説明

スナップ部材の外し力測定装置及び方法、並びにスナップ把持装置

【課題】スナップ部材にトルクをかけた後の外し力を保証することができ、トルク付加時に必要なスナップ部材に対する一定かつ強固な把持力を簡単に得ることができるスナップ部材の外し力測定装置及び方法並びにスナップ把持装置を提供する。
【解決手段】スナップ部材の外し力測定装置は、生地に取り付けられたスナップ部材の周囲で生地を押さえる生地押さえユニット20と、スナップ部材をその側部から複数の把持部61Aで把持するスナップ把持ユニット60と、把持部61Aで把持されたスナップ部材にトルクをかけるためトルクゲージ50と、スナップ部材を生地から相対的に引っ張る引張ユニット30と、引張ユニット30による引っ張り力を測定する引張力ゲージとを備える。スナップ把持ユニット60は、把持部61Aによるスナップ部材に対する把持状態を一定の把持力にてロックする回動アーム82を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナップ部材の外し力測定装置及び方法、並びにスナップ把持装置に関し、更に詳しくは、衣服等の生地に取り付けられた状態のスナップ部材にまずトルクをかけてからその外し力を測定するための装置及び方法と、このような外し力測定試験に使用するスナップ把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服、袋物等には、スナップファスナが大量に使用されている。スナップファスナは、スタッド部材と称される雄スナップ部材と、ソケット部材と称される雌スナップ部材とを弾発的に係脱させる構造(これら雄・雌スナップ部材を総称してスナップ部材といい、係脱させない飾り目的のものを含む)で、一般に、衣服等の生地が重ね合わされる面に対向して取り付けられる。この際、図10に示すように、雌スナップ部材1及び雄スナップ部材2は、各生地5、6の対向する面とは反対側から、ブロング部材と称される取付部材3、4の複数本の突起等を生地5、6に貫通させた後、雄・雌スナップ部材1、2の外周部内で加締めることによって生地に固定される。
【0003】
衣服等の生地に取り付けられたスナップ部材が生地から簡単に外れると、幼児がスナップ部材もしくは取付部材を飲み込んだりする虞があるため、スナップ部材の外し力は一定以上の値が保証される必要がある。このため、縫製工場などにおいては、スナップ部材の外し力について検査を行い、スナップ部材の外し力が一定以上の値となるように管理している。ちなみに、各国の縫製会社では、ヨーロッパ規格「BS EN71-1:Safety of Toy, Mechanical and physical properties」を準用し、スナップ部材の外し力が「90N 10秒」以上として定めてある。
【0004】
従前のスナップ部材の外し力測定装置としては、例えば、特開平9−37811号公報、WO03/102525A1等に開示されたものが知られている。これらの装置は、生地に取り付けられたスナップ部材の周囲で生地を押さえる生地押さえ手段と、スナップ部材をその側部から把持するスナップ把持手段(拘束手段)と、スナップ把持手段によって把持されたスナップ部材を、生地押さえ手段によって押さえられた生地から引っ張る引張手段と、この引っ張り力を測定する測定手段とから構成されている。
【0005】
上記スナップ把持手段は、スナップ部材の側部に先端部を係合させる三個のジョーと、ジョー先端係合部を軸部材を介してスナップ部材の半径方向内外に変位(開閉)可能に支持するジョー支持部材と、ジョー間に上方からテーパー部を出し入れすることにより、ジョー先端係合部を開閉させるジョー開閉駆動部材とを含む。更に、ジョー先端係合部によるスナップ部材の把持(チャック)は、ジョー開閉駆動部材をばねにより下方に付勢する(ばね式)か、又は、ねじ付きボルトに螺合するジョー開閉駆動部材を該ボルトに沿って下方に移動させる(ねじ式)ことによって行われている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−37811号公報
【特許文献2】WO03/102525A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上のような従来装置による引っ張り試験で外し力が保証されたスナップ部材であっても、スナップ部材が生地(取付部材)に対してわずかでも回転(回動)すると、スナップ部材が外れやすくなる虞があり、幼児等の飲み込み事故に繋がり得る。
【0008】
従って、本発明の第1の目的は、スナップ部材にトルクをかけた後の外し力を保証することができるスナップ部材の外し力測定装置及び方法と、そのような外し力測定試験に使用するスナップ把持装置を提供することにある。
【0009】
また、スナップ部材にトルクをかけるため、スナップ部材を把持した上記ジョーにトルクを与えた場合、上記ばね式のスナップ把持手段では、ジョーがスナップ部材の側部上を滑ってしまい、必要なトルクがかけられず、また、ばね力を増やしても把持力を一定にできず、トルク付加工程にばらつきが生じるという問題があった。他方、ねじ式では、操作者が、ジョーがスナップ側部上を滑らないようにジョー開閉駆動部材を強固に締め付ける傾向があり、この場合、スナップ部材が変形して、後の引っ張り試験の精度が落ちたり、また、ジョー開閉駆動部材を回転させながらねじ付きボルトに沿って上下させるものであるため、作業効率が悪く、更に、この場合も一定の把持力を得ることができないといった問題があった。
【0010】
従って、本発明の第2の目的は、トルク付加時に必要なスナップ部材に対する一定かつ強固な把持力を簡単に得ることができるスナップ部材の外し力測定装置及び方法と、そのような外し力測定試験に使用するスナップ把持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、生地に取り付けられたスナップ部材の外し力を測定する装置であって、生地に取り付けられたスナップ部材の周囲で生地を押さえる生地押さえ手段と、スナップ部材をその側部から複数の把持部で把持するスナップ把持手段と、スナップ把持手段によって把持されたスナップ部材にトルクをかけるためトルク付加手段と、スナップ把持手段によって把持されたスナップ部材を、生地押さえ手段によって押さえられた生地から相対的に引っ張る引張手段と、引張手段による引っ張り力を測定する測定手段とを備えたスナップ部材の外し力測定装置が提供される。
【0012】
本発明では、トルク付加手段によりスナップ部材にトルク(ねじり)をかけた後、スナップ部材の引っ張り試験を行うことができるため、スナップ部材にトルクをかけた後の外し力を保証することができる。トルク付加手段としては、スナップ把持手段の把持部を介してスナップ部材にトルクを与えることができるトルクゲージ等を好ましく使用することができるが、トルクレンチ等も用いることができる。トルク付加試験方法は、審査機関により認可されているもの、例えば、イ)スナップ部材が初期状態から180度回動するか、ロ)トルクが所定値(例えば0.56N−m)に達するか、又は、ハ)最大回転又は上記トルク所定値が10秒間維持されるまで、スナップ部材に対し5秒間で徐々に時計回りにトルクをかけることによって行うことができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記スナップ把持手段は、前記把持部によるスナップ部材に対する把持状態を一定の把持力にてロックするロック機構を含む。かかるロック機構により、トルク付加時に把持部によるスナップ部材の把持力を容易に一定とすることができるため、トルク付加試験のばらつきをなくし、作業効率を高めることができる。ロック機構は、把持部がスナップ部材を把持する把持(閉じ)径(スナップ部材の径より若干小さい)を一定に固定することによって一定の把持力を得ることができるもので、その具体例は発明の最良の形態の欄で述べる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記スナップ把持手段は、前記把持部をスナップ部材の側部に押し付けさせるための弾性部材を含み、前記ロック機構は、ロック状態において、該弾性部材による把持部のスナップ部材に対する把持力を補強する。この場合、弾性力のみによる把持部によるスナップ部材の把持では、トルク付加時に把持部がスナップ側部上を滑ったり、把持力が安定しないが、該ロック機構によりその弾性力を補強しつつ把持力を一定とすることが可能となる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記ロック機構は、スナップ部材の複数種類の径にそれぞれ対応する複数種類の把持力にて前記把持状態のロックを可能とする把持力調整手段を含む。この把持力調整手段により、径が異なるスナップ部材に対し最適な一定把持力を簡単に得ることができる。
【0016】
別の本発明によれば、生地に取り付けられたスナップ部材をその側部から把持するためのスナップ把持装置であって、スナップ部材の側部を把持部で把持する複数の把持部材と、把持部材の把持部によるスナップ部材に対する把持状態を一定の把持力にてロックするロック機構とを備えたスナップ把持装置が提供される。このスナップ把持装置は、上述した本発明に係るスナップ部材の外し力測定装置におけるスナップ把持手段として使用するためのもので、前記把持部材の把持部をスナップ部材の側部に押し付けさせるための弾性部材を備え、前記ロック機構は、ロック状態において、該弾性部材による把持部のスナップ部材に対する把持力を補強するものとすることができる。また、前記ロック機構は、スナップ部材の複数種類の径にそれぞれ対応する複数種類の把持力にて前記把持状態のロックを可能とする把持力調整手段を含むことができる。
【0017】
更に別の本発明によれば、生地に取り付けられたスナップ部材の外し力を測定する方法であって、生地に取り付けられたスナップ部材の周囲で生地を押さえる工程と、周囲の生地が押さえられたスナップ部材にトルクをかけるトルク付加工程と、トルク解除後、スナップ部材を周囲の生地から相対的に引っ張る工程と、この引っ張り力を測定する工程とを含むスナップ部材の外し力測定方法が提供される。本発明では、トルク付加工程によりスナップ部材にトルクをかけた後、スナップ部材の引っ張り試験を行うことができるため、スナップ部材にトルクをかけた後の外し力を保証することができる。また、前記トルク付加工程前に、スナップ部材をその側部から複数の把持部で把持する工程と、前記把持部によるスナップ部材に対する把持状態を一定の把持力にてロックする工程とを含み、該トルク付加工程は、前記把持部にトルクを与え、これをスナップ部材に伝達するものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスナップ部材の外し力測定装置の全体構成図である。この測定装置は、生地に取り付けられた状態のスナップ部材(図10等参照)を載せるダイ11を含むステージ10と、ダイ11上でスナップ部材の周囲の生地部分を生地押さえアーム21で押さえ付ける生地押さえユニット20と、スナップ部材をその側部から三個のジョー61で把持(チャック)するスナップ把持ユニット60と、スナップ把持ユニット60のジョー61等を介してスナップ部材にトルクをかけるためのトルク付加手段としての市販のトルクゲージ50と、スナップ部材を生地から相対的に引っ張るため、ジョー61によって把持したスナップ部材側を静止させ、生地押さえアーム21で押さえた生地側をステージ10及び生地押さえユニット20と共に降下させる引張ユニット30と、引張ユニット30による引っ張り力を測定する測定手段としての引張力ゲージ(図示せず)と、以上の構成を支持する支持フレーム40とから構成される。スナップ把持ユニット60は、詳細は後述するが、ジョー61によるスナップ部材の把持状態を補強しつつ一定の把持力に固定することができるロック機構を含む。
【0019】
ステージ10は、ダイ11を、複数枚の皿ばねを交互に逆向きに積層して成る弾性ばね部12を介して支持する支持ブロック13を有し、この支持ブロックを生地押さえユニット20も支持ベースとして共有している。ユニット20は、WO03/102525A1に開示される生地押さえ手段と実質的に同様のものであるため、詳述はしないが、略L字状の生地押さえアーム21が支持ブロック13から立ち上がったサポート部材22の上端部の支持軸23を介して揺動可能に支持され、サポート部材22とアーム21の間に、アーム21の先端部がダイ11の上面から離れる方向にアーム21を付勢するばね24が設けられ、回動軸25に連結されたレバー26を一方向(反時計回り方向)に回動操作すると、ばね24の付勢に抗しかつ図示しないカム作用を介してアーム21による生地の押さえ付けが行われ、他方向への回動により、その押さえ付けが解除されるように構成されている。
【0020】
引張ユニット30は、本装置がスナップ部材に対し上方のトルクゲージ50からトルクを伝達する構成としたため(後述)、固定したスナップ部材に対し生地側を下方に引っ張るようにしたもので、モータ31と、モータ31の出力をかさ歯車32、33を介して受けて回転する台形ねじ34と、下端部が台形ねじ34と螺合し、台形ねじ34の回転に伴って降下する円筒状のシャフト35とを備え、シャフト35がベース10及び生地押さえユニット20の支持ブロック13に連結されている。台形ねじ34及びシャフト35の軸線はダイ11上のスナップ部材と同心とされ、また、シャフト35は回転止め36により昇降時の回転が防止される。
【0021】
図2〜5を参照して、スナップ把持ユニット60は、円周方向に所定間隔を空けて配置した3個のジョー61を、その先端の把持部61Aが各々離間した開き径の状態と、各々接近した閉じ径の状態とに開閉(スナップ部材の半径方向内外へ変位)するように支持軸62によって回動自在に支持するジョー支持板63と、ジョー把持部61Aが開放するようにジョー61の基端部を半径方向内側に付勢するばね(Oリング等であってもよい)64と、ばね64の付勢に抗してジョー基端部を半径方向外側に変位させて把持部61Aを閉じるためのジョー開閉駆動部材65とを備える。ジョー支持板63、及び図2に参照番号63Aで示す部材は、ねじ付きの下方ロッド66の下端部と連結され、部材63Aは、ジョー61で挟み込んだスナップ部材が上方へ移動しないように、スナップ部材を下方へ向けて押さえ込む役割を果たす。下方ロッド66の上端部は、ロッド連結部材67にナット68等によって固定される。この際、ロッド連結部材67の固定位置をナット68により調整することができる。また、トルクゲージ50の断面六角形の出力部51と係合可能なジョイント69Aを上端部に有する上方ロッド69は、その下端部がロッド連結部材67にピン70によって連結される。これら上方ロッド69、ロッド連結部材67及び下方ロッド66は、ダイ11上のスナップ部材と同心鉛直状に配置され、トルクゲージ50からのトルクをジョー支持板63に伝達するトルク伝達経路を構成する。更に、上方ロッド69の上端部付近が支持アーム40から延びるロッドエンド41(図1参照)に受け入れられ、その直ぐ上で、上方ロッド69を直径方向に貫通するピン71がロッドエンド41に支持されることにより、上方ロッド69及びその下方に連結される把持ユニット構造の荷重が支持フレーム40に支えられる。
【0022】
ジョー開閉駆動部材65は、ジョー61間に入り込ませる、外径が下方へと次第に縮小するテーパー部65Aと、上部の鍔部65Bとを有し、鍔部65Bは、ジョー開閉駆動部材65を下方に付勢するばね72の下端を受ける。ばね72の上端は、ロッド連結部材67に対し位置固定ねじ73によって固定されるロック機構支持板80の下面に受けられる。なお、ばね72はコイル状を呈し、下方ロッド66の周囲に巻回する形態となるように配置されている。ジョー開閉駆動部材65は、操作者の手動によりばね72の付勢に抗して下方ロッド66に沿って(これとは螺合しない)上方に移動させることができる。更に、テーパー部65Aには、二つの段部65C、65Dが設けら、各段部65C、65Dをジョー基端部内側と係合させた状態でジョー開閉駆動部材65を静止させることができ(図6参照)、この静止状態は、操作者がジョー開閉駆動部材65に下向きの力を加えることにより解除される。
【0023】
次にロック機構について説明する。ロック機構は、ロック機構支持板80に直径方向に設けた二つの支持軸81にそれぞれ回動可能に支持される二本の回動アーム82を備える。これら各回動アーム82は、基端側が下方ロッド66を挟んだ左右位置にてロック機構支持板80に支持され、その先端側は連結部材83によって連結され、これにより、各アーム82が常に共に回動するようにされている。回動アーム82の先端面82Aは、その長さ方向(アーム径方向)と直交する幅方向にゆるやかな凸状とされ、その頂点82Bと支持軸81の中心との距離がアーム径となる。これにより、頂点82Bがアーム82の回動にともなって開閉駆動部材65の鍔部65Bに滑らかに接し、徐々に開閉駆動部材65へ押し下げ力を加えることができる。また、アーム径とロック機構支持板80の下方ロッド66に対する位置は、回動アーム82が、アーム長手軸線(頂点82Bと支持軸81の中心とを結ぶ線)が下方ロッド66の軸線と平行になるように、ジョー開閉駆動部材65の鍔部65Bの上面に対して鉛直位置(ロック位置)に置かれた際(図8参照)、先端面82Aがジョー開閉駆動部材65の鍔部65Bに接し、鍔部65Bを下方に押し下げ、テーパー部65Aのジョー61間への入り込み程度を一定にする。このとき、各アーム82の先端面82Aが、下方ロッド66を挟んだ左右位置で鍔部65Bに接するので、鍔部65Bに対する押し上げ力を左右均等にすることができる。これにより決定するジョー把持部61Aの閉じ径が、スナップ部材の側部を変形させない程度にしっかりと締め付け、トルク付加時に把持部61Aがスナップ側部上を滑らないように設定される。このロック状態で、把持部61Aの上記閉じ径は、一定でスナップ部材の直径よりも若干小さく、また、把持部61Aによるスナップ部材の把持力は一定となる。このロック状態は、例えば連結部83を持ってアーム82を手前に引き寄せるように回動させることにより、簡単に解除することができる。
【0024】
また、回動アーム82のアーム径をスナップ部材の径に対応させて調整できるように、アーム82の回動中心位置を切り換えることができるアーム径調整部が設けられている。アーム径調整部は、支持軸81と、この支持軸81を受け入れるアーム82の基端側の開口84とで構成されており、支持軸81が開口84内を移動し、支持軸81を開口84内の所定位置に位置決めすることができる。すなわち、図3に示すように、支持軸81は、円形の上下端部が水平に切り欠かれた断面にされ、他方、開口84は、アーム径方向に複数の円形状開口部分84A、84B、84Cが一部重複しながら連続する形状とされる。これにより、通常のアーム使用回動域では、支持軸81と開口84の一つの円形状開口部分84A、84B、84Cとの連結は外れないが、アーム82を水平に持ち上げることにより、開口84の他の隣り合う円形状開口部分へと支持軸81を移動させて、アーム径を段階的に変更することができる。なお、好ましくは、三つの円形状開口部分を連続させ、アーム径の調整を、スナップ部材の直径の大サイズ、中サイズ、小サイズに応じて三段階に変更可能とすれば良い。また、回動アーム82に設けられた長穴85(図3参照)は、ロッド連結部材67に対する下方ロッド66の位置を調整するために、ねじ86を締めたりゆるめたりするためのものである。
【0025】
次に、以上のように構成されたスナップ部材の外し力測定装置の使用状態により、本発明に係るスナップ部材の外し力測定方法を説明する。まず、ダイ11上に生地に取り付けられたスナップ部材を載せ、生地押さえユニット20の生地押さえアーム21でスナップ部材の周囲の生地部分をダイ11に対して押さえ付ける。次に、ジョー把持部61Aがスナップ部材の側部に対し間を置いた状態(図6参照)から、ジョー開閉駆動部材65を降下させて、ばね72の弾性力のみによってジョー把持部61Aがスナップ側部を把持する状態とする(図7参照)。仮にこの状態でスナップ部材にトルクをかけた場合、ジョー把持部61Aがスナップ側部上を滑ったり、ばね72の弾性力のみでは把持力が一定しないといった不都合が生じる。そこで、次に、ロック機構の回動アーム82を上述したロック位置まで回動させる(図8参照)。これにより、ジョー開閉駆動部材65のテーパー部65Aが若干押し下げられ、ばね力でスナップ部材を把持しているジョー把持部61Aが若干径方向内側へ変位し、ジョー把持部61Aに、ばね力を補強しつつ、一定の把持力でスナップ部材を強固に締め付けさせることができる(ロック状態)。このロック状態において、スナップ部材の側部が三個のジョー61の把持部61Aによって把持されている状態が図9に示される。該図に示すように、把持部61Aは、円弧面を有するが、この円弧の径はスナップ径よりもわずかに小さく、これにより、各円弧面の両端がスナップ側部に食い込むようになり、これがトルク付加時にスナップ側部上を把持部61Aが滑らないための抵抗の役割を果たす。このような抵抗を付与するため、把持部61Aの円弧面にナシ地加工等を施すことができる。
【0026】
次に、このロック状態で、トルクゲージ50の出力部51を上方ロッド69のジョイント69Aに接続し、操作者が手動によりトルクゲージ50を所定の時間及び/又は角度だけ回動させる。このトルクは、既述したように、上方ロッド69、ロッド連結部材67、下方ロッド66を介してジョー支持板63に伝達され、これがジョー61の把持部61Aからスナップ部材に与えられる。所定のトルク付加工程、すなわち生地面に対して垂直な軸線を中心にしてスナップ部材に回転力を加える工程が終わったら、スナップロック状態のまま引張ユニット30を作動させ、生地側を下方に引っ張り、この引っ張り力を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るスナップ部材の外し力測定装置の全体構成図である。
【図2】スナップ把持ユニットの正面図である。
【図3】スナップ把持ユニットの側面図である。
【図4】スナップ把持ユニットの平面図である。
【図5】図3のA−A線に沿ったスナップ把持ユニットの断面図である。
【図6】スナップ把持前でロック前の状態を示す側面説明図である。
【図7】スナップ把持後でロック前の状態を示す側面説明図である。
【図8】スナップ把持後でロック後の状態を示す側面説明図である。
【図9】図8のロック状態におけるジョー把持部によるスナップ部材の把持状態を示す平面説明図である。
【図10】雄スナップ及び雌スナップの生地に取り付けられた状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ステージ
11 ダイ
20 生地押さえユニット
21 生地押さえアーム
30 引張ユニット
40 支持フレーム
50 トルクゲージ
60 スナップ把持ユニット
61 ジョー
61A 把持部
62 支持軸
63 ジョー支持板
64 ばね
65 ジョー開閉駆動部材
65A テーパー部
65B 鍔部
66 下方ロッド
67 ロッド連結部材
69 上方ロッド
72 ばね
80 ロック機構支持板
81 支持軸
82 回動アーム
83 連結部材
84 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地に取り付けられたスナップ部材の外し力を測定する装置であって、
生地に取り付けられたスナップ部材の周囲で生地を押さえる生地押さえ手段(20)と、
スナップ部材をその側部から複数の把持部(61A)で把持するスナップ把持手段(60)と、
スナップ把持手段(60)によって把持されたスナップ部材にトルクをかけるためトルク付加手段(50)と、
スナップ把持手段(60)によって把持されたスナップ部材を、生地押さえ手段(20)によって押さえられた生地から相対的に引っ張る引張手段(30)と、
引張手段(30)による引っ張り力を測定する測定手段とを備えたスナップ部材の外し力測定装置。
【請求項2】
前記スナップ把持手段(60)は、前記把持部(61A)によるスナップ部材に対する把持状態を一定の把持力にてロックするロック機構(81、82)を含む請求項1のスナップ部材の外し力測定装置。
【請求項3】
前記スナップ把持手段(60)は、前記把持部(61A)をスナップ部材の側部に押し付けさせるための弾性部材(72)を含み、前記ロック機構(81、82)は、ロック状態において、該弾性部材(72)による把持部(61A)のスナップ部材に対する把持力を補強する請求項2のスナップ部材の外し力測定装置。
【請求項4】
前記ロック機構(81、82)は、スナップ部材の複数種類の径にそれぞれ対応する複数種類の把持力にて前記把持状態のロックを可能とする把持力調整手段(81、84)を含む請求項2又は3のスナップ部材の外し力測定装置。
【請求項5】
生地に取り付けられたスナップ部材をその側部から把持するためのスナップ把持装置(60)であって、
スナップ部材の側部を把持部(61A)で把持する複数の把持部材(61)と、
把持部材(61)の把持部(61A)によるスナップ部材に対する把持状態を一定の把持力にてロックするロック機構(81、82)とを備えたスナップ把持装置。
【請求項6】
前記把持部材(61)の把持部(61A)をスナップ部材の側部に押し付けさせるための弾性部材(72)を備え、前記ロック機構(81、82)は、ロック状態において、該弾性部材(72)による把持部(61A)のスナップ部材に対する把持力を補強する請求項5のスナップ把持装置。
【請求項7】
前記ロック機構(81、82)は、スナップ部材の複数種類の径にそれぞれ対応する複数種類の把持力にて前記把持状態のロックを可能とする把持力調整手段(81、84)を含む請求項5又は6のスナップ把持装置。
【請求項8】
生地に取り付けられたスナップ部材の外し力を測定する方法であって、
生地に取り付けられたスナップ部材の周囲で生地を押さえる工程と、
周囲の生地が押さえられたスナップ部材にトルクをかけるトルク付加工程と、
トルク解除後、スナップ部材を周囲の生地から相対的に引っ張る工程と、
この引っ張り力を測定する工程とを含むスナップ部材の外し力測定方法。
【請求項9】
前記トルク付加工程前に、スナップ部材をその側部から複数の把持部(61A)で把持する工程と、前記把持部(61A)によるスナップ部材に対する把持状態を一定の把持力にてロックする工程とを含み、該トルク付加工程は、前記把持部(61A)にトルクを与え、これをスナップ部材に伝達するものである請求項8のスナップ部材の外し力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−224(P2009−224A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162804(P2007−162804)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】