説明

ステビア含有養蜂用給餌・防菌液および養蜂給餌・防菌方法、養蜂用防菌剤

【課題】 従来の養蜂の給餌液以上の滋養があり、養蜂で深刻な打撃を与える疾病を防止する効果を有する給餌液を提供する。また、疾病防止に効果的な粉状防菌剤を提供する。
【解決手段】 養蜂の給餌液であって、ステビア抽出液またはステビア抽出液の発酵物を主成分とした給餌液。給餌液を噴霧手段にて霧状とし、養蜂箱に吹きかける養蜂給餌方法。ステビア抽出液またはステビア抽出液の発酵物を木炭・竹炭の吸湿剤とともに固化した後に粉砕して粉状となした防菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養蜂の給餌または防菌のため用いる給餌液を兼ねた防菌液である。また本発明は、養蜂用の粉状防菌剤である。
【背景技術】
【0002】
養蜂の給餌または減菌・防黴のため用いる滋養液としては、米・麦・とうもろこし、および/または豆などの穀物で麹を造り、微生物・酵素によって発酵させて得た酸性発酵物を糖液および/または蜜などの養蜂飼料に混合してなるものが公知である(特許文献1、2参照)。また、蜜蜂が好んで摂取し、蜂数の増加、蜂の抵抗力・体力増強、蜂群の損耗防止に納豆粉末が有効であることに着目した、主成分として納豆粉末を含む養蜂用飼料も公知である(特許文献3参照)。
【0003】
しかし、これら給餌液の減菌・防黴の効果は低いと考えられる。一方、養蜂で深刻な打撃を与えるのは、ミツバチの幼蛆を侵す疾病である腐祖病・チョーク病などである。ミロサマイシンなどの抗生物質の使用はハチミツに残留する問題のため好ましくなく、これらに効く天然物質(生薬)が求められている。
【0004】
腐祖病に対しては、ヒノキチオール、ツヤ酸、ローヤルゼリー抽出物などの提案があるが、実際には利用されていない(特許文献4、5参照)。プロポリスや木酢液の利用も提案されているが、有効性は低い。恐らくこれらの提案物質は、蜂類の表面には付着するものの摂取はしないので有効性が低いものと推察される。
【0005】
また、蜜蜂の生育阻害菌やダニ防止にクワガタ幼虫分泌物等が有効であることに着目した、クワガタ幼虫またはクワガタ幼虫が出した分泌物等の混ざった腐朽木くず等と糖分を含む発酵液からなる防菌・防黴・防ダニ液も公知である(特許文献6参照)。しかし、かかる分泌液の入手は困難であるし、蜂類はこれらを積極的に摂取することはない。
【0006】
一方、ステビア(学名: Stevia rebaudiana)は、甘味成分ステビオシド(ステビオサイド)やレバウディオサイドAといったテルペノイドの配糖体を含んでいるため、甘味料として用いられる。また、ステビアの茎を熱水抽出したものは緑茶の5倍以上の抗酸化力が証明されている。
【0007】
ステビオシドは砂糖の200から300倍の甘味度を持ち、低カロリーであるため、ダイエット用食品や糖尿病患者用メニューなどに砂糖の代わりとして用いられる。
【0008】
またステビアは、ハーブの一種でもあり、ステビア原産国パラグアイでは古くから薬草として用いられ、現在も整腸剤や全身に塗って美容や虫除けとしても利用されている。ステビオシドは、糖尿病や高血圧の治療や健胃剤、二日酔い症、精神的疲労の強壮剤として利用される。
【0009】
ステビア茎部から抽出した発酵液が、ヒトや家畜用体質改善薬として有効であることは公知である(特許文献7、特許文献8、特許文献9参照)。しかし、これを昆虫類に適用した公知技術例はない。
【0010】
さらに一方、動物を放牧する際の管理技術が公知である(特許文献10、特許文献11参照)。センサーを動物に装着して遠隔監視する技術を養蜂に適用するのはセンサーサイズを昆虫レベルにするのが不可能であり困難であるが、センサーとしてフィールドに配設された音波センサーないしは画像センサーを用い、蜂羽音や蜂集団イメージを包括的に把握して養蜂に利用することは可能と考えられる。
【0011】
【特許文献1】特許1660732号公報「みつばちの育成法」吉田鍵司
【特許文献2】特許1498611号公報「蜜蜂寄生物の防除法」吉田鍵司
【特許文献3】特開平11-169098号公報「養蜂用飼料」日本配合飼料株式会社ほか
【特許文献4】特開2005-132804号公報「抗菌剤」 ジャパンローヤルゼリー株式会社
【特許文献5】特開2006-176413号公報「蜜蜂のアメリカ腐蛆病の防除剤及び防除方法」株式会社横浜国際バイオ研究所ほか
【特許文献6】特開2000-333619号公報「抗菌効果物質の製造方法ほか」伊是名信行ほか
【特許文献7】特許1984018号公報「消化器系疾患治療用内服薬剤」堂園文夫
【特許文献8】特許1984021号公報「家畜用薬剤」堂園文夫
【特許文献9】特開2006-316021公報「ステビア発酵液の投与方法」有限会社バイセン
【特許文献10】特許2091568号公報「動物の行動を固定局で追跡する方法と装置」小林無線工業株式会社
【特許文献11】特許3705882号公報「放牧家畜遠隔管理システム」東芝ソリューション株式会社・生研機構
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の養蜂の給餌液以上の滋養があり、養蜂で深刻な打撃を与える疾病を防止する効果を有する給餌液を提供する。また、疾病防止に効果的な粉状防菌剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、養蜂用給餌・防菌液であって、ステビア抽出液またはステビア抽出液の発酵物を主成分とした給餌・防菌液である。これに糖を混合してもよい。本発明の方法は、前記給餌・防菌液を噴霧手段で霧状とし、養蜂箱に吹きつける養蜂給餌・防菌方法である。
【0014】
また、本発明の防菌剤は、ステビア抽出液またはステビア抽出液の発酵物を吸湿剤とともに固化した後に粉砕して粉状となした防菌剤であり、前記吸湿剤が木炭・竹炭であるのが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の給餌・防菌液、粉状防菌剤は天然素材であるので、従来用いられていた人工合成された抗生物質の問題はない。すなわち、抗生物質を用いた場合は、蜂蜜に残留する危険性があるため、初回の採蜜は廃棄せねばならないが、その必要がない。
【0016】
本発明にて、養蜂で深刻な打撃を与える腐祖病・チョーク病などが防止され、かつまた、糖分の摂取から蜜蜂の活動が活性化され採蜜量が飛躍的に増加する。しかも、蜂が分泌したステビア代謝物質が蜜またはプロポリスにも付着し有効に働く。
【0017】
蜜蜂活動が活性化の機序は明らかでないが、活性化によって蜜蜂による花の受粉効率が飛躍的に増大する。また、女王蜂の産卵促進効果もある。結果的に病気に対して抵抗性の強いステビア蜜蜂が大量繁殖できるのできわめて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の養蜂用防菌剤では、湿度の過度な上昇を避けるための吸湿剤が天然素材の木炭・竹炭であるのが効果的であって、ステビア抽出液の発酵物を吸湿剤とともに固化した後に粉砕して粉状となせばよい。防菌効果はステビア成分で得られるので、人工合成された抗生物質は皆無であるのでまったく問題はない。
【0019】
本発明の給餌・防菌液にて、ステビア抽出液(抽出液の発酵物)15ccから80ccと蜜50gと水20ccが好適な濃度と混合比であるがこれに限定されない。給餌タイミングは、従来給餌と同じ時刻、同じ量の給餌でよいと考えられる。
【0020】
養蜂の蜂郡を遠隔監視技術で蜂羽音や蜂集団イメージを包括的に把握し、それらの異常を参照して本案給餌法を実施してもよい。遠隔監視センサーとして、フィールドに配設された音波センサーないしは画像センサーを用い、蜂羽音や蜂集団イメージを包括的に把握し、それらの異常によって、本案給餌液の量または濃度を変化させてもよい。
【0021】
他の給餌液との効果の定性的な比較図を図1に示す。本案の給餌・防菌液を与えた蜂群の罹病率、活動量は他の技術より優れている。ステビアのカロリーは砂糖や蜂蜜よりもはるかに小さいにもかかわらず、活動量がふえるので蜜蜂に対する何らかの薬理作用が示唆される。現時点では薬理機序は未解明である。
【0022】
従来のものに対する本発明の給餌・防菌液の優位性は、蜜蜂の嗜好性が極めて高いということである。図2に本発明の給餌・防菌液を与えた際における蜜蜂の摂取状況写真を示す。蜜蜂は発明の給餌・防菌液他のいかなる給餌液よりも旺盛に摂取する。
【実施例1】
【0023】
図3が本発明のステビア液給餌による産卵促進効果検証の図表である。図3の対照群は試験群の最大ステビア混合重量比と同じ蜜(60%)を給餌したものである。これに対し、ステビア混合比20%、40%、60%の本発明のステビア液給餌の試験群にては、確実に蜂数は経過日数とともに増加している。ステビア混合比20%、40%、60%の給餌によって女王蜂がより頻繁に産卵するようになることがわかる。
【実施例2】
【0024】
図4が本発明のステビア液給餌による疾患罹病減少効果検証の図表である。図4の対照群と試験群は図3と同様である。対照群の罹病蜂数に比べ、ステビア混合比20%、40%、60%給餌の試験群は確実に罹病数が減少している。60%ステビアの給餌でほぼ完全な罹病回避ができている。
【実施例3】
【0025】
図5が、本発明のステビア液給餌による蜜蜂の花受粉効率アップ検証の図表である。ハウスメロン花が500花前後のビニールハウス7棟にて、各ハウス棟を3区画に区分し、図3、図4と同様の対照群とステビア混合比20%、40%、60%給餌の試験群を区分内飛散させてハウスメロン花の受粉・結実率を求めた。対照群の受粉・結実率に比べ、ステビア混合比20%、40%、60%給餌の試験群は確実に受粉・結実率が増加している。本発明のステビア液給餌によって、蜜蜂の活動が格段に活発化されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明と他の給餌液との効果比較図
【図2】本発明の給餌・防菌液を与えた際の蜜蜂摂取状況写真
【図3】本発明のステビア液給餌による産卵促進効果検証の図表
【図4】本発明のステビア液給餌による疾患罹病減少効果検証の図表
【図5】本発明のステビア液給餌による蜜蜂の花受粉効率アップ検証の図表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養蜂用給餌・防菌液であって、ステビア抽出液またはステビア抽出液の発酵物を主成分とした給餌・防菌液。
【請求項2】
前記給餌・防菌液の副成分が、糖である請求項1の給餌・防菌液。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された給餌・防菌液を噴霧手段で霧状とし、養蜂箱に吹きつける養蜂給餌・防菌方法。
【請求項4】
養蜂用防菌剤であって、ステビア抽出液またはステビア抽出液の発酵物を吸湿剤とともに固化した後に粉砕して粉状となした防菌剤。
【請求項5】
前記吸湿剤が木炭・竹炭である請求項4の防菌剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−208036(P2008−208036A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43732(P2007−43732)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(506353002)
【出願人】(507060343)
【Fターム(参考)】