説明

ストーブの表示ランプ基板取付け構造

【課題】 天板の操作部とは別に前板に表示部を備えたストーブにおいて、簡単で正確に組立てができる表示部の構造に関する。
【解決手段】 枠体Aの天板1には操作部2aと表示部2bを備えた操作パネル2を配置し、前板3の上部には表示部4aを備えた表示パネル4を配置し、枠体Aの前面開口には前板3に設けた窓孔3aと対向するように表示基板5を配置する。天板1の一部を枠体Aの前面開口に向けて切起こし、この切起こし孔と切起こし片によって操作パネル2の取付部1aと表示基板5の取付部材6を構成する。天板1から形成した取付部材6には傾きが生じることがなく、表示ランプ5aを正確に取付けることができる。また、前板3の取付時に天板3の折曲前縁1bに設けた係止片1cと、前板3の折曲片3bに設けた係止案内部3cとが嵌合し、前板3の上下左右方向の位置決めを行うことによって表示ランプ5aと窓孔3aの位置合わせが容易に行えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は枠体の上面に操作部、枠体の前面に表示部を備えたストーブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気操作を伴う石油ファンヒータなどのストーブは、ストーブの枠体内にバーナや温風吹出構造を備え、マイクロコンピュータを含む半導体回路によって運転制御しているものが一般的である。そして、各種のスイッチで構成される操作部や表示ランプ等で構成される表示部を備えた操作パネルを枠体の天板や前板などに配置し、操作部によって機器の運転開始・停止や室温設定などの操作を行い、表示部によって運転状態を確認している。
【0003】
上記の構成において、操作パネルを枠体の天板に配置したものでは、使用者がストーブから離れた場所に移動すると運転状態が確認しにくくなり、一方、前板に操作パネルを配置したものでは、使用者がストーブの運転を操作するときには低い姿勢になって表示部を確認しながら操作しなければならず使い勝手がよくないものであり、最近ではストーブの上面と正面の両方から運転状態が確認できるようにしたストーブの要求がある。
【0004】
このため、枠体の天板に操作パネルを配置し、この操作パネルとは別に枠体の前板に表示部を設けたものがあり、表示部を構成している表示ランプの点灯や点滅や消灯によって運転状態を表示することで、ストーブから離れた位置からでも運転状態を確認できるようにしている。
【0005】
ところで、機器の故障による修理や機器のメンテナンスを行う場合にストーブの前板を取外して作業を行うことがあるが、表示部を枠体の前板に設けたもので表示ランプを前板側に取付けてあると、前板を取外すときに表示ランプの接続コードも取外す必要があり、メンテナンス時の作業に手間がかかるものである。このため、表示部を前板に設ける場合には表示ランプを枠体内に設置して、前板の着脱作業と接続コードの着脱作業とを別々に行えるようにすることでメンテナンス時の作業性を向上している(特許文献参照)。
【特許文献1】特開2004−61038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、枠体の前面開口に取付板を配置し、この取付板に表示ランプを備えた表示基板を取付けているが、この取付板は両端を枠体の側板の前縁に取付ける構造であるため、取付板の両端の取付位置の高さが左右でズレると、横方向に長さのある取付板は傾いて取付けられてしまい、前板を枠体に取付けたときに前板に形成した表示部の窓孔と表示ランプとの位置が合わなくなる。
【0007】
このため、表示ランプを正確な位置に配置する必要があり、そのためには、取付板を水平に取付ける必要があるが、枠体の組立て時に生じる誤差によって枠体の側板に設けた左右のネジ孔の高さにズレが生じやすいため、取付板に形成したネジ孔の大きさに余裕を持たせて、側板のネジ孔の位置に誤差が生じても取付板の取付位置を調整できるようにしているが、この構成は作業者が目視で取付板を水平に取付けることが難しく、取付板を水平に取付けるには専用の治具等を使わなければならず、作業性の悪いものであった。
【0008】
更に、表示ランプと窓孔との位置の確認作業は、前板を枠体に取付けた状態で表示ランプを点灯させて表示ランプの位置を確認した後、前板を取外して取付板の取付位置を調整し、その後再度前板を取付けて確認する必要があり、この確認作業を行うのは非常に面倒で手間がかかるものであり、上記のような枠体の構成ではこの面倒な作業を何度も行うことがあり、生産性が悪いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の課題を解決するもので、ストーブの枠体Aの天板1にはストーブの操作を行う操作部2aとストーブの運転状態を表示する表示部2bとを備えた操作パネル2を取付け、かつ、枠体Aの前面開口に着脱可能に取付けた前板3の上部には運転状態を表示する表示部4aを備えた表示パネル4を前記操作パネル2とは別に設け、該表示部4aと対向する位置の枠体Aの前面開口には表示ランプ5aを備える表示基板5を取付部材6を介して取付け、かつ、表示部4aを配置した前板3に窓孔3aを形成し、該窓孔3aの内側に表示基板5の表示ランプ5aが位置するストーブにおいて、前記天板1の一部を枠体A内の前方側へ向けて切起こしを設け、天板1に形成される切起こし孔によって操作パネル2の取付部1aを構成するとともに、天板1から下方へ伸びる切起こし片は前板4と対向する枠体Aの前面開口に位置し、該切起こし片によって表示基板5の取付部材6を構成したことを特徴とする。
【0010】
天板1は前縁を下方に折曲げた折曲前縁1bを形成し、該折曲前縁1bの前面には
係止片1cを形成し、かつ、前板3の上端を下方へ向けて折り曲げた折曲片3bを形成し、該折曲片3bの下端には係止案内部3cを形成し、前板3を枠体Aの前面開口に取付けたときに、前板3の係止案内部3cと天板1の係止片1cとが嵌合し、天板1の前縁と前板3の上端との間で前板3の上下および左右方向の位置決めを行う構造としたものであり、枠体Aの上部に配置された表示ランプ5aと前板3の窓孔3aとの位置に大きなズレが生じることがなく、表示ランプ5aと窓孔3aとの位置合わせが容易にできるものである。
【発明の効果】
【0011】
上記の課題を解決するこの発明は、天板1の一部を枠体A内の前方へ向かって切起こして切起こし片を形成し、この切起こし片によって取付部材6を形成したので、取付部材6が大きく傾くことはなくなり、この取付部材6に取付けた表示基板5も傾くことはなくなったから、表示ランプ5aを備えた表示基板5を枠体Aの前面開口に配置する構成でも、表示基板5の表示ランプ5aと前板3に形成した表示部4aの窓孔3aとの位置が合いやすくなり、表示ランプ5aと窓孔3aとの位置の確認作業の回数を大幅に減らすことができ、生産性を向上することができるものとなった。
【0012】
また、この発明では取付部材6が天板1と一体に構成できるとともに、天板1に形成される切起こし孔によって操作パネル2の取付部1aを構成できるので、製造工程の変更はほとんどなく、面倒な取付部材6の組付け作業が不要となったから、部品点数の減少や作業性が向上してコストの低減が実現できた。
【0013】
また、天板1の折曲前縁1bには係止片1cを形成し、前板3の上端の折曲片3bには係止案内部3cを形成し、前板3を枠体Aに取付けたときに、前板3の係止案内部3cと天板1の折曲前縁1bの係止片1cとが嵌合して、上下および左右方向の位置決めを行うようにしたので、天板1から形成した取付部材6に取付けた表示ランプ5aと前板3の上部に設けた表示部4aの窓孔3aとの位置に大きなズレが生じることはなく、容易に位置合わせができるものとなり、簡単な構成で正確な組立てが可能となり、生産性が向上してコストの低減が実現できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例を示す図によってこの構成を説明すると、Aはストーブの枠体、7は枠体A内に設置した熱源、8はストーブの置台を兼ねる底板、9は底板8の上に配置した枠体Aの側面を構成する側板、10は底板8の上に配置した枠体Aの背面を構成する背板であり、実施例の側板9と背板10は一枚の金属板をコ字状に折曲げて構成している。1は側板9と背板10の上端に取付けた枠体Aの上面を構成する天板、3は枠体Aの前面開口に取付けた前板である。
【0015】
2aはストーブの運転スイッチや温度設定スイッチなどの各種スイッチで構成した操作部、2bはストーブの運転状態や室温等を表示するための表示部、11は操作部2aと表示部2bを配置した操作基板、2は操作基板11の上に配置した操作部2aと表示部2bを覆う操作パネル、1aは天板1に開口した操作パネル2の取付部であり、操作パネル2は枠体Aの上面の天板1に上向きに配置されている。
【0016】
4は天板1に配置した操作パネル2とは別に前板3の上部に配置した表示パネル、4aは表示パネル4の表面に設けた表示部であり、表示パネル4は薄板状のシートで構成されて前板3の表面に貼り付けており、表示部4aは光透過部材で構成されている。3aは表示パネル4の表示部4aの内側の前板3に開口した窓孔、5aは窓孔3aと対向するように枠体A内に配置したLEDなどの発光素子からなる表示ランプ、5は表示ランプ5aを配置した表示基板であり、表示ランプ5aの発光によって表示部4aが点灯や点滅や消灯をすることでストーブの運転状態を表示する。
【0017】
12は枠体A内に配置したストーブの運転を制御するための制御基板、13は制御基板12と天板1に配置した操作基板11と枠体Aの前面開口に配置した表示基板5とを接続する接続コードであり、操作部2aの信号を受けて制御基板12がストーブの運転を制御し、制御基板12からの信号を受けて表示部2b・4aで運転状態を表示するものであり、ストーブの操作をするときは操作パネル2の表示部2bを見ながら操作部2aの操作を行うことができ、ストーブから離れた場所にいるときは前板3に配置した表示パネル4の表示部4aによってストーブの運転状態を確認することができる。
【0018】
ところで、ストーブに故障が発生して修理が必要となったときやメンテナンスを行うときは、前板3を枠体Aから取外して作業を行うが、この作業を行いやすくするために表示基板5を枠体Aの前面開口側に取付けて、前板3の着脱と各種基板を接続している接続コード13の着脱を別々に行うことができるようにしており、前板3を取外した状態で接続コード13の着脱作業ができるとともに、接続コード13を配線した状態で前板3の着脱作業ができるので、前板3の着脱や接続コード13の着脱が行いやすく、また、前板3を取外した状態で燃焼テストができるようになっている。
【0019】
従来のストーブは枠体Aの前面開口に配置した取付板に表示基板5を取付けるものが一般であるが、この取付板は枠体Aの横幅とほぼ同じ長さの平板で構成され、左右両端が枠体Aの側板9の前縁部分にネジ止めによって固定されているため、取付板は両端の固定位置のズレによって傾いて取付けられやすく、取付板の傾きによって表示基板5も傾いて表示ランプ5aと前板3の窓孔3aとの位置が合わなくなってしまう欠点がある。このため、取付板を正確に取付けるための治具等が必要であり、取付け作業や位置合わせのための調整作業に手間がかかってしまい、生産性の低下の問題があった。
【0020】
この発明は上記の課題を解決するもので、6は表示基板5を枠体Aの前面開口の所定位置に設置するための取付部材であり、取付部材6は天板1の一部を枠体Aの前面開口へ向けてほぼ直角に切起こして形成した切起こし片で構成している。このように天板1からの切起こしによって構成した取付部材6は横幅の短い形状ででき、別部品の取付板を取付けていたときのような傾きの原因となる取付け作業が不要となったから、取付部材6と表示基板5が大きく傾くことはなく、表示ランプ5aを正確に取付けることができる。このため、前板3を枠体Aに取付けたときに、表示ランプ5aと窓孔3aとの位置が合いやすくなり、微調整だけで簡単に合わせることができるものとなり、表示ランプ5aと窓孔3aとの位置合わせのための確認作業の回数を大幅に少なくできたので、生産性の向上が実現できた。
【0021】
また、取付部材6の切起こしによってできた天板1の切起こし孔は操作パネル2の取付部1aとして構成できるものであり、この構成であれば天板1をプレスによる切起こし加工によって表示基板5の取付部材6と操作パネル2の取付部1aが形成できるものであり、従来から天板1には操作パネル2の取付部1aを形成するものであるから、加工工程の大幅な変更なく実現できる。更に、取付部材6を天板1と一体に構成することで、従来のように別部品の取付板を用意する必要はなく、面倒な取付け作業も不要となったから、部品点数や作業工程を大幅に減少させることができ、生産性が向上して製造コストを大幅に低減することができた。
【0022】
また、この発明の前板3と枠体Aとの取付け構造の実施例において、1bは天板1の前縁を下方に折曲げた天板1の折曲前縁、1cは該折曲前縁1bの前面に複数個形成したL字状の係止片、3bは前板3の上端を下方に向けて折曲げて形成した折曲片、3cは天板1の係止片1cと対応させて、前板3の折曲片3bの下端に複数箇所形成した係止案内部であり、前板3を枠体Aに取付けたときに、前板3の折曲片3bの係止案内部3cと天板1の折曲前縁1bの係止片1cとが嵌合して前板3が位置決めされ、前板3の下部と側板9の前縁下部とをネジ止めすることで前板3が枠体Aに固定される。
【0023】
上記の構成にすることで、前板3の係止案内部3cの内縁が係止片1cに当接して前板3の上下及び左右方向の位置決めを行うことができ、天板1と前板3の上部で位置決めすることで、天板1から形成した取付部材6と前板3の上部に形成した窓孔3aとの位置に大きなズレが生じることはなくなったから、表示ランプ5aと窓孔3aの位置合わせが容易にできるものとなり、正確な組立てが簡単にできるので、生産性の向上が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例を示すストーブの断面図である。
【図2】この発明の実施例のストーブの前板を枠体に取付ける前の状態を示す斜視図である。
【図3】図2の実施例のストーブの前板を枠体に取付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
A 枠体
1 天板
1a 取付部
1b 折曲前縁
1c 係止片
2 操作パネル
2a 操作部
2b 表示部
3 前板
3a 窓孔
3b 折曲片
3c 係止案内部
4 表示パネル
4a 表示部
5 表示基板
5a 表示ランプ
6 取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーブの枠体Aの天板1にはストーブの操作を行う操作部2aとストーブの運転状態を表示する表示部2bとを備えた操作パネル2を取付け、
かつ、枠体Aの前面開口に着脱可能に取付けた前板3の上部には運転状態を表示する表示部4aを備えた表示パネル4を前記操作パネル2とは別に設け、該表示部4aと対向する位置の枠体Aの前面開口には表示ランプ5aを備える表示基板5を取付部材6を介して取付け、
かつ、表示部4aを配置した前板3に窓孔3aを形成し、該窓孔3aの内側に表示基板5の表示ランプ5aが位置するストーブにおいて、
前記天板1の一部を枠体A内の前方側へ向けて切起こしを設け、
天板1に形成される切起こし孔によって操作パネル2の取付部1aを構成するとともに、天板1から下方へ伸びる切起こし片は前板4と対向する枠体Aの前面開口に位置して、表示基板5の取付部材6を構成することを特徴とする表示基板取付構造。
【請求項2】
前記天板1は前縁を下方に折曲げた折曲前縁1bを形成し、該折曲前縁1bの前面には
係止片1cを形成し、
かつ、前板3の上端を下方へ向けて折り曲げた折曲片3bを形成し、該折曲片3bの下端には係止案内部3cを形成し、
前板3を枠体Aの前面開口に取付けたときに、前板3の係止案内部3cと天板1の係止片1cとが嵌合し、天板1の前縁と前板3の上端との間で前板3の上下および左右方向の位置決めを行うことを特徴とする請求項1に記載したストーブの表示ランプ基板取付け構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−125781(P2006−125781A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317239(P2004−317239)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】