説明

シート状洗濯用製品

【課題】 使用量の調整が容易で、簡便性に優れ、且つ粉末等の内容物の漏れ、飛散を大幅に軽減した洗浄剤組成物を含有する洗濯用製品を提供する。
【解決手段】 衣料用洗浄剤組成物を含有する薄層1の両側に該薄層1の維持手段としての水溶性基体2、2’とを配置してなるシート状洗濯用製品。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、実使用において使用量を調整し易く簡便性に優れ、且つ内容物の漏れや飛散を大幅に軽減し、更には輸送・充填時衝撃に対する形態安定性に優れた洗濯用製品、特にシート状の衣料用洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】過去に市販されていた衣料用粉末洗剤製品は、噴霧乾燥法で得られる嵩密度が0.2〜0.4g/cm3 、洗濯一回当たりの標準使用量が水30リットルに対して40g前後の洗剤を紙箱に充填したものが主流であった。その使用に当たっては、洗濯時に箱ごと持ち上げ、直接洗濯槽に洗剤を振り出したり、カップ等を用いておおよその量を計量してから、洗剤を洗濯槽に投入するのが一般的であった。しかし、最近になり嵩密度が0.7g/cm3 以上のいわゆるコンパクトタイプの粉末洗剤が開発され、洗剤の持ち運び等の問題点に関しては改良されたものの、計量時あるいは洗剤投入時の洗剤粉末の飛散などに関しては相変わらず問題がある。
【0003】一般に、衣料用洗剤、柔軟剤、漂白剤の殆どには「使用上の注意」として「使用後は手をよく水であらうこと」や「目に入った場合には水ですぐに洗い流すこと」等を記している。従って、粉末の飛散が回避されることは、粉末が飛散し手に触れる或いは目に入る等の場合に、水で洗ったり、すすいだりする操作を回避できるので使用上の簡便性を向上でき非常に好ましい。また、当然粉末が床などに飛散した場合には掃除をする必要があり、掃除をしない場合に水をこぼしたりすると、床がすべり易くなる等の不具合を生じる。これらの点からも、洗剤等の粉末飛散の問題を解決することが切望されている。
【0004】使い易さを向上させ且つ使用時の洗剤粉末の飛散を解決する為に、洗濯一回当たりの量の洗剤を、予め水溶性、水透過性もしくは水分散性材料で包装してなるワンパック型洗剤が提案されている。例えば、特開昭63−8496号公報、特開昭63―8497号公報及び特開昭63−12467号公報には、嵩密度0.5〜1.2g/cm3 の洗剤を水溶性フィルムで分包包装してなるワンパック洗剤が提案されている。ところが、これらの水溶性材料で分包包装された高密度洗剤においては、水中での溶解性を少しでも改善する事を目的として、フィルムの水溶性を向上させていた。よって製品を濡れた手で触ると直ぐにフィルムが溶解して、手で触れた部分に穴があき、洗剤がこぼれてしまい粉末の飛散が依然起こりやすい。
【0005】また、非常に少量の洗剤を使用したい場合には一分包単位では洗剤量が多すぎるので手などで破いて洗剤を取り出す必要がある。この場合にも洗剤粉末がこぼれてしまう。更に、このとき手で破るので、洗剤粉末は手に接触又は付着する機会は著しく増えることになるので使用後手をすすぐ手間を生じてしまう。しかも、破られた残りの洗剤入り分包を洗剤粉末がこぼれないように保管しなければならないので非常に不便であった。つまり、水溶性材料で分包包装された高密度洗剤においては、実際の使用場面においては、使用量の任意な調整が困難であり、且つ、完全に粉末の飛散を防止できないという問題があった。
【0006】一方で、製品を1回の使用量単位に錠剤化し、粉末や内容物の飛散、漏れを回避する試みも多数なされているが、錠剤の場合にも使用量の任意な調整が困難である。敢えて任意に調整することを試みて、手で割る場合には非常に労力がかかり、しかも直接製品の組成物を手で触れることになり、割った場合にはやはり粉末等の飛散や漏れが生じることがあり、結局手をすすぐ手間や掃除をする手間が生じ好ましくない。更に錠剤においては粉末状組成物及びその原料をタブレット成形法に従って打錠しているので、輸送時・充填時の衝撃によって錠剤の一部又は全てが破壊してしまうので、その取り扱いに注意を要するという問題点もある。
【0007】また、粉末の飛散を防止するのに有効な形態として水溶性または水不溶性のフィルムや不織布に洗剤成分を含浸させた非イオン活性剤を含有するシート状の洗剤(例えば、特開平2−228398号、英国特許第2084176号等)が提案されている。しかし、この形態では洗剤成分が表面に露出してしまうため洗剤成分が手や容器に付着してしまう。また、含浸される基体として水不溶性フィルムや不織布を使用した場合、使用後にこれらの基体を廃棄する必要があり、使い勝手は悪い。更にはこの場合には水不溶性不織布が洗濯機中において攪拌される過程で、不溶性の繊維成分の一部が不織布全体より脱落して、洗浄乾燥後に衣類の表面に残留する問題もある。この場合、衣類が濃色系のものであれば、乾燥後に衣類表面への残留が目立つことになり好ましくない。
【0008】水不溶性の基体を応用した洗濯用製品の例としては、洗浄活性成分を含浸させた形態以外に洗浄活性剤を特定の通気量を有する不織布でサンドイッチした形態が米国特許第4170565号公報に開示されている。しかし、本発明においてビルダーの含有量の高い衣料用洗剤はビルダーにトリポリリン酸塩を用い、また、水分含有量も高い。周知のように有リンの衣料用洗剤は富栄養化の問題があるので使用は可能な限り制限されるべきである。しかし、ビルダーとしてトリポリリン酸塩と水をそれぞれ15%以上含有する組成には他のビルダーに代替するに困難な利点がある。つまり、ビルダーとしてトリポリリン酸塩と水をそれぞれ15%以上含有する組成は、一定粘度当たりの洗浄活性物質生地の輸送性が優れる点である。例えば、トリポリリン酸塩をゼオライトに置換したのみでは、サンドイッチした形態にするに充分な洗剤生地の粘彫性を付与した場合には洗浄活性物質のポンプ等での輸送効率が著しく低下してしまう。このとき、基体への塗工や活性物質のシート形態への加工は非常に効率が悪い。従って、本開示例を無リン化することは非常に困難である。更に使い勝手の悪い水不溶性不織布を水溶性シートに変えた場合には当然、水分含有量を大幅に低減する必要があり、更に本開示例の技術では、残存物の無い無リンのシート状洗浄剤の達成が困難である。
【0009】米国特許第5202045号公報には水不溶性不織布をS字型に曲げ、2カ所に洗浄活性物資及び/又は漂泊活性物質を充填しうる形態も提案されているが、上述の米国特許第4170565号公報と同様に充分なビルダー量を含有する組成物はビルダーとしてトリポリリン酸塩と水をそれぞれ15%以上含有し、リン酸塩代替ビルダー、特にゼオライトを含有し、水分量の少ない衣料用洗剤の技術開示がされていないのが実状である。
【0010】更に特開昭61−12796号公報には、非イオン界面活性剤、パー化合物の活性化剤及び特定の窒素含有化合物のうち少なくとも二種を含有する混合物を水溶性フィルム形成性ポリマーに埋設してなる洗剤添加剤が開示されている。しかし、この洗剤添加剤は基本的に洗剤に併用して用いられるものであり、それ自身で十分な洗浄力を示すものではなく、他の洗剤と併用するので簡便性や経済性を考慮すると好ましくない。また、この添加剤はフィルム形成性ポリマーの水溶液に界面活性剤等の成分を混合し、両者の混合物を乾燥してフィルム化するものであり、十分な量の洗剤成分を担持させることは困難である。しかも、該公報のシート状添加剤は、加熱成形でシート化している例であり、シートは上述した含浸させた製品と同様に洗剤成分の一部が表面に露出してしまうため洗剤成分が手や容器に付着してしまう。
【0011】衣料用洗剤においては基本必要成分が界面活性剤、金属イオン封鎖剤及びアルカリ剤を多量に配合する場合が多いので、溶解性を維持しつつ、これらの洗浄活性成分を多量に担持できる製品を得ることは困難であった。
【0012】
【課題を解決する為の手段】本発明者らは、簡便性に優れると共に洗剤の使用時、充填時・輸送時の内容物の飛散、漏れのない洗濯用製品を得るために鋭意検討を行った。その結果、実質的に流動性がなく、可塑性を有するドウ(dough)状組成物を含む薄層を維持する手段を設けることにより、従来のワンパック洗剤等に比べて非常に薄いシート状の製品形態とでき、しかも、濡れた手で触った時の耐久性が向上し、また使用量の調整を行う際に破断した際の内容物の流出がないので使いやすく、更に洗濯後に基体を除去する必要のない簡便性を有し、しかも洗濯用品全体が柔軟性を有しているので輸送・充填時の衝撃によって製品の破損及びそれに伴う内容物の流出のない洗濯用製品が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち本発明は、衣料用洗浄剤組成物のドウ(dough)状物からなる厚さが5mm未満の薄層と、該薄層の両側に配置された該薄層を維持する手段としての水溶性基体とからなり、且つ面積密度が0.005〜1.0g/cm2 であって、破断時の200cm2 当たりの薄層からの組成物の流失量が0.8g未満であるシート状洗濯用製品を提供するものである。
【0014】本発明のシート状洗濯用製品は、組成物を含む薄層と、この薄層の維持手段とを有するものであり、該薄層は連続又は不連続に形成されていてよく、また該維持手段は、薄層の外部にサンドイッチ状に配置されている。本願発明のシート状洗濯用製品の一例を図2に示す。図2中、1は組成物を含有する薄層、2、2’は維持手段であり、この例では、維持手段として薄層の両側に配置された水溶性基体が用いられている。
【0015】本発明において、薄層の維持手段は、薄層が別の物質と接触(例えば他の薄層や使用者との接触)した際に、薄層の粘着性を低減させることにより、接触によるダメージも低減して当該薄層の形状を維持し、内容物である洗浄剤組成物の遺漏や飛散を抑止して薄層の形状を維持するための手段であり、これ以外の機能を具備していてもよい。本発明においては、特にかかる維持手段として水溶性基体を用いるのが好適である。
【0016】〔水溶性基体〕先ず、本発明に用いられる水溶性基体について説明する。本発明に用いられる水溶性基体としては、水溶性フィルム、水溶性高分子繊維からなる不織布もしくは織布、又は、水溶性フィルムと水溶性高分子繊維からなる不織布もしくは織布の積層基体が好ましい。これらの水溶性基体うち水溶性不織布は濡れた又は著しく湿った手で触れた場合の手への粘着性が低減され感触上が良好である点及び貯蔵時にシート状洗濯用品同士が接着する問題が低減される点などより好ましい。一方、水溶性フィルムの場合には表面にエンボスを施すことにより類似の効果が得られるので水溶性フィルムへのエンボス処理は好ましい。これらの水溶性基体は、水溶性高分子により構成される。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルメチレンエーテル、キサンタンガム、ガーガム、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等が例示され、特にポリビニルアルコール或いはマレイン酸やイタコン酸で変性されたポリビニルアルコールが好ましい。
【0017】このような水溶性基体のうち、水溶性不織布としては、特開平8−127919号公報、特開平8−3848号公報、特開平5―321105号公報、特開平7−42019号公報、特開平3−86530号公報、特開平3−279410号公報、特開平3−199408号公報、特開平2−112406号公報、特開昭61−75862号公報に示された水溶性ポリビニルアルコール系繊維からなる不織布が挙げられる。また織布としては、前記した各種水溶性高分子繊維から得られたものが使用できる。なお、不織布や織布を構成する水溶性高分子繊維の直径は5〜200μmのものが好ましく、特に5〜50μmのものが好ましい。
【0018】また、水溶性フィルムの例としては米国特許第3186869号、米国特許第3198740号、米国特許第3280037号、米国特許第3322674号、実開昭48−33837号公報、同48−88343号公報、同50−140958号公報、同51−150号公報、同52−77961号公報、同55−151853号公報、同57−1851号公報、特開昭59−180085号公報、同61−57700号公報、同61−97348号公報、同61−98752号公報、同61−200146号公報、同61−200147号公報、同61−204254号公報、同61−228057号公報、同62−57492号公報、同62−156112号公報、同62−275145号公報、同63−8496号公報、同63−8497号公報、同63−12466号公報、同63−12467号公報、同64−29408号公報、同64−29438号公報、特開平2−60906号公報、同2−108534号公報、同2−163149号公報、同3−59059号公報、同4−53900号公報、同4−57989号公報、同4−63899号公報、同4−72180号公報、同4−147000、同4−164998号公報、同4−174792号公報、同4−202600号公報等に示されているフィルムが挙げられる。
【0019】また、本発明の水溶性基体としては、前記のような水溶性高分子繊維からなる不織布又は織布と水溶性フィルムとからなる積層基体を用いることができる。このような積層基体を得る方法としては、水溶性フィルムを不織布等の片面に重ね合わせ、ヒートシール等で接着する方法の他、不織布等の片面に水溶性高分子を塗布してフィルムを形成させる方法が挙げられる。かかる積層基体を用いる場合、水溶性フィルムが組成物層と接するように配置し、外側を不織布等とすることが好ましい。このような積層基体を用いた本発明のシート状洗濯用製品を図3に示す。図3は組成物層21と維持手段である積層基体からなるシート状洗濯用製品であり、組成物層21と接するように積層基体の水溶性フィルム23、23’が配置され、その外側に水溶性不織布22、22’が配置されている。
【0020】以上に例示したなかで好ましい水溶性基体は、使用量調整等の際の破き易さより、水溶性高分子繊維からなる不織布又は織布であり、特にポリビニルアルコールやマレイン酸やイタコン酸で変性されたポリビニルアルコールよりなる繊維を使用して得られた不織布又は織布が好ましい。更に、この水溶性高分子繊維はからなる不織布又は織布に、ポリビニルアルコールやマレイン酸やイタコン酸で変性されたポリビニルアルコールからなる水溶性フィルムを内側に積層した水溶性積層基体も好ましい。
【0021】本発明に用いられる水溶性基体は、50℃の水に溶解するものが好ましい。ここで、「溶解する」とは、水溶性基体0.5gが50℃の水1リットルに10分以内、好ましくは7分以内に溶解し、更に8.6号のふるい(局方:2000μm)に通して残留物がない状態をいう。
【0022】〔衣料用洗浄剤組成物〕次に本発明の衣料用洗浄剤組成物について説明する。本発明に使用できる衣料用洗浄剤組成物は、この分野で一般的に使用される陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、水溶性無機塩、ビルダー、キレート剤、再汚染防止剤、酵素、亜硫酸塩、ソイルリリース剤、移染防止剤、蛍光染料、香料、粘土、シリコーン等の抑泡剤、過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤、高分子量ポリエチレングリコール等の造粒助剤などにより構成されるものでよく、特に限定されるものではない。
【0023】但し、洗浄剤組成物中の水分量は15%未満であることが好ましい。更に好ましくは洗浄剤組成物の水分量が9%未満である。これら水分量は、調整時に使用する水分量や乾燥の度合いに注意することにより調整することができる。特に、ドウ状物にする際に、有機溶剤、非イオン界面活性剤、又は分子量2000以下のポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、アルキルベンゼンスルホン酸とアミン類の有機アルカリ剤や水溶性無機塩のアルカリ剤の混合物、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、ソイルリリース剤などの有機物を用いて実質的に流動性の無い可塑性を有するドウ状物にすることが好ましい。
【0024】本発明の洗浄剤組成物のより好ましい態様について詳細に説明する。本発明に用いられる洗浄剤組成物は、15重量%以下、更には9重量%以下の水分量とすることが、水溶性基体を使用する上で好ましい。15重量%を超える水分を含む場合は、洗浄剤組成物の薄層の両側に位置する水溶性基体が一部溶け粘着性を帯び、シート状洗剤同士がくっついてしまったり、また、冬場など低湿度化で保管された場合には、洗剤組成物が乾燥して非常にもろくなり、実用場面でシート状の可撓性を維持できなくなったりする。なお、ここでいう水分量は、105℃、1時間で乾燥したときの減重量の水分であり、例えばゼオライト、炭酸塩のような無機塩及びクエン酸などの有機塩に含まれる結晶水は除外される。
【0025】また、生地の可撓性を維持する上で、組成物中の無機化合物と有機化合物の混合比率を調整することも好ましい。有機化合物の無機化合物の好ましい混合比率は有機化合物/無機化合物=80/20〜10/90(重量比)であり、より好ましくは70/30〜15/85である。この比率が80/20を超えると塗工などによって加工し易くなるが、2枚以上の基体を用いてサンドイッチ状にシート化した場合には基体を通して経時的に且つ徐々に洗浄活性物質の遺漏が起こるので好ましくない。これは特に液状有機物質を使用した場合に顕著である。一方10/90未満の場合には、攪拌によって均一なドウを得にくくなる。更には基体を用いてサンドイッチにしてシート化した場合には洗浄活性物質層が非常に脆性が高くなり破断時の洗浄活性物質が粉末状に遺漏するので好ましくない。
【0026】以上から、本発明の洗浄剤組成物は、総有機物含有量(a)と、総無機物含有量(b)及び水分量(c)の比率が図1に示す三角座標の点A[(a)68/(b)17/(c)15]、点B[(a)80/(b)20/(c)0]、点C[(a)10/(b)90/(c)0]及び点D[(a)8.5/(b)76.5/(c)15]に囲まれた範囲にあることが好ましい。更に好ましくは点E[(a)63.7/(b)27.3/(c)9]、点F[(a)70/(b)30/(c)0]、点G[(a)15/(b)85/(c)0]及び点H[(a)13.7/(b)77.4/(c)9]に囲まれた範囲である。
【0027】更に、衣料用洗剤組成物中における構成比について記述する。このとき、全有機物質中における、常温において液状の有機物質と固体状の有機物質の混合比は10/1〜1/10が好ましく、より好ましくは10/2〜2/10である。液状有機物質の比率がこれより高い場合には、ドウからの液状物質のシミだしを防ぐために大量の無機系吸液性化合物を使用する必要が有り、経済的に好ましくない。一方、常温において固体状の有機物質、特に界面活性剤が上記範囲を超えて使用されると溶解性が減じられるので好ましくない。
【0028】また、本発明の洗浄剤組成物における任意成分として高密度の洗浄剤の溶解性を促進する目的で一般に使用されているハイドロトロープ剤である尿素や、クメンスルホン酸やトルエンスルホン酸、安息香酸塩などの低級アルキルベンゼンスルホン酸や低級アルキルベンゼンカルボン酸などを添加することは好ましい。
【0029】〔シート状洗濯用製品〕次に本発明のシート状洗濯用製品について説明する。本発明のシート状洗濯用製品の調製方法は特に限定されるものではないが、まずドウ(dough)状の洗剤組成物は万能攪拌機、ニーダーや手で混練する等の高粘度の攪拌に適した攪拌機・攪拌操作で調製することができる。混練する時間や温度を調整することで混練物の可塑性を調整することができる。破断時の内容物の遺漏を抑制する為には混練物の物性値としては粘度が100,000mPa・sを超えることが好ましい。ドウ状物の調製においては酵素や漂白成分等熱変性を起こしやすい成分を配合する場合は、攪拌時の温度は40℃以下の低温にすることが好ましい。
【0030】次いで、ドウ状の洗浄剤組成物の薄層の両側に該薄層を維持する手段としての水溶性基体を配置することにより、本発明のシート状洗濯用製品が得られるが、その方法としては、このドウ状の洗浄剤組成物を予めシート状に成形した後、その両面に少なくとも1層以上の水溶性シートを張り付ける方法、ドウ状の洗浄剤組成物をローラの回転等で移動する2枚以上の水溶性シートの間に供給しながら、同一又は異なるローラー等で圧縮成型する方法、ドウ状にした洗浄剤組成物を広げられた少なくとも1層以上の水溶性シートに塗布し、その塗布した組成物上に少なくとも1層以上の水溶性シートを張り付ける方法等が挙げられる。
【0031】本発明のシート状洗濯用製品は、使用しやすさの点より、その厚さが5mm未満であることが望ましい。5mm未満の厚さであるとシート状洗濯用製品を容易に破くことができる。また、好ましくは0.05mm以上の厚さとすると充分な量の洗浄剤組成物等を充填できる。より好ましい厚さは0.25〜4mmである。
【0032】また、本発明のシート状洗濯用製品の面積密度は0.005〜1.0g/cm2 である。この範囲の面積密度であれば、組成物の充填量が充分となり、また良好な溶解性が得られる。より好ましい面積密度は0.02g/cm2 〜0.5g/cm2 である。
【0033】また、既述のように本発明のシート状洗濯用製品は、その破断時において200cm2 当たりの薄層からの組成物の流失量が0.8g未満である。ここで、「内容物の流失量」は、温度20℃、湿度60%R.H.の部屋において、10cm×20cmの大きさに調製されたシート状洗濯用製品の中央部(長手方向の半分の位置)を市販のハサミで半裁後、裁断されていない辺の5mmの部分をクリップで固定し、双方の裁断部分を下にして30分間吊り下げながら、流失あるいは漏れた組成物をプラスチック製のトレイに受け、更にガラス棒で裁断し、シートを3回軽くたたいた後に、トレイに溜まった内容物(組成物)の重量をいう。この流失量が少ないことは、実使用において、シート状洗濯用製品を破った際の内容物の飛散や漏洩が少ないことを意味し、より望ましい。
【0034】本発明の洗濯用製品はシート状であり、且つ破断した場合や使用時の内容物の漏れ、流出が無いが故に、従来の粉末状もしくは錠剤状或いはワンパックタイプの洗濯用洗剤にはない形態を有する充填方法や使用方法が可能である。
【0035】例えば、シート状洗濯用製品にミシン目をつけて破断しやすくすることや、図柄、文字を印刷する等して外観を美麗にしたり、使用方法や使用上の注意事項を印刷して使用する毎に使用者に認知させやすくすることなどが挙げられる。また、組成物層の製造工程からは連続的な層とすることが容易であるが、不連続の組成物層を形成することも勿論できる。
【0036】また、本発明のシート状洗濯用製品を適当な容器に装填することにより、より簡便性の高い洗濯用製品とすることができる。例えば、本発明のシート状洗濯用製品の複数枚用意し、各シートの一部を折り畳み、それぞれのシートを千鳥掛け状に積層して所定容器に装填することにより、連続的にシートを取り出せる容器入り洗濯用製品を得ることができる。このような洗濯用製品を図4に示す。図4(a)のように半分に折り畳んだシート31を千鳥掛け状に重ね合わせ、これを所定の容器、例えば紙箱32に装填することにより、連続的にシートを取り出せる洗濯用製品が得られる。この場合、シートの面積は9cm2 以上が好ましく、より好ましくは40〜500cm2 である。
【0037】また、幅4cm以上、長さ30cm以上の本発明のシート状洗濯用製品を、ロール状にして所定容器に装填してなる洗濯用製品を得ることができる。これらの製品形態は、簡便性、使用量の調整のし易さから好ましい。特に、ロール状の場合には装填容器(紙製箱等)に金属製及び/又は樹脂製のシート切断具を装着することで更に容易に使いやすくすることや、一定間隔に短軸と平行にミシン目を入れ、ロールの内側より一定の大きさのシートを人為的又は機械的に取り出すことも可能である。もちろん、シートに目盛を付けて使用量等の表示をしてもよい。
【0038】更に、簡易な充填形態としては、1回使用当たり5g〜20gの洗浄活性物質を含むシート状洗濯用製品を装填容器に整列したり整列せずに単に充填した形態も挙げられる。この形態においては部分使用の為に破いた残片を用に元の容器に収納することが可能である。容器に充填するシート状洗濯用製品は1/5回〜1回使用量に相当する洗浄剤組成物を含有するものがよい。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明について実施例を挙げて詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0040】<試験方法>実施例において採用した試験方法を予め下記に説明する。
[破断させた場合における組成物の流失、漏れ量の測定方法]温度20℃、湿度60%R.H.の部屋において、10cm×20cmの大きさに調製されたシートの中央部(長手方向の半分の位置)を市販のハサミで半裁後、裁断されていない辺の5mmの部分をクリップで固定し、双方の裁断部分を下にして30分間吊り下げながら、流失あるいは漏れた組成物をプラスチック製のトレイに受け、更にガラス棒で裁断シートを3回軽くたたいた後に、トレイに溜まった組成物の重量を求めた。
【0041】実施例1<シート状衣料用洗剤>予め電子レンジにて水分を除去したドデシルジメチルアミンオキシド25g、三菱化学(株)製「ノニデットR−7」〔ポリオキシエチレン(7)アルキル(C12〜C15)エーテル〕の硫酸化物(Na塩)10g、日本触媒化学工業製「ソフタノールEP7045」〔C12〜C14第2級アルコールポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロプレン(4.5)グリコール〕5g、東洋曹達(株)製A4型ゼオライト40g、アクリル酸−マレイン酸共重合体K塩(分子量60000)4g、ソーダ灰8g、ポリプロピレングリコール(分子量1000)2.5g、コフランケミカル社製「チクソレックス25」3g、d−リモネン0.2g、プロテアーゼとして昭和電工(株)製「API−21」0.9g、セルラーゼとしてノボインダストリー社製「セルザイム1.0T」0.9g、アミラーゼとしてノボインダストリー社製「ターマミル6.0T」0.5g、リパーゼとしてノボインダストリー社製「リポラーゼ100T」0.2g、蛍光染料としてチバガイギー社製「チノパールCBS−X」0.2gを手で混合し、ドウを得た。
【0042】次に、互いに相反する方向に回転するよう設計された直径が50mmのステンレス製ローラー((有)三力製作所製)2本の間に、特開平8−3848号公報の実施例2に準じて調製された目付(坪量)20g/m2 の不織布と日本合成化学工業(株)製「ハイセロン」(水溶性フィルム)とを積層した10cm×20cmの積層基体2枚を、不織布が最外層となるようはさみ、手動でローラーを回転させる間に上記のドウを2枚の積層基体の間に7g挿入してシート状衣料用洗剤を得た。この操作を50回繰り返し、10cm×20cmの基体中に7gの洗剤を含有するシート状衣料用洗剤を50枚得た。このシート状衣料用洗剤の平均面積密度は0.047g/cm2 、平均の厚さは1.2mmであった。この後、全てを2つ折りにし、図4のように相互にかみ合うように重ね合わせた後に、縦12cm×横13cm×高さ9cmの紙製の箱に装填した。箱上部に6cm×4.5cmの長方形の穴を開けてシート状洗剤を1枚取り出しところ、次のシート状衣料用洗剤の一部が箱の外に引き出された。この操作は47回連続して行うことができた。これにより、穴の中に手や指を入れることなくシートを簡便に取り出せることを確認した。また、本シートは手でも破くことができ且つ破いた時に洗剤の漏れや流出もなく、ほとんど手に付着しなかった。更に、破断時の洗剤の漏れ、流出量を前記の方法で測定したところ、0.00gであった。
【0043】実施例2<シート状衣料用洗剤>次の組成を有するドウ状混合物を得た。即ち、日本触媒化学工業(株)製ソフタノール70〔ポリオキシエチレン(7)アルキル(C12〜C14)エーテル〕5重量%、三菱化学製ノニデットR−7〔ポリオキシエチレン(7)アルキル(C12〜C15)エーテル〕5重量%、ポリオキシエチレン(6)アルキル(C12/C14/C16=70/25/5)エーテル0.4重量%、ヤシ油脂肪酸ナトリウム3.6重量%、LAS−Naとして日石洗剤(株)製アルキルベンゼンスルホン酸(アルケンL)を48%NaOHを用いて中和後乾燥したもの10重量%、AS−Na〔三菱化学(株)製ドバノール25サルエート(C12〜C15硫酸塩)〕2重量%、東洋曹達(株)製A4型ゼオライト15.6重量%、多孔性シリカ化合物としてコフランケミカル社製「チキソレックス25」3.6重量%、結晶性珪酸塩(ヘキスト社製SKS−6)6重量%、珪酸ソーダ1号4.4重量%、東洋曹達(株)製ソーダ灰8重量%、アクリル酸−マレイン酸共重合体(Mw=60000)のNa塩0.8重量%、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw=20000)2.4重量%、ポリアセタールカルボキシレートNa塩(Mw=20000)1.2重量%、ポリエチレングリコール(Mw=6000)22.4重量%、炭酸カリウム4.6重量%、硫酸ナトリウム1.4重量%、酵素として昭和電工(株)製「API−21」とノボインダストリー社製「セルザイム1.0T」の1:1混合物1.6重量%、チバガイギー社製「チノパールCBS−X」0.4重量%及び残部の水である。
【0044】直径が50mmのステンレス製ローラー(実施例1に使用したものと同一)2本の間に、実施例1と同様に特開平8−127919号公報の実施例3に準じて調製された目付15g/m2 の不織布と日本合成化学工業(株)製「ハイセロン」(水溶性フィルム)とを積層した幅15cm、長さ25mの積層基体2組をはさみ、ローラーが回転(回転速度1m/分)する間に、上記で調製した混合物を、2枚の積層基体の間に定常的に供給して、10mのシート状衣料用洗剤を得た。このシートの平均面積密度は0.053g/cm2 、平均の厚さは1.3mmであった。この20mを幅11cmで直径2.5cmの厚紙製ロールに巻き取り、カッター付きの箱に装填した。このとき、シートは任意の長さで、箱の上部に装着した金属製切断機を用いて容易に裂くでき且つ破いた時に洗剤の漏れや流出も殆どなく、手にも付着しなかった。更に、破断時の洗剤の漏れ、流出量を前記の方法で測定したところ、0.11gであった。
【0045】実施例3<シート状衣料用洗剤>実施例1で調製したドウ状物30gに、東洋曹達(株)製A4型ゼオライト5gを追加してインダストリア・プロドッチ・スタムパーチ・トリノ(IndustriaProdotti Stampati TORINO )社製ヌードル・メイキング・マシーン(Noodle Making Machine )「チタニア(titania )」(登録商標)を用いて1mm未満の薄層を作製した。次に特開平8−3848号の実施例2に準じて調製された繊維(長さ3mm)0.8gを均一になるように表面及び裏面にまぶして17cm×8.5cmのシート状衣料用洗剤2枚を得た。この操作を20回繰り返し、40枚のシート状洗剤を得た。このシート状洗剤の一枚の厚さは1.0mm、面密度は0.13g/cm2 であった。その後全てのシート状洗剤を二つ折りにし、千鳥掛け状に畳んだ後に縦10cm×横10cm×高さ10cmの紙製の箱に装填した。箱の上部に6cm×4.5cmの長方形の穴を開けてシート状洗剤を一枚取り出したところ、次にシート状洗剤の一部が箱の外に引き出された。この操作は15回連続して行うことができた。本シート状洗剤は、手でも破くことができ、且つ破いた時に洗剤の漏れや流出もなく、殆ど洗剤が手に付着しなかった。更にハサミで半裁後の洗剤の漏れ、流出量を前記の方法で測定したところ、0.01gであった。
【0046】〔結果〕以上の結果から明らかなように、水溶性基体の間に洗浄剤組成物を挟入した実施例1〜3のシート状洗濯用製品は、使用時や破断時に内容物の飛散のほとんどなく、且つ使用量の任意な調整がし易い。更に、本洗濯用製品はシート状であると共に内容物の粉などの漏れが無い故に、交互にかみ合わせた状態で複数枚を折り畳んで容器に装填する、或いはシートをロール状にして容器に装填することができるので、使用時の簡便性が非常に良いことも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられる洗浄剤組成物中の総有機物含有量(a)と、総無機物含有量(b)及び水分量(c)の比率を示す三角座標。
【図2】 本発明のシート状洗濯用製品の一例を示す略示図。
【図3】 本発明のシート状洗濯用製品の他の例を示す略示図。
【図4】 本発明の洗濯用製品の一例を示す略示図。
【符号の説明】
1:組成物層
2、2’:水溶性不織布
21:組成物層
22、22’:水溶性不織布
23、23’:水溶性フィルム
31:シート状洗濯用製品
32:紙製容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 衣料用洗浄剤組成物のドウ(dough)状物からなる厚さが5mm未満の薄層と、該薄層の両側に配置された該薄層を維持する手段としての水溶性基体とからなり、且つ面積密度が0.005〜1.0g/cm2 であって、破断時の200cm2 当たりの薄層からの組成物の流失量が0.8g未満であるシート状洗濯用製品。
【請求項2】 前記薄層が、表面に粘着性を有する請求項1記載のシート状洗濯用製品。
【請求項3】 前記薄層を形成する洗浄剤組成物中の総有機物含有量(a)と、総無機物含有量(b)及び水分量(c)の比率が図1に示す三角座標の点A[(a)68/(b)17/(c)15]、点B[(a)80/(b)20/(c)0]、点C[(a)10/(b)90/(c)0]及び点D[(a)8.5/(b)76.5/(c)15]に囲まれた範囲にある請求項1又は2項記載のシート状洗濯用製品
【請求項4】 前記水溶性基体が、50℃の水1リットルに対して10分以内に溶解する水溶性フィルム、水溶性高分子繊維からなる50℃の水1リットルに対して10分以内に溶解する織布もしくは不織布、又は、水溶性フィルムと、水溶性高分子繊維からなる織布もしくは不織布とからなる50℃の水1リットルに対して10分以内に溶解する積層基体である請求項1〜3項の何れか1項記載のシート状洗濯用製品。
【請求項5】 前記水溶性フィルム又は/及び水溶性高分子繊維が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルメチレンエーテル、キサンタンガム、ガーガム、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースより選ばれる1種又は2種以上からなる請求項1〜4項の何れか1項記載のシート状洗濯用製品。
【請求項6】 面積が9cm2 以上である請求項1〜5の何れか1項記載のシート状洗濯用製品。
【請求項7】 前記薄層が、1/5回〜1回使用量の洗浄剤組成物を含有する請求項1〜6の何れか1項記載のシート状洗濯用製品。
【請求項8】 請求項1〜7の何れか1項記載のシート状洗濯用製品の複数枚を千鳥掛け状に積層して所定容器に装填してなる洗濯用製品。
【請求項9】 請求項1〜7の何れか1項記載のシート状洗濯用製品を所定容器に幅4cm以上、長さ30cm以上のロール状に装填してなる洗濯用製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平10−72599
【公開日】平成10年(1998)3月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−175739
【出願日】平成9年(1997)7月1日
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)