説明

ジャンプ式傘の開放付勢機構

【課題】 簡単な構造でありながらも、親骨に対し確実に開放付勢力を付与することができ、しかも軽量化をもすることができるジャンプ式傘の開放付勢機構を提供すること。
【解決手段】 弾性材料製の有孔板体1からは、同じく弾性材料製の受骨2・2…が一体に放射状に持出成形されているとともに、これら受骨2・2…の各先端部21は前記親骨7の軸支部71にヒンジ連結されている一方、
前記有孔板体1は下ロクロ3に固定され、これら下ロクロ3および有孔板体1の挿通孔11が中骨5にスライド自在に挿通されており、
下ロクロ3を引き下げるときは、当該下ロクロ3が前記受骨2が撓曲付勢しつゝ下ハジキ4に掛合し、親骨7を折り畳むことができる一方、
前記下ハジキ4の掛合を解除することにより、受骨2の弾性復元力によって親骨7を開放方向に付勢することができるようにするという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャンプ式傘の改良、更に詳しくは、簡単な構造でありながらも、確実に開放付勢力を付与することができ、しかも軽量化をもすることができるジャンプ式傘の開放付勢機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、傘の開閉において、バネなどの付勢手段を利用して、ハジキボタンを操作するだけで自動的に傘が開くように構成された、所謂、「ジャンプ傘」が非常に使い勝手が良く、多く普及している。
【0003】
従来、かかるジャンプ傘における開放付勢手段には、バネを付勢部材として用いるものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる付勢構造にあっては、バネをロクロ部材の中に介装したり、傘骨同士のジョイント部分の連結したりして構造が複雑であるために、故障が発生し易く、また、製造工程にも手間がかかるという問題があった。
【特許文献1】実用新案登録3027441号公報 (第4−8頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のジャンプ式傘に、上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、簡単な構造でありながらも、親骨に対し確実に開放付勢力を付与することができ、しかも軽量化をもすることができるジャンプ式傘の開放付勢機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0007】
即ち、本発明は、ジャンプ式に開閉操作する傘の上ロクロ6から放射状に伸びる親骨7・7…を開放付勢せしめるための機構であって、
弾性材料製の有孔板体1からは、同じく弾性材料製の受骨2・2…が一体に放射状に持出成形されているとともに、これら受骨2・2…の各先端部21は前記親骨7の軸支部71にヒンジ連結されている一方、
前記有孔板体1は下ロクロ3に固定され、これら下ロクロ3および有孔板体1の挿通孔11が中骨5にスライド自在に挿通されており、
下ロクロ3を引き下げるときは、当該下ロクロ3が前記受骨2が撓曲付勢しつゝ下ハジキ4に掛合し、親骨7を折り畳むことができる一方、
前記下ハジキ4の掛合を解除することにより、受骨2の弾性復元力によって親骨7を開放方向に付勢することができるようにするという技術的手段を採用した。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記有孔板体1と受骨2とを弾性材料製板体を一体に打ち抜き成形するという技術的手段を採用した。
【0009】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、上ロクロ6に固定する有孔板体61と親骨7とを弾性材料で一体に作製するという技術的手段を採用した。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、上ロクロ6に固定する有孔板体61と親骨7とが弾性材料製板体を一体に打ち抜き成形するという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、弾性材料をチタンまたはチタン合金にするという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、弾性材料をニッケル・チタン系超弾性合金にするという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、傘骨、特に受骨に弾性材料を使用したことにより、複雑な接合部分や付勢部材の取付などを必要とせずとも、簡単な構造で確実に付勢力を付与することができる。更にまた、傘を軽量化することもできて、使い勝手が向上することから、産業上における利用価値は頗る高いと云える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を具体的に図示した図面に基いて更に詳細に説明すると次のとおりである。
【0015】
本発明の実施形態におけるジャンプ式傘の開放付勢機構を図1から図5に基いて説明する。図中、符号1で指示するものは挿通孔11が開設された有孔板体であり、この有孔板体1は弾性材料(本実施形態では、β−チタン)で作製されている。
【0016】
また、符号2で指示するものは受骨であり、この受骨2は前記有孔板体1と同じく弾性材料(β−チタン)で、当該有孔板体1から一体に放射状に持出成形されている。
【0017】
しかして、本実施形態は、ジャンプ式に開閉操作する傘の上ロクロ6から放射状に伸びる親骨7・7…を開放付勢せしめるための機構であって、構成するにあっては、まず、図1に示すように、前記有孔板体1から受骨2・2…を一体に放射状に持出成形するとともに、これら受骨2・2…の各先端部21を前記親骨7の軸支部71にヒンジ連結する。
【0018】
この際、本実施形態では、図2に示すようなβ−チタン製の薄板Pから、有孔板体1と受骨2とを一体に打ち抜き (punching) 加工することができる。
【0019】
この親骨7の軸支部71とのヒンジ連結部は、受骨2の先端部21を折り返すか、または、略直角に捩じり、かつ、其処に貫通孔を開設して形成する。
【0020】
そして、前記有孔板体1を下ロクロ3に固定し、これら下ロクロ3および有孔板体1の挿通孔11を中骨5にスライド自在に挿通する。
【0021】
すると、図3に示すように、下ロクロ3を引き下げるときは、当該下ロクロ3が前記受骨2が撓曲付勢しつゝ下ハジキ4に掛合し、親骨7を折り畳むことができる。
【0022】
また、図4に示すように、前記下ハジキ4の掛合を解除することにより、受骨2の弾性復元力によって親骨7を開放方向に付勢することができる。
【0023】
本実施形態の変形例として、図5に示すように、上ロクロ6に固定する有孔板体61と親骨7とを弾性材料で一体に作製したものを使用することもでき、これらについても前記同様、打ち抜き加工することができる。
【0024】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、有孔板体1および受骨2に用いる弾性材料は、β−チタンに限らず、種々のチタン合金や、ニッケル・チタン系超弾性合金、更には、高弾性樹脂を使用することができ、この高弾性材料にはポリフェニレンサルファイド(PPS)、高弾性ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの高弾性エンジニアリング樹脂などを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の板体および受骨部材を表わす上面図である。
【図2】本発明の実施形態の板体および受骨部材の打ち抜き加工を表わす上面図である。
【図3】本発明の実施形態の付勢機構を表わす説明正面図である。
【図4】本発明の実施形態の付勢機構を表わす説明正面図である。
【図5】本発明の実施形態の付勢機構の変形例を表わす説明正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 有孔板体
2 受骨
21 先端部
3 下ロクロ
4 下ハジキ
5 中骨
6 上ロクロ
61 有孔板体
7 親骨
71 軸支部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャンプ式に開閉操作する傘の上ロクロ6から放射状に伸びる親骨7・7…を開放付勢せしめるための機構であって、
弾性材料製の有孔板体1からは、同じく弾性材料製の受骨2・2…が一体に放射状に持出成形されているとともに、これら受骨2・2…の各先端部21は前記親骨7の軸支部71にヒンジ連結されている一方、
前記有孔板体1は下ロクロ3に固定され、これら下ロクロ3および有孔板体1の挿通孔11が中骨5にスライド自在に挿通されており、
下ロクロ3を引き下げるときは、当該下ロクロ3が前記受骨2が撓曲付勢しつゝ下ハジキ4に掛合し、親骨7を折り畳むことができる一方、
前記下ハジキ4の掛合を解除することにより、受骨2の弾性復元力によって親骨7を開放方向に付勢することができることを特徴とするジャンプ式傘の開放付勢機構。
【請求項2】
有孔板体1と受骨2とが弾性材料製板体を一体に打ち抜き成形されていることを特徴とする請求項1記載のジャンプ式傘の開放付勢機構。
【請求項3】
上ロクロ6に固定する有孔板体61と親骨7とが弾性材料で一体に作製されていることを特徴とする請求項1または2記載のジャンプ式傘の開放付勢機構。
【請求項4】
上ロクロ6に固定する有孔板体61と親骨7とが弾性材料製板体を一体に打ち抜き成形されていることを特徴とする請求項3記載のジャンプ式傘の開放付勢機構。
【請求項5】
弾性材料がチタンまたはチタン合金であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のジャンプ式傘の開放付勢機構。
【請求項6】
弾性材料がニッケル・チタン系超弾性合金であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のジャンプ式傘の開放付勢機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−81780(P2006−81780A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270792(P2004−270792)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(301029296)株式会社福井洋傘 (2)
【Fターム(参考)】