説明

スタッカブルびん

【課題】スタッカブルびん肩部の段差を不要にして、デザイン上の制約を開放すると共に、単なる回り止め機構に留まらず、自動位置合わせ機能を併せ持たせる。
【解決手段】びん底部外周部に、周方向に沿って高さが変化し、正面形状が弓状をなす底弓状部を形成し、びん肩部に、前記底弓状部に対応する弓状の正面形状をなす肩弓状部を形成し、このびんを積み重ねたときに、前記肩弓状部の上に前記底弓状部が載置されて位置決めされることで前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスびん、合成樹脂製びん、金属製びんなどのびんで、特に、積み重ね可能なスタッカブルびんに関する。
【背景技術】
【0002】
スタッカブルびんは、異なる内容部を収納する複数のびんを積み重ねて販売、展示できること、展示するスペースを立体的にできること、デザイン的なおもしろさがあることなどのメリットがあり、例えば下記特許文献に開示されている。
【0003】
このようなスタッカブルびんは、びんを積み重ねたときの安定性を得るため、びんの底部中央に凹陥部を形成し、該凹陥部にびん上部(口部ないし肩部)を嵌め込んで、積み重ねることが行われている。
例えば、このようなびんを店頭に積み重ねた状態で陳列する際、ラベルが一定方向に並べにくく、ばらばらに並べられる傾向があり、消費者へのアピール力が低下するという問題がある。ばらばら方向のラベルを一定方向に並べるには、びんを積み重ねたのち、回して位置決めする必要があり、労力を必要とする。また、一旦、正しく位置決めしても次第に方向がずれる欠点もある。
【0004】
このような問題を解決するため、下記特許文献1,2には、積み重ねたびんが回転しないような回り止め機構が開示されている。
これは、びん肩部に多角形状などの段差や三日月状の凸部を形成し、びん底部中央の凹陥部に該段差や凸部が填り込むことによって、上のびんが下のびんに対して回転することが防止されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−100729号公報
【特許文献2】特開2000−153841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の回り止め機構は、最も目立つびん肩部に段差や凸部を形成することが不可欠であるので、デザイン上の制約が大きいという問題がある。
本発明は、びん肩部の段差を不要にして、デザイン上の制約を開放すると共に、単なる回り止め機構に留まらず、自動位置合わせ機能を併せ持たせることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1〕
本発明は、びん底部中央部に凹陥部を有し、びん底部外周部に周方向に沿って高さが変化し、正面形状が弓状をなす底弓状部を有し、びん周壁上部にあって上方の口部に向かって縮径する肩部に、前記底弓状部に対応する弓状の正面形状をなす肩弓状部を有し、このびんを積み重ねたときに、前記肩弓状部の上に前記底弓状部が載置されて位置決めされることを特徴とするスタッカブルびんである。
【0008】
肩弓状部の上に底弓状部が凹凸はまり込み状態で載置されるので、肩弓状部と底弓状部が所定の位置で落ち着き、回り止めとなる。
また、多少異なる位置(正規の位置より多少回転させた状態)でびんを積み重ねても、肩弓状部の斜面上で底弓状部が滑って凹凸はまり込みの位置まで回転し、上のびんが所定の位置になるように回転するので、ほぼ自動的に位置合わせがなされる。
【0009】
〔請求項2〕
また本発明は、前記底弓状部及び肩弓状部の周方向高低差が0.3〜3mmである請求項1に記載のスタッカブルびんである。
【0010】
底弓状部及び肩弓状部の周方向高低差Δhが0.3mmに満たないと、びんの回り止め機能及び自動位置合わせ機能が不十分になる。底弓状部及び肩弓状部の周方向高低差は0.3〜3mmで十分であり、3mm以下にすれば底部及び肩部の正面形状が弓形であることが殆ど目立たず、意匠に与える影響が小さくなる。
【0011】
〔請求項3〕
また本発明は、びん底部外面中央部に凹陥部を有し、びん底部外周部に周方向に沿って高さが変化する波状に形成された底波状部を有し、びん周壁上部にあって上方の口部に向かって縮径する肩部に前記底波状部に対応する波形形状をなす肩波状部を有し、このびんを積み重ねたときに、前記肩波状部の上に前記底波状部が載置されて位置決めされることを特徴とするスタッカブルびんである。
【0012】
びん底部及び肩部の形状を波状に形成しても、前記請求項1の場合と同様の作用効果がある。底波状部及び肩波状部は、底部又は肩部の全周にあってもよいし一部であってもよい。
【0013】
〔請求項4〕
また本発明は、前記底波状部及び肩波状部の周方向高低差が0.3〜3mmである請求項3に記載のスタッカブルびんである。
【0014】
底波状部及び肩波状部の周方向高低差が0.3mmに満たないと、びんの回り止め機能及び自動位置合わせ機能が不十分になる。底波状部及び肩波状部の周方向高低差は0.3〜3mmで十分であり、3mm以下にすれば底部及び肩部の正面形状が波形であることが殆ど目立たず、意匠に与える影響が小さくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスタッカブルびんは、肩部に段差や凸部を必要としないので、このようなデザイン上の制約がなく、デザインの自由度が飛躍的に高まる。また、本発明における回り止め機構は、単なる回り止め機構に留まらず、正規の位置より多少回転させた状態でびんを積み重ねても、肩弓状部(又は肩波状部)の斜面上で底弓状部(又は底波状部)が滑り、上のびんが所定の位置になるように回転するので、ほぼ自動的に位置合わせが行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】びん1の正面図である。
【図2】びん1の平面図である。
【図3】びん1の底面図である。
【図4】びん1の中央縦断面図である。
【図5】びん1を3段積み重ねた正面図である。
【図6】びん1を2段積み重ねた中央縦断面図である。
【図7】びん1aの正面図である。
【図8】びん1aの平面図である。
【図9】びん1aの底面図である。
【図10】びん1aを2段積み重ねた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜6は実施例のスタッカブルびん1に関し、図1は正面図、図2は平面図、図3は底面図、図4は中央縦断面図、図5は3段積み重ねた状態の正面図、図6は2段積み重ねた状態の中央縦断面図である。
【0018】
びん1はガラス製で、正方形に丸みをもたせたような平面形状を有している。図3,4に示すように、底部3の中央部には底面が内側に大きく凹んだ凹陥部33が形成され、外周部には、周方向に沿って高さが変化し、正面形状が弓状をなす底弓状部31が4カ所形成されている。図3において、外周部の網掛けで表示した部分が底弓状部31である。本実施例の場合、底弓状部31は中央部が最も低い下から見て凸の弓形であるが、その逆の下から見て凹の弓形でもよい。底部3の外周部にはナーリング(微小突起)34が全周に亘って形成されている。図3ではナーリングを3本の破線で模式的に図示し、他の図面では省略している。
【0019】
びん1の周壁2は胴部においてほぼ垂直であり、上部は上端の口部5に向かって縮径するテーパ状の肩部4となっている。肩部4には、前記底弓状部31に対応する弓状の正面形状を有する肩弓状部41が形成されている。図2において、網掛けで表示した部分が肩弓状部41である。肩弓状部41は上から見て凹の弓形で、その形状は実質的に(製造誤差を考慮しなければ)底弓状部31の形状と同じであり、したがって、図5,6のようにびん1を積み重ねると、肩弓状部41の上に底弓状部31が載置され、重なり合う。本実施例の場合は底面にナーリング34が形成されているので、底弓状部31はナーリングを介して肩弓状部41の上に載置されるが、ナーリングが無い場合は肩弓状部41と底弓状部31は直接接触する。
びん1上端の口部外周にはネジ山が形成され、キャップ6が螺着されるが、図面ではネジ山を省略して表している。
【0020】
図5,6に示すように、びん1を複数段積み重ねると、びん1の上部(肩弓状部41よりも上の部分)は底部の凹陥部33の中に入り込み、肩弓状部41の上に底弓状部31が載置され、重なり合う。このとき、肩弓状部41と底弓状部31は凹凸のはめ合い状態となっているので、びんの回転が防止される(回り止め機能)。
【0021】
また、正規の位置より多少回転させた状態でびんを積み重ねても、肩弓状部41の斜面上で底弓状部が滑り、肩弓状部41と底弓状部31が重なり合うように、上のびんが所定の位置まで回転するので、ほぼ自動的に位置合わせが行われる(自動位置合わせ機能)。
【0022】
図7〜10は実施例のスタッカブルびん1aに関し、図7は正面図、図8は平面図、図9は底面図、図10は2段積み重ねた状態の正面図である。
【0023】
びん1aはガラスびんで、平面形状は円形の丸びんである。図9に示すように、底部3の中央部には凹陥部33が形成され、外周部は、周方向に沿って高さが波状に変化する底波状部32になっている。図9において、外周部の網掛けで表示した部分が底波状部32で、正面から見て正弦波形状の波が全周に亘って形成されている。薄い網掛け部分(符号32a)は下から見て凹の部分、濃い網掛け部分(符号32b)は下から見て凸の部分である。底部3の外周部にはナーリング(微小突起)34が全周に亘って形成されている。図9ではナーリングを3本の破線で模式的に図示し、他の図面では省略している。
【0024】
びん1aの周壁2は胴部においてほぼ垂直であり、上部は上端の口部5に向かって縮径するテーパ状の肩部4となっている。肩部4には、前記底波状部32に対応する波状の肩波状部42が全周に亘って形成されている。図8において、網掛けで表示した部分が肩波状部42で、その形状は底波上部32と実質的に同じ正弦波形状であり、薄い網掛け部分(符号42a)は上から見て凸の部分、濃い網掛け部分(符号32b)は上から見て凹の部分である。
びん1上端の口部外周にはネジ山が形成され、キャップ6が螺着されるが、図面ではネジ山を省略して表している。
【0025】
図10に示すように、びん1aを複数段積み重ねると、びん1aの上部(肩波状部42よりも上の部分)は底部の凹陥部33の中に入り込み、肩波状部42の上に底波状部32が載置され、重なり合う。このとき、肩波状部42と底波状部32は凹凸のはめ合い状態となっているので、びんの回転が防止される(回り止め機能)。
【0026】
また、正規の位置より多少回転させた状態でびんを積み重ねても、肩波状部42の斜面上で底波状部32が滑り、肩波状部42と底波状部32が重なり合うように、上のびんが所定の位置まで回転するので、ほぼ自動的に位置合わせが行われる(自動位置合わせ機能)。
【符号の説明】
【0027】
1 びん
2 周壁
3 底部
31 底弓状部
32 底波状部
33 凹陥部
34 ナーリング
4 肩部
41 肩弓状部
42 肩波状部
5 口部
6 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
びん底部中央部に凹陥部を有し、
びん底部外周部に周方向に沿って高さが変化し、正面形状が弓状をなす底弓状部を有し、
びん周壁上部にあって上方の口部に向かって縮径する肩部に、前記底弓状部に対応する弓状の正面形状をなす肩弓状部を有し、
このびんを積み重ねたときに、前記肩弓状部の上に前記底弓状部が載置されて位置決めされることを特徴とするスタッカブルびん。
【請求項2】
前記底弓状部及び肩弓状部の周方向高低差が0.3〜3mmである請求項1に記載のスタッカブルびん。
【請求項3】
びん底部外面中央部に凹陥部を有し、
びん底部外周部に周方向に沿って高さが変化する波状に形成された底波状部を有し、
びん周壁上部にあって上方の口部に向かって縮径する肩部に前記底波状部に対応する波形形状をなす肩波状部を有し、
このびんを積み重ねたときに、前記肩波状部の上に前記底波状部が載置されて位置決めされることを特徴とするスタッカブルびん。
【請求項4】
前記底波状部及び肩波状部の周方向高低差が0.3〜3mmである請求項3に記載のスタッカブルびん。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−20779(P2012−20779A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161536(P2010−161536)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000222222)東洋ガラス株式会社 (102)
【Fターム(参考)】