説明

シート材及びコンクリート開口部形成方法

【課題】コンクリートに開口部を形成する際に、ボイド管の周囲に巻き付けるためのシート材であって、内部の空間に異物が侵入することを防止しつつ、良好な柔軟性や加工性を保ったシート材を提供する。
【解決手段】シート材1は、シート本体10と、充填材14と、有する。シート本体10は、一面側は平面状に形成され、他面側には内部が空洞部12として形成された細長い凸部11が複数平行に並んで形成される。充填材14は、凸部11の空洞部12に充填される。そして、充填材14はシリコンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、コンクリート打設時にボイド管の周囲に配置するシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートに円形の開口部を形成する場合には、ボイド管と呼ばれる紙製の円筒部材を配置し、当該ボイド管の周囲にコンクリートを打設して、コンクリートが硬まった後でボイド管を除去していた。即ち、ボイド管の内部にはコンクリートが流れ込まないので、当該ボイド管を除去した後にはボイド管と同径の開口部が形成されていることになる。
【0003】
しかし、このボイド管は紙製であるためにコンクリートからの剥離性が悪く、コンクリートに形成された開口部から抜き取ることが困難ないし不可能である。そこで、硬まったコンクリートからボイド管を除去するためには、コンクリートに貼り付いたボイド管を切断したり破ったりしながら除去する必要がある。このように、一度使ったボイド管は再利用できないという欠点があった。また、作業者にとっても、硬まったコンクリートからボイド管を除去する作業の負担が大きかった。
【0004】
そこで本願出願人は、ポリエチレン等の樹脂製のシート材をボイド管の周囲に巻き付けたうえでコンクリートを打設する工法を提案している。ポリエチレン製のシートはコンクリートからの剥離性が良好であるため、当該シート材はコンクリートに形成された開口部から容易に剥すことができる。従って、このシート材は再利用することができる。また、ボイド管自体はコンクリートに直接接触しないので、コンクリートが硬まった後、ボイド管を容易に引き抜くことができる。従って、この工法によれば、ボイド管も再利用することができる。
【0005】
この樹脂製のシート材は、いわゆる片面ダンボール状に形成されている。即ち、シート材の一面側は平面状、他面側には波状の凸部が形成されている。そして、この凸部の内部は空洞となっている。このように内部が空洞の凸部をシート材に設けることで、シート材に適度なクッション性を付与することができる。また、凸部の内部を空洞とすることにより、カッターやハサミによってシート材を容易に切断することができる。従って、作業者は現場においてシート材を適当な形状に加工して利用することができる。また、シート材を仮に両面ダンボール状に形成してしまうと、ほとんど曲げることができないが、上記のように片面ダンボール状に形成することにより、シート材を柔軟に曲げることが可能となる。これにより、シート材をボイド管の周囲に巻き付けることができる。
【0006】
しかし、シート材を上記のように空洞を備えた片面ダンボール状とした場合、シート材の端面から凸部の空洞の内部にコンクリートが入り込んでしまうという問題がある。空洞内にコンクリートが入り込むと、前記クッション性が損なわれてしまう。また、空洞にコンクリートが入り込むと、シート材の見た目が悪くなってしまう。このシート材は再利用されることを想定しているものであるから、繰り返し使用しても見た目が悪化しないことが好ましい。
【0007】
この点、特許文献1は、樹脂段ボール板の端面に対し、熱可塑性接着剤の層を設けた枠板を取り付けた後、枠板を加熱及び加圧することにより、軟化した熱可塑性接着剤をリブ間の間隙内に充填硬化させる樹脂段ボール板の端面シール方法を開示している。特許文献1は、これにより、樹脂段ボール板の端面を外観良好にすることができるとともに、空隙内に水や埃などが侵入することを有効に防止できるとしている。
【0008】
また、特許文献は、中芯とライナーとの間に、疎水性を有する発泡性樹脂が発泡した状態で充填されている段ボールを開示している。この特許文献2のように発泡性樹脂を充填する構成でも、段ボールの空洞内に異物が侵入することを防止できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−344449号公報
【特許文献2】特開2004−130521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1のように樹脂段ボールの端面に枠板を貼り付けてしまうと、当該樹脂段ボールを柔軟に曲げることが不可能となってしまう。ただし、特許文献1は一対の表板を備えた樹脂段ボール(いわゆる両面ダンボール状の樹脂段ボール)についての実施形態のみ開示しており、このような両面ダンボールはもともと柔軟に曲げることが不可能であるから、問題点は少ないと考えられる。一方、ボイド管の周囲に巻き付けるためのシート材においては、当該シート材を柔軟に曲げることができることが前提であるから、特許文献1の構成は採用することができない。
【0011】
また、特許文献1は、樹脂段ボールの端面に枠板を貼り付ける構成であるため、樹脂段ボールを切断するなどして新たな端面が形成された場合には、もはや異物の侵入を防止する効果を発揮することができない。この点、ボイド管の周囲に巻き付けるためのシート材は、現場においてカッターやハサミによる切断加工が行なわれることが多い。従って、特許文献1の構成を、ボイド管の周囲に巻き付けるためのシート材に適用した場合であっても、当該シート材が実際に使われる状況においてはコンクリートの侵入を防止することができない。
【0012】
更に言えば、熱可塑性接着剤は硬化した状態では硬いため、特許文献1のように空隙の内部に熱可塑性接着剤が入り込むと、当該空隙によるクッション作用が低減されてしまう。また、熱可塑性接着剤が空隙の内部に入り込んでいると、カッターやハサミによる切断が困難となってしまい、加工性が悪化する。
【0013】
一方、発泡性樹脂はある程度の弾性を備え、また比較的やわらかいので、特許文献2のように発泡性樹脂を充填する構成とすれば、クッション性や加工性の悪化は最小限に抑えることができると考えられる。しかしながら、発泡性樹脂は脆く、しかもコンクリートからの剥離性が悪い。従って、仮にシート材に発泡性樹脂を充填した構成とすると、コンクリートからシート材を剥がした際に発泡性樹脂が一部欠けてコンクリートに残ってしまう場合があると考えられる。従って、発泡性樹脂は、シート材の充填材としては適切ではない。
【0014】
また、特許文献2の図4(b)には、片面段ボールの中芯とライナーとの間に発泡性樹脂が充填された構成が開示されている。当該図4(b)において、発泡性樹脂は、ライナーの上面において横方向に連続的に形成されている。従って、この構成の片面段ボールを曲げると、発泡性樹脂の層も変形することになる。このように発泡性樹脂層が変形を繰り返すと、当該発泡性樹脂層が分断したり、発泡性樹脂層がライナーから剥離したりするなど、問題が発生する。従って、特許文献2の構成は、ボイド管に巻き付けるために曲げる必要があるシート材には適用することができない。
【0015】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、内部の空間に異物が侵入することを防止しつつ、良好な柔軟性や加工性を保ったシート材を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0016】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0017】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のシート材が提供される。即ち、このシート材は、シート本体と、充填材と、有する。前記シート本体は、一面側は平面状に形成され、他面側には内部が空洞の細長い凸部が複数平行に並んで形成される。前記充填材は、前記凸部の空洞に充填される。そして、前記充填材はシリコンである。
【0018】
即ち、シリコンは耐水性、耐久性に優れているので、シリコンを空洞内に充填することにより、当該空洞内に異物が侵入してしまうことを効果的に防止することができる。また、シリコンは適度な弾性を備えているので、凸部の空洞内に充填されても、当該凸部のクッション性を損なうことがない。また、シリコンはやわらかいため、カッターやハサミで容易に切断することができる。従って、凸部の空洞内にシリコンを充填しても、シート材の加工性を良好に保つことができる。
【0019】
上記のシート材において、前記充填材は、前記凸部の長手方向の全長にわたって前記空洞に充填されていることが好ましい。
【0020】
このように、シリコンを全長にわたって充填することで、シート材をどの位置で切断しても、凸部の空洞に異物が侵入することがない。
【0021】
上記のシート材において、前記凸部の空洞は、前記凸部が並んでいる方向で不連続であることが好ましい。
【0022】
即ち、凸部の空洞に充填されたシリコンは、凸部と凸部との間で不連続となる。これにより、シート材を湾曲させたときに、シリコンはほとんど変形しないので、シート本体とシリコンとの間で剥がれが発生することを防止できる。
【0023】
上記のシート材は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このシート材は、シート材支持体の周囲に配置した状態で周囲にコンクリートを打設することによりコンクリートに開口部を形成するためのものである。そして、前記シート本体は樹脂製である。
【0024】
即ち、シート本体を樹脂製とすることにより、コンクリートからの剥離性が良好となる。これにより、コンクリートから剥がす際にシート材が損傷することが無いので、シート材を再利用することができる。更に、本発明の構成によれば、凸部の空洞にコンクリートが入り込んでしまうことを防止できるので、シート材の再利用性を向上させることができる。
【0025】
上記のシート材において、前記シート本体及びシリコンは、透明又は半透明であることが好ましい。
【0026】
これにより、シート材を巻き付けた状態でも、シート材支持体の様子を外部から視認することができるので、作業性が向上する。
【0027】
本発明の第2の観点によれば、コンクリートに開口部を形成するコンクリート開口部形成方法であって、シート材配置工程と、コンクリート打設工程と、除去工程と、を含むコンクリート開口部形成方法が提供される。即ち、前記シート材配置工程では、上記のシート材を前記シート材支持体の周囲に配置する。前記コンクリート打設工程では、前記シート材を配置した前記シート材支持体の周囲にコンクリートを打設する。前記除去工程では、硬化したコンクリートから前記シート材及び前記シート材支持体を除去する。
【0028】
この方法によれば、シート材をコンクリートから簡単に剥がすことができるので、当該シート材及びシート材支持体を除去する作業が容易になる。そして、本発明の構成によれば、シート材の空洞の内部にコンクリートが入り込んでしまうことを防止することができるので、シート材のクッション性が低下したり、シート材の見た目が悪化したりすることがなくなり、当該シート材の再利用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート材に用いられるシート本体の外観斜視図。
【図2】シート材を端面側から見た平面図。
【図3】ボイド管にシート材を巻き付ける様子を示す図。
【図4】シート材を巻き付けたボイド管を設置した様子を示す図。
【図5】シート材を巻き付けたボイド管の周囲にコンクリートを打設した様子を示す図。
【図6】ボイド管を除去するときの様子を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係るシート材は、コンクリートに開口部を形成する際に、ボイド管の周囲に巻き付けるためのものである。本実施形態に係るシート材に用いられるシート本体10の外観斜視図を、図1に示す。
【0031】
図1に示すように、シート本体10は、いわゆる片面ダンボール状に形成されている。即ち、このシート本体10は、一面側は平面状に形成され、他面側には複数の凸部11が形成されている。当該凸部11は、一方向に沿って細長く形成されている。また、複数の凸部11は、等間隔で平行に並んで形成されている。また、凸部11の長手方向と直交する平面で切断したとき、並んだ複数の凸部11によって構成される断面輪郭は波状(略サイン波状)となっている。即ち、シート本体10の表面の凹凸は波状に形成されている。
【0032】
図1に示すように、凸部11の内側には空洞部12が形成されている。この空洞部12は、凸部11の長手方向に沿って形成されており、図1に点線で示すように、シート本体10の一側の端面から他側の端面まで貫通状に形成されている。このように空洞部12が形成されているので、凸部11は適度なクッション製を有している。また、仮に凸部を中実状とした場合は、シート本体10をカッターやハサミ等で切断することが困難となるが、凸部11を中空状とすることにより、シート本体10をカッターやハサミ等によって比較的容易に切断加工することができる。
【0033】
シート本体10の素材は特に限定されないが、樹脂製とすればコンクリートからの剥離性が良くて好適である。なお本実施形態では、シート本体10はポリエチレン製としている。ポリエチレン製のシート本体10は、適度な可撓性を備え、耐久性も高く、更にカッターやハサミ等による加工も比較的容易なので、特に好適である。なお、シート本体10は、ポリエチレン樹脂の押し出し成形により形成されている。
【0034】
ところで前述したように、従来は、この片面ダンボール状のシート本体10をそのままボイド管に巻き付けて、周囲にコンクリートを打設していた。このため、シート本体10の端面から空洞部12内にコンクリートが入り込んでしまっていたのである。
【0035】
そこで本実施形態に係るシート材1は、図2に示すように、シート本体10の空洞部12の内部に、充填材14としてシリコン(シリコンゴム)を充填した構成としている。このように空洞部12内を充填材14で充填することにより、当該空洞部12内にコンクリート等の異物が入り込んでしまうことを防止できるので、当該空洞部12によるクッション性が損なわれることがない。特に、シリコンは適度な弾性を備えているので、空洞部12内に充填されるとにより、凸部11のクッション性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態のシート本体10及び充填材(シリコン)14は、顔料による着色等は行わずに半透明状としている。従って、仮にシート本体10の空洞部12にコンクリートが入り込んでしまうと、当該コンクリートが外部から見えてしまい、シート材1の見た目が悪化する。しかしながら、本実施形態のシート材1は上記のように充填材14を充填しているので、空洞部12にコンクリートが入り込んでしまうことがなく、従って見た目が悪化することもない。これにより、シート材1の再利用性を向上させることができる。
【0037】
なお、例えば充填材として熱可塑性樹脂を用いることも考えられるが、当該樹脂が硬化すると、シート材1をカッターやハサミによって切断することが極めて困難になってしまう。この点、シリコンは適度にやわらかいので、カッターやハサミにより容易に切断することができる。従って、本実施形態のシート材1のように空洞部12にシリコンを充填しても、シート材1の加工性を損なうことがない。
【0038】
また本実施形態のシート材1においては、空洞部12の長手方向(凸部11の長手方向、言い代えれば凸部11が並ぶ方向と直交する方向)の全長にわたってシリコンが充填されている。この構成によれば、シート材1をどの位置で切断しても、切断によって新たに形成された端面において、空洞部12はシリコンによって塞がれていることになる。従って、シート材1をどのように切断加工しても、空洞部12の内部にコンクリート等の異物が入り込んでしまうことがない。
【0039】
また本実施形態のシート材1において、充填材14としてのシリコンは、図1のように形成されたシート本体10の各空洞部12内に主剤と硬化剤を注入することにより形成している。なお、空洞部12は、図2の左右方向(凸部11が並んでいる方向)で不連続なので、当該空洞部12に注入された充填材14も、図2の左右方向で不連続となっている。即ち、シリコンは、凸部11と凸部11との間の部分(凹部13)には存在していない。
【0040】
ところで、片面ダンボール状のシート材1をボイド管に巻き付けるように変形させる際には、凹部13の近傍は大きく変形するものの、その他の部分(凸部11や空洞部12)はあまり変形しない。一方、本実施形態では、上記のように、充填材14であるシリコンは、凸部11が並ぶ方向で不連続であり、凹部13には存在していない。従って、シート材1を曲げるように変形させても、シリコンはほとんど変形しない。ここで仮に、シート材を曲げる度にシリコンが大きく変形してしまうと、シート本体10とシリコンとの間で剥離が発生し易くなってしまう。この点、上記のように構成することにより、シート材1を曲げてもシリコンはほとんど変形しないので、シート材1の耐久性を向上させることができる。
【0041】
次に、上記のように構成されたシート材を用いて、コンクリートに開口部を形成する方法について説明する。
【0042】
まず、作業者は、コンクリートに形成したい開口部の直径に対応したサイズのボイド管20を用意する。このボイド管20は、従来から使われている紙製のボイド管20を用いることができる。
【0043】
次に、作業者は、このボイド管20のサイズや、形成する開口部の形状等に合わせて、カッターやハサミ等によってシート材1を適宜切断することにより適切な形状に整える。前述のように本実施形態のシート材1は、充填材14としてシリコンを充填しているので、シート材1を容易に切断することができる。また、シリコンは空洞部12の全長にわたって充填されているので、上記のように現場でシート材1の切断加工が行われた場合でも、空洞部12へのコンクリートの侵入を防ぐという効果が損なわれることがない。
【0044】
続いて、作業者は、上記のようにして形状を整えたシート材1を、図3のようにボイド管20の外周面に巻き付ける(シート材配置工程)。シート本体10は(両面ダンボール状ではなくて)片面ダンボール状に形成されているので、柔軟に曲げてボイド管20に巻き付けることができる。なお、シート材1をボイド管20に巻き付ける際には、凸部11が内側を向くようにして配置する。これによれば、凸部11のクッション性によりボイド管20が保護されるとともに、シート本体10の平面状の面が外側(コンクリートに接触する側)を向くので、シート材1をコンクリートから剥がす際に剥がし易くなる。
【0045】
次に、作業者は、シート材1をテープ21によって適宜固定する(図4参照)。なお、これにより、シート材1がボイド管20によって支持されるので、ボイド管20はシート材支持体であるということができる。なお前述のように、本実施形態では、シート本体10及び充填材(シリコン)14を半透明としている。これにより、シート材1をボイド管20に巻き付けた状態において、内部のボイド管20の位置を外側から視覚的に把握することができる。従って、シート材1をテープ21によって固定する作業を行う際に、シート材1とボイド管20との位置合わせを行い易くなっている。もちろん、半透明とする構成に代えて、可能であればシート本体10とシリコンを完全に透明としても良い。
【0046】
続いて作業者は、このシート材1及びボイド管20を、図4に示すように開口部を形成したい位置に配置する。そして、図5に示すように、シート材1を巻き付けたボイド管20の周囲にコンクリート99を打設する(コンクリート打設工程)。これにより、当該コンクリート99に開口部を形成することができる。
【0047】
コンクリート99が硬化すると、作業者は、シート材1及びボイド管20を除去する作業を行う(除去工程)。このとき、図6に示すように、シート材1からボイド管20を容易に抜き取ることができる。このように、シート材1をボイド管20に巻き付けておくことにより、ボイド管20をそのままコンクリートに埋設していた従来の方法に比べて、極めて容易にボイド管20を除去することができる。また、このようにして除去したボイド管20は無傷のままなので、再利用することができる。
【0048】
ボイド管20を除去した後は、コンクリート99に貼り付いているシート材1を除去する。前述のように、ポリエチレン製のシート本体10はコンクリートからの剥離性に優れているので、極めて容易に、かつシート本体10自体を傷つけることなく、コンクリート99から剥がすことができる。また、シリコンもコンクリートからの剥離性が良好なので、コンクリート99からシート材1を除去する際に充填材14(シリコン)の一部がコンクリートに付着して欠けてしまうということがない。このように、シート材1をコンクリートから無傷のまま除去することができるので、当該シート材1も再利用することができる。
【0049】
そして、本実施形態のシート材1は、空洞部12に充填材14が充填されているので、当該空洞部12の内部にコンクリート99が入り込んでしまうことがない。従って、空洞部12によるクッション性やシート材1の見た目を悪化させることがないので、当該シート材1の再利用性を更に向上させることができるのである。
【0050】
以上で説明したように、本実施形態のシート材1は、シート本体10と、充填材14と、有する。シート本体10は、一面側は平面状に形成され、他面側には内部が空洞部12として形成された細長い凸部11が複数平行に並んで形成される。充填材14は、凸部11の空洞部12に充填される。そして、充填材14はシリコンである。
【0051】
即ち、シリコンは耐水性、耐久性に優れているので、シリコンを空洞部12内に充填することにより、当該空洞部12内に異物が侵入してしまうことを効果的に防止することができる。また、シリコンは適度な弾性を備えているので、凸部11の空洞部12内に充填されても、当該凸部11のクッション性を損なうことがない。また、シリコンはやわらかいため、カッターやハサミで容易に切断することができる。従って、凸部11の空洞部12内にシリコンを充填しても、シート材1の加工性を良好に保つことができる。
【0052】
また、本実施形態のシート材1において、充填材14は、凸部11の長手方向の全長にわたって空洞部12に充填されている。
【0053】
このように、シリコンを全長にわたって充填することで、シート材1をどの位置で切断しても、凸部11の空洞部12に異物が侵入することがない。
【0054】
また、本実施形態のシート材1において、凸部11の空洞部12は、凸部11が並んでいる方向で不連続である。
【0055】
即ち、凸部11の空洞部12に充填されたシリコンは、凸部11と凸部11との間で不連続となる。これにより、シート材を湾曲させたときに、シリコンはほとんど変形しないので、シート本体とシリコンとの間で剥がれが発生することを防止できる。
【0056】
また、本実施形態のシート材1は、ボイド管20に巻き付けた状態で周囲にコンクリート99を打設することによりコンクリート99に開口部を形成するためのものである。そして、シート本体10は樹脂製である。
【0057】
即ち、シート本体10を樹脂製とすることにより、コンクリート99からの剥離性が良好となる。これにより、コンクリート99から剥がす際にシート材1が損傷することが無いので、シート材1を再利用することができる。更に、本発明の構成によれば、凸部11の空洞部12にコンクリート99が入り込んでしまうことを防止できるので、シート材1の再利用性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態のシート材1において、シート本体10及びシリコンは、半透明である。
【0059】
これにより、シート材1を巻き付けた状態でも、ボイド管20の様子を外部から視認することができるので、作業性が向上する。
【0060】
また、本実施形態のコンクリート開口部形成方法は、シート材配置工程と、コンクリート打設工程と、除去工程と、を含んでいる。シート材配置工程では、シート材1をボイド管20に巻き付ける。コンクリート打設工程では、シート材1を巻き付けたボイド管20の周囲にコンクリート99を打設する。除去工程では、硬化したコンクリート99からシート材1及びボイド管20を除去する。
【0061】
この方法によれば、シート材1をコンクリート99から簡単に剥がすことができるので、当該シート材1及びボイド管20を除去する作業が容易になる。そして、本発明の構成によれば、シート材1の空洞部12の内部にコンクリート99が入り込んでしまうことを防止することができるので、シート材1のクッション性が低下したり、シート材1の見た目が悪化したりすることがなくなり、当該シート材1の再利用性を向上させることができる。
【0062】
以上の本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は、例えば以下のように変更することができる。
【0063】
シート本体10は樹脂の押し出し成形により形成するとして説明したが、これに限らず、例えば平板状のポリエチレンシートに対して波状のポリエチレンシートを貼り付けることにより形成しても良い。
【0064】
上記実施形態では、凸部11によって波状の凹凸が形成されているとしたが、凸部11の形状はこれに限らない。例えば、シート本体10の端面側から見たとき(図2の状態)において、三角形状の凸部が並んで形成されていても良いし、台形状の凸部が並んで形成されていても良い。
【0065】
上記実施形態では、シート本体10及びシリコンは半透明又は透明であるとしたが、シート本体10及びシリコンを全く着色しない場合に限らず、薄く着色して色付きの半透明状としても良い。
【0066】
上記実施形態では、シート材支持体としてボイド管を使うものとしたが、シート材支持体はボイド管に限らない。例えば本願発明者は、コンクリート構造物に貫通孔を形成する際に用いる貫通孔形成器具を発明し、特許を受けている(特許第4270406号)。当該発明に係る貫通孔形成器具は、屈曲スリーブ材(外皮材)を保持する端部保持部材を備えているが、前記屈曲スリーブ材として本願発明のシート材を用いることができる。従って、この場合は、端部保持部材をシート材支持体として把握することができる。
【0067】
また、シート材支持体の形状は円筒形状に限るものではなく、様々な形状のシート材支持体を用いることができる。例えば四角い開口部を形成する場合は、角筒状のシート材支持体を用いれば良い。なお、シート材支持体が上記のように角筒状の場合は、当該シート材支持体の周囲にシート材を密着させて巻き付けることが困難な場合がある。このような場合は、シート材を複数に分割して、当該複数のシート材を角筒状のシート材支持体の周囲にテープで貼り合わせることにより、シート材を配置すれば良い。
【0068】
図4から図6では、シート材1を巻き付けたボイド管20を床の上に立てて配置し、その周囲にコンクリート99を打設する様子を示しているが、壁面や天井のコンクリートに開口部を形成する際にシート材1を用いても良いことはもちろんである。また、開口部は、一側にのみ開放した開口部であっても、両側に開口した開口部(貫通孔)であっても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 シート材
10 シート本体
11 凸部
12 空洞部
14 充填材
20 ボイド管(シート材支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側は平面状に形成され、他面側には内部が空洞の細長い凸部が複数平行に並んで形成されたシート本体と、
前記凸部の空洞に充填された充填材と、
を有し、
前記充填材はシリコンであることを特徴とするシート材。
【請求項2】
請求項1に記載のシート材であって、
前記充填材は、前記凸部の長手方向の全長にわたって前記空洞に充填されていることを特徴とするシート材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシート材であって、
前記凸部の空洞は、前記凸部が並んでいる方向で不連続であることを特徴とするシート材。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のシート材であって、
当該シート材は、シート材支持体の周囲に配置した状態で周囲にコンクリートを打設することによりコンクリートに開口部を形成するためのものであり、
前記シート本体は樹脂製であることを特徴とするシート材。
【請求項5】
請求項4に記載のシート材であって、
前記シート本体及びシリコンは、透明又は半透明であることを特徴とするシート材。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のシート材を前記シート材支持体の周囲に配置するシート材配置工程と、
前記シート材を配置した前記シート材支持体の周囲にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
硬化したコンクリートから前記シート材及び前記シート材支持体を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする、コンクリートに開口部を形成するためのコンクリート開口部形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−36635(P2012−36635A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177495(P2010−177495)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(509189905)株式会社BBeng (1)
【Fターム(参考)】