説明

スパイラルアンテナとその素子終端処理方法

【課題】簡単な構造で、利得を維持したまま軸比の精度を向上させる。
【解決手段】スパイラルアンテナにおいて、第1及び第2のアンテナ素子11,12を誘電体基板上にスパイラル状にパターン形成し、その周囲にリング状の導体13をパターン形成し、各アンテナ素子11,12の終端部がリング状導体13に連結するように、一体形成した構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、広帯域特性を有するスパイラルアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラルアンテナは、誘電体基板上に複数のアンテナ素子をスパイラル状にパターン形成したもので、円偏波で広帯域特性が得られる特徴を有する。但し、個々のアンテナ素子の終端部で反射電流が生じることから、軸比の精度を出すことが困難である。この軸比を改善するために、従来では、スパイラルアンテナを電波吸収体の上に形成し、軸比悪化の原因であるアンテナ素子終端部からの反射電流を吸収させることが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−279080号公報
【特許文献2】特開2001−060821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来のスパイラルアンテナにおいて、軸比改善の手法として、電波吸収体を設置して逆偏波成分の電流を吸収させている。しかしながら、この手法では、同時に順方向の電流も一緒に吸収されてしまうため、利得が下がる傾向にあった。また、構成品として電波吸収体が増え、さらにはこの電波吸収体を固定するための構造も必要となるため、構造がよりいっそう複雑になってしまう。
【0005】
本実施形態の目的は、簡単な構造で、利得を維持したまま軸比の精度を向上させることのできるスパイラルアンテナとその素子終端処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態は、各アンテナ素子の終端部の外側にリング状の導体をパターン形成するものとし、そのリング状の導体に各アンテナ素子の終端部が連結するようにリング状の導体をアンテナ素子と一体形成することによって、問題の解決を図る。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の構成によれば、反射電流がリング状の導体に流れるため、逆偏波成分の電波が発生しなくなり、軸比が改善される。また、電波吸収体を無くすことができるため、構造も単純になる。さらに、電波吸収体が不要となったことで、電波を吸収するものがなくなり、利得が改善される。
【0008】
したがって、上記構成によれば、簡単な構造で、利得を維持したまま軸比の精度を向上させることのできるスパイラルアンテナとその素子終端処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るスパイラルアンテナの構成を示す平面図。
【図2】図1に示すスパイラルアンテナの軸比改善の成果を示す周波数−軸比特性図。
【図3】図1に示すスパイラルアンテナの右旋円偏波の利得改善の成果を示す周波数−利得特性図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は実施形態に係る右旋円偏波送信用のスパイラルアンテナの構成を示す平面図である。このスパイラルアンテナは、第1及び第2のアンテナ素子11,12を誘電体基板(図示せず)上にスパイラル状にパターン形成し、その周囲にリング状の導体(以下、リング)13をパターン形成し、各アンテナ素子11,12の終端部がリング13に連結するように、一体形成したもので、電波吸収体は用いない。
【0012】
すなわち、従来のスパイラルアンテナでは、各アンテナ素子11,12の終端部を開放の状態にパターン形成しているが、本実施形態では各アンテナ素子11,12の終端部をリング13と一体形成することでショートさせている。これにより、アンテナ素子11,12それぞれの終端部から反射していた電流はリング13の方に流れる。そして、リング13に流れた電流はアンテナ素子11,12に戻ることはない。このため、反射が起きなくなって、逆偏波成分の電波が発生しなくなり、これによって軸比が改善されるようになる。
【0013】
また電波吸収体を用いないため、構造も単純になる。さらに、電波吸収体を排除したことで、当然電波を吸収するものがなくなり、利得が改善されるようになる。
【0014】
図2は上記実施形態に係るスパイラルアンテナの軸比改善の成果を示す周波数−軸比特性図、図3は上記実施形態に係るスパイラルアンテナの右旋円偏波の利得改善の成果を示す周波数−利得特性図である。
【0015】
図2及び図3において、点線aは電波吸収体を用いない従来構造の場合、一点鎖線bは電波吸収体を用いた場合、実線cは本実施形態の場合を示している。図2及び図3から明らかなように、電波吸収体を用いた場合、低域において軸比改善効果が得られるものの、利得が一般構造の場合よりも低い状態にあり、利得の改善効果は得られない。これに対して、本実施形態の構成によれば、電波吸収体を用いなくても低域において軸比改善効果が得られ、さらに低域の利得低下も大幅に改善される。
【0016】
したがって、上記実施形態のスパイラルアンテナは、簡単な構造で、利得を維持したまま軸比の精度を向上させることができる。
【0017】
尚、上記実施形態では、右旋円偏波送信に用いられるスパイラルアンテナについて説明したが、左旋円偏波の場合でも同様に実施可能である。また、アンテナ素子数が2本の場合について説明したが、さらに例えば4本のような多素子の場合でも同様に実施可能である。
【0018】
また、上記実施形態はそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせでもよい。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0019】
11…第1のアンテナ素子、12…第2のアンテナ素子、13…リング状導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子が誘電体基板上にスパイラル状にパターン形成されるスパイラルアンテナにおいて、
前記複数のアンテナ素子のスパイラル形成部分の周囲にパターン形成されるリング状の導体を備え、前記複数のアンテナ素子の終端部が前記リング状の導体に連結するように両者を一体形成してなることを特徴とするスパイラルアンテナ。
【請求項2】
複数のアンテナ素子が誘電体基板上にスパイラル状にパターン形成されるスパイラルアンテナに適用され、
前記複数のアンテナ素子のスパイラル形成部分の周囲にパターン形成されるリング状の導体に前記複数のアンテナ素子の終端部を連結するようにしたことを特徴とするスパイラルアンテナの素子終端処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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