説明

ステアリングダンパ

【課題】 アキュムレータによる油温補償を可能にする一方で、二輪車の前輪におけるキックバックなどによる振れを抑制するに際して、リリーフバルブの作動で前輪に連結されるハンドルにおける最適なハンドル捌きを可能にし得るようにする。
【解決手段】 ベーン4で画成されるハウジング3内の二つの油室R1,R2を連通する流路Lに油温補償用のアキュムレータ1を連通させると共に、上記の油室R1,R2における油圧の異常高圧化時に作動するリリーフバルブ5がアキュムレータ1を上記の流路Lに連通させる連通路L2中に配在されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングダンパに関し、特に、二輪車の前輪におけるキックバックなどによる振れを抑制するステアリングダンパの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の前輪におけるキックバックなどによる振れを抑制するステアリングダンパとしては、従来から種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1に開示の提案にあっては、油温補償機能を有しないので、たとえば、特許文献2に開示の提案では、油温補償用のアキュムレータを有してなるとしている。
【0003】
それゆえ、この特許文献2に開示の提案によれば、ステアリングダンパ内に収容されている作動油における油温が上昇して、作動油の体積が増大するときに、この増大分の作動油をアキュムレータ内に流入させて、作動油の体積が増大することによる高圧化の影響を、たとえば、シール部材に与えずしてこのシール部材を保護し、シール部材の劣化あるいは破損による油漏れの不具合の招来を回避し得ることになる。
【0004】
一方、上記した前輪の振れを抑制するについて、ステアリングダンパにおいて減衰作用を実践するが、このとき、振れの全てを減衰作用で抑制するとする設定の場合には、却って、二輪車におけるハンドル捌きを重くするなどの不具合が招来されることになる。
【0005】
そこで、本願の出願人は、先に、図3に示す回路構成のステアリングダンパの提案をしたが、この提案では、ステアリングダンパがアキュムレータ1を有して油温補償を可能にする一方で、比例ソレノイドバルブからなる減衰バルブ2を有していて、この減衰バルブ2の作動するところで所定の減衰作用を実現すると共に、この減衰バルブ2がリリーフバルブとしても機能するところで上記の減衰作用を抑制するとしている。
【0006】
ちなみに、ステアリングダンパにあっては、ハウジング3内にベーン4で画成される二つの油室R1,R2を流路Lで連通しているが、この流路Lに上記の減衰バルブ2を有すると共にアキュムレータ1が連通されてなるとしている。
【0007】
それゆえ、この図3に示す先の提案によれば、キックバックなどによる二輪車の前輪における振れを抑制し得るのはもちろんのこと、アキュムレータ1による油温補償を可能にしながら減衰バルブ2によるリリーフ機能でいたずらにハンドル捌きを重くしないことが可能になる。
【特許文献1】実公昭47−17526号公報
【特許文献2】実開昭62−93440号公報(第1図,第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した図3に示す先の提案にあっては、アキュムレータ1を有するステアリングダンパにリリーフバルブ5を装備させるについて、言わば後から組み込む状況下にリリーフバルブ5を配在するとしている。
【0009】
すなわち、具体的には、図4に示すように、ステアリングダンパを構成するハウジング3にリリーフバルブ5を配在させるための空部(図示せず)やこの空部を流路Lに連通させるための通路L1を開穿すると共に、爾後にこの空部に密封用の鋼球Sを打ち込むとしている。
【0010】
それゆえ、この図4に示すところにあっては、ハウジング3にリリーフバルブ5を配在するための空部や通路L1を必要とすることになるから、ハウジング3の小型化を図る上で不利になり、また、上記した空部や通路L1を開穿する加工上の手間や部品としての鋼球Sを要することになり、重量の軽減化や製品コストの低減化を図り難くする不具合がある。
【0011】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、アキュムレータによる油温補償を可能にするのはもちろんのこと、二輪車の前輪におけるキックバックなどによる振れを抑制するに際して、リリーフバルブの作動で前輪に連結されるハンドルにおける最適なハンドル捌きを可能にし、その汎用性の向上を期待するのに最適となるステアリングダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明によるステアリングダンパの構成を、ベーンで画成されるハウジング内の二つの油室を連通する流路に油温補償用のアキュムレータ内の油室を連通させると共に、ハウジング内の油室における油圧の異常高圧化時に作動するリリーフバルブを有してなるステアリングダンパにおいて、リリーフバルブがアキュムレータ内の油室を上記の流路に連通させる連通路中に配在されてなるとする。
【発明の効果】
【0013】
それゆえ、請求項1の発明にあっては、リリーフバルブがアキュムレータを流路に連通させる連通路中に配在されてなるとするから、リリーフバルブを配在するための部位を連通路中以外に確保する必要がなく、したがって、流路,連通路およびアキュムレータがハウジングに設けられるとき、ハウジングの別の場所にリリーフバルブ配在用の容積を確保する必要がなく、ハウジングの小型化、および、ハウジングの小型化に伴う重量の軽減化、すなわち、ステアリングダンパにおける重量の軽減化を可能にし得ることになる。
【0014】
その結果、この発明によれば、アキュムレータによる油温補償を可能にする一方で、二輪車の前輪におけるキックバックなどによる振れを抑制するに際して、リリーフバルブの作動で前輪に連結されるハンドルにおける最適なハンドル捌きを可能にし得ることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるステアリングダンパも、図示しないが、基本的には、先に提案した図3および図4に示すステアリングダンパと同様に、二輪車の前輪側に配在されるとしている。
【0016】
このとき、このステアリングダンパは、同じく図示しないが、二輪車の前輪側に架装されるフロントフォークの上端部を保持するブラケットに連設されるとしている。
【0017】
ちなみに、このテアリングダンパを上記のブラケットに連繋するについて、ブラケットの下面あるいはブラケットの上面のいずれかに連設されるとしても良く、また、ブラケットに連設されるのに代えて、ブラケットに一体に組み込まれてなるとしても良い。
【0018】
ところで、ステアリングダンパは、図1に示すように、上記のブラケットに連設されるハウジング3内にベーン4を揺動可能に有していて、このベーン4によってハウジング3内に二つの油室R1,R2を画成するとしている。
【0019】
そして、このステアリングダンパにあっては、図2にも示すように、二つの油室R1,R2がハウジング3に開穿の流路Lで連通されると共に、この流路Lに減衰バルブ2を有してなるとしている。
【0020】
そしてまた、このステアリングダンパにあっては、上記の流路Lに連通路L1を介して油温補償用のアキュムレータ1を連通させるとし、さらに、上記の連通路L1中にリリーフバルブ5を有するとしている。
【0021】
このとき、このステアリングダンパにあっては、上記したベーン4の基部41における軸芯部にシャフト42を連設させていて、このシャフト42を二輪車における、たとえば、図示しない車体側に連結させるとし、その回動でベーン4をハウジング3内で揺動させて二つの油室R1,R2を広狭させ、作動油が上記の流路Lを通過して二つの油室R1,R2間を往復するとしている。
【0022】
なお、このステアリングダンパにあって、上記のシャフト42は、二輪車の車体側に連結されることに代えて、前記したブラケットに連結される、すなわち、ハウジング3が車体側に連結されるとしても良いことはもちろんである。
【0023】
つぎに、アキュムレータ1は、前記した連通路L1に連通する油室11といわゆる背後側の密閉されたエア室12とを画成するフリーピストン13を有していて、図示するところでは、エア室12に配在された附勢バネ14のバネ力で上記のフリーピストン13をいわゆる背後側から附勢するとしている。
【0024】
また、減衰バルブ2は、比例ソレノイドバルブからなり、図示するところでは、符示しないソレノイドへの励磁およびその解除の選択で前進あるいは後退するポペット21が対向するシート部材22おける開口22aを開閉することで、また、その開閉量を選択することで、ここを通過する際に発生する減衰力の大小を選択し得るように形成されている。
【0025】
さらに、リリーフバルブ5は、シート部材51の中央部に開穿された開口51aを開閉可能に閉塞する鋼球52を有すると共に、この鋼球52を背後側たる前記したアキュムレータ1の油室11側から附勢するコイルバネ53を有してなるとしている。
【0026】
それゆえ、このリリーフバルブ5にあっては、流路L側からの圧力で鋼球52をコイルバネ53の附勢力に抗して後退させることで、流路L側における異常高圧をアキュムレータ1内の油室11に解放することが可能になる。
【0027】
それゆえ、上記したステアリングダンパにあっては、まず、アキュムレータ1を有してなるから、二つの油室R1,R2などの内部に収容されている作動油における油温が上昇して、作動油の体積が増大するときに、この増大分の作動油をアキュムレータ1内における油室11内に流入させることが可能になり、その結果、作動油の体積が増大することによる高圧化の影響をステアリングダンパにおける、たとえば、シール部材に与えずしてこのシール部材を保護し、シール部材の劣化あるいは破損による油漏れの不具合の招来を回避し得ることになる。
【0028】
そして、このステアリングダンパにあっては、リリーフバルブ5がアキュムレータ1を流路Lに連通させるために開穿された連通路L2中に配在されるから、このリリーフバルブ5を配在するための部位を連通路L2中以外に確保する必要がなく、したがって、流路L,連通路L2およびアキュムレータ1を一体に有するハウジング3のいわゆる別の場所にリリーフバルブ5の配在用の容積を確保する必要がなく、ハウジング3の小型化、および、ハウジング3の小型化に伴う重量の軽減化、すなわち、ステアリングダンパにおける重量の軽減化を可能にし得ることになる。
【0029】
前記したところは、この発明におけるステアリングダンパがハウジング3内で揺動するベーン4を有するロータリ型に形成されてなるとしたが、このステアリングダンパが機能するところを勘案すれば、これがシリンダ内で摺動するピストンを有するいわゆる両ロッド型の筒型ダンパに形成されてなるとしても良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施形態によるステアリングダンパを平面視で示す断面図である。
【図2】図1に示すところに一体に積層される部位を図1と同様に示す図である。
【図3】先の提案によるステアリングダンパを原理的に示す回路図である。
【図4】図3に示すところを具体化した態様をズ2と同様に示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 アキュムレータ
2 減衰バルブ
3 ハウジング
4 ベーン
5 リリーフバルブ
L 流路
L2 連通路
R1,R2 油室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーンで画成されるハウジング内の二つの油室を連通する流路に油温補償用のアキュムレータを連通させると共に、上記の油室における油圧の異常高圧化時に作動するリリーフバルブを有してなるステアリングダンパにおいて、リリーフバルブがアキュムレータを上記の流路に連通させる連通路中に配在されてなることを特徴とするステアリングダンパ
【請求項2】
ハウジング内の二つの油室を連通する流路およびこの流路にアキュムレータを連通させる連通路がハウジングに開穿されてなると共にアキュムレータがハウジングに一体に形成されてなる請求項1に記載のテアリングダンパ
【請求項3】
リリーフバルブが連通路を遮断するように配在されて中央部に作動油の流通を許容する開口を有するシート部材と、このシート部材の開口に離着座可能に当接されてこの開口を開閉可能に閉塞する鋼球と、この鋼球を背後側から附勢して上記の開口に当接させる附勢バネとを有してなる請求項1に記載のステアリングダンパ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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