説明

スノーボード用衝撃吸収ベースプレート

【課題】 スノーボードに過度の衝撃荷重が加えられた際にスノーボードが破損することを避けるスノーボード用衝撃吸収ベースプレートを提供すること。
【解決手段】
本発明は、ベースプレート1の踵部5端縁において、スノーボード側に対応する下面部5aと、ブーツ側に対応する上面部5bとの間にスリット7を形成することで得られる板バネ効果により、衝撃エネルギーを吸収してスノーボードの破損を避けることができるようにしたスノーボード用衝撃吸収ベースプレート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スノーボードにブーツを固定するために使用するビンディングを構成する基本構造体であるベースプレートに関するものであって、より詳細にはスノーボードに過度の衝撃荷重(大荷重)が加えられた際に、その衝撃エネルギーを吸収することでスノーボードの破損を効果的に避けることができるスノーボード用衝撃吸収ベースプレートに関するものである。
【0002】
さらに、本発明は、スノーボードに過度の衝撃荷重が加えられた際にスノーボードの破損を効果的に避けることができるスノーボード用衝撃吸収ベースプレートであって、衝撃エネルギー吸収性能の低下を防止するとともに、ベースプレートの強度を容易に変更可能なスノーボード用衝撃吸収ベースプレートに関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、スノーボードとブーツとの間における衝撃吸収構造としては、ベースプレートの上面に緩衝材を取り付けたり(特許文献1参照)、ベースプレートの上面から下面に至る透孔に緩衝材を配置してベースプレートとブーツとの間の衝撃を吸収する構造(特許文献2参照)と、べープレートの下面に緩衝材を配置してベースプレートとスノーボードとの間の衝撃を吸収する構造(特許文献3参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、かかる従来の衝撃吸収構造は、専らスノーボードのコントロール性(応答性)や乗り心地といった滑走性能を向上させるために振動や比較的軽い衝撃エネルギーを吸収するためになされているものであり、使用されている主な緩衝材は弾力性に富むエラストマー樹脂又はゴムであって、対応できる荷重は水平な滑走面上に沿って載置したスノーボードにスノーボーダーの体重によって上方から加えられる静的荷重を中心とするものである。
【0005】
従って、従来の衝撃吸収構造は、上級者が高くジャンプするような過酷な使用を繰り返し、堅く凍った滑走面に斜めに落下するように着地するといった場合などにおいて(図8参照)、スノーボードを瞬間的に強く折り曲げるようにベースプレートの踵部からスノーボードに加えられる大きな衝撃荷重に対処できるものではなく、そのような大きな衝撃荷重を繰り返し受けることによって、ベースプレートの踵部近傍のスノーボードに亀裂が生じて破損することがあった(主に図9中の符号A,Bの位置にて破損が発生。)。
【0006】
そこで、上記のような大きな衝撃荷重によるスノーボードの破損を避けるために、スノーボード自体の強度を高めるという対策も考えられているが、過酷な使用を行った場合に瞬間的にのみ生じる大きな衝撃荷重を受けることに耐えられるようにまでスノーボードの強度を高めると、スノーボードの滑走性能の低下を招くという問題があった。
【0007】
また、ベースプレートの素材として、スノーボードの破損に繋がるような大きな衝撃を吸収することができる比較的硬度の低いものを用いることも考えられる。しかし、スノーボードにブーツを固定するために使用されるベースプレートは、滑走中にブーツとスノーボードから受ける大きな負荷に耐え、かつ、ブーツから受けるエネルギーをスノーボードに確実に伝達することができるように、金属又はガラス繊維強化樹脂などの高強度の素材から構成する必要がある。従って、従来ベースプレートに求められる強度と性能を維持しつつスノーボードの破損を避けることができる好適な素材や構造は提案されていない。
【0008】
上記のとおり、従来の衝撃吸収方法によっては、1)スノーボードのコントロール性や乗り心地といった滑走性能を向上させるために振動や比較的軽い衝撃を吸収すること、2)ベースプレートの踵部から加えられる大きな衝撃荷重によるスノーボードの破損を避けること、及び、3)滑走性能の低下を招くようなスノーボード又はベースプレートの強度変更や素材の変更を行わないこと、の全てを満たすことはできず、結局スノーボードの滑走性能を優先することでスノーボードの破損に対する有効な対策は何ら実現されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2006−513000号公報
【特許文献2】米国特許第590984号公報
【特許文献3】特開2002−85622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来構造のスノーボード用ベースプレートにおいてベースプレートの踵部から加えられる大きな衝撃荷重によるスノーボードの破損を防止しようとすると、スノーボードの滑走性能の低下を招くようなスノーボード又はベースプレートの強度変更や素材の変更が必要となることであり、本発明の目的は、それらの問題を解決するスノーボード用衝撃吸収ベースプレートを提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の目的は、前記の問題を解決するスノーボード用衝撃吸収ベースプレートであって、衝撃エネルギー吸収性能の低下を防止するとともに、ベースプレートの強度を容易に変更可能なスノーボード用衝撃吸収ベースプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ベースプレートの踵部端縁において、スノーボード側に対応する下面部と、ブーツ側に対応する上面部との間にスリットを形成することで得られる板バネ効果により、過大な衝撃エネルギーを吸収してスノーボードの破損を避けることができるようにしたことを特徴とするスノーボード用衝撃吸収ベースプレートを最も主要な特徴とするものである。
【0013】
本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートにおいて、前記スリットは、ベースプレートの爪先部を除き、ベースプレートの後端部両側からベースプレートの側面に亘って形成されていてもよい。
【0014】
本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートにおいて、前記スリット内に充填材を配置してもよい。
【0015】
さらに、本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートにおいて、前記下面部又は上面部は、その外端縁が前記スリットの開口端を徐々に拡開するように斜状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートは、上級者が高くジャンプするような過酷な使用を繰り返し、堅く凍った滑走面に斜めに落下するように着地するといった場合などにおいて、スノーボードを瞬間的に強く折り曲げるようにベースプレートの踵部に大きな衝撃荷重が加えられると、ベースプレートの踵部端縁にスリットを形成したことで得られる当該踵部端縁の板バネ効果により、その衝撃荷重による衝撃エネルギーを吸収する。従って、本発明は、スノーボードの破損を避けることができるスノーボード用衝撃吸収ベースプレートを提供することができる。
【0017】
本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートによれば、従来の緩衝材を併用することで、1)スノーボードのコントロール性や乗り心地といった滑走性能を向上させるために振動や比較的軽い衝撃を吸収すること、2)ベースプレートの踵部から加えられる大きな衝撃荷重によるスノーボードの破損を避けること、及び、3)滑走性能の低下を招くようなスノーボード又はベースプレートの強度変更や素材の変更を行わないこと、の全てを満たすことができる。
【0018】
さらに、本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートにおいて、前記スリットを、ベースプレートの爪先部を除き、ベースプレートの後端部両側からベースプレートの側面に亘って形成することで、ベースプレートの端縁部(ベースプレートの周囲)と接する広範囲のスノーボードにおける破損を避けることができる。
【0019】
本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートは、前記スリット内に充填材を配置することで、スリット内に砂粒やゴミなどの異物が入り込むことによる衝撃吸収性能の低下を防いだり、ベースプレートの強度(ひいては衝撃エネルギーの吸収性能)を適宜変更することができる。
【0020】
さらに、本発明のスノーボード用衝撃吸収ベースプレートにおいて、踵部端縁の前記下面部又は上面部の外端縁の形状を前記スリットの開口端を徐々に拡開するように斜状に形成することで、ベースプレートの踵部端縁とスノーボードとの間に生じるせん断応力を緩和することが可能となり、スノーボードの破損をより一層効果的に避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明を具体化したスノーボード用衝撃吸収ベースプレートを示す斜視図である。
【図2】図2は本発明を具体化したスノーボード用衝撃吸収ベースプレートをスノーボードに装着した状態を示す側面図である。
【図3】図3は本発明を具体化したスノーボード用衝撃吸収ベースプレートのスリット内部を示す踵部後端縁の水平方向の断面図である。
【図4】図4は本発明を具体化したスノーボード用衝撃吸収ベースプレートのスリットを示す拡大側面図である。
【図5】図5はスリット内に充填材を配置しないで本発明を具体化したスノーボード用衝撃吸収ベースプレートのスリットを示す拡大側面図である。
【図6】図6はベースプレートの踵部端縁に上方から荷重を加えた場合におけるベースプレートの上面の変位量(圧縮試験機のアクチュエータのストローク)を示すグラフ図である。
【図7】図7は本発明を具体化する際にスリットを形成すると良い部分を示すスノーボード用衝撃吸収ベースプレートの平面図である。
【図8】図8は上級者が高くジャンプすることで従来スノーボードの破損を招いていた堅く凍った滑走面に落下する様子を示す斜視図である。
【図9】図9は従来のベースプレートを用いることで生じていたスノーボードの主な破損部位を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ベースプレートの周囲、特に踵部の端縁において、スノーボード側に対応する下面部と、ブーツ側に対応する上面部との間にスリットを形成することで得られる板バネ効果により、衝撃エネルギーを吸収してスノーボードの破損を避けることができるように構成したことで、スノーボードを瞬間的に強く折り曲げるようにベースプレートの踵部からスノーボードに加えられる大きな衝撃荷重による衝撃エネルギーを吸収することができ、スノーボードの破損を効果的に避けることができるスノーボード用衝撃吸収ベースプレートを実現した。
【0023】
前記スリットは、ベースプレートの爪先部を除き、ベースプレートの後端部両側からベースプレートの側面に亘って形成されていてもよく、かかる実施形態によれば、スノーボードの広範囲における破損を避けることができることとなる。
【0024】
また、前記スリット内に充填材を配置する実施形態によれば、スリット内に砂粒やゴミなどの異物が入り込むことを防止でき、ベースプレートによる衝撃エネルギー吸収性能の低下を防止することができるとともに、ベースプレートの強度を簡単かつ迅速に適宜変更可能である。
【0025】
前記ベースプレートの下面部又は上面部の外端縁の形状を、前記スリットの開口端を徐々に拡開するように斜状に形成する実施形態によれば、ベースプレートによる衝撃吸収性能をより一層向上させることができる。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明を具体化したスノーボード用衝撃吸収ベースプレート1の一実施例を示す斜視図であって、かかるベースプレート1は、スノーボード10にブーツ20を固定するために使用するビンディングを構成する基本構造体であり、略中央部に設けられた円形の開口部2を覆うように被せられるディスクプレート(図示省略)を用いてスノーボード10に対して強固にビス止めされるものである。
【0027】
3は、前記開口部2の前方に形成されているベースプレート1の爪先部であり、ブーツ20の爪先21が対応する部分であって(図2参照)、その両側端部にはビンディングを構成するトゥーストラップを位置調節可能に固定するための爪先側取付部4が立設されている。
【0028】
5は、前記開口部2の後方に形成されているベースプレート1の踵部であり、ブーツ20の踵22が対応する部分であって(図2参照)、その両側端部にはビンディングを構成するアンクルストラップ及びハイバック(図示省略)を位置調節可能に固定するための踵側取付部6が立設されている。
【0029】
そして、前記ベースプレート1は、滑走中にブーツ20、前記両ストラップ、ハイバック及びスノーボード10から受ける大きな負荷に耐え、かつ、ブーツ20から受けるエネルギーをスノーボードに正しく伝達することができるように、ガラス繊維を約30%含む高強度のナイロン樹脂から一体成形されている。
【0030】
7は、前記ベースプレート1の踵部5の端縁において、スノーボード10側に対応する下面部5aと、ブーツ20側に対応する上面部5bとの間に形成されたスリットであって、このスリット7を設けたことによって踵部5端縁にて得られる板バネ効果、即ち、主として前記ベースプレート1の上面部5bが弾性変形することにより、大きな衝撃荷重による衝撃エネルギーを吸収してスノーボード10の破損を避けることができるようになっている。
【0031】
本実施例の前記スリット7は、ベースプレート1の踵部5の後端縁から5〜10mm内側に至る位置まで略水平方向に形成されているが(図3における上下方向の寸法、即ち奥行の寸法)、本発明の効果を発揮するために好適なかかる奥行の寸法は、(ベースプレート1の踵部後端縁の材質と下面部5a及び上面部5bの厚みに応じて変更されるべきものではあるが、)4〜15mm程度となる。
【0032】
さらに、前記スリット7の上下方向の寸法、即ちスリット7の隙間の大きさは、2〜3mm程度が好適であるため、本実施例においては約2.5mmとなるように形成されており、当該スリット7の上下の部分を構成するベースプレート1の踵部5後端縁における前記下面部5a及び上面部5bの厚みは、約3〜5mm程度が好適であるため、本実施例においてはそれぞれ約5mm及び約3mmとなっている。
【0033】
即ち、本実施例のベースプレート1においては、ベースプレート1のスリット7に対応する部分の下面部5aより上面部5bの厚みが薄く設定されており、スノーボード10側の踵部5の柔軟性よりブーツ20側の踵部5の柔軟性が高められている。
この前記下面部5a及び上面部5bの厚みは適宜変更可能であり、例えば両者の厚みをそれぞれ約4mmとしてベースプレート1のスリット7に対応する部分のスノーボード10側の踵部5の柔軟性とブーツ20側の踵部5の柔軟性とを等しくしてもよい。
【0034】
なお、本実施例においては、図1〜図3に示すように前記スリット7は、ベースプレート1の踵部端縁の後端中央部を除いた部分の左右2カ所に独立して形成され、その各々には、弾力性に富む熱可塑性エラストマー樹脂(TPU:熱可塑性ポリウレタン、EVA :エチレン・酢酸ビニル共重合体など)又はゴムからなる柔軟な充填材8がスリット7内に形成された突起7aと係合することで抜け止め状態となるように嵌め込まれている。
【0035】
本実施例において、ベースプレート1の踵部端縁の後端中央部にスリット7を形成しなかった理由は、スノーボード10の破損が図9に示すようにベースプレート1の踵部5の後端縁の左右両側部において多く見られるため、かかるベースプレート1の踵部5のコーナー部における荷重の集中を特に緩和できるようにするためである。
【0036】
しかしながら、ベースプレート1の踵部端縁の後端中央部においてもスリット7を設けてもよく、その場合、下面部5a又は上面部5bの厚みを増大させてスリット7の隙間の大きさを踵部端縁の後端中央部において徐々に小さくするようにして実施しても良い。
【0037】
前記スリット7の隙間の大きさを踵部端縁の後端中央部において徐々に小さくするようにして実施した場合においては、スノーボード1の踵部後端縁における下面部5a又は上面部5bがスリット7内において弾性変形できる範囲が徐々に縮小されることになるため、ベースプレート1の踵部後端縁において、衝撃エネルギー吸収性能が中央部から両側部まで徐々に増大するという特性を得ることができる。
【0038】
本実施例のベースプレート1の踵部5の後端縁において、前記下面部5a及び上面部5bは、その外端縁7bが前記スリット7の開口端を徐々に拡開するように斜状に形成されている。
従って、かかる外端縁7bの形状によりベースプレート1の踵部端縁とスノーボード10との間に生じるせん断応力を緩和することが可能となり、スノーボード10の破損をより一層効果的に避けることができる。
【0039】
なお、本実施例のベースプレート1においては、図2及び図4に示すように、ベースプレート1をスノーボード10上に固定すると、ベースプレート1とスノーボード10とはベースプレート1の開口部2周縁の下面部を除き1〜2mm程度の隙間が生じるようになっており、かかる隙間には、前記充填材8と同様の素材からなる柔軟な緩衝材9が配置され、スノーボード10のコントロール性や乗り心地といった滑走性能を向上させるために振動や比較的軽い衝撃を吸収するようになっている(従来公知の衝撃吸収構造)。
【0040】
上記のとおり構成されたベースプレート1(充填材8を取り外したもの)及び緩衝材9による衝撃吸収性能を、図5に示すように上方から20mm径のアクチュエータを有する圧縮試験機によって試験したところ、図6に示すとおりの結果となり、本発明のスリット7を設けたことによって特に約1000N〜3000N(滑走中の約100kg〜300kgの衝撃荷重に相当する。)の試験力による衝撃エネルギーを大きく吸収できることが確認された。
即ち、本発明のスリット7を設けたベースプレート1に3000Nの試験力を上方から加えた場合には、踵部端縁の板バネ効果により約4.5Jのエネルギーを吸収することができる。
【0041】
上記の衝撃荷重は、従来の衝撃吸収構造により、専らスノーボードのコントロール性や乗り心地といった滑走性能を向上させるために振動や比較的軽い衝撃を吸収するために使用されている弾力性に富む緩衝材が対応できる荷重(水平な滑走面上に沿って載置したスノーボードにスノーボーダーの体重によって上方から加えられる荷重)である約60〜70kg程度までの荷重を大きく超えるものである。
【0042】
一方、図6において比較例(本実施例のベースプレート1と同じ材質からなる従来のベースプレートの下に本実施例の緩衝材9と同じ緩衝材を配置した。)として示されているスリット無しのベースプレートの踵部端縁の厚みは9mmであり、当該踵部に3000Nの試験力を上方から加えた場合には、当該ベースプレートによって約2.1Jのエネルギーのみを吸収することができた。
従って、従来構造のベースプレート(スリット無しのもの)においては、過大な衝撃荷重による衝撃エネルギーを十分吸収することができず、スノーボード10の破損を避けることができない場合が生じることが確かめられた。
【0043】
さらに、過酷な使用態様での滑走試験の結果、従来構造のベースプレートにおいては2週間程度の連続使用で生じていたスノーボードの破損が、本発明を具体化したベースプレート1を用いた場合には4週間の連続使用においてもスノーボードの破損が生じることはなかった。
【0044】
よって、本実施例のスノーボード用衝撃吸収ベースプレート1とスノーボード10との間に従来用いられている緩衝材9を配置することで、スノーボードのコントロール性や乗り心地といった滑走性能を向上させるために振動や比較的軽い衝撃を吸収するとともに、上級者が高くジャンプするような過酷な使用を繰り返し、堅く凍った滑走面に斜めに落下するように着地するといった場合などにおいて(図8参照)、スノーボードを瞬間的に強く折り曲げるようにベースプレートの踵部からスノーボードに加えられる大きな衝撃荷重にも対処することができる。
【0045】
即ち、本実施例1のスノーボード用衝撃吸収ベースプレート1は、スリット7を設けたことによって滑走性能が低下することはなく、しかも上級者による過酷な使用が繰り返えされてもスリット7をベースプレート1の踵部端縁に設けたことによって得られる板バネ効果により、過大な衝撃エネルギーを吸収してスノーボード10の破損を効果的に避けることができる。
【0046】
なお、前記実施例1においては、スリット7内に充填材8を配置したが、この充填材8を省略したり、充填材8の弾力性を変更することで、ベースプレート1の踵部5端縁の強度を変更したり、スリット7による衝撃エネルギー吸収効果を簡単かつ迅速に適宜変更することができ、ベースプレート1を交換することなく滑走面の状況や滑走スタイルに対応することができる。
【0047】
また、前記実施例においては、スノーボード10が破損する頻度の高い場所と対応するように、ベースプレート1の踵部端縁の後端中央部を除いた部分の左右2カ所に前記スリット7を独立して形成したが、かかるスリット7を形成する位置としては、図7において示すように、ベースプレート1の爪先部3を除き、ベースプレートの後端部両側からベースプレートの側面に亘って形成してもよい。
【0048】
即ち、図7中においてハッチングを付した部分Sの適宜の位置にスリット7を設けて実施してもよく、必ずしも左右対称の位置にスリット7を設けなくてもよい。
よって、従来のベースプレートを用いることによるスノーボードの破損状況に応じ、例えば踵部端縁の右側後方部分(滑走中のスノーボードの後端に近い位置)のスリット7を設ける面積を左側後方部分に設けるスリット7よりも大きくしたり、スリット7の隙間、幅、奥行を大きくするなどして実施してもよい。
【0049】
スリット7を形成する位置としてベースプレート1の爪先部3を除く理由は、爪先部3には上級者が高くジャンプするような過酷な使用条件下においてもスノーボード10の破損に至るような過大な衝撃荷重が加えられることはないからである。但し、デザイン上の理由又は軽量化の方法としてスリットを爪先部3にも設けることは可能である。
【0050】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記スノーボード用衝撃吸収ベースプレート10の材質、寸法、強度などを適宜変更したり、スリット7の形状、位置、大きさ、数などを適宜変更して実施してもよい。
例えば、スリット7の奥ほど間隔が小さく開口端側ほど間隔が大きくなるようにして実施したり、スリット7の奥ほど隙間が大きく開口端側ほど隙間が小さくなるようにして実施してもよい。
【0051】
さらには、ベースプレート1の踵部端縁を一体成形することなく、スリット7を構成するベースプレート1の下面部5a又は上面部5bを他の部材にて構成し、ベースプレート1に貼り合わせる又は組み付けるようにして本発明のスリットを具体化して実施してもよい。この場合、ベースプレート1の製造工程は複雑となるが、衝撃吸収性能をコントロールできるバリエーションを増やすことができ、外観デザイン上の表現態様を多様化することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、スノーボード用衝撃吸収ベースプレートの製造において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ベースプレート
2 開口部
3 爪先部
4 爪先側取付部
5 踵部
5a 下面部
5b 上面部
6 踵側取付部
7 スリット
7a 突起
7b 外端縁
8 充填材
9 緩衝材
10 スノーボード
20 ブーツ
21 爪先
22 踵
A,B ベースプレートの踵部近傍に対応するスノーボードの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートの踵部端縁において、
スノーボード側に対応する下面部と、ブーツ側に対応する上面部との間にスリットを形成することで得られる板バネ効果により、衝撃エネルギーを吸収してスノーボードの破損を避けることができるようにしたことを特徴とするスノーボード用衝撃吸収ベースプレート。
【請求項2】
前記スリットは、ベースプレートの爪先部を除き、ベースプレートの後端部両側からベースプレートの側面に亘って形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスノーボード用衝撃吸収ベースプレート。
【請求項3】
前記スリット内に充填材を配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスノーボード用衝撃吸収ベースプレート。
【請求項4】
前記下面部又は上面部は、その外端縁が前記スリットの開口端を徐々に拡開するように斜状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のスノーボード用衝撃吸収ベースプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−62460(P2011−62460A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217851(P2009−217851)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)