説明

セクタ駆動装置及びこれを含む撮像装置

【課題】セクタを作動させたときに外部に漏れる作動音を抑制できる構造を備えたセクタ駆動装置を提供する。
【解決手段】筐体2と、前記筐体内で揺動して開口2HLを開閉するセクタ11〜14とを備えたセクタ駆動装置1であって、筐体2の内面の少なくとも一部に消音効果を有する吸音部材2SAが設けられている。セクタ駆動装置1は、筐体の内面に吸音部材を備えているので、内部で発生した作動音をこの吸音部材により低減できる。よって、外部へ漏れる作動音を抑制できる。筐体2は、櫛歯状に形成した骨格部と、前記櫛歯の歯と歯の隙間に前記吸音部材を設けた吸音部とが一体に成型されている構造を採用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セクタを揺動させて開口を開閉するセクタ駆動装置に関する。より詳細には、作動音が外部に漏れることを抑制する構造を備えたセクタ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セクタ駆動装置と称するものには、撮像装置内に配置されるシャッタ装置、絞り装置、さらに撮像装置の前側に配置されるレンズバリア装置などがある。例えば、特許文献1はレンズバリア装置を備えるレンズ鏡筒について開示する。レンズバリア装置は、外部から進入する砂塵等から撮像装置のレンズを保護するために前面側に一体的に組込まれている。レンズバリア装置はモータを駆動源として揺動自在に設けたセクタ(バリア羽根)を開閉して、不使用時に開口を閉じることでレンズ鏡筒内のレンズを保護する。
【0003】
【特許文献1】特開平7−20369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにレンズバリア装置等のセクタ駆動装置は、モータを駆動源としてセクタを揺動させるので駆動した時にある程度の作動音が発生することが避けられない。特に、レンズバリア装置のように撮像装置の前面に配置される装置は、その作動音が耳障りな騒音となる場合がある。そして、このようなレンズバリア装置が取付けられた撮像装置は、それ自体の商品価値を下げてしまうことになる。そのためレンズバリア装置などのセクタ駆動装置については、作動音を外部に漏らさない構造を備えることが望まれているが、十分な消音機能を備えたセクタ駆動装置が未だに提供されていないのが実情である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、セクタを揺動させたときに外部に漏れる作動音を抑制できる構造を備えたセクタ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、筐体と、前記筐体内で作動して開口を開閉するセクタとを備えたセクタ駆動装置であって、前記筐体の内面の少なくとも一部に消音効果を有する吸音部材が設けられているセクタ駆動装置により達成できる。
【0007】
本発明によると、筐体の内面に吸音部材を備えているので、内部で発生した作動音をこの吸音部材により低減できる。よって、外部へ漏れる作動音を抑制できるセクタ駆動装置を提供できる。
【0008】
また、小型化を促進するためなどの理由で、前記筐体内に前記セクタを駆動する駆動源が配置されているセクタ駆動装置で作動音が大きくなる場合でも外部へ漏れる作動音を確実に抑制できる。
【0009】
また、前記筐体は、櫛歯状に形成した骨格部と、前記櫛歯の歯と歯の隙間に前記吸音部材を設けた吸音部とが一体に成型されている構造を採用できる。このような構造であれば、簡易かつ低コストにて製造できる。また前記吸音部材が、前記筐体の内面に貼着されている構造を採用してもよい。
【0010】
また、前記吸音部材は、前記セクタが作動したときに、当接する可能性がある領域を含むように配置されていることがより好ましい。このような構造としておくと、セクタが筐体に当接した場合の当接音も抑制できる。
【0011】
上記で記載のセクタ駆動装置を含む撮像装置は、作動音を確実に抑制できるので、音の静かな信頼性の高い製品として提供できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によるセクタを揺動させたときに外部に漏れる作動音を抑制できる構造を備えたセクタ駆動装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。ここでは、セクタ駆動装置の一形態としてレンズバリア装置について説明する。レンズバリア装置は撮像素子やフィルム等で撮影するときに開口を開いて撮影可能とし、非撮影時には開口を閉じて撮影レンズ等を保護する。図1はレンズバリア装置1が閉じの状態にあるときの様子を示した図、図2は図1のレンズバリア装置1の側部断面図、図3はレンズバリア装置1に含まれている揺動リング3を取出して示した図である。本レンズバリア装置1は、撮像装置となるカメラのレンズ鏡筒の前側に装着して使用される。なお、ここでは図1及び図2に示すように、X,Y,Zの3軸を仮想で設定し、発明の理解を容易とするために用いる。図2におけるZ方向での左側がレンズバリア装置1の前面側であり、右側が背面側となる。この背面側に図示のようにレンズ鏡筒4がセットされる。
【0014】
図1から図3を参照して、レンズバリア装置1の構成を説明する。このレンズバリア装置1は揺動する4枚のセクタ(羽根)11〜14を含んでいる。より具体的には、レンズバリア装置は第1の内セクタ11及び第2の内セクタ12、並びに第1の外セクタ13及び第2の外セクタ14を含んでいる。これらのセクタ11〜14はセクタ基板2に揺動自在に装着されている。セクタ基板2の中央部には撮影用の開口2HLが形成されている。また、図1で確認できるように、これらのセクタ11〜14はセクタ基板2の所定位置に立設した2つの支軸15、16を中心に揺動する。第1の内セクタ11及び第1の外セクタ13は支軸15を中心に、また第2の内セクタ12及び第2の外セクタ14は支軸16を中心に揺動するようになっている。そして、図2で確認できるように、第1の内セクタ11と第2の内セクタ12とは同じ面内に存在し、閉じたときには互いの端部が当接するように配設されている。第1の外セクタ13及び第2の外セクタ14は、僅かな間隔をおいて、内セクタ11、12の前面側に配置されている。これらのセクタ11〜14については後において詳述する。
【0015】
セクタ11〜14の背面側(図2で右側)には揺動部材としての揺動リング3が配置されている。図3は、揺動リング3を確認し易いように取出して示している。この揺動リング3が周方向に回動することにより前記セクタ11〜14を揺動させる。揺動リング3は周部に歯列37を備えている。この歯列37はX方向に回転軸があるウォームギア9Wと噛合している。揺動リング3はウォームギア9Wから駆動力を受けて両方向に回転する。この揺動リング3は中央に撮影用の開口3HLを有している。
【0016】
揺動リング3には2個のコイルバネ21、22の一端を係止されるための係止部31、32が形成されている。そして、コイルバネ21,22の他端が位置する周辺部には、開口33、34が形成されている。そして、第1の内セクタ11及び第2の内セクタ12のそれぞれは、コイルバネ21,22の他端が係合される突起部11PR,12PRを有している。これらの突起部11PR,12PRは、開口33、34を介して揺動リング3の反対側に頭部を突出させている。この頭部にコイルバネ21,22の他端を係合させることで、第1の内セクタ11及び第2の内セクタ12のそれぞれにコイルバネ21,22の付勢力を加える構造となっている。なお、より具体的には図1で示すように、第1の内セクタ11の突起部11PRがコイルバネ21の他端に係合し、第2の内セクタ12の突起部12PRがコイルバネ22の他端に係合している。
【0017】
上記揺動リング3の背面側(図2で右側)には、モータ基板5が配置されている。モータ基板5は撮影用の開口5HLを有している。モータ基板5には駆動源としてのモータ6が固定されている。モータ6のロータ軸にはロータカナ(ギア)7が固定されている。ロータカナ7は、2段ギアに形成されている中間ギア8の一方のギア8aと噛合している。中間ギア8の他方のギア8bは、ウォームギア9Wと一体に回転するギア9Cと噛合している。なお、モータ6のロータ軸はZ軸と平行であり、ウォームギア9Wの回転軸はX軸と平行である。よって、中間ギア8の一方のギア8b及びギア9Cとして、例えばかさ歯車、ねじ歯車等を用いることにより回転軸方向が変換されている。
【0018】
また、本レンズバリア装置1は、上記のように揺動リング3の背部にモータ基板5が配置され、この基板5にセクタ11〜14を駆動するモータ6が配置されている。
【0019】
また、図2で確認できるように、セクタ基板2の周部が円筒状に加工されて、本装置1の筐体(ハウジング)として機能している。このハウジング内にはセクタ11〜14及び揺動リング3が配置されるだけでなく、モータ基板5に固定されたモータ6も一体に収納されている。よって、このようにユニット化されているので本装置1は独立した小型の光学部品として扱える。例えば本装置1は鏡筒4に対して螺合するように形成して着脱自在とすることができる。
【0020】
そして、上記のように本レンズバリア装置1では、モータ6からの駆動力がウォームギア9Wを介して揺動リング3へ伝達される構成である。このような構成では、ウォームギア9Wの駆動力(回転力)は歯列37により揺動リング3へ伝達される。しかし、これとは逆に揺動リング3から生じる動きに対しては、ウォームギア9Wがこれを規制する。すなわち、モータ6と揺動リング3との間に、ウォームギア9Wが配置されていることで駆動力が揺動リング3へ不可逆的に伝達されるように構成されている。
【0021】
図4は、レンズバリア装置1が開きの状態にあるときの様子を示した図である。この図4の開きの状態は、図1の閉じ状態からX方向で見てウォームギア9Wを時計方向に所定数回転させたときに形成されるこのとき揺動リング3が反時計方向CCWへ所定量移動する。このような揺動リング3の動作に基づいて、各セクタ11〜14が開口部から退避して開きの状態が形成される。開きの状態が形成された後は、閉じの場合と同様に揺動リング3はウォームギア9Wによりその動きが規制されるよって、セクタ11〜14は安定に開きの状態を保持する。
【0022】
なお、本レンズバリア装置1は、第1の内セクタ11及び第2の内セクタ12が上記構成による駆動力を受けて揺動され、これらの内セクタ11,12に従動して第1の外セクタ13及び第2の外セクタ14が揺動される。従動させる構造については後述する。
【0023】
次に、本実施例のレンズバリア装置1が備えている外部に作動音を漏らさないための吸音構造について説明する。なお、本願発明者は、本発明を成す以前に、レンズバリア装置の筐体に複数の開孔(貫通口)を設けると消音効果があることを確認した。しかし、レンズバリア装置はカメラのレンズを保護するものであり、筐体に孔を形成すると内部に砂塵が侵入してレンズバリア装置の効果が減衰してしまう。そこで、レンズバリア装置本来の機能を維持しつつ作動音を外部に漏らさない構造を検討して、以下に示す構造を特定したものである。
【0024】
再度、図1を参照すると、筐体としても機能している円筒状の基板2は、骨格部2BNが樹脂材により櫛歯状に形成され、その櫛歯の隙間を埋めるように吸音部2SAが配置されている。さらに、図2を参照して詳細に説明すると、基板2は前面側の円形部2TPとその外周縁に立設した側壁部2SDとを含んでいる。側壁部2SDがカメラ側の鏡筒4に接続されている。すなわち、側壁部2SDは管構造となる。この側壁部2SDが骨格部2BNと吸音部2SAとを交互に配置した構造となっている。
【0025】
上記のように筐体(本実施例では基板2)の内面に、吸音部2SAが設けてあるので内部で発生した作動音を効率良く消音できる。よって、モータを筐体内に配置した構造であっても作動音が外部に漏れるのを抑制できる。筐体の骨格部2BNを形成するための部材としては、例えばPC(ポリカーボネイト)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)などの樹脂材を用いることができる。また、上記吸音部2SAを形成するための部材としては、シリコンゴムなどを好適に使用できる。本実施例の筐体は、予め準備した金型にシリコンゴムなどの吸音部材を間隔をもって配置しておき、ここにPC、ABSなどの樹脂材を投入してインサート成型することで一体的に製造できる。よって、従来の設備をそのまま流用できるので低コストでの実施が可能である。
【0026】
なお、筐体全体をシリコンゴム等の部材で製造すれば、より高い消音効果が期待できるが、外力に対する剛性が低くなってしまう。そこで、本実施例のように樹脂材で櫛歯状の骨格部を形成し、その間に吸音部材を配置することで所定の剛性を確保しつつ、消音構造を実現するのが好ましい。
【0027】
さらに、消音効果のある筐体の変形例として、上記のように骨格部を櫛歯形状に加工せず、通常の管形状とし内面に吸音部材を貼着した構造を採用することも可能である。吸音部材を筐体の内面全体に貼着してもよいし、上記のように間隔をもって吸音部材を貼着してもよい。ここで、吸音部材として例えばシリコンゴム、ポリウレタン等の薄いシートを筐体の内面に貼り付けてもよいし、シリコン系接着剤を筐体の内面に塗布し、これを硬化させて吸音部材とするようにしてもよい。
【0028】
図5は、レンズバリア装置1に含むセクタ11〜14の開閉動作の様子が確認できるように、取り出して示した図である。図5(A)は図1に対応する閉じの状態のとき、同(B)は図4に対応する開き状態のときの様子を示しているなお、図5では内セクタ11、12を実線で示し、外セクタ13、14を点線で示している。内セクタ11及び12がモータからの駆動力を受けて駆動される。これに対して、外セクタ13及び14のそれぞれには、内セクタ11、12が当接する突起部(13MT−1,13MT−2及び14MT−1,14MT−2)が形成されている。よって、内セクタ11、12が揺動したときに、外セクタ13,14を従動させることができる。
【0029】
ところで、図5(B)で示す開きの状態が形成されたときに、経時変化、部品誤差などにより外セクタ13,14が筐体の内面に衝突(当接)してしまう場合がある。この場合には、通常の作動音だけでなくセクタの当接音がさらに発生することになる。本実施例のレンズバリア装置1は、この点にも対処している構造となっている。この点を再度、図1を参照して説明する。
【0030】
前述したように吸音部2SAは、シリコンゴムなどの弾性体で形成できる。よって、外セクタ13,14が筐体に当接する領域を少なくとも含むように吸音部2SAを配置してある。このように配置しておけば、仮に外セクタ13,14が筐体の内面に当接しても、当接するのが弾性材で形成した吸音部2SAとなるので当接音の発生を抑制できる。このように、本実施例のセクタ駆動装置1は当接音の発生も抑制できるより好ましい構造となる。なお、図3で示している駆動リング3には外周に基板2の内面に当接するガイド突起38が形成されている。この突起38は吸音部2SAを避けるように配置することで、駆動リング3をスムーズに駆動できる。
【0031】
以上説明したように、本実施例のレンズバリア装置1は筐体の内面に消音部材が配置されているので作動音に基づく騒音が外部に漏れるのを抑制できる。よって、音漏れの少ない静かなレンズバリア装置として提供できる。したがって、本実施例のレンズバリア装置1を備える撮像装置は作動音が静かな製品となるので商品価値が向上する。
【0032】
以上、本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。上記実施例では、セクタ駆動装置の一例としてレンズバリア装置について説明したが、シャッタ装置など本発明を適用することで作動音を同様に軽減できることは言うまでもない。また、上記実施例のセクタは、回転軸を中心として揺動するタイプであったが、直線的に作動するタイプや観音開きのタイプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】レンズバリア装置が閉じの状態にあるときの様子を示した図である。
【図2】図1のレンズバリア装置の側部断面を示した図である。
【図3】レンズバリア装置に含まれている揺動リングを取出して示した図である。
【図4】レンズバリア装置が開きの状態にあるときの様子を示した図である。
【図5】レンズバリア装置に含むセクタの開閉動作の様子が確認できるように、取出して示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 レンズバリア装置
2 セクタ基板(筐体)
2BN 骨格部
2SA 吸音部
6 モータ(駆動源)
11、12 内セクタ(セクタ)
13、14 外セクタ(セクタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内で作動して開口を開閉するセクタとを備えたセクタ駆動装置であって、
前記筐体の内面の少なくとも一部に消音効果を有する吸音部材が設けられている、ことを特徴とするセクタ駆動装置。
【請求項2】
前記筐体内には、前記セクタを駆動する駆動源が配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のセクタ駆動装置。
【請求項3】
前記筐体は、櫛歯状に形成した骨格部と、前記櫛歯の歯と歯の隙間に前記吸音部材を設けた吸音部とが一体に成型されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のセクタ駆動装置。
【請求項4】
前記吸音部材が、前記筐体の内面に貼着されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のセクタ駆動装置。
【請求項5】
前記吸音部材は、前記セクタが作動したときに、当接する可能性がある領域を含むように配置されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のセクタ駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のセクタ駆動装置を含むことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−148175(P2007−148175A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344776(P2005−344776)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】