説明

シールドトランス

【課題】 従来のシールドトランスはシールド板から鉄心への接地抵抗が大きく、また、シールド板と各コイル部との十分な沿面、空間距離確保が困難であり、部品コストや加工コストが高かった。
【解決手段】 分離巻きにした一次コイル5と二次コイル4の間に、ノイズを遮へいする目的で設けられたシールド板11を、接続部を設けることなくシールド板11の一部となす部分にて直接鉄心2に接地することにより鉄心2への接地インピーダンスを極小とできる構造をもって、一次コイル5と二次コイル4間に伝達するノイズを遮断するように構成した。これにより十分なシールド性能を確保し、各国の安全規格の要求にも対応でき、しかもシンプルな構成であるために、低コストで提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスの一次側から二次側、また、二次側から一次側に伝播するノイズを遮へいする目的で設けられるシールド板を内蔵したシールドトランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシールドトランスには代表的なものとして、一次コイルの上に二次コイルを巻きそのコイル間にシールド板を配した構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図1及び図2にて説明する。図1において、一次コイル5の巻線後に施された絶縁材料6の上に、銅板などの金属材料をシールド板7として図2に示すように巻きつけ、更に図1の絶縁材料6で絶縁を施し、その上に二次コイル4を巻線することで一次側から二次側、また、二次側から一次側に伝播するノイズを遮へいすることを目的としているシールドトランスとしては一般的な構造のものであり、特に小型トランスの分野では一次コイル5とシールド板7の間、一次コイル5と二次コイル4の間の各国安全規格が要求する空間、沿面距離の確実に確保することが困難な構造であり、また図2に示すようにシールド板7から錫引き銅線9などを介して鉄心に接地されるため、接地抵抗も大きいものであった。
【0004】
また、一次コイルと二次コイルが分離巻きされたもので、一次コイル及びニ次コイル各々に金属板や導電性皮膜を塗布した板で各コイルをカバーし、シールド板として構成したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
前記の構造のものについては、一次コイルと二次コイルの各コイルに対応させて、各々の形状に適合した絶縁性カバーに導電性皮膜を設けたものをシールドとし、これを鉄心に勘合させることによりシールド効果を期待しているものであるが、コイル部を完全にカバーするため、コイル部の温度上昇を増加させたり、シールド板から鉄心への接地抵抗が大きく、また不安定であるという技術的課題をもっており、また部材コストや加工コストが非常に高く、特に小型トランスの分野では産業機器や民生機器のトランスには供与できないものであった。
【特許文献1】 特許公開2003−100528号
【特許文献2】 特許公開2001−313218号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記で説明したような従来例の欠点は、一次コイルとシールド板間、一次コイルと二次コイル間の各国安全規格が要求する空間、沿面距離の確実に確保することが困難な構造であり、また、シールド板から鉄心への接地抵抗が高く、部品コストや加工コストが非常に高く、特に小型トランスの分野では産業機器や民生機器のトランスには供与できないものであった。
【0007】
本発明は各国安全規格が要求するトランス各部間の空間、沿面距離を容易に確保でき、シールド板から鉄心への接地抵抗を極小にし、しかもシンプルで低コストでシールド効果を十分に発揮できる構造を有したシールドトランスに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は分離巻きにした一次コイルと二次コイルの間に、ノイズを遮へいする目的で設けられたシールド板を、接続部を設けることなくシールド板の一部となす部分にて直接鉄心に接地することにより鉄心への接地インピーダンスを極小とできる構造をもって、一次コイルと二次コイル間に伝達するノイズを遮断する。
【0009】
また、第二の課題解決手段は、シールド板の絶縁を確保するために設けられたコイルボビンの一次コイルと二次コイルの間の絶縁を目的とした隔壁を二重にして、その二枚の隔壁の間にシールド板を挿入することにより、シールド板と一次コイル及び二次コイルとの間の絶縁を確実に確保するようにしたコイルボビンを設けた構造のものである。
【0010】
さらに、第三の課題解決手段は、シールド板の鉄心への接地する部分および、接地する部分を保持する目的と、シールド効果を増加させるために設けたコイル部の一部を覆う目的を兼ね備えた部分を二次コイル側に配置することにより、各国の安全規格に基づく一次側の沿面、空間距離を確保しやすいように配置する構成としたものである。
【0011】
上記第一の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわちシールド板の機能とシールド板を鉄心に接地する機能を、シールド板を一体化することにより接地抵抗を小さくすることができる。
【0012】
上記第二の課題解決手段による作用は、一次コイルと二次コイルの間の隔壁を二重にしてその間にシールド板を挿入することで、シールド板の絶縁を容易に確実にとることができる。
【0013】
上記第三の課題解決手段による作用は、シールド板を二次コイル側に配することで一次コイルとシールド板との間の絶縁距離を十分確保できることから、各国の安全規格に要求される沿面、空間距離の確保が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上説明したように構成されているので、次のような効果を奏する。シールド板として最低必要な部分のみを構成し、しかもシールド板として最も重要である鉄心への小さな接地抵抗を実現しているため、シールドトランスとしては十分な性能を確保し、各国の安全規格の要求にも対応できるトランスでありながら、非常にシンプルな構成であるために、産業機器や民生機器に十分供給できるコストを実現できるシールドトランスを供与できる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を図3〜図6に基づいて説明する。
【0016】
図3において、分離巻きにした一次コイル5と二次コイル4の間に、ノイズを遮へいする目的で設けられたシールド板11を、接続部を設けることなくシールド板11の一部となす部分にて直接鉄心2に接地することにより鉄心2への接地インピーダンスを極小とできる構造をもって、一次コイル5と二次コイル4間に伝達するノイズを遮断する。
【0017】
この本発明のシールド板の一実施例である図4に示すように、シールド板の実施例A12のシールド板の接地する部分13を接続部のない一体の金属板で構成し、そのシールド板の接地する部分13を図3で示す鉄心2とトランスの締金1の間に装着する。
【0018】
本構造の他の実施例として図5、図6のような構造としても実現することが可能である。
【0019】
また、図3のシールド板11の絶縁を確保するために設けられたコイルボビン3の一次コイル5と二次コイル4の間の絶縁を目的とした隔壁を二重にして、その二枚の隔壁の間にシールド板11を挿入することにより、シールド板11と一次コイル5及び二次コイル4との間の絶縁を確実に確保できるようにしたコイルボビン3を設ける。
【0020】
また、図6に示すように一次コイル5と二次コイル4を分離したコイルボビン3として実現することもできる。
【0021】
各国の規格では、一般的に一次〜鉄心間および一次〜二次間の沿面、空間距離を厳しく要求されることに対応するため、図3のシールド板11の鉄心2への接地する部分及び、接地する部分を保持する目的とシールド効果を増加させるために設けたコイル部の一部を覆う目的を兼ね備えた部分を二次コイル4側に配置することにより、一次側に関する沿面、空間距離を確保しやすいように配置する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のシールドトランスの構造図である。
【図2】従来のシールドトランスの一次巻線後のシールドを組込んでいるところの図である。
【図3】本発明のトランスの構造図である。
【図4】本発明のシールド板の実施例Aである。
【図5】本発明のシールド板の実施例Bである。
【図6】本発明のシールド板の実施例Cである。
【符号の説明】
【0023】
1 トランスの締金
2 鉄心
3 コイルボビン
4 二次コイル
5 一次コイル
6 従来のトランスの絶縁材料
7 従来のトランスのシールド板
8 従来のトランスの絶縁チューブ
9 錫引き銅線
10 従来のトランスのシールド板の半田接続部
11 シールド板
12 シールド板の実施例A
13 シールド板の接地する部分
14 シールド板の実施例B
15 シールド板の実施例C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離巻きにした一次コイルと二次コイルの間に、ノイズを遮へいする目的で設けられたシールド板を、接続部を設けることなくシールド板の一部となす部分にて直接鉄心に接地することにより鉄心への接地インピーダンスを極小とできる構造をもって、一次コイルと二次コイル間に伝達するノイズを遮断するシールドトランス。
【請求項2】
シールド板の絶縁を確保するために設けたコイルボビンの一次コイルと二次コイルの間の絶縁を目的とした隔壁を二枚にし、その二枚の隔壁の間にシールド板を挿入することによりシールド板と一次コイル及び二次コイルとの間の絶縁を確実に確保できるようにしたコイルボビンをもつ請求項1記載のシールドトランス。
【請求項3】
鉄心へ接地する目的の部分を含む、一体となったシールド板の全ての部分を二次コイル側に配置することにより、各国の安全規格に基づく一次側の沿面、空間距離を確保しやすいように構成された請求項1記載のシールドトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−295094(P2006−295094A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143212(P2005−143212)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000106173)サンエー電機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】