説明

スライドネック

【課題】搬送パイプの開口部を閉塞している状態でも、スライド部材と開口部との間で隙間が生じないようにできるスライドネックを提供する。
【解決手段】搬送パイプ9に形成された開口部8を開閉するように搬送パイプ9の軸線方向に沿って移動するスライド部材20を有するスライドネック10において、搬送パイプ9の下部外周側を覆うとともに、搬送パイプ9との間にスライド部材20をスライド可能に保持し、開口部8から落下した飼料を通過させるための通路12を有するネック本体11と、搬送パイプ9の上部外周側を覆い、ネック本体11の上部と嵌合するキャップ30とを具備し、スライド部材20は、搬送パイプ9の断面形状に倣った円弧状に形成されており、ネック本体11またはキャップ30の内壁面が、スライド部材20の円弧状の端縁の外周面に当接してスライド部材20の変形を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜に飼料を搬送するための搬送パイプから分岐して飼料を落下させるスライドネックに関する。
【背景技術】
【0002】
牛舎、豚舎および鶏舎等の畜舎においては、家畜に与える飼料を供給するための搬送設備が設けられている。
例えば、特許文献1に示すような搬送設備によれば、飼料は大型の貯蔵タンクに貯蔵されている。この貯蔵タンクの下方に、搬送パイプが開口して配置されており、搬送パイプは、畜舎内の各畜房に飼料を搬送させるように循環し、貯蔵タンクの下方に戻るように配置されている。
各畜房においては、搬送パイプから飼料を落下させるように、搬送パイプの一部が開口して形成された排出口が設けられている。
【0003】
また、特許文献2では、飼料を供給するための搬送設備において、特に搬送パイプから飼料を落下させる箇所に設けられたネック(特許文献2ではバルブと称している)について詳述している。
ネックは、搬送パイプからの分岐管として、搬送パイプの下面に形成された開口部を覆って、下方に向けて突出しており、開口部から落下した飼料を、家畜まで導くように設けられている。
ネック内には、搬送パイプの開口部を開閉するスライド部材が設けられている。スライド部材は、搬送パイプの形状に合わせて断面視円弧状に形成されており、搬送パイプの外周面において、搬送パイプの軸線方向に沿って移動可能に配置されている。このような構成のネックを本明細書中ではスライドネックと称している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−316405号公報
【特許文献2】特開平10−108571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2に開示されているように、ネックにおける搬送パイプの開口部の開閉は、スライド部材が搬送パイプの外周面において軸線方向に沿ってスライド移動して開閉している。
ところが、スライド部材が開口部を閉塞している場合に、搬送パイプ内を流れる飼料の圧力により、飼料が開口部とスライド部材の隙間に入り込み、徐々にスライド部材を圧迫し、圧迫されたスライド部材が開口部から離間して隙間が空いてしまい、飼料がこの隙間から漏れてしまうおそれがあるという課題があった。
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、搬送パイプの開口部を閉塞している状態でも、スライド部材と開口部との間で隙間が生じないようにできるスライドネックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるスライドネックによれば、飼料を搬送する搬送パイプから飼料を落下させる位置に設けられ、飼料を落下させるために搬送パイプに形成された開口部を開閉するように搬送パイプの軸線方向に沿って移動するスライド部材を有するスライドネックにおいて、搬送パイプの下部外周側を覆うとともに、搬送パイプとの間に前記スライド部材をスライド可能に保持し、開口部から落下した飼料を通過させるための通路を有するネック本体と、搬送パイプの上部外周側を覆い、ネック本体の上部と嵌合するキャップとを具備し、前記スライド部材は、搬送パイプの断面形状に倣った円弧状に形成されており、前記ネック本体または前記キャップの内壁面が、スライド部材の円弧状の端縁の外周面に当接してスライド部材の変形を防止するように設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、スライド部材の端縁がネック本体またはキャップによって変形を防止するように押さえつけられている。したがって、搬送パイプ内の飼料の圧力によってスライド部材が径方向に広がってしまうような変形を防止できる。このため、開口部とスライド部材との間で隙間が空いてしまうことなく飼料が漏れることを防止することができる。
【0008】
また、前記スライド部材には、少なくとも搬送パイプの円周の半分以上を覆う箇所が1または複数設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、スライド部材の搬送パイプへの取り付けが強固となる。このため、搬送パイプ内の飼料の圧力によってスライド部材が径方向に広がってしまうような変形をさらに防止することができる。
【0009】
さらに、前記スライド部材を開口部が閉塞状態となるように移動させた位置においては、前記スライド部材と前記ネック本体との間でロックがかかるロック機構を設けたことを特徴としている。
例えば、スライド部材の移動方向として、開口部を閉塞する方向に移動するときの方向が飼料の搬送方向に対向する方向である場合には、スライド部材が飼料に押されて開いてしまうこともある。しかし、このような構成によれば、飼料の移動やその他の事情によりスライド部材が閉塞状態から移動することを防止することができる。
【0010】
さらに、前記ロック機構は、前記スライド部材の外壁面に内方に凹むように形成されたスライド部材側凹部と、前記ネック本体の内壁面に内方に突出するように形成されたネック本体側突起とを有することを特徴としてもよい。
【0011】
さらに、前記スライド部材の移動方向の端部であって、移動時に搬送パイプの開口部を通過する側の一方側端部は、先端が尖鋭に形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、飼料が開口部から落下中にスライド部材を移動させて開口部を閉塞するときには、スライド部材の先端部が飼料を切り込んでいくので、スライド部材が飼料を挟み込んで開口部を閉塞してしまうことを防止することができる。
【0012】
なお、前記スライド部材の移動方向の他方側端部には、下方に向けて突出する操作用突出片が形成され、該操作用突出片には、操作用の器具を取り付け可能な取り付け穴が形成されていることを特徴としてもよい。
通常、搬送パイプは人間の身長よりも若干高い位置に配置されていることが多いが、このように操作用突出片に取り付け穴を設けることにより、取り付け穴に何らかの操作用の器具を装着させることができる。このため、作業者は手を伸ばしたりしなくても操作用の器具を操作することにより、確実なスライド部材の操作が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるスライドネックによれば、搬送パイプの開口部をスライド部材が閉塞している場合であっても、スライド部材と開口部との間で隙間が生じないようにでき、飼料が漏れてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るスライドネックの全体構成を示す斜視図である。
【図2】搬送パイプに対するスライドネックのスライド部材とネック本体の配置構成を示した分解図である。
【図3】ネック本体を搬送パイプの軸線方向からみた正面図である。
【図4】ネック本体を搬送パイプに対して傾けたところを示す正面図である。
【図5】スライド部材の斜視図である。
【図6】スライド部材を搬送パイプの軸線方向からみた正面図である。
【図7】スライド部材を搬送パイプに対して傾けたところを示す、搬送パイプの軸線方向からみた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかるスライドネックについて、図面に基づいて説明する。
図1は、スライドネックの全体構成を示す斜視図である。図2は、搬送パイプに対するスライドネックのスライド部材とネック本体の配置構成を示した分解図である。
スライドネック10は、家畜の飼料を搬送する搬送パイプ9の中途部に設けられ、搬送パイプ9の内部を搬送される飼料を搬送パイプ9から分岐して落下させるための部材である。
搬送パイプ9の所定箇所には、飼料を落下させるために下方に向けて開口した開口部8が形成されている。スライドネック10のスライド部材20(後述する)が、搬送パイプ9の軸線方向に沿ってスライド移動し、開口部8の開閉を行っている。
【0016】
スライドネック10は、飼料を落下させる通路部12が形成されて搬送パイプ9の下部外周を覆うネック本体11と、ネック本体11と搬送パイプ9の外周壁下面との間で挟み込まれ、搬送パイプ9の軸線方向にスライド移動可能なスライド部材20と、ネック本体11と嵌合してネック本体11の上面および搬送パイプ9の上部外周を覆うキャップ30とを備えている。
【0017】
(ネック本体)
図3に、ネック本体を搬送パイプの軸線方向からみたところを示す。
ネック本体11は、搬送パイプ9に装着させる装着爪13が形成されており、装着爪13の下方に内部が空洞の通路部12が形成されている。本実施形態の装着爪13は、2箇所に設けられており、その2箇所とは搬送パイプ9の軸線方向に沿ったネック本体11の両端部である。
装着爪13は、搬送パイプ9の外周において搬送パイプ9の円周の半分以上ネック本体11が覆うように設けられている。具体的には、装着爪13は、搬送パイプ9の軸線方向正面から見て搬送パイプ9の断面の上半分方向にまで延びるように形成されている。
このように、ネック本体11は、装着爪13によって搬送パイプ9を把持し、搬送パイプ9から落下することなく設けられている。
【0018】
通路部12は、漏斗状に下方に向けて徐々に小径となっている漏斗状部14と、漏斗状部14の下方に連続して形成された接続部15を有している。接続部は、ネック本体11の下部に他のパイプ等を接続するために形成された部位である。
ここでいう他のパイプとは、畜舎内の家畜が生活する居住空間である各畜房に飼料を送り込むための飼料の搬送通路である。
なお、図3のように、通路部12を搬送パイプ9の軸線方向正面からみると漏斗状部14と接続部15とは上下にわたって左右方向にはほぼ同一の幅となるように形成されている。
【0019】
ネック本体11は、装着爪13によって搬送パイプ9を把持して取り付けられているが、ネック本体11の通路部12の軸線方向を鉛直方向から、所定角度回動できるように設けられている。
ただし、ネック本体11だけが搬送パイプ9に対して傾斜させることができるのではなく、ネック本体11の上部に配置されているスライド部材20および搬送パイプ9を挟んでネック本体11と嵌合しているキャップ30とを含めたスライドネック10全体が回動するものである。
なお、ネック本体11(スライドネック10全体も含め)を回動させた場合には、その回動位置でネック本体11が停止し、かつ回動時には作業者の力でも回動できるように、ネック本体11の装着爪13の搬送パイプ9の把持力が予め調整されている。把持力の調整は、装着爪13の曲率半径の調整や、搬送パイプ9の表面との間の摩擦係数を調整することで行える。
【0020】
図4(a)に、ネック本体を搬送パイプに対して鉛直方向に位置しているところ、図4(b)に、ネック本体を搬送パイプに対して鉛直方向から斜めに回動させたところを示す。
ネック本体11を搬送パイプ9に対して回動させる理由としては、搬送パイプ9の直下に畜房が存在していればネック本体11の通路部12を鉛直下向きとなる位置に設けておけばよいが、搬送パイプ9に対して水平方向に離れた位置に畜房が存在する場合には、通路部12を鉛直方向から傾ける必要があるためである。
【0021】
ネック本体11の、搬送パイプ9の軸線方向の正面側の外壁面には、最大角度表示部16が形成されている。最大角度表示部16とは、搬送パイプ9に対してネック本体11をどの位置まで回動させることができるか(最大回動角度)を表示するために形成されている模様、形状、色彩等である。
【0022】
図4に示す例では、鉛直方向に対して通路部12が左右方向に25度の角度を有する程度が最大回動角度となっている。最大回動角度は、搬送パイプ9に形成されている開口部8の位置及び大きさ並びに飼料の流動性によって決まる。
そしてこの例では、鉛直方向に対して左右方向に最大50度の範囲で回動可能としたので、左右どちらか一方方向への回動はそれぞれ25度が最大回動角度である。本実施形態の最大角度表示部16は、二等辺三角形であり、ネック本体11が鉛直方向を向いているときには底辺16bの垂直二等分線xが鉛直方向vと一致するように形成されており、頂角θが50度となるように形成されている。
【0023】
図4(b)左側に示すように、ネック本体11を飼料の搬送方向から見て左方向に傾けた場合、二等辺三角形の右辺16rが鉛直方向vと一致したときが最大回動位置である。
またここでは図示していないが、ネック本体11を飼料の搬送方向から見て右方向に傾けた場合、二等辺三角形の左辺16lが鉛直方向vと一致したときが最大回動位置である。
したがって、作業者は、ネック本体11を傾ける場合には、最大角度表示部16の両辺が鉛直方向vからどの程度傾斜しているかでどの程度まで傾けることができるかを判断しつつ作業できる。
【0024】
なお、最大角度表示部16は、このような二等辺三角形ではなく、単なる線、単なる矢印等様々な表示態様を採用することができる。
【0025】
(スライド部材)
次に、スライド部材の構成について説明する。
図5には、スライド部材の全体を示す斜視図を、図6には、スライド部材の移動方向の他方側端部からの正面図を示す。
スライド部材20は、搬送パイプ9の断面形状に倣って断面が円弧状であって、搬送パイプ9の軸線方向に延びるほぼ半割状の部材である。スライド部材20は、ネック本体11の上面と搬送パイプ9の下面との間に位置して、搬送パイプ9に形成された開口部8を開閉するように搬送パイプ9の軸線方向に沿って移動する。
【0026】
スライド部材20は、搬送パイプ9直径よりも若干大きい径の半割状(円弧が半円の部位)の部位22と、半割状の部位22よりも端縁が上方に位置する部位24(円弧が半円よりも大きい部位)とを有している。この円弧が半円よりも大きい部位が、特許請求の範囲でいう少なくとも搬送パイプの円周の半分以上を覆う箇所のことであり、以下、爪状部24と称する。
爪状部24によって、スライド部材20は搬送パイプ9に保持される。このため、スライド部材20の搬送パイプ9への取り付けが強固となる。
このように、スライド部材20が搬送パイプ9に強固に取り付けられるため、搬送パイプ9内の飼料が開口部8からスライド部材20に圧力をかけ、この圧力によってスライド部材20が径方向に広がってしまうような変形を防止できる。
【0027】
また、スライド部材20の移動方向(搬送パイプの軸線方向)の一方側端部の近傍には、開口部8を閉塞状態に移動させたときにネック本体11との間ではまりあって容易に移動しないようにするロック機構が形成されている。ロック機構としては、スライド部材20の半割状の部位22の外周壁に、内方に凹むように形成されているスライド部材側凹部25と、ネック本体11の内壁面に内方に向けて突出して形成されているネック本体側突起28とを有している。
【0028】
スライド部材20を開口部8の閉塞方向に移動させていくと、スライド部材20のスライド部材側凹部25は、ネック本体側突起28に乗り上げるようにしてネック本体側突起28をその凹みの内部に収納する。
これにより、ネック本体側突起28は、スライド部材側凹部25にはまり込む。この位置で開口部8はスライド部材20によって閉塞され、ロックされる。
【0029】
このようなロック機構を有することで、スライド部材20の開口部8の閉塞方向への移動が、搬送パイプ9内の飼料の搬送方向と対向する(逆方向)であったとしても、飼料がスライド部材20の一端側端部を押圧してスライド部材20が開口部8を開口する方向に移動してしまうことを防止できる。
なお、スライド部材20を開口部8が開口する方向に移動させる場合には、作業者がスライド部材20を、他端側方向に引っ張るか、または押すかしてスライド部材側凹部25がネック本体側突起29を脱するような力を加える。
【0030】
なお、スライドネック10には、スライド部材20を開口部8を開口状態に移動させたときにネック本体11との間ではまりあって容易に移動しないようにする第2のロック機構が設けられていてもよい。
ここでは図示しないが、第2のロック機構としては、スライド部材20の移動方向(搬送パイプの軸線方向)の一方側端部の近傍であって、スライド部材20の半割状の部位22の外周壁に、内方に凹むように形成された第2のスライド部材側凹部と、ネック本体11の内壁面に内方に向けて突出して形成されているネック本体側突起とを有している。
【0031】
このように第2のロック機構を設けることにより、スライド部材20の開口部8の閉塞方向への移動が、搬送パイプ9内の飼料の搬送方向と一致する(順方向)であったとしても、飼料がスライド部材20の一端側端部を押圧してスライド部材20が開口部8を閉塞する方向に移動してしまうことを防止できる。
【0032】
また、スライド部材20の一端側端部の先端部26は、尖鋭となるように形成されているとよい。
このように一端側端部の先端部26が尖鋭であると、スライド部材20が開口部8を閉塞方向に移動させたとき、開口部8から飼料が落下中であっても飼料にスライド部材20が切り込むことができる。このため、スライド部材20が開口部8を閉塞したときに、スライド部材20が飼料を挟み込んでしまうことを防止できる。
【0033】
また、スライド部材20の半割状の部位22の上端部近傍は、ネック本体11によって保持されている。すなわち、ネック本体11の装着爪13以外の部位における上端部19の内壁面がスライド部材20の半割状の部位22の外壁面に当接し、スライド部材20の半割状の部位22が外方に広がらないように押さえている。
このように、ネック本体11の上端部19の内壁面によってスライド部材20を外方から変形を防止するように押さえつけているので、飼料の圧力によってスライド部材20が径方向に広がってしまうような変形を防止できる。
【0034】
なお、スライド部材20の半割状の部位22の上端部近傍の外壁面を押さえるのは、ネック本体11の内壁面でなくともキャップ30の内壁面であってもよい。
この構成については後述する。
【0035】
スライド部材20の他方側端部には、下方に向けて突出する操作用突出片38が形成され、操作用突出片38には、操作用の器具を取り付け可能な取り付け穴39が形成されている。
操作用突出片38は、スライド部材20を搬送パイプ9の軸線方向に移動させるために作業者が操作するための部位である。操作用の器具を取り付けてもよいし、作業者が操作用突出片38を直接手で持って移動操作を行ってもよい。
【0036】
取り付け穴39は、操作用突出片38の左右両側面(搬送パイプ9の軸線方向からみた場合の左右)に形成されているので、単なる紐状の部材や単なる棒状の部材だけでなく、リンク機構を利用した器具などの複雑な構造な器具の取り付けも可能である。
【0037】
スライド部材20の一端側端部の下面には、下方に突出する突起部29が形成されている。
このような突起部29は、スライド部材20を開口部8の閉塞方向に移動させたときには、この突起部29がネック本体11の通路部12の一端側における上端部内壁面に当接する。このため、突起部29は、開口部8の閉塞時にスライド部材20がネック本体11の通路部12を完全に閉じる機能を有する。
また、スライド部材20を開口部8の開口方向に移動させたときには、この突起部29がネック本体11の通路部12の他端側における上端部内壁面に当接する。このため、突起部29は、スライド部材20がネック本体11から抜け落ちないような抜け止めの機能を有する。
【0038】
なお、図7にスライドネック全体を搬送パイプに対して回動させた際の、スライド部材の搬送パイプの軸線方向からみた正面図を示す。
図7の(a)はスライド部材20の円弧の長さが、搬送パイプ9の円周よりも半分未満の場合、図7の(b)はスライド部材20の円弧の長さが、搬送パイプ9の円周よりも半分以上の場合である。
スライド部材20の円弧の長さが短いと、搬送パイプ9に対して傾けた際に、開口部8とスライド部材20との間で隙間が生じて飼料がこぼれ落ちてしまう。
しかし、本実施形態のように、スライド部材20の円弧の長さを搬送パイプ9の円周の半分以上の長さにすれば、搬送パイプ9に対して傾けても開口部8がスライド部材20によって閉塞されており、開口部8との間に隙間は生じ無い。
【0039】
(キャップ)
次に、キャップについて説明する。
キャップ30は、ネック本体11の上部と嵌合してネック本体11およびスライド部材20を搬送パイプ9に保持させるための部材である。
キャップ30は、搬送パイプ9の形状に倣って円弧状に形成され、搬送パイプ9の上面に当接するパイプ押さえ部31と、左右両側面においてネック本体11の上部側面の嵌合部17に嵌合する鉤状部32とを有している。
鉤状部32は、内方側に突出する鉤32aを有しており、この鉤32aがネック本体11の側面に形成されている嵌合部17の下面にはまり込むことにより、キャップ30がネック本体11と嵌合する。本実施形態では、鉤状部32は、キャップ30の両側面において、搬送パイプ9の軸線方向に沿った一端側端部と他端側端部のそれぞれに形成されている。
【0040】
なお、キャップ30が、スライド部材20の半割状の部位22の上端部近傍を外側から保持していてもよい。
この場合、ネック本体11よりもスライド部材20の半割状の部位22が上方に位置するようにネック本体11が構成されており、かつキャップ30の一端側端部の鉤状部32と他端側端部の鉤状部32の間に、スライド部材20の半割状の部位22を外側から保持する保持部34(図1参照)が形成される。すなわち、キャップ30の保持部34の内壁面がスライド部材20の半割状の部位22の外壁面に当接し、スライド部材20の半割状の部位22が外方に広がらないように押さえている。
このように、キャップ30によってスライド部材20を外方から変形を防止するように押さえつけている構成にすることで、飼料の圧力によってスライド部材20が径方向に広がってしまうような変形を防止できる。
【符号の説明】
【0041】
8 開口部
9 搬送パイプ
10 スライドネック
11 ネック本体
12 通路部
13 装着爪
14 漏斗状部
15 接続部
16 最大角度表示部
17 嵌合部
19 ネック本体の上端部
20 スライド部材
22 半割状の部位
24 爪状部
25 スライド部材側凹部
26 先端部
28 ネック本体側突起
29 突起部
30 キャップ
31 パイプ押さえ部
32 鉤状部
32a 鉤
34 保持部
38 操作用突出片
39 取り付け穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料を搬送する搬送パイプから飼料を落下させる位置に設けられ、飼料を落下させるために搬送パイプに形成された開口部を開閉するように搬送パイプの軸線方向に沿って移動するスライド部材を有するスライドネックにおいて、
搬送パイプの下部外周側を覆うとともに、搬送パイプとの間に前記スライド部材をスライド可能に保持し、開口部から落下した飼料を通過させるための通路を有するネック本体と、
搬送パイプの上部外周側を覆い、ネック本体の上部と嵌合するキャップとを具備し、
前記スライド部材は、搬送パイプの断面形状に倣った円弧状に形成されており、
前記ネック本体または前記キャップの内壁面が、スライド部材の円弧状の端縁の外周面に当接してスライド部材の変形を防止するように設けられていることを特徴とするスライドネック。
【請求項2】
前記スライド部材には、少なくとも搬送パイプの円周の半分以上を覆う箇所が1または複数設けられていることを特徴とする請求項1記載のスライドネック。
【請求項3】
前記スライド部材を開口部が閉塞状態となるように移動させた位置においては、前記スライド部材と前記ネック本体との間でロックがかかるロック機構を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のスライドネック。
【請求項4】
前記ロック機構は、
前記スライド部材の外壁面に内方に凹むように形成されたスライド部材側凹部と、
前記ネック本体の内壁面に内方に突出するように形成されたネック本体側突起とを有することを特徴とする請求項3記載のスライドネック。
【請求項5】
前記スライド部材の移動方向の端部であって、移動時に搬送パイプの開口部を通過する側の一方側端部は、先端が尖鋭に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載のスライドネック。
【請求項6】
前記スライド部材の移動方向の他方側端部には、下方に向けて突出する操作用突出片が形成され、
該操作用突出片には、操作用の器具を取り付け可能な取り付け穴が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項記載のスライドネック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234698(P2011−234698A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111172(P2010−111172)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【特許番号】特許第4602472号(P4602472)
【特許公報発行日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000150453)株式会社中嶋製作所 (8)
【Fターム(参考)】