説明

スピーカー用磁気回路およびこれを用いた動電型スピーカーならびにその製造方法

【課題】 長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであって、細長形状で二分割されたマグネットを含み、短径方向にマグネットが配置されていない開放孔が形成される磁気回路であっても、製造が容易で品質が安定し、かつ、磁気空隙に鉄粉等の異物が侵入しにくいスピーカー用磁気回路、および、動電型スピーカーを提供する。
【解決手段】 スピーカー用磁気回路は、アンダープレートに固着されるマグネット固定位置決定部材を備え、マグネット固定位置決定部材が、センターポールの円筒曲面、2つの主マグネットのそれぞれの中央側端部、並びに、アンダープレートに係合する係合部を有し、好ましくは、通気性を有するシート状の織布もしくは不織布を型抜きして係合部を形成した部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであって、音声再生能力に優れ、ディスプレイ等の機器に取り付けるのに適するスピーカー用磁気回路、および、動電型スピーカー、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生するスピーカーを取り付けるディスプレイ等の音響機器においては、スピーカーを取り付けるのに要する空間を小型化することが要望されている。特に、細長形(矩形、長円形(楕円形、トラック形を含む))の動電型スピーカーは、短径方向に振動板面積が限られる、細長形のスピーカー振動板に特有な分割振動の影響が大きくて平坦な再生音圧周波数特性を得ることが難しい、磁気空隙の磁束密度が高いスピーカー用磁気回路を採用しようとすると、磁気回路の幅がスピーカー振動板よりも広くなり小型化できない、といった様々な理由から音声再生能力において不利な点がある。したがって、従来には、これらの問題を解決するために様々なスピーカー振動板、スピーカー用磁気回路、および、これを用いた動電型スピーカーが提案されている。
【0003】
例えば、従来には、ポールピース付きプレートにマグネットを接合し、さらにマグネットのもう一方の面にトッププレートを接合し、ポールピースとトッププレートとの間に磁気ギャップを構成して成る外磁型の動電型スピーカーにおいて、上記マグネットを2分割配置したスピーカーがある(特許文献1)。このスピーカーの磁気回路では、略円形を2分割して直線部でポールピースを挟むように長径方向に配置したマグネット(第1図)、もしくは、直方体形状の外形を有しポールピースに対応する円形孔を有するマグネットを2分割したマグネット(第2図)が、長径方向に配置されており、短径方向にマグネットが配置されていないものの、短径方向に開放された角度(マグネットが存在しない空間部分に相当する角度)は非常に狭いものになっている。
【0004】
また、細長板状のヨーク本体および前記ヨーク本体に形成されたセンターポールを有するヨークと、前記ヨーク本体と実質上相対して配置され、前記センター
ポールの上端が磁気ギャップを持って挿入される孔を有するプレートと、前記ヨーク本体と前記プレートとの間に挟まれて配置された少なくとも1個のメインマグネットとを備え、前記メインマグネットは、少なくとも、前記センターポールの中央部における、前記ヨーク本体の長手方向に垂直な面内には配置されていない界磁部を有するスピーカーがある(特許文献2)。このスピーカーの磁気回路では、メインマグネットは、センターポールの中央部におけるヨーク本体の長手方向に垂直な面内には配置されておらず、プレートの外周部と嵌合してメインマグネット、防磁マグネットおよびヨークを一体的に覆うカバーを備えている場合がある(第5図、第6図)。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−278496号公報
【特許文献2】特開平11−155193号公報
【0006】
しかしながら、長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーでは、磁気回路を構成するマグネットが細長形状とされて二分割される結果、アンダープレートに接着剤でマグネットを固着する工程において、磁石の回転方向のズレを抑制しながら接着する治具を別途設けなければなくなる、という問題がある。また、これらのような細長形の磁気回路でマグネットが二分割されている場合には、短径方向にマグネットが配置されていない開放孔が形成されるので、センターポールの円筒曲面が露出し、ボイスコイルが配置される磁気空隙に鉄粉等の異物が侵入しやすくなるという問題がある。製造工程および動作環境下で、磁気回路の磁気空隙に異物が侵入すると、動電型スピーカーからは異音が生じ、動作不良という問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであって、細長形状で二分割されたマグネットを含み、短径方向にマグネットが配置されていない開放孔が形成される磁気回路であっても、製造が容易で品質が安定し、かつ、磁気空隙に鉄粉等の異物が侵入しにくいスピーカー用磁気回路、および、動電型スピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスピーカー用磁気回路は、長径方向と短径方向とを有する細長形のトッププレートと、略円筒形状であってトッププレートの中央に形成された円形孔に挿入されて、トッププレートとともに磁気空隙を形成するセンターポールと、センターポールを中央に配置して、長径方向と短径方向とに対応した細長形を有するアンダープレートと、トッププレートおよびアンダープレートの間に狭持され、長径方向にセンターポールを中間にして対称配置されて、同一方向に着磁された2つの主マグネットと、アンダープレートに固着されるマグネット固定位置決定部材と、を備え、マグネット固定位置決定部材が、センターポールの円筒曲面、2つの主マグネットのそれぞれの中央側端部、並びに、アンダープレートに係合する係合部を有する。
【0009】
好ましくは、本発明のスピーカー用磁気回路は、マグネット固定位置決定部材が、通気性を有するシート状の織布もしくは不織布を型抜きして係合部を形成した部材である。
【0010】
また、好ましくは、本発明のスピーカー用磁気回路は、短径方向に磁気空隙に連通する開放窓部を有し、マグネット固定位置決定部材が、係合部から一体に延設して形成されて、開放窓部を覆って固着される防塵覆部をさらに有する。
【0011】
好ましくは、本発明のスピーカー用磁気回路は、アンダープレートに固着されるキャンセルマグネットと、凹部の底面がキャンセルマグネットに固着され、かつ、凹部の開口を規定する縁部がトッププレートの外周縁部に近接して配置される防磁カバーと、をさらに備え、マグネット固定位置決定部材の前防塵覆部が、トッププレートの外周縁部と防磁カバーの縁部との間に狭持されて、防磁カバー離間空隙を形成する。
【0012】
さらに好ましくは、本発明の動電型スピーカーは、上記のスピーカー用磁気回路と、長径方向と短径方向とに対応した細長形のスピーカー振動板と、スピーカー振動板の中央に連結する円筒形状のボイスコイルボビンと、ボイスコイルボビンに巻回されて磁気空隙に配置されるボイスコイルと、を備える。
【0013】
また、本発明のスピーカー用磁気回路の製造方法は、センターポール、並びに、アンダープレートに係合するマグネット固定位置決定部材を、アンダープレートに固着する工程と、2つの主マグネットを、それぞれの中央側端部をマグネット固定位置決定部材の係合部に係合させて、長径方向にセンターポールを中間にして対称配置してアンダープレートに固着する工程と、長径方向と短径方向とに対応した細長形のトッププレートを、2つの主マグネットに固着し、中央に形成された円形孔にセンターポールを挿入して磁気空隙を形成する工程と、2つの主マグネットを同一方向に着磁する工程と、を含む。
【0014】
好ましくは、本発明のスピーカー用磁気回路の製造方法は、通気性を有するシート状の織布もしくは不織布を型抜きして、マグネット固定位置決定部材の係合部と、係合部から一体に延設される防塵覆部と、を形成する工程と、スピーカー用磁気回路の短径方向に磁気空隙に連通する開放窓部を、マグネット固定位置決定部材の防塵覆部で覆う工程と、をさらに含む。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明のスピーカー用磁気回路は、長径方向と短径方向とを有する細長形(矩形、長円形(楕円形、トラック形を含む))のトッププレートと、センターポールを中央に配置し長径方向と短径方向とに対応した細長形を有するアンダープレートと、長径方向にセンターポールを中間に対称配置される同一方向に着磁された2つの主マグネットと、を備えるスピーカー用磁気回路である。センターポールは、円筒形状であってトッププレートの中央に形成された円形孔に挿入されて、トッププレートとともに磁気空隙を形成する。したがって、本発明の動電型スピーカーは、このスピーカー用磁気回路と、長径方向と短径方向とに対応した細長形のスピーカー振動板と、スピーカー振動板に連結する円筒形状のボイスコイルボビンと、ボイスコイルボビンに巻回されて磁気空隙に配置されるボイスコイルと、を備える。なお、長径方向とは、矩形、長円形、楕円形、あるいは、トラック形を含む細長形を規定する長軸が延びる方向であり、短径方向とは、長軸と直交する短軸が延びる方向である。
【0017】
本発明のスピーカー用磁気回路を構成する2つの主マグネットは、それぞれトッププレートならびにアンダープレートの平面形状に対応した細長形状を有する磁石であり、長径方向にセンターポールを中間にして対称配置されており、同一方向に着磁される。長径方向にセンターポールを中間にして対称配置されているとは、センターポールを点対称の中点にして、長径方向に2つの主マグネットが並ぶ様子を表している。また、同一方向に着磁されるとは、2つの主マグネットがそれぞれ、トッププレート側(ないしアンダープレート側)に同一の磁極性を有するように着磁される様子を表している。スピーカー用磁気回路の長径方向には2つの主マグネットが配置されている一方で、短径方向には磁力を発生するマグネットが配置されない。したがって、本発明のスピーカー用磁気回路は、その短径方向に磁気空隙に連通する開放窓部を有する。具体的には、短径方向に形成される開放窓部は、トッププレート、2つ主マグネット、および、アンダープレートにより規定される。なお、略円筒形状のセンターポールは、長径方向と短径方向とを有する細長形のアンダープレートと一体に形成されていても良く、また、アンダープレートの中央にセンターポールを固着する工程において、接着剤で固着されていても良い。
【0018】
加えて、本発明のスピーカー用磁気回路は、2つの主マグネットの固定位置を安定して規定するマグネット固定位置決定部材を備える。マグネット固定位置決定部材は、センターポールの円筒曲面、2つの主マグネットのそれぞれの中央側端部、並びに、アンダープレートに係合する係合部を有し、この係合部が接着剤等によりアンダープレートに固着される。つまり、マグネット固定位置決定部材は、アンダープレートに接着剤で2つの主マグネットを固着する工程において、その係合部が2つの主マグネットの回転方向のズレを抑制するので、結果的に品質の安定したスピーカー用磁気回路が形成される。
【0019】
また、マグネット固定位置決定部材は、好ましくは、通気性を有するシート状の織布もしくは不織布を型抜きして形成される。また、さらに好ましくは、係合部から一体に延設して形成されて、磁気回路の開放窓部を覆って固着される防塵覆部を更に備えている。本発明のスピーカー用磁気回路は、その短径方向に磁気空隙に連通する開放窓部を有するので、織布もしくは不織布で形成したマグネット固定位置決定部材の防塵覆部を折り曲げるようにして開放窓部の周囲に接着すれば、開放窓部から磁気空隙に異物が侵入することを防止できる。マグネット固定位置決定部材を、柔軟なシート状の織布もしくは不織布で形成する場合には、容易に折り曲げるミシン目を設ける等の加工を施せば、スピーカー用磁気回路の製造工程において、係合部で2つの主マグネットの固着位置を安定させるとともに、防塵覆部で開放窓部を覆って異物の侵入を防止できる。
【0020】
また、スピーカー用磁気回路が、キャンセルマグネットおよび防磁カバーをさらに備える防磁型の磁気回路である場合には、マグネット固定位置決定部材の防塵覆部が、トッププレートの外周縁部と防磁カバーの縁部との間に狭持されて、防磁カバー離間空隙を形成するように延設されていてもよい。すなわち、織布もしくは不織布で形成したマグネット固定位置決定部材の防塵覆部を利用して、トッププレートの外周縁部と防磁カバーの縁部との間に必要な防磁カバー離間空隙を設け、強い直流磁界が要求される磁気空隙で磁束密度が低下するのを防止することができ、動電型スピーカーの能率を更に向上させることができる。
【0021】
なお、本発明のスピーカー用磁気回路の製造方法においては、マグネット固定位置決定部材を、通気性を有するシート状の織布もしくは不織布を型抜きして形成しているので、開放窓部を防塵のために覆っていても空気が通過する。したがって、磁気空隙の内部に形成される空気のスティフネスが上昇しないので、磁気空隙の防塵を優先したとしても、動電型スピーカーの再生低域限界を規定する最低共振周波数f0を低く保つことができ、再生音質に優れる動電型スピーカーを実現できる。
【発明の効果】
【0022】
長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであって、細長形状で二分割されたマグネットを含み、短径方向にマグネットが配置されていない開放孔が形成される磁気回路であっても、製造が容易で品質が安定し、かつ、磁気空隙に鉄粉等の異物が侵入しにくいスピーカー用磁気回路、および、動電型スピーカーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであって、細長形状で二分割されたマグネットを含み、短径方向にマグネットが配置されていない開放孔が形成される磁気回路であっても、製造が容易で品質が安定し、かつ、磁気空隙に鉄粉等の異物が侵入しにくいスピーカー用磁気回路、および、動電型スピーカーを提供するという目的を、アンダープレートに固着されるマグネット固定位置決定部材を備え、マグネット固定位置決定部材が、センターポールの円筒曲面、2つの主マグネットのそれぞれの中央側端部、並びに、アンダープレートに係合する係合部を有するようにすることにより、実現した。
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用磁気回路および動電型スピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。図1(a)は、動電型スピーカー1を前面側から見た斜視図であり、図1(b)は、動電型スピーカー1を背面側から見た斜視図である。なお、後述するように、動電型スピーカー1の一部の構造や、内部構造等は、省略している。また、点O−Aを結ぶ直線(長軸)が延びる方向が長径方向であり、また、点O−B
を結ぶ直線(短軸)が延びる方向が短径方向である。
【0026】
本実施例の動電型スピーカー1は、長径方向長L1が約262.5mm、短径方向長L2が約25.5mmのトラック形のスピーカー振動板2を有する細長形の動電型スピーカーであり、細長形であっても口径が約130mmの円形振動板と同等の振動板面積を有するスピーカーである。スピーカー振動板2は、エッジ3によってその外周端を支持されており、エッジ3の外周端は、フレーム6に固定されている。また、スピーカー振動板2の背面側には、ボイスコイル4が連結しており、ダンパー5(前側ダンパー5aおよび後側ダンパー5b)により振動可能に支持されている。本実施例の場合には、ボイスコイル4のボイスコイル径は、約20mmである。また、フレーム6は、トラック形のスピーカー振動板2に対応した細長形状であり、フレーム6に固定される磁気回路10も、短径方向長L2以下の幅が狭い細長形状を有している。したがって、動電型スピーカー1は、ディスプレイ等の機器が有する表示部の側面など、スピーカーを取り付ける幅が少ない機器に適するスピーカーである。また、磁気回路10は、後述するマグネット固定位置決定部材9を備えており、図1では、マグネット固定位置決定部材9の一部が、その短径方向側に露出している。
【0027】
動電型スピーカー1のスピーカー振動板2は、その外周端にエッジ3の内周側が接着されており、また、中央背面にはボイスコイル4を構成する(図示しない)ボビン4aが接着される。スピーカー振動板2は、スピーカー振動板の軽量化を図るために発泡させた熱可塑性樹脂を形成して構成されている。本実施例の場合には、押出成形された熱可塑性樹脂発泡シート(具体的には、ポリスチレンペーパー)を、プラグアシスト成形を併用した真空成形法を用いることで、リブを有するスピーカー振動板2を得ている。すなわち、長径方向長L1と短径方向長L2が著しく異なる細長形のスピーカー振動板2は、長径方向の分割振動の影響が顕著になりやすいので、長径方向に延びるリブを有し、かつ、短径方向断面形状が略W字形になるようにして、長径方向に剛性を有する形状とされている。
【0028】
エッジ3は、本実施例では、柔軟性を有する発泡ゴムを金型内に注入して加熱発泡して形成したものである。スピーカー振動板2の長径方向に直線状に延びるトラック形の長辺では、スピーカー振動板2を自由支持するように薄肉のコルゲーション(またはロール)によるフリーエッジが形成され、短径方向に円弧状になるトラック形の短辺では、スピーカー振動板2を固定支持するように厚肉で自由に振動しないフィックスドエッジが形成される。その結果、細長形のスピーカー振動板2は、短径方向ではエッジ3のフリーエッジ部のコンプライアンスで柔軟に支持される一方で、長径方向ではスピーカー振動板2を形成する熱可塑性樹脂の発泡シートの柔軟性によって、曲げ振動可能にされている。
【0029】
ボイスコイル4は、円筒形に形成したボビン4aと、その一端側に巻回されて音声電流が供給される(図示しない)コイル4bと、から形成される。ボビン4aは、コイル4bが巻回されない他端側がスピーカー振動板2の背面中央に接着剤により連結される。コイル4bは、後述する磁気回路10の円形の磁気空隙13に配置される。なお、錦糸線8は、フレーム6に固定されるターミナル7と、ターミナル7からコイル4bの引出線とを、ハンダづけして導通させて、コイル4bに音声電流を供給する。ただし、錦糸線8は、スピーカー振動板2に金属ハトメを設けてターミナル7まで導通させるようにしてもよい。
【0030】
ダンパー5は、前側ダンパー5aおよび後側ダンパー5bからなる二段ダンパーであり、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形する円形のコルゲーションダンパーを切断して細長形状(トラック形)にしたものである。前側ダンパー5aおよび後側ダンパー5bの内周端は、ボビン4aの円筒外面側と連結してスピーカー振動板2の背面中央側を支持する。前側ダンパー5aおよび後側ダンパー5bの外周端側は、フレーム6の固定部に固定される。なお、ダンパー5は、他の形状のコルゲーションダンパーであって、二段でなくても良く、また、他の材料で形成するものであってもよく、内周側リングと外周側リングを連結するアームを有し、金属または樹脂で形成する蝶ダンパーであってもよい。
【0031】
フレーム6は、スピーカー振動板2の形状に対応して細長形のバスケット状にプレス成型された鉄板フレームであり、エッジ3を固定する略矩形の固定部と、ダンパー5aおよび5b、そして、磁気回路10を固定する固定部と、これらの固定部を連結する連結部と、複数の連結部の間に規定される窓と、ターミナル7を取り付ける取付孔と、を備える。したがって、スピーカー振動板2、エッジ3、ボイスコイル4、および、ダンパー5からなるスピーカー振動系は、フレーム6に対して振動可能に支持される。
【0032】
図2は、動電型スピーカー1を構成する磁気回路10を説明する斜視図であり、後述するマグネット固定位置決定部材9を省略した図である。磁気回路10は、フレーム6に固定される細長形のトッププレート11と、円筒形状であってトッププレート11の中央に形成された円形孔に挿入されるセンターポール12と、細長形のアンダープレート14と、同一方向に着磁された2つの主マグネット15aおよび15bと、から構成される。トッププレート11およびセンターポール12は、均等な幅を有する円形の磁気空隙13を形成する。主マグネット15aおよび15bは、トッププレート11およびアンダープレート14の間に狭持され、長径方向にセンターポール12を中間にして対称配置される。2つの主マグネット15aおよび15bは、外形が、細長形のトッププレート11およびアンダープレート14の形状に対応した略細長形状であり、センターポール12に近接する中央側は、センターポール12の円形形状に対応した円筒曲面を含む凹部が形成されている。なお、センターポール12は、アンダープレート14と一体に形成されていても良く、また、別ピースを接着剤で固着されていても良い。
【0033】
本実施例の2つの主マグネット15aおよび15bは、フェライト系磁石であり、残留磁化および保磁力がさらに大きく、小さい体積でも保磁力の強いNd−Fe−B系の希土類磁石であってもよい。なお、希土類磁石とは、Nd−Fe−B系のネオジウム磁石、もしくは、Sm−Co系のサマリウムコバルト磁石であって、磁石の最大エネルギー積(BH)maxが大きな値をとる磁石である。磁気回路10は、ボイスコイル4のコイル4bを平面視した場合に投影する領域の外部に磁石が配置される外磁型磁気回路であり、かつ、保磁力の強い主マグネット15aおよび15bが長径方向に配置されるので、本発明の動電型スピーカー1のような細長形のスピーカーに適する。磁気回路10の最大幅を小さくすることができれば、細長形のスピーカー振動板2を前面視した場合に形成される領域内に磁気回路10が収まるからである。したがって、軽量なスピーカー振動板2を採用することを含めて、能率の高い動電型スピーカー1が実現される。
【0034】
ボイスコイル4のコイル4bに音声電流が供給されると、磁気空隙13に配置されたボイスコイル4には駆動力が作用し、ボイスコイル4は図2における上下方向に振動し、連結されたスピーカー振動板2も上下方向に振動する。スピーカー振動板2は、短径方向ではその外周端を支持するエッジ3のフリーエッジ部が柔軟に支持する。その一方で、長径方向ではスピーカー振動板2を形成する熱可塑性樹脂発泡シートの柔軟性によって曲げ振動可能になり、最低共振周波数f0付近若しくはそれ以下の周波数でボイスコイル4が大きく変位する場合には、長径方向の両端を固定されたスピーカー振動板2は、長径方向に弓状に曲がって変形する。
【0035】
本実施例の磁気回路10の長径方向には2つの主マグネット15aおよび15bが配置されている一方で、短径方向には磁力を発生するマグネット(磁石)が配置されないので、その結果、磁気回路10は、全体形状が細長形になり、その短径方向に磁気空隙に連通する開放窓部16を有する。2つの主マグネット15aおよび15bは、長径方向にセンターポール12を点対称の中点にして、つまり、センターポール12を中間にして対称配置されており、主マグネット15aと、センターポール12と、もう一方の主マグネット15bが長径方向に並ぶ様になる。そして、短径方向から磁気回路10を側面視すると、マグネット15aおよび15bが配置されない開放窓部16が形成されており、センターポール12の円筒側面を直接視できる程度の孔が形成されている。具体的には、開放窓部16は、トッププレート11、2つ主マグネット15aおよび15b、および、アンダープレート14により規定される。また、後述するように、本実施例の磁気回路10では、開放窓部16がマグネット固定位置決定部材9により覆われて、磁気空隙13に鉄粉等の異物が侵入するのを防止する。
【0036】
また、磁気回路10は、円形の磁気空隙13が半径方向に均等な幅を有するものであっても、磁束密度分布が長径方向と短径方向において異なり、略円筒形状主マグネット15aおよび15bと、円形の磁気空隙13が最も接近する長径方向では極めて強い磁束密度を生じ、長径方向での磁束密度が短径方向での磁束密度よりも高くなる。円形の磁気空隙13での円周方向の磁束密度分布が、長径方向と短径方向とで異なるので、スピーカー振動板2を駆動する駆動力も長径方向と短径方向とで異なるようにでき、再生周波数特性のピーク・ディップを低減することができる。
【0037】
図3は、本実施例の磁気回路10が備えるマグネット固定位置決定部材9を説明する図であり、マグネット固定位置決定部材9の形状寸法に合わせて、磁気回路10を構成するセンターポール12並びに2つ主マグネット15aおよび15bを点線で記載した平面図である。マグネット固定位置決定部材9は、細長形状のアンダープレート14に接着剤で固着される部材であって、2つの主マグネット15aおよび15bを固着する工程において、アンダープレート14に対して2つの主マグネット15aおよび15bの回転方向のズレを規制して、それぞれの中央側端部をその係合部に係合させて、長径方向にセンターポール12を中間にして対称配置し、品質の安定したスピーカー用磁気回路10を形成する部材である。本実施例のマグネット固定位置決定部材9は、通気性を有する厚さt=約0.8mmのポリエステル、ナイロン、羊毛等の繊維を含む不織布のシートを型抜きして形成した部材であって、アンダープレート14に接着剤で固着される。もちろん、マグネット固定位置決定部材9を構成する材料は、上記実施例のようなものに限られず、樹脂等の非磁性体であればよい。また、マグネット固定位置決定部材9は、他の通気性を有するフェルト等のシート部材から形成しても良く、また、接着剤に代えて両面テープ等の粘着剤を含むもので固定しても良い。
【0038】
マグネット固定位置決定部材9は、円環形状部分の短径方向の両端部から略矩形状の平面部分を延設し、かつ、中心部に円孔を有する外形形状を有している。すなわち、マグネット固定位置決定部材9は、2つの主マグネット15aおよび15bのそれぞれの中央側端部に係合する円環形状部分9aと、円環形状部分9aの中心に規定されてセンターポール12の円筒曲面に係合する係合円孔9bと、円環形状部分9aから延設された矩形状の平面部分9cと、円環形状部分9aならびに平面部分9cから規定されて、2つの主マグネット15aおよび15bと、アンダープレート14とに係合する係合辺部9dを有している。矩形状の平面部分9cは、円環形状部分9aの短径方向の両端部から2箇所に設けられる。また、円環形状部分9aと平面部分9cとの間には、複数のスリットが連続したミシン目9eが形成されている。後述するように、2つの平面部分9cはそれぞれ、ミシン目9eで折り曲げられて、磁気回路10の磁気空隙13に連通する開放窓部16を覆って固着される防塵覆部を形成する。
【0039】
図4は、マグネット固定位置決定部材9を含む磁気回路10の製造工程を説明する斜視図である。まず、略円筒形状のセンターポール12と、細長形を有するアンダープレート14とが別に形成されている場合には、センターポール12をアンダープレート14の中央に接着剤またはカシメ加工等により固着する。そして、図4(a)に示すように、上記のマグネット固定位置決定部材9を、センターポール12、並びに、アンダープレート14に係合させて、アンダープレート14のセンターポール12の根本部分に固着する。すなわち、マグネット固定位置決定部材9は、円環形状部分9aがアンダープレート14に接着剤で固着されても、円環形状部分9aとともに係合辺部9dを規定する平面部分9cが、アンダープレート14の短径方向の直線部から突出するように形成されており、さらに柔軟な材料で形成されているので、係合辺部9dがアンダープレート14の短径方向の直線部に係合する。したがって、マグネット固定位置決定部材9は、細長形を有するアンダープレート14に対して適切な向き、つまり、長径方向並びに短径方向の角度が、大きくずれることなく取り付けられる。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、2つの主マグネット15aおよび15bを、それぞれの中央側端部をマグネット固定位置決定部材9の係合辺部9dに係合させて、アンダープレート14に接着剤で固着する。つまり、既に固着されているマグネット固定位置決定部材9の2つの平面部分9cと円環形状部分9aとで規定される係合辺部9dに、2つの主マグネット15aおよび15bを係合させて接着すれば、アンダープレート14に対する回転方向のズレを抑制して、長径方向にセンターポール12を中間にして精度良く対称配置することができる。係合辺部9dを規定する平面部分9cが矩形の形状であるので、不織布という軟らかい材料であっても、係合辺部9dの直線部分が主マグネット15aおよび15bに沿うからである。本実施例の磁気回路10は、マグネット固定位置決定部材9を備えることにより、製造工程においてずれやすい2つの主マグネット15aおよび15bを安定して固着することができ、品質の安定した動電型スピーカーを実現することができる。
【0041】
次に、長径方向と短径方向とに対応した細長形のトッププレート11を、2つの主マグネット15aおよび15bに固着する。トッププレート11の中央に形成された円形孔にセンターポール12を挿入して磁気空隙13を形成する際には、(図示しない)ギャップゲージ等の治具を使用しても良い。磁気回路10は、2つの主マグネット15aおよび15bを同一方向に着磁する工程を経て、磁気空隙13に直流磁界を発生させる。また、上記の通り、短径方向から磁気回路10を側面視すると、マグネット15aおよび15bが配置されない開放窓部16が、トッププレート11、2つの主マグネット15aおよび15b、および、アンダープレート14により形成される。なお、図4(b)では、トッププレート11は図示を省略している。
【0042】
ここで、図4(b)の矢印に示すように、マグネット固定位置決定部材9の2つの平面部分9cを、円環形状部分9aとの境目に形成されたミシン目9eを折るようにして約90°折り曲げることで、磁気回路10の開放窓部16を覆うことができる。すなわち、通気性を有するシート状の不織布を型抜きして形成されたマグネット固定位置決定部材9は、係合部から一体に延設される平面部分9cを有しているので、磁気回路10の開放窓部16の周囲に、または、平面部分9cの周縁部に接着剤を塗布して固着すれば、図1に示すように、磁気空隙13に鉄粉等の異物が侵入するのを防止する防塵覆部を形成する。つまり、平面部分9cは、開放窓部16を覆うのに十分な大きさを有していればよく、また、ミシン目9eは、折り曲げに適する凹を形成する直線を、型抜き加工の際に設けることで代用しても良い。
【0043】
本実施例のスピーカー用磁気回路10を含む動電型スピーカー1は、マグネット固定位置決定部材9を、通気性を有するシート状の不織布を型抜きして形成しているので、開放窓部16を防塵のために平面部分9cが覆っていても、平面部分9cを空気が通過する。したがって、防塵のために単に開放窓部16を覆って閉塞する部材を使うよりも、磁気空隙13の内部に形成される空気室の空気がマグネット固定位置決定部材9の平面部分9cを通過するので、略円筒形状のセンターポール12に空気が流通し得る貫通孔が形成されていなくてもスティフネスが上昇せずに、動電型スピーカー1の再生低域限界を規定する最低共振周波数f0を低く保つことができる。磁気空隙13の防塵により、異音の発生が少なく、再生音質に優れる動電型スピーカー1を実現できる。なお、スピーカー用磁気回路10のセンターポール12には、その中央に貫通孔が形成されていてもよい。
【実施例2】
【0044】
図5は、本発明の他の実施例の磁気回路20を説明する図であり、実施例1の動電型スピーカー1のような細長形の動電型スピーカーを構成する他の磁気回路を説明する図である。図5(a)は、磁気回路20の展開斜視図であり、図5(b)は磁気回路20を説明する平面図である。なお、後述するものを除いて、実施例1で説明した磁気回路20ならびに動電型スピーカー1を構成するものと共通する部分は、共通の番号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施例の磁気回路20は、先の実施例1の磁気回路10に対して、マグネット固定位置決定部材19の構成が異なるスピーカー用磁気回路であり、また、防磁カバー21と、キャンセルマグネット22aおよび22bとをさらに備えるスピーカー用磁気回路である。つまり、磁気回路20は、(図示しない)動電型スピーカーを防磁型スピーカーとして使用可能にするのに適した磁気回路であり、防磁カバーとキャンセルマグネットによって漏洩磁束を低減させ、かつ、磁気空隙13での磁束密度を高めて能率を向上する動電型スピーカーを提供することができる。
【0046】
防磁カバー21は、磁気回路の細長形状に対応して細長形のバスケット状にプレス成型された鉄板部材であり、その内部には、トッププレート11と、アンダープレート14と、主マグネット15aおよび15bと、キャンセルマグネット22aおよび22bと、が収容される。防磁カバー21の矩形状開口部の形状ならびに大きさは、図5(b)の平面図に示すように、トッププレート11の周縁との間に幅約1mm程度の防磁カバー離間空隙23を形成する寸法にされている。つまり、防磁型の磁気回路20では、トッププレート11の周縁端面からの漏洩磁束を低減するために、トッププレート11の周縁と防磁カバー21の矩形状開口部が、防磁カバー離間空隙23を形成しながら近接するように配置される。
【0047】
本実施例のキャンセルマグネット22aおよび22bは、主マグネットと同様なフェライト系磁石であり、アンダープレート14を挟んで主マグネット15aおよび15bの磁極性と同一の磁極性が近接するように着磁されて、細長形状の凹部を有する防磁カバー21の底面に接着剤で固定される。もちろん、キャンセルマグネット22aおよび22bは、Nd−Fe−B系の希土類磁石であってもよい。また、本実施例のキャンセルマグネット22aおよび22bは、2つに分離しているが、アンダープレート14ならびに防磁カバー21の細長形状に対応する1つのキャンセルマグネットであってもよい。
【0048】
図6は、本実施例の磁気回路20が備えるマグネット固定位置決定部材19を説明する図であり、先の実施例を説明する図3と同様に、磁気回路20を構成するセンターポール12並びに2つ主マグネット15aおよび15bを点線で記載した平面図である。マグネット固定位置決定部材19は、先の実施例のマグネット固定位置決定部材9と同様に、通気性を有する厚さt=約0.8mmのポリエステル、ナイロン、羊毛等の繊維を含む不織布のシートを型抜きして形成した部材であって、2つの主マグネット15aおよび15bを固着する工程においてアンダープレート14に接着剤で固着されて、アンダープレート14に対する2つの主マグネット15aおよび15bの回転方向のズレを規制する。
【0049】
すなわち、マグネット固定位置決定部材19は、2つの主マグネット15aおよび15bのそれぞれの中央側端部に係合する円環形状部分19aと、円環形状部分19aの中心に規定されてセンターポール12の円筒曲面に係合する係合円孔19bと、円環形状部分19aから延設された平面部分19cと、円環形状部分19aならびに平面部分19cから規定されて、2つの主マグネット15aおよび15bと、アンダープレート14とに係合する係合辺部19dを有しており、さらに本実施例では、平面部分19cから短軸方向に突出するように延設された突出平面部19fを有している。平面部分19cならびに突出平面部19fは、円環形状部分19aの短径方向の両端部から2箇所に設けられる。そして、円環形状部分19aと平面部分19cとの間には、複数のスリットが連続したミシン目19eが形成されている。
【0050】
したがって、2つの平面部分19cならびに突出平面部19fはそれぞれ、図5(a)に示すように、ミシン目19eで折り曲げられて、磁気回路20の磁気空隙13に連通する開放窓部16を覆って固着される防塵覆部を形成する。マグネット固定位置決定部材19の2つの平面部分19cを、円環形状部分19aとの境目に形成されたミシン目19eを折るようにして約90°折り曲げることで、磁気回路20の開放窓部16を覆うことができる。通気性を有するシート状の不織布を型抜きして形成されたマグネット固定位置決定部材19は、係合部から一体に延設される平面部分19cならびに突出平面部19fを有しているので、磁気回路20の開放窓部16の周囲に、または、平面部分19cならびに突出平面部19fの周縁部に接着剤を塗布して固着すれば、図5(a)に示すように、磁気回路20を組み立てる工程において、例え防磁カバー21の内部空間に鉄粉等の異物が混入することがあっても、磁気空隙13に鉄粉等の異物が侵入するのを防止する防塵覆部を形成することができる。
【0051】
マグネット固定位置決定部材19の防塵覆部を形成する突出平面部19fは、平面部分19cからさらに短径方向に突出するように形成されているので、図5(a)に示すように、トッププレート11の短径方向の周縁端面に係るように固着される。したがって、マグネット固定位置決定部材19は、通気性を有する厚さt=約0.8mmの不織布を型抜きして形成した部材であり、トッププレート11の周縁と防磁カバー21の矩形状開口部との間に狭持され、約1mmの防磁カバー離間空隙23を規定することができる。
【0052】
すなわち、不織布で形成したマグネット固定位置決定部材19の防塵覆部を利用して防磁カバー離間空隙23を設けると、磁気回路20の磁束がトッププレート11の周縁と防磁カバー21の矩形状開口部との間で短絡しなくなり、強い直流磁界が要求されるボイスコイル4が配置される磁気空隙13で磁束密度が低下しなくなる。最も磁束が集中する磁気空隙13から見て短径方向に位置するマグネット固定位置決定部材19が防磁カバー離間空隙23に狭持されると、トッププレート11の周縁と防磁カバー21の矩形状開口部とが確実に接触しなくなるので、磁気空隙13での磁束の低下を防止できるからである。したがって、磁気回路20の磁気効率を向上させ、また、磁気回路20を用いる防磁型の動電型スピーカーの能率を更に向上させることができる。
【0053】
なお、マグネット固定位置決定部材19の防塵覆部の形状は、本実施例の平面部分19cからさらに短径方向に突出する突出平面部19fに限られるものではない。磁気回路20の開放窓部16を覆い、かつ、トッププレート11の周縁と防磁カバー21の矩形状開口部との間に狭持されて、防磁カバー離間空隙23を規定するものであれば、形状を問わない。また、マグネット固定位置決定部材19は、他のフェルト等の軟らかい通気性を有する織布もしくは不織布であれば、さらに厚さを有していても、押しつぶされつつ狭持されて約1.0mmの防磁カバー離間空隙23を規定することができる。
【0054】
また、本実施例のスピーカー用磁気回路は、他のボイスコイル径に対応した異なる寸法の磁気回路であっても良い。また、および、これを用いた動電型スピーカーは、トラック形のスピーカー振動板に限らず、楕円形、長円形、長方形、矩形といった長径寸法と短径寸法との比が大きい細長形の動電型スピーカーであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の動電型スピーカーは、ディスプレイ等の映像・音響機器に内蔵するスピーカーとしてのみならず、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有するゲーム機、スロットマシン等の遊戯機にも適用が可能である。また、本発明のスピーカー用磁気回路を備える動電型スピーカーは、全幅が狭く、小型・薄型のキャビネットで音声を再生するスピーカーシステムが実現できるので、設置空間が限定される車両用のスピーカーに特に適する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を構成する磁気回路10を説明する斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による磁気回路10が備えるマグネット固定位置決定部材9を説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明の好ましい実施形態によるマグネット固定位置決定部材9を含む磁気回路10の製造工程を説明する斜視図である。(実施例1)
【図5】本発明の他の実施例の磁気回路20を説明する図である。(実施例2)
【図6】本発明の他の好ましい実施形態による磁気回路20が備えるマグネット固定位置決定部材19を説明する図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0057】
1 動電型スピーカー
2 スピーカー振動板
3 エッジ
4 ボイスコイル
5 ダンパー
6 フレーム
7 ターミナル
8 錦糸線
9、19 マグネット固定位置決定部材
10、20 磁気回路
11 トッププレート
12 センターポール
13 磁気空隙
14 アンダープレート
15a、15b 主マグネット
21 防磁カバー
22a、22b キャンセルマグネット
23 防磁カバー離間空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長径方向と短径方向とを有する細長形のトッププレートと、
略円筒形状であって該トッププレートの中央に形成された円形孔に挿入されて、該トッププレートとともに磁気空隙を形成するセンターポールと、
該センターポールを中央に配置して、該長径方向と該短径方向とに対応した細長形を有するアンダープレートと、
該トッププレートおよび該アンダープレートの間に狭持され、該長径方向に該センターポールを中間にして対称配置されて、同一方向に着磁された2つの主マグネットと、
該アンダープレートに固着されるマグネット固定位置決定部材と、を備え、
該マグネット固定位置決定部材が、該センターポールの円筒曲面、該2つの主マグネットのそれぞれの中央側端部、並びに、該アンダープレートに係合する係合部を有する、
スピーカー用磁気回路。
【請求項2】
前記マグネット固定位置決定部材が、通気性を有するシート状の織布もしくは不織布を型抜きして前記係合部を形成した部材である、
請求項1に記載のスピーカー用磁気回路。
【請求項3】
前記スピーカー用磁気回路が、前記短径方向に前記磁気空隙に連通する開放窓部を有し、
前記マグネット固定位置決定部材が、前記係合部から一体に延設して形成されて、該開放窓部を覆って固着される防塵覆部をさらに有する、
請求項1または2に記載のスピーカー用磁気回路。
【請求項4】
前記アンダープレートに固着されるキャンセルマグネットと、
凹部の底面が該キャンセルマグネットに固着され、かつ、該凹部の開口を規定する縁部が前記トッププレートの外周縁部に近接して配置される防磁カバーと、をさらに備え、
前記マグネット固定位置決定部材の前記防塵覆部が、該トッププレートの外周縁部と該防磁カバーの該縁部との間に狭持されて、防磁カバー離間空隙を形成する、
請求項3に記載のスピーカー用磁気回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の前記スピーカー用磁気回路と、
前記長径方向と前記短径方向とに対応した細長形のスピーカー振動板と、
該スピーカー振動板の中央に連結する円筒形状のボイスコイルボビンと、
該ボイスコイルボビンに巻回されて該磁気空隙に配置されるボイスコイルと、
を備える、動電型スピーカー。
【請求項6】
センターポール、並びに、アンダープレートに係合するマグネット固定位置決定部材を、該アンダープレートに固着する工程と、
2つの主マグネットを、それぞれの中央側端部を該マグネット固定位置決定部材の該係合部に係合させて、該長径方向に該センターポールを中間にして対称配置して該アンダープレートに固着する工程と、
該長径方向と該短径方向とに対応した細長形のトッププレートを、該2つの主マグネットに固着し、中央に形成された円形孔に該センターポールを挿入して磁気空隙を形成する工程と、
該2つの主マグネットを同一方向に着磁する工程と、
を含む、スピーカー用磁気回路の製造方法。
【請求項7】
通気性を有するシート状の織布もしくは不織布を型抜きして、前記マグネット固定位置決定部材の前記係合部と、該係合部から一体に延設される防塵覆部と、を形成する工程と、
前記スピーカー用磁気回路の前記短径方向に前記磁気空隙に連通する開放窓部を、該マグネット固定位置決定部材の該防塵覆部で覆う工程と、
をさらに含む、請求項6に記載のスピーカー用磁気回路の製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−188637(P2009−188637A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25377(P2008−25377)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】