説明

シールド掘進機の排土コンベヤ

【課題】水分の多い地盤を掘削するシールド掘進機のカッターチャンバ内に溜まった土砂を後方に搬送して排出口から排出するコンベヤ装置について、その耐久性を損なうことなく排出口閉鎖時の内外シール性を確保できるようにする。
【解決手段】スクリューコンベヤ25を内装した円筒状のケーシング20A後端側下部外周面を所定形状に切り欠いてなる排出口26Aが、ケーシング20A外周面上に被装され往復駆動手段28で軸線方向に沿って摺動可能とされた円筒状の閉鎖部材261Aにより開閉されるものとされ、排出口26A閉鎖時にシール部材29a,29bがケーシング20A外周面の少なくとも排出口26A周囲と閉鎖部材261A内周面との間に介在して、ケーシング20A内外のシール性を確保するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の掘削部で掘削した土砂を後続の搬送手段まで送る排土コンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シールド掘進機において掘削土砂を、カッターチャンバーとカッターチャンバーに接続した後続のシールド内に配置した搬送機との間に配置したスクリューコンベヤからなる排土コンベヤ内に充満させて土圧と平衡に保ちながら掘進する土圧式や掘削土砂に添加剤を加えて泥土圧とする泥土圧式、更には切羽に作用する地下水圧に応じた圧力を加える圧気工法など地盤を掘削する場合には、所定の圧力を加えた掘削部の密閉性を確保しながら掘削した土砂を後方に排出するシールド掘進機が使用されることが多い。この場合、図4のシールド掘進機1Bの縦断面図に示すように、カッターヘッド11後方に設けられたカッターチャンバ12内に先端側を密接状態で挿入し後端側を斜め上方向にした排土コンベヤ2Bが配設され、内部のスクリュウコンベヤ(リボンスクリュウ)25を回転駆動手段27で駆動させて、カッターチャンバ12内に溜まった土砂を土圧と平衡を保ちながら後続の搬送手段3に送るようになっている。
【0003】
そして、この排土コンベヤ2Bは、図5の一部を切り欠いた拡大図に示すように、排出口26Bに油圧シリンダ等の往復駆動手段28で進退するスライド式の閉鎖板261Bを有した開閉機構が設けられ、ケーシング20B外周面の排出口26B周囲部分と閉鎖板261Bとの間にシール部材29cを備えて、排出口26B閉鎖時に円筒状のコンベア装置2B内およびカッターチャンバ12内の気・液密性を維持するようになっている。
【0004】
しかし、このように平板状でスライド式の閉鎖板261Bを有する開閉機構では、閉鎖板261B側端部が摺動する案内溝262内に土砂が付着することで、それが閉鎖時の閉鎖板261Bの動きを阻んで排出口26Bを完全に閉鎖できなくなる場合があり、そのシール性の確保が困難となりやすい。
【0005】
そこで、特開平9−303089号公報に記載されているように、案内溝262B終端部を切り落として土砂落とし開口を形成するとともに、閉鎖板261Bの先端部を、案内溝262Bに付着した土砂を掻き取りやすい形状として、排出口26Bを閉鎖するときに閉鎖板261B先端側で土砂を掻き出しながら前進して終端部側の土砂落とし開口で落とすようにして、閉鎖板261Bを完全に閉鎖できるものとした排土コンベヤが知られている。
【0006】
しかしながら、この排土コンベヤでは、排出口の周りを囲むように比較的狭い範囲でシール部材が平面的に設けられており、閉鎖板の閉鎖時にシール部分に内圧が集中しやすくなることから内部の液体が漏れやい構造となっている。そこで、気・液密性を高めるためにシール部材の閉鎖板への押圧力を強めると、その摺動におけるスムースさが確保しにくくなることに加え、摺動部が摩耗しやすくなってその耐久性に問題が生じてしまう。
【特許文献1】特開平9−303089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、比較的水分の多い地盤を掘削するシールド掘進機のカッターチャンバ内の土砂を後方に搬送する排土コンベヤについて、その耐久性を損なうことなく排出口閉鎖時に内外のシール性を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、カッターヘッド及びカッターチャンバを有する掘削部により地盤を掘削するシールド掘進機の前記カッターチャンバ内に溜まった土砂を後続のシールド内に配置した搬送手段に送出するための排土用コンベヤであって、先端側を前記カッターチャンバ内に密接状態で挿入させるとともに後端側下部外周面に所定形状の排出口が形成されたスクリューを内装する円筒状のケーシングの外周面に、所定の駆動手段により前記ケーシングの軸線方向に沿って往復動させて前記排出口を開閉する円筒状の閉鎖部材が嵌装されており、且つ前記ケーシング外周面の少なくとも前記排出口周囲と前記閉鎖部材内周面との間に所定のシール手段が介在して前記閉鎖部材により前記開閉口を閉じたときに排土用コンベヤ内の土砂がシールド内に流出するのを防止することとした。
【0009】
このように、閉鎖部材を円筒状にして円筒状のケーシングに摺動可能に被装したことで、閉鎖部材の案内溝を不要としてその耐久性を確保しやすいものとしながら、排出口に対するシール部材の押圧力を確保しやすいものとして優れたシール性を発揮できるものとなる。
【0010】
また、そのシール手段は閉鎖部材の内周面両端側に各々周方向に沿うように配置された一組のリング状の弾性部材からなるものとすれば、閉鎖部材摺動時に、シール手段の摩耗を少ないものとしながら排出口付近に付着した土砂を自動的に掻き落とすものとなり、しかも、閉鎖持の密着力に優れてシール性の確保が一層容易なものとなる。
【発明の効果】
【0011】
排出口を閉鎖するための閉鎖部材を円筒状にした本発明によると、その耐久性を損ないにくいものとしながら、排出口閉鎖時のシール性を確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の排土コンベヤ2Aを配設したシールド掘進機1Aを示している。シールド掘進機1Aは先端側に地盤を掘削するカッターヘッド11が設けられ、その後方に掘削された土砂を溜めるスペースとなるカッターチャンバ12が設けられている。このカッターヘッド11およびカッターチャンバ12は、それより後方のスペースとは隔壁12aで仕切られて掘削部を構成しており、カッターチャンバ12の後方に密接状態で連接された本発明のスクリューコンベヤからなる排土コンベヤにより掘削部側を所定の圧力に維持して密閉できるようになっており、所定の圧力をかけた状態で掘進できるようになっている。
【0014】
更に詳しく説明すると、本発明の排土コンベヤ2Aはその先端側を隔壁12aを貫通するように設けられ後端側を斜め上方向にして支持されている。排土コンベヤ2Aの後端側下方には排土コンベヤ等の第2の搬送手段3が配設されて、排土コンベヤ2A後端側に開口した排出口26Aから排出された土砂を受け取って、さらに後方に搬送するようになっている。
【0015】
図2(A)の排土コンベヤ2Aの拡大図を参照して、排土コンベヤ2Aは円筒状のケーシング20A内部にスクリュウ(リボンスクリュウ)25を収装しており、電動モータ等の回転駆動手段27でスクリュウ25を回転駆動させてカッターチャンバ12内の土砂を斜め上方に搬送し、図2(B)に示すようにケーシング20Aの後端下側に略方形状に切り欠いてなる排出口26Aからその土砂を排出するようになっている。
【0016】
そして、その排出口26Aを閉鎖するための閉鎖部材261Aを、円筒状のケーシング20Aの外周面上に被装され油圧シリンダ等の往復駆動手段28で駆動されて軸方向に摺動可能とされた円筒状部材としたことが、本発明の特徴部分となっている。即ち、ケーシング20Aの外径よりも内径が僅かに大きな円筒状部材である閉鎖部材261Aは、図2(A)の位置で排出口26Aを閉鎖し、図2(B)の位置で排出口26Aを開放するものである。
【0017】
この閉鎖部材261Aの取付状態を説明するための図3に示す排土コンベヤ2Aの一部を切り欠いた拡大図を参照して、閉鎖部材261Aは、ケーシング20Aの外周よりも内周が僅かに多きな円筒状部材であるが、その両端側寄りの内周面にはゴムなどの弾性部材からなるリング状のシール部材29a,29bが外周側を閉鎖部材261Aの内周面側に設けた取付溝に埋設して固定されており、シール部材29a,29bの間に形成される空間を外部から気・液密状態とするシール手段となっている。
【0018】
そして、このシール部材29a,29bの内周面で形成される内径が、ケーシング20Aの外径よりも僅かに小さく、これをケーシング20A外周面に密着・被装することでシール部材29a,29b内周面がケーシング20A外周面に適度に押圧された状態となって、排出口26A閉鎖時に内外のシール性を確保するものとなって内部に溜まっている土砂や水分が排出口26Aから流出するのを防止する。
【0019】
このように、閉鎖部材261Aを円筒状としたことで閉鎖時に排出口26B部分に大きな内圧がかかっても円筒状の閉鎖部材261Aで全体的に圧力を分散させることができることから摺動動作のスムースさを確保することができ、案内溝を用いて圧力が狭い範囲に集中しやすい従来のものと比べて摺動部の摩耗を軽減できるようになっている。
【0020】
また、排出口26Aと閉鎖部材261Aとの間に介在するシール手段を一組のリング状のシール部材29a,29bをとしたことで、図5に示す従来の排土コンベヤのシール部材29cと比べて、密着部分の幅を大きくしやすくなってシール性を高めることが容易になり、またシール面積が大きくなることでシール状態をより確実にできるとともに、シール手段の摩耗も軽減されて耐久性に優れたものとなる。
【0021】
さらに、従来の排土コンベヤにおいて排出口を閉鎖する動作において土砂が動作の妨げとなったり先端側に溜まって完全に閉鎖できなかったりして、排出口26B付近に付着した土砂がそのシール性を損ないやすかったのに対し、本発明においては、シール部材29a,29bの先端側端面で土砂を確実に掻き落とすことができるため、閉鎖状態を確実なものとしてそのシール性をより確実なものとすることができる。
【0022】
以上述べたように、円筒状の閉鎖部材を用いるとともに一組のリング状のシール手段を用いた本発明により、その耐久性を損なうことなく排出口閉鎖時における排土コンベヤ内外のシール性を確保できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明における実施の形態の排土コンベヤが配設されたシールド掘進機を示す縦断面図。
【図2】(A),(B)は図1の排土コンベヤの動作を説明するための拡大した正面図。
【図3】図1の排土コンベヤの閉鎖部材の取付け状態を説明するための一部を切り欠いた拡大部分図。
【図4】従来例を示す縦断面図。
【図5】図4の排土コンベヤにおける閉鎖板の取付け状態を説明するための一部を切り欠いた拡大部分図。
【符号の説明】
【0024】
1A シールド掘進機、2A 排土コンベヤ、11 カッターヘッド、12 カッターチャンバ、12a 隔壁、20A ケーシング、25 スクリュウ、26A 排出口、261A 閉鎖部材、29a,29b シール部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッド及びカッターチャンバを有する掘削部により地盤を掘削するシールド掘進機の前記カッターチャンバ内に溜まった土砂を後続のシールド内に配置した搬送手段に送出するための排土用コンベヤであって、先端側を前記カッターチャンバ内に密接状態で挿入させるとともに後端側下部外周面に所定形状の排出口が形成されたスクリューを内装する円筒状のケーシングの外周面に、所定の駆動手段により前記ケーシングの軸線方向に沿って往復動させて前記排出口を開閉する円筒状の閉鎖部材が嵌装されており、且つ前記ケーシング外周面の少なくとも前記排出口周囲と前記閉鎖部材内周面との間に所定のシール手段が介在して前記閉鎖部材により前記開閉口を閉じたときに排土用コンベヤ内の土砂がシールド内に流出するのを防止することを特徴とするシールド掘進機の排土用コンベヤ。
【請求項2】
前記シール手段は、前記閉鎖部材の内周面両端側に各々周方向に沿うように配置された一組のリング状の弾性部材からなる、ことを特徴とする請求項1に記載したシールド掘進機の排土用コンベヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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