説明

セグメントピースの脱落防止装置

【課題】エレクターの真空把持装置の吸着力が消失してもセグメントピースを確実に支持することができる脱落防止装置を提供する。
【解決手段】セグメントピース9の脱落防止装置15は、セグメントピース9に設けられた孔12に嵌合される円柱状のロッド16と、ロッド16に設けられ、トンネル10の径方向に延出し、ロッド16を孔12に嵌合するとセグメントピース9の切羽側連結面11に当接するつば部17と、ロッド16を孔12内に挿脱するための挿脱手段18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントを構築するためのエレクターの真空把持装置の吸着力が消失してもセグメントピースの脱落及び破損を防止するセグメントピースの脱落防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工法によりトンネルを構築する際は、シールド機で掘削されたトンネルの内周面に沿ってセグメントを設置する。このセグメントを構成するセグメントピースは、シールド機のテール部に設けられたエレクターにより把持され、所定の位置に移動されてトンネル内周面に設置される。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、エレクターでセグメントピースを把持する方法として、真空把持装置を用いてセグメントピースを吸着するとともに、セグメントに設けられた孔に円柱状のロッドを挿入する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−207795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、停電や真空ポンプの故障により吸着力が消失してもロッドだけでセグメントピースを把持できる程度にロッドの径を大きく、かつ、ロッドの長さを長くしなければならない。それに伴い、セグメントピースに設けられる孔が大きくなるので、セグメントピースの強度が低下してしまうという問題点があった。また、この問題を解決するために、ロッドの径を小さくしたり、ロッドの長さを短くすると、吸着力が消失した場合に、セグメントピースの重量でロッドが切断したり、セグメントピースの孔の周囲が破損してセグメントピースが落下してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、エレクターの真空把持装置の吸着力が消失してもセグメントピースを確実に支持することができる脱落防止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のセグメントピースの脱落防止装置は、トンネルの内周に覆工体を構成するセグメントピースを設置するためのエレクターの真空把持装置で当該セグメントピースを吸着して把持する際にセグメントピースが脱落するのを防止するセグメントピースの脱落防止装置であって、セグメントピースに、その端面からトンネルの長さ方向に設けられた孔に嵌合されるためのロッドと、前記ロッドに設けられ、前記ロッドの径外方向へ延出し、前記ロッドを前記孔に嵌合した状態でセグメントピースの前記端面に当接するつば部とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0007】
本発明によるセグメントピースの脱落防止装置によれば、セグメントピースに設けられた孔に嵌合されるロッドと、ロッドに設けられ、ロッドの径外方向へ延出し、ロッドを孔に嵌合するとセグメントピースの端面に当接するつば部とを備えるので、エレクターの真空把持装置でセグメントピースを把持しているときに、何らかの原因で真空把持装置の吸着力が消失しても、ロッド及びつば部でセグメントピースの重量を支持するので、ロッドが切断したり、セグメントピースの孔の周囲が破損すること無く、セグメントピースを支持することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記ロッドを前記孔内に挿脱するための挿脱手段を更に備えることを特徴とする。
本発明によるセグメントピースの脱落防止装置によれば、ロッドをセグメントピースの孔に挿脱するための挿脱手段を備えるので、ロッドの挿脱を短時間で容易にすることができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、前記つば部は、セグメントピースの前記端面に対して平行な断面の形状が円形又は楕円形であることを特徴とする。
本発明によるセグメントピースの脱落防止装置によれば、エレクターの真空把持装置でセグメントピースを把持し、所定の位置へ移動させているときに吸着力が消失してセグメントピースを本脱落装置で支持する状態になっても、つば部は、セグメントピースの端面に対して平行な断面の形状が円形又は楕円形で角が無いので、セグメントピースに傷をつけない。
【0010】
第4の発明は、第1又は3の発明において、前記つば部は、前記ロッドの中心軸よりもトンネルの径方向外側の部分が前記端面に当接する面積が、当該中心軸よりもトンネルの径方向内側の部分が前記端面に当接する面積よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によるセグメントピースの脱落防止装置によれば、ロッドの中心軸よりもトンネルの径方向外側の部分が端面に当接する面積が、当該中心軸よりもトンネルの径方向内側の部分が端面に当接する面積よりも大きくなるように形成されているので、トンネルの径方向外側のつば部のセグメントピースを支持する支持力が大きくなる。すなわち、セグメントピースを所定の位置へ移動させているときにトンネルの下部付近又は中部付近で吸着力が消失した場合には、セグメントピースの重量をロッド及びトンネルの径方向外側のつば部で支持することになるが、その径方向外側のつば部はセグメントピースの端面に当接する面積が大きくなるように形成されているのでセグメントピースを十分に支持することができる。一方、トンネルの上部付近で吸着力が消失した場合には、セグメントピースの重量をエレクター、ロッドの側面及びトンネルの径方向内側のつば部で支持することになるが、このときのセグメントピースの荷重の多くをエレクターが支持するので、ロッド及びつば部には大きな重量が作用しない。したがって、径方向内側のつば部を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセグメントピースの脱落防止装置により、エレクターの真空把持装置の吸着力が消失してもセグメントピースを確実に支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るセグメントピースの脱落防止装置の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るシールド機1の側断面図である。なお、添付の図面において、本発明の説明に不要な部分の図示は省略している。図1に示すように、シールド機1は、地中を掘削するためのカッターヘッド2を備えたフード部3と、カッターヘッド2の駆動装置4、このカッターヘッド2により掘削された土砂を排出するための排土機構(図示しない)、及びシールド機1を前進させるための複数のシールドジャッキ5を備えた中胴部6と、セグメントリング7を組立てるためのエレクター8を備え、シールドジャッキ5により中胴部6と連結されたテール部19とから構成されている。
【0015】
そして、シールド機1が所定の距離だけ掘進すると、テール部19の内方にてエレクター8を用いて、複数のセグメントピース9を環状に組付けてセグメントリング7を構築する。
図2は、本実施形態に係るセグメントピース9を連結してセグメントリング7を構築した状態を示す斜視図である。
【0016】
図2に示すように、環状のセグメントリング7は、例えば、複数のセグメントピース9a〜9eをトンネル10の周方向に連結してセグメントリングR2を組立て、このセグメントリングR2に他の複数のセグメントピース9a〜9eをトンネル10の軸方向に連結するとともに、周方向にも連結してセグメントリングR3を組立て、これを繰り返すことにより構築される。
【0017】
セグメントリング7は、セグメントピース9同士の周方向の連結部が、軸方向に隣接するセグメントリングR1、R2、R3で周方向に位置をずらした千鳥状になるように構築される。
【0018】
なお、本実施形態においては、セグメントリングR1、R2、R3がそれぞれ5つのセグメントピース9a〜9eにて構成される場合について説明したが、5つに限定されるものではなく、トンネル10の径、用途、設計荷重、施工性等を考慮して設計により決定される。
【0019】
図3及び図4は、本実施形態に係るセグメントピース9を示す平面図及び側面図である。図3及び図4に示すように、セグメントピース9は、環状のセグメントリング7の一部を形成する曲板状のものであって、所定の厚みを有する。
セグメントピース9のトンネル軸方向の連結面のうち切羽側連結面11には、円柱状の孔12が坑口側に向かってトンネル軸方向に設けられている。
【0020】
図5及び図6は、本実施形態に係るエレクター8及び脱落防止装置15を示す側面図及び正面図である。
【0021】
図5及び図6に示すように、エレクター8は、セグメントピース9を把持するための真空把持装置13と、把持したセグメントピース9を移動させるための移動機構14とを備える。
エレクター8は、セグメントピース9を真空把持装置13で吸着することにより把持し、移動機構14で所定の位置へセグメントピース9を移動させる。
【0022】
セグメントピース9の移動時に停電や真空ポンプの故障により吸着力が消失してもセグメントピース9が脱落しないように支持するための脱落防止装置15は、セグメントピース9に設けられた孔12に嵌合される円柱状のロッド16と、ロッド16に設けられ、トンネル10の径方向に延出し、ロッド16を孔12に嵌合した状態でセグメントピース9の切羽側連結面11に当接するつば部17と、ロッド16を孔12内に挿脱するための挿脱手段18とを備える。
【0023】
円柱状のロッド16の直径は、セグメントピース9に設けられた孔12にわずかなクリアランスで嵌合挿入できるように設計されている。また、つば部17の取付け位置は、ロッド16を孔12に嵌合挿入したときにロッド16の先端が孔12の奥に当接するように設計されている。
【0024】
つば部17は、セグメントピース9の切羽側連結面11に対して平行な断面の形状が円形である。なお、円形に限らず、楕円形でもよい。また、つば部17は、円盤状に形成され、ロッド16の中心軸よりもトンネル10の径方向外側の外側つば部17aが切羽側連結面11に当接する接触面積が、ロッド16の中心よりもトンネル10の径方向内側の内側つば部17bが切羽側連結面11に当接する接触面積よりも大きくなるようにロッド16に対して偏心した状態で取付けられている。
【0025】
挿脱手段18は、ロッド16を水平に移動させるジャッキであり、ロッド16を図5中の右向きに移動させることによって孔12内に嵌合挿入し、図5中の左向きに移動させることによって孔12内から抜き出す。
【0026】
エレクター8でセグメントピース9を移動する際には、まず、真空ポンプを稼動させて真空把持装置13でセグメントピース9を吸着して把持し、移動機構14でセグメントピース9を脱落防止装置15の近傍に移動させるとともに、セグメントピース9の孔12の中心軸とロッド16の中心軸とを同軸上にセットする。
【0027】
次に、図7に示すように、挿脱手段18のジャッキによりロッド16をセグメントピース9側に水平移動させ、図8に示すように、ロッド16を孔12内に挿入して嵌合させるとともに、つば部17が切羽側連結面11に当接するように、脱落防止装置15をセグメントピース9に取付ける。
【0028】
そして、セグメントピース9を移動機構14にて所定の位置へ移動させ、セグメントリング7を構築する。
【0029】
上述したように本実施形態のセグメントピース9の脱落防止装置15によれば、セグメントピース9に設けられた孔12に嵌合される円柱状のロッド16と、ロッド16に設けられ、ロッド16の径外方向へ延出し、ロッド16を孔12に嵌合するとセグメントピース9の端面に当接するつば部17とを備えるので、エレクター8の真空把持装置13でセグメントピース9を把持しているときに、何らかの原因で真空把持装置13の吸着力が消失しても、ロッド16及びつば部17でセグメントピース9の重量を支持するので、ロッド16が切断したり、セグメントピース9の孔12の周囲が破損すること無く、セグメントピース9を支持することができる。
【0030】
また、エレクター8の真空把持装置13でセグメントピース9を把持し、所定の位置へ移動させているときに吸着力が消失してセグメントピース9を脱落防止装置15で支持する状態になっても、つば部17は、セグメントピース9の端面に対して平行な断面の形状が円形で角が無いので、セグメントピース9に傷をつけない。
【0031】
さらに、外側つば部17aの切羽側連結面11に当接する接触面積が、内側つば部17bの切羽側連結面11に当接する接触面積よりも大きくなるように形成されているので、外側つば部17aのセグメントピース9を支持する支持力が大きくなる。すなわち、セグメントピース9を設置位置へ移動させているときにトンネル10の下部付近又は中部付近で吸着力が消失した場合には、セグメントピース9の重量をロッド16及び外側つば部17aで支持することになるが、外側つば部17aは切羽側連結面11に当接する接触面積が大きくなるように形成されているのでセグメントピース9を十分に支持することができる。一方、トンネル10の上部付近で吸着力が消失した場合には、セグメントピース9の重量をエレクター8、ロッド16の側面及び内側つば部17bで支持することになるが、このときのセグメントピース9の重量の多くをエレクター8が支持するので、ロッド16及び内側つば部17bには大きな荷重が作用せず、内側つば部17bを小さくしても不都合は無い。
【0032】
そして、ロッド16をセグメントピース9の孔12に挿脱するための挿脱手段18を備えるので、ロッド16の挿脱を短時間で容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係るシールド機の側断面図である。
【図2】本実施形態に係るセグメントピースを連結してセグメントリングを構築した状態を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係るセグメントピースを示す平面図である。
【図4】本実施形態に係るセグメントピースを示す側面図である。
【図5】本実施形態に係るエレクター及び脱落防止装置を示す側面図である。
【図6】本実施形態に係るエレクター及び脱落防止装置を示す正面図である。
【図7】本実施形態に係る脱落防止装置をセグメントピースに取付ける状態を示す図である。
【図8】本実施形態に係る脱落防止装置をセグメントピースに取付ける状態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 シールド機
2 カッターヘッド
3 フード部
4 駆動装置
5 シールドジャッキ
6 中胴部
7 セグメントリング
8 エレクター
9、9a、9b、9c、9d、9e セグメントピース
10 トンネル
11 切羽側連結面
12 孔
13 真空把持装置
14 移動機構
15 脱落防止装置
16 ロッド
17 つば部
17a 外側つば部
17b 内側つば部
18 挿脱手段
19 テール部
R1、R2、R3 セグメントリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周に覆工体を構成するセグメントピースを設置するためのエレクターの真空把持装置で当該セグメントピースを吸着して把持する際にセグメントピースが脱落するのを防止するセグメントピースの脱落防止装置であって、
セグメントピースに、その端面からトンネルの長さ方向に設けられた孔に嵌合されるためのロッドと、
前記ロッドに設けられ、前記ロッドの径外方向へ延出し、前記ロッドを前記孔に嵌合した状態でセグメントピースの前記端面に当接するつば部とを備えることを特徴とするセグメントピースの脱落防止装置。
【請求項2】
前記ロッドを前記孔内に挿脱するための挿脱手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のセグメントピースの脱落防止装置。
【請求項3】
前記つば部は、セグメントピースの前記端面に対して平行な断面の形状が円形又は楕円形であることを特徴とする請求項1に記載のセグメントピースの脱落防止装置。
【請求項4】
前記つば部は、前記ロッドの中心軸よりもトンネルの径方向外側の部分が前記端面に当接する面積が、当該中心軸よりもトンネルの径方向内側の部分が前記端面に当接する面積よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は3に記載のセグメントピースの脱落防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−108638(P2009−108638A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283924(P2007−283924)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(507137634)三菱重工地中建機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】