説明

ストラドルキャリアの走行駆動チェーン用テークアップ装置

【課題】大型で大重量のスプロケットを十分な強度で支持でき、容易に駆動チェーンの張りを調整できる。
【解決手段】駆動スプロケット41を回転自在に支持する軸支ブロック42を、案内固定具45を介して受動スプロケットに接近離間する方向にスライド、固定可能に設け、この軸支ブロック42の両側に貫通されたねじ穴42cにそれぞれ嵌合されて先端部が反力受け部46に当接される一対のジャッキねじ47と、ジャッキねじ47を固定するロックナット48とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正面視が門型の車体内に大型の荷を保持して搬送するストラドルキャリアにおいて、走行車輪を駆動する駆動チェーンの張りを調整する走行駆動チェーン用テークアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、掻き揚げ用バスケットを移動させるキャリアチェーンのテークアップ機構が開示されている。このテークアップ機構は、除塵機にガイドを介して昇降自在に設けられたテークアップ本体に、キャリアチェーンのスプロケットを回転自在に支持させ、このテークアップ本体にテークアップロッドを立設し、このテークアップロッドに嵌合されたテークアップナットを、テークアップ調整棒により回転させてテークアップ本体を昇降させ、スプロケットの位置を調整してキャリアチェーンの張りを調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−116190(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストラドルキャリアは、門型車体の保持空間に大型の荷を保持して搬送するもので、走行装置として、車体の上部に、駆動源であるエンジンと、このエンジンにより駆動される駆動スプロケットが設けられ、車体の下部に設けられた走行車輪のホイールに受動スプロケットが配置されている。そして駆動スプロケットと受動スプロケットに駆動チェーンが巻張されて連動連結されている。車体は、大型の荷を抱き込んで保持するために十分な高さを有し、かつ大きい走行駆動力も必要であるため、大重量で大型の駆動チェーンおよび駆動スプロケットが使用されている。
【0005】
従来のストラドルキャリアの走行装置では、駆動スプロケットの軸を支持するスプロケットサポートを偏心させておき、スプロケットサポートを回転させることにより、偏心量の変化分だけ駆動スプロケットの位置を変化させて駆動チェーンの張りを調整するテークアップ装置が設けられていた。しかし、この従来のテークアップ装置では、スプロケットサポートを回転させるための専用工具を必要とし、作業員1人で調整することが困難であった。このため、一般工具により、作業員一人で容易に調整できるテークアップ装置が望まれていた。
【0006】
特許文献1のテークアップ装置をストラドルキャリアの走行装置に適用した場合、一般工具により作業員一人で調整できるものの、テークアップ本体を1本のテークアップロッドによりテークアップナットを介して吊下げ支持しているため、大重量で大きい駆動力を伝達する駆動スプロケットやチェーンを支持して調整するには、強度や安定性に欠けるという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決して、大きい駆動力を伝達する大型で大重量のスプロケットを十分な強度で支持するとともに、チェーンの張りを一般工具により容易に調整することができるストラドルキャリアの走行駆動チェーン用テークアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車体の保持空間で荷を跨いで保持するストラドルキャリアの走行装置で、車体の上部フレームに設けられてエンジンより駆動される駆動スプロケットと、下部フレームに設けられて走行車輪に連結された受動スプロケットとに巻張された駆動チェーンの張りを調整するテークアップ装置であって、
前記駆動スプロケットの駆動軸を回転自在に支持する軸支ブロックと、
当該軸支ブロックの両側に形成された被ガイド部を介して軸支ブロックを前記受動スプロケットに接近離間する方向にスライド自在に案内するとともに、前記被ガイド部を挟圧して当該軸支ブロックを固定可能な案内固定具と、
前記軸支ブロックの受動スプロケット側の車体に設置されて駆動スプロケットおよび駆動チェーンを支持する反力受け部と、
軸支ブロックの両側でスライド方向に貫通された雌ねじ穴にそれぞれ嵌合されて、先端部が前記反力受け部に当接される一対のジャッキねじと、
当該ジャッキねじの基端側に嵌合されてジャッキねじを軸支ブロックに固定するロックナットを具備したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、軸支ブロックを貫通する一対のジャッキねじにより、その先端部を反力受け部に当接させて軸支ブロックを支持するので、十分な強度で安定して駆動スプロケットを支持することができる。したがって、1人の作業員により、一般工具を使用し、案内固定具による固定を解除して一対のジャッキねじを回転させ、軸支ブロックを介して駆動スプロケットを受動スプロケットに対して接近離間させ駆動チェーンの張りを調整することができ、特殊工具を用いることなく、容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るストラドルキャリアの走行駆動チェーン用テークアップ装置の実施例を示す正面図である。
【図2】テークアップ装置の側面図である。
【図3】テークアップ装置の平面図である。
【図4】ストラドルキャリアの背面図である。
【図5】ストラドルキャリアの平面図である。
【図6】ストラドルキャリアの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
このストラドルキャリアは、図4〜図6に示すように、台木(ボルスタ)1上に配置された長尺重量物である荷2を跨いで進入し、左右のフック20aで荷2を抱き込むように保持して運搬作業を行うものである。
【0012】
車体11は前後方向の保持空間12を有する門形に形成され、その上部フレーム13に駆動装置であるエンジン14と運転室15とが設けられている。また車体11の左右の側部には、前部支柱16の下端部に車輪支持部を介して固定遊転車輪17が設けられ、後部支柱18の下端部にステアリングフレームを介して操舵駆動車輪(駆動車輪)22が設けられている。さらに上部フレーム13から下方に垂設された側面フレーム19に、保持空間12を挟んで対向するフック20aを有する荷保持装置20が設けられ、フック20aを出退および昇降させて荷2を保持することができる。
【0013】
図5に示すように、走行装置21を構成するエンジン14は、上部フレーム13の前部右寄りに設置され、エンジン14から後方にプロペラ軸23が伸び、トランスミッションとクラッチを有するミッションケース24に連結されている。このミッションケース24から取り出された出力軸25は、側方動力伝達装置(トランスファ)26を介してディファレンシャルケース27に連結され、ディファレンシャルケース27から内ユニバーサルジョイント28を介して左右に延びるアクスル軸29に動力がそれぞれ伝達されている。そして、これらアクスル軸29の先端部に外ユニバーサルジョイント30を介して駆動軸31が連結され、これら駆動軸31に駆動スプロケット41がそれぞれ取り付けられている。
【0014】
図1〜図3に示すように、左右の後部支柱18には、運転室のステアリングハンドル(図示せず)により操作される操舵軸32が軸心周りに回転自在に内装されており、操舵軸32の上端部に支持架台33が取り付けられている。そして、この支持架台33に、駆動軸31を軸受42aを介して回転自在に支持する軸支ブロック42が取り付けられている。また、操舵軸32の下端部にステアリングフレームを介して操舵駆動車輪22が回転自在に支持されている。そして操舵駆動車輪22のホイールに取り付けられた受動スプロケット43と、駆動スプロケット41との間に駆動チェーン44が巻張されている。36は駆動チェーン44のチェーンカバーである。
【0015】
駆動チェーン44の張りを調整するテークアップ装置40は、支持架台33に配置された軸支ブロック42と、これら軸支ブロック42を支持架台33に所定範囲で上下方向(受動スプロケット43に接近離間する方向)にスライド、固定可能な案内固定具45と、軸支ブロック42の下方(受動スプロケット43側)に配置されて駆動スプロケット41および駆動チェーン44の重量および荷重を支持する反力受け部46と、軸支ブロック42を反力受け部46に支持させる一対のジャッキねじ47と、ジャッキねじ47をロックするロックナット48とを具備している。
【0016】
軸支ブロック42は、中央の貫通部に軸受42aが設けられ、前後の側辺部に、それぞれ段部を介して被ガイド部42aが上下方向に沿って形成されている。前記支持架台33は、操舵軸32の上端部に固定された台板33aと、この台板33a上の外側に立設された支持板33bと、支持板33bに上下方向に形成されたに長円開口部33cからなり、支持板33bの前面(後面)に、被ガイド部42bにそれぞれ外嵌されて軸支ブロック42をスライド、固定自在なガイドレール34が配置されている。これらガイドレール34は複数の固定ボルト35により支持板33bに取り付けられており、前記案内固定具45が支持板33b、被ガイド部42b、ガイドレール34および固定ボルト35により構成されている。したがって、固定ボルト35を緩めることにより支持板33bとガイドレール34の間で固定された被ガイド部42bを解放し、ジャッキねじ47により軸支ブロック42を昇降させることができる。
【0017】
前記反力受け部46は、支持板33bより外側の台板33aの端部に形成されている。
ジャッキねじ47は、軸支ブロック42の軸受の前後両側で被ガイド部42aと平行に貫通された雌ねじ穴42cにそれぞれ嵌合され、下端部の湾曲面が反力受け部46に当接されることにより、案内固定具45と共に駆動軸31や軸支ブロック42、駆動スプロケット41の重量を支持すると同時に、駆動チェーン44の張力を付与している。
【0018】
ジャッキねじ47の上端部に、レンチなどの一般工具によりジャッキねじ47を操作する操作部47aが設けられている。またジャッキねじ47の上部にロックナット48が嵌合され、これらロックナット48を締め付けることによりジャッキねじ47を軸支ブロック42にロックすることができる。
【0019】
所定の走行距離(または稼動時間)が経過して駆動チェーン44が伸びると、テークアップ装置40により駆動チェーン44の張りを調整する。
まずレンチなどの一般工具により、固定ボルト35を緩めて、左右のガイドレール34による軸支ブロック42の固定を開放する。ついで、左右のロックナット48を緩めてジャッキねじ47の固定を解除する。さらに左右のジャッキねじ47を交互に操作して下方に突出させることにより軸支ブロック42を上昇させて、駆動スプロケット41を受動スプロケット43から離間させ、駆動チェーン44に張りを与える。駆動チェーン44が所定の張り状態となると、ロックナット48をそれぞれ締め付けてジャッキねじ47を固定した後、固定ボルト35を締め付けて左右のガイドレール34により被ガイド部42bを加圧し軸支ブロック42を固定する。
【0020】
上記テークアップ装置40によれば、軸支ブロック42を貫通するねじ穴42cにそれぞれ嵌合された一対のジャッキねじ47により、その先端部を反力受け部46にそれぞれ当接させて軸支ブロック42を支持するので、十分な強度で駆動スプロケット41を支持することができる。また一般工具を使用して、案内固定具45の固定解除と、一対のジャッキねじ47の回転操作により、軸支ブロック42を介して駆動スプロケット4を受動スプロケット43に対して接近離間させて駆動チェーン44の張りを調整することができ、特殊工具を用いることなく、1人の作業員により容易に調整作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
2 荷
11 車体
13 上部フレーム
14 エンジン
15 運転室
18 後部支柱
20 荷保持装置
21 走行装置
22 操舵駆動車輪
29 アクスル軸
31 駆動軸
32 操舵軸
33 支持架台
34 ガイドレール
35 固定ボルト
40 テークアップ装置
41 駆動スプロケット
42 軸支ブロック
43 受動スプロケット
44 駆動チェーン
45 案内固定具
46 反力受け部
47 ジャッキねじ
48 ロックナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の保持空間で荷を跨いで保持するストラドルキャリアの走行装置で、車体の上部フレームに設けられてエンジンより駆動される駆動スプロケットと、下部フレームに設けられて走行車輪に連結された受動スプロケットとに巻張された駆動チェーンの張りを調整するテークアップ装置であって、
前記駆動スプロケットの駆動軸を回転自在に支持する軸支ブロックと、
当該軸支ブロックの両側に形成された被ガイド部を介して軸支ブロックを前記受動スプロケットに接近離間する方向にスライド自在に案内するとともに、前記被ガイド部を挟圧して当該軸支ブロックを固定可能な案内固定具と、
前記軸支ブロックの受動スプロケット側の車体に設置されて駆動スプロケットおよび駆動チェーンを支持する反力受け部と、
軸支ブロックの両側でスライド方向に貫通された雌ねじ穴にそれぞれ嵌合されて、先端部が前記反力受け部に当接される一対のジャッキねじと、
当該ジャッキねじの基端側に嵌合されてジャッキねじを軸支ブロックに固定するロックナットを具備した
ことを特徴とするストラドルキャリアの走行駆動チェーン用テークアップ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−235980(P2011−235980A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106834(P2010−106834)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】