スライドアジャスタ
【課題】目視しないでも簡単かつ確実な操作が行えるとともに、小型化および薄型化が必要な部位にも適用できるスライドアジャスタを提供すること。
【解決手段】 ベルト10は、表面に多数の係合溝12を有するラック11を有し、バックル20は、基部21と、一対の側壁22と、操作部材23とを有する。操作部材23は両端に係合爪24および押圧部25を有し、連結軸26で側壁22に支持されている。バックル20は、基部21に固定されて押圧部25側の周縁に沿って配置されたフレーム27を有する。
【解決手段】 ベルト10は、表面に多数の係合溝12を有するラック11を有し、バックル20は、基部21と、一対の側壁22と、操作部材23とを有する。操作部材23は両端に係合爪24および押圧部25を有し、連結軸26で側壁22に支持されている。バックル20は、基部21に固定されて押圧部25側の周縁に沿って配置されたフレーム27を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトをバックルに対してスライドさせて長さ寸法を調節するためのスライドアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長さ寸法を調節するためのスライドアジャスタとして、合成樹脂製のベルトとバックルとを有し、ベルトをバックルに挿通させてこのバックルをベルトの任意位置で係合させることで固定するものが知られている(特許文献1など参照)。
このようなスライドアジャスタにおいては、ベルトに多数の係合溝を有するラックを形成し、バックルに可動式の係合爪を形成し、この係合爪をラック上の任意の係合溝に係合させることで任意位置での係合を可能としている。
【0003】
バックルにおいては、シーソー式の操作板を形成し、一端側の押圧部を指で押す操作により他端側の係合爪を係合溝に対して近接または離隔させ、これにより係合爪を係合溝に係合させまたは解除させるようにしている。
係合溝と係合爪は、各々の凹凸形状により、係合爪がラックの一方向へ移動しようとした際には係合爪が係合溝に係止されるが、他方向へ移動しようとした際には係合爪が係合溝を乗り越えて自由に移動可能とされ、例えばサイズを絞る操作、つまりバックルがベルトの基端側に近接する方向への操作にあたっては押圧部の操作を必要としないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−86639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようなスライドアジャスタは、ヘルメットのヘッドバンド用のサイズ調整等の機能的要素としての利用に加え、帽子あるいはズボンやスカート等、外観デザインが重要視される服飾品のスライドアジャスタとしても利用されている。
このような服飾品用のスライドアジャスタは、外観性に優れていることに加え、サイズ調整という実用的な機能から操作が簡単かつ確実に行えることが求められる。
例えば、帽子のサイズ調整用として帽子の後側に装着されるアジャスタでは、目視しながらの操作が必要であると、一旦帽子を脱いで調節を行い、再び帽子を被って状態を確認する、という動作を繰り返す必要がある。このような煩雑さを解消するべく、被ったまま指で操作することで最適な状態に調整できるように、目視しないでも調整が行えるアジャスタが求められている。
同様な要求は、帽子のアジャスタに限らず、ズボンやスカートのウエストアジャスタ等、目視しにくい部位に装着されるものでも生じる。
【0006】
前述した特許文献1では、目視なしでも操作が行えるようにするために、ベルトおよびバックルに各々指をかけるための突起部を形成している。
特許文献1では、このような突起部により、目視できない状態でも探り当てることができるとともに、各々を片手で摘むようにしてベルトとバックルとをスライドさせ、締め込む方向の操作を容易に行うことができる。併せて、バックル側の突起は、シーソー式の可動部材に形成され、係合爪の解除による緩める方向の操作も目視なしに行えるようになっている。
しかし、特許文献1の構成では、操作用の突起がベルトおよびバックルから突き出すため、小型化あるいは薄型化が必要な部位には適用しにくいという問題があった。
【0007】
本発明の主な目的は、目視しないでも簡単かつ確実な操作が行えるとともに、小型化および薄型化が必要な部位にも適用できるスライドアジャスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベルトとバックルとを有し、
前記ベルトは、表面に多数の係合溝を有するラックを有し、
前記バックルは、前記ベルトの背面側に配置される基部と、前記基部に立設されて前記ベルトを挟んで対向する一対の側壁と、前記ベルトの表面側に前記ベルトと対向して配置される操作部材と、前記操作部材の一端側に形成されて前記ラックの係合溝の何れかに係合する係合爪と、前記操作部材の他端側に形成された押圧部と、前記操作部材を前記一対の側壁に連結する連結軸と、前記連結軸を中心として前記係合爪が前記ラックに近接する方向に前記操作部材が回動するように前記操作部材を付勢する付勢手段と、を有し、
さらに、前記バックルは、前記基部に固定されて前記操作部材の前記押圧部側の周縁に沿って配置されたフレームを有することを特徴とする。
【0009】
このような本発明では、フレームがガイドとして機能し、フレームによって押圧部を指で探ることが容易になるとともに、操作部材の操作感を良好なものにできる。すなわち、押圧部は指で押されることで沈み込むが、フレームは元の位置を維持する。このため、押圧部はフレームの内側において高さが相対的に低くなり、操作する指で押圧部を確認しつつ、更なる押圧操作を行うことができる。これにより、操作性の向上に加え、操作感の向上も図ることができる。
また、フレームはガードとしても機能し、フレームが操作部材の押圧部側の周縁に沿って配置されることで操作部材とベルトとの間に異物が侵入したり、操作部材がベルトから引き剥がされるような無理な力を受けたりすることを防止することができる。
【0010】
なお、前記フレームの上縁は、前記基部を基準とした高さが、前記押圧部が押圧されて前記操作部材が回動した際の前記押圧部よりも高く設定されていることが望ましい。
このようにすれば、指で押されることで沈み込んだ押圧部が、元の位置を維持するフレームよりも低くなり、操作する指で押圧部を確認することが確実かつ容易にでき、操作性および操作感の向上に更に好適である。
但し、フレームの上縁の基部を基準とした高さは、押圧部が押圧されて操作部材が回動した際の押圧部よりも低くてもよい。このように押圧部のほうが常に高い場合でも、押圧部の周囲のフレームにより押圧部を指で探ることができ、押圧部が指で押されればフレームに対して下降するため内側の押圧部が明瞭に判別できるようになる。
また、フレームの上縁の基部を基準とした高さは、押圧部が押圧されておらず操作部材が回動していない状態で押圧部よりも高くてもよい。このように押圧部のほうが常に低ければ、押圧部の周囲のフレームにより押圧部が確実に判別できる。
【0011】
本発明において、前記フレームは前記一対の側壁に接続され、前記側壁の上縁と前記フレームの上縁とは連続した辺縁とされていることが望ましい。
このような本発明では、操作部材の押圧部側の周縁に沿って側壁およびフレームが連続的に配置されることになり、フレームのガイド機能およびガード機能さらには本来の操作機能をより効果的なものとすることができる。
【0012】
本発明において、前記側壁は、前記操作部材の全長にわたって沿う長さに形成されていることが望ましい。
このような本発明では、操作部材が一対の側壁の間に収容され、操作部材は一対の側壁の間に形成される空間において専ら作動することができる。このため、バックルを被着物に固定する際に、縫製時の生地の巻き込み等を回避できるとともに、バックルの係合爪がある側を生地の袋部等に収容した際に、操作部材が周囲の生地と干渉してその動作を妨げられる等の不都合を未然に回避することができる。
【0013】
本発明において、前記操作部材は、前記押圧部と前記係合爪側の部分との間に、前記押圧部側が高くなった段差を有することが望ましい。
このような本発明では、指で段差を探ることで、押圧部と係合爪側の部分との境界が容易に識別でき、操作部材の操作にあたって押圧部を指で確実に探りあてることができる。
【0014】
本発明において、前記押圧部の表面には、指で判別可能な凹凸によるマーカが形成されていることが望ましい。
このような本発明では、表面のマーカにより押圧部の位置を指で判別することができ、目視しないでも操作を簡単かつ確実に行うことができる。
【0015】
本発明において、前記連結軸は捻れ方向の弾力性を有し、前記付勢手段は前記連結軸により構成されていることが望ましい。
このような本発明では、連結軸それ自体で付勢手段を兼ねることができ、構成の簡略化を図ることができる。このような捻れ方向の弾力性を有する連結軸は、例えば操作部材と連結軸と側壁とを合成樹脂材料で一体成形することで容易に実現することができる。
なお、本発明においては連結軸と付勢手段とを別体としてもよく、例えば連結軸を回転自在とし、操作部材と側壁との間または操作部材と基部との間に設置されたばね等を用いて付勢手段としてもよい。
【0016】
本発明において、前記ベルトは、前記ラックの一端側の表面に突起状のストッパを有することが望ましい。
このような本発明では、サイズを絞るためにバックルをベルトに対してスライドさせる操作の際にそのスライド限界を示すことになるとともに、バックルとベルトとの分離を防ぐことができる。また、ベルトを被着物に固定する際に、ベルトの先端側を生地の袋部等に収容する際のストッパとしても利用することもできる。
【0017】
本発明において、前記バックルおよび前記ベルトは、それぞれ被着物に固定するための薄板状の取付部を有することが望ましい。
このような本発明では、薄板状の取付部を被着物の生地とともに縫製することができ,固定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【図2】前記第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】前記第1実施形態を示す異なる向きの斜視図である。
【図4】前記第1実施形態のベルトを示す平面図である。
【図5】前記第1実施形態の係合爪および係合溝を示す拡大した断面図である。
【図6】前記第1実施形態のバックルを示す拡大した平面図である。
【図7】前記第1実施形態における締め込み操作を示す断面図である。
【図8】前記第1実施形態における解除操作を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態のバックルを示す側面図である。
【図11】本発明の第4実施形態のバックルを示す断面図である。
【図12】前記第4実施形態のバックルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1において、本実施形態のスライドアジャスタ1は、被着物である帽子9の後面の開口部分8に装着され、帽子サイズの調整に用いられるものである。
図2および図3に示すように、スライドアジャスタ1は、長尺で表面にラック11が形成されたベルト10と、ラック11の任意位置で係止可能なバックル20とを有する。
【0020】
図2,図3および図4に示すように、ベルト10は帽子9に取り付けるための取付部19を有する。
取付部19は、ベルト10の本体(ラック11が形成されている部分)よりも薄く形成されており、図1に示すように、帽子9の開口部分8を挟んで対向する生地のうち一方の生地2の袋状とされた部分に装入され、生地2と一体に縫製される。
ベルト10の表面には、ベルト10の幅方向(ベルト10の長手方向と交差する方向)に延びる係合溝12が多数形成され、これらの係合溝12によりラック11が形成されている。
【0021】
図5に示すように、ラック11の係合溝12は、取付部19側(図5の右側)の傾斜面12Aと反対側の垂直面12Bとで構成されている。これにより、係合溝12内に後述する係合爪24が係合した場合、ベルト10の一方向に対しては互いの係合が外れ易く、他方向に対しては係合が外れないようになっている。
【0022】
図2,図3および図4に戻って、ベルト10の表面のうち、取付部19とラック11との間には、ストッパ13が形成されている。
ストッパ13は、ベルト10の表面に突出するとともに、ベルト10の幅方向に延びる板状とされ、バックル20と対向する側の面は垂直とされ、反対側の面は滑らかな曲面を描いてベルト10の表面に連続している(図7参照)。
ベルト10の裏面は平坦な面とされ、後述するバックル20の基部21が摺動自在とされている。
以上のようなベルト10は合成樹脂材料により一体成形され、全体として可撓性を有する。
【0023】
図2,図3および図6に示すように、バックル20はベルト10の背面側に配置される基部21を有し、基部21は帽子9に取り付けるための取付部29を有する。
基部21は板状の部材であり、中央が開口した平坦な枠状であってもよい。
取付部29は、基部21よりも薄く形成されており、図1に示すように、帽子9の開口部分8を挟んで前述した生地2と対向する他方の生地3の袋状とされた部分に装入され、生地3と一体に縫製される。
【0024】
バックル20は、前述した基部21と、基部21に立設されてベルト10を挟んで対向する一対の側壁22と、ベルト10の表面側にベルト10と対向して配置される操作部材23と、操作部材23の一端側に形成されてラック11の係合溝12の何れかに係合する係合爪24と、操作部材23の他端側に形成された押圧部25と、操作部材23の中間部を一対の側壁22の内側に連結する連結軸26と、基部21に固定されて操作部材23の押圧部25側の周縁に沿って配置されたフレーム27とを有する。
【0025】
基部21の両側に一対の側壁22が立設され、これらの側壁22間に操作部材23が連結軸26で支持されることで、基部21と操作部材23との間には空隙が形成され、この空隙にベルト10が挿通されることになる。
ベルト10が挿通された状態では、ベルト10の表面のラック11が操作部材23の裏面側に面する。係合爪24は、操作部材23の一端側の裏面側に形成され、ラック11の係合溝12の何れかに係合可能とされる。
【0026】
図5に示すように、係合爪24の先端形状は、操作部材23が水平な状態でも、連結軸26がある側(図5の右側)の面24Aがラック11の係合溝12における傾斜面12Aと同様な角度で傾斜されているとともに、反対側の面24Bも面24Aの傾斜より小さな角度ながら傾斜されている。これにより、係合爪24が係合溝12内に係合した場合、この係合爪24は連結軸26向きの力により容易に係合溝12外へ脱出できるが、反対側向きの力を受けても係合溝12内の垂直な面12Bにくいつき、係合溝12外へ脱出しにくくされている。
【0027】
図2,図3および図6に戻って、操作部材23は、連結軸26を支点とするシーソー動作を行うものである。
連結軸26は、操作部材23を一対の側壁22に連結しており、操作部材23を支持するだけでなく、それ自体の捻れ方向の弾性により操作部材23を付勢する付勢手段を兼ねている。
具体的には、係合爪24がラック11の係合溝12に係合した状態(図7の状態)にあるとき、操作部材23は基本姿勢であり、連結軸26は捻れがない状態である。ここで、押圧部25を指で押圧する等により、操作部材23がシーソー式に回動し、係合爪24がラック11の係合溝12から離脱した状態(図8の状態)にあるとき、連結軸26には捻れ力を受け、弾性による反力を生じて操作部材23を前述した基本姿勢(図7の状態)に戻そうとする。以上により、連結軸26は、連結軸26を中心として係合爪24がラック11に近接する方向に操作部材23を回動させる付勢手段としての機能を兼ねている。
【0028】
押圧部25は、操作部材23の他端に形成され、前述した操作部材23のシーソー動作のために指で押圧する部分である(図8参照)。
押圧部25は、卵殻状に膨出した曲面で構成され、その表面には指で判別可能な凹凸によるマーカ25Aが形成されている。本実施形態のマーカ25Aは、バックル20の幅方向に延びる3本の溝とされている。
このようなマーカ25Aにより、目視しない状態でも指でバックル20の表面を探ることで、押圧部25を容易に判別することができる。
【0029】
操作部材23は、押圧部25に隣接して段差28を有する。
押圧部25は、操作部材23の連結軸26で支持された部分ないし係合爪24が裏面に形成された部分に対して表出しており、押圧部25の係合爪24側には段差28が形成されている。
このような段差28があることで、指で押圧部25を判別することがより容易となる。
なお、バックル20が逆向きに移動しようとしても、係合爪24と係合溝12との係合により、バックル20の移動は規制される。これに対し、図8のように、指で押圧部25を押圧し、係合爪24と係合溝12との係合を解除することで、バックル20の逆向きの移動が可能となる。
【0030】
フレーム27は、一対の側壁22に支持されている。
フレーム27は、操作部材23の押圧部25側の周縁に沿って配置されたU字状の部材であり、前述した基部21と操作部材23との間の空隙に挿通されるベルト10を跨ぎ、その両端は一対の側壁22に連結されている。
フレーム27の上縁は、側壁22の上縁に連続されており、これにより押圧部25はフレーム27および側壁22によって取り囲まれている。
フレーム27の上縁の高さは、操作部材23が前述した基本姿勢(図7の状態)にあるときに押圧部25の表面よりも低いが、押圧部25が押圧されて操作部材23が回動した状態(図8の状態)にあるときには押圧部25の表面よりも高くなるような高さとされている。
【0031】
このようなフレーム27があることで、フレーム27で囲われた押圧部25を指で探ることが容易になるとともに、操作部材23の操作感を良好なものにできる。すなわち、押圧部25は指で押されることで沈み込むが(図8参照)、フレーム27は元の位置を維持する。このため、押圧部25はフレーム27の内側において高さが相対的に低くなり、操作する指で押圧部25を確認しつつ、更なる押圧操作を行うことができる。これにより、操作性の向上に加え、操作感の向上も図ることができる(フレームのガイド機能)。
また、フレーム27が操作部材23の押圧部25側を囲うことで操作部材23とベルト10との間に異物が侵入したり、操作部材23がベルト10から引き剥がされるような無理な力を受けたりすることを防止することができる(フレームのガード機能)。
【0032】
側壁22は、操作部材23の全長に沿った長さで形成されており、前述したフレーム27と併せて操作部材23の側面を完全に隠蔽するようになっている。特に、操作部材23の係合爪24が形成された側の先端は、操作部材23がシーソー動作を行った場合でも、常に両側の側壁22で挟まれた空間内に収容されている。
このため、基部21と一対の側壁22とにより、バックル20はベルト10に対して円滑に摺動されるとともに、バックル20を被着物に固定する際に、縫製時の生地の巻き込み等を回避できるとともに、バックル20の係合爪24がある側を生地の袋部等に収容した際でも、操作部材23が周囲の生地と干渉してその動作を妨げられる等の不都合を未然に回避することができる。
以上のようなバックル20は、基部21、側壁22、操作部材23および連結軸26を含めて、弾性を有する合成樹脂材料により一体成形されている。
【0033】
〔第2実施形態〕
図9には本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態のスライドアジャスタは、前述した第1実施形態と同様な基本構成を備えており、共通の部分については説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
図9において、押圧部25の表面にはマーカ25Bが形成されている。本実施形態のマーカ25Bは、押圧部25の表面の卵殻形状の曲面の頂上部分を平坦に切り取った平坦面とされている。
このようなマーカ25Bによっても、指で探ることでマーカとして認識でき、目視しないでも押圧部25を容易に判別することができる。
このような本実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
〔第3実施形態〕
図10には本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態のスライドアジャスタは、前述した第1実施形態と同様な基本構成を備えており、共通の部分については説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
図10において、側壁22は連結軸26の近傍のみに形成され、操作部材23の係合爪24側の先端は側面から見える状態とされている。
また、側壁22とフレーム27とが分離されており、フレーム27の上縁と側壁22の上縁とは不連続となっている。フレーム27は、両端が基部21に直接支持されており、両端の支持部27Aは側壁22と同様にして基部21の両端縁から立ち上げられている。
このような本実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、操作部材23の係合爪24側の先端が側壁22で挟まれる空間内に収容されないため、生地に装着した際に操作部材23が周囲の生地と接触し、動作抵抗が増す可能性がある。
【0035】
〔第4実施形態〕
図11および図12には本発明の第4実施形態が示されている。
本実施形態のスライドアジャスタは、前述した第1実施形態と同様な基本構成を備えており、共通の部分については説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
図11および図12において、押圧部25は、その高さが前述した第1実施形態よりも低く形成されており、操作部材23が基本姿勢にある状態でもフレーム27の上端よりも低い位置にある。
また、押圧部25が低く形成されていることで、操作部材23には前述した第1実施形態のような段差28(図3等参照)が省略されている。
押圧部25の表面は、凹状に窪んでおり、この凹状の曲面は指先が収まりやすい形状とされ、この凹面がマーカ25Cを形成している。
操作部材23は連結軸26で側壁22に支持されているが、連結軸26の近傍にはクランク型のブリッジ26Aが設置されている。これにより、操作部材23が基本姿勢から押圧部25を押圧されて傾いた際には、連結軸26自体の捻れに対する反力のほか、ブリッジ26Aの弾性変形による反力を受けることになり、これらの連結軸26およびブリッジ26Aの反力が付勢手段として機能するようになっている。
【0036】
このような本実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
特に、押圧部25をフレーム27よりも常時低くなるようにしたため、目視なしに指で探った際のフレーム27によるガイド機能を一層明確にすることができる。
さらに、本実施形態では、連結軸26自体の捻れに対する反力のほか、ブリッジ26Aの弾性変形による反力を利用して付勢手段を構成したため、連結軸26単独に比べ、用途によって必要とされる一層強い反力を発生することができる。
【0037】
〔変形例〕
なお、本発明は前記各実施形態の構造に限らず、次のような変形をも含む。
例えば、押圧部25の表面のマーカは、前述した第1実施形態のマーカ25A(複数の溝の列)あるいは第2実施形態のマーカ25B(曲面の一部に平坦面)に限らず、他の凹凸形状等であってもよい。例えば、指で知覚可能な小さな突起あるいは凹部、粗い凹凸面、細かい線条が並んだ面などとしてもよい。
また、押圧部25の表面は、その卵殻形状だけでも指で探ることで押圧部25を判別することができ、マーカは必ずしも必須ではない。特に、本発明では、押圧部25を囲むフレーム27があるので、このフレーム27のガイド機能により目視しないでも指の感触で押圧部25を判別することが可能である。
【0038】
付勢手段は、連結軸26で兼用されるもの、連結軸26とブリッジ26Aとを併用して兼用するものに限らず、連結軸を回転自在な軸とし、これとは別に操作部材23を付勢するばね等を用いて付勢部材とする構成としてもよい。
前記各実施形態では、フレーム27の上縁は、基部21を基準とした高さが、押圧部25が押圧されて操作部材23が回動した際の押圧部25よりも高く設定されているものとしたが、異なる高さ設定としてもよい。
例えば、フレーム27の上縁の基部21を基準とした高さは、押圧部25が押圧されて操作部材23が回動した際の押圧部25よりも低くてもよい。このように押圧部25のほうが常に高い場合でも、周囲のフレーム27により押圧部25を指で探ることができ、押圧部25が指で押されればフレーム27に対して下降するため内側の押圧部25が明瞭に判別できるようになる。
また、フレーム27の上縁の基部21を基準とした高さは、押圧部25が押圧されておらず操作部材23が回動していない状態で押圧部25よりも高くてもよい。このように押圧部25のほうが常に低ければ、押圧部25の周囲のフレームにより押圧部25が確実に判別できる。
【0039】
前記実施形態では、フレーム27をU字状とし、押圧部25の周縁に沿って配置することで押圧部25を取り囲むようにしたが、本発明はこれに限らない。
例えば、フレーム27はU字状に連続した部材に限らず、複数の部材を間欠的に配置して、全体としてU字状となって押圧部25の周縁を取り囲むようなものであってもよい。また、C字状あるいは押圧部25の全周を包囲するO字状、押圧部25の一部に沿う円弧状の部分、I字状の断片等であってもよく、要するに押圧部25の周縁に沿って配置されて押圧部25の位置を指で判別できるものであればよい。
その他、各部寸法等は本発明が規定する範囲内で適宜変更等してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…スライドアジャスタ
2,3…生地
8…後面の開口部分
9…帽子
10…ベルト
11…ラック
12…係合溝
13…ストッパ
19…取付部
20…バックル
21…基部
22…側壁
23…操作部材
24…係合爪
25…押圧部
25A,25B,25C…マーカ
26…付勢手段を兼ねる連結軸
26A…付勢手段であるブリッジ
27…フレーム
27A…支持部
28…段差
29…取付部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトをバックルに対してスライドさせて長さ寸法を調節するためのスライドアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長さ寸法を調節するためのスライドアジャスタとして、合成樹脂製のベルトとバックルとを有し、ベルトをバックルに挿通させてこのバックルをベルトの任意位置で係合させることで固定するものが知られている(特許文献1など参照)。
このようなスライドアジャスタにおいては、ベルトに多数の係合溝を有するラックを形成し、バックルに可動式の係合爪を形成し、この係合爪をラック上の任意の係合溝に係合させることで任意位置での係合を可能としている。
【0003】
バックルにおいては、シーソー式の操作板を形成し、一端側の押圧部を指で押す操作により他端側の係合爪を係合溝に対して近接または離隔させ、これにより係合爪を係合溝に係合させまたは解除させるようにしている。
係合溝と係合爪は、各々の凹凸形状により、係合爪がラックの一方向へ移動しようとした際には係合爪が係合溝に係止されるが、他方向へ移動しようとした際には係合爪が係合溝を乗り越えて自由に移動可能とされ、例えばサイズを絞る操作、つまりバックルがベルトの基端側に近接する方向への操作にあたっては押圧部の操作を必要としないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−86639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようなスライドアジャスタは、ヘルメットのヘッドバンド用のサイズ調整等の機能的要素としての利用に加え、帽子あるいはズボンやスカート等、外観デザインが重要視される服飾品のスライドアジャスタとしても利用されている。
このような服飾品用のスライドアジャスタは、外観性に優れていることに加え、サイズ調整という実用的な機能から操作が簡単かつ確実に行えることが求められる。
例えば、帽子のサイズ調整用として帽子の後側に装着されるアジャスタでは、目視しながらの操作が必要であると、一旦帽子を脱いで調節を行い、再び帽子を被って状態を確認する、という動作を繰り返す必要がある。このような煩雑さを解消するべく、被ったまま指で操作することで最適な状態に調整できるように、目視しないでも調整が行えるアジャスタが求められている。
同様な要求は、帽子のアジャスタに限らず、ズボンやスカートのウエストアジャスタ等、目視しにくい部位に装着されるものでも生じる。
【0006】
前述した特許文献1では、目視なしでも操作が行えるようにするために、ベルトおよびバックルに各々指をかけるための突起部を形成している。
特許文献1では、このような突起部により、目視できない状態でも探り当てることができるとともに、各々を片手で摘むようにしてベルトとバックルとをスライドさせ、締め込む方向の操作を容易に行うことができる。併せて、バックル側の突起は、シーソー式の可動部材に形成され、係合爪の解除による緩める方向の操作も目視なしに行えるようになっている。
しかし、特許文献1の構成では、操作用の突起がベルトおよびバックルから突き出すため、小型化あるいは薄型化が必要な部位には適用しにくいという問題があった。
【0007】
本発明の主な目的は、目視しないでも簡単かつ確実な操作が行えるとともに、小型化および薄型化が必要な部位にも適用できるスライドアジャスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベルトとバックルとを有し、
前記ベルトは、表面に多数の係合溝を有するラックを有し、
前記バックルは、前記ベルトの背面側に配置される基部と、前記基部に立設されて前記ベルトを挟んで対向する一対の側壁と、前記ベルトの表面側に前記ベルトと対向して配置される操作部材と、前記操作部材の一端側に形成されて前記ラックの係合溝の何れかに係合する係合爪と、前記操作部材の他端側に形成された押圧部と、前記操作部材を前記一対の側壁に連結する連結軸と、前記連結軸を中心として前記係合爪が前記ラックに近接する方向に前記操作部材が回動するように前記操作部材を付勢する付勢手段と、を有し、
さらに、前記バックルは、前記基部に固定されて前記操作部材の前記押圧部側の周縁に沿って配置されたフレームを有することを特徴とする。
【0009】
このような本発明では、フレームがガイドとして機能し、フレームによって押圧部を指で探ることが容易になるとともに、操作部材の操作感を良好なものにできる。すなわち、押圧部は指で押されることで沈み込むが、フレームは元の位置を維持する。このため、押圧部はフレームの内側において高さが相対的に低くなり、操作する指で押圧部を確認しつつ、更なる押圧操作を行うことができる。これにより、操作性の向上に加え、操作感の向上も図ることができる。
また、フレームはガードとしても機能し、フレームが操作部材の押圧部側の周縁に沿って配置されることで操作部材とベルトとの間に異物が侵入したり、操作部材がベルトから引き剥がされるような無理な力を受けたりすることを防止することができる。
【0010】
なお、前記フレームの上縁は、前記基部を基準とした高さが、前記押圧部が押圧されて前記操作部材が回動した際の前記押圧部よりも高く設定されていることが望ましい。
このようにすれば、指で押されることで沈み込んだ押圧部が、元の位置を維持するフレームよりも低くなり、操作する指で押圧部を確認することが確実かつ容易にでき、操作性および操作感の向上に更に好適である。
但し、フレームの上縁の基部を基準とした高さは、押圧部が押圧されて操作部材が回動した際の押圧部よりも低くてもよい。このように押圧部のほうが常に高い場合でも、押圧部の周囲のフレームにより押圧部を指で探ることができ、押圧部が指で押されればフレームに対して下降するため内側の押圧部が明瞭に判別できるようになる。
また、フレームの上縁の基部を基準とした高さは、押圧部が押圧されておらず操作部材が回動していない状態で押圧部よりも高くてもよい。このように押圧部のほうが常に低ければ、押圧部の周囲のフレームにより押圧部が確実に判別できる。
【0011】
本発明において、前記フレームは前記一対の側壁に接続され、前記側壁の上縁と前記フレームの上縁とは連続した辺縁とされていることが望ましい。
このような本発明では、操作部材の押圧部側の周縁に沿って側壁およびフレームが連続的に配置されることになり、フレームのガイド機能およびガード機能さらには本来の操作機能をより効果的なものとすることができる。
【0012】
本発明において、前記側壁は、前記操作部材の全長にわたって沿う長さに形成されていることが望ましい。
このような本発明では、操作部材が一対の側壁の間に収容され、操作部材は一対の側壁の間に形成される空間において専ら作動することができる。このため、バックルを被着物に固定する際に、縫製時の生地の巻き込み等を回避できるとともに、バックルの係合爪がある側を生地の袋部等に収容した際に、操作部材が周囲の生地と干渉してその動作を妨げられる等の不都合を未然に回避することができる。
【0013】
本発明において、前記操作部材は、前記押圧部と前記係合爪側の部分との間に、前記押圧部側が高くなった段差を有することが望ましい。
このような本発明では、指で段差を探ることで、押圧部と係合爪側の部分との境界が容易に識別でき、操作部材の操作にあたって押圧部を指で確実に探りあてることができる。
【0014】
本発明において、前記押圧部の表面には、指で判別可能な凹凸によるマーカが形成されていることが望ましい。
このような本発明では、表面のマーカにより押圧部の位置を指で判別することができ、目視しないでも操作を簡単かつ確実に行うことができる。
【0015】
本発明において、前記連結軸は捻れ方向の弾力性を有し、前記付勢手段は前記連結軸により構成されていることが望ましい。
このような本発明では、連結軸それ自体で付勢手段を兼ねることができ、構成の簡略化を図ることができる。このような捻れ方向の弾力性を有する連結軸は、例えば操作部材と連結軸と側壁とを合成樹脂材料で一体成形することで容易に実現することができる。
なお、本発明においては連結軸と付勢手段とを別体としてもよく、例えば連結軸を回転自在とし、操作部材と側壁との間または操作部材と基部との間に設置されたばね等を用いて付勢手段としてもよい。
【0016】
本発明において、前記ベルトは、前記ラックの一端側の表面に突起状のストッパを有することが望ましい。
このような本発明では、サイズを絞るためにバックルをベルトに対してスライドさせる操作の際にそのスライド限界を示すことになるとともに、バックルとベルトとの分離を防ぐことができる。また、ベルトを被着物に固定する際に、ベルトの先端側を生地の袋部等に収容する際のストッパとしても利用することもできる。
【0017】
本発明において、前記バックルおよび前記ベルトは、それぞれ被着物に固定するための薄板状の取付部を有することが望ましい。
このような本発明では、薄板状の取付部を被着物の生地とともに縫製することができ,固定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【図2】前記第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】前記第1実施形態を示す異なる向きの斜視図である。
【図4】前記第1実施形態のベルトを示す平面図である。
【図5】前記第1実施形態の係合爪および係合溝を示す拡大した断面図である。
【図6】前記第1実施形態のバックルを示す拡大した平面図である。
【図7】前記第1実施形態における締め込み操作を示す断面図である。
【図8】前記第1実施形態における解除操作を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態のバックルを示す側面図である。
【図11】本発明の第4実施形態のバックルを示す断面図である。
【図12】前記第4実施形態のバックルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1において、本実施形態のスライドアジャスタ1は、被着物である帽子9の後面の開口部分8に装着され、帽子サイズの調整に用いられるものである。
図2および図3に示すように、スライドアジャスタ1は、長尺で表面にラック11が形成されたベルト10と、ラック11の任意位置で係止可能なバックル20とを有する。
【0020】
図2,図3および図4に示すように、ベルト10は帽子9に取り付けるための取付部19を有する。
取付部19は、ベルト10の本体(ラック11が形成されている部分)よりも薄く形成されており、図1に示すように、帽子9の開口部分8を挟んで対向する生地のうち一方の生地2の袋状とされた部分に装入され、生地2と一体に縫製される。
ベルト10の表面には、ベルト10の幅方向(ベルト10の長手方向と交差する方向)に延びる係合溝12が多数形成され、これらの係合溝12によりラック11が形成されている。
【0021】
図5に示すように、ラック11の係合溝12は、取付部19側(図5の右側)の傾斜面12Aと反対側の垂直面12Bとで構成されている。これにより、係合溝12内に後述する係合爪24が係合した場合、ベルト10の一方向に対しては互いの係合が外れ易く、他方向に対しては係合が外れないようになっている。
【0022】
図2,図3および図4に戻って、ベルト10の表面のうち、取付部19とラック11との間には、ストッパ13が形成されている。
ストッパ13は、ベルト10の表面に突出するとともに、ベルト10の幅方向に延びる板状とされ、バックル20と対向する側の面は垂直とされ、反対側の面は滑らかな曲面を描いてベルト10の表面に連続している(図7参照)。
ベルト10の裏面は平坦な面とされ、後述するバックル20の基部21が摺動自在とされている。
以上のようなベルト10は合成樹脂材料により一体成形され、全体として可撓性を有する。
【0023】
図2,図3および図6に示すように、バックル20はベルト10の背面側に配置される基部21を有し、基部21は帽子9に取り付けるための取付部29を有する。
基部21は板状の部材であり、中央が開口した平坦な枠状であってもよい。
取付部29は、基部21よりも薄く形成されており、図1に示すように、帽子9の開口部分8を挟んで前述した生地2と対向する他方の生地3の袋状とされた部分に装入され、生地3と一体に縫製される。
【0024】
バックル20は、前述した基部21と、基部21に立設されてベルト10を挟んで対向する一対の側壁22と、ベルト10の表面側にベルト10と対向して配置される操作部材23と、操作部材23の一端側に形成されてラック11の係合溝12の何れかに係合する係合爪24と、操作部材23の他端側に形成された押圧部25と、操作部材23の中間部を一対の側壁22の内側に連結する連結軸26と、基部21に固定されて操作部材23の押圧部25側の周縁に沿って配置されたフレーム27とを有する。
【0025】
基部21の両側に一対の側壁22が立設され、これらの側壁22間に操作部材23が連結軸26で支持されることで、基部21と操作部材23との間には空隙が形成され、この空隙にベルト10が挿通されることになる。
ベルト10が挿通された状態では、ベルト10の表面のラック11が操作部材23の裏面側に面する。係合爪24は、操作部材23の一端側の裏面側に形成され、ラック11の係合溝12の何れかに係合可能とされる。
【0026】
図5に示すように、係合爪24の先端形状は、操作部材23が水平な状態でも、連結軸26がある側(図5の右側)の面24Aがラック11の係合溝12における傾斜面12Aと同様な角度で傾斜されているとともに、反対側の面24Bも面24Aの傾斜より小さな角度ながら傾斜されている。これにより、係合爪24が係合溝12内に係合した場合、この係合爪24は連結軸26向きの力により容易に係合溝12外へ脱出できるが、反対側向きの力を受けても係合溝12内の垂直な面12Bにくいつき、係合溝12外へ脱出しにくくされている。
【0027】
図2,図3および図6に戻って、操作部材23は、連結軸26を支点とするシーソー動作を行うものである。
連結軸26は、操作部材23を一対の側壁22に連結しており、操作部材23を支持するだけでなく、それ自体の捻れ方向の弾性により操作部材23を付勢する付勢手段を兼ねている。
具体的には、係合爪24がラック11の係合溝12に係合した状態(図7の状態)にあるとき、操作部材23は基本姿勢であり、連結軸26は捻れがない状態である。ここで、押圧部25を指で押圧する等により、操作部材23がシーソー式に回動し、係合爪24がラック11の係合溝12から離脱した状態(図8の状態)にあるとき、連結軸26には捻れ力を受け、弾性による反力を生じて操作部材23を前述した基本姿勢(図7の状態)に戻そうとする。以上により、連結軸26は、連結軸26を中心として係合爪24がラック11に近接する方向に操作部材23を回動させる付勢手段としての機能を兼ねている。
【0028】
押圧部25は、操作部材23の他端に形成され、前述した操作部材23のシーソー動作のために指で押圧する部分である(図8参照)。
押圧部25は、卵殻状に膨出した曲面で構成され、その表面には指で判別可能な凹凸によるマーカ25Aが形成されている。本実施形態のマーカ25Aは、バックル20の幅方向に延びる3本の溝とされている。
このようなマーカ25Aにより、目視しない状態でも指でバックル20の表面を探ることで、押圧部25を容易に判別することができる。
【0029】
操作部材23は、押圧部25に隣接して段差28を有する。
押圧部25は、操作部材23の連結軸26で支持された部分ないし係合爪24が裏面に形成された部分に対して表出しており、押圧部25の係合爪24側には段差28が形成されている。
このような段差28があることで、指で押圧部25を判別することがより容易となる。
なお、バックル20が逆向きに移動しようとしても、係合爪24と係合溝12との係合により、バックル20の移動は規制される。これに対し、図8のように、指で押圧部25を押圧し、係合爪24と係合溝12との係合を解除することで、バックル20の逆向きの移動が可能となる。
【0030】
フレーム27は、一対の側壁22に支持されている。
フレーム27は、操作部材23の押圧部25側の周縁に沿って配置されたU字状の部材であり、前述した基部21と操作部材23との間の空隙に挿通されるベルト10を跨ぎ、その両端は一対の側壁22に連結されている。
フレーム27の上縁は、側壁22の上縁に連続されており、これにより押圧部25はフレーム27および側壁22によって取り囲まれている。
フレーム27の上縁の高さは、操作部材23が前述した基本姿勢(図7の状態)にあるときに押圧部25の表面よりも低いが、押圧部25が押圧されて操作部材23が回動した状態(図8の状態)にあるときには押圧部25の表面よりも高くなるような高さとされている。
【0031】
このようなフレーム27があることで、フレーム27で囲われた押圧部25を指で探ることが容易になるとともに、操作部材23の操作感を良好なものにできる。すなわち、押圧部25は指で押されることで沈み込むが(図8参照)、フレーム27は元の位置を維持する。このため、押圧部25はフレーム27の内側において高さが相対的に低くなり、操作する指で押圧部25を確認しつつ、更なる押圧操作を行うことができる。これにより、操作性の向上に加え、操作感の向上も図ることができる(フレームのガイド機能)。
また、フレーム27が操作部材23の押圧部25側を囲うことで操作部材23とベルト10との間に異物が侵入したり、操作部材23がベルト10から引き剥がされるような無理な力を受けたりすることを防止することができる(フレームのガード機能)。
【0032】
側壁22は、操作部材23の全長に沿った長さで形成されており、前述したフレーム27と併せて操作部材23の側面を完全に隠蔽するようになっている。特に、操作部材23の係合爪24が形成された側の先端は、操作部材23がシーソー動作を行った場合でも、常に両側の側壁22で挟まれた空間内に収容されている。
このため、基部21と一対の側壁22とにより、バックル20はベルト10に対して円滑に摺動されるとともに、バックル20を被着物に固定する際に、縫製時の生地の巻き込み等を回避できるとともに、バックル20の係合爪24がある側を生地の袋部等に収容した際でも、操作部材23が周囲の生地と干渉してその動作を妨げられる等の不都合を未然に回避することができる。
以上のようなバックル20は、基部21、側壁22、操作部材23および連結軸26を含めて、弾性を有する合成樹脂材料により一体成形されている。
【0033】
〔第2実施形態〕
図9には本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態のスライドアジャスタは、前述した第1実施形態と同様な基本構成を備えており、共通の部分については説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
図9において、押圧部25の表面にはマーカ25Bが形成されている。本実施形態のマーカ25Bは、押圧部25の表面の卵殻形状の曲面の頂上部分を平坦に切り取った平坦面とされている。
このようなマーカ25Bによっても、指で探ることでマーカとして認識でき、目視しないでも押圧部25を容易に判別することができる。
このような本実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
〔第3実施形態〕
図10には本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態のスライドアジャスタは、前述した第1実施形態と同様な基本構成を備えており、共通の部分については説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
図10において、側壁22は連結軸26の近傍のみに形成され、操作部材23の係合爪24側の先端は側面から見える状態とされている。
また、側壁22とフレーム27とが分離されており、フレーム27の上縁と側壁22の上縁とは不連続となっている。フレーム27は、両端が基部21に直接支持されており、両端の支持部27Aは側壁22と同様にして基部21の両端縁から立ち上げられている。
このような本実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、操作部材23の係合爪24側の先端が側壁22で挟まれる空間内に収容されないため、生地に装着した際に操作部材23が周囲の生地と接触し、動作抵抗が増す可能性がある。
【0035】
〔第4実施形態〕
図11および図12には本発明の第4実施形態が示されている。
本実施形態のスライドアジャスタは、前述した第1実施形態と同様な基本構成を備えており、共通の部分については説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
図11および図12において、押圧部25は、その高さが前述した第1実施形態よりも低く形成されており、操作部材23が基本姿勢にある状態でもフレーム27の上端よりも低い位置にある。
また、押圧部25が低く形成されていることで、操作部材23には前述した第1実施形態のような段差28(図3等参照)が省略されている。
押圧部25の表面は、凹状に窪んでおり、この凹状の曲面は指先が収まりやすい形状とされ、この凹面がマーカ25Cを形成している。
操作部材23は連結軸26で側壁22に支持されているが、連結軸26の近傍にはクランク型のブリッジ26Aが設置されている。これにより、操作部材23が基本姿勢から押圧部25を押圧されて傾いた際には、連結軸26自体の捻れに対する反力のほか、ブリッジ26Aの弾性変形による反力を受けることになり、これらの連結軸26およびブリッジ26Aの反力が付勢手段として機能するようになっている。
【0036】
このような本実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
特に、押圧部25をフレーム27よりも常時低くなるようにしたため、目視なしに指で探った際のフレーム27によるガイド機能を一層明確にすることができる。
さらに、本実施形態では、連結軸26自体の捻れに対する反力のほか、ブリッジ26Aの弾性変形による反力を利用して付勢手段を構成したため、連結軸26単独に比べ、用途によって必要とされる一層強い反力を発生することができる。
【0037】
〔変形例〕
なお、本発明は前記各実施形態の構造に限らず、次のような変形をも含む。
例えば、押圧部25の表面のマーカは、前述した第1実施形態のマーカ25A(複数の溝の列)あるいは第2実施形態のマーカ25B(曲面の一部に平坦面)に限らず、他の凹凸形状等であってもよい。例えば、指で知覚可能な小さな突起あるいは凹部、粗い凹凸面、細かい線条が並んだ面などとしてもよい。
また、押圧部25の表面は、その卵殻形状だけでも指で探ることで押圧部25を判別することができ、マーカは必ずしも必須ではない。特に、本発明では、押圧部25を囲むフレーム27があるので、このフレーム27のガイド機能により目視しないでも指の感触で押圧部25を判別することが可能である。
【0038】
付勢手段は、連結軸26で兼用されるもの、連結軸26とブリッジ26Aとを併用して兼用するものに限らず、連結軸を回転自在な軸とし、これとは別に操作部材23を付勢するばね等を用いて付勢部材とする構成としてもよい。
前記各実施形態では、フレーム27の上縁は、基部21を基準とした高さが、押圧部25が押圧されて操作部材23が回動した際の押圧部25よりも高く設定されているものとしたが、異なる高さ設定としてもよい。
例えば、フレーム27の上縁の基部21を基準とした高さは、押圧部25が押圧されて操作部材23が回動した際の押圧部25よりも低くてもよい。このように押圧部25のほうが常に高い場合でも、周囲のフレーム27により押圧部25を指で探ることができ、押圧部25が指で押されればフレーム27に対して下降するため内側の押圧部25が明瞭に判別できるようになる。
また、フレーム27の上縁の基部21を基準とした高さは、押圧部25が押圧されておらず操作部材23が回動していない状態で押圧部25よりも高くてもよい。このように押圧部25のほうが常に低ければ、押圧部25の周囲のフレームにより押圧部25が確実に判別できる。
【0039】
前記実施形態では、フレーム27をU字状とし、押圧部25の周縁に沿って配置することで押圧部25を取り囲むようにしたが、本発明はこれに限らない。
例えば、フレーム27はU字状に連続した部材に限らず、複数の部材を間欠的に配置して、全体としてU字状となって押圧部25の周縁を取り囲むようなものであってもよい。また、C字状あるいは押圧部25の全周を包囲するO字状、押圧部25の一部に沿う円弧状の部分、I字状の断片等であってもよく、要するに押圧部25の周縁に沿って配置されて押圧部25の位置を指で判別できるものであればよい。
その他、各部寸法等は本発明が規定する範囲内で適宜変更等してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…スライドアジャスタ
2,3…生地
8…後面の開口部分
9…帽子
10…ベルト
11…ラック
12…係合溝
13…ストッパ
19…取付部
20…バックル
21…基部
22…側壁
23…操作部材
24…係合爪
25…押圧部
25A,25B,25C…マーカ
26…付勢手段を兼ねる連結軸
26A…付勢手段であるブリッジ
27…フレーム
27A…支持部
28…段差
29…取付部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト10とバックル20とを有し、
前記ベルト10は、表面に多数の係合溝12を有するラック11を有し、
前記バックル20は、前記ベルト10の背面側に配置される基部21と、前記基部21に立設されて前記ベルト10を挟んで対向する一対の側壁22と、前記ベルト10の表面側に前記ベルト10と対向して配置される操作部材23と、前記操作部材23の一端側に形成されて前記ラック11の係合溝12の何れかに係合する係合爪24と、前記操作部材23の他端側に形成された押圧部25と、前記操作部材23を前記一対の側壁22に連結する連結軸26と、前記連結軸26を中心として前記係合爪24が前記ラック11に近接する方向に前記操作部材23が回動するように前記操作部材23を付勢する付勢手段26,26Aと、を有し、
さらに、前記バックル20は、前記基部21に固定されて前記操作部材23の前記押圧部25側の周縁に沿って配置されたフレーム27を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドアジャスタにおいて、
前記フレームの上縁は、前記基部を基準とした高さが、前記押圧部が押圧されて前記操作部材が回動した際の前記押圧部よりも高く設定されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスライドアジャスタにおいて、
前記フレーム27は前記一対の側壁22に接続され、前記側壁22の上縁と前記フレーム27の上縁とは連続した辺縁とされていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記側壁22は、前記操作部材23の全長にわたって沿う長さに形成されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記操作部材23は、前記押圧部25と前記係合爪24側の部分との間に、前記押圧部25側が高くなった段差28を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記押圧部25の表面には、指で判別可能な凹凸によるマーカ25A,25B,25Cが形成されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記連結軸26は捻れ方向の弾力性を有し、前記付勢手段は前記連結軸26により構成されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記ベルト10は、前記ラック11の一端側の表面に突起状のストッパ13を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記バックル20および前記ベルト10は、それぞれ被着物に固定するための薄板状の取付部19,29を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項1】
ベルト10とバックル20とを有し、
前記ベルト10は、表面に多数の係合溝12を有するラック11を有し、
前記バックル20は、前記ベルト10の背面側に配置される基部21と、前記基部21に立設されて前記ベルト10を挟んで対向する一対の側壁22と、前記ベルト10の表面側に前記ベルト10と対向して配置される操作部材23と、前記操作部材23の一端側に形成されて前記ラック11の係合溝12の何れかに係合する係合爪24と、前記操作部材23の他端側に形成された押圧部25と、前記操作部材23を前記一対の側壁22に連結する連結軸26と、前記連結軸26を中心として前記係合爪24が前記ラック11に近接する方向に前記操作部材23が回動するように前記操作部材23を付勢する付勢手段26,26Aと、を有し、
さらに、前記バックル20は、前記基部21に固定されて前記操作部材23の前記押圧部25側の周縁に沿って配置されたフレーム27を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドアジャスタにおいて、
前記フレームの上縁は、前記基部を基準とした高さが、前記押圧部が押圧されて前記操作部材が回動した際の前記押圧部よりも高く設定されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスライドアジャスタにおいて、
前記フレーム27は前記一対の側壁22に接続され、前記側壁22の上縁と前記フレーム27の上縁とは連続した辺縁とされていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記側壁22は、前記操作部材23の全長にわたって沿う長さに形成されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記操作部材23は、前記押圧部25と前記係合爪24側の部分との間に、前記押圧部25側が高くなった段差28を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記押圧部25の表面には、指で判別可能な凹凸によるマーカ25A,25B,25Cが形成されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記連結軸26は捻れ方向の弾力性を有し、前記付勢手段は前記連結軸26により構成されていることを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記ベルト10は、前記ラック11の一端側の表面に突起状のストッパ13を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載のスライドアジャスタにおいて、
前記バックル20および前記ベルト10は、それぞれ被着物に固定するための薄板状の取付部19,29を有することを特徴とするスライドアジャスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−259627(P2010−259627A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112906(P2009−112906)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
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