説明

スティックダイオード

【課題】破損しにくいスティックダイオードを提供する。
【解決手段】スティックダイオード1は、第1導体板2の端部に凹部2Uを形成し、第2導体板3の端部に凸部3Jを形成し、凹部2Uと凸部3Jを対向させて、凹部2U内に凸部3Jを配置する。これにより、スティックダイオード1を幅方向(短手方向)にどこを切断しても、必ず第1導体板2または第2導体板3が樹脂4内に存在するので、スティックダイオード1の強度が上がり、折れを防止できる。また、凹部2Uと凸部3Jを設けることで、従来のように導体板の端部が直線状であった場合と比較して、端部における導体板の量が減り、導体板の端部の熱膨張による変形量を小さくすることができ、導体板2,3が変形により樹脂4を押圧する力を弱めることができ、樹脂4が割れるのを防止できる。また、凹部2Uや凸部3Jを曲線状に形成することで押圧力が分散され、樹脂4の割れを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールに接続するスティック状のダイオードの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(A)は、従来のスティックダイオードの斜視概観図であり、図1(B)は、従来のスティックダイオードの正面透視図であり、図1(C)は、従来のスティックダイオードの側面透視図である。
【0003】
複数の太陽電池モジュールを直列接続したストリングには、通常、各太陽電池モジュールにバイパスダイオードを並列に接続する。また、複数のストリングを並列接続した太陽電池アレイには、通常、各ストリングに対して逆流防止ダイオードを直列に接続する。
【0004】
従来、バイパスダイオードや逆流防止ダイオードの一種として、棒(スティック)状のスティックダイオードが使用されることがある。図1(A)〜図1(C)に示すように、従来のスティックダイオード101は、一方の金属板(導体板)102にダイオードチップ105のアノードが半田により接合され、他方の金属板(導体板)103に径の小さなリード107を介してダイオードチップ105のカソードが接続されている。ダイオードチップ105は、絶縁のために周囲をガラス106で封止されている。金属板102と金属板103は、所定の間隔で(すき間109をあけて)平面状の側面を対向して配置されている。金属板102、金属板103、ダイオードチップ105、及びリード107は、絶縁性を有する樹脂(封止体)104により封止されて、樹脂104の両端から端子102Tと端子103Tが突出している。樹脂104は、直方体型に成形されている。
【0005】
従来のスティックダイオードには、絶縁性を有する樹脂に金属板が埋め込まれ、リード線の接続部だけが露出した構成のものもあった(特許文献1参照。)。
【0006】
スティックダイオード101は、金属板102のダイオードチップ105が接合された面と反対側の面を封止(被覆)する樹脂104の裏面104BHを、太陽電池モジュールや金属板等の放熱板に密着させ、端子102Tの孔102Hと端子103Tの孔103Hにボルトなどを挿入して取り付ける。太陽電池モジュールが発電しているときにダイオードチップ105に電流が流れるとダイオードチップ105は発熱するが、この熱を放熱板から放熱することでスティックダイオード101が過熱するのを抑制できる。特許文献1に記載のスティックダイオード(太陽電池用接続具)も同様に、太陽電池モジュールに密着させて取り付けることで、過熱を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−19532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のスティックダイオード101の一方の金属板102と金属板103の間(すき間109)は、樹脂104以外には、径の小さなリード107が存在するだけなので、強度が弱かった。
【0009】
また、スティックダイオード101では、熱膨張係数は樹脂104よりも金属板102,103の方が高く、ダイオードチップ105が通電により発熱すると、樹脂104よりも金属板102,103の方が膨張する。そのため、四角形状の金属板102,103において、直線状の端部が膨張して樹脂104を押圧する。このとき、特に金属板102,103の角部に押圧力が集中するため、この角部において、樹脂104にクラック(割れ)が発生し、樹脂104が金属板102,103から剥離することがあった。
【0010】
このように、樹脂104が金属板102,103から剥離すると、樹脂を補強するものがないため、わずかな力が加わっただけでも樹脂104が折れてしまい、スティックダイオード101が破損するという問題があった。
【0011】
そこで、この発明は、破損しにくいスティックダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)この発明のスティックダイオードは、第1導体板の側方に第2導体板が水平に対向して配置され、第1導体板の一方の面にはダイオードチップが接合され、ダイオードチップと第2導体板は導電性接合体により接合されている。第1導体板の一方の面、第2導体板の一方の面、ダイオードチップ、及び導電性接合体は、第1封止部により封止されている。第1導体板の他方の面及び第2導体板の他方の面は第2封止部により封止されている。第1封止部は第2封止部と一体成型されている。第1導体板は第2導体板と対向する部分に凹部が形成され、第2導体板は第1導体板と対向する部分に凸部が形成され、凹部の内側に凸部が配置されている。
【0013】
この構成においては、第1導体板の端部に凹部を形成し、第2導体板の端部に凸部を形成し、凹部と凸部を対向させて、凹部の内側に凸部を配置する。第1導体板と第2導体板の方が封止体よりも熱膨張係数が大きい場合、ダイオードチップが発熱すると熱膨張により第1導体板や第2導体板が樹脂よりも変形量が多くなるため、第1導体板や第2導体板が樹脂を押圧する力が加わる。しかし、第1導体板と第2導体板を対向させた端部に凹部と凸部を設けて、凹部の内側に凸部を配置することで、スティックダイオードを幅方向(短手方向)にどこを切断しても、断面には板状の第1導体板または第2導体板が封止体内に必ず存在するように構成できる。これにより、第1導体板と第2導体板を対向して配置した部分の強度が強くなり、多少の力が加わっても封止体が折れるのを防止できる。
【0014】
また、第1導体板と第2導体板を対向させた端部に凹部と凸部を設けることで、従来のように導体板の端部が直線状であった場合と比較して、端部における導体板の量が減り、導体板の端部の熱膨張による変形量を小さくすることができる。これにより、導体板が変形により封止体を押圧する力を弱めることができ、封止体が割れるのを防止できる。
【0015】
したがって、スティックダイオードが破損するのを防止できる。
【0016】
(2)上記発明において、凹部は少なくとも一部が曲線状に形成されている。
【0017】
この構成においては、熱膨張により封止体に導体板から押圧力が加わっても、凹部に形成した曲線状の部分により押圧力が分散されて、第1導体板が封止体を押す力が弱まるので、封止体が割れて、スティックダイオードが破損するのを防止できる。
【0018】
(3)上記発明において、導電性接合体は、凸型に折り曲げ加工された金属板から成り、両端にダイオードチップ及び第2導体板との接合面を備えている。
【0019】
この構成においては、導電性接合体は、金属板であり、ダイオードチップに接続されているので、導電性接合体をダイオードチップの放熱板として使用できる。これにより、ダイオードチップは、両面に金属板が接合されるので放熱性が向上し、ダイオードチップの発熱による封止体の変形を抑制できる。また、金属板は、凸型に折り曲げ加工されているので、金属板の一部は第1封止部の表面に近い部分に位置し、外気により冷却されやすく、さらに放熱性を向上できる。したがって、封止体の過熱を抑制し、導体板や封止体の変形を抑制できるため、封止体が導体板を押す力が抑制されて封止体が割れて、スティックダイオードが破損するのを防止できる。
【0020】
(4)上記発明において、第1導体板は、接合されたダイオードチップの周囲にスリットが形成されている。
【0021】
この構成においては、第1導体板に接続されたダイオードチップの周囲にスリットを設けることで、ダイオードチップの発熱により第1導体板が膨張しても、スリットによりこの膨張分を吸収できる。これにより、ダイオードチップが発熱して、導体板がダイオードチップの方向に変形しようとしても、スリットによりその力が分散・吸収されるので、ダイオードチップの割れや半田剥がれを防止でき、スティックダイオードの破損を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、破損しにくいスティックダイオードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(A)は、従来のスティックダイオードの斜視概観図であり、図1(B)は、従来のスティックダイオードの正面透視図であり、図1(C)は、従来のスティックダイオードの側面透視図である。
【図2】図2(A)は、スティックダイオードの内部構造を示す正面図である。図2(B)は、スティックダイオードの内部構造を示す側面図である。図2(C)は、スティックダイオードの内部構造を示す背面図である。
【図3】スティックダイオードを太陽電池モジュールに取り付けた使用例を示す図である。
【図4】図4(A)は、スティックダイオードの正面図である。図4(B)は、スティックダイオードの側面図である。図4(C)は、スティックダイオードの背面図である。図4(D)は、スティックダイオードの端子側から見た側面図である。
【図5】図5(A)は、スティックダイオードの内部構造を示す正面拡大図である。図5(B)は、スティックダイオードの内部構造を示す側面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2(A)は、スティックダイオードの内部構造を示す正面図である。図2(B)は、スティックダイオードの内部構造を示す側面図である。図2(C)は、スティックダイオードの内部構造を示す背面図である。
【0025】
図3は、スティックダイオードを太陽電池モジュールに取り付けた使用例を示す図である。
【0026】
まず、スティックダイオードの概略構成について説明する。図2に示すように、一方の導体板(第1導体板に相当)2にダイオードチップ5のアノードが半田により接合され、他方の導体板(第2導体板に相当)3に接合板(導電性接合体に相当)7を介してダイオードチップ5のカソードが接続される。導体板2は導体板3と水平に対向して配置される。ダイオードチップ5は、絶縁のために周囲をガラス6で封止されている。導体板2、導体板3、ダイオードチップ5、及び接合板7は、絶縁性を有する樹脂(封止体)4(図2において点線で示す)により封止されて、樹脂4の両端から端子2Tと端子3Tが突出している。端子2Tには長孔2Hが形成され、端子3Tには長孔3Hが形成されている。長孔2Hと長孔3Hは、スティックダイオード1を太陽電池モジュールに取り付けるときに使用する。スティックダイオード1は、放熱側の樹脂4の底面4M(平面)を、図3に示すように、太陽電池モジュール51の周囲の枠54や金属板等に密着させて取り付け、枠54や金属板を放熱板として使用する。
【0027】
なお、図3には、パワーコンディショナ61に接続された太陽電池モジュール51にスティックダイオード1を並列接続した例を示している。
【0028】
本発明では、ダイオードチップ5の発熱や夜間等の冷却による樹脂(封止体)4の変形を抑制するために、樹脂4を以下のように形成する。すなわち、2つの導体板2,3の一方の面を封止する樹脂(後述する第1封止部4F)と、2つ導体板2,3の他方の面を封止する樹脂(後述する第2封止部4B)の体積を等しくし、より好ましくは両者の単位面積当たりの体積を等しくし、2つの導体板2,3の長片方向に均一に形成する。
【0029】
次に、樹脂4の具体的な構成(形状)について説明する。図4(A)は、スティックダイオードの正面図である。図4(B)は、スティックダイオードの側面図である。図4(C)は、スティックダイオードの背面図である。図4(D)は、スティックダイオードの端子側から見た側面図である。
【0030】
樹脂4は、導体板2,3の周囲に一体的に成型したものであるが、以下の説明では便宜上、図4(D)に示す中心線C1よりも上(図4(B)に示す中心線C2よりも左)のダイオードチップ5(不図示)を搭載している側の樹脂4を第1封止部4Fと称し、図4(D)に示す中心線C1よりも下(図4(B)に示す中心線C2よりも右)の放熱板に密着させる側の樹脂4を第2封止部4Bと称する。ダイオードチップ5と接合板7が配置される分、第1封止部の高さは第2封止部の高さよりも高くなる。
【0031】
第1封止部4Fは、中心部4C1と、上面部4Uから成り、導体板2の一方の面2F、導体板3の一方の面3F、ダイオードチップ5、及び接合板7を封止(被覆)する。中心部4C1は、板状で側面が台形である。上面部4Uは、板状で側面が台形状であり、上面部4Uの上面4Sの短手方向の幅W3が導体板2,3の幅W2よりも若干狭くなっている。すなわち、第1封止部4Fの短手方向の幅は、導体板2の一方の面2Fの垂線方向において、導体板2の一方の面2Fから離れるにしたがって狭くなっている。このように、中心部4C1と上面部4Uの側面形状を台形にしているので、従来のように断面形状を長方形にした場合と比べて、樹脂の使用量を削減でき、第1封止部4Fと第2封止部4Bとを同じ体積に調整できる。また、金型の抜けが良くなり金型が劣化しにくくなるので、金型の長寿命化が可能となる。上面4Sは、導体板2,3と平行である。上面部4Uは、中心部4C1の上面に、長手方向の両端部の面4T1,4T2を除く全面に一体成型されている。
【0032】
第2封止部4Bは、中心部4C2と、下面部4Dから成り、導体板2の他方の面2B、及び導体板3の他方の面3Bを封止(被覆)するよう、第1封止部4Fに一体成型されている。中心部4C2は、板状で側面が台形状である。下面部4Dは、板状で側面が台形状であり、底面4Mの短手方向の幅W4が導体板2,3の幅W2よりも若干広くなっている。すなわち、第2封止部4Bの短手方向の幅は、導体板2の他方の面2Bの垂線方向において、導体板2の他方の面2Bから離れるにしたがって狭くなっている。このように、中心部4C2と下面部4Dの側面形状を台形にしているので、従来のように断面形状を長方形にした場合と比べて、金型の抜けが良くなり金型が劣化しにくくなるので、金型の長寿命化が可能となる。下面部4Dの底面4Mは、導体板2,3と平行である。下面部4Dは、中心部4C2の上面に、短手方向の両端部の面4T3,4T4を除く全面に一体成型されている。
【0033】
なお、本例では、第1封止部4Fと第2封止部4Bは、同一材料で同時に一体成型されている。
【0034】
樹脂4を上記のような形状に形成することで、第1封止部4Fと第2封止部4Bは、体積が等しく、導体板2,3の長手方向(長片方向)に均一に形成されている。
【0035】
ここで、中心部4C1,4C2の端部の面4T1,4T2,4T3,4T4は、第1封止部4Fと第2封止部4Bの体積を等しくするための調整部分として形成されている。
【0036】
上面4Sの幅W3は底面4Mの幅W4よりも小さく、さらに両端部の面4T1,4T2が形成されているため、上面部4Uの長手方向の長さは下面部4Dの長さよりも短い。そのため、ダイオードチップ105が発熱した際に、より温度上昇が大きい上面部4Uは、中心部4C1から上面4S側ほど、樹脂の量が少なくなる。このように、樹脂の量が少ないほど、熱による変形量を小さくできるため、本発明では、上面4Sの変形量は底面4Mの変形量よりも小さくできる。また、両端部の面4T1,4T2の部分は、他の部分よりも樹脂量が少ないので、上面部4Uが変形したとしてもこの部分(すなわち、中心部4C1,4C2の端部)は変形せず、中心部4C1,4C2が端子2T,3Tを押圧することを防止できる。そのため、ダイオードチップ5が発熱した際に、スティックダイオード1全体が、従来のスティックダイオード101のように上に凸に変形することが防止できるので、底面4Mと放熱板(図3に示した太陽電池モジュール51の周囲の枠54)との密着性を損なわない。また、導体板2,3の変形を防止できるため、ダイオードチップ105の搭載面も平らに保つことができ、ダイオードチップ105の割れや半田の剥離を防止することができる。
【0037】
このように第1封止部4Fと第2封止部4Bを上記のような形状に形成することで、一体成型された第1封止部4Fと第2封止部4Bの熱容量が等しくでき、ダイオードチップ5が発熱した際には第1封止部4Fと第2封止部4Bとの変形しようとする力の均衡がとれるので、結果的に樹脂4全体の変形が抑制される。したがって、取り付け性の低下やコストの増加が発生することがなく、ダイオードチップ5の発熱や夜間の冷却等の温度変化による樹脂4の変形を抑制できる。
【0038】
なお、第1封止部4Fと第2封止部4Bとの体積を等しくする場合には、単位面積当たりの体積が等しくなるように成型することが、より好ましい。これにより、封止体の変形を抑制できる。
【0039】
なお、樹脂4としては、エポキシ樹脂の使用が好ましい。エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂であり、成形時に熱によって軟化し化学反応により固化し、その後加熱しても軟化したり融けたりしないので、ダイオードチップ5の発熱により樹脂4の温度が上昇しても変形しにくく、樹脂4の変形を抑制することができる。
【0040】
樹脂4としてエポキシ樹脂を使用する場合には、予めアフタベーキングを行っておくと良い。アフタベーキングは、熱硬化性樹脂を成形後、一定温度のもとに一定時間加熱する操作であり、加熱によって樹脂の硬化状態をさらに進めて、寸法安定性を向上することができる。
【0041】
次に、スティックダイオードの内部構成の詳細について説明する。図5(A)は、スティックダイオードの内部構造を示す正面拡大図である。図5(B)は、スティックダイオードの内部構造を示す側面拡大図である。導体板2及び導体板3は、長片状で銅などの金属板にメッキを施したものである。
【0042】
導体板2において、端子2Tと反対側の端部には、凹部2Uが形成されている。凹部2Uは、コの字状の凹部2JとC字状(曲線状)の凹部2Dから成る。また、凹部2Uの各角部(コーナー)は弧状に形成されている。また、凹部2Uは全体を弧状(曲線状)に形成してもよい。
【0043】
導体板3において、端子3Tと反対側の端部には、凸部3Jが形成されている。凸部3Jの各角部(コーナー)は弧状に形成されている。なお、凸部3Jは、その一部または全体を弧状(曲線状)に形成してもよい。
【0044】
導体板3は、導体板2の側方にすき間9をあけて水平に対向して配置されている。すなわち、導体板2の凹部2U(凹部2J)の内側に、導体板3の凸部3Jが位置し、導体板2と導体板3が接触しないように配置されている。また、ダイオードチップ5の上面(カソード)に接合板7の接合面7Aが半田により接合され、導体板3の凸部3Jに接合板7の接合面7Bが半田により接合されている。
【0045】
接合板7は、両端部が凸型に折り曲げ加工され、両端に接合面7Aと接合面7Bを備えている。接合板7は、銅などの金属板にメッキを施したものであり、ダイオードチップ5及び凸部3Jの幅W5よりも若干狭い幅W6である。
【0046】
ここで、スティックダイオード1では、凹部2Uの内側に凸部3Jが位置するように構成するので、スティックダイオード1を幅方向(短手方向)にどこを切断しても、必ず断面には樹脂4内に導体板が存在する。これにより、導体板2と導体板3の対向部の強度を増すことができ、スティックダイオード1に曲げ応力が加わっても、樹脂4が折れるのを防止できる。
【0047】
また、接合板7は、金属性の板材(金属板)なので、径の細いリードを使用した場合よりも強度を増すことができるので、スティックダイオード1に曲げ応力が加わっても、従来のスティックダイオード101のように樹脂104が折れるのを防止できる。
【0048】
次に、スティックダイオード1において、銅製の導体板2,3と、エポキシ樹脂製の樹脂4と、では、導体板2,3の方が熱膨張係数が大きい。上記のように、熱膨張係数が樹脂4よりも大きく温度変化による変形量が大きい導体板2と導体板3の端部に凹部2Uと凸部3Jを形成することで、図1(B)に示した従来のスティックダイオード101のように金属板103,104の端部(対向部)が直線状であった場合と比較して、端部における導体板の幅方向の量が減る。つまり、導体板の端部の熱膨張による変形量が、従来のスティックダイオード101よりも少なくなる。これにより、導体板2と導体板3が熱膨張により変形しても樹脂4を押圧する力を従来よりも弱めることができ、樹脂4が割れるのを防止できる。このように、本発明のスティックダイオード1では、2つの導体板2,3の対向面を非直線状に形成することで、樹脂4の割れを抑制できる。
【0049】
また、凹部2Uと凸部3Jの各角部を弧状にしたり、凹部2UにC形(の凹部2Dを設けたりすることで、熱膨張により導体板2または導体板3が樹脂4を押圧する力が加わっても、この力をさらに分散させることができる。したがって、樹脂4の割れを防止できるので、金属板から樹脂を剥がれにくくすることができる。
【0050】
また、接合板7は、ダイオードチップ5に接合された金属性の板材なので、ダイオードチップ5の放熱板としても使用することができ、ダイオードチップ5の両面において放熱することができる。また、接合板7は、凸型に折り曲げ加工されているので、樹脂4の上面4Sの近傍に位置させることができ、放熱性を高めることができる。
【0051】
次に、導体板2に接合されたダイオードチップ5の4つの角の周囲には、それぞれL字形のスリット(長孔)8A,8B,8C,8Dが形成されている。このようにスリットを設けることで、ダイオードチップ5の発熱により導体板2が膨張しても、スリット8A〜8Dでこの膨張を吸収できる。これにより、ダイオードチップ5に影響を与えることがなく、ダイオードチップ5の破損や半田剥がれを防止できる。
【0052】
なお、ダイオードチップ5の周囲に設けるスリットは4つに限るものではなく、ダイオードチップ5の形状や発熱特性に応じて必要な数のスリットを設ければ良い。
【0053】
次に、図2(A),(C)に示すように、導体板2は、短手方向の幅が第1の幅W1で形成された幅狭部2Cと、第1の幅W1よりも狭い第2の幅W2で形成された幅広部2Rからなり、幅狭部2Cの大半の部分が端子2Tとされ、幅狭部2Cの一部と幅広部2Rが樹脂4で被覆されている。導体板3も、同様に、短手方向の幅が第1の幅W1で形成された幅狭部3Cと、第1の幅W1よりも狭い第2の幅W2で形成された幅広部3Rからなり、幅狭部3Cの大半の部分が端子3Tとされ、幅狭部3Cの一部と幅広部3Rが樹脂4で被覆されている。
【0054】
導体板2の幅広部2Rの端部に長孔(貫通孔)2Aが形成されている。導体板3は、幅広部3Rの端部に長孔(貫通孔)3Aが形成されている。
【0055】
樹脂4は、導体板2の幅広部2R,3Rと幅狭部2C,3Cの一部を被覆する。このように構成することで、端子2Tが幅W1の直線状である場合と比較して、第1封止部4Fと第2封止部4Bとを一体成型した部分の面積として図2及び図5に示す斜線部2SH、3SHの部分が増加するため、樹脂4と端子2Tの接合強度が増し、樹脂4の温度が上昇または下降したときに、樹脂4を導体板2から剥がれにくくすることができる。導体板3についても、同様のことが言え、斜線部3SHの部分の増加により樹脂を剥がれにくくすることができる。
【0056】
また、導体板2の樹脂4から端子2Tが突出する部位の近傍である幅広部2Rの端部に長孔2Aを設けることで、長孔2Aを介して第1封止部4Fと第2封止部4Bが一体成型されるので、両者の剥離強度が増強され、樹脂4を導体板2から剥がれにくくすることができる。導体板3についても、同様のことが言える。
【0057】
また、このように長穴2A,3Aを形成しているため、端子2T,3Tを半田付けする際に、端子2T,3Tからの熱を、幅広部2R,3Rの長穴2A,3Aよりもダイオードチップ5側やダイオードチップ5内に伝わりにくくすることができ、半田付け性が良好になる。
【0058】
なお、ダイオードチップ5はメサ形に限るものではなく、プレーナ形や他の形のものも当然使用でき、放熱性を考慮してメサ形と同様に導体板2に取り付けると良い。
【0059】
なお、上記の説明では、スティックダイオード1に使用する導体板2、導体板3、及び接合板7として、銅などの金属板を用いた場合について説明したが、これに限るものではなく、導電性を有するものであれば他のものでも良い。例えば、鉄、アルミニウム、グラファイト、導電性高分子なども適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,101…スティックダイオード 2,3…導体板 2A,2H,3A,3H…長孔 2B…他方の面 2C,3C…幅狭部 2D,2J,2U…凹部 2F…一方の面 2R,3R…幅広部 2T,3T,102T,103T…端子 3B…他方の面 3F…一方の面 3J…凸部 4,104…樹脂 4B,4F…封止部 4C1,4C2…中心部 4D…下面部 4M…底面 4S…上面 4T1,4T2,4T3,4T4…面 4U…上面部 5,105…ダイオードチップ 6,106…ガラス 7…接合板 8A,8B,8C,8D…スリット 51…太陽電池モジュール 102,103…金属板 104B…第2封止部 104BH…裏面 104F…第1封止部 107…リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードチップが一方の面に接合された長片状の第1導体板と、
前記第1導体板の側方に前記第1導体板と水平に対向して配置され、前記ダイオードチップと接合された長片状の第2導体板と、
前記第1導体板の一方の面、前記第2導体板の一方の面、及び前記ダイオードチップを封止する第1封止部と、前記第1導体板の他方の面及び前記第2導体板の他方の面を封止し前記第1封止部と一体成型された第2封止部と、を有する封止体と、
を備え、
前記第1導体板は前記第2導体板と対向する端部に凹部が形成され、前記第2導体板は前記第1導体板と対向する端部に凸部を形成され、前記凹部の内側に前記凸部が配置されたスティックダイオード。
【請求項2】
前記凹部は、少なくとも一部が曲線状に形成された請求項1に記載のスティックダイオード。
【請求項3】
凸型に折り曲げ加工された金属板から成り、前記ダイオードチップと、前記第2導体板の一方の面を接合する導電性接合体を備えた請求項1または2に記載のスティックダイオード。
【請求項4】
前記第1導体板は、前記ダイオードチップの周囲にスリットを備えた請求項1乃至3のいずれかに記載のスティックダイオード。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−249415(P2011−249415A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118571(P2010−118571)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】