説明

スピニングリールのフェースギア製造方法、フェースギア、及びドライブギア組立体

【課題】材料の硬度に係わらず高精度のフェースギアを安価に製造できるようにする。
【解決手段】スピニングリールのフェースギア16の製造方法は、スピニングリールのハンドルに連動して回転するフェースギア16の製造方法である。フェースギアの16製造方法は、ステップS1の電極形成工程と、ステップS2のギア歯形成工程とを含む。電極形成工程は、フェースギア16の歯16bを成形可能な形状を有する総型電極42を形成する。ギア歯形成工程は、電解加工により、総型電極42の形状をワーク40に転写することにより歯16bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールのハンドル軸に連動して回転するスピニングリールのフェースギアの製造方法、スピニングリールのフェースギア、及びスピニングリールのドライブギア組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールのロータを回転駆動するスピニングリールのロータ駆動装置には、フェースギアが用いられる。フェースギアは、従来、歯切りによる切削加工若しくは鋳造又は鍛造等の型成形により製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−253248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切削加工によりフェースギアを製造すると、フェースギアの製造時間が長くなり、フェースギアの製造コストが上昇する。鋳造又は鍛造による型成形によりフェースギアを高精度に形成するには高度の金型製作技術と成形技術を必要とする。しかも、切削加工及び型成形では、硬度が高い素材でフェースギアを製造しにくい。
【0005】
本発明の課題は、材料の硬度に係わらずフェースギアを高精度かつ安価に製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係るスピニングリールのフェースギアの製造方法は、スピニングリールのハンドルに連動して回転するフェースギアの製造方法である。フェースギアの製造方法は、電極形成工程と、ギア歯形成工程とを含む。電極形成工程は、フェースギアの歯を成形可能な形状を有する電極を形成する。ギア歯形成工程は、電解加工により、電極の形状をワークに転写して歯を形成する。
【0007】
このフェースギアの製造方法では、形状が複雑なフェースギアの複数の歯を成形可能な形状、例えば歯の雌型の形状を有する電極を形成する。そして、電解加工により、電極に形成された形状をワークに転写して複数の歯を形成する。ここでは、複数の歯を成形可能な形状を有する電極を形成し、その電極の形状をワークに転写することにより、歯を形成している。このため、フェースギアを機械加工する場合に比べて安価にかつ精密に形成できる。しかも、ワークの硬度が高くてもワークが導電性を有していればよく、材料の硬度にかかわらず高精度のフェースギアを形成できる。
【0008】
発明2に係るスピニングリールのフェースギアの製造方法は、発明1に記載の製造方法において、ギア歯形成工程は、装着工程と、電気放出工程と、ギア歯転写工程と、を含む。装着工程では、電解加工装置のハウジング内に配置された陰極に電極を装着し、ワークをハウジング内に配置された陽極に装着する。電気放出工程では、ハウジング内に電解液を流しつつ陽極と陰極との間に所定電圧の電気的衝撃を放出する。ギア歯転写工程では、電極と電解加工されるワークとの間に0.01mmから0.1mmの範囲の隙間が形成されるように陽極に対して陰極を相対移動させてワークを電極との隙間を維持して溶融させて電極の形状をワークに転写する。
【0009】
この場合には、複数の歯を成形可能な形状を有する電極と、電極の形状が転写されるワークと、の隙間が小さいので、歯の形状がワークに精密に転写される。
【0010】
発明3に係るスピニングリールのフェースギアは、複数の歯と、複数の歯が形成された円板状のギア本体と、を備える。複数の歯が発明1又は2に記載のスピニングリールのフェースギアの製造方法により製造されている。
【0011】
このフェースギアでは、複数の歯を成形可能な雌型を電極に形成し、その電極の形状をワークに転写することにより、フェースギアの複数の歯を形成している。このため、フェースギアを機械加工する場合に比べて安価にかつ精密に形成できる。しかも、ワークの硬度が高くてもワークが導電性を有していればよく、材料の硬度にかかわらず高精度のフェースギアを形成できる。
【0012】
発明4に係るスピニングリールのフェースギアは、発明3に記載のフェースギアにおいて、歯の高さは、0.2mmから3.00mmの範囲である。この場合には、歯の高さが比較的小さいため、短時間で精度良く歯の形状を転写できる。
【0013】
発明5に係るスピニングリールのフェースギアは、発明3又は4に記載のフェースギアにおいて、複数の歯は、ギア本体の外周側の側面に形成された環状凸部に形成されている。この場合には、歯が環状凸部に形成されるので、歯の転写時に電極とワークとを近づけやすい。
【0014】
発明6に係るスピニングリールのフェースギアは、発明3から5のいずれかに記載のフェースギアにおいて、ギア本体は、ステンレス合金、チタン合金、アルミニウム合金、及び高速度工具鋼を含む群から選ばれた一つである。この場合には、比較的硬度が高い金属でフェースギアを作成できる。
【0015】
発明7に係るスピニングリールのドライブギア組立体は、発明3から6のいずれかに記載のフェースギアと、フェースギアが一体回転可能に設けられたドライブギア軸と、を備える。
【0016】
このドライブギア組立体では、転写されて歯となる雌型を電極に形成し、その電極の形状をワークに転写することにより、フェースギアの歯を形成している。このため、フェースギアを機械加工する場合に比べて安価にかつ精密に形成できる。しかも、ワークの硬度が高くてもワークが導電性を有していれば電極として使用でき、材料の硬度にかかわらず高精度のフェースギアを形成できる。
【0017】
発明8に係るスピニングリールのドライブギア組立体は、発明7に記載の組立体において、ドライブギア軸は、ハンドル軸に一体回転可能に連結可能な軸本体と、軸本体の外周面に設けられた取付部と、を有する。フェースギアは、取付部に固定されている。
【0018】
この場合には、フェースギアとドライブギア軸とが別体であるので、ワークの形状が単純になり、フェースギアの歯を、転写により作成しやすい。
【0019】
発明9に係るスピニングリールのドライブギア組立体は、発明8に記載の組立体において、取付部は、フェースギアをネジ込み可能な雄ネジ部を有する。この場合には、フェースギアをドライブギア軸の雄ネジ部にネジ込みにより固定できるので、ドライブギア軸の径が大きくならず、ドライブギア軸を作りやすい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、歯を成形可能な形状を電極に形成し、その電極の形状をワークに転写することにより、フェースギアの歯を形成している。このため、フェースギアを機械加工する場合に比べて安価にかつ精密に形成できる。しかも、ワークの硬度が高くてもワークが導電性を有していれば電極として使用でき、材料の硬度にかかわらず高精度のフェースギアを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態によるフェースギア、ドライブギア組立体及びロータ駆動装置を示す分解斜視図。
【図2】その側面図。
【図3】フェースギアの歯の斜視拡大模式図。
【図4】本発明の一実施形態が実施される電解加工装置のブロック図。
【図5】本発明の一実施形態によるフェースギア製造方法を示すフローチャート。
【図6】電解加工装置のハウジングの断面模式図。
【図7】電解加工装置の電解加工手順を示す断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ロータ駆動装置の構成>
図1及び図2において、本発明の一実施形態を採用したロータ駆動装置9は、スピニングリールのロータをハンドルの回転に連動して回転させるものである。ロータ駆動装置9は、ハンドルのハンドル軸5(図2)が一体回転可能に連結されるドライブギア組立体10と、ドライブギア組立体10に噛み合うピニオンギア12と、を備えている。ドライブギア組立体10は、ハンドル軸5が一体回転可能に連結されるドライブギア軸14と、ドライブギア軸14に設けられるフェースギア16と、を有している。
【0023】
ドライブギア軸14は、図示しないリール本体に左右方向に沿って配置され、リール本体に回転自在に支持されている。この実施形態では、ドライブギア軸14の両端が第1軸受18aおよび第2軸受18bによりリール本体に回転自在に支持されている。ドライブギア軸14は、ハンドル軸5に一体回転可能に連結可能な軸本体14aと、軸本体14aの外周面に設けられた取付部14bと、を有する。軸本体14aは、両端にハンドル軸5を一体回転可能に連結するための連結部14cが形成されている。連結部14cは、この実施形態では、雌ネジ部で構成され、ハンドル軸5の回転方向により異なるネジ方向を有している。
【0024】
取付部14bは、軸本体14aの外周面より大径の環状突起14dと、雄ネジ部14eとを有している。環状突起14dのフェースギア16側の壁面は、フェースギア16の軸方向位置の位置決めのために用いられる。環状突起14dの外周面は、フェースギア16の径方向位置の芯出しのために用いられる。雄ネジ部14eは、環状突起14dと並べて配置され、環状突起14dより小径かつ軸本体14aの外周面より大径である。雄ネジ部14eは、フェースギア16を連結するために設けられている。
【0025】
フェースギア16は、ドライブギア軸14に一体回転可能に連結されている。この実施形態では、フェースギア16は、ドライブギア軸14の取付部14bにネジ込み固定されている。
【0026】
フェースギア16は、円板状のギア本体16aと、ギア本体16aの外周側の環状凸部16eの端面に周方向に間隔を隔てて形成された複数(例えば59枚)の歯16bと、を有している。また、フェースギア16は、雄ネジ部14eに螺合する雌ネジ部16cと、環状突起14dに接触する位置決め凹部16dと、を有している。雄ネジ部14eおよび雌ネジ部16cは左ネジである。これにより、釣りをしているとき、ロータに負荷が作用した状態で、ドライブギア組立体10が糸巻取方向に回転すると、フェースギア16にネジが締まる方向に力が作用してフェースギア16が緩まないようになっている。また、フェースギア16は、ドライブギア軸14にかしめられている。位置決め凹部16dは、環状突起14dの外周面と壁面とに接触してドライブギア軸14に対してフェースギア16を芯出し及び軸方向の位置決めを行うために設けられている。
【0027】
歯16bは、図3に示すように、ハンドルが糸巻取方向に回転する時にピニオンギア12に噛み合う第1歯面16fと、糸繰り出し方向に回転したときに噛み合う第2歯面16gとを有している。第1歯面16fは歯すじ方向の中央部が凹んだ凹面で構成され、第2歯面16gは歯すじ方向の中央部が突出した凸面で構成されている。歯16bの高さは、0.2mmから3.00mmの範囲の高さである。
【0028】
ピニオンギア12は、筒状の部材であり、前後方向に沿って配置されリール本体に回転自在に装着されている。ピニオンギア12は、フェースギア16の歯16bに噛み合うはす歯のギア歯12aを有している。ピニオンギア12の先端部12bは図示しないロータの中心部を貫通しており、この貫通部分で図示しないナットによりロータと固定されている。ピニオンギア12は、リール本体に回転自在に支持されている。この実施形態では、ピニオンギア12は、軸方向の中間部と後端部とで第3軸受19a及び第4軸受19bによりリール本体に回転自在に支持されている。このピニオンギア12の内部を図示しないスプール軸が貫通している。
【0029】
<電解加工装置の構成>
図4において、本発明の一実施形態によるフェースギア16を製造するための電解加工装置20は、精密な電解加工を行えるものである。電解加工装置20は、加工機本体22と、電源ユニット24と、電解液供給濾過ユニット26と、これらの制御する制御ユニット28と、を備えている。電源ユニット24は、脈動する高圧の直流の電力を加工機本体22に供給する。電解液供給濾過ユニット26は、電解液を循環させながら加工機本体22に供給し、かつ循環中に電解液を濾過する。制御ユニット28は、加工機本体22、電源ユニット24及び電解液供給濾過ユニット26を制御する。
【0030】
加工機本体22は、電解液供給濾過ユニット26から電解液50が供給されるハウジング30を有している。ハウジング30の内部は、図5に示すように、ワーク40を装着するためのワーク装着部32と、ワーク装着部32と対向して配置され総型電極42を装着するための電極装着部34と、を有している。ワーク装着部32と電極装着部34は互いに接近及び離反する方向に相対移動可能である。この実施形態では、電極装着部34がワーク装着部32に対して上下に移動する。ワーク40と総型電極42との間には、電解液50が供給される。
【0031】
ワーク40は、例えば、フェースギア16となるフェースギア素材であり、ステンレス合金、チタン合金、アルミニウム合金、又は高速度工具鋼等の導電金属製の部材である。ワーク40は、例えば鍛造加工、粗機械加工等の適宜の加工手段により、歯16bが形成される環状凸部16eに相当する形状を有するフェースギア16の形状に近い形状に予め粗加工されている。総型電極42は、導電金属製の部材である。総型電極42は、フェースギア16の複数の歯16bを成形可能な形状である複数の雌型42aを有している。複数の雌型42aは、ワーク40の外周部に対向可能な面に環状に突出して形成されている。複数の雌型42aは、マシニングセンタ等の精密切削加工手段により形成されている。
【0032】
ワーク装着部32は、電源ユニット24のプラス端子に接続され、電解加工装置20の陽極として機能する。電極装着部34は、電源ユニット24のマイナス端子に接続され電解加工装置20の陰極として機能する。電極装着部34に装着された総型電極42は、ワーク40との間に、0.01mmから0.1mmの範囲の隙間が形成されるようにワーク40を電解加工により溶融させ、総型電極42の雌型42aをワーク40に転写し、ワーク40に歯16bを形成する。
【0033】
<フェースギアの製造方法>
次に、本発明の一実施形態によるフェースギア16の製造方法について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
図6のステップS1において、電極を形成する。具体的には、フェースギア16の歯16bを成型可能な電極としての総型電極42を形成する。この総型電極42には、フェースギア16の歯16bを成形可能な雌型42aがワーク40と対向する面に環状に突出して形成される。総型電極42の形成は、例えば、汎用工具を用いたマシニングセンタ等による切削加工により形成される。
【0035】
ステップS2では、複数の歯16bを形成するギア歯形成工程が行われる。ギア歯形成工程では、上述した電解加工装置20が用いられる。このギア歯形成工程では、ステップS21で、総型電極42を陰極である電極装着部34に装着し、ワーク40を陽極であるワーク装着部32に装着する。この状態を図7(a)に示す。ステップS22では、電源ユニット24で生成された脈動を有する直流電流をワーク40と流すとともに、電解液50をワーク40と総型電極42の間に供給する。ステップS23では、電極装着部34を徐々に下降させる。このとき、総型電極42とワーク40との間に0.01mmから0.1mmの範囲の隙間が形成されるようにワーク装着部32に対して電極装着部34を下降させる。これにより、ワーク40が電解溶融し、総型電極42の雌型42aがワーク40に転写される。この状態を図7(b)に示す。この結果、歯16bがワークの所望の位置に形成される。そして、転写が終了すると、電解液50の供給を止めて電極装着部34を上昇させる。この状態を図7(c)に示す。図7(c)では、ワーク40の環状凸部に相当する部分に歯16bが形成される。
【0036】
総型電極42が上昇すると、ワーク40をハウジング30から取り出し、次のワーク40をワーク装着部32に装着して上述した工程を繰り返す。
<特徴>
(A)スピニングリールのフェースギアの製造方法は、スピニングリールのハンドルのハンドル軸5に連動して回転するフェースギア16の製造方法である。フェースギア16の製造方法は、ステップS1の電極形成工程と、ステップS2のギア歯形成工程とを含む。電極形成工程は、フェースギア16の歯16bを成形可能な雌型42aを総型電極42に形成する。ギア歯形成工程は、雌型42aの形状をワーク40に転写することにより複数の歯16bを形成する。
【0037】
このフェースギア16の製造方法では、形状が複雑な複数の歯16bを成形可能な雌型42aの形状を総型電極42に形成する。そして、雌型42aをワーク40に転写することにより、フェースギア16の歯16bを形成する。ここでは、歯16bを成形可能な雌型42aを総型電極42に形成し、その雌型42aの形状をワーク40に転写することにより、フェースギア16の歯16bを形成している。このため、フェースギアを機械加工する場合に比べて安価にかつ精密に形成できる。しかも、ワーク40の硬度が高くてもワーク40が導電性を有していれば電極として使用でき、材料の硬度にかかわらず高精度のフェースギア16を形成できる。
【0038】
(B)スピニングリールのフェースギアの製造方法において、ステップS2のギア歯形成工程は、装着工程(ステップS21)と、電気放出工程(ステップS22)と、ギア歯転写工程(ステップS23)と、を含む。装着工程では、電解加工装置20のハウジング30内に配置された陰極である電極装着部34に電極である総型電極42を装着し、ワーク40をハウジング30内に配置された陽極であるワーク装着部32に装着する。電気放出工程では、ハウジング30内に電解液50を流しつつワーク装着部32と電極装着部34との間に所定電圧の電気的衝撃を放出する。ギア歯転写工程では、総型電極42と電解加工されるワークとの間に0.01mmから0.1mmの範囲の隙間が形成されるように陽極に対して陰極を相対移動させてワーク40を、総型電極42との隙間を維持して溶融させて雌型42aをワーク40に転写する。
【0039】
この場合には、歯16bを成形可能な雌型42aが形成された総型電極42と、雌型42aが転写されるワーク40と、の隙間が小さいので、雌型42aの形状がワーク40に精密に転写される。
【0040】
(C)スピニングリールのフェースギア16は、複数の歯16bと、歯16bが形成された円板状のギア本体16aと、を備える。歯16bが上記のスピニングリールのフェースギアの製造方法により製造されている。
【0041】
このフェースギア16では、歯16bを成形可能な雌型42aを総型電極42に形成し、その雌型42aをワーク40に転写することにより、フェースギア16の歯16bを形成している。このため、フェースギアを機械加工する場合に比べて安価にかつ精密に形成できる。しかも、ワーク40の硬度が高くてもワーク40が導電性を有していれば電極として使用でき、材料の硬度にかかわらず高精度のフェースギア16を形成できる。
【0042】
(D)スピニングリールのフェースギア16において、歯16bの歯の高さは、0.2mmから3.00mmの範囲である。この場合には、歯の高さが比較的小さいため、短時間で精度良く歯の形状を転写できる。
【0043】
(E)スピニングリールのフェースギア16において、歯16bは、ギア本体16aの外周側の側面に形成された環状凸部16eに形成されている。この場合には、歯16bが環状凸部16eに形成されるので歯16bの転写時に、総型電極42とワーク40とを近づけやすい。
【0044】
(F)スピニングリールのフェースギア16において、ギア本体16aは、ステンレス合金、チタン合金、アルミニウム合金、及び高速度工具鋼を含む群から選ばれた一つである。この場合には、比較的硬度が高い金属でフェースギア16を作成できる。
【0045】
(G)スピニングリールのドライブギア組立体10は、上記のフェースギア16と、フェースギア16が一体回転可能に設けられたドライブギア軸14と、を備える。
【0046】
このドライブギア組立体10では、複数の歯16bを成形可能な雌型42aを総型電極42に形成し、その総型電極42の形状をワーク40に転写することにより、フェースギア16の歯16bを形成している。このため、フェースギアを機械加工する場合に比べて安価にかつ精密に形成できる。しかも、ワーク40の硬度が高くてもワーク40が導電性を有していればよく、材料の硬度にかかわらず高精度のフェースギア16を形成できる。
【0047】
(H)スピニングリールのドライブギア組立体10において、ドライブギア軸14は、ハンドル軸5に一体回転可能に連結可能な軸本体14aと、軸本体14aの外周面に設けられた取付部14bと、を有する。フェースギア16は、取付部14bに固定されている。
【0048】
この場合には、フェースギア16とドライブギア軸14とが別体であるので、ワーク40の形状が単純になり、フェースギア16の歯16bを転写により作成しやすい。
【0049】
(I)スピニングリールのドライブギア組立体10において、取付部14bは、フェースギアをネジ込み可能な雄ネジ部14eを有する。この場合には、この場合には、フェースギア16をドライブギア軸14の雄ネジ部14eにネジ込みにより固定できるので、ドライブギア軸14の径が大きくならず、ドライブギア軸14を作りやすい。
【0050】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
(a)前記実施形態では、フェースギアがドライブギア軸の両端の間に配置されているが、本発明はこれに限定されない。フェースギアがドライブギア軸の一端に一体回転可能に連結されていてもよい。
【0052】
(b)前記実施形態では、フェースギア16がドライブギア軸14の取付部14bにネジ込み固定されているが、本発明はこれに限定されない。ドライブギア軸に取付部として取付フランジを設け、取付フランジにギア本体を複数本のボルト部材によりフェースギアのギア本体を固定してもよい。またキー止め等の適宜の回り止め手段により回り止めしてもよい。
【0053】
(c)前記実施形態では、ハンドル軸5がドライブギア軸14の連結部14cにネジ込み固定されているが、本発明は、これに限定されない。例えば、ドライブギア軸14がハンドル軸に非円形係合してもよい。
【0054】
(d)前記実施形態では、総型電極42を機械加工により形成していたが、総型電極を電解加工で形成しても良い。この場合、機械加工後、表面を仕上げ加工して製品と同じ形状を有するマスター電極を形成し、そのマスター電極で電解加工により総型電極を形成する。これにより、同じマスター電極から複数の総型電極を形成することができ、高精度のフェースギアを安定して製造することができる。
【符号の説明】
【0055】
5 ハンドル軸
9 ロータ駆動装置
10 ドライブギア組立体
12 ピニオンギア
14 ドライブギア軸
14a 軸本体
14b 取付部
14e 雄ネジ部
16 フェースギア
16a ギア本体
16b 歯
16e 環状凸部
20 電解加工装置
30 ハウジング
32 ワーク装着部(陽極の一例)
34 電極装着部(陰極の一例)
40 ワーク
42 総型電極
50 電解液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピニングリールのハンドルに連動して回転するフェースギアの製造方法であって、
前記フェースギアの複数の歯を成形可能な形状を有する電極を機械加工により形成する電極形成工程と、
電解加工により、前記形状をワークに転写することにより前記複数の歯を形成するギア歯形成工程と、
を含むスピニングリールのフェースギア製造方法。
【請求項2】
前記ギア歯形成工程は、
電解加工装置のハウジング内に配置された陰極に前記電極を装着し、前記ワークを前記ハウジング内に配置された陽極に装着する装着工程と、
前記ハウジング内に電解液を流しつつ前記ワークと前記電極との間に所定電圧の電気的衝撃を放出する電気放出工程と、
前記電極と電解加工される前記ワークとの間に0.01mmから0.1mmの範囲の隙間が形成されるように前記陽極に対して前記陰極を相対移動させて前記ワークを前記電極との隙間を維持して溶融させて前記形状を前記ワークに転写するギア歯転写工程と、
を含む、請求項1に記載のスピニングリールのフェースギアの製造方法。
【請求項3】
前記複数の歯と、
前記複数の歯が形成された円板状のギア本体と、を備え、
前記複数の歯が請求項1又は2に記載のスピニングリールのフェースギアの製造方法により製造されたスピニングリールのフェースギア。
【請求項4】
前記歯の高さは、0.2mmから3.00mmの範囲である、請求項3に記載のスピニングリールのフェースギア。
【請求項5】
前記歯は、前記ギア本体の外周側の側面に形成された環状凸部に形成されている、請求項4又は5に記載のスピニングリールのフェースギア。
【請求項6】
前記ギア本体は、ステンレス合金、チタン合金、アルミニウム合金、及び高速度工具鋼を含む群から選ばれた一つである、請求項3から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのフェースギア。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載のフェースギアと、
前記フェースギアが一体回転可能に設けられたドライブギア軸と、
を備えたスピニングリールのドライブギア組立体。
【請求項8】
前記ドライブギア軸は、
前記ハンドル軸に一体回転可能に連結可能な軸本体と、
前記軸本体の外周面に設けられた取付部と、を有し、
前記フェースギアは、前記取付部に固定されている、請求項7に記載のスピニングリールのドライブギア組立体。
【請求項9】
前記取付部は、前記フェースギアをネジ込み可能な雄ネジ部を有する、請求項8に記載のスピニングリールのドライブギア組立体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223130(P2012−223130A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93655(P2011−93655)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】