説明

スライドファスナー用スライダー

【課題】線条ファスナーエレメントをテープの側縁に編み込み、または織り込んだ薄形のファスナーチェーンを的確かつ円滑に開閉操作ができるスライダーを提供する。
【解決手段】スライダー1の胴体2にファスナーチェーン21を挿通できるY字状のガイド溝8を設け、上下の翼板3の一方の内面19に、案内柱6の両側および案内柱6の内端15から後口14にかけて内側へ隆起する中仕切10を設け、この中仕切10の頂面16は肩口13側を後口14側よりも高く、全体が傾斜する斜面に形成して、ファスナーテープ22の側縁から露呈するファスナーエレメント23の噛合頭部25を載置して誘導でき、案内柱6と後口14の間で左右のファスナーエレメント23の噛合頭部25を噛み合わせる。案内柱6の両側では、ファスナーエレメント23が左右に傾斜したり、テープ22面に極端に落ち込むことを防ぎ、スライダー1を円滑に摺動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、線条スライドファスナーのスライダーであって、コイル状またはジグザグ状に形成した線条ファスナーエレメントをファスナーテープの一側縁上に取り付けたファスナーチェーン、特にファスナーエレメントを編み込み、あるいは織り込んでファスナーエレメントの噛合頭部側がファスナーテープから露呈し、芯紐を備えていない扁平な薄い形態の線条スライドファスナーチェーンに用いることができるスライドファスナーのスライダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライダー胴体における上翼板の内面で案内柱の両側基部に翼板から一定の高さで隆起する隆起部を設け、この隆起部に連なる形で後口側へ向けて先端が尖った先端部を有し、かつ先端部と隆起部との間を楔形突条で連接し、隆起部、楔形突条、先端部によって中仕切を形成し、これらの各部材の縁部を角状に形成した中仕切を備えた構成とすることで、ファスナーエレメントの噛合頭部を隆起部から先端部まで載置し誘導できるスライドファスナー用スライダーが図17に示すように知られている。
【0003】
さらに、従来公知のスライドファスナーのスライダーとして、図18に示すようなタイプのスライダーが知られている。このスライダーに設置する中仕切は、案内柱の内側の端部から胴体の後口にかけて、下翼板の長手方向中央に翼板から一定の高さで隆起する形態に形成し、胴体に設けた案内柱の両側の隅角基部には一切中仕切を設置しないタイプのスライダーである。
【特許文献1】特開平9−37817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前項で述べた図17のスライダーは、翼板の内面に設けた中仕切が、案内柱の両側と案内柱から後口側にかけて設けた中仕切が、翼板の内面から一定の高さで突設し、さらに隆起部、楔形突条、先端部の中仕切の縁部が角状を呈しているため、スライダーをファスナーエレメントに沿って摺動させるとき、中仕切を高く形成すると翼板とファスナーチェーンとの摩擦抵抗が大きくなり、低く形成するとファスナーエレメントが落ち込んで噛合動作が不安定となることがあった。また中仕切の縁部が角状を呈しているため、スライダーの摺動時に摺動動作によって、ファスナーエレメントに損傷を与えかねない。またスライダーの摺動が円滑に行えない恐れがあるなどの問題点がある。
【0005】
図18に示す従来公知のスライドファスナーのスライダーは、スライダーの胴体における下翼板上に設置する中仕切は、案内柱の内端から後口にかけて設置する。従って案内柱の両側には中仕切は存在しない。このタイプのスライダーにおけるガイド溝に対し、ファスナーストリンガーを胴体の肩口から挿入した場合、左右のファスナーストリンガーが噛合した噛合頭部は、胴体の後口側においては中仕切の表面に載置されるため、ファスナーチェーンにある程度の横方向のテンションが働いたとしても、安定した噛合状態を保持できる。
【0006】
しかし案内柱の両側においては、横引張荷重すなわち図示の矢印方向のテンションがファスナーストリンガーに働くと中仕切がないため、ファスナーストリンガーはガイド溝内において、ファスナーエレメントにおける噛合頭部を胴体の下翼板に圧接させ、かつファスナーエレメントの反転する連結部を上翼板のフランジ側の隅角部分に圧接してファスナーエレメントがスライダーに対して傾斜状態に配置されるので、ファスナーストリンガーの摺動がきわめて困難となり、スライダーを摺動させる際摺動抵抗が大きく、そのうえファスナーエレメントがスライダーとの摺接によって噛合頭部側に損傷を与える結果となる。特にファスナーエレメント内に芯紐が存在しない編み込み、または織り込みタイプの扁平な薄いファスナーエレメントに対しては、その横引張荷重が強く働く程、ファスナーエレメントが傾斜状態に配置されたまま、ファスナーストリンガー同士が噛み合ってしまう傾向があり問題がある。
【0007】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項1記載の発明は、スライダーの胴体にファスナーチェーンを挿通し、Y字状のガイド溝内であって、案内柱を中心にして設置する、上下の翼板のうち一方の翼板の内面に設ける中仕切の表面、すなわち頂面をスライダーの後口側から肩口側に向って高くなる斜面を呈する形状に形成し、スライダーをファスナーチェーンに挿通して用いるとき、必要以上にファスナーエレメントの噛合頭部部分がファスナーテープに落ち込むこと、すなわちファスナーチェーンに横方向のテンションが加わった状態でスライダーを摺動させても、案内柱の側方におけるファスナーストリンガーが胴体のガイド溝内で傾斜することを防ぎ、的確かつ円滑にスライダーを摺動させることができる形態のスライドファスナー用スライダーを提供することが主たる目的である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、スライダーは表面に引手を取り付けるための取付部を備えた上翼板と、これと対向する下翼板とを案内柱によって連結したタイプのスライダーにおいて、ガイド溝内に形成する斜面状を呈する中仕切は、ファスナーチェーンのうちファスナーエレメントを取り付けたファスナーテープの裏側面と対向する、胴体の翼板の内面に中仕切を設け、ファスナーチェーンを円滑に誘導し、かつ案内柱と後口の間に設置した中仕切の表面において確実にファスナーチェーンを噛み合わせることができるスライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体に設置する中仕切は、胴体の後口側から案内柱の側方の基部にかけて形成し、ファスナーテープの一側縁上に取り付けたファスナーエレメントを的確、かつ円滑にガイドすることができるスライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体における案内柱の両側に設置する中仕切は、細幅状の隆起部から形成し、この隆起部はスライダーの摺動方向、すなわちファスナーチェーンにおけるスライダーが摺動する方向と同一の方向に配し、ファスナーストリンガーにおけるファスナーエレメントの噛合頭部をスライダーの胴体の肩口から、円滑にガイド溝内へ向けてガイドできるスライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体における案内柱の側方に設置する中仕切は、一定幅の頂面を備え、この頂面における前面および側面は、翼板の内面に対して斜面状を呈するなだらかな面で連設することで、ファスナーストリンガーにおける一側縁上に取り付けたファスナーエレメントの噛合部分を、円滑にガイドすることができるスライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体における中仕切の後口側の先端に細幅状で平行な部分を延設し、この平行な部分で左右のファスナーエレメントが噛合した部分を確実に胴体外へ排出し、また胴体外から導入することができるスライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体における中仕切は、ガイド溝内に設置した隆起部に向けて漸次幅広くなるように連設することによって、ファスナーチェーンにおけるファスナーエレメントの噛合頭部をガイド溝内において円滑、かつ容易にガイドできるスライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、上下に対向する一対の翼板3を案内柱6によって連結し、一対の翼板3の間にはファスナーチェーン21を挿通することができるY字状のガイド溝8を備えたスライドファスナー用スライダー1において、スライダー1の胴体2における一方の翼板3の内面19に、他方の翼板3に向けて突出する中仕切10を設け、この中仕切10は後口14側よりも肩口13側の方が、ガイド溝8の内側へ突出する量を大きくとり、中仕切10の表面すなわち頂面16を後口14側から肩口13側へ向けて高くなる斜面を呈する形態に形成した。特に線条ファスナーエレメント23をファスナーテープ22の一側縁上に直接編み込み、あるいは直接織り込んだファスナーチェーン21に適したスライドファスナー用スライダーを主な構成とするものである。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダー1の表面に引手取付部30を備えた上翼板4と、この上翼板4と対向する位置にあって、案内柱6によって連結した下翼板5とから胴体2を形成し、この胴体2のガイド溝8内に形成した中仕切10の表面の斜面は、ファスナーチェーン21のうちファスナーエレメント23を取り付けたファスナーテープ22の一面とは反対側の面と対向する翼板3に中仕切10を形成したスライドファスナー用スライダーである。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダー1の胴体2におけるガイド溝8内に設ける中仕切10は、胴体2の後口14から案内柱6の両側の基部9にかけて形成したスライドファスナー用スライダーである。なお案内柱6の両側とは、ファスナーテープ22に対してスライダー1が摺動する方向と実質的に平行に延びる側面を指す。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダー1の胴体2における案内柱6の両側に形成する中仕切10は、細幅状の隆起部11から形成し、この隆起部11は、スライダー1の摺動方向と同一な方向に配設したスライドファスナー用スライダーである。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダー1の胴体2における案内柱6の側方に設置する中仕切10は、一定の幅で形成した頂面16を備え、この頂面16の前面17および側面18は翼板3の内面19とは斜面によって連設したスライドファスナー用スライダーである。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダー1の胴体2のガイド溝8内に設ける中仕切10は、後口14側の先端に細幅状で両側が平行な平行部20を延設し、この平行部20は翼板3から一定の高さで形成したスライドファスナー用スライダーである。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダー1の胴体2のガイド溝8内に設ける中仕切10は、平行部20から案内柱6の側方に設けた隆起部11にかけて、漸次幅広くなる形態に連設したスライドファスナー用スライダーである。
【発明の効果】
【0021】
この出願の効果として、請求項1記載の発明は、一対の翼板を案内柱によって連結し、翼板の間にファスナーチェーンを挿通可能なガイド溝を備えたスライドファスナー用スライダーにおいて、スライダーの胴体における一方の翼板の内面に、他方の翼板に向けて突出する中仕切を設け、中仕切は後口側よりも肩口側の方が突出量を大きく形成し、中仕切の頂面を肩口側へ向けて高くなる斜面に形成したことによって、下記の効果を奏する。
【0022】
ファスナーテープの一側縁上に線条ファスナーエレメントを取り付け、特に線条ファスナーエレメントの内部に芯紐を挿通しない編み込みタイプ、あるいは織り込みタイプの扁平で薄いファスナーストリンガーに最も適したスライダーであって、胴体のガイド溝内に設置した中仕切の表面が肩口側を高く後口側を低く斜面で連設しているので、扁平で薄いファスナーエレメントの噛合頭部を正確に中仕切に誘導して、案内柱の側方においてファスナーエレメントが横方向に傾斜、すなわちファスナーテープの側縁を押圧して、ファスナーエレメントの噛合頭部をファスナーテープ面に傾斜して落ち込むことを未然に防ぐとともに、背丈の低い後口側の中仕切上で左右のファスナーエレメントを噛み合わせることができ、ファスナーストリンガーの噛合が円滑かつ容易に行える効果がある。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、スライダーは引手取付部を備えた上翼板と、上翼板と対向する位置にあって、案内柱によって連結した下翼板とから形成し、中仕切に形成した斜面は、ファスナーチェーンのうちファスナーエレメントを取り付けたファスナーテープの一面とは反対側の面と対向する翼板に形成したことによって、スライダーの胴体におけるガイド溝内に設置する斜面状の頂面を備えた中仕切はファスナーチェーンのうちファスナーエレメントを編み込み、または織り込んだファスナーテープの一面とは反対の面と対向する上下の何れかの翼板に形成し、ファスナーエレメントの噛合頭部を確実に誘導できる効果がある。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、中仕切は胴体の後口から案内柱の両側の基部にかけて形成したことによって、ファスナーエレメントをファスナーテープの一側縁上に編み込み、または織り込んだファスナーエレメントを胴体のガイド溝内に設けた中仕切により、的確かつ円滑に誘導させることができる効果がある。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、案内柱の両側に形成している中仕切は、細幅状の隆起部から形成し、該隆起部は、スライダーの摺動方向と同一な方向に配設したことによって、胴体の案内柱の両側に設けた中仕切は、スライダーの摺動軌道と一致させたので、ファスナーエレメントにおける噛合頭部を的確かつ円滑にガイドすることができる効果がある。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、案内柱の側方に設置する中仕切は、一定幅の頂面を備え、該頂面は翼板の内面とを斜面によって連設したことによって、中仕切の頂面に連なる前面および側面を翼板の内面とを斜面によって連結しているから、ファスナーテープの側縁から露出しているファスナーエレメントの噛合頭部分が摺動によって、中仕切に当接することで磨耗あるいは損傷を与えることがなく、ファスナーエレメントを円滑にガイドすることができる効果がある。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、中仕切には、後口側の先端に細幅状で両側が平行な平行部を延設し、該平行部は翼板から一定高さで形成したことによって、ガイド溝内に設けた平行部により、左右のファスナーエレメントの噛合頭部が噛み合った状態で、スライダーの胴体における後口から排出または挿入する動作が円滑かつ容易に行うことができる効果がある。
【0028】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、中仕切は、平行部から隆起部にかけて漸次幅広くなるように連設したことによって、ガイド溝内に設けた中仕切は、平行部から隆起部にかけて幅広く形成しているから、ファスナーチェーンにおけるファスナーエレメントの噛み合い操作を円滑かつ容易に噛合および分離動作ができる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
この発明におけるスライドファスナー用スライダーは、金属製であり胴体2は上翼板4、下翼板5から形成された翼板3を案内柱6で上下を連結している。案内柱6は上下の翼板3の間の空間を左右のファスナーテープ22の一側縁上に取り付けたファスナーエレメント23を分離して挿通する左右の肩口13と、ファスナーエレメント23を噛合状態で挿通する一つの後口14とを連通するY字状のファスナーエレメントをガイドするガイド溝8を形成する。翼板3には両側縁にフランジ7を突設し、上下の翼板3のうち、一方のフランジ7は他方のフランジ7よりも背丈が高く形成されており、翼板3には案内柱6の周辺から胴体2の後口14にかけて内側へ隆起する中仕切10を設ける。このタイプのスライダー1を用いるファスナーチェーン21は、経編み組織から編成された経編テープ27の側縁上にコイル状の線条ファスナーエレメント23を編み込んだ芯紐がなく扁平で薄い形態のファスナーチェーン21を用いる。
【0030】
スライダー1は、前記ファスナーチェーン21に適するように、図1〜10に示すタイプのスライダー1を用い、翼板3のうち下翼板5は両側にきわめて背丈の低いフランジ7を形成する。そして、上下の翼板3の内面19には案内柱6の基部9から胴体2の後口14の手前にかけて胴体2の内側へ隆起する中仕切10を設ける。この中仕切10のうち、ファスナーエレメント23が取り付けられたファスナーテープ22の一面とは反対側の面と対向する翼板3に形成され、この中仕切10は、図1および3に示すように中仕切10の肩口13側先端が案内柱6の両側に渡って形成された隆起部11によって形成され、さらに翼板3の内面19に対して肩口13側が高く後口14側が低くなるような頂面16によって形成するとともに、かつ案内柱6の両側の基部9における中仕切10の隆起部11の頂面16はスライダー1の摺動方向と一致する方向に一定の幅で延設されている。この頂面16と下翼板5の内面19と連設している面、すなわち前面17と側面18とはなだらかな斜面から形成する。頂面16は肩口13側の前端が一番高く形成することによって、ファスナーテープ22に編み込まれたファスナーエレメント23の噛合頭部25を図6に示すように、頂面16上へ的確に載置し、ガイドする。
【0031】
中仕切10の後口14側の先端には、下翼板5から一定の高さで隆起し摺動方向に延びる長尺な細幅状の平行部20を頂面16が斜面から形成される中仕切10に連設する。前記平行部20は下翼板5の内面19から一定の高さで形成されている。なお、前記平行部20の高さは中仕切10の頂面16のうち一番低い部分と同じ高さであって、前記中仕切10のうち後口14側の一番低い面と前記平行部20の肩口13側の先端が連設し、かつ前記中仕切10は平行部20との連設部分から隆起部11にかけて漸次幅広くなるように形成されている。さらに中仕切10は平行部20との連設部分から肩口13側へ向けて漸次高くなる頂面16を斜面から形成し、また、後口14側の下翼板5の中央に凹状の凹溝12が設けられている。ファスナーエレメント23の噛合した噛合頭部25が図5および図8に示すように、スライダー1の摺動時に平行部20に当接し、凹設した凹溝12に左右のファスナーテープ22の側縁が当接できるように形成し、スライダー1の摺動時における抵抗を小さくする。
【0032】
一方、翼板3のうち上翼板4の内面は、図4に示すように、上翼板4の両側の縁部に下翼板5のフランジ7よりも背丈の高いフランジ7を突設している。前記上翼板4および下翼板5の各フランジ間の隙間はファスナーテープ22だけが挿通できる寸法に設定されており、前記上翼板4のフランジ7の内壁7’によって、ファスナーエレメント23の反転する連結部26をガイドしている。またフランジ7の肩口13側の内面は上翼板4の内面にかけて斜面状に形成し、ファスナーテープ22に編み込まれたファスナーエレメント23における反転する連結部26の導入を容易にする。また中央長手方向に案内柱6から後口14側にかけて中仕切10を凸設し、この中仕切10の中央にスライダー1を停止させるための停止機構における停止爪用の爪孔28を穿設する。この爪孔28の上方、つまり上翼板4の表面側には、一端に停止爪を備えた爪杆29および引手31を収容できる引手取付部30を図1に示すように形成されている。
【0033】
このスライダー1は、図5〜8に示すB−B,B’−B’,B”−B”の断面の如く、図6に示すように、ファスナーエレメント23の噛合頭部25が中仕切10の頂面16に載置する。また、図7に示すように案内柱6と後口14との間の中仕切10においてはファスナーテープ22に編み込まれたファスナーエレメント23の噛合頭部25が中仕切10の頂面16に載置する。さらに図8に示すように左右のファスナーエレメント23の噛合頭部25が噛合したファスナーチェーン21は、左右の噛合頭部25が平行部20上に載置される。
【実施例1】
【0034】
図1〜10に示した実施例1のスライドファスナー用スライダーは、スライダー1の胴体2が、アルミニウム合金、亜鉛合金などの金属をダイカスト成形手段によって成形する。胴体2は上翼板4と下翼板5とを案内柱6で連結し、翼板3のうち上翼板4は両側の側縁26にフランジ7を突設し、上翼板4の表面には引手31を取り付けるための引手取付部30を設け、この取付部30内に自動停止装置付の停止爪を備えた爪杆29を収容し、上翼板4の内面には中央長手方向に案内柱6から後口14側にかけて隆起する中仕切10を凸設し、中仕切10の中央には停止爪が出没できる爪孔28を穿設する。また翼板3のうち、ファスナーエレメント23が取り付けられたファスナーテープ22の一側縁側と対向する上翼板4のフランジ7のうち、スライダー1の摺動方向と平行な部分の内壁7’は上翼板4の内面19に対して垂直に立ち上がって形成されている。
【0035】
翼板3のうちファスナーエレメント23が取り付けられたファスナーテープ22の一面とは反対側の面と対向する下翼板5の内面19には、図2,3に示すように、両側にきわめて背丈の低いフランジ7を設け、案内柱6の内端15を越えて両側中程から胴体2の後口14に向けて内側へ隆起する中仕切10を設け、この中仕切10は肩口13側が一番高く後口14側が低くなる傾斜した頂面16から形成し、案内柱6の両側に形成されている隆起部11においては頂面16がスイラダー1の摺動方向に沿って一定の幅から形成し、ファスナーエレメント23の噛合頭部25を載置してガイドできるように形成する。なお、中仕切10の頂面16と下翼板5の内面19とは、隆起部11の前面17と側面18からなるなだらかな斜面から形成されているのでファスナーエレメント23の噛合頭部25を頂面16に容易に乗り上げることができるので円滑にガイドされる。
【0036】
中仕切10は案内柱6の内端15からは両側のフランジ7と平行になるように形成し、先端に細幅状で両側が平行する平行部20を連設し、平行部20の頂面16は円弧状で下翼板5から一定の高さで隆起している。そして平行部20の両側には一段とくぼんだ凹状を呈する凹溝12を設け、案内柱6の両側面中間から平行部20にかけての中仕切10は左右のファスナーエレメント23の噛合頭部25を図5に示すようにガイドし、平行部20の直前で左右のファスナーエレメント23の噛合頭部25が噛合できるように形成し平行部20において噛合を整え保持し、後口14へ送る。この際平行部20で噛合頭部25の噛み合いを支え、凹溝12でファスナーテープ22の側縁を受け入れてガイドを円滑に行う。
【0037】
このスライダー1の特徴は、スライダー1の胴体2に設ける中仕切10は、図1に示すように肩口13側が高く平行部20側が低く傾斜する頂面16から形成する。その機能は図5〜8に示すように、図6の状態ではファスナーエレメント23の噛合頭部25は前面17および側面18の斜面を乗り越え中仕切10の両側の頂面16上へ載置され胴体2に挿入される。図7の状態では摺動性を確保しつつ噛合頭部25が落ち込み変形するのを防ぐ。そして図8の状態では左右のファスナーエレメント23の噛合頭部25が正常な形で噛合できるように形成し、スライダー1を摺動させる。ファスナーチェーン21は、図9に示すように胴体2内でファスナーエレメント23はゆとりもった状態で噛合している。このように傾斜した中仕切10を設けることで、頂面16と、頂面16と対向する上翼板4との間隔は肩口13から平行部20にかけて漸次大きくなり、図6に示すように比較的クリアランスの少ない中仕切10の隆起部11の先端で確実に噛合頭部25の位置を固定し、その後図7に示すような傾斜面に沿って、極力その位置関係を保持したまま左右のファスナーエレメント23が噛合できる位置までファスナーエレメント23を案内することができる。なお案内柱6の側方に設ける隆起部11の頂面16は必ずしも平坦面でなくとも側面18と頂面16が円弧状に連設されていてもよい。
【0038】
一方、上翼板4の側縁に沿って突出して形成されているフランジ7のうち、スライダー1の摺動方向と平行な部分の内壁7’は上翼板4の内面19に対して垂直に立ち上がって形成されている。このような形状とすることで、例えば図10に示すように、左右からファスナーテープ22にテンションが加わった状態であってもファスナーエレメント23の反転する連結部26がフランジ7と上翼板4の内面19の隅角部分に収容することができるので連結部26がフランジ7の角度に押し付けられて損傷を与えるのを防止できる。
【0039】
このファスナーチェーン21はファスナーエレメント23にポリアミドあるいはポリエステルのモノフィラメントをコイル状またはジグザグ状に形成し、経編み組織から編まれたファスナーテープ22の側縁にファスナーエレメント23を編み込み、ファスナーテープ22の一面に現出しているようウエール32面をテープの裏側とする。また変形例として編み込みの代りにニードル織機によるファスナーエレメント23を織り込んでもよい。さらにファスナーエレメント23をファスナーテープ22の一側縁上に縫い糸を用いて縫着してもよいし、ファスナーエレメント23の内側に芯紐を配し、それとファスナーテープ22を縫い糸によって縫着した一般的なファスナーエレメントにも適用できる。
【実施例2】
【0040】
図11に示す実施例2のスライドファスナー用スライダーは、上翼板4側にファスナーテープ22が表出し、その裏側にファスナーエレメント23が編み込まれているいわゆる裏使いスライドファスナーであって、前記実施例1とは逆に、図1〜10に記載された下翼板5の中仕切10が上翼板4に形成されている。詳細には、上翼板4の内面19に案内柱6の中程の両側から後口14側にかけて肩口13側が高く、後口13側が低い斜面を呈する頂面16から形成した中仕切10を設け、中仕切10の先端には上翼板4から一定の高さで内側へ隆起する平行部20を連続状に設け、平行部20は細幅状で両側が平行し、表面は円弧状を呈して中仕切10に連設されている。この平行部20の両側には案内柱6の幅と同じに一段とくぼんだ凹状の凹溝12を設け、また中仕切10の中央には停止機構の停止爪用の爪孔28が穿設されている。使用するファスナーチェーン21はファスナーテープ22が表面に配され、裏面にファスナーエレメント23が編み込まれたファスナーチェーン21である。このように中仕切10に形成された斜面は、ファスナーチェーン21のうちファスナーエレメント23が取り付けられたファスナーテープ22の一面とは反対側の面と対向する翼板3に形成されているので実施例1と同様の効果が期待できる。
【実施例3】
【0041】
図12,13に示す実施例3のスライドファスナー用スライダーは、スライダー1の胴体2が上翼板4と下翼板5とを案内柱6で連結し、下翼板5上で案内柱6の内端15から後口14へ向けて中仕切10を設け、この中仕切10は肩口13側が高く、後口14側が低く傾斜する頂面16から形成し、中仕切10の内端15の幅は案内柱6の幅よりも広く形成してファスナーエレメント23の噛合頭部25を容易に載置してガイドできる。また中仕切10の先端には両側が平行状に形成した平行部20が連設されているタイプのスライダー1であっても機能は実施例1のスライダー1と同じである。また変形例として、図14に示したように中仕切10の始端部分を案内柱6の内端15より案内柱6の肩口13側へ移動することも可能である。
【実施例4】
【0042】
図15, 16に示す実施例4のスライドファスナー用スライダーは、スライダー1の胴体2が上翼板4と下翼板5とを案内柱6で上下連結し、下翼板5の内面19であって案内柱6の内端15から後口14へ向けて、平行部20と同一高さで隆起する中仕切10を設け、この中仕切10の平面形状は第1実施例のスライダー1と同一の形状であり、中仕切10の縁部すなわち側面18は、外方の背丈の低いフランジ7の内側と平行状に形成し、この中仕切10の前端すなわち案内柱6側から案内柱6の両側に形成した隆起部11からなる中仕切10へと連結し、案内柱6の両側に設けた中仕切10は頂面16が肩口13側を高く案内柱6の内端15に当接する部分を低く全体が斜面状を呈するように形成して、案内柱6の内端15部分の中仕切10と平行部20と同高の中仕切10とを平坦状に接続したタイプのスライダー1である。
【0043】
このスライダー1は、胴体2の肩口13から左右のファスナーストリンガー24を挿入すると、挿入の際ファスナーエレメント23の噛合頭部25をファスナーテープ22の側縁から突出する形、またファスナーエレメント23がファスナーテープ22に対して左右に傾斜するのを防いだ形に姿勢を整えて、案内柱6の両側の中仕切10上へ誘導し載置する。載置されたファスナーエレメント23の噛合頭部25は案内柱6と後口14の間の中仕切10上で、露呈した左右のファスナーエレメント23の連結部26を上翼板4の両側縁に背丈の高いフランジ7を設け、このフランジ7によってファスナーエレメント23を内方へ押圧することにより、左右の噛合頭部25を余裕のある案内柱6と平行部20との間の中仕切10上で噛み合わせ、噛み合わせたファスナーチェーン21は胴体2の後口14から胴体2外へ排出する。また噛み合ったファスナーチェーン21を胴体2の後口14から挿入すると、噛み合ったファスナーエレメント23の噛合頭部25は、スライダー1の摺動によって案内柱6の内端15により左右に分離させ、各ファスナーエレメント23を案内柱6の両側に配設した中仕切10へ誘導し、肩口13から胴体2外へ排出し、ファスナーチェーン21の開閉操作が行える。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明のスライドファスナー用スライダーは、ファスナーの体裁および機能を重視する物品、例えば衣服、カバンなどに取り付けて使用し、スライダーの摺動操作および噛合動作が円滑に行え、そのうえ摺動抵抗を小さく形成したものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1に基づく、スライドファスナー用スライダーの側面図である。
【図2】同上のスライダーの下翼板の内面を示す平面図である。
【図3】同上のスライダーの下翼板の内面を示す斜視図である。
【図4】同上のスライダーの上翼板の内面を示す斜視図である。
【図5】同上のスライダーの下翼板上にファスナーエレメントを配した平面図である。
【図6】同上のスライダーの図5におけるB−Bの断面図である。
【図7】同上のスライダーの図5におけるB’−B’の断面図である。
【図8】同上のスライダーの図5におけるB”−B”の断面図である。
【図9】同上のスライダーにおけるファスナーチェーンの後口側の端面図である。
【図10】同上のスライダーにおけるファスナーチェーンに横方向のテンションが働いた説明図である。
【図11】実施例2に基づく、スライドファスナー用スライダーの側面図である。
【図12】実施例3に基づく、スライドファスナー用スライダーの側面図である。
【図13】同上のスライダーの下翼板の内面を示す平面図である。
【図14】同上のスライダーの変形例に基づく下翼板の内面を示す平面図である。
【図15】実施例4に基づく、スライドファスナー用スライダーの側面図である。
【図16】同上のスライダーの下翼板の内面を示す平面図である。
【図17】公知のスライダーの上翼板の内面を示す斜視図である。
【図18】他の公知のスライダーにおける横方向のテンションが働いた断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 スライダー
2 胴体
3 翼板
4 上翼板
5 下翼板
6 案内柱
8 ガイド溝
9 基部
10 中仕切
11 隆起部
13 肩口
14 後口
16 頂面
19 内面
20 平行部
21 ファスナーチェーン
22 ファスナーテープ
23 ファスナーエレメント
24 ファスナーストリンガー
30 引手取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の翼板3を案内柱6によって連結し、翼板3の間にファスナーチェーン21を挿通可能なガイド溝8を備えたスライドファスナー用スライダー1において、スライダー1の胴体2における一方の翼板3の内面19に、他方の翼板3に向けて突出する中仕切10を設け、中仕切10は後口14側よりも肩口13側の方が突出量を大きく形成し、中仕切10の頂面16を肩口13側へ向けて高くなる斜面に形成してなることを特徴とするスライドファスナー用スライダー。
【請求項2】
スライダー1は引手取付部30を備えた上翼板4と、上翼板4と対向する位置にあって、案内柱6によって連結した下翼板5とから形成し、中仕切10に形成した斜面状の頂面16は、ファスナーチェーン21のうちファスナーエレメント23を取り付けたファスナーテープ22の一面とは反対側の面と対向する翼板3に形成してなる請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項3】
中仕切10は胴体2の後口14から案内柱6の両側の基部9にかけて形成してなる請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項4】
案内柱6の両側に形成している中仕切10は、細幅状の隆起部11から形成し、該隆起部11は、スライダー1の摺動方向と同一な方向に配設してなる請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項5】
案内柱6の側方に設置する中仕切10は、一定幅の頂面16を備え、該頂面16は翼板3の内面19とを斜面によって連設してなる請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項6】
中仕切10には、後口14側の先端に細幅状で両側が平行な平行部20を延設し、該平行部20は翼板3から一定高さで形成してなる請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項7】
中仕切10は、平行部20から隆起部11にかけて漸次幅広くなるように連設してなる請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−22547(P2009−22547A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189220(P2007−189220)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】