ステロイドの測定方法
【課題】生体由来試料中に微量に含まれる水酸基を有するステロイドをLC−MSで測定する方法を提供すること。
【解決手段】生体由来試料中のステロイド水酸基に下記式(I)で示される化合物を反応させてエステル誘導体とし、得られたエステル誘導体をLC−MSで測定する。
(式中 Rはヒドロキシル基又は脱離基を表す)
【解決手段】生体由来試料中のステロイド水酸基に下記式(I)で示される化合物を反応させてエステル誘導体とし、得られたエステル誘導体をLC−MSで測定する。
(式中 Rはヒドロキシル基又は脱離基を表す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれるステロイドを液体クロマトグラフィー−質量分析計(Liquid Chromatography-Mass Spectrometry:LC−MS)を用いて測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステロイドは生体内において極微量で強力な生理作用を示すため、その量を正確に把握することは、臨床診断及び病態解析の上で重要である。しかしながら、その量は微量(数pg/mL)である上、構造類似化合物も存在することから、測定には高感度、特異性が高いことなどが必要となる。
【0003】
ステロイドの測定には、通常、ラジオイムノアッセイ(Radio Immunoassay:RIA)、酵素免疫反応(Enzyme Immunoassay:EIA)、GC−MS、LC−MS等が用いられる。このうち、RIA及びEIAについては、それら免疫法の一般的な定量限界は10pg/mLであり、それに加えて試料中には測定対象化合物の構造類似体や性ホルモン結合蛋白も存在しているため、定量値が大きく変動する可能性がある。最近になって、シーアイエス ダイアグノスティックス社から、検出感度が1.4pg/mLと極めて高感度のエストラジオールRIA測定キットが発売されたが、この測定キットはエストラジオール−17β グルクロナイドとの交差性にあまり優れておらず、エストラジオール特異性に問題が残っている。
【0004】
LC−MSについては、測定対象を誘導体化して検出感度を高め、微量測定を行う方法が種々試みられている。例えば、非特許文献1〜3には、ステロイド化合物に電子親和性原子団を導入し、LCと正イオンモードの大気圧化学イオン化MS(Atmospheric Pressure Chemical Ionization based Mass Spectrometry:APCI/MS)を組み合わせて測定する方法が示されている。また、ステロイドのカルボニル基をp−トルエンスルホンヒドラゾン化してLC−MSで測定する方法(非特許文献4参照)、ステロイドのアルコール性水酸基をN−アルキルピリジニウム化してLCとエレクトロスプレーイオン化MS(Electrospray ionization based Mass Spectrometry:ESI/MS)を組み合わせて測定する方法(特許文献1参照)も提案されている。しかし、これらの方法における測定限界は数10〜100pg/mLである。
【0005】
非特許文献5には、種々の化合物をペンタフルオロベンジル化すると、LC−APCI/MSによりエストロン等を数pg以下のレベルで測定できることが記載されている。しかし、この文献においては、アンドロゲン、エストラジオール等の測定は行われておらず、この方法でステロイド類全般が同様のレベルで測定することができるかどうか不明である。また、特許文献2には、ステロイドのフェノール性水酸基をペンタフルオロベンゾイル化し、LC−MS/MSにより測定する方法が記載されているが、この誘導体は安定性に欠けるという欠点があり、またこの文献には測定感度が記載されていない。
非特許文献6には、ステロイドのフェノール性水酸基をダンシル化(5−ジメチルアミノナフタレン−1−イルスルフォン化)し、これをLC−MS/MSで測定することにより、例えばエストラジオールの測定限界として6.3pgを達成できたことが記載されている。しかし、この方法においては、特異性及びダンシル化した後の化合物の安定性に欠けるという欠点がある。
特許文献3には、ステロイドをフェニルヒドラゾン化又はフェニルアミノフェニルボロネート化した後、LC−負イオンAPCI/MSで測定することにより、ステロイドを数pgのレベルで測定できることが記載されている。また、このときの測定感度は、ペンタフルオロベンジル化のときと比べ最大7倍上昇していることも示されている。しかしながら、この方法は、オキソ基又はビシナルジオール基を有するステロイドに対してのみ使用可能である。
【特許文献1】特開2003-161726号公報
【特許文献2】特開2000-88834号公報
【特許文献3】特開2004-257949号公報
【非特許文献1】Rapid Comm. Mass Spectrom.,16,1590,2002
【非特許文献2】Biomed.Chromatogr.,15,133,2001
【非特許文献3】J.Chromatogr.,B,772,229,2002
【非特許文献4】J.Chromatogr.,B,714,153,1998
【非特許文献5】J.Chromatogr.,B,780,315,2002
【非特許文献6】Anal.Chem.,72,3007,2000
【非特許文献7】Clin.Chem.,50(2),373,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、試料中に含まれるステロイドをLC−MSにより測定する方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、LC−MSを用いるステロイド測定用の試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ステロイドの水酸基をピリジルカルボニル化してピリジルカルボン酸エステル誘導体とすることにより、ステロイドをLC−MSにより数pgのレベルで測定できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、試料中に含まれるステロイドをLC−MSを用いて測定する方法であって、
1)試料中のステロイドの水酸基に下記式
【0009】
【化2】
【0010】
[式中におけるRはヒドロキシル基又は脱離基を表す]
で示される化合物を反応させてエステル誘導体とする工程、
2)前記エステル誘導体を、LC−MSを用いて測定する工程、
を含むことを特徴とする測定方法に関するものである。
また、本発明は、上記式(I)で示される化合物を含むことを特徴とする、LC−MSを用いるステロイド測定用試薬に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の測定方法におけるピリジルカルボニル化操作は容易に行うことができ、その反応成績体である該エステル誘導体も安定である。一般に、水酸基を複数有するステロイドに対して同一の試薬により複数箇所誘導体化した場合、LC−MSによる測定感度が、1箇所のみ誘導体化した場合に比べて低下してしまうことも多いが、本発明の方法においては、ステロイドにおける複数箇所の水酸基をピリジルカルボニル化した場合であっても同等の測定感度を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書において、「ステロイド」とは、ステロイド化合物及びビタミンD3類縁体を意味し、水酸基を含有するものであれば特に制限されず、例えば、テストステロン、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、プレグネノロン、アロプレグナノロン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、カテコールエストロゲン、コルチゾール、コルチゾンなどのステロイド化合物及び24,25−(ジヒドロキシ)ビタミンD3、1,24,25−(トリヒドロキシ)ビタミンD3等のビタミンD3類縁体を挙げることができる。この中、テストステロン、ジヒドロテストステロン及びエストラジオールが好ましい。
【0013】
本明細書において、「水酸基」は、アルコール性でもフェノール性でもよく、また、一級でも二級でもよい。更に、「水酸基」は、ステロイド骨格上にあっても、ステロイド骨格の側鎖上にあってもよい。
本明細書において、「LC−MS」とは、例えば、一般的にはLC−MS/MSであり、その中、イオン化法を用いたものとしてはLC−ESI/MS及びLC−APCI/MSを挙げることができ、中でも、LC−ESI/MSが好ましい。
【0014】
本発明において使用することのできる下記式
【0015】
【化3】
【0016】
で示されるピリジルカルボニル化合物におけるRはヒドロキシル基又は脱離基を表す。ここで、脱離基とは、水酸基と反応して該水酸基に取って代わられることのできる基を意味し、本発明において特に制限されることはないが、例えば、ハロゲン基(フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、低級アルキルカルボニルオキシ基、置換カルボニルアミノ基、イミダゾリル基、低級アルキルオキシカルボニル基、ジカルボン酸イミド基等を挙げることができる。
Rは、好ましくは脱離基であり、より好ましくはハロゲン基、最も好ましくはクロロである。
なお、上記低級アルキル基は、炭素数が1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等を挙げることができる。
また、本発明において上記式(I)の化合物における−CORの置換位置は、特に制限されることはないが、より好ましくは2位である。
なお、前記式(I)の化合物はその殆どが既知であり、たとえ新規であったとしても、既知化合物から既知の方法により容易に合成することができる。
【0017】
本明細書において「試料」とは、生物、環境又は工業製品いずれの由来のものであってもよい。生物由来の試料としては、例えば、ヒトを含む動物の血清、唾液、涙液、尿、糞、培養細胞、又は臓器から得られる調製物、あるいは植物からの抽出物などを挙げることができる。また、環境由来の試料としては、例えば、土壌、汚水、廃水、排水、河川水、湖沼水又は海水などが挙げられる。さらに、工業製品由来の試料としては、例えば、食料品などが挙げられる。
【0018】
本発明の測定方法について、以下に具体的に説明する。
試料の調製
試料は、有機溶媒による抽出の後、簡易カラムクロマトグラフィー、例えば、ウォーターズ社製OASIS HLB(登録商標)カートリッジ、バリアン社製Bond Elut Si(登録商標)カートリッジ等による分離精製等の一般的調製方法を適宜選択して調製してから、次のエステル誘導体化反応に供することができる。
【0019】
エステル誘導体化
上記で調製した試料に対し、前記式(I)の化合物を反応させて、ステロイドをエステル誘導体に変換する。
この反応は、一般に、不活性有機溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル;ジメチルスルホキシド等の不活性有機溶媒に溶解又は懸濁した状態にて、適当な塩基、例えば、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等の存在下にて行うことができる。反応温度は、通常、−5℃乃至80℃の範囲内の温度とすることができ、好ましくは10℃乃至30℃の範囲内の温度が適している。また、反応時間は、通常5〜240分の範囲内の時間とすることができ、好ましくは30〜90分の範囲内が適している。
【0020】
上記エステル誘導体化反応において、試料の量に対する前記式(I)の化合物の使用割合は、特に制限されるものではないが、一般に、試料1mLあたり前記式(I)の化合物を少なくとも0.2mg、好ましくは1〜5mgの範囲内で用いることができる。
また、上記エステル誘導体化反応において使用する塩基の量は、特に制限されるものではないが、一般に、試料1mLあたり塩基を少なくとも0.1ミリモル、好ましくは0.1〜0.5ミリモルの範囲内とすることができる。
【0021】
なお、上記エステル誘導体化反応において、前記式(I)の化合物におけるRがヒドロキシル基を表す場合は、この式(I)の化合物は予め、例えば、1,1−カルボニルジイミダゾール、1,1−チオニルジイミダゾール等で処理して、ヒロドキシル基を活性アミド等の脱離基に変換しておくことが望ましい。また、Rがハロゲン基を表す場合、式(I)の化合物は予め、例えばイミダゾール及びDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)等で処理して、ハロゲンをイミダゾリド等の他の脱離基に変換しておくこともできる。
【0022】
以上のようにエステル誘導体化反応を行った後、常法により後処理を行い、LC−MSにより測定する。
LC−MS測定
上記エステル化誘導体反応において調製したエステル誘導体のLC−MSによる測定は、一般的なLC、例えば、ヒューレット・パッカード社製HP1100、ウォーターズ社製2795等のLC、及び一般的なMS、例えば、マイクロマス社製QUATTROII(登録商標)、QUATTRO MICRO(登録商標)、アプライド・バイオシステムズ社製API4000等のMSを用いて行うことができる。
【0023】
実験例1 各種ステロイド誘導体におけるLC−MS/MSでの検出感度の比較
本発明において使用されるステロイドのエステル誘導体と、先に述べた先行技術文献に記載されている各種誘導体化試薬を用いて誘導体化されたステロイド誘導体についてのLC−MS/MSでの検出感度を比較した。なお、誘導体化されるステロイド化合物には、テストステロン(T)及びエストラジオール(E2)を用いた。
Tについては、本発明において使用されるT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体の他に、T−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体及びT−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル−3−エトオキシム誘導体について測定を行い、E2については、本発明において使用されるE2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体の他に、E2−3−ペンタフルオロベンジル−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体について測定を行った。
【0024】
上記測定で用いた各誘導体の化学構造式及びその誘導体化試薬が記載されている先行技術文献は次の通りである。
1)本発明において使用されるT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体
【0025】
【化4】
【0026】
2)T−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体(特許文献1にN−メチルピリジニウム化試薬が記載されている)
【0027】
【化5】
【0028】
3)T−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル−3−エトオキシム誘導体(特許文献1に記載のN−メチルピリジニウム化試薬と非特許文献1に記載のエトオキシム化試薬の組み合わせ)
【0029】
【化6】
【0030】
4)本発明において使用されるE2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体
【0031】
【化7】
【0032】
5)E2−3−ペンタフルオロベンジル−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体(特許文献1に記載のN-メチルピリジニウム化試薬と非特許文献6に記載のペンタフルオロベンジル化試薬の組み合わせ)
【0033】
【化8】
【0034】
それぞれの誘導体0.05pgを含有するアセトニトリル溶液20μLをLC−MS/MSで測定し、得られたLC−MSクロマトグラムよりS/N(シグナル/ノイズ)比を算出した。この結果を下表Aに示す。
【0035】
【表1】
PY :17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体
EAPY :17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル-3−エトオキシム誘導体
PFBZPY:3−ペンタフルオロベンジル−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体
PI(1) :ピコリノイルエステル誘導体
PI(2) :ジピコリノイルエステル誘導体
【0036】
上記測定結果より、本発明において使用されるピコリノイルエステル誘導体はN−メチルピリジン−2−イル誘導体及びそのペンタフルオロベンジル誘導体よりもS/N比が大きく、より高感度で測定できることを確認した。
【0037】
実験例2 検量線の作成
エストロン(E1)及びエストラジオール(E2)について、本発明の方法により測定を行う際の検量線を作成した。
【0038】
1)検出イオンの決定
まず、E1−3−O−ピコノイルエステル誘導体のMS測定を行ったところ、m/z376.1に前駆イオンが検出され、この前駆イオンについて更にMS測定を行うと、m/z156.9にピークを示すスペクトルが得られた(図1及び図2)。したがって、E1−3−O−ピコリノイルエステル誘導体については検出イオンをm/z156.9と決定した。
次に、E2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体についてMS測定を行うと、m/z483.5に前駆イオンが検出され、この前駆イオンついて更にMS測定を行うと、m/z360.1、264.1にピークを示すスペクトルが得られた(図3及び図4)。したがって、E2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体については、検出イオンをm/z264.1と決定した。
【0039】
2)検量線の作成
E1及びE2それぞれについて 0.2、1、5、20、100、500pg/mLの水溶液(0.1mg/mLのアセトニトリル溶液より水で希釈したもの)を調製し、それぞれ1mLを量り、内部標準物質(E1については13C4 −E1、E2については16,16,17−d3−E2)各100pgを加え、さらにジエチルエーテル4mLを加えて振り混ぜ、ジエチルエーテル層を分離後、窒素気流下でジエチルエーテルを留去した。この残留物にピコリノイルクロリド塩酸塩のアセトニトリル溶液(1→20)0.1mL及びピリジン30μLを加えて振り混ぜた後、室温で1時間放置した。反応後、1%塩酸1mLを加え、ジエチルエーテル4mLを加えて振り混ぜ、ジエチルエーテル層を分離後、窒素気流下で留去した。残留物をアセトニトリル0.25mLに溶解し、水1mLを加えて希釈後、Bond Elut C18に負荷し、アセトニトリル溶液(3→10)3mLで洗浄し、更にアセトニトリル溶液(4→5)2.5mLで溶出した。溶媒を遠心エバポレーターで留去した後、アセトニトリル溶液(2→5)0.1mLに溶解した。この液20μLについてLC−MS/MS測定を行った。
LC−MS/MSの測定条件を、下表Bに示す。
【0040】
【表2】
【0041】
上記の測定によって得られたE1及びE2それぞれの値に基づき検量線を作成した。これを図5及び図6に示す。E1においては0.5〜500pgの範囲において相関係数1.0000、また、E2においては0.5〜500pgの範囲において相関係数1.0000とそれぞれ良好な直線性を示した。
【0042】
実験例3 E1及びE2の定量限界の比較
1個所をピコリノイルエステル誘導体化した場合と、複数箇所をピコリノイルエステル誘導体化した場合の、それぞれのLC−MSによる測定感度を比較するため、3位にフェノール性水酸基を有するE1と3位にフェノール性水酸基及び17位にアルコール性水酸基を有するE2を用いて、以下のとおり定量限界を求めた。
E1及びE2をそれぞれ0.2、0.5及び20pg含む溶液について、実験例2における検量線作成におけるのと同様の方法で、LC−MS/MS測定を行った。具体的にはE1及びE2のLC−MSクロマトグラムにおける生成イオンのピーク面積をそれぞれ測定し、それらと内部標準物質とのピーク面積比を算出し、これを検量線の値と比較して、E1及びE2の量を求めた。結果を下表Cに示す。
【0043】
【表3】
【0044】
この結果、E1−3−ピコリノイルエステル誘導体及びE2−3,17−ジピコリノイルエステル誘導体として検出したE1及びE2の定量限界は、真度及び精度より、それぞれ0.5及び0.2pgであった。このことから、本願発明の方法によれば、複数箇所の水酸基がエステル化された場合であっても、LC−MS/MSによる測定感度が低下することはなかった。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
実施例1 健常女性血清中のE1及びE2の量の同時測定
実験例2で行った方法と同様の方法を用いて、健常女性血清10例についてE1及びE2の量を測定した。
【0047】
1−1試料の調製
健常女性血清0.5mLを採取し、これに内部標準物質として13C4−E1及び16,16,17−d3−E−2にそれぞれ100pgを加えた後、ジエチルエーテル4mLを加えて振とうし、ジエチルエーテル層を分離し、窒素気流下で留去した。
【0048】
1−2 ピコリノイルエステル誘導体化
前項1−1で得た残留物にピコリノイルクロリド塩酸塩のアセトニトリル溶液(1→20)0.1mL及びピリジン30μLを加えて振り混ぜた後、室温で1時間放置した。反応後、1%塩酸1mLを加え、ジエチルエーテル4mLを加えて振とうし、エーテル層を分離後、窒素気流下で留去した。残留物をアセトニトリル0.25mLに溶解し、水1mLを加えて希釈後、Bond Elut C18に負荷し、アセトニトリル溶液(3→10)3mLで洗浄し、更にアセトニトリル溶液(4→5)2.5mLで溶出した。溶出液を遠心エバポレーターで留去した後、アセトニトリル溶液(2→5)100μLに溶解し、LC−MS/MSに供した。
【0049】
1−3 LC−MS/MS測定
前項1−2で得たアセトニトリル溶液100μLのうち、その20μLをLC−MS/MS測定に用いた。測定は、実験例2と同様に行った。そしてE1及びE2のLC−MSクロマトグラムにおける生成イオンのピーク面積をそれぞれ測定し、それらと内部標準物質とのピーク面積比を算出し、検量線と比較してE1及びE2濃度を求めた。その結果を、下表Dに示す。
【0050】
【表4】
【0051】
従来は、E1及びE2をそれぞれ別個に測定する必要があったが、本発明の方法によれば、1回の測定でE1及びE2を0.5〜500pg/mLの範囲で同時定量することができる。
【0052】
実施例2 健常男性血清及び唾液中のテストステロン(T)及びジヒドロテストステロン(DHT)の同時測定
2−1 検出イオンの決定
T−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についてMS測定を行うと、m/z394.4に前駆イオンが検出された。この前駆イオンについて更にMS測定を行うと、m/z253.4にピークを示すスペクトルが得られた(図7及び図8)。したがってT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についての検出イオンをm/z253.4に決定した。
一方、DHT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についてMS測定を行うと、m/z396.4に前駆イオンが検出された。この前駆イオンについて更にMS測定を行うと、m/z255.4にピークを示すスペクトルが得られた(図9及び図10)。したがって、DHT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についての検出イオンをm/z255.4に決定した。
【0053】
2−2 試料の調製
健常男性血清200μLに内部標準物質(16,16,17−d3−T 及び16,16,17−d3−DHT)、ジエチルエーテル4mLを加えて、室温で10分間振とうした後、エーテル層を分離し、窒素気流中で留去した。
なお、唾液の場合は、1mLを採取し、血清と同様に操作した。
【0054】
2−3 ピコリノイルエステル誘導体化
前項2−2で得た残留物にピコリノイルクロリド塩酸塩のアセトニトリル溶液(1→40)200μL及びピリジン50μLを加えて振り混ぜた後、室温で90分間放置した。反応後、水750μL及びジエチルエーテル5mLを加えて10分間振り混ぜた後、エーテル層を分離した。このエーテル層に更に水750μLを加えて振り混ぜた後、エーテル層を分取し、窒素気流下で留去した。残留物をアセトニトリル250μLに溶解し、Bond Elut C18カラムに負荷し、水1mL、次いでアセトニトリル溶液(2→5)4mLで洗浄後、アセトニトリル溶液(7→10)3mLで溶出した。溶媒を遠心エバポレーターにより留去した後、残留物をアセトニトリル/0.1%ギ酸混液(7:3)100μLに溶解した。
【0055】
2−4 LC−MS/MS測定
前項2−3で得たアセトニトリル/0.1%ギ酸混合溶液100μLのうち、その20μLをLC−MS/MS測定に用いた。下表EにLC−MS/MSの測定条件を示す。
【0056】
【表5】
【0057】
T及びDHTのLC−MSクロマトグラムにおける生成イオンのピーク面積と内部標準物質のピーク面積をそれぞれ測定し、これらからピーク面積比を算出し、検量線と比較してそれぞれの濃度を求めた。その結果を、下表Fに示す。
【0058】
【表6】
【0059】
なお、上記T及びDHTの濃度を求めるための検量線をそれぞれ図11及び図12に示す。検量線は、T及びDHTそれぞれ、0.2、1.5、20、100、500pg/mLの水溶液(0.1mg/mLアセトニトリル溶液より水で希釈したもの)を、並びに内部標準物質として、Tについては16,16,17−d3−Tを、またDHTについては16,16,17−d3−DHTを各500pg用い、実験例2と同様の方法により作成した。なおLC−MS/MS測定は前記表Eに示す測定条件により行った。Tにおいては0〜500pgの範囲において相関係数0.9998、またDHTにおいては0〜500pgの範囲において相関係数0.9990と、それぞれ良好な直線性を示した。
【0060】
実施例3 ヒト前立腺組織中のテストステロン(T)及びジヒドロテストステロン(DHT)の同時測定
3−1 試料の調製
前立腺組織約50mgを精密に量った後、液体窒素により凍結、粉砕し、水4mLを加えてホモジナイズした。ホモジネートした液500μLをとり、これに内部標準物質として16,16,17−d3−T 及び16,16,17−d3−DHTをそれぞれ500pg並びにエタノール4mLを加え、55℃で3時間振とうした後、冷却遠心分離した。遠心分離後の上清を分取し、遠心エバポレーターにより溶媒を留去し、得られた残留物をメタノール250μLに溶解後、水1mLで希釈した。この液を、あらかじめメタノール6mL及び水6mLで調製したBond Elut C18カラムに負荷し、アセトニトリル溶液(3→10)2mLで洗浄した後、アセトニトリル溶液(7→10)2.5mLで溶出した。そして、窒素気流中にて溶媒を留去した。
【0061】
3−2 ピコリノイルエステル誘導体化及びLC−MS/MS測定
実施例2−3及び2−4と同様にして、ピコリノイルエステル誘導体化及びLC−MS/MS測定を行い、前立腺組織中のT及びDHTの濃度を求めた。
その結果を、下表Gに示す。
【0062】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の方法によれば、試料中のステロイドの有無を検出したり、ステロイドの量を測定したりすることができる。
本発明は、例えば、医学、生化学、公衆衛生、食品検査などの分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、エストロン−3−ピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。特徴的な前駆イオンm/z376.0のピークを確認することができる。
【図2】図2は、エストロン−3−ピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z376.0からの生成イオンのスペクトルである。
【図3】図3は、エストラジオール−3,17―ジピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。特徴的な前駆イオンm/z483.5のピークが確認できる。
【図4】図4は、エストラジオール−3,17―ジピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z483.5からの生成イオンのスペクトルである。
【図5】図5は、本発明の測定方法に用いるためのエストロン0〜500pgの検量線である。
【図6】図6は、本発明の測定方法に用いるためのエストラジオール0〜500pgの検量線である。
【図7】図7は、テストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。前駆イオンm/z394.4のピークが確認できる。
【図8】図8は、テストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z394.4からの生成イオンのスペクトルである。
【図9】図9は、ジヒドロテストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。前駆イオンm/z396.4のピークが確認できる。
【図10】図10は、ジヒドロテストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z396.4からの生成イオンのスペクトルである。
【図11】図11は、本発明の測定方法に用いるためのテストステロン0〜500pgの検量線である。
【図12】図12は、本発明の測定方法に用いるためのジヒドロテストステロン0〜500pgの検量線である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれるステロイドを液体クロマトグラフィー−質量分析計(Liquid Chromatography-Mass Spectrometry:LC−MS)を用いて測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステロイドは生体内において極微量で強力な生理作用を示すため、その量を正確に把握することは、臨床診断及び病態解析の上で重要である。しかしながら、その量は微量(数pg/mL)である上、構造類似化合物も存在することから、測定には高感度、特異性が高いことなどが必要となる。
【0003】
ステロイドの測定には、通常、ラジオイムノアッセイ(Radio Immunoassay:RIA)、酵素免疫反応(Enzyme Immunoassay:EIA)、GC−MS、LC−MS等が用いられる。このうち、RIA及びEIAについては、それら免疫法の一般的な定量限界は10pg/mLであり、それに加えて試料中には測定対象化合物の構造類似体や性ホルモン結合蛋白も存在しているため、定量値が大きく変動する可能性がある。最近になって、シーアイエス ダイアグノスティックス社から、検出感度が1.4pg/mLと極めて高感度のエストラジオールRIA測定キットが発売されたが、この測定キットはエストラジオール−17β グルクロナイドとの交差性にあまり優れておらず、エストラジオール特異性に問題が残っている。
【0004】
LC−MSについては、測定対象を誘導体化して検出感度を高め、微量測定を行う方法が種々試みられている。例えば、非特許文献1〜3には、ステロイド化合物に電子親和性原子団を導入し、LCと正イオンモードの大気圧化学イオン化MS(Atmospheric Pressure Chemical Ionization based Mass Spectrometry:APCI/MS)を組み合わせて測定する方法が示されている。また、ステロイドのカルボニル基をp−トルエンスルホンヒドラゾン化してLC−MSで測定する方法(非特許文献4参照)、ステロイドのアルコール性水酸基をN−アルキルピリジニウム化してLCとエレクトロスプレーイオン化MS(Electrospray ionization based Mass Spectrometry:ESI/MS)を組み合わせて測定する方法(特許文献1参照)も提案されている。しかし、これらの方法における測定限界は数10〜100pg/mLである。
【0005】
非特許文献5には、種々の化合物をペンタフルオロベンジル化すると、LC−APCI/MSによりエストロン等を数pg以下のレベルで測定できることが記載されている。しかし、この文献においては、アンドロゲン、エストラジオール等の測定は行われておらず、この方法でステロイド類全般が同様のレベルで測定することができるかどうか不明である。また、特許文献2には、ステロイドのフェノール性水酸基をペンタフルオロベンゾイル化し、LC−MS/MSにより測定する方法が記載されているが、この誘導体は安定性に欠けるという欠点があり、またこの文献には測定感度が記載されていない。
非特許文献6には、ステロイドのフェノール性水酸基をダンシル化(5−ジメチルアミノナフタレン−1−イルスルフォン化)し、これをLC−MS/MSで測定することにより、例えばエストラジオールの測定限界として6.3pgを達成できたことが記載されている。しかし、この方法においては、特異性及びダンシル化した後の化合物の安定性に欠けるという欠点がある。
特許文献3には、ステロイドをフェニルヒドラゾン化又はフェニルアミノフェニルボロネート化した後、LC−負イオンAPCI/MSで測定することにより、ステロイドを数pgのレベルで測定できることが記載されている。また、このときの測定感度は、ペンタフルオロベンジル化のときと比べ最大7倍上昇していることも示されている。しかしながら、この方法は、オキソ基又はビシナルジオール基を有するステロイドに対してのみ使用可能である。
【特許文献1】特開2003-161726号公報
【特許文献2】特開2000-88834号公報
【特許文献3】特開2004-257949号公報
【非特許文献1】Rapid Comm. Mass Spectrom.,16,1590,2002
【非特許文献2】Biomed.Chromatogr.,15,133,2001
【非特許文献3】J.Chromatogr.,B,772,229,2002
【非特許文献4】J.Chromatogr.,B,714,153,1998
【非特許文献5】J.Chromatogr.,B,780,315,2002
【非特許文献6】Anal.Chem.,72,3007,2000
【非特許文献7】Clin.Chem.,50(2),373,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、試料中に含まれるステロイドをLC−MSにより測定する方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、LC−MSを用いるステロイド測定用の試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ステロイドの水酸基をピリジルカルボニル化してピリジルカルボン酸エステル誘導体とすることにより、ステロイドをLC−MSにより数pgのレベルで測定できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、試料中に含まれるステロイドをLC−MSを用いて測定する方法であって、
1)試料中のステロイドの水酸基に下記式
【0009】
【化2】
【0010】
[式中におけるRはヒドロキシル基又は脱離基を表す]
で示される化合物を反応させてエステル誘導体とする工程、
2)前記エステル誘導体を、LC−MSを用いて測定する工程、
を含むことを特徴とする測定方法に関するものである。
また、本発明は、上記式(I)で示される化合物を含むことを特徴とする、LC−MSを用いるステロイド測定用試薬に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の測定方法におけるピリジルカルボニル化操作は容易に行うことができ、その反応成績体である該エステル誘導体も安定である。一般に、水酸基を複数有するステロイドに対して同一の試薬により複数箇所誘導体化した場合、LC−MSによる測定感度が、1箇所のみ誘導体化した場合に比べて低下してしまうことも多いが、本発明の方法においては、ステロイドにおける複数箇所の水酸基をピリジルカルボニル化した場合であっても同等の測定感度を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書において、「ステロイド」とは、ステロイド化合物及びビタミンD3類縁体を意味し、水酸基を含有するものであれば特に制限されず、例えば、テストステロン、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、プレグネノロン、アロプレグナノロン、エストロン、エストラジオール、エストリオール、カテコールエストロゲン、コルチゾール、コルチゾンなどのステロイド化合物及び24,25−(ジヒドロキシ)ビタミンD3、1,24,25−(トリヒドロキシ)ビタミンD3等のビタミンD3類縁体を挙げることができる。この中、テストステロン、ジヒドロテストステロン及びエストラジオールが好ましい。
【0013】
本明細書において、「水酸基」は、アルコール性でもフェノール性でもよく、また、一級でも二級でもよい。更に、「水酸基」は、ステロイド骨格上にあっても、ステロイド骨格の側鎖上にあってもよい。
本明細書において、「LC−MS」とは、例えば、一般的にはLC−MS/MSであり、その中、イオン化法を用いたものとしてはLC−ESI/MS及びLC−APCI/MSを挙げることができ、中でも、LC−ESI/MSが好ましい。
【0014】
本発明において使用することのできる下記式
【0015】
【化3】
【0016】
で示されるピリジルカルボニル化合物におけるRはヒドロキシル基又は脱離基を表す。ここで、脱離基とは、水酸基と反応して該水酸基に取って代わられることのできる基を意味し、本発明において特に制限されることはないが、例えば、ハロゲン基(フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、低級アルキルカルボニルオキシ基、置換カルボニルアミノ基、イミダゾリル基、低級アルキルオキシカルボニル基、ジカルボン酸イミド基等を挙げることができる。
Rは、好ましくは脱離基であり、より好ましくはハロゲン基、最も好ましくはクロロである。
なお、上記低級アルキル基は、炭素数が1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等を挙げることができる。
また、本発明において上記式(I)の化合物における−CORの置換位置は、特に制限されることはないが、より好ましくは2位である。
なお、前記式(I)の化合物はその殆どが既知であり、たとえ新規であったとしても、既知化合物から既知の方法により容易に合成することができる。
【0017】
本明細書において「試料」とは、生物、環境又は工業製品いずれの由来のものであってもよい。生物由来の試料としては、例えば、ヒトを含む動物の血清、唾液、涙液、尿、糞、培養細胞、又は臓器から得られる調製物、あるいは植物からの抽出物などを挙げることができる。また、環境由来の試料としては、例えば、土壌、汚水、廃水、排水、河川水、湖沼水又は海水などが挙げられる。さらに、工業製品由来の試料としては、例えば、食料品などが挙げられる。
【0018】
本発明の測定方法について、以下に具体的に説明する。
試料の調製
試料は、有機溶媒による抽出の後、簡易カラムクロマトグラフィー、例えば、ウォーターズ社製OASIS HLB(登録商標)カートリッジ、バリアン社製Bond Elut Si(登録商標)カートリッジ等による分離精製等の一般的調製方法を適宜選択して調製してから、次のエステル誘導体化反応に供することができる。
【0019】
エステル誘導体化
上記で調製した試料に対し、前記式(I)の化合物を反応させて、ステロイドをエステル誘導体に変換する。
この反応は、一般に、不活性有機溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル;ジメチルスルホキシド等の不活性有機溶媒に溶解又は懸濁した状態にて、適当な塩基、例えば、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等の存在下にて行うことができる。反応温度は、通常、−5℃乃至80℃の範囲内の温度とすることができ、好ましくは10℃乃至30℃の範囲内の温度が適している。また、反応時間は、通常5〜240分の範囲内の時間とすることができ、好ましくは30〜90分の範囲内が適している。
【0020】
上記エステル誘導体化反応において、試料の量に対する前記式(I)の化合物の使用割合は、特に制限されるものではないが、一般に、試料1mLあたり前記式(I)の化合物を少なくとも0.2mg、好ましくは1〜5mgの範囲内で用いることができる。
また、上記エステル誘導体化反応において使用する塩基の量は、特に制限されるものではないが、一般に、試料1mLあたり塩基を少なくとも0.1ミリモル、好ましくは0.1〜0.5ミリモルの範囲内とすることができる。
【0021】
なお、上記エステル誘導体化反応において、前記式(I)の化合物におけるRがヒドロキシル基を表す場合は、この式(I)の化合物は予め、例えば、1,1−カルボニルジイミダゾール、1,1−チオニルジイミダゾール等で処理して、ヒロドキシル基を活性アミド等の脱離基に変換しておくことが望ましい。また、Rがハロゲン基を表す場合、式(I)の化合物は予め、例えばイミダゾール及びDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)等で処理して、ハロゲンをイミダゾリド等の他の脱離基に変換しておくこともできる。
【0022】
以上のようにエステル誘導体化反応を行った後、常法により後処理を行い、LC−MSにより測定する。
LC−MS測定
上記エステル化誘導体反応において調製したエステル誘導体のLC−MSによる測定は、一般的なLC、例えば、ヒューレット・パッカード社製HP1100、ウォーターズ社製2795等のLC、及び一般的なMS、例えば、マイクロマス社製QUATTROII(登録商標)、QUATTRO MICRO(登録商標)、アプライド・バイオシステムズ社製API4000等のMSを用いて行うことができる。
【0023】
実験例1 各種ステロイド誘導体におけるLC−MS/MSでの検出感度の比較
本発明において使用されるステロイドのエステル誘導体と、先に述べた先行技術文献に記載されている各種誘導体化試薬を用いて誘導体化されたステロイド誘導体についてのLC−MS/MSでの検出感度を比較した。なお、誘導体化されるステロイド化合物には、テストステロン(T)及びエストラジオール(E2)を用いた。
Tについては、本発明において使用されるT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体の他に、T−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体及びT−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル−3−エトオキシム誘導体について測定を行い、E2については、本発明において使用されるE2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体の他に、E2−3−ペンタフルオロベンジル−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体について測定を行った。
【0024】
上記測定で用いた各誘導体の化学構造式及びその誘導体化試薬が記載されている先行技術文献は次の通りである。
1)本発明において使用されるT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体
【0025】
【化4】
【0026】
2)T−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体(特許文献1にN−メチルピリジニウム化試薬が記載されている)
【0027】
【化5】
【0028】
3)T−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル−3−エトオキシム誘導体(特許文献1に記載のN−メチルピリジニウム化試薬と非特許文献1に記載のエトオキシム化試薬の組み合わせ)
【0029】
【化6】
【0030】
4)本発明において使用されるE2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体
【0031】
【化7】
【0032】
5)E2−3−ペンタフルオロベンジル−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体(特許文献1に記載のN-メチルピリジニウム化試薬と非特許文献6に記載のペンタフルオロベンジル化試薬の組み合わせ)
【0033】
【化8】
【0034】
それぞれの誘導体0.05pgを含有するアセトニトリル溶液20μLをLC−MS/MSで測定し、得られたLC−MSクロマトグラムよりS/N(シグナル/ノイズ)比を算出した。この結果を下表Aに示す。
【0035】
【表1】
PY :17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体
EAPY :17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル-3−エトオキシム誘導体
PFBZPY:3−ペンタフルオロベンジル−17−O−N−メチルピリジニウム−2−エーテル誘導体
PI(1) :ピコリノイルエステル誘導体
PI(2) :ジピコリノイルエステル誘導体
【0036】
上記測定結果より、本発明において使用されるピコリノイルエステル誘導体はN−メチルピリジン−2−イル誘導体及びそのペンタフルオロベンジル誘導体よりもS/N比が大きく、より高感度で測定できることを確認した。
【0037】
実験例2 検量線の作成
エストロン(E1)及びエストラジオール(E2)について、本発明の方法により測定を行う際の検量線を作成した。
【0038】
1)検出イオンの決定
まず、E1−3−O−ピコノイルエステル誘導体のMS測定を行ったところ、m/z376.1に前駆イオンが検出され、この前駆イオンについて更にMS測定を行うと、m/z156.9にピークを示すスペクトルが得られた(図1及び図2)。したがって、E1−3−O−ピコリノイルエステル誘導体については検出イオンをm/z156.9と決定した。
次に、E2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体についてMS測定を行うと、m/z483.5に前駆イオンが検出され、この前駆イオンついて更にMS測定を行うと、m/z360.1、264.1にピークを示すスペクトルが得られた(図3及び図4)。したがって、E2−3,17−O−ジピコリノイルエステル誘導体については、検出イオンをm/z264.1と決定した。
【0039】
2)検量線の作成
E1及びE2それぞれについて 0.2、1、5、20、100、500pg/mLの水溶液(0.1mg/mLのアセトニトリル溶液より水で希釈したもの)を調製し、それぞれ1mLを量り、内部標準物質(E1については13C4 −E1、E2については16,16,17−d3−E2)各100pgを加え、さらにジエチルエーテル4mLを加えて振り混ぜ、ジエチルエーテル層を分離後、窒素気流下でジエチルエーテルを留去した。この残留物にピコリノイルクロリド塩酸塩のアセトニトリル溶液(1→20)0.1mL及びピリジン30μLを加えて振り混ぜた後、室温で1時間放置した。反応後、1%塩酸1mLを加え、ジエチルエーテル4mLを加えて振り混ぜ、ジエチルエーテル層を分離後、窒素気流下で留去した。残留物をアセトニトリル0.25mLに溶解し、水1mLを加えて希釈後、Bond Elut C18に負荷し、アセトニトリル溶液(3→10)3mLで洗浄し、更にアセトニトリル溶液(4→5)2.5mLで溶出した。溶媒を遠心エバポレーターで留去した後、アセトニトリル溶液(2→5)0.1mLに溶解した。この液20μLについてLC−MS/MS測定を行った。
LC−MS/MSの測定条件を、下表Bに示す。
【0040】
【表2】
【0041】
上記の測定によって得られたE1及びE2それぞれの値に基づき検量線を作成した。これを図5及び図6に示す。E1においては0.5〜500pgの範囲において相関係数1.0000、また、E2においては0.5〜500pgの範囲において相関係数1.0000とそれぞれ良好な直線性を示した。
【0042】
実験例3 E1及びE2の定量限界の比較
1個所をピコリノイルエステル誘導体化した場合と、複数箇所をピコリノイルエステル誘導体化した場合の、それぞれのLC−MSによる測定感度を比較するため、3位にフェノール性水酸基を有するE1と3位にフェノール性水酸基及び17位にアルコール性水酸基を有するE2を用いて、以下のとおり定量限界を求めた。
E1及びE2をそれぞれ0.2、0.5及び20pg含む溶液について、実験例2における検量線作成におけるのと同様の方法で、LC−MS/MS測定を行った。具体的にはE1及びE2のLC−MSクロマトグラムにおける生成イオンのピーク面積をそれぞれ測定し、それらと内部標準物質とのピーク面積比を算出し、これを検量線の値と比較して、E1及びE2の量を求めた。結果を下表Cに示す。
【0043】
【表3】
【0044】
この結果、E1−3−ピコリノイルエステル誘導体及びE2−3,17−ジピコリノイルエステル誘導体として検出したE1及びE2の定量限界は、真度及び精度より、それぞれ0.5及び0.2pgであった。このことから、本願発明の方法によれば、複数箇所の水酸基がエステル化された場合であっても、LC−MS/MSによる測定感度が低下することはなかった。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
実施例1 健常女性血清中のE1及びE2の量の同時測定
実験例2で行った方法と同様の方法を用いて、健常女性血清10例についてE1及びE2の量を測定した。
【0047】
1−1試料の調製
健常女性血清0.5mLを採取し、これに内部標準物質として13C4−E1及び16,16,17−d3−E−2にそれぞれ100pgを加えた後、ジエチルエーテル4mLを加えて振とうし、ジエチルエーテル層を分離し、窒素気流下で留去した。
【0048】
1−2 ピコリノイルエステル誘導体化
前項1−1で得た残留物にピコリノイルクロリド塩酸塩のアセトニトリル溶液(1→20)0.1mL及びピリジン30μLを加えて振り混ぜた後、室温で1時間放置した。反応後、1%塩酸1mLを加え、ジエチルエーテル4mLを加えて振とうし、エーテル層を分離後、窒素気流下で留去した。残留物をアセトニトリル0.25mLに溶解し、水1mLを加えて希釈後、Bond Elut C18に負荷し、アセトニトリル溶液(3→10)3mLで洗浄し、更にアセトニトリル溶液(4→5)2.5mLで溶出した。溶出液を遠心エバポレーターで留去した後、アセトニトリル溶液(2→5)100μLに溶解し、LC−MS/MSに供した。
【0049】
1−3 LC−MS/MS測定
前項1−2で得たアセトニトリル溶液100μLのうち、その20μLをLC−MS/MS測定に用いた。測定は、実験例2と同様に行った。そしてE1及びE2のLC−MSクロマトグラムにおける生成イオンのピーク面積をそれぞれ測定し、それらと内部標準物質とのピーク面積比を算出し、検量線と比較してE1及びE2濃度を求めた。その結果を、下表Dに示す。
【0050】
【表4】
【0051】
従来は、E1及びE2をそれぞれ別個に測定する必要があったが、本発明の方法によれば、1回の測定でE1及びE2を0.5〜500pg/mLの範囲で同時定量することができる。
【0052】
実施例2 健常男性血清及び唾液中のテストステロン(T)及びジヒドロテストステロン(DHT)の同時測定
2−1 検出イオンの決定
T−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についてMS測定を行うと、m/z394.4に前駆イオンが検出された。この前駆イオンについて更にMS測定を行うと、m/z253.4にピークを示すスペクトルが得られた(図7及び図8)。したがってT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についての検出イオンをm/z253.4に決定した。
一方、DHT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についてMS測定を行うと、m/z396.4に前駆イオンが検出された。この前駆イオンについて更にMS測定を行うと、m/z255.4にピークを示すスペクトルが得られた(図9及び図10)。したがって、DHT−17−O−ピコリノイルエステル誘導体についての検出イオンをm/z255.4に決定した。
【0053】
2−2 試料の調製
健常男性血清200μLに内部標準物質(16,16,17−d3−T 及び16,16,17−d3−DHT)、ジエチルエーテル4mLを加えて、室温で10分間振とうした後、エーテル層を分離し、窒素気流中で留去した。
なお、唾液の場合は、1mLを採取し、血清と同様に操作した。
【0054】
2−3 ピコリノイルエステル誘導体化
前項2−2で得た残留物にピコリノイルクロリド塩酸塩のアセトニトリル溶液(1→40)200μL及びピリジン50μLを加えて振り混ぜた後、室温で90分間放置した。反応後、水750μL及びジエチルエーテル5mLを加えて10分間振り混ぜた後、エーテル層を分離した。このエーテル層に更に水750μLを加えて振り混ぜた後、エーテル層を分取し、窒素気流下で留去した。残留物をアセトニトリル250μLに溶解し、Bond Elut C18カラムに負荷し、水1mL、次いでアセトニトリル溶液(2→5)4mLで洗浄後、アセトニトリル溶液(7→10)3mLで溶出した。溶媒を遠心エバポレーターにより留去した後、残留物をアセトニトリル/0.1%ギ酸混液(7:3)100μLに溶解した。
【0055】
2−4 LC−MS/MS測定
前項2−3で得たアセトニトリル/0.1%ギ酸混合溶液100μLのうち、その20μLをLC−MS/MS測定に用いた。下表EにLC−MS/MSの測定条件を示す。
【0056】
【表5】
【0057】
T及びDHTのLC−MSクロマトグラムにおける生成イオンのピーク面積と内部標準物質のピーク面積をそれぞれ測定し、これらからピーク面積比を算出し、検量線と比較してそれぞれの濃度を求めた。その結果を、下表Fに示す。
【0058】
【表6】
【0059】
なお、上記T及びDHTの濃度を求めるための検量線をそれぞれ図11及び図12に示す。検量線は、T及びDHTそれぞれ、0.2、1.5、20、100、500pg/mLの水溶液(0.1mg/mLアセトニトリル溶液より水で希釈したもの)を、並びに内部標準物質として、Tについては16,16,17−d3−Tを、またDHTについては16,16,17−d3−DHTを各500pg用い、実験例2と同様の方法により作成した。なおLC−MS/MS測定は前記表Eに示す測定条件により行った。Tにおいては0〜500pgの範囲において相関係数0.9998、またDHTにおいては0〜500pgの範囲において相関係数0.9990と、それぞれ良好な直線性を示した。
【0060】
実施例3 ヒト前立腺組織中のテストステロン(T)及びジヒドロテストステロン(DHT)の同時測定
3−1 試料の調製
前立腺組織約50mgを精密に量った後、液体窒素により凍結、粉砕し、水4mLを加えてホモジナイズした。ホモジネートした液500μLをとり、これに内部標準物質として16,16,17−d3−T 及び16,16,17−d3−DHTをそれぞれ500pg並びにエタノール4mLを加え、55℃で3時間振とうした後、冷却遠心分離した。遠心分離後の上清を分取し、遠心エバポレーターにより溶媒を留去し、得られた残留物をメタノール250μLに溶解後、水1mLで希釈した。この液を、あらかじめメタノール6mL及び水6mLで調製したBond Elut C18カラムに負荷し、アセトニトリル溶液(3→10)2mLで洗浄した後、アセトニトリル溶液(7→10)2.5mLで溶出した。そして、窒素気流中にて溶媒を留去した。
【0061】
3−2 ピコリノイルエステル誘導体化及びLC−MS/MS測定
実施例2−3及び2−4と同様にして、ピコリノイルエステル誘導体化及びLC−MS/MS測定を行い、前立腺組織中のT及びDHTの濃度を求めた。
その結果を、下表Gに示す。
【0062】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の方法によれば、試料中のステロイドの有無を検出したり、ステロイドの量を測定したりすることができる。
本発明は、例えば、医学、生化学、公衆衛生、食品検査などの分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、エストロン−3−ピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。特徴的な前駆イオンm/z376.0のピークを確認することができる。
【図2】図2は、エストロン−3−ピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z376.0からの生成イオンのスペクトルである。
【図3】図3は、エストラジオール−3,17―ジピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。特徴的な前駆イオンm/z483.5のピークが確認できる。
【図4】図4は、エストラジオール−3,17―ジピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z483.5からの生成イオンのスペクトルである。
【図5】図5は、本発明の測定方法に用いるためのエストロン0〜500pgの検量線である。
【図6】図6は、本発明の測定方法に用いるためのエストラジオール0〜500pgの検量線である。
【図7】図7は、テストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。前駆イオンm/z394.4のピークが確認できる。
【図8】図8は、テストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z394.4からの生成イオンのスペクトルである。
【図9】図9は、ジヒドロテストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体のマススペクトルである。前駆イオンm/z396.4のピークが確認できる。
【図10】図10は、ジヒドロテストステロン―17−O−ピコリノイルエステル誘導体の前駆イオンm/z396.4からの生成イオンのスペクトルである。
【図11】図11は、本発明の測定方法に用いるためのテストステロン0〜500pgの検量線である。
【図12】図12は、本発明の測定方法に用いるためのジヒドロテストステロン0〜500pgの検量線である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に含まれるステロイドをLC−MSを用いて測定する方法であって、
1)試料中のステロイドの水酸基に下記式
【化1】
[式中におけるRはヒドロキシル基又は脱離基を表す。]
で示される化合物を反応させてエステル誘導体とする工程、
2)前記エステル誘導体を、LC−MSを用いて測定する工程、
を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項2】
請求項1の式(I)で示される化合物を含むことを特徴とする、LC−MSを用いるステロイド測定用試薬。
【請求項1】
試料中に含まれるステロイドをLC−MSを用いて測定する方法であって、
1)試料中のステロイドの水酸基に下記式
【化1】
[式中におけるRはヒドロキシル基又は脱離基を表す。]
で示される化合物を反応させてエステル誘導体とする工程、
2)前記エステル誘導体を、LC−MSを用いて測定する工程、
を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項2】
請求項1の式(I)で示される化合物を含むことを特徴とする、LC−MSを用いるステロイド測定用試薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−132741(P2007−132741A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324856(P2005−324856)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【出願人】(504125458)株式会社帝国臓器製薬メディカル (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【出願人】(504125458)株式会社帝国臓器製薬メディカル (6)
【Fターム(参考)】
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