説明

セシウム除去材

【課題】水溶液中あるいは大気中に含まれるセシウムを選択的に吸着でき、かつ吸着物の捕集が容易なセシウム除去材を提供する。
【解決手段】フェロシアン化金属化合物0.01〜99質量%及び結着剤(ただし、金属原子を含む酸化物を除く)99.99〜1質量%を含む成形体からなるセシウム除去材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セシウム除去材に関する。さらに詳しくは、水溶液中あるいは大気中に含まれる有害な放射性セシウムを効率よく除去できるセシウム除去材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子力発電所等の放射性物質取扱施設から発生する放射性物質を含む廃液や排ガスから放射性物質を自然環境中に排出させないことが求められている。特に放射性物質の中でも放射性セシウム137の半減期は30年と長く、γ線はその後も減衰するとはいえ、長期にわたり自然環境中に放射されることになる。また、ガス化し易いため広く環境中に飛散し、水溶性が高く生体に蓄積し易い。その為、生体内に取り込まれると、体内被曝による生体への悪影響が非常に大きく、より深刻である。この放射性セシウム137を除去する方法として、ゼオライトを用いて汚染水から除去する方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このゼオライトを用いる方法は、ナトリウム、カルシウム等の金属成分も同時に吸着する可能性があり、放射性セシウム137のみを選択的に除去する方法ではないため、効率が良くない。
一方、放射性セシウム137を含むセシウム及びその化合物と選択的に反応して吸着作用を有する化合物としてフェロシアン化金属化合物が一般的に知られている(特許文献2参照)。しかしながら、これらは一般的には微細な結晶を有する微粒子状の顔料であり、微粒子状態のままで使用すると、セシウム及びその化合物を吸着した後の廃液や排ガス中から微粒子状態の吸着物を回収することとなり、その捕集が困難であり効率的な回収方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−79999号公報
【特許文献2】特開平5−66295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フェロシアン化金属化合物を用いてセシウム及びその化合物(以下、単に「セシウム」ということがある。)を除去するに当たって、セシウムを吸着した後の吸着物の捕集が容易であり、効率的なセシウム除去材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、フェロシアン化金属化合物及び結着剤を特定割合で含む成形体からなるセシウム除去材により、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のセシウム除去材を提供するものである。
1.フェロシアン化金属化合物0.01〜99質量%及び結着剤(ただし、金属原子を含む酸化物を除く)99.99〜1質量%を含む成形体からなるセシウム除去材。
2.前記フェロシアン化金属化合物が一般式Axy[Fe(CN)6]で示される上記1記載のセシウム除去材。
(式中、Aは、K、Na、NH4のいずれかであり、Mは、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれかであり、かつx、yは式x+ny=4(xは0〜3の数である)を満たす。nはMの価数を表す。)
3.結着剤が金属石鹸、金属原子を含む酸化物を除く無機フィラー、界面活性剤及びワックスから選択された少なくとも1種である上記1又は2に記載のセシウム除去材。
4.成形体が顆粒状又はフレーク状である上記1〜3に記載のセシウム除去材。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フェロシアン化金属化合物及び結着剤を含む成形体からなるセシウム除去材を用いることにより、水溶液中あるいは大気中に含まれるセシウムを選択的に吸着でき、かつ吸着物の回収が容易であるので、セシウムを効率よく除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のセシウム除去材は、フェロシアン化金属化合物及び結着剤を含む成形体からなるセシウム除去材である。以下、フェロシアン化金属化合物を分散してなる成形体を構成する成分及びその他添加し得る成分について説明する。
【0008】
(成形体を構成する成分)
[フェロシアン化金属化合物]
本発明において使用されるフェロシアン化金属化合物は、一般式Axy[Fe(CN)6]で示される金属塩である。ここで、式中のAは、K、Na、NH4のいずれかであり、Mは、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれかであり、かつx、yは式x+ny=4(xは0から3の数)を満たす。また、nはMの価数を表す。
上記の金属化合物の一つであり、種々の紺青の中で、特に化学式NH4Fe[Fe(CN)6]である紺青は、工業的に量産され、極めて微粒子状の顔料であり、その用途としてインキ、絵の具、化粧品などに広く使用されている安全性の高い化合物である。これらのフェロシアン化金属化合物は結晶構造として立方晶形を有し、格子内に一価の陽イオン、特にセシウムを選択的に取り込みやすい化合物である。
本発明のセシウム除去材に使用されるフェロシアン化金属化合物は、その形態が微粒子状であっても、水分等を含んだウェット状であってもよい。なお、市販の微粉品には吸着水が含まれている。
【0009】
[結着剤]
本発明において使用される結着剤は、本発明に使用されるフェロシアン化金属化合物を結着化させ成形体とする役割を有するものである。フェロシアン化金属化合物は極めて微粒子状であるので、微粒子状態のままでセシウム除去材として使用すると、セシウムを吸着後の回収・捕集について、例えば遠心分離等の回収工程を行う必要があり、設備及び運用コスト、処理時間等の観点から好ましくない。従って、セシウム除去材として使用する際に、セシウムを吸着後の回収が容易となるように、適切な形状に成形体として成形して使用する必要がある。本発明では、このように適切な形状に成形体とするために結着剤を必要とする。
本発明で使用される結着剤としては、金属石鹸、無機フィラー、界面活性剤、ワックス等が挙げられる。以下、これらの具体的な化合物について説明する。
【0010】
金属石鹸としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等が挙げられ、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムはフェロシアン化金属化合物等との結着性に優れ好ましい。
【0011】
無機フィラーとしては、特に種類を限定されず、金属原子を含む酸化物を除き、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質ないし微粉化炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラスフレーク、フライアッシュ球、カーボンナノチューブ、石炭粉末、塩基性炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミニウム粉、硫化モリブデン等が挙げられ、これらの中で特に沈降性硫酸バリウムはフェロシアン化金属化合物等との結着性に優れ好ましい。
【0012】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリル酸ジエタノールアミド等のアルキロールアマイド類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、モノカプリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0013】
アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに代表されるアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソトリデシルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、ジ(ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル)スルホコハク酸ナトリウム等のジポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸塩、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム等の脂肪酸塩等が挙げられる。
【0014】
カチオン系界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩類、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩等のアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩類等を挙げることができる。
【0015】
両性界面活性剤としては、ヤシ油アルキルベタイン等のアルキルベタイン類、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルアミドベタイン類、Z−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリームベタイン等のイミダゾリン類、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン等のグリシン類を挙げることができる。
【0016】
ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられ、特にポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスが加工温度の点で好ましい。
これらの結着剤は、それぞれを単独で使用してもよいし、また複数種を併用して使用してもよい。
【0017】
[フェロシアン化金属化合物と結着剤との配合割合]
フェロシアン化金属化合物と結着剤との配合割合は、得られる本発明のセシウム除去材中に、フェロシアン化金属化合物が0.01〜99質量%、結着剤が99.99〜1質量%、好ましくは、フェロシアン化金属化合物が1〜95質量%、結着剤が90〜5質量%を含むように配合される。フェロシアン化金属化合物が0.01質量%未満であるとセシウム除去効率が低下し、望ましくない。また、紺青が99質量%を超えると成形体としたときの強度が低下し、粉末状となる恐れがあり望ましくない。なおここで、フェロシアン化金属化合物及び結着剤の各配合割合は、フェロシアン化金属化合物と結着剤との合計量に基づくものである。
【0018】
[添加成分]
本発明のセシウム除去材には、フェロシアン化金属化合物及び結着剤とともに添加成分を必要により添加含有させることができる。添加成分としては酸化防止剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0019】
[成形体の製造方法]
本発明のセシウム除去材の適切な成形方法について以下2つの方法について説明する。
(1)上記記載のフェロシアン化金属化合物及び結着剤を前記割合で、さらに必要に応じて用いられる添加剤成分を適当な割合で配合し、ペースト状の混練物を得て、該ペースト状の混練物を造粒機にて造粒し、熱風乾燥機にて乾燥する方法である。
【0020】
この方法では、まず最初にフェロシアン化金属化合物を含むペースト状の混練物を製造する。混練物をペースト状とするために、必要に応じて、水、有機溶剤等の湿潤剤が用いられる。特に、微粉状のフェロシアン化金属化合物と結着剤として粉粒状の無機フィラーを使用する場合、ペースト状とはならないため、水、有機溶剤等の湿潤剤で適宜、ペースト状として混練物を得ることが必要である。ここで、有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、エステル系、パラフィン系、塩素系、芳香族系の有機溶剤を用いることができるが、後の乾燥工程を行う際に、発火等の危険性のない塩素系の有機溶剤が有効である。なお、湿潤剤は、2種以上を混合して使用してもよい。このようにして得られたペースト状の混練物を造粒機で適宜のサイズに造粒することにより顆粒状、ペレット状等の成形体とすることができる。造粒機としては、一般的に用いられる造粒機が使用できる。
【0021】
上記にて得られる顆粒状、ペレット状等の成形体は、主として、必要に応じて用いられる水、有機溶剤等の湿潤剤を除去するために、熱風乾燥または減圧乾燥する。この際の乾燥温度は、例えば、フェロシアン化金属化合物の一つである紺青を使用した場合、紺青の耐熱温度である140℃以下であることが望ましく、好ましい温度範囲は、使用される湿潤剤の揮発性にもよるが、通常は30℃〜130℃である。また、熱風乾燥時に用いられる熱風としては、空気であってもよいし、窒素等の不活性気体であってもよい。乾燥時間は、通常は、30分〜48時間程度である。なお、使用される湿潤剤は、完全に除去されなくてもよく、得られた顆粒状、ペレット状等の成形体の形状が維持される程度であれば、湿潤剤が残存していてもよい。
上記乾燥を行うことにより、湿潤剤が使用された場合には、湿潤剤の除去に伴ない、得られる顆粒状、ペレット状等の成形体がより多孔質となるので、その比表面積が大きくなる。従って、セシウム除去材として使用した際に、セシウムを含む水溶液中あるいは大気との接触面積が大きくなり、セシウム除去効率が高くなるので湿潤剤を用いることが望ましい。
【0022】
次に、2番目の成形方法について説明する。
(2)上記記載のフェロシアン化金属化合物及び結着剤を前記割合で、さらに必要に応じて用いられる添加剤成分を適当な割合で配合して加熱溶融し、その加熱溶融混練物をロール等にてフレーク状とする方法である。
【0023】
この方法は、成形物をフレーク状として成形する方法であり、結着剤としてワックスを使用した際に、特に望ましい方法である。フェロシアン化金属化合物及び結着剤を所定の割合で、さらに必要に応じて用いられる添加剤成分を適当な割合で配合してミキサーで加熱溶融し、又は溶融したワックスにフェロシアン化金属化合物及び添加剤を添加・混合し、その混練物をロール成形することによりフレーク状の成形体とするものである。ミキサーとしては、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バタフライミキサー等の一般的な混合機を用いればよい。加熱手段としては、攪拌熱による加熱でもよいし、外部加熱手段用いてもよい。ただし、例えば、フェロシアン化金属化合物である前記紺青の場合、耐熱温度が140℃であるので、140℃以下で加熱溶融させることが望ましい。この加熱溶融混練物は、複数本のロールにて成形され、フレーク状の成形体とされる。このフレーク状成形体は、粉砕機、ミキサー等で適宜のサイズのフレーク状成形体とされる。
【0024】
上記(1)及び(2)の2つの方法について説明したが、本発明のセシウム除去材の成形に当たっては、この2つの方法に限定されるものではない。
このようにして得られる本発明のセシウム除去材は、原子力発電所等の放射性物質取扱施設から発生するセシウムを含む廃液や排ガスを処理するに当たって、使用されるセシウム除去材の大きさに応じて、分離可能なフィルター容器内(例えば、円筒カラム、不織布、ネット等)に入れて処理することもできるし、そのまま廃液や排ガス中に入れて処理することもできる。また、防毒マスク、簡易マスク、エアコンのフィルター、空気清浄機のフィルター等に装着して使用することもできる。
【実施例】
【0025】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
紺青顔料(商品名:ミロリブルー905、式中のAはNH4、MはFe;大日精化工業株式会社製)50質量部にステアリン酸マグネシウム25質量部と沈降性硫酸バリウム25質量部を加え、ヘンシェルミキサーで10分間混合した。更に、湿潤剤として、水35質量部とエチルアルコール5質量部とを添加し、混合してウェット状ペーストを作成した。このウェット状ペーストをエックペレッター(畑鉄工所株式会社製)に投入し、0.7ミリメッシュを通過させ、顆粒状のペーストを作成した。この顆粒状のペーストを100℃の箱形乾燥機にて6時間熱風乾燥させ、顆粒状の成形体を得た。この顆粒状の成形体の平均サイズは0.65mmであり、その表面は多孔質であった。この顆粒状の成形体は、使用された紺青顔料50質量%、ステアリン酸マグネシウム25質量%、沈降性硫酸バリウム25質量%をそれぞれ含んでいることを確認した。
この顆粒状成形体を内径12ミリのカラムに30g充填し、硝酸セシウム70ミリグラム/リットル及び硫酸ナトリウム200グラム/リットルを含む硝酸セシウム水溶液(中性)500ミリリットルを2ミリリットル/分の速度で通過させた。その流出液のセシウム濃度を原子吸光分析装置(偏光ゼーマン原子吸光光度計Z−2010;(株)日立ハイテクノロジーズ製;検出限界0.006ミリグラム/リットル)にて測定し、その除染係数を求めた結果、除染係数は、1000以上であった。なお、除染係数は処理前後でのセシウムの濃度比(除染係数=処理前のセシウム濃度/処理後のセシウム濃度)で定義される。除染係数は通常、100以上であれば、除去効果が十分あるとされている
【0026】
実施例2
実施例1において、紺青を0.05質量部、ステアリン酸マグネシウム50質量部、沈降性バリウム49.95質量部とした以外は実施例1と同様の方法で顆粒状の成形体を得た。この顆粒状成形体を実施例1と同様にして測定し、その除染係数を求めた結果、除染係数は、150であった。
【0027】
実施例3
紺青顔料(商品名:ミロリブルー905、式中のAはNH4、MはFe;大日精化工業株式会社製)50質量部にポリエチレンワックス(商品名:サンワックス151P、三洋化成株式会社製)50質量部を加え、ヘンシェルミキサーで混合し、100℃にて加熱溶融させた。さらに、110℃に加熱した3本ロールに投入してフレーク状に成形し、この成形体をミキサーで粉砕し、微粉状のフレーク成形体を得た。得られた微粉状のフレーク成形体の平均サイズは、500μmであった。この微粉状のフレーク成形体は、使用された紺青顔料50質量%、ポリエチレンワックス50質量%それぞれ含んでいることを確認した。得られた微粉状のフレーク成形体の除染係数を実施例1と同様の方法で測定した結果、除染係数は、1000以上であった。
【0028】
比較例1
実施例1において、紺青を添加しないで、ステアリン酸マグネシウム50質量部と沈降性バリウム50質量部とした以外は実施例1と同様の方法で顆粒状の成形体を得た。この顆粒状成形体を実施例1と同様にして測定し、その除染係数を求めた結果、除染係数は、7.5であった。
【0029】
比較例2
実施例2において、紺青を添加しないで、ポリエチレンワックスを100質量部とした以外は実施例2と同様の方法で微粉状のフレーク成形体を得た。この微粉状のフレーク成形体を実施例1と同様にして測定し、その除染係数を求めた結果、除染係数は、4.3であった。
【0030】
上記の実施例から、本発明のフェロシアン化金属化合物及び結着剤を含む成形体からなるセシウム除去材はセシウムを効率よく捕集し、分離除去できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のフェロシアン化金属化合物及び結着剤を含む成形体からなるセシウム除去材は、水溶液中あるいは大気中に含まれるセシウムを選択的に吸着でき、かつ吸着後の吸着物を捕集する等の後処理が容易であるので、セシウムを効率よく除去することができる。従って、原子力発電所等の放射性物質取扱施設から発生するセシウムを含む廃液や排ガスからセシウムを効率よく除去できるセシウム除去材として好適である。また、防毒マスク等に設置すれば、大気中に含まれたセシウムを効率よく除去することができるので、防毒マスク、簡易マスク、エアコンのフィルター、空気清浄機のフィルターなどにも好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェロシアン化金属化合物0.01〜99質量%及び結着剤(ただし、金属原子を含む酸化物を除く)99.99〜1質量%を含む成形体からなるセシウム除去材。
【請求項2】
前記フェロシアン化金属化合物が一般式Axy[Fe(CN)6]で示される請求項1記載のセシウム除去材。
(式中、Aは、K、Na、NH4のいずれかであり、Mは、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのいずれかであり、かつx、yは式x+ny=4(xは0〜3の数である)を満たす。nはMの価数を表す。)
【請求項3】
結着剤が金属石鹸、金属原子を含む酸化物を除く無機フィラー、界面活性剤及びワックスから選択された少なくとも1種である請求項1又は2記載のセシウム除去材。
【請求項4】
成形体が顆粒状又はフレーク状である請求項1〜3に記載のセシウム除去材。

【公開番号】特開2012−251987(P2012−251987A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170575(P2011−170575)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】