説明

シート把持運搬装置

【課題】 シート束を両端において把持したときに前記シート束を構成するシートに折れやクニック、擦れなどが生じることの無いにシート把持運搬装置の提供
【解決手段】 シート束の両端部を把持する1対の把持部を有し、前記把持部でシート束の両端部を把持して所定の箇所に移送するシート束把持運搬装置であって、前記把持部は、前記シート束把持運搬装置を持ち上げたときに前記シート束の自重による撓みに応じて傾斜するとともに、前記シート束の撓みに応じて傾斜した状態において前記シート束の両端部を把持するシート把持運搬装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート把持運搬装置にかかり、特に、シート束を両端において把持したときに前記シート束を構成するシートに折れやクニック、擦れなどの不良が生じることの無いシート把持運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート束を把持して運搬する機構としては、シート束の両端または中央部を把持して水平に保持しつつ、運搬に必要な高さまでシート束を持ち上げた後、シート束を水平に移動させるものが一般的である。
【0003】
シート束を把持する機構としては、特許文献1にあるように、シート束を把持する1対のチャック爪の何れも把持したときの圧力で移動しないようにして把持圧力の変動を少なくするような機構を設けたものがある。
【0004】
また。特許文献2にあるように、シート束に、搬送面に対して垂直な方向に沿って空気を吹き付けてシート束の端部を搬送面から浮き上がらせ、浮き上がった端部を上下から把持する機構も可能である。
【特許文献1】特開平11−079521号公報
【特許文献2】特開平05−039140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シート束を把持して持ち上げると、シート束は下方に撓むから、シート束の把持された部分には必ず曲げ応力が生じる。前記応力は、シート束が大きく、重いときは無視できなくなる。また、シート束が大きく、重いときは、把持された部分においては、圧力が加わった状態でシート間にズレが生じることが多々ある。
【0006】
シート束に大きな曲げ応力が加わったり、シート間に大きな圧力が加わった状態でズレが生じたりすると、シートの品質上、悪影響が出ることがある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、シート束を両端において把持したときにシート束に大きな曲げ応力が加わることがなく、また圧力が加わった状態でシート間のずれが生じることが防止できるシート把持運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、シート束の両端部を把持する1対の把持部を有し、前記把持部でシート束の両端部を把持して所定の箇所に移送するシート束把持運搬装置であって、前記把持部は、前記シート束把持運搬装置を持ち上げたときに前記シート束の自重による撓みに応じて傾斜するとともに、前記シート束が自重によって撓んだ状態において前記シート束の両端部を把持することを特徴とするシート束把持運搬装置に関する。
【0009】
前記シート束把持運搬装置においては、シート束の両端部を把持部に載置した状態でシート束を持ち上げ、シート束が自重で下方で撓んだ時点で前記把持部において両端部を把持している。
【0010】
したがって、シート束を持ち上げたときにシート間にズレが生じることがないから、シート間のズレに起因する品質故障が生じることもない。
【0011】
また、前記把持部は、シート束が下方に撓むと、シート束の撓みに応じて傾斜するから、シート束を持ち上げたときに、把持部とシート束との間に大きな曲げ応力が作用することがなく、したがって、シートに折れやクニックなどが生じることもない。
【0012】
請求項2に記載の発明は、シート束の重量およびサイズが大きなときは前記把持部の傾斜量も大きく、前記シート束の重量およびサイズが小さなときは前記把持部の傾斜量も小さくなるように前記把持部の傾斜量を調節する傾斜量調節手段を備えてなる請求項1に記載のシート束把持運搬装置に関する。
【0013】
シート束の重量およびサイズが大きなときは、シート束を持ち上げたときの撓みも大きく、シート束の重量およびサイズが小さなときは、シート束を持ち上げたときの撓みも小さいと考えられる。
【0014】
前記シート束把持運搬装置においては、シート束の重量およびサイズが大きなときは傾斜量も大きく、シート束の重量およびサイズが小さなときは傾斜量も小さくなるように、傾斜量調節手段によって把持部の傾斜の大きさが調節できる。したがって、シート束の重量やサイズが大きなときも小さなときも、シート束に無理な応力が生じたり、シート間のズレが生じたりしない点で好ましい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、シート束の両端部を持ち上げる際に前記シート束の中央部を押圧する中央部押え機構を備える請求項1または2に記載のシート束把持運搬装置に関する。
【0016】
前記シート束把持運搬装置においては、シート束の両端部を把持部に載せて持ち上げるときに、前記中央部押え機構でシート束の中央部を押圧するから、たとえシート束の両端の持ち上げ方が不均等になった場合においても、シート間にズレが生じることがない。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記把持部が、シート束を下方から支持するシート束支持腕と、前記シート束支持腕と協働してシート束を挟持する加圧板とを備え、前記シート束支持腕が、根元部を中心として回動すると共に、付勢手段によって上方に向かって付勢されてなる請求項1〜3の何れか1項に記載のシート束把持運搬装置に関する。
【0018】
前記シート束把持運搬装置においては、前記把持部の備えるシート束載置板にシート束の端部を載置すると、シート束載置板は、シート束の重みで、根元部を中心に下方に向かって回動しようとするが、付勢手段によって上方に付勢されているから、シート束の重みと前記付勢手段からの付勢力が釣り合ったところで停止する。
【0019】
この状態で前記加圧板をシート束載置板に近接させ、シート束を加圧することにより、前記シート束は端部において曲げ応力を受けることなく把持される。
【0020】
前記付勢手段としては、コイルバネや板バネ、捻りコイルバネ、捻り棒バネ、積層ゴムなどがある。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、シート束を両端において把持したときにシート束に大きな曲げ応力が加わることがなく、また圧力が加わった状態でシート間のずれが生じることが防止できるシート把持運搬装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.実施形態1
本発明のシート束把持運搬装置の一例であるシート束懸吊装置100は、図1〜図3に示すように、横長な長方形状の枠体4と、枠体4の下側に設けられ、シート束Wを把持する1対の把持部2とを備える。
【0023】
把持部2は、枠体4の下面に設けられたレール4Aに沿って走行し、一端が把持部2の一方に、他端が把持部2の他方に固定された1対のエアシリンダ6によって互い近接、離間できる。
【0024】
枠体4の中央部には、枠体4をロボットアーム(図示せず。)の先端に固定するためのロボットアーム装着部10が設けられ、更に、ロボットアーム装着部10を挟むように、把持部2で把持したシート束Wの中央部を押圧する中央部押え機構8が設けられている。
【0025】
把持部2は、図1〜図4に示すように、レール4Aを走行する摺動部22と、摺動部22に回動可能に装着された本体20と、本体20の下面に固定されたシート束支持腕2Aと、シート束支持腕2Aに対して平行に設けられ、シート束支持腕2Aと協働してシート束Wを把持する加圧板2Bと、本体20の側面に固定され、加圧板2Bをシート束支持腕2Aに近接、離間させるエアシリンダ2Cとを備える。エアシリンダ2Cは、1枚の加圧板2Bについて1対づつ設けられている。摺動部22と本体20との間には、本体20を上方に回動する方向に付勢するコイルバネ2Dが設けられている。コイルバネ2Dは、本発明における付勢手段の一例である。なお、コイルバネ2Dと並列にダンパや圧縮ゴムバネを挿入してもよい。また、摺動部22には、本体20の回動範囲、言い換えればシート束支持腕2Aの回動範囲を設定するための角度設定用ボルト2Eが設けられている。角度設定用ボルト2Eは、本発明における傾斜量調節手段に相当する。
【0026】
中央部押え機構8は、枠体4の幅方向に沿って設けられ、シート束Wの中央部を押圧するシート束押圧板8Aと、シート束押圧板8Aを昇降させる1対の空気シリンダ8Bと、ロボットアーム装着部10を挟むように空気シリンダ8Bを枠体4に固定する支持ブラケット部8Cとを備える。
【0027】
以下、シート束懸吊装置100の作用について説明する。
【0028】
先ず、ロボットアーム(図示せず。)によって、シート束懸吊装置100を、運搬しようとするシート束Wの近傍に位置させる。
【0029】
次いで、エアシリンダ6によって把持部2をシート束Wに近接させ、シート束支持腕2Aをシート束Wの両端部における下側に挿入する。
【0030】
シート束支持腕2Aがシート束Wの両端部における下側に挿入されたら、加圧板2Bでシート束Wを押圧することなく、シート束懸吊装置100を持ち上げる。
【0031】
これにより、図4および図5に示すように、シート束Wは、自重で下方に撓み、シート束の撓みに合わせ、把持部2の本体20およびシート束支持腕2Aも下方に回動する。なお、本体20およびシート束支持腕2Aの回動量は、角度設定用ボルト2Eによってシート束Wの撓み量を超えないように設定されているうえ、コイルバネ2Dによって上方に付勢されているから、シート束Wの重みによって下方に無制限に回動することはない。
【0032】
本体20およびシート束支持腕2Aが下方に回動したら、図4および図5に示すように、加圧板2Bでシート束Wを加圧し、シート束支持腕2Aとの間でシート束Wを把持する。
【0033】
上述のように、シート束懸吊装置100においては、シート束Wを持ち上げてシート間にズレを生じさせてから、シート束支持腕2Aと加圧板2Bとの間でシート束Wの端部を把持する。
【0034】
したがって、 図7において(A)に示すように、シート束支持腕2Aと加圧板2Bとでシート束を把持してから水平に持ち上げる場合とは異なり、シート束支持腕2Aの先端部においてシート束に折れやクニックが生じることがない。
【0035】
また、図7において(B)に示すように、シート束支持腕2Aと加圧板2Bとでシート束を把持してから把持部2を傾けつつシート束を持ち上げた場合のように、シート束Wにおけるシート束支持腕2Aと加圧板2Bとで把持された部分や、前記部分よりも内側でシート間にズレが生じることもない。
【0036】
なお、図6に示すように、サイズおよび重量の小さなシート束W1、サイズおよび重量の中くらいのシート束W2,サイズおよび重量の大きなシート束W3の夫々において、把持部2で把持される部分の水平面に対する角度をθ1、θ2、θ3とすると、θ1<θ2<θ3である。
【0037】
シート束懸吊装置100においては、角度設定用ボルト2Eおよびコイルバネ2Dの強さを設定することにより、シート束支持腕2Aが最も下方に回動したときの、シート束支持腕2Aの上面と水平面との角度θを前記θ1、θ2、θ3に合わせて設定できる。
【0038】
したがって、サイズや重量の異なるシート束Wも、クニックや折れ、シート間ズレなどの不良を生じさせることなく、把持、運搬できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のシート把持運搬装置は、感光型、感熱型、光重合型などの各種の平版印刷原版を厚さ方向に積層した平版印刷版束を把持、運搬する用途以外に、各種枚葉紙、プラスチックシート、アルミニウム板、ステンレス板、塗装鋼板など各種シート材の束を把持して運搬するのにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、実施形態1に係るシート懸吊装置の全体的な構成を示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示すシート懸吊装置において把持部が互いに近接した状態を示す側面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るシート懸吊装置の全体的な構成を示す平面図である。
【図4】図4は、実施形態1に係るシート懸吊装置の備える把持部の詳細な構成を示す部分拡大図である。
【図5】図5は、実施形態1に係るシート懸吊装置において、シート束が下方に撓んでから両端を把持することを示す概略図である。
【図6】図6は、サイズの異なるシート束を把持したときの把持部におけるシート束の撓み、およびシート束支持腕および加圧板の水平面に対する角度を示す説明図である。
【図7】図7は、従来のシート把持運搬装置でシート束に不良が生じる機構を示す説明図である。
【図8】図8は、従来のシート把持運搬装置でシート束に不良が生じる機構を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
2 把持部
2A シート束支持腕
2B 加圧板
2C エアシリンダ
2D コイルバネ
2E 角度設定用ボルト
2A 本体
4 枠体
4A レール
6 エアシリンダ
8 中央部押え機構
8A シート束押圧板
8B 空気シリンダ
8C 支持ブラケット部
10 ロボットアーム装着部
20 本体
22 摺動部
100 シート束懸吊装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束の両端部を把持する1対の把持部を有し、前記把持部でシート束の両端部を把持して所定の箇所に移送するシート束把持運搬装置であって、
前記把持部は、前記シート束把持運搬装置を持ち上げたときに前記シート束の自重による撓みに応じて傾斜するとともに、前記シート束の撓みに応じて傾斜した状態において前記シート束の両端部を把持する
ことを特徴とするシート束把持運搬装置。
【請求項2】
シート束の重量およびサイズが大きなときは前記把持部の傾斜量も大きく、前記シート束の重量およびサイズが小さなときは前記把持部の傾斜量も小さくなるように前記把持部の傾斜量を調節する傾斜量調節手段を備えてなる請求項1に記載のシート束把持運搬装置。
【請求項3】
シート束の両端部を持ち上げる際に前記シート束の中央部を押圧する中央部押え機構を備える請求項1または2に記載のシート束把持運搬装置。
【請求項4】
前記把持部は、シート束を下方から支持するシート束支持腕と、前記シート束支持腕と協働してシート束を挟持する加圧板とを備え、
前記シート束支持腕は、根元部を中心として回動すると共に、付勢手段によって上方に向かって付勢されてなる
請求項1〜3の何れか1項に記載のシート束把持運搬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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