説明

ステンレス鋼の連続鋳造方法

【目的】本発明はステンレス鋼の連続鋳造方法において、鋳造された鋳片の芯部の粗構造部分であるザクからの酸化を防止することを目的とする。
【構成】ターンデイシュ1から鋳造型4内へステンレス鋼の溶湯3を流下させて鋳片5を鋳造し連続的に引出す際、鋳片5の凝固率が15容量%以上になる位置で圧下することによって芯部に形成されるザクを押潰す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はステンレス鋼の連続鋳造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼の連続鋳造方法は図3に示すようにターンデイシュ(1) の流下口(2) からステンレス鋼の溶湯(3) を鋳造型(4) 内に流下せしめ、該鋳造型(4) にて鋳片(5) に鋳造して連続的に引出す方法である。
【0003】この際、溶湯(3) は鋳造型(4) によって外周から冷却され、鋳造型(4) 内では鋳造される鋳片(5) においては芯部の溶融相Mの周りに凝固相Sが存在する状態となり、冷却されるにしたがって凝固相Sの容量%が次第に増大する。そして凝固相Sの熱収縮によって鋳造された鋳片(5) の芯部の構造が粗になっていわゆるザク(6) が形成される。鋳造された鋳片(5) を切断すると図4に示すようにその切断面(5A)にザク(6)が露出し、そのまゝ放置するとザク(6) の部分から鋳片(5) が酸化される。
【0004】従来はこのようなザク(6) からの酸化を防止するために、該鋳片(5) の切断面(5A)を溶接したり、切断面付近を押潰すことによってザク(6) を閉塞する方法が行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の酸化防止方法にあっては、鋳片(5) を切断してから溶接あるいは押潰すまでの間に酸化が起こってしまうおそれがあり、完全な酸化防止方法とはならない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、ターンデイシュ(1) からステンレス鋼の溶湯(3) を鋳造型(4) 内に流下せしめ、該鋳造型(4) にて鋳片(5) に鋳造して連続的に引出す連続鋳造法において、該鋳造型(4) から引出した鋳片(5) を中心部固相率15容量%以上になる位置で圧下するステンレス鋼の連続鋳造方法を提供するものである。
【0007】
【作用】ターンデイシュ(1) からステンレス鋼の溶湯(3) を鋳造型(4) 内に流下せしめると、該溶湯(3) は鋳造型(4) 内で外周から冷却されて鋳片(5) となるが、鋳造型(4) 内では該鋳片(5) の芯部が溶融相Mであり、外周部が凝固相Sであり、冷却されるにしたがって凝固相Sの容量%が次第に増大する。
【0008】そこで鋳片(5) の芯部に溶融相Mが存在している間に該鋳片(5) を圧下すると、該溶融相Mが凝固することによって形成されるザクが押潰される。該鋳片(5) を圧下する時点で中心部固相率が15容量%に満たない場合は、圧下した後も鋳片(5) の芯部にかなりの比率で溶融相Mが存在し、これが凝固するとザクが発生するおそれがある。
【0009】
【実施例】本発明を図1および図2に示す一実施例によって説明すれば、(1) はステンレス鋼の溶湯(3) が充填されているターンデイシュであり、該ターンデイシュ(1)の流下口(2) から該溶湯(3) が鋳造型(4) 内に流下される。
【0010】本発明において対象とするステンレス鋼は例えばSUS410,SUS403,SUS430等のクロム系ステンレス鋼、SUS301,SUS302,SUS304,SUS321,SUS316等のクロム−ニッケル系ステンレス鋼等全ての種類のステンレス鋼を含む。
【0011】上記ターンデイシュ(1) から流下した溶湯(3) は鋳造型(4) により外周から冷却されて鋳片(5) に鋳造されて連続的に引出されるが、該鋳造型(4) 内では芯部に溶融相Mが存在し、外周部に凝固相Sが存在し、冷却が進むにつれて凝固相Sの比率、即ち中心部固相率が増大する。中心部固相率が増大するにつれて溶融相Mの周りにはザク(6) が形成されて来るが、中心部固相率15容量%以上になる位置でカリバーロール(7) 等の圧下手段によって圧下する。
【0012】このようにして溶融相Mの周りのザク(6) が押潰されつゝ該溶融相Mが凝固する結果、鋳片(5) の芯部には実質的にザクが存在しなくなる。しかし鋳片(5) の中心部固相率が15容量%に満たない位置で圧下すると、圧力後において溶融相Mの凝固によるザク発生のおそれがある。
【0013】本発明において望ましい減面率は略1〜5%であり、例えば径350mmの鋳片(5) では片面の圧下量が12mm,両面では24mmと設定される。また圧下位置は炭素含有量の多い鋼種では凝固末期の収縮量が大きいため中心部固相率がより高くなる位置で圧下されるのが望ましい。例えば炭素含有率が0.08重量%以下のSUS304では中心部固相率が15〜30容量%の位置で圧下され、炭素含有率が0.12〜0.18重量%のSUS403では中心部固相率が60〜80容量%の位置で圧下されることが望ましい。
【0014】鋳片(5) の中心部固相率は例えば超音波等で測定されるが、鋳片(5) の比熱、溶湯温度、鋳造型(4) の型面温度等のデータから計算することも出来る。
【0015】
【発明の効果】したがって本発明では鋳片切断前にザクが解消されるので、ザクからの酸化が完全に防止される。
【図面の簡単な説明】
図1および図2は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】連続鋳造模式図
【図2】圧下部分斜視図図3および図4は従来例を示すものである。
【図3】連続鋳造模式図
【図4】鋳片切断部分斜視図
【符号の説明】
1 ターンデイシュ
2 流下口
3 溶湯
4 鋳造型
5 鋳片
7 カリバーロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】ターンデイシュからステンレス鋼の溶湯を鋳造型内に流下せしめ、該鋳造型にて鋳片に鋳造して連続的に引出す連続鋳造法において、該鋳造型から引出した鋳片を中心部固相率15容量%以上になる位置で圧下することを特徴とするステンレス鋼の連続鋳造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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