説明

スイッチング電源装置の絶縁トランス

【課題】小型で、伝導放熱特性のよいスイッチング電源用の絶縁トランスを提供する。
【解決手段】絶縁トランス11は、一次側コイル22と二次側コイル24が巻回されているコア12と、一次側コイル22の一次側端子18と、二次側コイル24の二次側端子20と、一次側端子18とコア12の間及びコア部底面部に接する面に開口部を有する絶縁カバー16と、コア底面部の絶縁カバー16の開口部26に相対する位置に設けられた放熱板14とを備えている。放熱板14を設けた絶縁トランス11は、金属ベース基板40に実装する際、金属ベース基板40上に、コア底面部に取り付けた放熱板14と相対する位置に伝導放熱用のパット30を設けている。これにより、コア12での発熱は、放熱板14を伝導して金属ベース基板40に効率よく拡散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ベース基板を用いて絶縁トランスの伝導放熱を行うスイッチング電源装置の絶縁トランスに関する。

【背景技術】
【0002】
金属ベース基板に実装してスイッチング電源装置として使用する絶縁トランスは、小型で実装スペースをとらず、放熱容易な構造であることが望まれている。
【0003】
しかしながら、小型化の課題は、絶縁トランス自体の小型化と同時に、安全規格に準じた絶縁距離の確保が要求され、空間を通して測定される端子とトランスの空間距離は、動作電圧に応じて決まっている。このため従来は、絶縁物を使用して絶縁物表面に沿って測定した沿面距離により絶縁距離の確保を図っていた。また、トランスを覆う絶縁物のカバーを使用する場合などでは絶縁距離は確保できても、放熱性を低下させる原因となっていた。
【0004】
従来のスイッチング電源装置に用いる絶縁トランスは、例えば図9に示す構造となっている。
図9において、52はコア、54は一次側端子、56は二次側端子、58はボビン、60は金属ベース基板である。
【0005】
図9の従来例に示すように、放熱性を向上させるために、金属ベース基板60にコア52を直接接触させて放熱させる構造とし、絶縁距離は、コア52と一次側端子54との距離Xを長くすることにより確保していた。
【0006】
このようなコアと金属ベース基板を直接接触させた方法での熱伝導効率を向上させる方法としては、コアと金属ベース基板間に微小な空隙を設けて、高熱伝導率樹脂、例えばゲル状のシリコン、エポキシ樹脂を充填し、またはシート状のシリコンを介して密着性を向上させてコアでの発生した熱を金属ベース基板に効率よく伝導放熱する方法が提案されている(例えば特開平4−209509号公報等参照)。
【0007】
絶縁距離を確保する方法としては、図10に示すものがある。図10において、72はコア、74は樹脂ケース、76は一次側端子、78は二次側端子、80は金属ベース基板であり、コア72自体を絶縁性の樹脂を充填した樹脂ケース74で覆う方法がある。また、トランスのボビンを利用して絶縁距離を確保する例もある(例えば特開2006−228996号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−209509号公報
【特許文献2】特開2006−228996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の方法では、コアで発生した熱を効率よく金属ベース基板に伝導放熱しようとして、コアを金属ベース基板に直接接触させても、一次側端子との絶縁距離が長くなり、実装スペースを広くとらなければならないという問題があった。
【0010】
また、実装スペースを狭くするために、コアを絶縁樹脂で覆う方法では、コアで発生した熱は、絶縁樹脂を通して伝導放熱されるため、熱伝導効率が低下して熱量の多く発生する高出力電力品では使用できない問題があった。
【0011】
本発明の目的は、金属ベース基板に絶縁トランスを実装するスイッチング電源装置において、絶縁距離を長くとることなく伝導放熱特性の良好なスイッチング電源装置の絶縁トランスを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、金属ベース基板に実装してスイッチング電源装置に用いられる絶縁トランスであって、絶縁距離と放熱の問題を解決した絶縁トランスを提供する。
【0013】
本発明の絶縁トランスは、一次巻線と二次巻線が巻回されているコアと、一次巻線の一次側端子と、二次巻線の二次側端子と、一次側端子とコアの間及びコア部底面部に接する面に開口部を有する絶縁カバーと、コア底面部の絶縁カバー開口部に相対する位置に設けられた放熱板とを備えている。
【0014】
スイッチング電源装置用の絶縁トランスは、入力電圧を整流平滑した直流電圧を出力電圧に変換する機能を有し、スイッチング電源の入力側である1次側と出力側である2次側を絶縁する機能を合わせて持っている。このため、絶縁距離は、コアと一次側端子間を考慮すればよく、この空間に絶縁カバーを設けて沿面距離を加算している。
【0015】
また、絶縁カバーのコア底面部に接する部分に開口部を設けて、コア底面部に備えた放熱板を金属ベース基板に接する構造とし、コアで発生する熱を、金属ベース基板に伝導放熱させる構造としている。
【0016】
また、コアを1次側電位として、コアと2次側端子の間に絶縁ケースを設ける構造とすることも可能である。
【0017】
絶縁トランスにおいて、放熱板は、金属であることを特徴とする。金属とすることにより熱伝導効率を高くすることができる。
【0018】
さらに絶縁トランスにおいて、金属の放熱板を銅とすることを特徴とする。金属ベース基板と接触して伝導放熱を効率よく行うために、低コストでハンダ付け可能である銅を使用することにより密着性を向上させることができる。
【0019】
また、絶縁トランスにおいて、放熱板は、表面にハンダ付け可能なメッキ処理が施されていることを特徴とする。
【0020】
絶縁トランスにおいて、放熱板はコアの一部を突起形状としてコアと一体的に成型されていることを特徴とする絶縁トランスとしてもよい。コア底面部の開口部からの放熱板としてコアそのものに放熱板の形状をした突起物を一体成型する。
【0021】
放熱板を設けた絶縁トランスは、金属ベース基板に実装する際、金属ベース基板上に、コア底面部に取り付けた放熱板と相対する位置に伝導放熱用のパットを設けたことを特徴とする。これにより、コアでの発生した熱は、放熱板を伝導して金属ベース基板に効率よく拡散される。
【0022】
放熱板は、金属ベース基板上に実装される際に、金属ベース基板上のパッドとハンダ付けされて金属ベース基板に実装されることを特徴とする。パットは、金属ベース基板の絶縁層上に設けられたハンダ付け用のランドであり、絶縁トランスの一次側端子と二次側端子を金属ベース基板上のパターンにハンダ付けする際に、放熱板とパッドも同時にハンダ付けすることで良好な密着性を得た実装ができる。

【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、コアと一次側端子の間に絶縁ケースを設けて、沿面距離を確保しているので、コアと一次側端子の距離を長くする必要がなく、実装スペースを小さくできる効果がある。
【0024】
コアで発生する熱は、コアと金属ベース基板間に放熱板を介して伝導放熱させることができるため、絶縁ケースを使用しても高効率の放熱が可能となる効果が得られる。
【0025】
放熱板を金属、望ましくは銅とすることで、高熱伝導効率となり、放熱板はハンダ付けを可能とするメッキ処理をすることで、端子とともにハンダ付けが可能となる。これにより、放熱板と金属ベース基板の密着性が向上するほか、一次側端子と二次側端子のパターンとのハンダ付け工程と同時に製造可能となり製造性の向上も期待できる。
【0026】
放熱板は、コアの底面部に、放熱板形状相当の突起を設けることでコアと一体的に成型すれば部品点数を削減でき、低コスト化の効果が得られる。
【0027】
金属ベース基板には、放熱板と接するパットが設けられていることにより、ハンダ付けによる密着性の向上で、伝導放熱を効率よく行うことができる。
【0028】
本発明によれば、金属ベース基板に実装した絶縁トランスによるスイッチング電源装置において、コアと一次側端子間を短くできるため小型化が可能で、高い伝導放熱効果を得ることができる効果がある。

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】金属ベース基板に実装した本発明による絶縁トランスの実施形態を示した斜視図
【図2】図1の実施形態の正面図
【図3】図1の絶縁トランスをヒートシンクに搭載した実装状態を示した説明図
【図4】本発明による絶縁トランスのコア、放熱板と絶縁カバーの分解図
【図5】本発明による絶縁トランスの斜視図
【図6】本発明による絶縁トランスの底面図
【図7】本発明による絶縁トランスを実装する金属ベース基板を示した斜視図
【図8】放熱板と一体成型されたコアを取り出して示した説明図
【図9】絶縁トランスの絶縁距離を確保するための従来例の説明図
【図10】絶縁トランスを絶縁カバーで覆った従来例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明によるスイッチング電源装置の絶縁トランスの実施例を、図1〜図7を用いて以下に説明する。
【0031】
図1は、本発明の絶縁トランス11を金属ベース基板40に実装した実施形態の斜視図である。絶縁トランス11は、コア12、一次側端子18、二次側端子20、絶縁カバー16、一次側コイル22と二次側コイル24から構成されている。金属ベース基板40は、パターン32、絶縁層42と金属板44から構成されている。
【0032】
一次側コイル22は一次側端子18からコア12に一次巻線として巻回される。同様に二次側コイル24は、二次側端子20からコア12に二次巻線として巻回されている。なお、一次側コイル22は入力側、また二次側コイル22は出力側のコア12からの引き出し部分のみを示している。
【0033】
絶縁距離を確保するために、絶縁カバー16を設けている。絶縁カバー16は、コア12の底面部と、コア12と一次側端子18間を挟んで高い壁となるように構成した、ほぼL字形状をしている。コア12と一次側端子18との間の絶縁距離は、絶縁体である絶縁カバー16を介して配置されているので、空間距離に加えて絶縁カバー16の沿面に沿った沿面距離が加算された距離となり、コア12と一次側端子18の空間距離を長くしなくても絶縁距離は確保できる。
【0034】
一次側端子18と二次側端子20は、金属ベース基板40の金属板44に積層された絶縁層42上に配線されたパターン32とハンダ付けされて実装される。絶縁トランス11が金属ベース基板40に実装された状態でのコア12において発生した熱の金属板44への伝導放熱については、図2により説明する。
【0035】
図2は、本発明のスイッチング電源装置の正面図である。絶縁カバー16とコア12の底面部に接する部分には開口部26があり、コア12に接する放熱板14が開口部26から金属ベース基板40に接する構造となっている。金属ベース基板40での絶縁層42には、放熱板14と接するパット30を設けている。従って、コア12で発生した熱は、放熱板14、パット30そして絶縁層42を介して、金属板44に伝導放熱して、金属板44で熱拡散することになる。パット30は、配線となる銅線のランドパターンであり、放熱板14とはハンダ付けされる。ハンダ付けは、絶縁トランス11を金属ベース基板40に実装する際に、一次側端子18および二次側端子20とともにリフローによりハンダ付けを同時に行う。このようにハンダ付けすることにより、製造性を向上させることはもちろん、放熱板14と金属ベース基板40との密着性をよくして効率の良い放熱を実現させている。
【0036】
図3は、本発明の絶縁トランス11をヒートシンク46へ実装したときの正面図である。コア12で発生した熱は、放熱板14、パット30と絶縁層42を介して金属ベース基板40の金属板44に伝導放熱されるが、さらに放熱効果を高くするために、絶縁トランス11を、放熱用のヒートシンク46に搭載している。このコア12で発生した熱の伝導放熱の流れ48を矢印で示す。放熱板14、パット30から伝導した熱は金属板44で横方向に広く拡散し、ヒートシンク46全面に伝導して熱の放出効果を高めている。
【0037】
図4は、本発明による絶縁トランス11の、コイル関係を除いた分解図である。コイルはコアの中足に巻回されるので、コア12の上面部と底面部にはコイルが存在せず、平面となっている。この底面部の平面に当接して平板状の放熱板14を設ける。
【0038】
放熱板14の厚さは、コア12の底面部が接する絶縁カバー16の厚さ相当である。大きさは、コア12の底面部と同じか又はそれ以下とする。放熱板14はコアの熱を伝導放熱するために設けるものであり、材料は熱伝導率の高い金属とし、望ましくは銅とする。銅は低コストで、ハンダ付け可能であることから、図2に示した金属ベース基板40に形成されたパッド30へはハンダ付けにより良好な密着性を備えて製造できる。また、放熱板14は、他のハンダ付けできない材料を使用した場合は、放熱板14の表面にメッキ処理をしてハンダ付け可能とすることもできる。この場合の放熱板14への表面処理は、ニッケルメッキ、錫メッキ、ニッケルパラジュ−ムメッキ等がある。
【0039】
絶縁カバー16は、底板部分に開口部26を有し、コア12に設けられた放熱板14を通す。ただし、開口部26と1次側パターン32との間には安全規格で定められた絶縁距離を確保する必要がある。また、絶縁カバー16は、コア12の側面部には板状の絶縁壁16aを設けて、図1に示したコア12と一次側端子18との間に絶縁物を配置した構造としている。この絶縁壁16aは、コア12と図1に示した一次側端子18との絶縁距離が空間距離のみである場合に対して、絶縁壁16aに沿った沿面距離が加算されるので、コア12からの一次側端子18位置を短い距離で配置できるようになる。また、絶縁カバー16は、図1に示した一次側端子18と二次側端子20を支持する役割も果たしている。
【0040】
図5は絶縁トランス11の斜視図、図6は絶縁トランス11の底面部である。図5及び図6において、一次側コイル22と二次側コイル24を巻回したコア12と放熱板14に、一次側端子18と二次側端子20を取り付けた絶縁カバー16を組み立て、小型で放熱性の良好な絶縁トランス11とすることができる。絶縁カバー16底面の開口部26を通した放熱板14は、図1に示した金属ベース基板40のパットに当接する。
【0041】
図7は、金属ベース基板40の斜視図である。伝導放熱用の金属板44に絶縁層42が積層され、さらに絶縁層42には、図1に示した一次側端子18と二次側端子20をハンダ付けして絶縁トランス11を固定するための銅配線によるパターン32,34が設けられている。そして、図6に示した放熱板14を受けるパット30を設けている。パット30は、パターン32,34と同様に銅の配線パターンであり、図6に示した放熱板14に対応した大きさのランドである。絶縁層42は薄く、熱伝導特性に与える影響は少ない。金属板44は、軽量なアルミ等を使用している。
【0042】
図8は、放熱板14をコア12と一体に整形した場合のコア12の形状を示す図であり、図8(A)に底面を、図8(B)に側面を示している。コア12は、フェライト等を型で成型して製造するが、成型用の型を放熱板14に相当する形状を有する型とすることにより一体的に製造してもよい。これにより放熱板14を別の個別部品として用意する必要が無く、コスト面で有利であるばかりでなく、コア12と放熱板14との接続部がないため、熱伝導特性がよく放熱性に優れた構造とすることができる。
【0043】
なお、上記の実施形態にあっては、コアを二次側電位とみなして一次側端子との間に絶縁カバーを設けた例で説明したが、コアを一次側電位とみなして二次側端子との間に絶縁カバーを設けてもよい。
【0044】
以上、本発明について説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した限定は受けない。

【符号の説明】
【0045】
11:絶縁トランス
12:コア
14:放熱板
16:絶縁カバー
16a:絶縁壁
18:一次側端子
20:二次側端子
22:一次側コイル
24:二次側コイル
26:開口部
30:パット
32、34:パターン
40:金属ベース基板
42:絶縁層
44:金属板
46:ヒートシンク
48:伝導放熱の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次巻線が巻回されているコアと、
一次巻線の一次側端子と、
二次巻線の二次側端子と、
一次側端子とコアの間及びコア部底面部に接する面に開口部を有する絶縁カバーと、
前記コア底面部の前記絶縁カバー開口部に相対する位置に設けられた放熱板と、
を備えた絶縁トランス。

【請求項2】
一次巻線と二次巻線が巻回されているコアと、
一次巻線の一次側端子と、
二次巻線の二次側端子と、
二次側端子とコアの間及びコア部底面部に接する面に開口部を有する絶縁カバーと、
前記コア底面部の前記絶縁カバー開口部に相対する位置に設けられた放熱板と、
を備えた絶縁トランス。

【請求項3】
請求項1又は2記載の絶縁トランスにおいて、
前記放熱板は、金属であること、
を特徴とする絶縁トランス。

【請求項4】
請求項3記載の絶縁トランスにおいて、
前記放熱板は、銅であること、
を特徴とする絶縁トランス。

【請求項5】
請求項1又は2記載の絶縁トランスにおいて、
前記放熱板は、表面にハンダ付け可能なメッキ処理が施されていること、
を特徴とする絶縁トランス。

【請求項6】
請求項1又は2記載の絶縁トランスにおいて、
前記放熱板は、前記コアの一部を突起形状として前記コアと一体的に成型されていること、
を特徴とする絶縁トランス。

【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の絶縁トランスに於いて、更に絶縁カバーの外側に配置される金属ベース基板を有し、前記金属ベース基板はコア底面部に取り付けた放熱板と相対する位置に伝導放熱用のパットを設けたこと、を特徴とする絶縁トランス。
【請求項8】
請求項7記載の絶縁トランスに於いて、前記金属ベース基板上に実装される際に、金属ベース基板上のパッドとハンダ付けされて金属ベース基板に実装されること、を特徴とする絶縁トランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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