説明

シール付き転がり軸受

【課題】転がり軸受の異常摩耗を防ぐ。
【解決手段】外輪41と、この外輪41の内周側に配置された内輪50と、外輪41および内輪50間に配置されこれらに対し転動する転動体80と、外輪41および内輪50間をシールするシール部材70と、外輪41および転動体80間、内輪50および転動体80間を潤滑するグリース85、86とからなるシール付き転がり軸受において、シール部材70の一部を、線膨張係数の異なる少なくとも2種類の材料を円周方向に交互に配置するとともにこれらを一体成形したヒートショック部73で構成し、繰り返しかかるヒートショックにより2種類の材料間にクラックを発生させ、このクラックによりヒートショック部73に外輪41および内輪50間の内部空間を、外輪41および内輪50外の外部空間に連通する連通通路73aを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触シールタイプのシール付き転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
図7(特許文献1)に示すシール付き転がり軸受は、外輪100および内輪110間を転動する円筒ころ120を有し、外輪100の内周の軸方向両端に環状溝101が形成され、これにシール部材130が圧入固定されている。シール部材130の内周側のリップ部135は、内輪110の外周に摺接している。図7および図8に示すようにシール部材130の外周側の厚肉部131には、外周面に円周上1箇所で軸方向に連通する軸方向溝132が形成され、円筒ころ120側の側面に円周上2箇所で径方向に連通する径方向溝133が形成されている。軸方向溝132および径方向溝133は、外輪100、内輪110およびシール部材130で囲まれた空間140の内圧を調節するのに使用しているが、転がり軸受をトランスミッションのギヤの回転軸支持に使用した場合、ミッションオイルを空間140へ導く通路として、前記軸方向溝132および径方向溝133を使用することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−79049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミッションオイルは、タンク、フィルター、ポンプ、ミッション各部の順に循環している。トランスミッションは、互いに噛合する複数のギヤを有し、ギヤ同士の噛み合いによる金属屑(異物)が発生する。トランスミッション使用始めの初期段階では、ギヤ同士が互いになじんでいないため、金属屑が大量に発生し、金属屑はフィルターに捕捉される。ギヤ同士が互いになじんでくると、金属屑の発生が少なくなってくる。トランスミッション使用始めの初期段階で、金属屑が混じったミッションオイルが、軸方向溝132および径方向溝133を介して空間140へ入るのは、転がり軸受の異常摩耗を防ぐ点で好ましくない。これに対し、軸方向溝132および径方向溝133を無くし、予め注入されたグリースで転がり軸受の各部を潤滑する方法があるが、使用とともにグリースが劣化するので、転がり軸受の異常摩耗を防ぐ点で好ましくない。本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、転がり軸受の異常摩耗を防ぐ。すなわち外輪100、内輪110、円筒ころ120の異常摩耗を防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、外輪と、この外輪の内周側に配置された内輪と、前記外輪および前記内輪間に配置されこれらに対し転動する転動体と、前記外輪および前記内輪間をシールするシール部材と、前記外輪および前記転動体間、前記内輪および前記転動体間を潤滑するグリースとからなるシール付き転がり軸受において、
前記シール部材の一部を、線膨張係数の異なる少なくとも2種類の材料を円周方向に交互に配置するとともにこれらを一体成形したヒートショック部で構成し、繰り返しかかるヒートショックにより2種類の材料間にクラックを発生させ、このクラックにより前記ヒートショック部に前記外輪および前記内輪間の内部空間を、前記外輪および前記内輪外の外部空間に連通する連通通路を形成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、使用し始めの初期段階は、グリースによって外輪および転動体間、内輪および転動体間を潤滑し、使用が進みグリースが劣化すると、繰り返し作用するヒートショックによりヒートショック部にクラックが入り、連通通路が形成されるので、この連通通路を介して外輪および内輪外の外部空間より、外輪および内輪間の内部空間へオイルが流入し、このオイルによって外輪および転動体間、内輪および転動体間を潤滑するので、転がり軸受の異常摩耗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態におけるトランスミッションの縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における図1の要部拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態における図2の要部拡大図である。
【図5】本発明の他の実施形態における図3相当の要部拡大図である。
【図6】本発明の他の実施形態における図4相当の要部拡大図である。
【図7】従来のシール付き転がり軸受の縦断面図である。
【図8】従来のシール付き転がり軸受のオイルシールの厚肉部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について、図1乃至図4を参酌しつつ説明する。図1はトランスミッションの縦断面図であり、図2は図1のA−A線断面図であり、図3は図1の要部拡大図であり、図4は図2の要部拡大図である。
【0009】
図1および図2においてトランスミッション10は、アルミ製のミッションケース11を有する。ミッションケース11は、円筒状のボス部12が一体形成され、このボス部12に断面円形の嵌合穴13が形成されている。嵌合穴13に、鉄製で円筒状の補強部材15が圧入固定され、この補強部材15にシール付き転がり軸受40が径方向に隙間を持って嵌合されている。補強部材15の内周には、リング溝16が形成され、このリング溝16に止め輪34が嵌め込まれている。シール付き転がり軸受40の外輪41の外周には、リング溝16と対応する位置に係合溝45が形成され、この係合溝45に止め輪34が係合している。すなわち、止め輪34はリング溝16および係合溝45に跨る位置に存在し、止め輪34自体は径方向に縮小しようとする弾性力を有する。
【0010】
シール付き転がり軸受40の内輪50に回転軸20が嵌合され、回転軸20の外周には、内輪50が嵌合される第1の被嵌合部21、スプライン22、第2の被嵌合部23がボス部12から順に形成されている。また回転軸20のボス部12側の一端にネジ穴24が形成され、このネジ穴24に挟持部材30が螺合されている。挟持部材30は外径方向に拡張したフランジ部を有し、このフランジ部に内輪50の側面が当接している。
【0011】
回転軸20のスプライン22には、第1のギヤ32および第2のギヤ33がスプライン嵌合され、第1のギヤ32および第2のギヤ33が回転軸20と一体回転するようになっている。回転軸20の第2の被嵌合部23には、間座31が嵌め込まれ、シール付き転がり軸受40、第1のギヤ32および第2のギヤ33が、挟持部材30のフランジ部および間座31間で挟持されている。第1のギヤ32は、回転軸20と平行な軸線回りに回転する第3のギヤ35に噛合している。ミッションケース11内には、第1のギヤ32および第3のギヤ35の下部近くまでミッションオイル81が入っており、このミッションオイル81によって第1のギヤ32および第3のギヤ35の滑らかな噛み合いがなされる。
【0012】
図1に示す接触シールタイプのシール付き転がり軸受は、転動体として玉を使った玉軸受40である。玉軸受40は、リング状の外輪41と、外輪41の内周側に配置されるリング状の内輪50と、外輪41と内輪50間に配置されるリング状の保持器60と、保持器60に保持される複数の玉80と、玉80を挟んで両側に設けられたシール部材70、78とからなっている。シール部材70は、玉80に対して第1のギヤ32側に設けられ、シール部材78は、玉80に対して第1のギヤ32と反対側に設けられている。
【0013】
図1および図3に示すように、前記外輪41の内周には、断面円弧状の外輪側軌道面42が形成され、外輪側軌道面42の両側に、段部44、環状溝43の順に形成されている。段部44は径方向に形成され、段部44の外径側に環状溝43が形成されている。段部44および環状溝43は、外輪側軌道面42を中心に左右対称となるように形成されている。
【0014】
内輪50の外周には、断面円弧状の内輪側軌道面52が形成され、内輪側軌道面52の両側に、大径部55、段部54、環状溝53の順に形成されている。大径部55は軸方向に形成され、この大径部55に対して径方向に段部54が形成され、段部54の内周側に凹形状の環状溝43が形成されている。大径部55、段部44および環状溝43は、内輪側軌道面52を中心に左右対称となるように形成されている。
【0015】
前記保持器60は円周方向に複数のポケット部61を有し、各ポケット部61に玉80が回転可能に保持されている。前記玉80は、金属製で球形状を有する。
【0016】
図3および図4に示すように、前記シール部材70は、金属製の芯金71と、この芯金71に加硫接着されたゴム製のシール本体72と、芯金71およびシール本体72に接着された樹脂製のヒートショック部73とからなっている。芯金71は、ドーナツ状で、断面コの字形状を有し、円周方向に複数の連通穴71aが穿孔されている。連通穴71aは、径方向の中間に設けられている。金属製の芯金71は、プレス金型によって成形されるようになっている。シール本体72は、芯金71の外径側、内径側、一部の内側面側、一部の外側面側に設けられ、芯金71の大半の内側面側および大半の外側面側には設けられていない。シール本体72は、大径部55に摺接する第1のリップ部72cと、段部54に摺接する第2のリップ部72bとを有する。射出成形金型に芯金71をセットし、ゴム材料を射出することによって芯金71に加硫接着された形でシール本体72が成形されるようになっている。シール本体72は、環状溝43に圧入嵌合される。
【0017】
ヒートショック部73は、ドーナツ状で、断面コの字形状を有する。ヒートショック部73は、線膨張係数の異なる2種類の材料を円周方向に交互に配置したもので、射出成形金型に2種類の樹脂製の材料を射出することによって成形されるようになっている。成形後のヒートショック部73は、シール本体72および芯金71に接着剤によって接着されるようになっている。ヒートショック部73は、線膨張係数の高い樹脂材料からなるカバーA部74と、線膨張係数の低い樹脂材料からなるカバーB部75とからなり、これらが冷えて固まることによりカバーA部74およびカバーB部75が自然に互いに接着して一体化するようになっている。ヒートショック部73に熱が繰り返し作用すると、カバーA部74の径方向中間がシール本体72と反対側へ膨らんだり、戻ったりすることが繰り返し行われ、カバーA部74およびカバーB部75間にクラックが入り、このクラックがヒートショック部73の裏表を連通する連通通路73aとなる。
【0018】
図1に示すように、前記シール部材78は、金属製の芯金71と、この芯金71に加硫接着されたゴム製のシール本体72とからなっている。シール部材78は、ヒートショック部73および連通穴71aが無いのみで、後はシール部材70と全く同じ構造である。
【0019】
図3に示すように、外輪41および保持器60間にグリース85が注入され、保持器60および内輪50間にグリース86が注入されている。グリース85、86は、ミッションオイル81に増ちょう剤を混ぜたものが使用される。ミッションオイル81として、鉱物油、部分合成油、化学合成油のいずれかが使用され、いずれも液体のものが使用される。増ちょう剤として、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、ナトリウム石けん、リチウム石けん、カルシウムコンプレックス、アルミニウムコンプレックス、リチウムコンプレックス、芳香族ジウレア、脂肪族ジウレア、脂環族ジウレア、PTFEのいずれかが使用される。これらのいずれかをミッションオイル81に混ぜると、ねり状のグリース85、86ができる。
【0020】
ミッションオイル81および増ちょう剤の割合を変えることによりちょう度が変わり、増ちょう剤の割合が多いほどグリース85、86のちょう度が大きくなり、グリース85、86は硬くなる。またグリース85、86は、ミッションオイル81に長時間さらされると、溶けてミッションオイル81内へ分散化する。グリース85、86が硬いほどミッションオイル81内への分散化が遅れる傾向にあり、グリース85、86のちょう度を変えることによって、グリース85、86がミッションオイル81に溶けるタイミングを最適なものにすることができる。グリース85、86を作るときに、増ちょう剤と混ぜる潤滑油を、ミッションオイル81と異なるものを使用することも可能であるが、同じものを使用した方が、他の潤滑油を混ぜて使用することによる弊害を少なくすることができ、潤滑性能を十分に発揮することができる。
【0021】
次に上述した構成にもとづいて、玉軸受10の組付け動作について説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、外輪41、保持器60、内輪50を同軸に配置し、内輪50に対し保持器60を傾け、保持器60に対し外輪41をさらに傾ける。保持器60のポケット部61に玉80を挿入し、保持器60を回して空いているポケット部61に玉80を挿入する動作を繰り返す。図3に示すように、外輪41および保持器60間にグリースガンを使用してグリース85を注入し、保持器60および内輪50間にグリースガンを使用してグリース86を注入する。外輪41の環状溝43にシール部材70、78を嵌め込んで玉軸受10の組付け動作が完了する。
【0023】
続いてトランスミッションの組付け動作について説明する。
【0024】
図1に示すように、回転軸20の第2の被嵌合部23に間座31を嵌合し、スプライン22に第1のギヤ32および第2のギヤ33をスプライン嵌合し、第1の被嵌合部21に玉軸受10の内輪50を嵌合し、ネジ穴24に挟持部材30を螺合させる。これによって、玉軸受10、第1のギヤ32および第2のギヤ33は、挟持部材30のフランジ部および間座31によって挟持される。
【0025】
ボス部12の嵌合穴13に鉄製で円筒状の補強部材15を圧入嵌合し、補強部材15のリング溝16に止め輪34を嵌め込む。補強部材15に回転軸20と一体化した玉軸受10を挿入し、止め輪34は玉軸受10の外輪41によってリング溝16側へ径方向に拡張し、止め輪34が係合溝45に対応すると、止め輪34は径方向に縮小し、止め輪34は係合溝45に係合する。このとき、止め輪34は、リング溝16および係合溝45に跨った位置に位置し、補強部材15に対する玉軸受10の抜けが防止される。トランスミッション10の他の各部の組付けが完了すると、ミッションケース11内へミッションオイル81が第1のギヤ32および第3のギヤ35の下部近くまで注入される。
【0026】
かかる状態で回転軸20を回転させると、図1および図2に示すように、第1のギヤ32および第3のギヤ34は互いに噛合しながら互いに逆方向に回転する。このとき図1および図3に示すように、内輪50も外輪41に対し回転し、外輪側軌道面42および内輪側軌道面52上を玉80が転動し、玉80は内輪50の回転方向と同方向へ移動する。玉80を保持する保持器60も玉80と同方向へ移動する。外輪41およびシール部材70、78間は、環状溝43にシール部材70、78を圧入嵌合することによりシールされる。内輪50およびシール部材70、78間は、第1のリップ部72cが大径部55に摺接し、第2のリップ部72bが段部54に摺接することによりシールされる。
【0027】
図1、図3および図4に示すように、トランスミッション10の始動開始の初期段階においては、グリース85、86によって外輪41および玉80間、玉80および内輪50間が潤滑される。ミッションオイル81内には、第1のギヤ32および第3のギヤ34の噛み合いによって発生した金属屑(異物)が多数含まれている。これらは、ミッションオイル81の循環によって、循環経路の途中にあるフィルターに捕捉される。このように、外輪41および玉80間、玉80および内輪50間の潤滑に、金属屑が混じったミッションオイル81ではなくグリース85、86を使用するので、玉軸受10の異常摩耗を防ぐことができる。
【0028】
トランスミッション10の使用経過時間がある程度以上になると、第1のギヤ32および第3のギヤ34は互いになじみ、金属屑を発生しなくなる。また、グリース85、86が劣化し、潤滑機能が低下する。
【0029】
これまでに、ヒートショック部73には、ヒートショックが繰り返し作用し、カバーA部74の径方向中間がシール本体72と反対側へ膨らんだり、戻ったりすることが繰り返し行われ、カバーA部74およびカバーB部75間にクラックが入り、このクラックがヒートショック部73の裏表を連通する連通通路73aとなる。第1のギヤ32および第3のギヤ34の下部近くまであるミッションオイル81は、回転する第1のギヤ32および第3のギヤ34によって掻き揚げられ、ヒートショック部73に付着する。上部にある連通通路73a、連通穴71aを介してミッションオイル81が、外輪41および内輪50間の内部空間へ流入し、下部にある連通通路73a、連通穴71aを介してミッションオイル81が、外輪41および内輪50外の外部空間へ流出する。外輪41および保持器60間のグリース85、保持器60および内輪50間のグリース86はミッションオイル81にさらされ、ミッションオイル81内へ少しずつ溶けていく。
【0030】
グリース85、86が完全に溶けると、ミッションオイル81によって外輪41および玉80間、玉80および内輪50間が潤滑される。このように、外輪41および玉80間、玉80および内輪50間の潤滑に、劣化したグリース85、86ではなく金属屑が少ないミッションオイル81を使用するので、玉軸受10の異常摩耗を防ぐことができる。すなわち外輪側軌道面42、内輪側軌道面52、玉80の異常摩耗を防ぐことができる。
【0031】
ミッションオイル81は、自動車の走行キロあるいは使用経過時間に応じて定期的に交換されるが、玉軸受10内のグリース85、86の交換は、トランスミッション10、玉軸受10の分解がない限り不可能である。このようにトランスミッションの使用経過時間がある程度経過した時点では、グリース85、86ではなくミッションオイル81を玉軸受10の潤滑に使用した方が望ましい。
【0032】
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0033】
上述した実施形態は、ヒートショック部73を芯金71およびシール本体72に固着した。他の実施形態として、図5および図6に示すように、芯金71b自体をヒートショック部として構成しても良い。
【0034】
この場合、芯金71bは、円周方向に交互に配置された線膨張係数の異なる2種類の材料から射出成形金型を使用して成形される。芯金71bは、ドーナツ状で、断面コの字形状を有する。射出成形金型によって成形された芯金71bは、別の射出成形金型にセットされ、ゴム材料を射出することによってシール本体72が加硫接着され、内輪41の環状溝43に取り付けられる。前記芯金71bは、線膨張係数の高い樹脂材料からなるカバーA部71cと、線膨張係数の低い樹脂材料からなるカバーB部71dとからなり、これらが冷えて固まることによりカバーA部71cおよびカバーB部71dが自然に互いに接着して一体化するようになっている。ヒートショック部71bに熱が繰り返し作用すると、カバーA部71cの径方向中間が保持器60と反対側へ膨らんだり、戻ったりすることが繰り返し行われ、カバーA部71cおよびカバーB部71d間にクラックが入り、このクラックがヒートショック部71bの裏表を連通する連通通路71eとなる。芯金71b以外は、先に述べた実施形態と同じであるので、同一番号を付与して説明を省略する。
【0035】
上述した実施形態は、転動体として玉80を使用した例について述べた。他の実施形態として、転動体として円筒ころを用いても良い。
【符号の説明】
【0036】
41:外輪、50:内輪、70:シール部材、73:ヒートショック部、73a:連絡通路、80:玉(転動体)、81:ミッションオイル(オイル)、85:グリース、86:グリース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、この外輪の内周側に配置された内輪と、前記外輪および前記内輪間に配置されこれらに対し転動する転動体と、前記外輪および前記内輪間をシールするシール部材と、前記外輪および前記転動体間、前記内輪および前記転動体間を潤滑するグリースとからなるシール付き転がり軸受において、
前記シール部材の一部を、線膨張係数の異なる少なくとも2種類の材料を円周方向に交互に配置するとともにこれらを一体成形したヒートショック部で構成し、繰り返しかかるヒートショックにより2種類の材料間にクラックを発生させ、このクラックにより前記ヒートショック部に前記外輪および前記内輪間の内部空間を、前記外輪および前記内輪外の外部空間に連通する連通通路を形成したことを特徴とするシール付き転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104485(P2013−104485A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248554(P2011−248554)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】