説明

スクリーンマスク

【課題】印刷ずれが極めて小さく、かつ微細な画像パターンを精度良く印刷することが可能なスクリーンマスクを提供する。
【解決手段】スクリーンマスク1では、アルミニウムからなる金属枠2に、テトロンメッシュ3とステンレスメッシュ4とが張られ、これらは接着部5で接着されている。テトロンメッシュ3にはその中央部に切り欠き部6が設けられ、この切り欠き部6を覆うように、その上方にステンレスメッシュ4が配置されている。ステンレスメッシュ4上にサスペンドメタルマスク7または樹脂層20が形成されており、サスペンドメタルマスク7に複数の中ブロック孔8が設けられ、中ブロック孔8にはエマルジョンレジスト9が塗布されている。1つの中ブロック孔8には数列の小ブロック10が形成され、エマルジョンレジスト9にパターニングがなされて、所定の微細画像パターンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷に用いられるスクリーンマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷の用途は近年大きく広がっており、特に電子部品の分野においては高精度で印刷耐久性の高い印刷技術が求められるようになっている。
スクリーンマスクはその用途に応じて材質の異なるマスクが使用されている。このうち、微細画像形成部をエマルジョンマスクで構成したスクリーンマスクの一例が、特許文献1に記載されている。エマルジョンマスクで構成すると、径が0.1mm程の微細な浮島を形成しやすく、製造工数を低減できるが、印刷耐久性が劣り、微細パターンの印刷ずれが起きやすいという欠点がある。一方、微細画像形成部をサスペンドメタルマスクで構成したスクリーンマスクの一例が、特許文献2に記載されている。サスペンドメタルマスクで構成すると、印刷耐久性に優れ、微細パターンの印刷ずれが起きにくいが、微細な浮島を形成しにくく、製造工数が増えるという欠点がある。
【0003】
また、微細画像形成部を囲むように接着剤を硬化させてなる補強部を形成したスクリーンマスクの一例が、特許文献3に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−35056号公報
【特許文献2】特開2005−125547号公報
【特許文献3】特開平11−170719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3に記載のものでは、画像の周囲が変形することによる画像の精度が低下することを防止することは可能であるが、この補強部は接着剤を硬化させたものであるため、この部分にパターニングを施すことはできず、画像形成の自由度には欠ける。また、このような接着剤の塗布は通常ヘラ塗りかハケ塗りで行われるため、膜厚を均等にすることができない。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたもので、印刷ずれが極めて小さく、かつ微細な画像パターンを精度良く印刷することが可能なスクリーンマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明のスクリーンマスクは、金属枠にテトロンメッシュとステンレスメッシュとが張られ、ステンレスメッシュ上にサスペンドメタルマスクが形成されたスクリーンマスクであって、複数の中ブロック孔がその周囲をサスペンドメタルマスクで囲まれるように設けられ、前記中ブロック孔にはエマルジョンレジストが塗布されて数列の小ブロックが形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、複数の中ブロック孔の周囲がサスペンドメタルマスクで囲まれた構造となるため、微細画像生成領域の変形が小さく、印刷ずれが極めて小さい。また、中ブロック孔にはエマルジョンレジストが塗布されているため、エマルジョンレジストの特質を生かして微細な画像パターンを精度良く印刷することが可能となる。
【0009】
本発明においては、前記サスペンドメタルマスクの印刷面側にエマルジョンが塗布されていることを特徴とする。
サスペンドメタルマスクの印刷面側にエマルジョンが塗布されていることにより、被印刷物との接触が軟らかくなり、印刷時のにじみを防止でき、印刷ペーストの版離れが向上する。
【0010】
本発明のスクリーンマスクは、金属枠にテトロンメッシュとステンレスメッシュとが張られ、ステンレスメッシュ上にパターニング可能な樹脂層が形成されたスクリーンマスクであって、複数の中ブロック孔がその周囲を樹脂層で囲まれるように設けられ、前記中ブロック孔にはエマルジョンレジストが塗布されて数列の小ブロックが形成され、エマルジョンレジストより高い硬度の樹脂によって前記樹脂層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、複数の中ブロック孔の周囲がエマルジョンレジストより高硬度の樹脂層で囲まれた構造となるため、微細画像生成領域の変形が小さく、印刷ずれが極めて小さい。また、中ブロック孔にはエマルジョンレジストが塗布されているため、エマルジョンレジストの特質を生かして微細な画像パターンを精度良く印刷することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、印刷ずれが極めて小さく、印刷耐久性に富み、かつ微細な画像パターンを精度良く印刷することが可能なスクリーンマスクを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係るスクリーンマスクの構成を示す。図1(a)はスクリーンマスクの平面図、同図(c)は(a)のA−A断面図、同図(b)は(c)の一部詳細図である。
【0014】
スクリーンマスク1では、アルミニウムからなる金属枠2に、テトロンメッシュ3とステンレスメッシュ4とが張られ、これらは接着部5で接着されている。テトロンメッシュ3にはその中央部に切り欠き部6が設けられ、この切り欠き部6を覆うように、その上方にステンレスメッシュ4が配置されている。このステンレスメッシュ4は、図1(b)に示すように、横糸4aと縦糸4bとが互いに垂直に交叉するような構造となっている。
【0015】
ステンレスメッシュ4上にサスペンドメタルマスク7が形成されており、サスペンドメタルマスク7に複数の中ブロック孔8が設けられ、各々の中ブロック孔8はその周囲をサスペンドメタルマスク7で囲まれる構造となっている。中ブロック孔8にはエマルジョンレジスト9が塗布されている。1つの中ブロック孔8には数列の小ブロック10が形成され、エマルジョンレジスト9にパターニングがなされて、所定の微細画像パターンが形成される。なお、サスペンドメタルマスク7の下方にもエマルジョンレジスト9を塗布してもよい。
【0016】
また、サスペンドメタルマスク7が形成される領域に、サスペンドメタルマスク7に替えて樹脂層20を形成してもよい。すなわち、この場合には、樹脂層20に複数の中ブロック孔8が設けられ、各々の中ブロック孔8はその周囲を樹脂層20で囲まれる構造となっている。中ブロック孔8にはエマルジョンレジスト9が塗布されている。1つの中ブロック孔8には数列の小ブロック10が形成され、エマルジョンレジスト9にパターニングがなされて、所定の画像パターンが形成される。この樹脂層20は、エマルジョンレジスト9よりも高い硬度の樹脂であり、かつパターニングが可能な樹脂であることが必要である。具体的には、樹脂の種類として、ウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、その他のアクリレート等の樹脂を用いることができる。
【0017】
このスクリーンマスクについて、微細画像パターンにかかる印圧による印刷ずれが少なくなる理由について、図2に基づいて説明する。図2(a)が従来のものであり、図2(b)が本発明のものである。
図2(a)に示すスクリーンマスクでは、アルミニウムからなる金属枠2に、テトロンメッシュ3とステンレスメッシュ4とが張られ、これらを接着部5で接着しており、ステンレスメッシュ4上に4つの中ブロック領域8aが形成され、これにエマルジョンレジスト9が塗布されている。
【0018】
このスクリーンマスクでは、ステンレスメッシュ4上に4つの中ブロック領域8aが形成されているため、印刷回数を重ねるたびにステンレスメッシュ4が伸びて変形しやすい。ステンレスメッシュ4の対角線長が42.43mmであるのに対し、エマルジョンレジスト9が塗布された領域である中ブロック領域8aの対角線長は11.31mmであり、これを1とすると、ステンレスメッシュ4の対角線長は中ブロック領域8aの対角線長の約3.75倍となる。従って、微細画像形成部の変位量は、その二乗の約14倍となる。印刷ずれはこの変位量によって決まるため、大きな印刷ずれが発生しやすい。
【0019】
これに対して、図2(b)に示す本発明のスクリーンマスクでは、中ブロック領域8aを取り囲む領域においては、ステンレスメッシュ4はニッケルメッキによってサスペンドメタルマスク7または樹脂層20よって固定されているため、中ブロック領域8aの対角線長である11.31mmが変位の基準となり、これを1とすると、微細画像形成部の変位量は、その二乗の約1倍となる。従って、印刷ずれの発生を極めて小さくすることができる。
【0020】
しかも、中ブロック領域8a内にはエマルジョンレジスト9が塗布されてパターニングがなされるため、エマルジョンレジスト9の特質を生かして、微細な浮島についても精度良く印刷することができる。この中ブロックの領域をもサスペンドメタルマスク7を用いて構成すると、メッキの精度の限界から、径が0.5mm以下の微細な浮島を印刷することは不可能であるが、エマルジョンレジスト9を用いているため、径が0.1mm程度の浮島でも精度良く印刷することができる。
【0021】
このように、本発明のスクリーンマスクにおいては、微細な画像パターンの印刷を精度良く行うことができるとともに、スクリーンメッシュの位置ずれによる印刷ずれを防止できる点に大きな特徴がある。この点は、サスペンドメタルマスク7に替えて、エマルジョンレジスト9よりも高い硬度を有し、パターニングが可能な樹脂を用いて樹脂層20を形成する場合についても同様である。
【0022】
また、特許文献3に記載のものでは、1つの画像形成部の周囲を補強剤で固めた構造となっているのに対し、本発明のスクリーンマスクでは、画像形成部となる中ブロック領域が複数形成され、各画像形成部の周囲がニッケルメッキまたは硬い樹脂によって固定される構造となっているため、位置ずれ防止の効果は、特許文献3に記載のものに比べて著しく大きい。さらに、特許文献3に記載のものでは、補強剤として紫外線硬化型の樹脂が用いられており、膜厚の制御が難しく、パターニングが不可能であるのに対して、本発明のスクリーンマスクでは、この領域でもパターニングが可能である点で有利である。
【0023】
図3に基づいて、画像パターン形成の手順について説明する。
図3(a)では、横糸4aと縦糸4bとからなるステンレスメッシュ4上に、予め中ブロックパターンが作成されたメタルマスク11を形成しており、ステンレスメッシュ4とメタルマスク11とをニッケルメッキ14によって接合する。メタルマスク11に複数の中ブロック孔8を設け、中ブロック孔8の小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布する。その後、エマルジョンレジスト9に小ブロックパターンを焼き付け、現像してパターン形成が完了する。
【0024】
あるいは、中ブロックパターンを作成していないメタルマスク11を形成し、ステンレスメッシュ4とメタルマスク11とをニッケルメッキ14によって接合してもよい。この場合には、中ブロックパターンをメタルマスク11にエッチング加工した後、中ブロック孔8の小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布し、エマルジョンレジスト9に小ブロックパターンを焼き付け、現像してパターン形成が完了する。
【0025】
図3(b)では、横糸4aと縦糸4bとからなるステンレスメッシュ4上に、電鋳によって中ブロックパターンが作成されためっき層12を形成する。その後、複数の中ブロック孔8の小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布し、エマルジョンレジスト9に小ブロックパターンを焼き付け、現像してパターン形成が完了する。
あるいは、中ブロックパターンを作成せずにめっき層12を電鋳にて形成してもよい。この場合には、めっき層12に対してエッチング加工により中ブロックパターンを作成した後、小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布し、エマルジョンレジスト9に小ブロックパターンを焼き付け、現像してパターン形成が完了する。
【0026】
図3(c)では、横糸4aと縦糸4bとからなるステンレスメッシュ4上に、予め中ブロックパターンが作成されたメタルマスク11を形成し、ステンレスメッシュ4とメタルマスク11とをニッケルメッキ14によって接合する。メタルマスク11に複数の中ブロック孔8を設け、中ブロック孔8の小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布すると共に、メタルマスク11の印刷面側にもエマルジョン13を塗布する。その後、エマルジョンレジスト9に小ブロックパターンを焼き付け、現像してパターン形成が完了する。
【0027】
あるいは、中ブロックパターンを作成していないメタルマスク11を形成し、ステンレスメッシュ4とメタルマスク11とをニッケルメッキ14によって接合した後、中ブロックパターンをメタルマスク11にエッチング加工し、中ブロック孔8の小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布すると共に、メタルマスク11の印刷面側にもエマルジョン13を塗布してもよい。
【0028】
図3(d)では、横糸4aと縦糸4bとからなるステンレスメッシュ4上に、電鋳によって中ブロックパターンが作成されためっき層12を形成する。その後、複数の中ブロック孔8の小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布すると共に、めっき層12の印刷面側にもエマルジョン13を塗布する。エマルジョンレジスト9に小ブロックパターンを焼き付け、現像してパターン形成が完了する。
【0029】
あるいは、中ブロックパターンを作成せずにめっき層12を電鋳にて形成してもよい。この場合には、めっき層12に対してエッチング加工により中ブロックパターンを作成した後、小ブロックパターン生成予定部にエマルジョンレジスト9を塗布すると共に、めっき層12の印刷面側にもエマルジョン13を塗布する。エマルジョンレジスト9に小ブロックパターンを焼き付け、現像してパターン形成が完了する。
【0030】
このように、メタルマスク11またはめっき層12は、予めパターンが作成されたものを用いても良く、あるいはメタルマスク11またはめっき層12の形成後に、必要に応じてパターンを作成することもできるため、パターン作成の自由度が増し、利便性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、印刷ずれが極めて小さく、印刷耐久性に富み、かつ微細な画像パターンを精度良く印刷することが可能なスクリーンマスクとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るスクリーンマスクの構成を示す図である。
【図2】印圧による印刷ずれを説明するための図である。
【図3】画像パターン形成の手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 スクリーンマスク
2 金属枠
3 テトロンメッシュ
4 ステンレスメッシュ
4a 横糸
4b 縦糸
5 接着部
6 切り欠き部
7 サスペンドメタルマスク
8 中ブロック孔
8a 中ブロック領域
9 エマルジョンレジスト
10 小ブロック
11 メタルマスク
12 めっき層
13 エマルジョン
14 ニッケルメッキ
20 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属枠にテトロンメッシュとステンレスメッシュとが張られ、ステンレスメッシュ上にサスペンドメタルマスクが形成されたスクリーンマスクであって、複数の中ブロック孔がその周囲をサスペンドメタルマスクで囲まれるように設けられ、前記中ブロック孔にはエマルジョンレジストが塗布されて数列の小ブロックが形成されていることを特徴とするスクリーンマスク。
【請求項2】
前記サスペンドメタルマスクの印刷面側にエマルジョンが塗布されていることを特徴とする請求項1記載のスクリーンマスク。
【請求項3】
金属枠にテトロンメッシュとステンレスメッシュとが張られ、ステンレスメッシュ上にパターニング可能な樹脂層が形成されたスクリーンマスクであって、複数の中ブロック孔がその周囲を樹脂層で囲まれるように設けられ、前記中ブロック孔にはエマルジョンレジストが塗布されて数列の小ブロックが形成され、エマルジョンレジストより高い硬度の樹脂によって前記樹脂層が形成されていることを特徴とするスクリーンマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−245560(P2007−245560A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72639(P2006−72639)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(591245141)株式会社渕上ミクロ (26)
【Fターム(参考)】