを良好な状態で下流に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取られた織布、編地、合成樹脂等の原反ロールを巻出して、シートを小巻のロールに巻戻す際、あるいは所定長さのシートに切断する際のシート巻出し装置及びシート巻出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象とするシート類に皺を発生させることなくシートを巻出す技術が提案されているが、これらの技術は巻出すシートの先端部をシート搬送の下流方向に配置されたローラ等搬送装置に供給して、連続した巻出しを開始した以降のシート搬送技術に関するものである。(特許文献1、特許文献2参照)
【0003】
また、金属製コイルを巻出す際にシートコイルの巻き癖を矯正する技術として、原反ロールの外周に傾斜体あるいは爪を押付けてコイルの先端部に差込んで、コイルの巻取り状態を開放する技術が利用されている。しかし、これら技術は金属製コイルを対象としているため、金属コイルに較べてやわらかい織布、編地、合成樹脂等のシート類に適用すると、対象とするシートを傷付ける可能性があった。また、シートの先端領域の皺やねじれを防止して、やわらかい織布、編地、合成樹脂等のシート類を円滑に下流側に供給することが困難であった。(特許文献3、特許文献4参照)
【0004】
前記の如く、金属に較べて繊細なシート類を傷付けずに、また柔らかいシート類に皺やねじれ等を発生させることなく、原反ロールのシート先端部を巻出して下流に供給する手段がなかったため、従来は人手でシート先端部を探して引出した後、シートの先端部を下流のシート搬送部に位置合せして供給して、これら準備作業完了後に自動的な巻戻し作業を開始した。そしてこのようなシートの巻出し開始時の準備作業は、原反ロールの小巻ロールへの巻戻しに際して頻度多く要求され、人手を要するとともに時として危険を伴うためその自動化が求められていた。
【特許文献1】特開平07−300258
【特許文献2】特開2001−063875
【特許文献3】特開平06−171805
【特許文献4】特開2001−239317
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みて提案されたものであって、新たな原反ロールを巻出し装置に供給した後、原反ロールを回転させてシートの巻出しを開始するに際して、傷付きやすく、また皺、曲がり及びねじれ等を発生しやすいシートの先端部を人手を要せずに自動的に引出して、下流側に配設されたシート巻取り装置等に供給し、自動的な巻取り等の工程を開始可能ならしめるシート巻出し装置及びシート巻出し方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、請求項1に記載の発明は、原反ロールを回転させてシートの巻出しを行うシート巻出し装置であって、前記原反ロールに平行して配設されて、前記原反ロールの外周に接触させてシートの先端部を前記原反ロールから開放するビークと、前記ビークを前記原反ロールに接触または離間させるビーク移動手段と、前記ビークの前記原反ロールへの押圧力を制御する押圧力制御手段と、前記原反ロールから巻出したシートを下流側に供給するシート搬送手段とを備えたことを特徴とするシート巻出し装置に係る。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記シート搬送手段の駆動系に伝達トルクの制限機能を有するトルク制限手段を備えたことを特徴とするシート巻出し装置に係る。
【0008】
請求項3の発明は、前記原反ロールの外周面に平行して配設されたビーク先端部を前記原反ロールに接触させ、シートの材質に適合した所定の押圧力で前記ビーク先端部を前記原反ロールの外周に押付け、前記原反ロールを巻出し方向に回転させてシートの先端部を開放して、シートを下流側に供給することを特徴とするシート巻出し方法に係る。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3において、前記原反ロールのシート巻出し速度に較べて、シート搬送手段のシートの搬送速度を高速に設定することにより、シートの皺やねじれ等を解消し、前記シート搬送手段の駆動系にトルク制限手段を備えて、シートとシート搬送手段間の過大な摩擦力の発生を防止して、シート表面を損傷することなく下流側にシートを供給することを特徴とするシート巻出し方法に係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、シート巻出し装置における原反ロールのシート先端部の巻出しに際して、回転する原反ロールの外周側面に、押圧力を制御されたビークの先端部を平行に押付けることにより、織布、編地、合成樹脂等の柔らかいシートの密着しているシート先端部も傷付けることなく、また、曲がりやねじれを発生させることなく開放してシート先端部を下流側に供給することができる。特に幅広シートのシート先端部の巻出しに際しては、従来、作業者が注意深く時間を掛けてシートの曲がりやねじれを解消しながらシート先端部を下流側のシート搬送手段に供給した後、自動的なシート巻出し作業を開始した。
【0011】
即ち、請求項1に記載の発明により、従来の人手によるシート先端部の巻出し作業と比較して、シートの曲がりやねじれを確実に防止してシート巻出し開始時の製品品質を改善するとともに、巻出し開始時の時間ロスを低減して、巻出し装置及び巻取り装置等の付帯設備全体の稼働率を向上させることができる効果がある。また、作業者の手による巻出し開始作業を排除することにより、シートの巻出し工程を自動化して省力化できるとともに、危険な人手作業を排除して作業者の安全性を向上させることができる効果がある。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、原反ロールからのシート巻出し速度に較べて高速で、シートに引張り勝手の力を付与しながら、シートをシート搬送手段により下流側に搬送することが可能となるため、シートに存在する可能性のある少量の皺やねじれ等を解消して、シートを良好な状態で下流に供給できる。このとき、搬送されるシートとシート搬送手段の速度差は、前記シート搬送手段の駆動系のトルク制限手段により前記駆動系内でスリップとして解消され、シート表面に無理な力が掛からず、傷付きやすい物性のシートも損傷させることなく、皺やねじれ等を解消して円滑にシートを下流に供給できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、原反ロールの外周面に前記原反ロールに平行なビークの先端部を、対象とするシートの種類に適合した所定の押圧力で押付けて、前記原反ロールを巻出し方向に回転させることにより、前記原反ロールのシート先端部にビーク先端部を挿入してシート先端部を開放し、シートを下流側のシート搬送手段に供給する。このため、従来の人手によるシート先端部の巻出し作業と比較して、シートの曲がりやねじれを確実に防止してシート巻出し開始時の製品搬送状態を改善するとともに、巻出し開始時の時間ロスを低減して、巻出し装置及びその上下流に設置されている巻取り装置等の付帯設備全体の稼働率を向上させることができる。また、作業者の手による巻出し開始作業を排除することにより、シートの巻出し工程を自動化して省力化できるとともに、危険な人手作業を排除して作業者の安全性を向上させることができる効果がある。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記原反ロールのシート巻出し速度に較べて、前記シート搬送手段によるシートの搬送速度を高速に設定して、シートの皺やねじれ等を解消し、シート搬送の過大な駆動力をトルク制限手段で排除して、無理な張力をシートに与えないでシートを下流側に供給する。このため、シートに存在する可能性のある少量の皺やねじれ等を解消して、シートを良好な状態で下流に供給できる。このとき、搬送されるシートとシート搬送手段の速度差は、シート搬送手段の駆動系のトルク制限手段によりスリップとして解消されるため、傷付きやすい物性のシートも損傷させることなく、皺やねじれ等を解消してシートを下流に供給できる。
【0015】
前記の如く、本発明の技術により、原反ロールからシートを巻出してシート巻戻しや切断等の工程を行うに際して、従来人手で行っていたシート先端部の巻出し作業と下流搬送装置への供給作業が自動化されて、原反ロール切替え時間が短縮されて関連設備全体の稼働率を向上させ、同時に、シートの下流への供給状態を改善することができる。また、従来作業の人手を廃して省力化できるとともに、作業者の安全性を向上させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。図1は本発明をシートの巻戻し作業に適用した実施例を示す平面図、図2は図1のX−X断面図、図3は図2におけるシート巻出し装置の詳細を示す拡大断面図である。
【0017】
図1及び図2に示す如く、シート巻出し装置1に供給された原反ロール4に巻かれたシートSは、巻出されてシートSのシート搬送手段2により搬送され、巻取り部3において小巻用の巻芯5に順次巻取られる。その後、原反ロール4の残りのシートSが所定長さ以下に減少すると、原反ロール4は新しい原反ロール4に交換されて、新規の原反ロール4の巻戻し作業が開始される。
【0018】
図2の断面図に示す如く、並列する2個の巻出しロール15は巻出しフレーム23に支持されて、巻出しロール15の少なくとも一方は、図示省略の駆動装置により所定の速度で駆動され、2個の巻出しロール15上に載置される原反ロール4は、矢印の方向に接触駆動されて回転してシートSを下流側に供給する。そして、巻出しを終了した原反ロールに替えて新規の原反ロール4を巻出しロール15に載置した際には、シート先端部S0は原反ロール4の外周に一体に密着した状態にあり、シートSの巻戻し工程を開始するためにはシート先端部S0を原反ロール4の外周から開放して、シート搬送手段2を構成する搬送ロール16側にシート先端部S0を供給する必要がある。
【0019】
図3に示す如く、ビーク支持手段24はフレーム22に固定され、ビーク14はビーク支持手段24の支持具25の先端に位置する回転軸26に、回転自在に軸支されている。また、支持具25は、点線で示す固定ガイド27上にガイドブロック28で前後動自在に支持されて、エアシリンダ29に駆動されて前後方向に移動する。そして、新規の原反ロール4を巻出しロール15上に載置した後には、エアシリンダ29で支持具25を駆動してビーク14を前進させて原反ロール4に接触させる。このとき、ビーク14は、原反ロール4への反力によりビーク先端部14Aとビーク後端部14Bで原反ロール4に押付けられる。そして、原反ロール4が矢印の方向に回転したとき、ビーク先端部14Aがシート先端部S0を原反ロール4から円滑に引きはがして開放し、図示の如くシート先端部S0を下流のシート搬送手段2側に進行させる。
【0020】
この間、ビーク14を原反ロール4に押付ける押圧力は、原反ロール4の取扱い対象シートSの材質に応じて、エアシリンダ29に供給されるエアの圧力を、図示省略の公知の圧力制御装置を利用した押圧力制御手段により、シートに適合した押圧力に設定されている。この後、原反ロール4の外周に継続して接触するビーク先端部14Aが、シートS1に示す如くシートSを原反ロール4から無理なく引きはがして、シート先端部S0を下流の搬送ロール16A側に供給する。そして、シート先端部S0が搬送ロール16Bに到って以降、搬送ロール16B等のシート搬送手段2の速度が、原反ロールのシート巻出し速度より高速に設定されているため、シートS1に示すシートSのたるみは順次解消される。
【0021】
また、シート搬送手段2のシート搬送速度が原反ロールのシート巻出し速度より高速に設定されているため、シートSには引張り勝手の力が付与されて、シートに存在する可能性のある少量の皺やねじれ等を解消して、シートを良好な状態で下流に供給できる。このとき、搬送されるシートSとシート搬送手段2の速度差は、すべりの良いシート素材に対しては、表面摩擦係数を所定の値にした搬送ロール16等を利用して、シートSと搬送ロール16表面のスリップで解消させる。しかし、特に摩擦係数の高い素材のシートSに対しては、それぞれの搬送ロール16の駆動系に、摩擦板式やパウダー式等の伝達トルクを制限する機能を有する公知のトルク制限手段が設置されているため、シートSと搬送ロール16に過大な摩擦力が発生さする際には、トルク制限手段の内部でスリップを発生させて、シート表面に無理な駆動力が掛かることを防止する。
【0022】
前記説明の如く、ビーク先端14Aに適切な形状を備えたビーク14を、原反ロール4の幅方向に対して平行に、また、適切な押圧力で押付けることにより、織布、編地、合成樹脂等の柔らかいシートSに対してもシートを傷付けることなく、シート先端部S0を原反ロール4の巻付き状態から開放して、自動的にシートSを下流側に供給することができる。また、点線の原反ロール4Aに示す如く、原反ロール4が小径の場合にはビーク14Cの位置までビークを前進させて、原反ロールからシート先端部S0を開放させることができる。また、原反ロール4からシートSを巻出す際にシートSに発生する可能性のある細かい皺やねじれ等をシート搬送手段2の速度差により解消してシートを良好な状態で下流に供給することができる。
【0023】
なお、通常は原反ロール4からシート先端部S0を開放して、シート先端部S0がシート搬送手段2に進行してシートSが円滑に搬送される状態になった時点で、ビーク14をエアシリンダ29で後退させて原反ロール4への接触を解除するが、シートSが粘着性の高い素材である場合等においては、必要に応じてビーク14を原反ロール4に接触させてシートSの巻出しを継続することもできる。なお、ビーク後端部14Bには回転ローラーを設置して原反ロール4との摩擦力を減少させることも必要に応じて実施可能である。
【0024】
なお、前述の実施例において、少なくとも一方が駆動された並列する2個の支持ロールの上に原反ロールを載せて回転することによりシートの巻出しを行う接触式のシート巻出し装置に本発明を適用した例を説明したが、本発明は接触式のシート巻出し装置に限定されるものではなく、ボビン等にシートを巻付けた原反ロールに対して原反ロールの中心でボビン等を直接駆動回転させる形式のシート巻出し装置に適用することもできる。
【0025】
また実施例において本発明のシート巻出し装置及びシート巻出し方法を、シートの巻戻し作業に適用した例を説明したが、本発明に係るシート巻出し装置及びシート巻出し方法はシートの巻戻し作業への利用に限定されることなく、シートSを巻出した後、所定の長さに切断する作業等、本発明の主旨の範囲で各種の作業に利用を行うことができる。また、ビーク14の支持や駆動方法等に関して特定の構成を例示したが、説明の構成に限定されることなく各種の構成が利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】シートの巻戻し作業に適用した実施例を示す平面図。
【図2】図1のX−X。
【図3】図2におけるシート巻出し装置の詳細拡大図である。
【符号の説明】
【0027】
1 シート巻出し部
2 シート搬送手段
3 巻取り部
4 原反ロール
5 巻芯
6 シートカッター
7 受板
8 支持ロール
9 支持ロール
10 押圧ロ−ル
11 押圧ロ−ル
12 ブレーキガイド
13 ブレーキガイド
14 ビーク
14A ビーク先端部
14B ビーク後端部
14C ビーク
15 原反支持ロール
16 搬送ロール
16A 搬送ロール
16B 搬送ロール
16C 搬送ロール
17 揺動レバー
18 流体シリンダ
19 支点
20 揺動軸
21 原反ロール
22 側板
23 巻出しフレーム
24 ビーク支持手段
25 支持具
26 回転軸
27 固定ガイド
28 ガイドブロック
29 エアシリンダ
S シート
S0 シート先端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反ロールを回転させてシートの巻出しを行うシート巻出し装置であって、
前記原反ロールに平行して配設されて、前記原反ロールの外周に接触させてシートの先端部を前記原反ロールから開放するビークと、
前記ビークを前記原反ロールに接触または離間させるビーク移動手段と、
前記ビークの前記原反ロールへの押圧力を制御する押圧力制御手段と、
前記原反ロールから巻出したシートを下流側に供給するシート搬送手段とを
備えたことを特徴とするシート巻出し装置
【請求項2】
請求項1において、前記シート搬送手段の駆動系に伝達トルクの制限機能を有するトルク制限手段を備えたことを特徴とするシート巻出し装置
【請求項3】
シートの原反ロールを回転させてシートの巻出しを行うシート巻出し方法であって、
前記原反ロールの外周面に平行して配設されたビークの先端部を前記原反ロールに接触させ、シートの材質に適合した所定の押圧力で前記ビークの先端部を前記原反ロールの外周に押付け、
前記原反ロールを巻出し方向に回転させてシートの先端部を開放して、シートを下流側に供給することを特徴とするシート巻出し方法
【請求項4】
請求項3において、前記原反ロールのシート巻出し速度に較べて、シート搬送手段のシートの搬送速度を高速に設定することにより、シートの皺やねじれ等を解消し、前記シート搬送手段の駆動系にトルク制限手段を備えて、シートとシート搬送手段間の過大な摩擦力の発生を防止して、シート表面を損傷することなく下流側にシートを供給することを特徴とするシート巻出し方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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