説明

シート状粘着組成物、及びそれを有する粘着シート

【課題】展開性に優れ、かつ製造が簡便であるシート状粘着組成物、及びそれを有する粘着シートを提供すること。
【解決手段】スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を含有するシート状粘着組成物1であって、海相2と島構造3からなる海島構造を有し、前記海島構造における島構造3の一部又は全部は、長径/短径の比が1.5以上であり、当該長径/短径の比が1.5以上の島構造のほとんど又は全部は一方向に配列し、当該配列方向に対して垂直方向であり、かつ前記シート状粘着組成物1の主面に対して平行方向である方向から観察した場合において、前記長径/短径の比が1.5以上の島構造3の合計面積が、全ての島構造3の合計面積に対して、50%以上であるシート状粘着組成物1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状粘着組成物、及びそれを有する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物品や部材を保護するために、物品や部材の表面に表面保護シートが仮着されて
いることが多い。例えば、合成樹脂板、光学部材、金属板、化粧合板、塗装鋼板、塗装樹
脂板又は各種銘板などの様々な被着体、中でも拡散シートやプリズムシートの表面に、加
工時及び運搬時にこれらの表面への汚れの付着や表面の傷つきを防止するために、表面保
護シートが多用されている。
【0003】
この種の表面保護シートは、通常、熱可塑性基材の片面に粘着剤層を積層した構造を有
する、粘着シートである。
このような表面保護シートは、被着体表面に上記粘着剤層の粘着力を利用して貼付され
、被着体表面を保護する。被着体が使用される際には、表面保護シートは被着体表面から
剥離されることになる。従って、表面保護シートでは、被着体の表面に容易に仮着され得
るのに適切な粘着性を有するとともに、使用後には、被着体表面から容易に剥離し得る程
度の良好な剥離性を有することが求められている。さらに、剥離後の被着体表面を糊残り
等により汚染しないことも強く求められている。
また、表面保護シート等の粘着シートは、長尺状のシートをロール状に巻回した巻回体
として工業的に製造されている。このような巻回体とした粘着シートでは、経時による接
着力の上昇が大きくなりやすいことが知られているが、使用時における巻回体の巻戻しに
必要な力(展開力)が小さいこと、すなわち巻回体の巻戻しが容易にできることが強く求
められている。
【0004】
ところで、拡散シート等の素材としては、アクリル系の樹脂及びポリカーボネート系の
樹脂等の極性ポリマーが多用されている。また、これら光学シートは、表面保護シートを
貼り付けた後に光学デバイスメーカーに出荷されるが、その運搬、保管中等において高温
に曝されることがある。
このようなことから、特に光学シートに適用するためには、表面保護シートを構成する
粘着剤層には、経時による接着力の上昇が特に大きなアクリル系粘着剤は用いられておら
ず、ゴム系粘着剤が主として用いられていた。これによって、経時による接着力の増大を
回避し、表面保護シートを光学シートのレンズ部表面から円滑に剥離することが試みられ
ている。
【0005】
ところが、ゴム系粘着剤は一般に溶液塗布タイプであるため、溶剤乾燥時の環境汚染及
びエネルギー浪費等の問題があり、汎用されるオレフィン基材層の背面(粘着剤層が積層
される側とは反対側の面)に対する離型処理も必要とする。また、従来のホットメルト型
の粘着剤は、前者の問題は解消又は低減できるが、背面の離型処理は回避することができ
ない。
【0006】
そこで、巻戻し性を改善するために、ポリオレフィン系樹脂を含有する表層と、熱可塑
性エラストマーを含有する粘着剤層とを、共押出法にて積層成膜した後、表層の背面に離
型層を塗工法により形成して得られる表面保護シートが提案されている(例えば、特許文
献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−41216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の方法のように、基材層の製造において、離型層の積層のた
めに離型処理を行うと、製造工程が多くなってしまう。したがって、離型層無しでも優れ
た展開性が得られることが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、展開性に優れ、かつ製造が簡便であるシート状粘着組成物、及びそれ
を有する粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体
を含有し、海島構造を有するシート状粘着組成物において、その島構造の一部又は全部を
長球形ないし棒状にすることによって、前記の課題を解決しうることを見出し、更なる研
究の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]等を提供するものである。
[1]
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を含有するシート状粘着組成物であ
って、
海島構造を有し、
前記海島構造における島構造の一部又は全部は、長径/短径の比が1.5以上であり、
当該長径/短径の比が1.5以上の島構造のほとんど又は全部は一方向に配列し、
当該配列方向に対して垂直方向であり、かつ前記シート状粘着組成物の主面に対して平行
方向である方向から観察した場合において、前記長径/短径の比が1.5以上の島構造の
合計面積が、全ての島構造の合計面積に対して、50%以上であるシート状粘着組成物。
[2]
前記シート状粘着組成物全体に対するスチレン系モノマー単位の含有率が30〜60重量
%であることを特徴とする前記[1]に記載のシート状粘着組成物。
[3]
更にスチレン末端ブロック補強剤を含有する前記[1]又は前記[2]に記載のシート状
粘着組成物。
[4]
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を含有する組成物を溶融すること、
溶融された組成物をシート状に押出すること、及び
得られたシート状の組成物を冷却して、成形すること
を含む製造方法によって製造される前記[1]〜前記[3]のいずれか1項に記載のシー
ト状粘着組成物。
[5]
前記冷却は、冷却温度40℃以上、及び冷却速度40℃/分以下の条件で実施される、前
記[4]に記載のシート状粘着組成物。
[6]
基材層、及び
当該基材層の片側に積層された前記[1]〜前記[5]のいずれか1項に記載のシート状
粘着組成物
を有する粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート状粘着組成物によれば、優れた展開性を有し、かつ製造が簡便である粘
着シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のシート状粘着組成物の一態様を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明のシート状粘着組成物の電子顕微鏡写真である(実施例1)。
【図3】図3は、シート状粘着組成物の電子顕微鏡写真である(比較例1)。
【図4】図4は、シート状粘着組成物の電子顕微鏡写真である(比較例2)。
【0013】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0014】
本発明のシート状粘着組成物は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体
(以下、SIBSと称する場合がある)を含有する。
本発明のシート状粘着組成物は、海島構造を有する。
従来のSIBSを含有するシート状粘着組成物の海島構造における島構造は球形である
が、本発明のシート状粘着組成物の海島構造における島構造の一部又は全部は、長球形な
いし棒状である。ここで、「長球形ないし棒状」とは、長径/短径の比が1.5以上であ
るものを意味する。
長球形ないし棒状の島構造のほとんど又は全部は一方向に配列している。
ここで、「ほとんど又は全部が一方向に配列する」とは、数において長球形ないし棒状
の島構造の60%以上が、一方向に配列していることを意味する。
本発明のシート状粘着組成物は、当該配列方向に対して垂直方向であり、かつ前記シー
ト状粘着組成物の主面に対して平行方向である方向(以下、X方向と称する場合がある。
当該方向を図1に示す。)から観察した場合において、前記長径/短径の比が1.5以上
の島構造の合計面積が、全ての島構造の合計面積に対して、50%以上であることを特徴
とする。当該面積比は、好ましくは、60%以上である。この比を50%以上にすること
により、優れた展開性が得られる。
図1に、本発明のシート状粘着組成物の一態様を模式的に示す。シート状粘着組成物1
において、島構造(島相)3は、海相2中に存在し、長球形ないし棒状の島構造のほとん
ど又は全部は一方向(Y方向)に配列している。
【0015】
当該島構造の観察は、具体的には、以下の方法によって行われる。
シート状粘着組成物の一部を、前記X方向に垂直な方向に、厚さ約70nmにスライス
し、電子顕微鏡(倍率30000)により観察する。観察は、当該面積比を算出するのに
十分な範囲で行えばよいが、通常、面積約520000nm(縦約720nm×横約72
0nm)について実施される。当該観察によって、島構造の長径、短径、及び面積を測定し
、前記長径/短径の比が1.5以上の島構造の合計面積の、全ての島構造の合計面積に対
する比率を算出する。
【0016】
本発明のシート状粘着組成物全体に対するスチレン系モノマー単位の含有率(本明細書
中、St含有率と称する場合がある)は、30重量%以上60重量%未満であることが好
ましく、30重量%以上50重量%未満であることがより好ましい。
当該含有率が30重量%以上であることにより、優れた展開性が得られる。一方、当該
含有率が50重量%未満であることにより、被着体への十分な接着性が得られる。
当該含有率は、前記した、前記長径/短径の比が1.5以上である島構造の合計面積の
割合に関係する。当該含有率が高い方が、前記割合が高くなる傾向がある。
本明細書中、スチレン系モノマー単位としては、例えば、スチレン及びα−メチルスチ
レン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、tert−ブチル
スチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
スチレン系モノマー単位は、主として、SIBS、及び所望により添加されるスチレン
末端ブロック補強剤に含有される。
したがって、本発明のシート状粘着組成物全体のSt含有率は、本発明において用いら
れるSIBSおよびスチレン末端ブロック補強剤の、本発明のシート状粘着組成物におけ
る各含有率、及びそれぞれのスチレン系モノマーの含有量によって、主に調整することが
できる。
【0017】
SIBSのスチレン含有量は、SIBS100重量%に対して、好ましくは、15重量
%以上35重量%未満である。
【0018】
本発明のシート状粘着組成物に所望により添加されるスチレン系ブロック補強剤として
は、例えば、モノマー単位として、スチレン及びα−メチルスチレン、p−メチルスチレ
ン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、p−エチルス
チレン、およびジビニルベンゼン等のスチレン系化合物を有するものが挙げられる。これ
らは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなスチレン
系ブロック補強剤は、これらモノマーを重合することによって得ることができる。スチレ
ン系ブロック補強剤が2種以上のモノマーからなる共重合体である場合、当該共重合体は
、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。当該スチレン
系ブロック補強剤としては、なかでも、100℃以上の軟化点を有するものが好ましく、
150℃以上の軟化点を有するものがより好ましい。具体的には、イーストマンケミカル
社製、商品名「ENDEX155」(軟化点155℃)、「ENDEX160」(軟化点
160℃)等が好適に使用される。
本発明のシート状粘着組成物におけるスチレン系ブロック補強剤の含有率は、前記「S
t含有率」が所望する値、具体的には例えば、30重量%以上60重量%未満の範囲内に
なるように設定される。当該含有率は、具体的には例えば、SIBS100重量部に対し
て、好ましくは、10重量部以上60重量部未満、より好ましくは15重量部以上55重
量部未満である。
【0019】
本発明のシート状粘着組成物は、更に、必要に応じて粘着付与剤を含有してもよい。
本発明での粘着付与剤とは、SIBS中のイソブチレンであるゴム層に対して相溶し、粘着力
をコントロールできるものを意味する。
その例としては、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系
や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルぺン系樹脂、テル
ぺンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、
キシレン系樹脂、およびこれらの水添物などが挙げられる。本発明のシート状粘着組成物
で用いられる粘着付与剤としては、軟化点が90〜140℃であるものが好ましい。これ
らの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、
剥離性及び耐候性などを高めるために、水添系の粘着付与剤を用いることがより好ましい
。また、オレフィン樹脂とのブレンド物として市販されている粘着付与剤を用いてもよい

【0020】
本発明のシート状粘着組成物における前記粘着付与剤の含有量、本発明の効果を阻害し
ない限り、特に限定されないが、具体的には、例えば、0〜30重量部が好ましく、5〜
20重量部がより好ましい。当該含有量が30重量部を超えると、表面保護シートを被着
体から剥離する際に、被着体に糊のこりを起こすことがある。
【0021】
粘着組成物には、粘着力の制御等を目的に、前記粘着付与剤に加えて、必要に応じて、
例えば、オレフィン系樹脂、シリコーン系ポリマー、液状アクリル系共重合体、リン酸エ
ステル系化合物、軟化剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、接着昂
進防止剤、スチレン末端ブロック補強剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0022】
前記軟化剤は、通常、接着力の向上に有効である。当該軟化剤としては、例えば、低分
子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン
、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、
ひまし油、トール油、天然油、液体ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン、又はこれらの水
添物などの一般的に粘着剤に使用されるものを特に制限なく、使用することができる。こ
れらの軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、こ
こで例示した軟化剤の中には、前記粘着付与剤としても機能しうるものが存在する。
【0023】
前記酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール系(モノフェノール系
、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸
化防止剤等の通常使用されるものが挙げられる。
前記光安定化剤としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベ
ンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート
系紫外線吸収剤等が挙げられる。
前記接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラ
フト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」
等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300
」等)などが挙げられる。
これらの添加剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、本発明のシート状粘着組成物は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、スチレ
ン−イソブチレンブロック共重合体(SIB)を含有してもよい。SIBを含有すること
により、シート状粘着組成物が凹凸面のある被着体に対して、浮きが無く表面を保護する
ことができる。その量は、好ましくは、SIBS100重量部に対して、0重量部以上5
0重量部未満、より好ましくは、10重量部以上40重量部未満である。
【0025】
本発明のシート状粘着組成物は、好ましくは、基材層の片側に積層されて、用いられる
。このような
基材層、及び
当該基材層の片側に積層された本発明のシート状粘着組成物
を有する粘着シートもまた、本発明の一態様である。
【0026】
本発明に使用される基材層としては、特に限定されず、例えば、
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチ
レン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィ
ン系樹脂;
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブ
チレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;
ポリ塩化ビニル(PVC);
ポリフェニレンスルフィド(PPS);
ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);
ポリイミド;
ポリエーテルイミド;
ポリスチレン;および
アクリル樹脂などから選択される樹脂から形成される基材層を用いることができる。
これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
基材層の厚さは、粘着シートの用途等によって適宜調整することができ、一般に10〜
100μm程度に設定される。
当該基材層は、所望により、ポリオレフィンフィルム等に用いることができる添加剤を
含有してもよい。このような添加剤の含有量の上限は、好ましくは、基材層全体に対して
20重量%である。
このような添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤
等の光安定剤、帯電防止剤等の公知のものが挙げられる。
【0028】
本発明のシート状粘着組成物は、好ましくは、例えば押出法、すなわち、
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を含有する組成物を溶融すること、
溶融された組成物をシート状に押出すること、及び
得られたシート状の組成物を冷却して、成形すること
を含む製造方法によって製造することができる。
【0029】
押出は、インフレーション法、Tダイ法等の公知の方法によって行えばよい。
当該押出によって、前記長径/短径の比が1.5以上の島構造のほとんど又は全部は、
組成物の流れ方向(MD:Machine Direction)(図1のY方向)に配
列する。
冷却は、前記長径/短径の比が1.5以上の島構造の合計面積を、全ての島構造の合計
面積に対して、50%以上とする観点から、好ましくは、冷却温度40℃以上、及び冷却
速度40℃/分以下、より好ましくは、冷却温度80℃以上、及び冷却速度2℃/分以下
の条件で実施される。前記長径/短径の比が1.5以上の島構造は、当該冷却工程におい
て、形成されると考えられる。
本発明のシート状粘着組成物は、前記のような基材層と一緒に、インフレーション法、
Tダイ法等の公知の方法で共押出することにより積層一体化して、本発明の粘着シートと
して、製造することが好ましい。
【0030】
本発明の粘着シートは、慣用の方法により、紙芯に巻き取って、巻回体の形態にするこ
とができる。
なお、巻回体として容易に巻き戻すためには、展開力が1.5N/50mm以下である
ことが好ましく、さらに、1.0N/50mm以下であることが好ましい。このような展
開力であることにより、例えば、巻回体の幅が1000mmを超える場合においても、引
出作業性を確保することができる。
【0031】
本発明の粘着シートは、表面保護シート、特に拡散シートまたはプリズムシートの表面
保護シートとして、好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明を、実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(カネカ社製 SIBSTAR0
72T)100重量部に、スチレン末端ブロック補強剤(St補強剤)としてENDEX
155(イーストマンケミカル社製)を55重量部、粘着付与剤として軟化点100℃の
脂環族飽和炭化水素樹脂を5重量部、酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバス
ペシャルティケミカルズ社製)1重量部、紫外線吸収剤として、チヌビン326(チバス
ペシャルティケミカルズ社製)0.5重量部を添加し、混練することにより粘着剤組成物
を調製した。
基材層を形成するポリプロピレン(プライムポリマー社製 J715)と、前記粘着剤
組成物とを、それぞれ溶融し、Tダイ法により200℃で共押出し、冷却温度40℃、冷
却速度1℃/分の条件で冷却して、厚さ35μmのポリプロピレン基材と厚さ10μmの
粘着剤層とが積層一体化された粘着シートを作製し、内径3インチの紙芯に巻き取った巻
回体を得た。シート状粘着組成物全体に対するスチレン系モノマー単位の含有率(St含
有率)を表1に示す。
【0034】
(実施例2〜4、比較例1〜3)
それぞれ表1に示す組成比、成形条件である以外は実施例1と同様の方法で、粘着シー
トの巻回体をそれぞれ得た。
【0035】
(海島構造の長径/短径比の測定)
粘着シートを四酸化ルテニウムにより染色した後、シートのMDと平行となるようにミ
クロトームを用いて、約70nmの厚さにシートスライスし、スライスにより現れた断面
を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EX II)を用い、面積520
000nm(縦720nm×横720nm)の範囲を、約30000倍の倍率で写真撮
影した。
【0036】
図2、図3、及び図4は、それぞれ、実施例1、比較例2、及び比較例3で作製された
粘着シートの上記のようにして撮影された電子顕微鏡写真を示す(各図中の棒線は、10
0nmの長さを示す。)。これらから明らかなように、島構造(島相)と、海相に分散し
た海島構造を有することがわかる。写真の島構造から、長径、短径、及び面積を測定し、
長径/短径の比を求め、全ての島構造の合計面積に対する、長径/短径の比が1.5以上
の島構造の面積の割合を求めた。また、前記長径/短径の比が1.5以上である島構造の
合計面積の、観察面積に対する割合も求めた。
【0037】
(評価)
前記のようにして得られた各粘着シートについて、以下の項目を評価した。
それらの結果を表2に示す。
(1)展開力
実施例及び比較例の各表面保護シートの50mm幅の巻回体をJIS Z0237に準
拠し、巻戻し速度を20m/分の速度で測定した。
結果を表2に示す。展開力が、1.0N/50mm以下の場合を優と評価し、1.0を
超え1.5N/50mm以下の場合を良と評価し、1.5N/50mmを超える場合を不
良と評価した。
(2)粘着力
実施例及び比較例の各表面保護シートを、平坦なポリカーボネート板に貼り付けた。貼
り付け条件は、室温23℃及び相対湿度50%の環境下、それぞれ2kgの圧着ゴムロー
ラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付け、その状態で30分間放置した後、JI
S Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度
で測定した。このようにして測定された剥離強度を接着力とした。
結果を表2に示す。粘着力が、5N/25mm以上6.5N/25mm以下の場合を良
と評価し、5N/25mm未満の場合、または6.5Nを越える場合を不良と評価した。
【0038】
【表1】



【0039】
【表2】

【0040】
以上から明らかなように、長球形ないし棒状構造/島相の面積比が50%以上であるシ
ート状粘着組成物を有する粘着シートは、容易な製造方法で得られ、かつ展開力が小さい

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のシート状粘着組成物は、表面保護シート等である粘着シートの粘着層として使
用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 シート状粘着組成物
2 海相
3 島構造(島相)
X 観察方向
Y 流れ方向(島構造の配列方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を含有するシート状粘着組成物であ
って、
海島構造を有し、
前記海島構造における島構造の一部又は全部は、長径/短径の比が1.5以上であり、
当該長径/短径の比が1.5以上の島構造のほとんど又は全部は一方向に配列し、
当該配列方向に対して垂直方向であり、かつ前記シート状粘着組成物の主面に対して平行
方向である方向から観察した場合において、前記長径/短径の比が1.5以上の島構造の
合計面積が、全ての島構造の合計面積に対して、50%以上であるシート状粘着組成物。
【請求項2】
前記シート状粘着組成物全体に対するスチレン系モノマー単位の含有率が30〜60重量
%であることを特徴とする請求項1に記載のシート状粘着組成物。
【請求項3】
更にスチレン末端ブロック補強剤を含有する請求項1又は2に記載のシート状粘着組成物

【請求項4】
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を含有する組成物を溶融すること、
溶融された組成物をシート状に押出すること、及び
得られたシート状の組成物を冷却して、成形すること
を含む製造方法によって製造される請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状粘着組
成物。
【請求項5】
前記冷却は、冷却温度40℃以上、及び冷却速度40℃/分以下の条件で実施される、請
求項4に記載のシート状粘着組成物。
【請求項6】
基材層、及び
当該基材層の片側に積層された請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状粘着組成物
を有する粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−16859(P2011−16859A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160539(P2009−160539)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】