説明

スイッチ装置

【課題】端押しした場合でも接点動作が安定しており、しかも、内蔵スイッチのクリック感を向上するようにしたスイッチ装置を提供する。
【解決手段】操作ボタン10の押圧操作に応じてその押圧力を反転させてスイッチ5を操作するスイッチ装置1であって、絶縁性ケース2と、プリント基板3と、プリント基板3の後面側に取付けられたスイッチ5と、操作ボタン10を支持する操作ボタン用支持台11と、ケース2側に設けられた支点を中心として回動しスイッチのアクチュエータ5aを押圧操作する梃子状の可動片15と、可動片15と操作ボタン10との間に配置されケース2側に設けられ支点を中心として回動して可動片15に押圧力を加える駆動アーム20と有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ボタンの押圧操作に応じてその押圧力を反転させてスイッチを操作するように構成されたスイッチ装置に関し、特にその操作機構部付近の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の表示器付スイッチ装置の従来技術としては、図10及び図11に示すように、ケース内100にプリント基板101をケース100の前面とほぼ平行に配置してその一部をケース100の外に出すとともに、そのプリント基板101の前後面に表示器102および内蔵スイッチ103を取付けた構成とし、ケース100内の前後方向のスペースを効果的に利用し、スイッチの奥行きを小さくできるという効果を奏するものが知られている(特公平5−36888号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】特公平5−36888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の表示器付スイッチ装置では、以下の課題が生じる。
(1)操作ボタン104の面積が大きくなるにつれて、端押しした時に、操作ボタン104の傾きの影響で、可動片105の部分105aの操作量が小さくなり、内蔵スイッチ103の操作ができなくなる。また、その現象を改善するため、安易に可動片105の部分105aをX方向に拡げたとしても、可動片105への荷重がアンバランスになり、可動片105が傾いてしまい、内蔵スイッチ103へ充分に力が伝達しないため、接点動作が不安定になり易い。
【0005】
(2)操作ボタン104の操作により、内蔵スイッチ103の接点が反転するが、反転後も、操作ボタン104はある程度操作されるため、内蔵スイッチ103に過負荷が加わる。従って、可動片105に弾性を持たせて、内蔵スイッチ103への過負荷を軽減させているが、そのため、可動片105の弾性で内蔵スイッチ103のクリック感を吸収し、操作ボタン104に充分にクリック感が伝わっていない。
要約すれば、第1の課題としては、操作ボタン104が大きくなるにつれて、端押しした場合に、可動片105に安定した下方への力が加わらないため、接点動作が不安定となる。
また、第2の課題としては、内蔵スイッチ103に過負荷が加わると内蔵スイッチ103の寿命の低下を引き起こすことから、内蔵スイッチ103に余計な負荷が加わらないように可動片105に弾性を持たせている。このため、その可動片105の弾性が内蔵スイッチ103のクリック感を吸収し、操作ボタン104に充分なクリック感が伝達されない。
【0006】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、端押しした場合でも接点動作が安定しており、しかも、内蔵スイッチのクリック感を向上するようにしたスイッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、ケースと、ケース内にあって前面とほぼ平行に配設された取付板と、取付板の後面側に取付けられたスイッチと、ケースの前面部内に押圧方向に移動可能に嵌め込まれた操作ボタンとを備え、操作ボタンの押圧操作に応じてその押圧力を反転させて前記スイッチを操作するスイッチ装置であって、前記ケースの底部内に配置され、ケース側に設けられた支点を中心として回動し、前記スイッチのアクチュエータを押圧操作する梃子状の可動片と、前記可動片と前記操作ボタンとの間に配置され、操作ボタンの押圧操作により、ケース側に設けられ支点を中心として前記可動片の回動軸と平行な軸回りに回動して、前記可動片に押圧力を加えて可動片を回動駆動させる駆動アームと、を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成により、操作ボタンが押圧操作されると、駆動アームが回動し、可動片に押圧力を加える。従って、操作ボタンが端押しされた場合でも、駆動アームが大きく傾かず、駆動アームの回動による可動片の操作量に影響をほとんど与えることがない。その結果、安定した接点動作が得られることになる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のスイッチ装置であって、前記操作ボタンは操作ボタン用支持台によって支持され、この操作ボタン用支持台は前記ケース内に操作ボタンの押圧方向に移動可能に嵌め込まれており、操作ボタンの押圧力を、操作ボタン用支持台を介して前記駆動アームに伝達するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
上記の如く、操作ボタンの押圧力を、操作ボタン用支持台を介して駆動アームに伝達するように構成することによっても、請求項1記載の発明と同様な作用・効果を奏する。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のスイッチ装置であって、前記取付板はプリント基板であり、このプリント基板の前面側には表示器が取付けられているとともに、このプリント基板の一部はケースの外に出されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、表示器付スイッチ装置に適用することが可能となる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のスイッチ装置であって、前記ケースには、スイッチへの過負荷を防止する過負荷防止用リブが設けられており、前記可動片は剛体とされていることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、スイッチのクリック感を向上することが可能となる。なお、本願明細書において、用語「剛体」とは、可動片の厚みが0.5mm以上で縦弾性係数が100GPa以上の場合を意味するものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)端押し時でも、駆動アームが若干傾くのみで大きく傾かない。そのため、可動片の操作量にほとんど影響を与えないため、接点動作が安定する。
【0016】
(2)スイッチへの過負荷防止用リブを設けることで、可動片を剛体に近づけることができ、可動片がスイッチのクリック感を吸収する量を低減でき、スイッチのクリック感を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るスイッチ装置を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態)
図1は実施の形態に係るスイッチ装置の平面図であり、図2は図1の矢視A−A断面図であり、図3は図1の矢視B−B断面図であり、図4は操作ボタンを取り除いた状態の平面図であり、図5は図4においてプリント基板を取り除いた状態の平面図であり、図6は図5において部分的に操作ボタン支持台を取り除いた状態の平面図であり、図7は図5の矢視C−C断面図であり、図8はスイッチ装置の分解斜視図である。本実施の形態では、本発明に係るスイッチ装置として、表示器付スイッチ装置を一例として挙げて説明する。
【0019】
表示器付ボタンスイッチ装置1は、前面側(図2の上側)が開口した絶縁性のケース2内に、プリント基板3をケース2に前面にほぼ平行に配置して、その一部をケース2の一側部から外に出して外部接続用に供するようにしている。そして、ケース2内のプリント基板3の前面側に例えばLED表示器等の表示器4を取り付けており、同プリント基板3の後面側に表示器4と背中合わせに例えばタクトスイッチのようなスイッチ5を取り付けてそのアクチュエータ5aを後方側に出している。そして、表示器4およびスイッチ5は、プリント基板3に半田付けされている。
【0020】
ケース2の前面部内には、矢印X(図2参照)のように押圧方向に移動可能に、透光性の操作ボタン10が嵌め込まれている。この操作ボタン10は、透明でも半透明でもよく、また着色していてもよい。この操作ボタン10の下方には枠状の操作ボタン用支持台11が配置されており、この操作ボタン用支持台11よって操作ボタン10が支持されている。この操作ボタン用支持台11の外周面の4隅には、図8に明らかに示すように、上下方向に延びる案内溝12が形成されており、ケース2の内周面に形成されている突起13が案内溝12に嵌り込んでおり、支持台11がケース2に案内されて上下方向に移動可能となっている。従って、操作ボタン10は、操作ボタン用支持台11を介してケース2に対して押圧方向に移動可能に支持された構造となっている。
【0021】
また、ケース2内の底部には、2枚の折れ曲がった梃子状の一対の可動片15が図2の左右方向に並設されている。可動片15の両側にはそれぞれ支持突部15a,15bが形成されている。支持突部15aと支持突部15bとは、プリント基板3に平行な一直線上に位置しており、この支持突部15a,15bはケース2の内面に形成されている支持嵌合部2a,2bに嵌り込んでおり、従って、可動片15は支持嵌合部2a,2bを支点(以下、支点1と称する。)として回動可能となっている。従って、可動片15は、その長辺部15cを力点とし、支持嵌合部2a,2bを支点とし、短辺側の端部15dを作用点とする梃子として機能するようになっている。
【0022】
なお、本実施の形態における可動片15は、燐青銅から成り、厚みが約0.8mmに設定されている。これにより、可動片15は、剛体に近いものとして機能する。この結果、後述するように、クリック感を向上することができる。即ち、上記したように、従来の可動片は、燐青銅から成り、その厚みが約0.15〜0.20mmとされ、弾性を有していたが、これに起因してクリック感が吸収されてしまい、クリック感が伝達されないという課題があった。そこで、本実施の形態では、可動片15の厚みを約0.8mmとすることにより、可動片15を剛体に近づけ、それによりクリック感を向上するようにしている。なお、可動片15を剛体に近づけた場合は、スイッチ5に余計な負荷が加わるおそれがあるが、それを解決するため、過負荷防止用リブ16がケース2底面に形成された凹部40の側壁に設けられている。この過負荷防止用リブ16の設置位置は、アクチュエータ5aのフルストローク押し込まれた位置に対応する位置(図9(1)の仮想線41で示す位置)に設けてもよく、また、アクチュエータ5aのフルストロークに許容押込量を加えた位置に対応する位置(図9(2)の仮想線42で示す位置)に設けるようにしてもよい。
【0023】
また、操作ボタン用支持台11と可動片15との間には、一対の駆動アーム20が配置されている。この駆動アーム20は、可動片15の長辺部の側方に位置する一対の側部20aと、可動片15の長辺部を縦方向(図2の上下方向)に跨ぎ側部20a間を連結する連結部20bとから構成されている。そして、側部20aの端部20a1はケース2の内面に形成されている支持嵌合部2c,2dに嵌り込んでいる。これにより、駆動アーム20は、支持嵌合部2c,2dを支点(以下、支点2と称する。)として回動可能となっている。なお、支持嵌合部2c,2dを結ぶ駆動アーム20の回転軸は、支持嵌合部2a,2bを結ぶ可動片15の回転軸と平行である。また、駆動アーム20の連結部20bの両端20A(図8参照)は、操作ボタン用支持台11の下面と当接している。
【0024】
このような構成により、操作ボタン10が押されると、押圧力が操作ボタン用支持台11を介して駆動アーム20の連結部20bの両端20Aに伝達され、これにより、駆動アーム20が回動して連結部が可動片15の長辺部15cを押し、これにより、梃子の原理により短辺部15dが起き上がり、スイッチ5のアクチュエータ5aを押す。即ち、操作ボタン10の押圧操作に応じて、その押圧力を押圧方向とは逆方向に反転させてスイッチのアクチュエータ5aを操作するようになっている。
【0025】
次いで上記構成のスイッチ装置の動作について説明する。先ず、押ボタン10を押圧操作すると、その押圧力が押ボタン用部支持台11を介して駆動アーム20の連結部20bの両端20Aに伝達される。これにより、駆動アーム20が支点2を中心にして回動する。そうすると、駆動アーム20の連結部20bの中央部が可動片15の長辺部15cを押す。これにより、長辺部15cの広い領域に亘って押圧力が作用して、可動片15は傾くことなく、支点1を中心にして回動する。この可動片15の回動によって、梃子の原理により、可動片15の短辺部15dが起き上がって、スイッチ5のアクチュエータ5aを押す。
【0026】
次いで、可動片15の短辺部15dが過負荷防止用リブ16に接触して、アクチュエータ5aの押し込みが停止する。即ち、それ以上アクチュエータ5aに負荷が作用しない。このとき、可動片15を剛体に近くしているため、弾性の可動片15を用いることによるスイッチ5のクリック感を吸収するという課題を解決することができる。なお、過負荷防止用リブ16によって、スイッチ5に過負荷が作用せず、スイッチ5の寿命の低下を引き起こすことが防がれている。
【0027】
このようにして、操作ボタン10の押圧力を駆動アーム20を介して可動片15に伝達するので、操作ボタン10を端押しした場合でも、駆動アーム20の傾きは僅かであり、従って可動片15に安定した垂直方向の力が加わるので、常に安定した接点動作が得られる。従って、操作ボタン10の面積が大きくなった場合において、端押しが生じても、常に安定した接点動作が得られるスイッチ装置が実現できることになる。
【0028】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、表示器付スイッチ装置について説明したけれども、本発明はこれに限定されるものではなく、その他のスイッチ装置に広く適用できる。
【0029】
(2)上記実施の形態では、可動片15の厚みを大きくして剛体に近づけるようにしたけれども、可動片15の材質を縦弾性係数の大きい材質に変えるようにしてもよく、また、可動片15の厚みと材質の両者を変えて、剛体に近づけるようにしてもよい。なお、本願明細書において、用語「剛体」とは、上記したように、可動片の厚みが0.5mm以上で縦弾性係数が100GPa以上の場合を意味するものであり、従って、この条件に含まれる厚み及び縦弾性係数を備えた可動片15は用いることができる。例えば、燐青銅から成る可動片15の場合(燐青銅の縦弾性係数は110GPaである)、その厚みが上記実施の形態では約0.8mmとされたけれども、これに限定されるものではなく、0.5mm以上であればよい。また、可動片の材質を燐青銅以外とする場合には、縦弾性係数が100GPa以上の材質を使用し、且つ、その厚みを0.5mm以上とすればよい。
【0030】
(3)上記実施の形態では、操作ボタン10の押圧力を、操作ボタン用支持台11を介して駆動アーム20に伝達するように構成されていたけれども、操作ボタン用支持台11を省略し、操作ボタン10の押圧力を直接的に駆動アーム20に伝達するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、表示器付スイッチ装置等に好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係るスイッチ装置の平面図である。
【図2】図1の矢視A−A断面図である。
【図3】図1の矢視B−B断面図である。
【図4】実施の形態に係るスイッチ装置において操作ボタンを取り除いた状態の平面図である。
【図5】図4においてプリント基板を取り除いた状態の平面図である。
【図6】図5において操作ボタン支持台を取り除いた状態の平面図である。
【図7】図5の矢視C−C断面図である。
【図8】実施の形態に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
【図9】過負荷防止用リブの具体的な設置位置を示す図である。
【図10】従来例の断面図である。
【図11】従来例の内部構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1:スイッチ装置 2:ケース
3:プリント基板 4:表示器
5:スイッチ 5a:アクチュエータ
10:操作ボタン 11:操作ボタン用支持台
15:可動片 16:過負荷防止用リブ
20:駆動アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、ケース内にあって前面とほぼ平行に配設された取付板と、取付板の後面側に取付けられたスイッチと、ケースの前面部内に押圧方向に移動可能に嵌め込まれた操作ボタンとを備え、操作ボタンの押圧操作に応じてその押圧力を反転させて前記スイッチを操作するスイッチ装置であって、
前記ケースの底部内に配置され、ケース側に設けられた支点を中心として回動し、前記スイッチのアクチュエータを押圧操作する梃子状の可動片と、
前記可動片と前記操作ボタンとの間に配置され、操作ボタンの押圧操作により、ケース側に設けられた支点を中心として前記可動片の回動軸と平行な軸回りに回動して、前記可動片に押圧力を加えて可動片を回動駆動させる駆動アームと、
を有することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記操作ボタンは操作ボタン用支持台によって支持され、この操作ボタン用支持台は前記ケース内に操作ボタンの押圧方向に移動可能に嵌め込まれており、操作ボタンの押圧力を、操作ボタン用支持台を介して前記駆動アームに伝達するように構成されている、請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記取付板はプリント基板であり、このプリント基板の前面側には表示器が取付けられているとともに、このプリント基板の一部はケースの外に出されている、請求項1又は2記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記ケースには、スイッチへの過負荷を防止する過負荷防止用リブが設けられており、前記可動片は剛体とされている、請求項1〜3の何れかに記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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