説明

セメント混和材

【課題】 処理に苦慮しているアルカリ含有量の多い建設発生土を多量に使用でき、水溶性アルカリが存在することで流動性付与機能を備えており、セメントに混和材として使用した場合、従来のゲーレナイト系クリンカー混和材よりもさらに流動性に優れるセメント混和材を提供する。
【解決手段】 CASと、水溶性アルカリ0.1〜0.8質量%と、SO0.2〜1.0質量%とを含有するセメント混和材である。また、このセメント混和材はCSを更に含有することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリの多い建設発生土を使用し、水溶性アルカリが存在する流動性が良好なセメント混和材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、産業廃棄物、一般廃棄物を原料としたゲーレナイト系クリンカー混和材の開発が行われている。例えば、建設発生土を使用して、C2SとC2ASを必須成分とし、C2S100質量部に対して、C2AS+C4AFを10〜100質量部含有し、かつ、C3Aの含有量が20質量部以下であるセメント混和材を製造し、添加することで、セメントの水和熱が低下し、流動性が向上するという技術が開示されている(例えば、特許文献1、2等)。
【特許文献1】特開2004−21553号公報
【特許文献2】特開2003−277110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらゲーレナイト系クリンカー混和材は、セメント中のC3Aにナフタレン系やポリカルボン酸系の減水剤が吸着され流動性が低下するのを防ぐために、セメントの一部をC3Aを含まない混和材で代替するという骨材代替物に過ぎないものであり、混和材そのものが流動性付与機能を持つものではない。また、その原料として建設発生土を使用するが、現在処理に苦慮しているアルカリを多量に含む建設発生土を使用するものではない。
そこで、本発明は、従来のゲーレナイト系クリンカー混和材よりも、アルカリ含有量の多い建設発生土を多量に使用でき、かつ、流動性付与機能を持つセメント混和材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、処理に苦慮しているアルカリ含有量の多い建設発生土を積極的に原料として使用するとともに、SO3量をコントロールすることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、CASと、水溶性アルカリ0.1〜0.8質量%と、SO0.2〜1.0質量%とを含有するセメント混和材に関する。
また、本発明は、上記のセメント混和材の粉砕物2〜60質量%と、ポルトランドセメント40〜98質量%とを含有するセメント組成物に関する。
また、本発明は、建設発生土のアルカリ含有量を4〜8質量%に調整する工程と、セメント混和材1t当たり400〜750kgの前記建設発生土と、石灰石と、石膏とを混合し原料を調整する工程と、前記原料を1000〜1250℃で焼成し、CASと、水溶性アルカリ0.1〜0.8質量%と、SO0.2〜1.0質量%とを含有するセメント混和材を製造する工程とを含むセメント混和材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセメント混和材は、処理に苦慮しているアルカリ含有量の多い建設発生土を多量に使用でき、水溶性アルカリが存在することで流動性付与機能を備えており、セメントに混和材として使用した場合、従来のゲーレナイト系クリンカーよりもさらに流動性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明に係るセメント混和材の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0007】
本発明のセメント混和材は、CASと、水溶性アルカリと、SOを含有する。CASは化学構造式が2CaO・Al・SiOで表され、一般にゲーレナイトといわれるものである。その他の成分としては、CSを含むことが好ましい。CASの好ましい含有量は7〜50質量%である。CSは化学構造式がCaO・SiOで表され、一般にワラストナイトといわれるものである。
【0008】
水溶性アルカリの含有量は0.1〜0.8質量%、好ましくは、0.3〜0.6質量%である。0.1質量%未満では、水溶性アルカリ量が流動性向上へ及ぼす影響が小さい。0.8質量%より多ければ、分散効果が低下し、粘度が増大し、流動性が低下する。
【0009】
SO3の含有量は0.2〜1.0質量%、好ましくは、0.4〜0.8質量%である。0.2質量%未満では、水溶性アルカリが充分生成しなくなり流動性向上効果が小さくなる。1.0質量%より多ければ、水溶性アルカリが過剰となり、逆に流動性が低下する。
【0010】
本発明のセメント混和材は、建設発生土を原料とし、建設発生土に含まれるアルカリ(NaOeq.)量は4〜8質量%、好ましくは5〜7質量%である。4質量%未満では混和材中に水溶性アルカリが充分存在しなくなる場合がある。また、8質量%を超えると水溶性アルカリ量が過剰となり、逆に流動性が低下する場合がある。建設発生土に含まれるアルカリ量を4〜8質量%に調整する方法としては、アルカリ量が4〜8質量%である建設発生土を使用する方法や、種々のアルカリ量を示す建設発生土を適時混合し建設発生土の総量中のアルカリ量を4〜8質量%に調整する方法の何れでも良い。また、下記の石灰石や石膏を使用する場合は、建設発生土単独でなく、原料の総量中のアルカリ量を4〜8質量%に調整する方法でも良い。
【0011】
セメント混和材1t当たりの建設発生土の原料原単位は400〜750kg、好ましくは、550〜700kgである。400〜750kgの範囲であれば、CASが充分に生成する。
また、Ca原料として石灰石、SO原料として硫酸カルシウムを必要に応じて使用する。セメント混和材1t当たりの石灰石の原料原単位は400〜750kg、好ましくは、550〜700kgである。硫酸カルシウムとしては無水石膏、二水石膏、半水石膏の何れの形態でも良く、その種類としては天然石膏、排煙脱硫石膏、フッ酸石膏、中和石膏、石膏ボードの廃材等がある。セメント混和材1t当たりの硫酸カルシウムの原料原単位は5〜40kg、好ましくは、7〜30kgである。また、建設発生土と石灰石の使用比率は、4〜7:3〜6、好ましくは4.5〜6.5:3.5〜5.5である(CaO−SiO2−Al2O3の3成分の和を100質量%とし算出した場合の質量比)。上記範囲であれば、CASが充分に生成し、水溶性アルカリも適量生成する。
【0012】
セメント混和材の焼成温度は1000〜1250℃、好ましくは1100〜1200℃である。1000℃未満では、本発明の焼成物が得られない場合があり、1250℃より高ければ、クリンカーの液相が生成され過ぎ、キルン内にコーチングを多量に生成しキルンの閉塞が生じる恐れがある。焼成に用いる装置は特に限定されず、例えばロータリーキルン等を用いることができる。ロータリーキルンで焼成する際には、燃料代替廃棄物を使用することができる。
【0013】
焼成して得られたセメント混和材は、チューブミル、振動ミル、竪型ミル等の一般的ミルを使用し、ブレーン比表面積で2000〜7000cm/g、好ましくは2500〜4000cm/g程度に粉砕する。
粉砕物はセメントに混合して使用する。使用割合は、粉砕物2〜60質量%、好ましくは20〜40質量%に対して、ポルトランドセメント40〜98質量%、好ましくは50〜70質量%である。
セメント混和材の粉砕物が2質量%未満では、水溶性アルカリ量が少なく、流動性が向上しない。また、アルカリを含んだ建設発生土の処理量が十分に行なえない。60質量%より多ければ、強度が低下する。また、水溶性アルカリが過剰となり、逆に流動性が低下する。
【実施例】
【0014】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0015】
[1.供試試料の調製]
表1に示す化学組成の石灰石および建設発生土を用いて、建設発生土:石灰石=6:4(CaO−SiO2−Al2O3の3成分の和を100質量%とし算出した場合の質量比)となるよう調合した。SO3量は、試薬の硫酸カルシウム二水和物を用いて0〜0.8質量%となるよう調製した。表2に調合した際の原料原単位を示す。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】


この混合物を1200℃で30分間焼成し、遊星ミルでブレーン比表面積3300cm/gに粉砕した。得られた焼成物の化学組成を表3に示す。
なお、表1及び表3の化学組成はJIS R5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定した。また、表3の水溶性アルカリ(水溶性NaOeq.)量は、JCAS I-04:2004「セメントの水溶性成分の分析方法」により測定した。また、粉砕物はX線回折装置により同定を行なった。使用したX線回折装置は理学電気(株)製RINT−2500Vを用いた。X線回折装置における測定条件は次の通りとした。
管球:Cu、管電流:110mA、管電圧:35kV、サンプリング幅:0.02°、走査速度:4°/min、波長:1.5405Å、測定回折角範囲(2θ):5°〜70°
【0018】
図1に示すように、CSとCASのピークが明確に確認出来た。また、2θ=33.2°に現れるCAのピークは存在せず、ナフタレン系やポリカルボン酸系減水剤を吸着し難い焼結物が得られていることが分かる。
この粉砕物30質量%を普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント(株)製;ブレーン比表面積3310cm2/g)70質量%に添加し、混合して供試試料とした。
【0019】
【表3】

【0020】
[2.流動性の評価試験]
水セメント比を35%、ナフタレン系高性能減水剤(第一工業製薬(株)製、セルフロー120)の添加量を0.85質量%としてセメントペーストを調合し、120秒間高速攪拌した。得られたセメントペーストについて、JASS15M−103「セルフレベリング材の品質基準」の流動性試験に基づき、セメントペーストフロー値を測定して評価した。結果を表4に示す。実施例1および2では、比較例1に比べて水溶性アルカリ量増大にともない、ペーストフローが増大し、良好な流動性が得られている。
【0021】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】セメント混和材のX線回折による同定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASと、水溶性アルカリ0.1〜0.8質量%と、SO0.2〜1.0質量%とを含有することを特徴とするセメント混和材。
【請求項2】
CSを更に含有することを特徴とする請求項1記載のセメント混和材。
【請求項3】
アルカリ含有量が4〜8質量%の建設発生土を含む原料を焼成して得られた請求項1又は2記載のセメント混和材。
【請求項4】
前記建設発生土の原料原単位がセメント混和材1t当たり400〜750kgである請求項3記載のセメント混和材。
【請求項5】
前記セメント混和材の焼成温度が1000〜1250℃である請求項3又は4に記載のセメント混和材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のセメント混和材の粉砕物2〜60質量%と、ポルトランドセメント40〜98質量%とを含有するセメント組成物。
【請求項7】
建設発生土のアルカリ含有量を4〜8質量%に調整する工程と、
セメント混和材1t当たり400〜750kgの前記建設発生土と、石灰石と、石膏とを混合し原料を調整する工程と、
前記原料を1000〜1250℃で焼成し、CASと、水溶性アルカリ0.1〜0.8質量%と、SO0.2〜1.0質量%とを含有するセメント混和材を製造する工程とを含むことを特徴とするセメント混和材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−234809(P2009−234809A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79472(P2008−79472)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】