説明

スピーカフレーム及びスピーカ

【課題】スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板に影響を与えることなく、脚部の接続強度と脚部全体の強度が確保され、振動板の背面側の空気抵抗を低減することが可能なスピーカフレームを提供する。
【解決手段】スピーカフレーム50は、磁気回路部が取り付けられる内環状部60と、内環状部60よりも大きい径を有し、振動板のエッジが取り付けられる外環状部70と、内環状部60と外環状部70とを連結する複数の脚部80とを備えている。脚部80は、内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82との間に、内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82よりも幅が狭い幅狭部83を有し、かつ、幅狭部83の厚みが内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82より厚く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカフレーム及びスピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用あるいは家庭用の音響機器等に使用されるスピーカとしては、コーン型の振動板を備えたダイナミック型スピーカが広く用いられている。図4A〜図4Dを参照して、かかるタイプの従来のスピーカ構造について説明する。
図4Aはスピーカの側面図、図4Bはスピーカの断面図、図4Cはスピーカフレームの前面図、図4Dはスピーカフレームの背面図である。
本明細書では、スピーカの音声が放出される側(図4A及び図4Bの図示上側)を「前方側」、その反対側(図4A及び図4Bの図示下側)を「後方側」と定義する。
【0003】
図4A及び図4Bに示すスピーカ2は、磁気回路部310と、磁気回路部310内のギャップに挿入されたボイスコイル320と、ボイスコイル320を保持するボイスコイルボビン321と、ボイスコイルボビン321に連結されたコーン型の振動板330と、これらを保持する椀状のスピーカフレーム350とを備えている。
【0004】
磁気回路部310は、環状の永久磁石310Aと、永久磁石310A内に一部が嵌め込まれたヨーク310Bと、永久磁石310Aの前面に配置された環状プレート310Cとを備えている。
【0005】
磁気回路部310はスピーカフレーム350に固着される。これに対して、ボイスコイル320及び振動板330は振動する必要があるため、ボイスコイル320はダンパ340を介して、振動板330は柔軟な膜からなるエッジ330Eを介して、それぞれスピーカフレーム350に保持されている。
【0006】
スピーカフレーム350は、
環状の底部からなる磁気回路部取付部361と、磁気回路部取付部361の外周に前方側に突設された側部362と、側部362の前方側端部から径方向に外側に延びた環状のダンパ取付部363とを備えた内環状部360と、
内環状部360よりも大きい径を有し、振動板330のエッジ330Eが取り付けられる外環状部370と、
内環状部360と外環状部370とを連結する複数の脚部380とから構成されている。
【0007】
スピーカフレーム350の外環状部370の背面側には、スピーカ2を音響機器の筺体又はフレーム等に固定するための複数の取付け孔351が設けられている。
内環状部360と外環状部370との間には、スピーカ2の端子を取り付けるための端子取付部352が設けられている。
図示する例では、7個の脚部380と端子取付部352とが放射状に均等間隔で設けられており、これら7個の脚部380と端子取付部352の間に、計8個の開口部353が形成されている。
【0008】
スピーカフレーム350としては、金属鋳造法によるダイカストフレーム、あるいはプラスチック射出成型による樹脂フレームなど、内環状部360と外環状部370と複数の脚部380とが一体成型された成型フレームが一般に用いられている。
【0009】
複数の脚部380は、音響機器への取付け接地面側であり、取付け孔351が形成された外環状部370の背面側を塞がず、スピーカ2が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触せず、振動板330、特にそのエッジ330Eから充分離間して振動板330の振動に影響を与えないため、その厚みには制限がある。
複数の脚部380はまた、内環状部360及び外環状部370との間で充分な接続強度を有し、重い磁気回路部310を支えられるに充分な強度を有する必要がある。
【0010】
厚みに制限がある一方で、内環状部360及び外環状部370との間の接続強度と、脚部380全体の強度を確保するために、従来、成型フレームにおける複数の脚部380は、内環状部360から外環状部370までほぼ均等の厚みを有し、全体的に厚みより幅が大きい板状形状を有している(図4B、図4Dを参照)。複数の脚部380は、内環状部360側の端部381と外環状部370側の端部382とはその他の部分383よりも若干幅広とされ、これら両端部を除く部分383の幅がほぼ均等とされ、両端部を除く部分383の幅が厚みより大きく設計されている(図4D参照)。
【0011】
スピーカフレーム350において、「脚部380の厚み」は脚部380の振動板対向面と脚部の背面との離間距離(=径方向のサイズ)であり、「脚部380の幅」は脚部380の振動板対向面と背面との間に形成された一対の側面の離間距離(=周方向のサイズ)である。
【0012】
スピーカでは、振動板の前後方向の振動に伴って、スピーカフレームの複数の開口部に振動板の振動方向と同様の方向に空気の出入りが起こる。この空気の移動方向に対して交差する方向(周方向)に厚みより幅の大きい板状の複数の脚部があると、空気抵抗が増え、振動板の背面側の空気のスムーズな移動を妨げる虞がある。このことは、振動板の正確な振幅を妨げ、スピーカ出力の周波数特性を悪化させる虞がある。
【0013】
特許文献1には、個々の脚部を、全体的にほぼ均等な厚みを有し、厚みより幅が小さい一対の柱状体(6)により構成したスピーカフレーム(1)が記載されている(図1(a)〜(c))。かかる構成では、一対の柱状体(6)間に開口部が形成されるので、開口率を向上させることができる。
特許文献1の構成では、個々の柱状体(6)はその幅が厚みより小さいため、脚部の接続強度と脚部全体の強度を確保するために、柱状体(6)が全体的に厚く設計されている。
【0014】
特許文献2に記載のスピーカフレームでは、振動板と面対向する板状部とその両側面に沿って背面側に突設された補強用リブとを備えた脚部(1b)が用いられている(図2)。
特許文献2に記載のスピーカフレームでは、ダンパ取付け部(1ad)の上面の外周から起立したリブ(1ae)が設けられ、このリブ(1ae)の脚部(1b)が結合される領域(E4)を他の領域より高くしている(図7)。
特許文献2の段落0056には、リブ(1ae)と脚部(1b)との結合部分の強度を低下させることなく、比較例より少ない材料でリブ(1ae)を形成することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002-142290号公報
【特許文献2】特開2006-229518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に記載のように、脚部全体を一様に厚くする場合、脚部は従来構造より背面側か振動板側のいずれか又はその両方に厚みを増した構造となる。
脚部全体の厚みを背面側に増した場合には、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触する虞がある。スピーカが取り付けられる音響機器あるいはその他の周辺部材の仕様が決まっている場合には、これらの設計変更はできない。また、スピーカが取り付けられる音響機器あるいはその他の周辺部材の設計変更ができたとしても、コスト高になる、音響機器全体のサイズが大きくなるなどの理由から、好ましくない。
脚部全体の厚みを振動板側に増した場合には、脚部が振動板、特にそのエッジに近接しすぎて、振動板の振動のストロークが制限されるため、大音量が良好に再生できなくなるなど、音質低下を招いてしまう。
【0017】
特許文献2では、脚部(1b)の幅と厚み(=補強リブの高さ)は全体的にほぼ均等であり、開口率を上げる工夫はなされておらず、振動板の背面側の空気抵抗を低減するための対策は講じられていない。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板に影響を与えることなく、脚部の接続強度と脚部全体の強度が確保され、振動板の背面側の空気抵抗を低減することが可能なスピーカフレーム、及びこれを備えたスピーカを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のスピーカフレームは、
磁気回路部と、当該磁気回路部内のギャップに挿入されたボイスコイルと、当該ボイスコイルを保持するボイスコイルボビンと、当該ボイスコイルボビンに連結された振動板とを備えたスピーカに用いられるスピーカフレームであって、
前記磁気回路部が取り付けられる内環状部と、
前記内環状部よりも大きい径を有し、前記振動板のエッジが取り付けられる外環状部と、
前記内環状部と前記外環状部とを連結する複数の脚部とを備え、
前記脚部は、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部との間に、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部よりも幅が狭い幅狭部を有し、かつ、当該幅狭部の厚みが前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部より厚いことを特徴とするものである。
【0020】
本明細書において、「脚部の厚み」は径方向のサイズ(図1Bにおいて、脚部の背面80Bから振動板対向面80Aに向かう背面80Bに対して法線方向のサイズ)であり、「脚部の幅」は周方向のサイズである。
【0021】
本発明のスピーカフレームにおいて、
前記幅狭部は、前記内環状部側から前記外環状部側に向けて、幅が連続的に狭くなった後連続的に広くなり、かつ、前記内環状部側から前記外環状部側に向けて、厚みが連続的に厚くなった後連続的に薄くなる連続形状変化部を有することが好ましい。
【0022】
本発明のスピーカフレームにおいて、
前記幅狭部は、前記振動板側に厚みを増した構造、若しくは前記スピーカの背面側に厚みを増した構造とすることができる。
本明細書において、「振動板側に厚みを増した構造、若しくはスピーカの背面側に厚みを増した構造」とは、脚部の振動板対向面と背面とを内環状部との接続部分から外環状部との接続部分まで均等な厚みで面平行に形成した「脚部の全体を均等な厚みとした構造」に対して、振動板側に厚みを増した構造、若しくはスピーカの背面側に厚みを増した構造を意味する。
【0023】
前記脚部の態様としては、前記振動板と対向する振動板対向面と、当該振動板対向面と対向する背面と、前記振動板対向面と前記背面との間に形成された一対の側面とを備えたものが挙げられる。
【0024】
前記脚部の他の態様としては、前記振動板と面対向する板状部と、当該板状部の両側面に同一方向に突設された一対のリブとを備えたものが挙げられる。
かかる態様において、「脚部の厚み」はリブ高さである。
【0025】
本発明のスピーカは、
磁気回路部と、当該磁気回路部内のギャップに挿入されたボイスコイルと、当該ボイスコイルを保持するボイスコイルボビンと、当該ボイスコイルボビンに連結された振動板と、スピーカフレームとを備えたスピーカであって、
前記スピーカフレームは、
前記磁気回路部が取り付けられる内環状部と、
前記内環状部よりも大きい径を有し、前記振動板のエッジが取り付けられる外環状部と、
前記内環状部と前記外環状部とを連結する複数の脚部とを備え、
前記脚部は、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部との間に、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部よりも幅が狭い幅狭部を有し、かつ、当該幅狭部の厚みが前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部より厚いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板に影響を与えることなく、脚部の接続強度と脚部全体の強度が確保され、振動板の背面側の空気抵抗を低減することが可能なスピーカフレーム、及びこれを備えたスピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】第1実施形態のスピーカの側面図である。
【図1B】第1実施形態のスピーカの断面図である。
【図1C】第1実施形態のスピーカフレームの前面図である。
【図1D】第1実施形態のスピーカフレームの背面図である。
【図1E】第1実施形態の設計変更例を示す断面図である。
【図1F】第1実施形態の設計変更例を示す断面図である。
【図1G】第1実施形態の設計変更例を示す断面図である。
【図1H】第1実施形態の設計変更例を示す断面図である。
【図1I】第1実施形態の設計変更例を示す断面図である。
【図1J】第1実施形態の設計変更例を示す断面図である。
【図2A】第2実施形態のスピーカフレームの背面側の斜視図である。
【図2B】図2Aの部分拡大図である。
【図2C】第2実施形態のスピーカフレームの背面図である。
【図3A】第3実施形態のスピーカフレームの前面側の斜視図である。
【図3B】図3Aの部分拡大図である。
【図3C】第3実施形態のスピーカフレームの背面図である。
【図4A】従来のスピーカの側面図である。
【図4B】従来のスピーカの断面図である。
【図4C】従来のスピーカフレームの前面図である。
【図4D】従来のスピーカフレームの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
「第1実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態のスピーカフレーム及びこれを備えたスピーカの構造について説明する。
本実施形態のスピーカは、車載用あるいは家庭用の音響機器等に使用されるものである。本実施形態のスピーカは、コーン型の振動板を備えたダイナミック型スピーカである。
図1Aはスピーカ全体の側面図、図1Bはスピーカ全体の断面図、図1Cはスピーカフレームの前面図、図1Dはスピーカフレームの背面図である。
【0029】
図1A及び図1Bに示す本実施形態のスピーカ1は、磁気回路部10と、磁気回路部10内のギャップに挿入されたボイスコイル20と、ボイスコイル20を保持するボイスコイルボビン21と、ボイスコイルボビン21に連結されたコーン型の振動板30と、これらを保持する椀状のスピーカフレーム50とを備えている。
【0030】
磁気回路部10は、環状の永久磁石10Aと、永久磁石10A内に一部が嵌め込まれたヨーク10Bと、永久磁石10Aの前面に配置された環状プレート10Cとを備えている。
【0031】
磁気回路部10はスピーカフレーム50に固着される。これに対して、ボイスコイル20及び振動板30は振動する必要があるため、ボイスコイル20はダンパ40を介して、振動板30は柔軟な膜からなるエッジ30Eを介して、それぞれスピーカフレーム50に保持されている。
【0032】
ボイスコイル20はボイスコイルボビン21に保持されており、ボイスコイル20が磁気回路部10のギャップ内に位置するように、ボイスコイルボビン21はダンパ40を介してスピーカフレーム50に保持されている。
ボイスコイルボビン21の前方側端部は振動板30の内周部に連結され、振動板30の外周部はエッジ30Eを介してスピーカフレーム50に保持されている。
【0033】
ボイスコイルボビン21は紙やプラスチック等の筒であり、ボイスコイル20はそれに巻きつけられた導線である。ボイスコイル20をなす導線に音声信号が流れると、フレミング左手の法則によってボイスコイルボビン21が音声信号の波形に応じて前後方向に振動する。ボイスコイルボビン21には振動板30が連結されているので、この振動板30がボイスコイルボビン21と共に振動することで、音声信号の波形に対応した音が空気中に放射される。
【0034】
スピーカフレーム50は、
環状の底部からなる磁気回路部取付部61と、磁気回路部取付部61の外周に前方側に突設された側部62と、側部62の前方側端部から径方向に外側に延びた環状のダンパ取付部63とを備えた内環状部60と、
内環状部60よりも大きい径を有し、振動板30のエッジ30Eが取り付けられる外環状部70と、
内環状部60と外環状部70とを連結する複数の脚部80とから構成されている。
【0035】
脚部80は、後方側端部が内環状部60に接続され、前方側端部が外環状部70に接続されている。内環状部60の外周部から斜め前方に向けて、放射状に複数の脚部80が延びている。
脚部80は、振動板30と対向する振動板対向面80Aと、振動板対向面80Aと対向する背面80Bと、振動板対向面80Aと背面80Bとの間に形成された一対の側面80Cとを備えている。
【0036】
スピーカフレーム50の外環状部70の背面側には、スピーカ1を音響機器の筺体又はフレーム等に固定するための複数の取付け孔51が設けられている。
内環状部60と外環状部70との間には、スピーカ1の端子を取り付けるための端子取付部52が設けられている。
【0037】
本実施形態では、7個の脚部80と端子取付部52とが放射状に均等間隔で設けられており、これら7個の脚部80と端子取付部52の間に、計8個の開口部53が形成されている。
【0038】
本実施形態のスピーカフレーム50は、金属鋳造法により内環状部60と外環状部70と複数の脚部80とが一体成型されたアルミニウム合金あるいはマグネシウム合金等からなるダイカストフレーム、あるいは、プラスチック射出成型により内環状部60と外環状部70と複数の脚部80とが一体成型された樹脂フレーム等の成型フレームである。
【0039】
振動板30の前後方向の振動に伴って、スピーカフレーム50の複数の開口部53には振動板30の振動方向と同様の方向に空気の出入りが起こる。この空気の出入りがスムーズでないと、振動板30の正確な振幅が妨げられ、スピーカ出力の周波数特性が悪化する虞がある。
上記の空気の出入りをスムーズにするために、スピーカフレーム50の開口率(開口部53の開口面積)をなるべく大きくすることが好ましい。スピーカフレーム50の開口率が大きい程、空気抵抗が低減され、好ましい。
【0040】
スピーカフレーム50の開口率を大きくするには、複数の脚部80の幅(=周方向のサイズ)を小さくすればよいが、複数の脚部80は、内環状部60及び外環状部70との間で充分な接続強度を有し、重い磁気回路部10を支えられるに充分な強度を有する必要がある。
また、複数の脚部80は、取付け孔51をふさがず、スピーカ1が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触せず、振動板30、特にそのエッジ30Eから充分離間して振動板30の振動に影響を与えないように設計する必要がある。
本実施形態では、上記要求特性をすべて充足するために、脚部80を下記のように設計している。
【0041】
図1A〜図1Dに示すように、脚部80は、内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部83を有している。
図1D内の拡大図に示すように、内環状部側の端部81の幅をW1、外環状部側の端部82の幅をW2、幅狭部83の最小幅をW3とすると、W3<W1かつW3<W2である。
脚部80においては、幅狭部83の厚みが内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82より厚く構成されている。
図1B内の拡大図に示すように、内環状部側の端部81の厚みをT1、外環状部側の端部82の厚みをT2、幅狭部83の最大厚をT3とすると、T3>T1かつT3>T2である。
本実施形態の図1Bと従来構造の図4Bとの比較から示されるように、本実施形態では、脚部80の幅狭部83は、脚部80の全体を均等な厚みとした構造よりも振動板30側に厚みを増した構造になっている。
【0042】
本実施形態において、「脚部80の厚み」は脚部80の振動板対向面80Aと脚部80の背面80Bとの離間距離(=径方向のサイズ)であり、「脚部80の幅」は脚部80の振動板対向面80Aと背面80Bとの間に形成された一対の側面80Cの離間距離(=周方向のサイズ)である。
【0043】
本実施形態において、幅狭部83は、内環状部60側から外環状部側70に向けて、幅が連続的に狭くなった後連続的に広くなり、かつ、内環状部60側から外環状部70側に向けて、厚みが連続的に厚くなった後連続的に薄くなる連続形状変化部である。
【0044】
図1A及び図1Dに示されるように、脚部80において、内環状部60との接続部分及び外環状部70との接続部分の角部については、面取りが施されている。
【0045】
本実施形態では、内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部83を設け、中央部の幅を最も小さくしている。そして、幅狭部83の厚みを内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82より厚くしている。
【0046】
本実施形態の図1C、図1Dと従来構造の図4C、図4Dとを比較すると明らかなように、脚部80の中央部とその近傍の幅を狭めたことにより、開口部53の開口面積が拡大されている。
内環状部60との接続部分及び外環状部70との接続部分の幅を狭くした場合には、脚部80と内環状部60及び外環状部70との接続強度が低下するため、好ましくない。また、内環状部60との接続部分あるいはその近傍部分と外環状部70との接続部分あるいはその近傍部分の幅だけを狭くしても、開口部53の開口面積の拡大にはそれ程寄与しない。
本実施形態では、内環状部60との接続部分及び外環状部70との接続部分の幅は従来と同様に幅広にして、脚部80と内環状部60及び外環状部70との接続強度を確保している。
【0047】
また、単に内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部83を設けるだけでは、幅狭部83の強度が低下する虞がある。本実施形態では、幅狭部83の厚みを厚くして、幅狭部83の強度を確保している。
【0048】
脚部80全体の厚みを厚くすると、脚部80が、スピーカ1が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触したり、振動板30のエッジ30Eに近接しすぎて振動板30の振動に影響を与える虞がある。本実施形態では、内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82の厚みは従来と同様とし、これらの間において部分的にのみ厚みを厚くしているので、上記虞がない。
【0049】
本実施形態では、脚部80の幅狭部83を、脚部80の全体を均等な厚みとした構造よりも振動板30側に厚みを増した構造としているので、脚部80が、スピーカ1が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触する虞がない。また、内環状部側の端部81及び外環状部側の端部82の間であれば、幅狭部83の厚みを内側に厚くしても、振動板30との距離も充分に取れるため、振動板30への影響もない(図1Bを参照)。
【0050】
スピーカ1が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材への影響がない範囲内であれば、幅狭部83において、脚部80の全体を均等な厚みとした構造よりも背面側に厚みを増した構造、あるいは脚部80の全体を均等な厚みとした構造よりも振動板30側と背面側の双方に厚みを増した構造としてもよい。
【0051】
脚部80の厚み変化例を図1E〜図1Jに示す。
図1Eは、幅狭部83の振動板30側に凸部TBが設けられて、幅狭部83が振動板30側にのみ厚みを増した形状の例である。
図1Fは、幅狭部83の背面側に凸部TBが設けられて、幅狭部83が背面側にのみ厚みを増した形状の例である。
図1Gは、幅狭部83の振動板30側と背面側の両方に凸部TBが設けられて、振動板30側と背面側の両方に厚みを増した形状の例である。
図1Hは、幅狭部83の振動板30側に凸部TBが設けられ、背面側に浅い(=凸部TBの高さより小さい深さを有する)凹部UBが設けられて、幅狭部83が振動板30側に厚みを増した形状の例である。
図1Iは、幅狭部83の背面側に凸部TBが設けられ、振動板30側に浅い(=凸部TBの高さより小さい深さを有する)凹部UBが設けられて、幅狭部83が振動板30側に厚みを増した形状の例である。
【0052】
幅狭部83において、同じ面側に複数の凸部TBを設けてもよく、同様に同じ面側に複数の凹部UBを設けてもよい。
図1Jは、幅狭部83の振動板30側と背面側にそれぞれ2個の凸部TBが設けられた厚み変化例である。この例では、振動板30側の2個の凸部TBと背面側の2個の凸部TBとが互いに対向している。この例では、幅狭部83が2箇所に設けられている。
ただし、同じ面側に設ける凸部TBは1個であることが好ましく、同様に同じ面側に設ける凹部UBは1個であることが好ましい。
【0053】
なお、脚部80は実際には内環状部60側から外環状部70側に断面視弧状に形成されているが、図1E〜図1Jでは簡略化して、脚部80の両端部が同一面上にあるように図示し、厚みの変化のみを視認しやすくしてある。
【0054】
以上のように、本実施形態では、脚部80と内環状部60及び外環状部70との接続強度、及び脚部80全体の強度を確保しつつ、開口部53の開口面積の拡大を図っている。
なるべく幅狭部83の幅を狭くして開口部53の開口面積を大きくし、かつ、脚部80全体の強度を確保でき、スピーカ1が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板30への影響がない範囲で、幅狭部83の厚みをなるべく厚くすることが好ましい。
具体的には、脚部80は最小幅<最大厚みであることが好ましい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、スピーカ1が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板30に影響を与えることなく、脚部80の接続強度と脚部80全体の強度が確保され、振動板30の背面側の空気抵抗を低減することが可能なスピーカフレーム50、及びこれを備えたスピーカ1を提供することができる。
本実施形態のスピーカ1は、振動板30の背面側の空気抵抗が低減されるので、音質が従来よりも向上されたものとなる。
【0056】
「第2実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態のスピーカフレームについて説明する。
図2Aはスピーカフレームの背面側の全体斜視図、図2Bは図2Aの部分拡大図、図2Cはスピーカフレームの背面図である。
第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は適宜省略する。
【0057】
スピーカの全体構造は第1実施形態と同様である。
本実施形態のスピーカフレーム150は、第1実施形態と同様、
環状の底部からなる磁気回路部取付部161と、磁気回路部取付部161の外周に前方側に突設された側部162と、側部162の前方側端部から径方向に外側に延びた環状のダンパ取付部163とを備えた内環状部160と、
内環状部160よりも大きい径を有し、振動板30のエッジ30Eが取り付けられる外環状部170と、
内環状部160と外環状部170との間に架設された複数の脚部180とから構成されている。
【0058】
本実施形態においても、脚部180は、後方側端部が内環状部160に接続され、前方側端部が外環状部170に接続されている。内環状部160の外周部から斜め前方に向けて、放射状に複数の脚部180が延びている。
【0059】
本実施形態において、脚部180は、振動板30と面対向する板状部180Aと、板状部180Aの両側面に同一方向に突設された一対のリブ180Bとを備えている。
本実施形態において、板状部180Aが振動板30側に配され、一対のリブ180Bが板状部180Aから背面側に突設されている。板状部180Aを背面側に配し、一対のリブ180Bを、板状部180Aから振動板30側に突設するようにしてもよい。
【0060】
本実施形態においても、内環状部160と外環状部170との間には、スピーカの端子を取り付けるための端子取付部152が設けられている。
【0061】
本実施形態では、4個の脚部180が放射状に均等間隔で設けられており、これら4個の脚部180の間に、計4個の開口部153が形成されている。
【0062】
本実施形態のスピーカフレーム150は、第1実施形態と同様、金属鋳造法により内環状部160と外環状部170と複数の脚部180とが一体成型されたダイカストフレーム、あるいは、プラスチック射出成型により内環状部160と外環状部170と複数の脚部180とが一体成型された樹脂フレーム等の成型フレームである。
【0063】
脚部180を、振動板30と面対向する板状部180Aと、板状部180Aの両側面に突設された一対のリブ180Bとから構成することで、スピーカフレーム150の成型時の樹脂あるいは金属の流動性を良くして成型性を向上したり、スピーカフレーム150の軽量化を図ることができる。
【0064】
本実施形態のスピーカフレーム150を備えたスピーカでは、振動板30の前後方向の振動に伴って、スピーカフレーム150の複数の開口部153に空気の出入りが起こる。この空気の出入りがスムーズでないと、振動板30の正確な振幅が妨げられ、スピーカ出力の周波数特性が悪化する虞がある。
上記の空気の出入りをスムーズにするために、スピーカフレーム150の開口率(開口部の開口面積)をなるべく大きくすることが好ましい。スピーカフレーム150の開口率が大きい程、空気抵抗が低減され、好ましい。
スピーカフレーム150の開口率を大きくするには、複数の脚部180の幅(=周方向のサイズ)を小さくすればよいが、複数の脚部180は、内環状部160及び外環状部170との間で充分な接続強度を有し、重い磁気回路部10を支えられるに充分な強度を有する必要がある。
また、複数の脚部180は、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触せず、振動板30、特にそのエッジ30Eから充分離間して振動板30の振動に影響を与えないように設計する必要がある。
本実施形態では、上記要求特性をすべて充足するために、脚部180を下記のように設計している。
【0065】
脚部180は、内環状部側の端部181及び外環状部側の端部182との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部183を有している。
脚部180においては、幅狭部183のリブ180Bの高さが内環状部側の端部181及び外環状部側の端部182より高く構成されている。
本実施形態では、「脚部180の厚み」は一対のリブ180Bの高さであり、「脚部180の幅」は一方のリブ180Bの外面と他方のリブ180Bの外面との離間距離(=周方向のサイズ)である。
したがって、本実施形態では、幅狭部183の厚みが内環状部側の端部181及び外環状部側の端部182より厚く構成されている。
【0066】
本実施形態では、脚部180の幅狭部183において、一対のリブ180Bがいずれもリブ全体を均等な厚みとした構造よりも背面側に高さを増した構造となっている。
【0067】
本実施形態において、幅狭部183は、内環状部160側から外環状部170側に向けて、幅が連続的に狭くなった後連続的に広くなり、かつ、内環状部160側から外環状部170側に向けて、厚みが連続的に厚くなった後連続的に薄くなる(=リブ高さが連続的に高くなった後低くなる)連続形状変化部である。
【0068】
本実施形態では、内環状部側の端部181及び外環状部側の端部182との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部183を設け、中央部の幅を最も小さくしている。そして、幅狭部183の厚みを内環状部側の端部181及び外環状部側の端部182より厚くしている。
【0069】
本実施形態の図2Cと従来構造の図4Dと比較すると明らかなように、脚部180の中央部とその近傍の幅を狭めたことにより、開口部153の開口面積が拡大されている。
内環状部160との接続部分及び外環状部170との接続部分の幅を狭くした場合には、脚部180と内環状部160及び外環状部170との接続強度が低下するため、好ましくない。また、内環状部160との接続部分あるいはその近傍部分と外環状部170との接続部分あるいはその近傍部分の幅だけを狭くしても、開口部153の開口面積の拡大にはそれ程寄与しない。
本実施形態では、内環状部160との接続部分及び外環状部170との接続部分の幅は従来と同様に幅広にして、脚部180と内環状部160及び外環状部170との接続強度を確保している。
【0070】
また、単に内環状部側の端部181及び外環状部側の端部182との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部183を設けるだけでは、幅狭部183の強度が低下する虞がある。本実施形態では、幅狭部183の厚み(=リブ高さ)を厚くして、幅狭部183の強度を確保している。
【0071】
脚部180全体の厚みを厚くすると、脚部180が、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触したり、振動板30のエッジ30Eに近接しすぎて振動板30の振動に影響を与える虞がある。
本実施形態では、内環状部側の端部181及び外環状部側の端部182の厚み(=リブ高さ)は従来と同様とし、これらの間において部分的にのみ厚みを厚くしているので、上記虞がない。
本実施形態においては、一対のリブ180Bがいずれもリブ全体を均等な厚みとした構造よりも振動板30側に高さを増した構造としてもよい。
【0072】
以上のように、本実施形態では、脚部180と内環状部160及び外環状部170との接続強度、及び脚部180全体の強度を確保しつつ、開口部153の開口面積の拡大を図っている。
【0073】
なるべく幅狭部183の幅を狭くして開口部153の開口面積を大きくし、脚部180全体の強度を確保でき、スピーカ2が取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板30への影響がない範囲で、幅狭部183の厚みをなるべく厚くすることが好ましい。
具体的には脚部180は、最小幅<最大厚み(=リブの最大高さ)であることが好ましい。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によっても、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板に影響を与えることなく、脚部180の接続強度と脚部180全体の強度が確保され、振動板30の背面側の空気抵抗を低減することが可能なスピーカフレーム150を提供することができる。
本実施形態のスピーカフレーム150を備えたスピーカは、振動板30の背面側の空気抵抗が低減されるので、従来よりも音質が向上されたものとなる。
【0075】
「第3実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第3実施形態のスピーカフレームについて説明する。
図3Aはスピーカフレームの前面側の全体斜視図、図3Bは図3Aの部分拡大図、図3Cはスピーカフレームの背面図である。
第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は適宜省略する。
【0076】
スピーカの全体構造は第1実施形態と同様である。
スピーカフレーム250は、第1実施形態と同様、
環状の底部からなる磁気回路部取付部261と、磁気回路部取付部261の外周に前方側に突設された側部262と、側部262の前方側端部から径方向に外側に延びた環状のダンパ取付部263とを備えた内環状部260と、
内環状部260よりも大きい径を有し、振動板30のエッジ30Eが取り付けられる外環状部270と、
内環状部260と外環状部270との間に架設された複数の脚部280とから構成されている。
【0077】
本実施形態においても、脚部280は、後方側端部が内環状部260に接続され、前方側端部が外環状部270に接続されている。内環状部260の外周から斜め前方に向けて、放射状に複数の脚部280が延びている。
【0078】
本実施形態では、4個の脚部280が放射状に均等間隔で設けられており、これら4個の脚部280の間に、計4個の開口部253が形成されている。
【0079】
本実施形態のスピーカフレーム250は、薄肉の鉄板をプレス加工して製造された鉄板フレームである。
本実施形態のスピーカフレーム250は、内環状部260と外環状部270とを接続する円筒状材に複数の開口部253が開口され、複数の開口部253が開口されていない部分が脚部280とされた形状を有している。
複数の開口部253の内周面には、振動板30側に向けて、「縁立て」と呼ばれるリブ253Aが突設されている。
【0080】
本実施形態において、脚部280は、振動板30と面対向する板状部280Aと、板状部280Aの両側面に突設された一対のリブ280Bとを備えている。隣接する2個の開口部253の内周面に形成されたリブ253Aの一部が一対のリブ280Bをなしている。
本実施形態において、板状部280Aが背面側に配され、一対のリブ280Bが板状部280Aから振動板30側に突設されている。
【0081】
本実施形態のスピーカフレーム250を備えたスピーカでは、振動板30の前後方向の振動に伴って、スピーカフレーム250の複数の開口部253に空気の出入りが起こる。この空気の出入りがスムーズでないと、振動板30の正確な振幅が妨げられ、スピーカ出力の周波数特性が悪化する虞がある。
上記の空気の出入りをスムーズにするために、スピーカフレーム250の開口率(開口部の開口面積)をなるべく大きくすることが好ましい。スピーカフレーム250の開口率が大きい程、空気抵抗が低減され、好ましい。
スピーカフレーム250の開口率を大きくするには、複数の脚部280の幅(=周方向のサイズ)を小さくすればよいが、複数の脚部280は、内環状部260及び外環状部270との間で充分な接続強度を有し、重い磁気回路部10を支えられるに充分な強度を有する必要がある。
また、複数の脚部280は、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触せず、振動板30、特にそのエッジ30Eから充分離間して振動板30の振動に影響を与えないように設計する必要がある。
本実施形態では、上記要求特性をすべて充足するために、脚部280を下記のように設計している。
【0082】
脚部280は、内環状部側の端部281及び外環状部側の端部282との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部283を有している。
脚部280においては、幅狭部283のリブ280Bの高さが内環状部側の端部281及び外環状部側の端部282より高く構成されている。
本実施形態では、「脚部280の厚み」は一対のリブ280Bの高さであり、「脚部280の幅」は一方のリブ280Bの外面と他方のリブ280Bの外面との離間距離(=周方向のサイズ)である。
したがって、本実施形態では、幅狭部283の厚みが内環状部側の端部281及び外環状部側の端部282より厚く構成されている。
【0083】
本実施形態では、脚部280の幅狭部283は、脚部280の全体を均等な厚みとした構造よりも振動板30側に厚みを増した構造になっている。
【0084】
本実施形態において、幅狭部283は、内環状部260側から外環状部側270に向けて、幅が連続的に狭くなった後連続的に広くなり、かつ、内環状部260側から外環状部70側に向けて、厚みが連続的に厚くなった後連続的に薄くなる(=リブ高さが連続的に高くなった後低くなる)連続形状変化部である。
【0085】
本実施形態では、内環状部側の端部281及び外環状部側の端部282との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部283を設け、中央部の幅を最も小さくしている。そして、幅狭部283の厚みを内環状部側の端部281及び外環状部側の端部282より厚くしている。
【0086】
本実施形態の図3Cと従来構造の図4Dと比較すると明らかなように、脚部280の中央部とその近傍の幅を狭めたことにより、開口部253の開口面積が拡大されている。
内環状部260との接続部分及び外環状部270との接続部分の幅を狭くした場合には、脚部280と内環状部260及び外環状部270との接続強度が低下するため、好ましくない。また、内環状部260との接続部分あるいはその近傍部分と外環状部270との接続部分あるいはその近傍部分の幅だけを狭くしても、開口部253の開口面積の拡大にはそれ程寄与しない。
本実施形態では、内環状部260との接続部分及び外環状部270との接続部分の幅は従来と同様に幅広にして、脚部280と内環状部260及び外環状部270との接続強度を確保している。
【0087】
また、単に内環状部側の端部281及び外環状部側の端部282との間に、これら端部よりも幅が狭い幅狭部283を設けるだけでは、幅狭部283の強度が低下する虞がある。本実施形態では、幅狭部283の厚み(=リブ高さ)を厚くして、幅狭部283の強度を確保している。
【0088】
脚部280全体の厚みを厚くすると、脚部280が、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材に接触したり、振動板30のエッジ30Eに近接しすぎて振動板30の振動に影響を与える虞がある。
本実施形態では、内環状部側の端部281及び外環状部側の端部282の厚み(=リブ高さ)は従来と同様とし、これらの間において部分的にのみ厚みを厚くしているので、上記虞がない。
【0089】
以上のように、本実施形態では、脚部280と内環状部260及び外環状部270との接続強度、及び脚部280全体の強度を確保しつつ、開口部253の開口面積の拡大を図っている。
なるべく幅狭部283の幅を狭くして開口部253の開口面積を大きくし、脚部280全体の強度を確保でき、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板30への影響がない範囲で、幅狭部283の厚みをなるべく厚くすることが好ましい。
具体的には、脚部280は最小幅<最大厚み(=リブの最大高さ)であることが好ましい。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によっても、スピーカが取り付けられる音響機器の筺体又はフレーム、あるいはその他の周辺部材、及び振動板30に影響を与えることなく、脚部280の接続強度と脚部280全体の強度が確保され、振動板30の背面側の空気抵抗を低減することが可能なスピーカフレーム250を提供することができる。
本実施形態のスピーカフレーム250を備えたスピーカは、振動板30の背面側の空気抵抗が低減されるので、従来よりも音質が向上されたものとなる。
【0091】
「設計変更」
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、設計変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 スピーカ
10 磁気回路部
20 ボイスコイル
21 ボイスコイルボビン
30 振動板
30E エッジ
40 ダンパ
50、150、250 スピーカフレーム
60、160、260 内環状部
61、161、261 磁気回路部取付部
62、162、262 側部
63、163、263 ダンパ取付部
70、170、270 外環状部
80、180、280 脚部
80A 振動板対向面
80B 背面
80C 側面
180A、280A 板状部
180B、280B リブ
81、181、281 内環状部側の端部
82、182、282 外環状部側の端部
83、183、283 幅狭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路部と、当該磁気回路部内のギャップに挿入されたボイスコイルと、当該ボイスコイルを保持するボイスコイルボビンと、当該ボイスコイルボビンに連結された振動板とを備えたスピーカに用いられるスピーカフレームであって、
前記磁気回路部が取り付けられる内環状部と、
前記内環状部よりも大きい径を有し、前記振動板のエッジが取り付けられる外環状部と、
前記内環状部と前記外環状部とを連結する複数の脚部とを備え、
前記脚部は、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部との間に、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部よりも幅が狭い幅狭部を有し、かつ、当該幅狭部の厚みが前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部より厚いことを特徴とするスピーカフレーム。
【請求項2】
前記幅狭部は、前記内環状部側から前記外環状部側に向けて、幅が連続的に狭くなった後連続的に広くなり、かつ、前記内環状部側から前記外環状部側に向けて、厚みが連続的に厚くなった後連続的に薄くなる連続形状変化部を有する請求項1に記載のスピーカフレーム。
【請求項3】
前記幅狭部は、前記振動板側に厚みを増した構造、若しくは前記スピーカの背面側に厚みを増した構造である請求項1又は2に記載のスピーカフレーム。
【請求項4】
前記脚部は、前記振動板と対向する振動板対向面と、当該振動板対向面と対向する背面と、前記振動板対向面と前記背面との間に形成された一対の側面とを備えた請求項1〜3のいずれかに記載のスピーカフレーム。
【請求項5】
前記脚部は、前記振動板と面対向する板状部と、当該板状部の両側面に同一方向に突設された一対のリブとを備えた請求項1〜4のいずれかに記載のスピーカフレーム。
【請求項6】
磁気回路部と、当該磁気回路部内のギャップに挿入されたボイスコイルと、当該ボイスコイルを保持するボイスコイルボビンと、当該ボイスコイルボビンに連結された振動板と、スピーカフレームとを備えたスピーカであって、
前記スピーカフレームは、
前記磁気回路部が取り付けられる内環状部と、
前記内環状部よりも大きい径を有し、前記振動板のエッジが取り付けられる外環状部と、
前記内環状部と前記外環状部とを連結する複数の脚部とを備え、
前記脚部は、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部との間に、前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部よりも幅が狭い幅狭部を有し、かつ、当該幅狭部の厚みが前記内環状部側の端部及び前記外環状部側の端部より厚いことを特徴とするスピーカ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公開番号】特開2012−44517(P2012−44517A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184955(P2010−184955)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】