説明

シート状洗剤

【課題】 内容物の飛散や漏れが無く、使用量の任意な調整がし易く、更に、単独でも優れた洗浄力を示すシート状洗剤を提供する。
【解決手段】 非イオン界面活性剤、アルカリ剤及び金属イオン捕捉剤を含有し、25℃における進入硬度が0.1〜10kg/cm2 であるドウ状の非リン酸系洗剤組成物の薄層の両側に、シート状水溶性基体を配置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、実使用において使用量を調整し易く簡便性に優れ、かつ内容物の漏れや飛散を大幅に軽減し、更に非イオン界面活性剤を含有する洗浄性に優れた衣料用のシート状洗剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】非イオン界面活性剤は、油汚れの除去に有効であることは周知であり、近年、嵩密度が0.7g/cm3 以上のいわゆるコンパクトタイプで非イオン界面活性剤を配合した衣料用粉末洗剤が開発されている。これにより、洗浄力は一層向上し、かつ洗剤の持ち運び等の問題点も大幅に改善された。しかし、粉末洗剤の計量時あるいは洗濯機への投入時に洗剤粉末が飛散するという問題点は相変わらず解決されていない。
【0003】一般に、衣料用洗剤の殆どには「使用上の注意」として「使用後は手をよく水であらうこと」や「目に入った場合には水ですぐに洗い流すこと」等を記している。従って、粉末の飛散を回避できれば、粉末が飛散して手に触れたり或いは目に入ったりした場合に、水で洗ったり、すすいだりする操作を回避できるので、使用上の簡便性を向上でき非常に好ましい。また、当然粉末が床などに飛散した場合には掃除をする必要があり、余計な手間がかかってしまう。これらの点からも、洗剤等の粉末飛散の問題を解決することは非常に切望されている。
【0004】使い易さを向上させ且つ使用時の洗剤粉末の飛散を解決する為に、非イオン界面活性剤を配合した洗浄力の高い洗剤を、予め水溶性、水透過性もしくは水分散性材料で洗濯一回当たりの量を包装してなるワンパック型洗剤が提案されている。例えば、特開昭63−8497号公報及び特開昭63−12467号公報には、嵩密度0.5〜1.2g/cm3 の粉末洗剤を水溶性フィルムで分包包装してなるワンパック洗剤が提案されている。しかし、これらは、ワンパック洗剤の水中での溶解性を改善するためにフィルムの水溶性を向上させており、よって製品を濡れた手で触ると直ぐにフィルムが溶解して、手で触れた部分に穴があき、洗剤がこぼれてしまい粉末の飛散が依然起こりやすい。
【0005】また、非常に少量の洗剤を使用したい場合には一分包単位では洗剤量が多すぎるので手などで破いて洗剤を取り出す必要がある。この場合にも洗剤粉末がこぼれてしまう。更に、このとき手で破るので、洗剤粉末は手に接触又は付着する機会は著しく増えることになるので使用後手をすすぐ手間を生じてしまう。しかも、破られた残りの洗剤入り分包を洗剤粉末がこぼれないように保管しなければならないので非常に不便であった。つまり、水溶性材料で分包包装された高密度洗剤においては、実際の使用場面においては、使用量の任意な調整が困難であり、且つ、完全に粉末の飛散を防止できないという問題があった。
【0006】そこで、非イオン界面活性剤を含有するペースト状の洗剤を水溶性フィルムで包んだ洗剤(例えば、特公平8−3120号、特開昭63−8496号公報)が提案されている。これらの洗剤や洗剤添加剤は、内包する洗剤組成物がペースト状なので洗剤粉末の飛散を防止するという点では有効である。しかし、洗剤使用量を任意に調整する場合は、洗剤組成物が分包されているため調整が困難であり、仮に破いて調整しようとするとペースト状の洗剤組成物が漏れてしまい、手や容器に付着して洗剤粉末の場合と同様の結果を招いてしまう。
【0007】また、粉末の飛散を防止するのに有効な形態として水溶性または水不溶性のフィルムや不織布に洗剤成分を含浸させた非イオン界面活性剤を含有するシート状の洗剤(例えば、特開平2−228398、英国特許第2084176号等)が提案されている。しかし、この形態では洗剤成分が表面に露出してしまうため洗剤成分が手や容器に付着してしまう。また、含浸される基体として水不溶性フィルムや不織布を使用した場合、使用後にこれらの基体を廃棄する必要があり、使い勝手は悪い。
【0008】これらの問題点を解決する技術として、非イオン界面活性剤、漂白剤、特定の窒素含有化合物の少なくとも二種を含む組成物を水溶性のフィルム形成性有機ポリマーに埋設してなる洗剤添加剤が特開昭61−12796号公報に提案されている。しかし、この洗剤添加剤は、他の洗剤と併用することを前提としているため、基本的に衣料用洗剤の基本成分であるアルカリ剤と金属イオン捕捉剤とを含有しない。従って、この洗剤添加物の単独使用では十分な洗浄力が得られず、また他の洗剤と併用するので簡便性や経済性を考慮すると好ましくない。
【0009】そこで、単独使用でも優れた洗浄力を示し、かつ簡便性に優れ、さらに内容物の飛散や漏れのないシート状の洗剤が望まれている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、簡便性に優れるとともに内容物の飛散や漏れがなく、かつ洗浄力に優れた洗剤を得るために鋭意検討を行った。その結果、特定の進入硬度を有し、かつ非イオン界面活性剤とアルカリ剤と金属イオン捕捉剤とを含有したドウ状洗剤組成物の薄層の両側に水溶性基体を配置したシート洗剤が上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】即ち、本発明は、25℃における進入硬度が0.1〜10kg/cm2 であるドウ状の洗剤組成物を含む薄層と、該薄層の両側に配置されたシート状水溶性基体とを有するシート状洗剤であって、前記洗剤組成物が少なくとも1種の非イオン界面活性剤と少なくとも1種のアルカリ剤と少なくとも1種の金属イオン捕捉剤を含有する非リン酸系洗剤組成物であることを特徴とするシート状洗剤を提供するものである。
【0012】本発明において、「進入硬度」とは、下記の方法で測定されたものをいう。
〔進入硬度の測定方法〕洗剤組成の各成分とマーカー用に色素(赤色106号)をダルトン製万能混合攪拌機(形式5DM−03−r)に合計1000g仕込む。約25℃に調温後、まず低速(約100rpm)で1分間混練し、次いで高速(約200rpm)で混練する。ミノルタ株式会社製測色計(CR−300)を用いて混練物のb値を測定し、b値が一定になるまで高速で混練を行って均一な洗剤組成物を得る。FUDOH RHEO METER(RT−2010J−CW)のレオメーターを用い、25℃に保った上記洗剤組成物の表面にFUDOHレオメーター専用アダプター■(底面積1cm2 )を押し付け、アダプターが洗剤組成物の内部に30cm/分の進入速度で20mm進入したときの応力を測定し、これを進入硬度とする。
【0013】本発明のシート状洗剤は、シート洗剤中の洗剤組成物がドウ状であり、粉末ではないので粉の飛散が無く、また洗剤組成物が特定範囲の進入硬度を有しているため、湿った手で触ったことによって水溶性基体が破れた場合や量の任意の調整を行う際に手で破断した場合に、内容物の流出が無いので使いやすく、さらに洗剤組成物を含む薄層の両側に配置する基体が水溶性なので洗濯後にシートを除去する必要がなく簡便性が向上する。しかも、洗剤組成物が油汚れの除去に優れた非イオン界面活性剤と洗浄力を向上させるビルダーとしてアルカリ剤と金属イオン捕捉剤を含有するので単独で使用しても優れた洗浄力が得られる。
【0014】本発明のシート状洗剤は、洗剤組成物を含む薄層と、この薄層の両側に配置されたシート状水溶性基体を有するものであり、該薄層は連続または漏れない範囲で部分的に不連続に形成されていてよく、シート状水溶性基体は、該薄層の外部または外部と内部に配置されていてもよい。本発明のシート状洗剤の一例を図1、2に示す。図1中、1は洗剤組成物を含有する薄層、2と2' はシート状水溶性基体である。図2中、3は洗剤組成物を含有する薄層、4、4' 、4''はシート状水溶性基体である。
【0015】本発明に用いられる洗剤組成物は、25℃における進入硬度が0.1〜10kg/cm2 の硬さを有するドウ(Dough)状の物質であり、好ましくは0.5〜10kg/cm2 の硬さを有し、更に好ましくは1〜10kg/cm2 の硬さを有する。なお、ここで、「ドウ」とは、粉末組成物と液体、ペースト、ゲル等の流動性を有する物質との捏和物をいい、流動性を有する物質は加熱や応力により流動化するものも含まれる。本発明に用いられる洗剤組成物は、ドウ状なので粉末洗剤の場合に見られる粉の飛散がない。また、0.1〜10kg/cm2の進入硬度を有するので洗剤組成物の流動性が低く、濡れた手で触った時などシート状洗剤の水溶性基体が破れた場合、あるいは洗剤量を調整するために手で破断した場合の内容物が流出が見られない。洗剤組成物の進入硬度が0.1kg/cm2 未満の場合は洗剤組成物が柔らかくなりすぎ、即ち洗剤組成物の流動性が高くなるためシート化が困難になる、あるいは内容物が流出してしまう。また、10kg/cm2 以上の場合は、洗剤組成物が脆くなり、シート化が困難になる。
【0016】本発明の洗剤組成物に使用できる非イオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸アルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン高級脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸多価アルコールのエステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルアミンオキサイド、アルキルグリコシド、アルキルグルコースアミド等が挙げられ、1種又は2種以上使用することができる。特に、非イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖の1級又は2級のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加し、HLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0、好ましくは11.0〜14.5になるようにしたポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0017】また、非イオン界面活性剤は、25℃で液状又はスラリー状であるもの、即ち、融点が25℃以下のものが、汚れ落ち、泡立ち、泡切れ、溶解性に優れており好適である。
【0018】本発明において、洗剤組成物は非イオン界面活性剤を5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%含有することが好ましい。
【0019】また、必要に応じて他の界面活性剤、例えば、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤を併用することができる。好ましくは陰イオン界面活性剤である。
【0020】陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖の1級または2級アルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのエトキシレート化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩及び脂肪酸塩が好ましい。特に、アルキル鎖の炭素数が12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数12〜18のアルキル硫酸塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウムが好ましい。
【0021】本発明の洗剤組成物に使用できるアルカリ剤は、一般に衣料用洗剤に用いられるものはすべて使用することができるが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、非晶質珪酸塩、結晶性珪酸塩、並びにモノエタノールアミン及びジエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられ、1種または2種以上使用することができる。特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、非晶質珪酸塩及び結晶性珪酸塩が好ましい。
【0022】本発明において、アルカリ剤は5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%含有することが好ましい。
【0023】アルカリ剤として好適な結晶性珪酸塩について具体的に説明すると、本発明に用いられる結晶性珪酸塩として好適なものは、次の組成を有するものである。
【0024】
x(M2O)・y(SiO2)・z(MemOn)・w(H2O) (I)
〔式中、M は周期律表のIa族元素を表し、Meは周期律表のIIa族元素、IIb 族元素、IIIa族元素、IVa 族元素又はVIII族元素から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを示し、 y/x = 0.5〜2.6 、 z/x =0.01〜0.9 、w =0〜20、 n/m = 0.5〜2.0 である。〕
M2O・x'(SiO2)・y'(H2O) (II)
〔式中、M はアルカリ金属を表し、x'= 1.5〜2.6 、y'=0〜20である。〕。
【0025】まず、前記 の一般式(I)で表される結晶性珪酸塩について説明する。一般式(I)において、M は周期律表のIa族元素から選ばれ、Ia族元素としては、Na、K 等が挙げられる。これらは単独で或いは例えばNa2OとK2O とが混合してM2O 成分を構成してもよい。
【0026】Meは周期律表のIIa 族元素、IIb 族元素、IIIa族元素、IVa 族元素又はVIII族元素から選ばれ、例えばMg、Ca、Zn、Y 、Ti、Zr、Fe等が挙げられる。これらは特に限定されるものではないが、資源及び安全上の点から好ましくはMg、Caである。また、これらは単独で或いは2種以上混合していてもよく、例えばMgO 、CaO 等が混合してMemOn成分を構成していてもよい。
【0027】また、一般式(I)において、 y/x は 0.5〜2.6 であり、好ましくは 1.5〜2.2 である。 y/x が 0.5未満では耐水溶性が不十分であり、結晶性珪酸塩自身のケーキング性、溶解性、洗剤組成物の保存安定性に著しく悪影響を及ぼす。また、 y/x が 2.6を超えると、アルカリ能が低くなり、アルカリ剤として不十分となり、且つイオン交換能も低くなり、イオン交換体としても不十分である。また、一般式(I)において、 z/x は0.01〜0.9 であり、好ましくは0.02〜0.5である。 z/x が0.01未満では耐水溶性が不十分であり、 z/x が0.9 を超えるとイオン交換能も低くなり、イオン交換体として不十分である。
【0028】x, y, z は前記の y/x 比、 z/x 比に示されるような関係であれば特に限定されるものではない。なお、前記のようにx(M2O)が例えばx'(Na2O)・x''(K2O)・となる場合は、x はx'+x'' となる。このような関係は、z(MemOn)成分が2種以上のものからなる場合におけるz においても同様である。また、 n/m は、当該元素に配位する酸素イオン数を示し、実質的には 0.5、 1.0、 1.5、 2.0の値から選ばれる。
【0029】一般式(I)で表される結晶性珪酸塩は、M2O 、SiO2、MemOn の三成分よりなっている。従って、一般式(I)で表される結晶性珪酸塩を製造するには、その原料として各成分が必要になるが、本発明においては特に限定されることなく公知の化合物が適宜用いられる。例えば、M2O 成分、MemOn 成分としては、各々の当該元素の単独或いは複合の酸化物、水酸化物、塩類、当該元素含有鉱物が用いられる。具体的には、例えばM2O 成分の原料としては、NaOH、KOH 、Na2CO3、K2CO3、Na2SO4等が、MemOn成分の原料としては、CaCO3、MgCO3、Ca(OH)2、Mg(OH)2、MgO 、ZrO2、ドロマイト等が挙げられる。SiO2成分としてはケイ石、カオリン、タルク、溶融シリカ、珪酸ソーダ等が用いられる。
【0030】一般式(I)で表される結晶性珪酸塩の調製方法は、目的とする結晶性珪酸塩のx, y, z の値となるように所定の量比で上記原料成分を混合し、通常 300〜1500℃、好ましくは 500〜1000℃、更に好ましくは 600〜900 ℃の範囲で焼成して結晶化させる方法が例示される。この場合、加熱温度が 300℃未満では結晶化が不十分で耐水溶性に劣り、また1500℃を超えると粗大粒子化しイオン交換能が低下する。加熱時間は通常 0.1〜24時間である。このような焼成は通常、電気炉、ガス炉等の加熱炉で行なうことができる。
【0031】このようにして得られた一般式(I)で表される結晶性珪酸塩は、0.1 重量%水分散液において11以上のpHを示し、優れたアルカリ能を示す。また、アルカリ緩衝効果についても特に優れており、炭酸ソーダや炭酸カリウムと比較してもアルカリ緩衝効果が優れるものである。
【0032】一般式(I)で表される結晶性珪酸塩は、イオン交換容量として、少なくとも100CaCO3mg/g以上、好ましくは 200〜600CaCO3mg/gを有するものであり、本発明における金属イオン捕捉能を有する物質の一つである。
【0033】一般式(I)で表される結晶性珪酸塩は、前記のようにアルカリ能とアルカリ緩衝効果を有し、更にイオン交換能を有するため、その配合量を適宜調整することにより、シート状洗剤の洗浄力を好適に調整することができる。
【0034】一般式(I)で表される結晶性珪酸塩は、その平均粒径が 0.1〜100 μmであることが好ましく、より好ましくは1〜60μmである。平均粒径が 100μmを超えると、イオン交換の発現速度が遅くなる傾向があり、洗浄性の低下を招く。また、 0.1μm未満であると比表面積の増大により吸湿性並びに吸CO2 性が増大し、品質の劣化が著しくなる傾向がある。なお、ここでいう平均粒径とは、粒度分布のメジアン径である。このような平均粒径及び粒度分布を有する結晶性珪酸塩は、振動ミル、ハンマーミル、ボールミル、ローラーミル等の粉砕機を用い、粉砕することによって調製することができる。
【0035】次に前記の一般式(II)で表される結晶性珪酸塩について説明する。この結晶性珪酸塩は、一般式(II)
M2O・x'(SiO2)・y'(H2O) (II)
〔式中、M はアルカリ金属を表し、x'= 1.5〜2.6 、y'=0〜20である。〕で表されるものであるが、一般式(II)中のx'、y'が 1.7≦x'≦2.2 且つy'=0のものが好ましく、陽イオン交換能が 100〜400 CaCO3 mg/gのものが好適に使用でき、本発明における金属イオン捕捉能を有する物質の一つである。一般式(II)で表される結晶性珪酸塩は、このようにアルカリ能とアルカリ緩衝効果を有し、更にイオン交換能を有するため、その配合量を適宜調整することにより、前述の洗浄条件を好適に調整することができる。
【0036】一般式(II)で表される結晶性珪酸塩は、特開昭60−227895号公報にその製法が記載されており、一般的には無定形のガラス状珪酸ソーダを 200〜1000℃で焼成して結晶性とすることによって得られる。合成方法の詳細は例えばPhys.Chem.Glasses.7, 127-138(1966)、Z.Kristallogr., 129, 396-404(1969)等に記載されている。また、一般式(II)で表される結晶性珪酸塩は、例えば、ヘキスト社より商品名「Na-SKS-6」(δ−Na2Si2O5)として、粉末状、顆粒状のものが入手できる。本発明において、一般式(II)で表される結晶性珪酸塩は、一般式(I)で表される結晶性珪酸塩と同様に、平均粒径が 0.1〜100 μmであることが好ましく、より好ましくは1〜60μmである。
【0037】本発明において、前記一般式(I)で表される結晶性珪酸塩、前記一般式(II)で表される結晶性珪酸塩は、それぞれ単独あるいは2種以上を用いることができる。
【0038】本発明の洗剤組成物に使用できる金属イオン捕捉剤は、一般に衣料用洗剤に用いられる物はすべて使用することができるが、例えば、前記の結晶性珪酸塩、結晶性アルミノ珪酸塩、非晶質アルミノ珪酸塩、ポリカルボン酸塩やアミノポリ酢酸塩等の有機キレート剤、ポリカルボン酸塩ポリマーなどが挙げられ、1種または2種以上使用できる。
【0039】本発明に用いられる結晶性アルミノ珪酸塩は、一般にゼオライトといわれているものであり、下記式a'(M2O)・Al2O3・b'(SiO2)・w(H2O) (III)〔式中、M はアルカリ金属原子、a', b', w は各成分のモル比を表し、一般的には 0.7≦a'≦1.5 、0.8 ≦b'<6、w は任意の正数である。〕で表されるものであり、中でも次の一般式(IV)
Na2O・Al2O3・n(SiO2)・w(H2O) (IV)
〔ここで、n は 1.8〜3.0 、w は1〜6の数を表す。〕で表されるものが好ましい。結晶性アルミノ珪酸塩(ゼオライト)としては、A型、X型、P型ゼオライトに代表される平均一次粒径 0.1〜10μm の合成ゼオライトが好適に使用される。ゼオライトは粉末及び/又はゼオライトスラリーを乾燥して得られるゼオライト凝集乾燥粒子として配合してもよい。
【0040】本発明に用いられる非晶質アルミノ珪酸塩としては、珪素をSiO2として、30重量%以上、好ましくは40重量%以上含有するものが良く、また、5%分散液のpHが9以上であるものを用いると、高湿度貯蔵後の洗剤の溶解性の劣化が更に改善される。
【0041】本発明に用いられる非晶質アルミノ珪酸塩としては、下記一般式(V)で表されるものが例示され、これらは高吸油性で且つ陽イオン交換能が高い。
a(M2O)・Al2O3・b(SiO2) ・c(H2O) (V)
〔式中、M はアルカリ金属原子、a, b, c は各成分のモル数を表し、一般的には0.7≦a ≦2.0 、0.8 ≦b <4、c は任意の正数である。〕
特に次の一般式(VI)
Na2O・Al2O3・b(SiO2)・c(H2O) (VI)
〔ここで、b は 1.8〜3.2 、c は1〜6の数を表す。〕で表されるものが好ましい。
【0042】特に、非晶質のアルミノ珪酸塩はイオン交換能だけでなく、吸油能も有するため好ましい。かかる非晶質アルミノ珪酸塩の製造法は特開平6-179899号公報を参考にすることによって容易に得ることができる。
【0043】本発明に用いられる有機キレート剤は、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、クエン酸等のポリカルボン酸またはその塩、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、イミノジ酢酸、ヒドロキシイミノジ酢酸、ヒドロキシイミノジコハク酸等のアミノポリカルボン酸またはその塩などが挙げられ、特にpKCaが4以上の有機キレート剤が好ましい。
【0044】本発明に用いられるポリカルボン酸塩ポリマーは、下記の式(VII)
【0045】
【化1】


【0046】〔式中、Xは1〜8のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の共重合可能なモノマーまたはその塩、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、イタコン酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル等の共重合可能なモノマー、YはO、CH2 またはCHCOOM、ZはH、OHまたはC1 〜C4 のアルキル基、MはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウム、a/bは0/100〜99/1であり、ランダム重合が好ましく、nはポリマーの分子量が1000〜20万を示すような値である。〕で表されるものが例示され、例えば、ポリアクリル酸またはその塩、ポリイタコン酸またはその塩、ポリα−ヒドロキシアクリル酸またはその塩、(メタ)アクリル酸と(無水)マレイン酸の共重合物またはその塩、特開昭54−52196号公報記載のポリグリオキシル酸塩などが挙げられる。
【0047】他のポリカルボン酸塩ポリマーとしては、ポリアスパラギン酸塩などのアミノカルボン酸ポリマーが挙げられる。
【0048】本発明において、金属イオン捕捉剤は5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%含有することが好ましい。
【0049】更に上記以外の成分として、硫酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸塩、タルク、微粉末シリカ、粘土等の溶解促進剤、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルローズ等の有機ビルダー、漂白剤、酵素、青味付剤、蛍光染料、消泡・抑泡剤、香料を配合することができる。
【0050】漂白剤としては、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム(1水塩が好ましい)、又は炭酸ナトリウム過酸化水素付加体等が挙げられ、特に過炭酸ナトリウムが好ましく、洗剤に配合する場合、特にゼオライト等のアルミノ珪酸塩と併用する場合はホウ酸ナトリウムにて被覆することが好ましい。
【0051】漂白活性化剤としては、テトラアセチルエチレンジアミン、アセトキシベンゼンスルホン酸塩、特開昭59−22999号公報、特開昭63−258447号公報、特開平6−316700号公報記載の有機過酸前駆体、又は遷移金属を金属イオン封鎖剤で安定化させた金属触媒等が挙げられる。
【0052】酵素(本来的に酵素作用を洗浄工程中になす酵素である。)としては、酵素の反応性から分類すると、ハイドロラーゼ類、オキシドレダクターゼ類、リアーゼ類、トランスフェラーゼ類及びイソメラーゼ類が挙げられるが、本発明にはいずれも適用できる。特に好ましいのはプロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ及びペクチナ−ゼが含まれる。プロテアーゼの具体例は、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、コラーゲナーゼ、ケラチナーゼ、エラスターゼ、スプチリシン、BPN、パパイン、プロメリン、カルボキシペプチターゼA及びB、アミノペプチターゼ、アスパーギロペプチターゼA及びBであり、市販品として、サビナーゼ、アルカラーゼ(ノボインダストリー社)、API 21(昭和電工(株))、マクサカル(ギストプロケイデス社)、特開平5−25492号公報記載のプロテアーゼK−14もしくはK−16がある。
【0053】エステラ−ゼの具体例としては、ガストリックリパ−ゼ、バンクレアチックリパ−ゼ、植物リパ−ゼ類、ホスホリパ−ゼ類、コリンエステラ−ゼ類及びホスホタ−ゼ類がある。
【0054】リパーゼの具体例としては、リポラーゼ(ノボインダストリー社)、リポサム(昭和電工(株))等の市販のリパーゼを用いることができる。
【0055】また、セルラーゼとしては市販品のセルザイム(ノボインダストリー社)、特開昭63−264699号公報の請求項4記載のセルラーゼが使用でき、アミラーゼとしては市販のターマミル(ノボインダストリー社)等が使用できる。
【0056】酵素安定剤として還元剤(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム)、カルシウム塩、マグネシウム塩、ポリオール、ホウ素化合物等を用いることができる。還元剤は水道水中の塩素を除去することにより、酵素を安定化する。
【0057】各種の青味付剤も必要に応じて配合できる。青味付剤としては、特公昭49−8005号公報、特公昭49−26286号公報又は特公昭53−45808号公報記載の物質が挙げられる。
【0058】酸化防止剤としては、第3ブチルヒドロキシトルエン、4,4'−ブチリデンビス−(6−第3ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'−ブチリデンビス−(6−第3ブチル−4−メチルフェノール)、モノスチレン化クレゾール、ジスチレン化クレゾール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、1,1'−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0059】蛍光染料として、4,4'−ビス−(2−スルホスチリル)−ビフェニル塩、4,4'−ビス−(4−クロロ−3−スルホスチリル)−ビフェニル塩、2−(スチリルフェニル)ナフトチアゾール誘導体、4,4'−ビス(トリアゾール−2−イル)スチルベン誘導体、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体の1種又は2種以上を、組成物中に0〜1重量%含有することができ、例えばホワイテックスSA(住友化学社製)やチノパールCBS(チバガイギ−社製)等の商品名で市販されている。
【0060】消泡・抑泡剤としては、一般に界面活性剤水溶液による泡を消す、あるいは泡の形成を抑制するものであれば使用することが可能であるが、好ましくは、シリコーン系の消包・抑泡剤が良い。
【0061】香料としては、従来洗剤に配合される香料、例えば特開昭63−101496号公報記載の香料を使用することができる。
【0062】本発明に用いられるドウ状の洗剤組成物は水分の少ない組成でドウ状化を行うものであり、多くとも10%以下の水分、好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下の水分量が好ましい。10%を超える水分を含む場合は、洗剤組成物の薄層の両側に位置する水溶性基体が一部溶け粘着性を帯び、シート状洗剤同士がくっついてしまったり、また、冬場など低湿度化で保管された場合には、洗剤組成物が乾燥して非常にもろくなり、実用場面でシート状の形態を維持できなくなる。なお、水分量は揮発分として測定されるものである。本発明ではドウ状の洗剤組成物1gによく乾燥した硫酸ナトリウム15gを添加した後、よく混合し、これをシャーレに入れて105℃で2時間乾燥させた後の重量減分を水分量とする。
【0063】次に、本発明のシート状洗剤に用いられるシート状水溶性基体について説明する。本発明に用いられる水溶性基体としては、■水溶性フィルム、■水溶性高分子繊維からなる不織布もしくは織布、又は、■水溶性フィルムと水溶性高分子繊維からなる不織布もしくは織布の積層シートが好ましい。これらの水溶性基体は、水溶性高分子により構成される。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルメチレンエーテル、キサンタンガム、ガーガム、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等や、ポリアクリル酸またはその塩、ポリメタクリル酸またはその塩、ポリイタコン酸またはその塩等のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する有機ポリマー及び/又はその塩が例示され、特にポリビニルアルコール或いはマレイン酸やイタコン酸で変性されたポリビニルアルコールが好ましい。
【0064】このような水溶性基体のうち、水溶性不織布としては、特開平8−127919号公報、特開平8−3848号公報、特開平5―321105号公報、特開平7−42019号公報、特開平3−86530号公報、特開平3−279410号公報、特開平3−199408号公報、特開平2−112406号公報、特開昭61−75862号公報に示された水溶性ポリビニルアルコール系繊維からなる不織布が挙げられる。また織布としては、前記した各種水溶性高分子繊維から得られたものが使用できる。なお、不織布や織布を構成する水溶性高分子繊維の直径は5〜200μmのものが好ましく、特に5〜50μmのものが好ましい。
【0065】また、水溶性フィルムの例としては米国特許第3186869号、米国特許第3198740号、米国特許第3280037号、米国特許第3322674号、実開昭48−33837号公報、同48−88343号公報、同50−140958号公報、同51−150号公報、同52−77961号公報、同55−151853号公報、同57−1851号公報、特開昭59−180085号公報、同61−57700号公報、同61−97348号公報、同61−98752号公報、同61−200146号公報、同61−200147号公報、同61−204254号公報、同61−228057号公報、同62−57492号公報、同62−156112号公報、同62−275145号公報、同63−8496号公報、同63−8497号公報、同63−12466号公報、同63−12467号公報、同64−29408号公報、同64−29438号公報、特開平2−60906号公報、同2−108534号公報、同2−163149号公報、同3−59059号公報、同4−53900号公報、同4−57989号公報、同4−63899号公報、同4−72180号公報、同4−147000、同4−164998号公報、同4−174792号公報、同4−202600号公報等に示されているフィルムが挙げられる。
【0066】また、本発明の水溶性基体としては、前記のような水溶性高分子繊維からなる不織布又は織布と水溶性フィルムとからなる積層シートを用いることができる。このような積層シートを得る方法としては、水溶性フィルムを不織布等の片面に重ね合わせ、ヒートシール等で接着する方法の他、不織布等の片面に水溶性高分子を塗布してフィルムを形成させる方法が挙げられる。かかる積層シートを用いる場合、水溶性フィルムが組成物層と接するように配置し、外側を不織布等とすることが好ましい。このような積層シートを用いた本発明のシート状洗剤を図3に示す。図3は洗剤組成物を含む薄層と積層シートからなるシート状洗剤であり、洗剤組成物を含む薄層5と接するように積層シートの水溶性フィルム6、6’が配置され、その外側に水溶性不織布7、7’が配置されている。
【0067】以上に例示したなかで好ましい水溶性基体は、使用量の調整等の際の破き易さより、水溶性高分子繊維からなる不織布又は織布であり、特にポリビニルアルコールやマレイン酸やイタコン酸で変性されたポリビニルアルコールよりなる繊維を使用して得られた不織布又は織布が好ましい。更に、この水溶性高分子繊維からなる不織布又は織布に、ポリビニルアルコールやマレイン酸やイタコン酸で変性されたポリビニルアルコールからなる水溶性フィルムを内側に積層した水溶性積層シートも好ましい。
【0068】本発明に用いられる水溶性基体は、50℃の水に溶解するものが好ましい。ここで、「溶解する」とは、水溶性基体0.5gが50℃の水1リットルに10分以内、好ましくは7分以内に溶解し、更に8.6号のふるい(局方:2000μm)に通して残留物がない状態をいう。
【0069】本発明のシート状洗剤の調製方法は特に限定されるものではないが、まずドウ(dough)状の洗剤組成物は万能攪拌機やニーダー等の高粘度の攪拌に適した攪拌機で調製することができる。酵素や漂白成分等熱に弱い成分を配合する場合は、攪拌時の温度は40℃以下の低温にすることが好ましい。ついで、このドウ状の洗剤組成物を予めシート状に成形した後、その両面に少なくとも1層以上の水溶性シートを張り付ける方法、ドウ状の洗浄剤組成物をローラの回転等で移動する2枚以上の水溶性シートの間に供給しながら、同一又は異なるローラー等で圧縮成型する方法、ドウ状にした洗浄剤組成物を広げられた少なくとも1層以上の水溶性シートに塗布し、その塗布した組成物上に少なくとも1層以上の水溶性シートを張り付ける方法等により、本発明のシート状洗剤を得ることができる。また、他の調製方法として、ドウ状の洗剤組成物を水溶性不織布や水溶性織布に含浸させ、不織布又は織布に洗剤組成物を担持させて層を形成し、その層の両側に水溶性基体を配置することも可能である。
【0070】本発明のシート状洗剤の洗剤組成物の薄層は、使用しやすさの点より、その厚さが0.1〜5mmであることが望ましい。5mm以下の厚さであるとシート状洗剤を容易に破くことができる。また、0.1mm以上の厚さとすると充分な量の洗剤組成物等を充填できる。より好ましい厚さは0.25〜3mmである。
【0071】また、本発明のシート状洗剤の洗剤組成物の薄層片の面積密度は0.005〜1.0g/cm2 であることが望ましい。この範囲の面積密度であれば、洗剤組成物の充填量が充分となり、良好な洗浄性が得られる。より好ましい面積密度は0.02g/cm2 〜0.5g/cm2 である。
【0072】また、本発明のシート状洗剤は、実使用において、シート状洗剤を破った際の内容物の飛散や流失がないことが望ましい。ここで、「内容物の流失」とは、5cm×5cmの大きさに全周を切断されたシート状洗剤を用意し、シート状洗剤の全面に荷重がかかるように200gの重りをのせ、温度25℃、湿度60%R.H.の水平な場所で30分間静置後、切断面から内容物(洗剤組成物)が流出することをいう。内容物の流出が無ければ、手や使用場所を汚す心配が無くなり大変使い勝手が良くなる。
【0073】本発明の洗剤はシート状であり、且つ破断した場合や使用時の内容物の漏れ、流出が無いが故に、従来の粉末状或いはワンパックタイプの洗濯用洗剤にはない形態を有する充填方法や使用方法が可能である。例えば、シート状洗剤にミシン目をつけて破断しやすくすることや、図柄、文字を印刷する等して外観を美麗にしたり、使用方法や使用上の注意事項を印刷して使用する毎に使用者に認知させやすくすることなどが挙げられる。また、洗剤組成物層の製造工程からは連続的な層とすることが容易であるが、部分的に不連続の組成物層を形成することも勿論できる。
【0074】
【発明の実施の形態】以下、本発明について実施例を挙げて詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0075】<試験方法>実施例において採用した試験方法を予め下記に説明する。
〔進入硬度の測定方法〕洗剤組成の各成分とマーカー用に色素(赤色106号)をダルトン製万能混合攪拌機(形式5DM−03−r)に合計1000g仕込む。約25℃に調温後、まず低速(約100rpm)で1分間混練し、次いで高速(約200rpm)で混練する。ミノルタ株式会社製測色計(CR−300)を用いて混練物のb値を測定し、b値が一定になるまで高速で混練を行って均一な洗剤組成物を得る。FUDOH RHEO METER(RT−2010J−CW)のレオメーターを用い、25℃に保った上記洗剤組成物の表面にFUDOHレオメーター専用アダプター■(底面積1cm2 )を押し付け、アダプターが洗剤組成物の内部に30cm/分の進入速度で20mm進入したときの応力を測定した。
【0076】〔破断させた場合における組成物の流失、漏れの評価方法(耐流出性)〕5cm×5cmの大きさに全周を切断されたシート状洗剤を用意し、シート状洗剤の全面に荷重がかかるように200gの重りをのせ、温度25℃、湿度60%R.H.の水平な場所で30分間静置後、切断面からの内容物(洗剤組成物)の流出を下記の基準で観察する。
(評価基準)
○:内容物の流出が全く見られない。
△:内容物が部分的に流出している。
×:内容物がほぼ全周にわたって流出している。
【0077】〔洗浄力の測定方法〕
(人工汚染布の調製)下記組成の人工汚染液を布に付着して人工汚染布を調製した。人工汚染液の布への付着は、グラビアロールコーターを用いて人工汚染液を布に印刷することで行った。人工汚染液を布に付着させ人工汚染布を作製する工程は、グラビアロールのセル容量 58cm3/cm2 、塗布速度1.0m/min 、乾燥温度 100℃、乾燥時間1分で行った。布は木綿金巾2003布(谷頭商店製)を使用した。
(人工汚染液の組成)
ラウリン酸 0.44重量%ミリスチン酸 3.09重量%ペンタデカン酸 2.31重量%パルミチン酸 6.18重量%ヘプタデカン酸 0.44重量%ステアリン酸 1.57重量%オレイン酸 7.75重量%トリオレイン酸 13.06重量%パルミチン酸n−ヘキサデシル 2.18重量%スクアレン 6.53重量%卵白レシチン液晶物 1.94重量%鹿沼赤土 8.11重量%カーボンブラック 0.01重量%水道水 バランス。
【0078】(洗浄条件及び評価方法)評価用洗剤水溶液1リットルに、上記で作成した10cm×10cmの人工汚染布を5枚入れ、ターゴトメーターにて100rpmで洗浄した。洗浄条件は次の通りである。
・洗浄条件洗浄時間 10 分洗浄剤濃度 0.05 %水の硬度 4°DH水温 20℃すすぎ 水道水にて5分間洗浄力は汚染前の原布及び洗浄前後の汚染布の 550nmにおける反射率を自記色彩計(島津製作所製)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求め、5枚の測定平均値を洗浄力として示した。
【0079】
【数1】


【0080】実施例1表1に示す洗剤組成の各成分をダルトン製万能混合攪拌機(形式5DM−03−r)に合計1000g仕込み、25℃に調温後、まず低速(約100rpm)で1分間攪拌し、次いで粉末状態の洗剤組成物がドウ状になるまで高速(約200rpm)で攪拌し、均一なドウ状洗剤組成物を得た。
【0081】このドウ状洗剤組成物をインダストリア・プロドッチ・スタムパーチ・トリノ(Industria Prodotti Stampati TORINO)社製ヌードル・メイキング・マシーン(Noodle Making Machine) 「チタニア(titania) 」(登録商標)を用いて厚さ2mmの薄層を作製し、次いでこの薄層を50×100mmの大きさに切断した。この薄層片一枚の重量は平均15gであり、面積密度は平均0.3g/cm2 、水分量は2重量%以下であった。
【0082】次に、特開平8−3848号公報の実施例2に準じて調製された目付(坪量)20g/m2 の水溶性不織布と日本合成化学工業(株)製「ハイセロン」(水溶性フィルム)とを積層した積層シート2枚で、不織布が最外層となるように上記切断された薄層片をはさみ、周囲をFUJI IMPULSE AUTO SEALER(FA-600-5)でヒートシールを行いシート状洗剤を得た。
【0083】このシート状洗剤の破断時の洗剤の漏れ、流出を前記の方法で評価したところ、全く流出が見られなかった。また、3等分になるように本シート状洗剤にミシン目を入れ、ミシン目にそって手で破ったとき、容易に破くことができ、かつ破いた時に洗剤の漏れや流出もなく、ほとんど手に付着しなかった。更に、このシート状洗剤をイオン交換水に所定の濃度になるように溶解し、前記の方法で洗浄性を評価したところ、洗浄率は58%であった。更に、前記方法で測定した洗剤組成物の進入硬度は2.63kg/cm2 であった。
【0084】実施例2表1に示す洗剤組成により、実施例1と同様にしてドウ状の洗剤組成物を調製した。このドウ状洗剤組成物を縦70×横70×深さ0.7mmの型に埋め込み、型から外して型と同じ大きさの薄層片を得た。この薄層片一枚の重量は平均5.1gであり、面積密度は平均0.10g/cm2 、水分量は2重量%以下であった。
【0085】次に、特開平8−3848号公報の実施例1に準じて調製された目付(坪量)30g/m2 の水溶性不織布で上記の薄層片をはさみ、シート状洗剤を得た。このシート状洗剤の破断時の洗剤の流出(耐流出性)及び洗浄率を表1に示す。また、本シート状洗剤は手でも破くことができ、かつ破いた時に洗剤の漏れや流出もなく、ほとんど手に付着しなかった。更に前記方法で測定した洗剤組成物の進入硬度を表1に示す。
【0086】実施例3表1に示す洗剤組成の各成分をIrie Shokai 製BENCH KNEADER(PNV-1)に合計300g仕込み、30℃に加温後、目盛り4で粉末状態の洗剤組成物がドウ状になるまで攪拌し、水分量2重量%以下の均一なドウ状洗剤組成物を得た。
【0087】次に、互いに相反する方向に回転するよう設計された直径が50mmのステンレス製ローラー〔(有)三力製作所製〕2本の間に、日本合成化学工業(株)製「ハイセロン」の水溶性フィルム2枚をはさみ、手動でローラーを回転させる間に上記のドウを2枚の水溶性フィルムの間に挿入し、次いで10cm×10cmに切断し、更に周囲をFUJI IMPULSEAUTO SEALER(FA-600-5) でヒートシールを行いシート状洗剤を得た。このシート洗剤中の洗剤組成物の薄層の厚みは4mmであり、重量は平均60gであり、面積密度は平均0.6g/cm2 であった。
【0088】このシート状洗剤の破断時の洗剤の流出及び洗浄率を表1に示す。また、3等分になるように本シート状洗剤にミシン目を入れ、ミシン目にそって手で破ったとき、容易に破くことができ、かつ破いた時に洗剤の漏れや流出もなく、ほとんど手に付着しなかった。更に、前記方法で測定した洗剤組成物の進入硬度を表1に示す。
【0089】実施例4表1に示す洗剤組成の各成分を1.2×50mmのスリットを取り付けた栗本鉄工所製KRCニーダー(S1型)に仕込み、室温で100rpmの攪拌回転数で、厚さ1.2mmの水分量が2重量%以下のドウ状洗剤組成物の薄層を作製した。
【0090】特開平8−3848号公報の実施例2に準じて調製された目付(坪量)20g/m2 の水溶性不織布を前記薄層2枚ではさみ、それを実施例1のヌードル・メイキング・マシーンのローラーに通し、洗剤組成物が水溶性不織布に含浸した厚さ3mmの薄層を得た。この薄層を50×100mmの大きさに切断した。この薄層片一枚の重量は平均18gであり、面積密度は平均0.36g/cm2 であった。
【0091】次に上記不織布に含浸させた厚さ3mmの薄層片を特開平8−3848号公報の実施例2に準じて調製された目付(坪量)20g/m2 の水溶性不織布と日本合成化学工業(株)製「ハイセロン」(水溶性フィルム)とを積層した積層シート2枚で、不織布が最外層となるようにはさみ、周囲をFUJI IMPULSE AUTO SEALER(FA-600-5)でヒートシールを行いシート状洗剤を得た。
【0092】このシート状洗剤の破断時の洗剤の流出及び洗浄率を表1に示す。また、3等分になるように本シート状洗剤にミシン目を入れ、ミシン目にそって手で破ったとき、容易に破くことができ、かつ破いた時に洗剤の漏れや流出もなく、ほとんど手に付着しなかった。更に、前記方法で測定した洗剤組成物の進入硬度を表1に示す。
【0093】実施例5〜9表1又は表2に示す各洗剤組成を実施例1と同様にしてドウ状の洗剤組成物をそれぞれ調製した。次に、実施例1と同様にしてシート状洗剤を得た。尚、水溶性不織布は目付(坪量)25g/m2 のものを用いた。各シート状洗剤中の洗剤組成物の薄層片一枚の重量は13〜20gであり、面積密度は0.26〜0.4g/cm2 の範囲であった。なお、水分量は実施例7は5重量%以下、それ以外の実施例の組成については2重量%以下であった。
【0094】各シート状洗剤の破断時の洗剤の流出及び洗浄率を表1又は表2に示す。また、3等分になるように各シート状洗剤にミシン目を入れ、ミシン目にそって手で破ったとき、いずれも容易に破くことができ、かつ破いた時に洗剤の漏れや流出もなく、ほとんど手に付着しなかった。更に、前記方法で測定した各実施例の洗剤組成物の進入硬度を表1又は表2に示す。
【0095】比較例1〜3表2に示す各洗剤組成を実施例1と同様にして洗剤組成物をそれぞれ調製した。ただし、比較例1では攪拌によりドウ状物は得られず、流動性の高い洗剤組成物が得られたため、実施例1〜10の様な薄層片の作製が困難であった。そこで、実施例1と同じ積層シートを用いて内径5×10cmの袋に15gの洗剤組成物を分包した。また、比較例2、3は実施例2と同様にして薄層片を作製し、次いで実施例1の積層シートを用いて実施例1と同様にしてシート状洗剤を得た。
【0096】なお、流動性の高いこれら比較例1〜3の洗剤組成物の水分量は2重量%以下であった。各シート状洗剤の破断時の洗剤の流出及び洗浄率を表2に示す。また、3等分になるように各シート状洗剤にミシン目を入れ、ミシン目にそって手で破ったとき、いずれも洗剤の漏れや流出が見られ、手に付着してしまった。更に、前記方法で測定した各比較例の洗剤組成物の進入硬度及び洗浄率を表2に示す。
【0097】
【表1】


【0098】
【表2】


【0099】(注)表中の記号は以下の意味である。
A:ラウリルアルコールのエチレンオキサイド平均6モル付加物B:三菱化学製「ノニデットS−6.5」(C12〜C13アルコールのエチレンオキサイド平均6.5モル付加物)
C:日本触媒化学工業製「ソフタノール70」(C12〜C14第二級アルコールのエチレンオキサイド平均7モル付加物)
D:C12アルコール/C14アルコールの混合物(C12/C14=75/25、重量比)に、エチレンオキサイド平均3モル、プロピレンオキサイド平均2モル、エチレンオキサイド平均3モルをこの順でブロック付加したものE:花王 (株) 製「エキセパールMC」(ヤシ脂肪酸メチルエステルのエチレンオキサイド平均6モル付加物)
F:直鎖アルキル(C10〜C13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とカリウム塩の等量混合物G:アルキル硫酸エステルナトリウム(ヤシ脂肪酸組成)
H:脂肪酸残基の炭素数14〜16のα−スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウムI:炭素数14〜16のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム塩J:牛脂脂肪酸ナトリウムK:炭酸ナトリウム/炭酸カリウム=7/3(重量比)の混合物L:ヘキスト社製「SKS−6」
M:東ソー(株)製合成ゼオライト「トヨビルダー」
N:ローヌプーラン社製「チキソレックス25」
O:クエン酸3ナトリウムP:エチレンジアミン四酢酸4ナトリウムQ:BASF社製ポリアクリル酸ナトリウム「Sokalan PA40」
R:BASF社製アクリル酸/マレイン酸コポリマーのナトリウム塩「Sokalan CP5」
S:下記式(VIII)のポリグリオキシル酸ナトリウム(分子量約9000)
【0100】
【化2】


【0101】T:パラトルエンスルホン酸ナトリウムU:ベントナイト(試薬)
V:ポリエチレングリコール(分子量約6000)
W:アイエスピー・ジャパン(株)社製ビニルピロリドン含有ポリマー「GAFQUAT734」
X:式(IX)の漂白活性化剤と過炭酸ソーダの重量比が1/4の漂白成分
【0102】
【化3】


【0103】Y:ヘキスト社製「テトラアセチルエチレンジアミン」と過炭酸ソーダの重量比が1/4の漂白成分Z:酵素〔API−21H(昭和電工 (株) 製) 、リポラーゼ100T(ノボノルディスク社製) 、セルザイム0.1T(ノボノルディスク社製) 、ターマミル60T(ノボノルディスク社製) を、2:1:1:1の重量比で混合したもの〕1 %、蛍光染料〔ホワイテックスSA(住友化学社製)、チノパールCBS(チバガイギー社製)を1:1の重量比で混合したもの〕0.5%、消泡・抑泡剤〔アミノアルキル変性シリコーンオイル〕0.25%、下記表3記載の香料0.25%と芒硝であり、芒硝にて組成物全体の量が100%になるように調整した
【0104】
【表3】


【0105】〔結果〕以上の結果から明らかなように、水溶性基体に特定の進入硬度を有するドウ状の洗剤組成物を挟み込んだ実施例1〜9のシート状洗剤は、粉の飛散の心配が無く、特定の硬度を有しているので使用時や破断時に内容物の飛散のほとんどなく、使用量の任意な調整がし易い。更に、本シート状洗剤は、油汚れの除去に有効な非イオン活性剤を含有し、かつ洗剤の基本成分であるアルカリ剤と金属イオン捕捉剤を含有しているので、単独でも優れた洗浄力を示す。
【0106】一方、比較例1〜3の洗剤は、内包する洗剤組成物の進入硬度が低く、即ち洗剤組成物が柔らかく流動性が高いため、シート化が困難であり、またシート化が可能でも洗剤組成物の流出が見られ、その結果、実使用においての使い勝手が非常に悪くなってしまう。更に、比較例2、3のように洗剤組成物中にアルカリ剤と金属イオン捕捉剤のいずれか片方を含まないと、洗浄力が低くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシート状洗剤の一例を示す断面略示図
【図2】本発明のシート状洗剤の他の例を示す断面略示図
【図3】本発明のシート状洗剤の他の例を示す断面略示図
【符号の説明】
1 :ドウ状洗剤組成物
2,2':シート状水溶性基体
3 :ドウ状洗剤組成物
4,4',4'':シート状水溶性基体
5 :ドウ状洗剤組成物
6,6':シート状水溶性基体
7,7':シート状水溶性基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 25℃における進入硬度が0.1〜10kg/cm2 であるドウ状の洗剤組成物を含む薄層と、該薄層の両側に配置されたシート状水溶性基体とを有するシート状洗剤であって、前記洗剤組成物が少なくとも1種の非イオン界面活性剤と少なくとも1種のアルカリ剤と少なくとも1種の金属イオン捕捉剤を含有する非リン酸系洗剤組成物であることを特徴とするシート状洗剤。
【請求項2】 前記洗剤組成物の25℃における進入硬度が0.5〜10kg/cm2 である請求項1項記載のシート状洗剤。
【請求項3】 前記洗剤組成物の25℃における進入硬度が1〜10kg/cm2 である請求項1項記載のシート状洗剤。
【請求項4】 前記非イオン界面活性剤が、25℃以下の流動点をもつ非イオン界面活性剤である請求項1〜3の何れか1項記載のシート状洗剤。
【請求項5】 前記シート状水溶性基体が、下記(i)〜(iii) の何れかである請求項1〜4記載の何れか1項記載のシート状洗剤。
(i)50℃の水1リットルに対して10分以内に溶解する水溶性フィルム(ii)水溶性高分子繊維からなり、50℃の水1リットルに対して10分以内に溶解する織布もしくは不織布(iii) 水溶性フィルムと水溶性高分子繊維からなる織布もしくは不織布とからなる50℃の水1リットルに対して10分以内に溶解する積層シート
【請求項6】 前記水溶性フィルム又は/及び水溶性高分子繊維が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルメチレンエーテル、キサンタンガム、ガーガム、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースより選ばれる1種又は2種以上からなる請求項1〜5記載の何れか1項記載のシート状洗剤。
【請求項7】 前記水溶性フィルム又は/及び水溶性高分子繊維が、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有する有機ポリマー及び/又はその塩である請求項1〜5記載の何れか1項記載のシート状洗剤。
【請求項8】 前記薄層の厚さが0.1〜5mm、且つ面積密度が0.005〜1.0g/cm2 である請求項1〜7の何れか1項記載のシート状洗剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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